IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-記録装置 図1
  • 特開-記録装置 図2
  • 特開-記録装置 図3
  • 特開-記録装置 図4
  • 特開-記録装置 図5
  • 特開-記録装置 図6
  • 特開-記録装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176375
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B41J2/165 209
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094865
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武石 峰英
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB03
2C056EB08
2C056EB13
2C056EB45
2C056EB49
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC03
2C056EC08
2C056EC11
2C056EC35
2C056EC54
2C056FA13
2C056JA01
2C056JB04
2C056JC21
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】記録ヘッドからインクを吐出してメンテナンスを行う記録装置において、記録媒体、記録の画質および生産性を考慮した好適なメンテナンス制御を行う。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送手段と、記録媒体にインクを吐出して画像を形成する記録ヘッドと、制御部を備え、記録ヘッドは、記録媒体に画像を形成するときに取る第1の位置と、第1の位置とは異なる第2の位置であって、吐出されたインクが記録媒体に付着しない第2の位置と、を取ることが可能であり、制御部は、記録ヘッドからのインクの吐出を伴うメンテナンスを、第1の位置と第2の位置のいずれで行うかを、記録媒体の種類に基づいて決定する記録装置を用いる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体にインクを吐出して画像を形成する記録ヘッドと、
制御部と、
を備える記録装置であって、
前記記録ヘッドは、前記記録媒体に前記画像を形成するときに取る第1の位置と、前記第1の位置とは異なる第2の位置であって、吐出された前記インクが前記記録媒体に付着しない第2の位置と、を取ることが可能であり、
前記制御部は、前記記録ヘッドからの前記インクの吐出を伴うメンテナンスを、前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで行うかを、前記記録媒体の種類に基づいて決定することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記メンテナンスは、前記インクの吐出の内容が異なる複数の種類のメンテナンスを含んでおり、
前記制御部は、さらに前記メンテナンスの種類にも基づいて、前記メンテナンスを前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで行うかを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記複数の種類のメンテナンスは、予備吐出と不吐検出を含んでいる
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の種類のメンテナンスのうち、前記インクの吐出の内容が許容範囲内であるメンテナンスを、前記第1の位置で行う
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、吐出された前記インクがユーザに視認できない場合に、前記インクの吐出の内容が許容範囲内だと判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記インクの吐出の内容が許容範囲内であるメンテナンスの際には、前記記録媒体に、前記画像の形成のための前記インクの吐出と、前記メンテナンスのための前記インクの吐出の両方を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、さらに前記記録媒体のサイズにも基づいて、前記メンテナンスを前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで行うかを決定する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記記録媒体のサイズが所定の基準よりも小さい場合は、前記メンテナンスを前記第1の位置で行う
ことを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記記録媒体のサイズが所定の基準よりも小さい場合は、前記メンテナンスを前記第1の位置で行ったことにより前記インクが付着した前記記録媒体には、前記画像の形成を行わない
ことを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記記録媒体に画像を形成する前に前記メンテナンスが必要であるかどうかを判定し、必要であると判定した場合に、前記メンテナンスを前記第1の位置と前記
第2の位置のいずれで行うかを決定する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記制御部は、複数の前記記録媒体に画像を形成する場合に、後続の前記記録媒体が前記記録ヘッドに達する前に、前記メンテナンスを行う
ことを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記制御部は、画像が形成された前記記録媒体の数が所定の値に達した場合に、前記メンテナンスが必要であると判定する
ことを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項13】
前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで前記メンテナンスを行うかに関するユーザからの入力を受け付ける設定入力手段をさらに備え、
前記制御部は、前記メンテナンスが必要であると判定した場合に、前記設定入力手段が受け付けたユーザからの入力がある場合は、前記入力の内容に基づいて前記メンテナンスを行う
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の記録ヘッドでは、異物や粘度が増加したインクなどによるノズルの目詰まり、インク供給経路やノズル内に混入した気泡、ノズル表面の濡れ性の変化などの原因により、記録ヘッド内のノズルでインク吐出不良が発生することがある。そのような吐出不良が発生した場合、画像品位の低下を避けるために、印刷中においてもインク吐出状態を回復させるメンテナンスを速やかに行う必要がある。印刷中のメンテナンスには、記録ヘッドを印刷位置とは異なる位置で記録媒体にインクを着滴させることなく行う制御と、印刷中に記録ヘッドを印刷位置のままで記録媒体にインクを着滴させる形で行う制御がある。
【0003】
記録媒体に着滴させることなくメンテナンスをする場合、印刷を中断し、記録ヘッドを印刷位置からインク吸収体のある別の位置へ移動してメンテナンスする必要がある。その場合、記録ヘッド移動により生産性は下がるが、メンテナンスを記録媒体上で実施しないので、記録媒体の損失もしくは画質影響発生を防ぐことができる。
【0004】
一方、印刷位置でメンテナンスをする場合、メンテナンスに必要な吐出パターンを記録媒体上に印刷することで印刷中断の必要が無くなり、記録媒体の損失もしくは画質影響発生はあるが生産性は維持できる。例えば、高価な記録媒体を用いた印刷時は、その記録媒体をメンテナンスに使用したくないケースがある。一方、安価な記録媒体を用いた印刷時は、記録媒体の損失もしくは画質よりも生産性を重視したいケースがある。
【0005】
特許文献1(特許第6149179号公報)は、記録ヘッドから定期的にインクを吐出する予備吐出動作を、記録媒体に着滴させ行うか、記録媒体に着滴させず印刷位置とは異なる位置で行うかを択一的に制御する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6149179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示する方法においても、予備吐出動作を記録媒体に着滴させるか記録媒体に着滴させないで行うかを択一的に制御可能である。しかし、使用する記録媒体によっては、予備吐出された液体の着滴が画質に影響を与える懸念がある。一方で、記録媒体によっては記録媒体に着滴させず印刷位置とは異なる位置で予備吐出動作を行うことで記録媒体への影響を回避するよりも生産性を重視したいケースも想定される。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、記録ヘッドからインクを吐出してメンテナンスを行う記録装置において、記録媒体、記録の画質および生産性を考慮した好適なメンテナンス制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体にインクを吐出して画像を形成する記録ヘッドと、
制御部と、
を備える記録装置であって、
前記記録ヘッドは、前記記録媒体に前記画像を形成するときに取る第1の位置と、前記第1の位置とは異なる第2の位置であって、吐出された前記インクが前記記録媒体に付着しない第2の位置と、を取ることが可能であり、
前記制御部は、前記記録ヘッドからの前記インクの吐出を伴うメンテナンスを、前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで行うかを、前記記録媒体の種類に基づいて決定することを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録ヘッドからインクを吐出してメンテナンスを行う記録装置において、記録媒体、記録の画質および生産性を考慮した好適なメンテナンス制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】記録装置の内部構成を示す概略断面図である。
図2】記録ヘッド昇降機構の斜視図である。
図3】記録ヘッドのノズル形成面の斜視図である。
図4】記録装置の制御構成図である。
図5】記録ヘッドを記録動作中にキャップする動作の概略図である。
図6】ページ間メンテナンス判定処理のフローチャートである。
図7】印刷中の記録装置搬送路内の各記録媒体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の説明で一度説明した部材についての材質、形状などは、特に改めて記載しない限り、後の説明においても初めの説明と同様のものである。特に図示あるいは記述をしない構成や工程には、当該技術分野の周知技術または公知技術を適用することが可能である。また、重複する説明は省略する場合がある。
【0013】
[実施の形態]
(装置構成)
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成を示す概略断面図である。本発明はインクジェット記録装置1に好適に適用でき、特に記録ヘッドからインクを安定的に吐出させるためのメンテナンス制御方法に関するものである。本実施形態の記録装置内部は、給紙装置2、本体3、排紙装置4から構成される。給紙装置2内に、第1カセット5a、第2カセット5b、複数の給紙ローラ7aを備える。本体3内に、記録ヘッド16を複数備えた記録部9、乾燥部10、冷却部11、フラッパ13、ごみ箱14、複数の搬送ローラ7bを備える。排紙装置4内に、排紙トレイ6、排紙ローラ7cを備える。記録媒体S(例えばカットシート)は、図中の点線で示した搬送経路Rに沿って搬送され、各ユニットで処理がなされる。
【0014】
給紙装置2は、記録媒体Sを収容するための第1カセット5aと第2カセット5bが着脱可能に設置されており、記録媒体が平積みに収容されている。第1カセット5a近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための不図示の第1給送ユニットが設けられている。同様に、第2カセット5b近傍には、不図示の第2給送ユニットが設けられている。記録動作が行われる際には、給紙ローラ7aを不図示の搬送モータによ
り駆動することで、いずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0015】
本体3は、搬送ローラ7bを不図示の搬送モータを駆動することで給紙装置2から給送された記録媒体Sを搬送させる。記録部9は、搬送される記録媒体Sに対して上方から記録ヘッド16により記録媒体S上に記録処理を行なって画像を形成する記録媒体処理部である。
【0016】
記録部9においては、複数の記録ヘッド16が搬送方向に沿って並べられている。本例ではBk(ブラック)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の4色に加えて、反応液および3つの特色に対応した計8つのライン型の記録ヘッド16が設けられている。なお、色数および記録ヘッド16の数は8つに限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、不図示のインクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッド16に供給される。
【0017】
また、図2に示すように、記録ヘッド16は、当該記録ヘッド16を保持して上下に昇降するための記録ヘッド保持部26によって、記録ヘッド支持軸27を下方から支えるような形で軸支されている。記録ヘッド保持部26は、内部に備えている不図示の駆動機構により記録ヘッド昇降用フレーム28内に備えられた記録ヘッド昇降用レール29に沿って上下に昇降動作を行う。
【0018】
図3は記録ヘッド16を記録媒体搬送側から見た図であり、記録媒体と対向するノズル形成面223には、インク滴を記録媒体Sに対して吐出する複数のノズルプレート224が設けられている。
【0019】
図1に戻り、説明を続ける。乾燥部10は、記録部9で記録媒体S上に付与されたインクに含まれる液体分を減少させ、記録媒体Sとインクとの定着性を高めるユニットである。乾燥部10は、記録された記録媒体Sを加熱して、付与されたインクを乾燥させる。乾燥部10の内部では通過する記録媒体Sに対して少なくともインク付与面側から熱風を付与して記録媒体Sのインク付与面を乾燥させる。
【0020】
冷却部11は、乾燥部10で定着された記録媒体Sを冷却し、軟化したインクを固化させるとともに、記録装置1の下流工程における記録媒体S温度変化量を抑制させる。冷却部11の内部では通過する記録媒体Sに対して少なくともインク付与面側から記録媒体Sよりも低い温度の風を付与して記録媒体Sのインク付与面を冷却させる。
【0021】
フラッパ13は、破棄される対象となる記録媒体Sをごみ箱14に導くための搬送機構である。フラッパ13を駆動することで、破棄対象であり無駄となる記録媒体Sはごみ箱14に排出される。一方、破棄対象ではなく無駄とならない記録媒体Sはさらに搬送され、排紙装置4に給送される。
【0022】
排紙装置4は、記録動作が完了した記録媒体Sを排紙ローラ7cによって排出し積載保持する装置である。
【0023】
メンテナンストレー15は、記録ヘッド16の吐出性能を回復する機構を備えたユニットである。記録ヘッド16のインク吐出面を保護するキャップ機構、インク吐出面をワイピングするワイパ機構、インク吐出面から記録ヘッド16内のインクを負圧吸引する吸引機構を持ち、メンテナンス時に使用される。
【0024】
(制御構成)
図4は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリントエンジンを統括するプリントエンジンユニット200と、記録装置全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。以下に制御構成の詳細について説明する。なお、実施形態に記載された処理を実行できるのであれば、制御ブロック構成は図示例に限定されず、記録装置1が各処理を実行する制御部を備えていればよい。コントローラユニット100とプリントエンジンユニット200をまとめた制御部が全体を制御する構成でもよいし、物理的にさらに機能ごとにCPU等を設ける構成でもよい。
【0025】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM106に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM105をワークエリアとしながら記録装置全体を制御する。例えば、ホストI/F102を介してホスト装置300から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部107が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F104を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0026】
なお、記録装置1は接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。操作パネル103は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル103を介してプリントや紙送りの動作を指示したり、印刷設定を入力したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。操作パネル103はタッチパネルとなっており、マウスやキーボードを接続して入力することも可能である。
【0027】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、記録装置1が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド16が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド16に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を介して記録媒体Sとノズル形成面223が隣接するよう前述の記録ヘッド昇降機構により記録ヘッドを降下させる。また、プリントコントローラ202は乾燥制御部211、冷却制御部212を介して、それぞれ乾燥部10の加熱処理、冷却部11の冷却処理を開始させ、記録動作後の記録媒体S上のインクを定着させる準備を行う。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を介して給紙装置2、本体3、排紙装置4の給紙ローラ7a、搬送ローラ7b、排紙ローラ7cを動作させ、記録媒体Sの搬送動作を行う。プリントコントローラ202は搬送動作に連動して記録ヘッド16に記録動作を実行させ、記録動作後の記録媒体Sを乾燥部10、冷却部11に搬送しインク定着させることで印刷処理が行われる。
【0028】
ヘッドキャリッジ制御部208は、メンテナンス時、待機時は前述の記録ヘッド昇降機構により記録ヘッド16を上昇させる。インク供給制御部209は、記録ヘッド16へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニットを制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド16に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンストレー15を上昇させた記録ヘッド16下に移動させ、キャップやワイピング等の記録ヘッド16のメンテナンスの動作を制御する。
【0029】
(キャップ動作)
図5(a)~図5(d)は、記録ヘッド16を記録動作中にキャップする動作を示す概略図である。記録動作中は図5(a)に示すように、記録ヘッド16は記録媒体Sとノズル形成面223が隣接するよう前述の記録ヘッド昇降機構により降下した状態であり、メンテナンストレー15は記録部9に対し装置給紙側に退避している。記録ヘッド16のメンテナンス動作を行う場合には、記録ヘッド16は前述の記録ヘッド昇降機構により図5(b)に示す上方の退避ポジションへ移動する。その後、図5(c)に示すようにメンテナンストレー15の駆動機構とレール(不図示)により、退避位置から記録ヘッド16下まで移動する。その後記録ヘッド16が下降することで、図5(d)に示されるように記録ヘッド16はメンテナンストレー15に達し、ノズル形成面223がキャップユニットに密着する。以降の説明では、記録ヘッド16及びメンテナンストレー15の図5(a)の位置を印刷位置、図5(d)の位置をキャップ位置と定義する。
【0030】
本実施形態では、記録ヘッド16が印刷位置とキャップ位置のいずれの位置でも可能なメンテナンスの例として、予備吐出制御、および不吐検出制御を説明する。
【0031】
予備吐出制御は、ノズルの目詰まり、ノズル内に混入した気泡、あるいはノズル表面の濡れ性の変化などの原因による、記録ヘッドの全部または一部のノズルでのインク吐出不良発生を防止する目的で、記録ヘッド16から定期的にインクを吐出する制御である。プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド16を駆動して予備吐出制御のためのインク吐出(予備吐出)を行う。予備吐出をキャップ位置で実施する場合には、メンテナンストレー15のキャップユニット内に回収されたインクを不図示の吸引ポンプによって吸引する。一方、予備吐出を印刷位置で実施する場合には、記録媒体上にインク吐出する。予備吐出に必要なインク吐出によって記録媒体上に形成されるパターンを予備吐出パターンと定義する。
【0032】
不吐検出制御は、記録ヘッドの全部または一部のノズルでのインク吐出不良発生を検知する制御である。本実施形態では、記録ヘッド16を駆動しインク滴が吐出された後の一定時間後に発生する温度低下の特徴点の有無で吐出状態を検知するよう制御する。この際、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド16を駆動し、不吐検出のためのインク吐出を行う。キャップ位置で実施する場合には、キャップユニット内に回収されたインクを不図示の吸引ポンプによって吸引する。印刷位置で実施する場合には、記録媒体上にインク吐出する。不吐検出に必要なインク吐出によって記録媒体上に形成されるパターンを不吐検出パターンと定義する。インク吐出時、記録ヘッド16は、吐出口毎に、温度変化による吐出状態の有無を検知し、プリントコントローラ202は記録ヘッドの全部または一部ノズルでのインク吐出不良有無の検知結果をヘッドI/F206を介して受け取る。
【0033】
(ページ間メンテナンス)
次に印刷ジョブ中に実行されるページ間メンテナンスについて説明する。印刷ジョブ前に実施するメンテナンスでは、実行印刷ジョブが500枚などの大量枚数印刷ジョブの場合で、490枚まで印刷可能なケースにおいても印刷ジョブ前にメンテナンスを行うこととなり、無駄にインクを消費する等冗長なケースがある。ページ間メンテナンスは印刷ジョブ中でも印刷品質を確保可能な枚数まで印刷を続け、必要なタイミングでメンテナンスを行う制御である。本実施形態において、ページ間で実施されるメンテナンスの情報を、表1に示す。
【表1】
【0034】
各メンテナンスの実施条件パラメータは、装置稼働中に、インク供給制御部209、画像処理コントローラ205で適宜カウントアップされた情報がRAM204に保存され、所定の値に達すると各メンテナンスの実施条件を満たす。ページ間メンテナンスの実施時は、記録ヘッド16をキャップ位置に移動する場合があるため、記録媒体の印刷前に各ページ間メンテナンス判定処理をする必要がある。各ページ間メンテナンス判定処理及び実施はプリントコントローラ202が行う。プリントコントローラ202はまず、搬送制御部207を介し、搬送路内にある不図示の記録媒体検知センサを用いて滞留中の記録媒体が印刷中でないことと、新たな記録媒体が印刷前の状態であることを確認する。プリントコントローラ202はその確認が取れたら、メンテナンス制御部210を用いてページ間メンテナンスを実施する。
【0035】
(ページ間メンテナンス判定処理)
図6は記録媒体の印刷前に行うページ間メンテナンス判定処理のフローチャートである。各ステップの処理は、プリントコントローラ202における情報処理として実行される。
【0036】
ステップS701において、プリントコントローラ202は、記録媒体の印刷前にページ間メンテナンスが必要か判断する。このときプリントコントローラ202は、RAM204に保存されている表1の各メンテナンスの実施条件パラメータが所定の閾値に達したか否かを判断することで、ページ間メンテナンス実施の契機があったか判定し、メンテナンスの要否を判断する。表1のどのメンテナンスも実施条件を満たさない場合は、ステップS705に遷移し、プリントコントローラ202は、ページ間メンテナンスが不要と判断し、印刷継続の判定となる。
【0037】
一方、プリントコントローラ202が表1のうち少なくとも1つ以上のページ間メンテナンスが必要と判断した場合には、ステップS702に遷移する。S702で、プリントコントローラ202は、ROM203またはRAM204に保存されている記録媒体のメンテナンス位置設定を確認し、キャップ位置でメンテナンスを実施するか印刷位置でメンテナンスを実施するか判定する。
【0038】
表2、表3、表4は、記録媒体の種類とサイズに応じたメンテナンス位置設定を示す表である。この例では記録媒体として、普通紙(表2)、光沢紙1(表3)、光沢紙2(表4)を示している。記録媒体別のメンテナンス位置設定がキャップ位置の場合はステップS703に遷移し、プリントコントローラ202は印刷を一時中断し、記録ヘッド16をキャップ位置に移動させページ間メンテナンス処理を実施するよう判定する。記録媒体別のメンテナンス位置設定が印刷位置の場合は、ステップS704に遷移し、プリントコントローラ202は記録ヘッド16を印刷位置のまま印刷を継続し、記録媒体上でページ間メンテナンス処理を実施するよう判定する。
【0039】
表2は光沢紙1のサイズ毎のメンテナンス位置設定を示す。光沢紙1は高価であるためできるだけ記録媒体の損失を抑制したいが、生産性の低下も抑制する必要がある。そこで表2では比較的小サイズであるハガキ用紙やA5用紙は印刷位置でメンテナンスを行い、インクが付着した記録媒体は破棄する。一方、サイズの大きい用紙では印刷中断してキャップ位置でメンテナンスを行うことで、時間は掛かるもののコスト損失を抑制できる。表
2では、コスト損失が許容範囲内かどうかの所定の基準はA4とA5の間にあるが、これに限定されない。
【表2】
【0040】
また表3は普通紙のサイズ毎のメンテナンス位置設定を示す。普通紙は安価であるため、記録媒体の損失よりも生産性を重視することが可能であること。そこで印刷位置でメンテナンスを行うこととし、印刷が中断しないようにしている。そして、メンテナンスによりインクが付着した記録媒体は破棄する。
【表3】
【0041】
また表4は光沢紙2のサイズ毎のメンテナンス位置設定を示す。光沢紙2は高価であるためできるだけ記録媒体の損失を抑制したいが、生産性の低下も抑制する必要がある。また、インク付着による画質への影響もできるだけ低減する必要がある。なお、表4の場合に予備吐出パターンが記録媒体に着滴しても画質への影響が小さく、不吐検出パターンが記録媒体に着滴した場合は画質への影響が大きいものとする。そこで表4では、予備吐出メンテナンスの場合は印刷位置でメンテナンスを行い、記録媒体へのインクの付着を容認するが、不吐検出メンテナンスの場合は印刷中断してキャップ位置でメンテナンスを行う。これにより、画質をできるだけ低下させないことと、生産性をできるだけ維持することを両立している。
【表4】
【0042】
[実施形態1]
実施形態1では、キャップ位置でページ間のメンテナンスを行うケースについて説明する。
【0043】
実施形態1では、第1カセット5aから第1給送ユニットにより、10枚の光沢紙A3
サイズの記録媒体Sが給送される(1枚目から順に、記録媒体S1~S10とする)。そして印刷動作中に、記録媒体S6の印刷前にページ間メンテナンスとして不吐検出制御を実施するケースについて説明する。
【0044】
図7は、記録媒体S1が排紙トレイ6に排紙済で、記録媒体S2,S3,S4が印刷後の搬送中、記録媒体S5が印刷中、記録媒体S6が給紙前を示す装置内の搬送経路Rを示している。このタイミングでプリントコントローラ202は記録媒体S5、S6間のページ間メンテナンスの判定処理を行う。なお、判定処理は記録媒体S6が印刷前にできていればよく、記録媒体S6の給紙の開始後であっても構わない。ページ間メンテナンスの判定処理では、図6のステップS701において、記録媒体S6の印刷前にページ間メンテナンスが必要か判断する。本実施形態では、不吐検出制御を実施するため、702に遷移し記録媒体別のメンテナンス位置設定を確認する。
【0045】
表2は、ROM203またはRAM204に保存されている記録媒体のメンテナンス位置設定の一例であり、光沢紙1の各サイズにおける、予備吐出制御と不吐検出制御それぞれのメンテナンス位置を示したものである。表1より、光沢紙、A3サイズに対応する不吐検出のメンテナンス位置設定はキャップ位置だと分かる。そこでプリントコントローラ202は図6のステップS703に遷移するよう判定する。その際、プリントコントローラ202は、印刷中の記録媒体S5の印刷を完了させ、印刷済の記録媒体S2、S3、S4、S5を搬送し、排紙トレイ6に排紙を行う。搬送路内の残記録媒体の排紙後、プリントコントローラ202はメンテナンス制御部210を介して記録ヘッド16をキャップ位置に移動させ、不吐検出制御を実施する。不吐検出制御が終わったら、プリントコントローラ202は記録ヘッド16を印刷位置に移動し、印刷再開し、記録媒体S6、不図示の記録媒体S7、S8、S9、S10に印刷を行い、排紙トレイ6に排紙を完了することで印刷処理が完了する。
【0046】
実施形態1では、ページ間メンテナンスとして不吐検出制御を実施するケースを例に説明したが、予備吐出制御を実施する場合も同様に制御可能である。即ち、予備吐出制御の場合には、ページ間メンテナンスの判定処理で、表2より、光沢紙A3サイズに対応する不吐検出のメンテナンス位置設定がキャップ位置となり、以降の制御が前述した不吐検出制御時と同様となり、キャップ位置にて予備吐出制御を実施する。
【0047】
このように実施形態1によれば、高価な光沢紙1を用いるケースでメンテナンス制御を行う際に、記録媒体サイズが大きい場合はキャップ位置でインク吐出を行うので、記録媒体を破棄する必要がなくなり、コスト損失を抑制できる。一方、記録媒体サイズが小さい場合は印刷位置でインク吐出を行うので、印刷を中断する必要がなくなりスループットを維持することができる。
【0048】
[実施形態2]
実施形態2では、印刷位置でページ間のメンテナンスを行うケースについて説明する。
【0049】
実施形態2では、第1カセット5aから第1給送ユニットにより、10枚の普通紙A4サイズの記録媒体Sが給送される(1枚目から順に、記録媒体S1~S10とする)。そして印刷動作中に、記録媒体S6の印刷前にページ間メンテナンスとして不吐検出制御を実施するケースについて説明する。
【0050】
ページ間メンテナンスの判定タイミングは実施形態1で説明した図7と同じであり、説明は割愛する。ページ間メンテナンスの判定処理では、図6のステップS701において、記録媒体S6の印刷前にページ間メンテナンスが必要か判断する。本実施形態では、不吐検出制御を実施するため、ステップS702に遷移し記録媒体別のメンテナンス位置設
定を確認する。
【0051】
表3は、ROM203またはRAM204に保存されている記録媒体のメンテナンス位置設定の一例であり、普通紙の各サイズにおける、予備吐出制御と不吐検出制御それぞれのメンテナンス位置を示したものである。表3より、普通紙A4サイズに対応する不吐検出のメンテナンス位置設定は印刷位置だと分かる。そこでプリントコントローラ202は図6のステップS704に遷移するよう判定する。その際、プリントコントローラ202は、印刷中の記録媒体S5の印刷を完了させたあと、後続の記録媒体S6に対し、不吐検出制御に伴うインク吐出を実施する。その際、プリントコントローラ202は既に画像処理コントローラ205で変換された6ページ目用の記録データを使用せず、予めROM203に保存されている不吐検出用の吐出データを使用するよう制御する。既に印刷済の記録媒体S2、S3、S4、S5は搬送し、排紙トレイ6に排紙を行う。記録媒体S5がフラッパ13通過後、プリントコントローラ202はフラッパ13を駆動し、破棄の対象であり無駄となる記録媒体S6をごみ箱14に排出する。記録媒体S6排出後は後続の記録媒体がごみ箱に搬送されず排紙トレイに向かうようにフラッパ13を駆動する。並行して、プリントコントローラ202は6ページ目用の記録データを後続の記録媒体S7(不図示)に印刷するよう制御する。続いて不図示の記録媒体S8、S9、S10、S11に印刷を行い、排紙トレイ6に排紙を完了することで印刷処理が完了する。
【0052】
実施形態2では、ページ間メンテナンスとして不吐検出制御を実施するケースを例に説明したが、予備吐出制御を実施する場合も同様に制御可能である。即ち、予備吐出制御の場合には、ページ間メンテナンスの判定処理で、表3より、普通紙A4サイズに対応する不吐検出のメンテナンス位置設定が印刷位置となり、以降の制御が前述した不吐検出制御時と同様となり、印刷位置で予備吐出制御用の吐出を記録媒体S6に行う。
【0053】
また実施形態2では、記録媒体S6に記録データを印刷せず、不吐検制御に伴うインク吐出を実施するケースを例に説明したが、不吐検出制御、予備吐出制御による画像への影響がユーザの許容範囲内である場合がある。例えば、吐出されたインクをユーザが視認することが難しい場合である。そのような場合、プリントコントローラ202は、記録データとメンテナンス用の吐出データを同一記録媒体上に重ねて印刷し、ごみ箱14に排出することなく、排紙トレイ6に排紙してもよい。
【0054】
このように実施形態2によれば、安価な普通紙を用いるケースでメンテナンス制御を行う場合に、記録媒体のサイズやメンテナンスの種類によらず印刷位置でインク吐出を行うので、印刷を中断する必要がなく、スループットを維持することができる。
【0055】
[実施形態3]
実施形態3では、印刷位置で予備吐出を行い、キャップ位置で不吐検出を行うケースについて説明する。
【0056】
実施形態1では、記録媒体サイズが大きい場合にキャップ位置で予備吐出と不吐検出の両方を実施する場合を説明した。実施形態2では、記録媒体サイズを問わず、印刷位置で予備吐出と不吐検出を実施する場合を説明をした。本実施形態では、用紙サイズを問わず、印刷位置で予備吐出を実施し、キャップ位置で不吐検出を実施している。
【0057】
表4は、ROM203またはRAM204に保存されている記録媒体のメンテナンス位置設定の一例であり、光沢紙2の各サイズにおける、予備吐出制御と不吐検制出御それぞれのメンテナンス位置を示したものである。表4によると光沢紙2の予備吐出は印刷位置で行い、不吐検出はキャップ位置で行う設定となっている。印刷中に印刷位置で予備吐出を実施する制御内容、印刷中にキャップ位置で不吐検出を実施する制御内容は実施形態1
、実施形態2と同様の制御内容となるため説明を割愛する。
【0058】
ここで実施形態3では、予備吐出におけるインク吐出パターンは画質への影響が比較的小さく、不吐検出におけるインク吐出パターンは画質への影響が比較的大きいことを想定している。そこで上述のように制御を行うことで、予備吐出の際には印刷を中断すること無くメンテナンスを実行し、不吐検出の際には画質への影響を与えること無くメンテナンスを実行できる。
【0059】
[実施形態4]
実施形態4では、ユーザの指定位置でメンテナンスを行うケースについて説明する。
【0060】
実施形態1,2,3では、ROM203またはRAM204に保存されている記録媒体のメンテナンス位置設定に従ってページ間メンテナンスの位置を決めていたが、ユーザが設定したメンテナンス位置設定に従って決めてもよい。その場合、ユーザは予め、ユーザ設定入力手段としての操作パネル103を介して予備吐出と不吐検出に対するメンテナンス位置設定を設定しておく。プリントコントローラ202は、入力された設定値をRAM204のユーザ設定領域に保存する。ページ間メンテナンスの判定処理においてプリントコントローラ202は、図6のステップS702において、RAM204のユーザ設定領域に設定値が保存されていれば、ユーザ設定値に従ってメンテナンスの位置を決めるよう制御する。一方、ユーザ設定領域に設定値が保存されていなければ、記録媒体のメンテナンス位置設定に従ってメンテナンスの位置を決めるよう制御する。ユーザはメンテナンスの種類毎にメンテナンス位置を設定可能としてもよいし、メンテナンス共通でメンテナンス位置を設定可能としてもよい。
【0061】
(実施形態の効果)
実施形態1では、キャップ位置でメンテナンスを行うことで、記録ヘッド16のキャップ位置への移動とキャップ位置から印刷位置に戻す移動分の時間を消費するが、記録媒体を無駄にせずにメンテナンスを実施できる。これにより、値段が高い記録媒体を用いた印刷を行う場合、ページ間でメンテナンスを実施すると、記録ヘッド移動時間分の生産性は落ちるが記録媒体を無駄にしてしまうコスト損失を抑えることが可能となる。
【0062】
実施形態2では、印刷位置のままメンテナンスを行うことで、記録ヘッド16の移動分の時間を消費せずにメンテナンスを実施できる。これにより、普通紙や、光沢紙でもサイズの小さい紙など、値段が高くない記録媒体を用いた印刷の場合、ページ間でメンテナンスを実施しても無駄な記録媒体によるコスト損失は低く抑えつつ、生産性を落とさない印刷動作が可能となる。また、メンテナンスの吐出データをユーザが視認することが難しい場合には、記録データとメンテナンス用の吐出データを同一記録媒体上に重ねて印刷することで、無駄となる記録媒体の発生も防ぐことが可能となる。
【0063】
実施形態3では、印刷位置で予備吐出を実施し、キャップ位置で不吐検出を実施している。これは例えば、予備吐出制御の吐出データが視認しにくく、不吐検出制御の吐出データが視認しやすい記録媒体への印刷に対応した実施形態である。これにより、画質影響のある不吐検出のみキャップ位置で実施し、画質影響の少ない予備吐出は印刷位置で実施することで、極力生産性を落とさず印刷を行うことができる。
【0064】
実施形態4では、ユーザが設定したメンテナンス位置設定に従ってページ間メンテナンスの位置を決めている。これにより、例えば以下(i)~(iii)のケースにおいて、ユーザ意思でメンテナンス位置を設定することが可能となる。(i)装置構成上で無駄となる記録媒体の分別が難しいので、多少時間がかかってもキャップ位置で全てのメンテナンスを済ませたいケース。(ii)繁忙期等で一時的に無駄となる記録媒体のコストより
生産性を重視したいので、印刷位置で全てのメンテナンスを済ませたいケース。(iii)後工程で不吐検出の結果を印刷データの結果と併せて確認するためにあえて結果を紙面に印刷しておきたいので印刷位置で不吐検出を実施したいケース。
【0065】
また、本実施形態においては主に10枚の印刷ジョブで説明したが、本発明は、大量枚数の印刷を行うことで効果が増大する。例えば、一律キャップ位置でページ間メンテナンスを行う記録装置において、合計5000枚の印刷を行い、印刷枚数100枚に1回、計50回のページ間メンテナンスが発生する場合を考える。本実施形態では1回のメンテナ
ンスで記録ヘッド16を印刷位置からキャップ位置に移動し、キャップ位置から印刷位置に戻す制御には、記録ヘッド16の昇降と、メンテナンストレー15の移動を伴う。その動作に20秒程度かかるが記録媒体を無駄にせずにメンテナンスが可能となる。1枚数百円のサイズの大きい光沢紙など高価な記録媒体を使用する場合は、記録媒体を無駄にせずに印刷を行えるメリットがある。一方、1枚1~2円程度の安価な記録媒体を使用する場合、無駄となる記録媒体は発生しないが、記録ヘッド16の50回分の移動により、1000秒、すなわち約17分の時間を犠牲にしてメンテナンスを行うことになる。その場合、記録媒体の損失コストに比べ消費する時間が長過ぎる。結果記録装置としてのトータルコストが悪化してしまうケースもある。
【0066】
また、例えば一律印刷位置でページ間メンテナンスを行う記録装置において、合計5000枚の印刷を行い、同様に計50回のページ間メンテナンスが発生する場合を考える。1枚1~2円程度の安価な記録媒体を使用する場合、記録媒体の損失コストはあるが、約17分の時間を犠牲にせず印刷を継続できるメリットがある。一方、1枚数百円の記録媒体を使用する場合、約17分の時間を犠牲にせずに済むが、50回分のメンテナンスによる記録媒体の損失コストは1万円以上にも及んでしまう。この場合、消費する時間に比べ
記録媒体の損失コストが大き過ぎる。結果記録装置としてのトータルコストが悪化してしまうケースもある。本発明はこのようなケースにおいて効果を大きく発揮できるよう考案されたものである。
【0067】
また、本実施形態において記録媒体以外のメンテナンス位置をキャップ位置としたが、記録ヘッドからの吐出インクを吸収できる記録媒体以外の位置があれば、キャップ位置である必要はない。その場合においても本発明の全てまたは一部の効果を得ることが可能である。
【0068】
また、本実施形態では、記録媒体の種類として普通紙、光沢紙1、光沢紙2で説明したが、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチックフィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを記録媒体として扱う場合においても本発明の全てまたは一部の効果を得ることが可能である。
【0069】
以上述べたように、本願の各実施形態においては、記録媒体の種類(コスト)およびサイズやメンテナンスの内容に応じて、記録ヘッドからのインク吐出を伴うメンテナンスを行う位置を、記録媒体上の位置とそれ以外の位置との間で変更している。ここで、メンテナンス位置を固定化してしまうと、高価な記録媒体へのインクの着滴による破棄の発生または画質への影響、記録媒体外でメンテナンスを行うことによるスループット低下、等の種々の問題が発生してしまう。そこで本願では、記録媒体の種類やサイズ、メンテナンスの内容に応じて予め設定された位置でメンテナンスを行うことにより、記録媒体の破棄や画質への影響、スループットなどについて、ユーザが所望の条件を実現することができる。その結果、高画質記録と生産性を両立することが可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【0070】
なお、本実施形態の記録装置1あるいはホスト装置300の1以上の機能を実現するた
めのプログラムを、ネットワークや各種記憶媒体を介してシステムあるいは装置に供給してもよい。また、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU等)がプログラムを読み出して機能を実行する、あるいは各種機構に実行させるようにしてもよい。また、このプログラムは、1つのコンピュータで実行されても、複数のコンピュータの連動により実行されてもよい。加えて、上述した処理の全てをソフトウェアで実現する必要はなく、処理の一部または全部をASIC等のハードウェアで実現するようにしてもよい。さらには、1つのCPUで全ての処理を行う形態に限らず、複数のCPUが適宜連携をしながら処理を行う形態としてもよいし、いずれかの処理を1つのCPUが実行し、その他の処理を複数のCPUが連携しながら処理を行う形態としても良い。
【0071】
[構成1]
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体にインクを吐出して画像を形成する記録ヘッドと、
制御部と、
を備える記録装置であって、
前記記録ヘッドは、前記記録媒体に前記画像を形成するときに取る第1の位置と、前記第1の位置とは異なる第2の位置であって、吐出された前記インクが前記記録媒体に付着しない第2の位置と、を取ることが可能であり、
前記制御部は、前記記録ヘッドからの前記インクの吐出を伴うメンテナンスを、前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで行うかを、前記記録媒体の種類に基づいて決定することを特徴とする記録装置。
[構成2]
前記メンテナンスは、前記インクの吐出の内容が異なる複数の種類のメンテナンスを含んでおり、
前記制御部は、さらに前記メンテナンスの種類にも基づいて、前記メンテナンスを前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで行うかを決定する
ことを特徴とする構成1に記載の記録装置。
[構成3]
前記複数の種類のメンテナンスは、予備吐出と不吐検出を含んでいる
ことを特徴とする構成2に記載の記録装置。
[構成4]
前記制御部は、前記複数の種類のメンテナンスのうち、前記インクの吐出の内容が許容範囲内であるメンテナンスを、前記第1の位置で行う
ことを特徴とする構成2または3に記載の記録装置。
[構成5]
前記制御部は、吐出された前記インクがユーザに視認できない場合に、前記インクの吐出の内容が許容範囲内だと判断する
ことを特徴とする構成4に記載の記録装置。
[構成6]
前記インクの吐出の内容が許容範囲内であるメンテナンスの際には、前記記録媒体に、前記画像の形成のための前記インクの吐出と、前記メンテナンスのための前記インクの吐出の両方を行う
ことを特徴とする構成4または5に記載の記録装置。
[構成7]
前記制御部は、さらに前記記録媒体のサイズにも基づいて、前記メンテナンスを前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで行うかを決定する
ことを特徴とする構成1から6のいずれか1項に記載の記録装置。
[構成8]
前記制御部は、前記記録媒体のサイズが所定の基準よりも小さい場合は、前記メンテナンスを前記第1の位置で行う
ことを特徴とする構成7に記載の記録装置。
[構成9]
前記制御部は、前記記録媒体のサイズが所定の基準よりも小さい場合は、前記メンテナンスを前記第1の位置で行ったことにより前記インクが付着した前記記録媒体には、前記画像の形成を行わない
ことを特徴とする構成8に記載の記録装置。
[構成10]
前記制御部は、前記記録媒体に画像を形成する前に前記メンテナンスが必要であるかどうかを判定し、必要であると判定した場合に、前記メンテナンスを前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで行うかを決定する
ことを特徴とする構成1から9のいずれか1項に記載の記録装置。
[構成11]
前記制御部は、複数の前記記録媒体に画像を形成する場合に、後続の前記記録媒体が前記記録ヘッドに達する前に、前記メンテナンスを行う
ことを特徴とする構成10に記載の記録装置。
[構成12]
前記制御部は、画像が形成された前記記録媒体の数が所定の値に達した場合に、前記メンテナンスが必要であると判定する
ことを特徴とする構成10または11に記載の記録装置。
[構成13]
前記第1の位置と前記第2の位置のいずれで前記メンテナンスを行うかに関するユーザからの入力を受け付ける設定入力手段をさらに備え、
前記制御部は、前記メンテナンスが必要であると判定した場合に、前記設定入力手段が受け付けたユーザからの入力がある場合は、前記入力の内容に基づいて前記メンテナンスを行う
ことを特徴とする構成1から12のいずれか1項に記載の記録装置。
【符号の説明】
【0072】
1:記録装置、2:給紙装置、9:記録部、15:メンテナンストレー、16:記録ヘッド、100:コントローラユニット、200:プリントエンジンユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7