(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176381
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】記録装置、記録装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094873
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤元 康徳
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC26
2C056HA58
2C056HA60
(57)【要約】
【課題】記録ヘッドの寿命を適切に決定すること。
【解決手段】記録装置は、着脱可能な記録ヘッドの寿命に関する第1寿命情報を記憶する第1記憶手段と、第1記憶手段から第1寿命情報を取得し、かつ、記録ヘッドが保持する第2記憶手段から記録ヘッドの第2寿命情報を取得する取得手段と、取得手段が取得した第1寿命情報および第2寿命情報を基に、記録ヘッドの第3寿命情報を決定する決定手段と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能な記録ヘッドの寿命に関する第1寿命情報を記憶する第1記憶手段と、
前記第1記憶手段から前記第1寿命情報を取得し、かつ、前記記録ヘッドが保持する第2記憶手段から前記記録ヘッドの第2寿命情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記第1寿命情報および前記第2寿命情報を基に、前記記録ヘッドの第3寿命情報を決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1寿命情報と前記第2寿命情報とがともに同じ寿命を示す場合、前記決定手段は、前記同じ寿命を前記第3寿命情報として決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1寿命情報と前記第2寿命情報とが異なる寿命を示す場合、前記決定手段は、前記第1寿命情報と前記第2寿命情報のうち、より長い寿命を示す寿命情報を前記第3寿命情報として決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第2記憶手段には、前記第2寿命情報と、前記第1寿命情報および前記第2寿命情報のいずれを優先するかを示す優先情報が記憶されており、
前記決定手段は、前記第1寿命情報と前記第2寿命情報とが異なる寿命を示す場合、前記優先情報に従って前記第3寿命情報を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録装置は、前記第1寿命情報と前記第2寿命情報との組み合わせと、前記第3寿命情報とを対応付けたテーブルを記憶する第3記憶手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記第1寿命情報と前記第2寿命情報とが異なる数値を示す場合、前記テーブルに従って、前記第3寿命情報を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録装置は、前記決定手段により決定した第3寿命情報を基に、前記記録ヘッドが寿命に達するまでの到達度を導出する導出手段をさらに備えることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録装置は、前記導出した前記到達度を基に前記記録ヘッドの交換を促がす報知を行う報知手段をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記導出手段は、前記記録装置が有するアルゴリズムを用いることにより、前記第3寿命情報に基づいて前記到達度を導出することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1寿命情報、前記第2寿命情報、及び前記第3寿命情報は、前記記録ヘッドを前記記録装置に装着してからの吐出回数の上限を示す情報であり、
前記アルゴリズムは、前記吐出回数と前記到達度との線形関係を示す情報であることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記第1寿命情報、前記第2寿命情報、及び前記第3寿命情報は、前記記録ヘッドを前記記録装置に装着してからの吐出回数の上限を示す情報であり、
前記アルゴリズムは、前記吐出回数と前記到達度との非線形な関係を示す情報であることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項11】
前記第1寿命情報、前記第2寿命情報、及び前記第3寿命情報は、前記記録ヘッドを前記記録装置に装着してからの経過日数の上限を示す情報であり、
前記アルゴリズムは、前記経過日数と前記到達度との線形関係を示す情報であることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項12】
前記第1寿命情報、前記第2寿命情報、及び前記第3寿命情報は、前記記録ヘッドを前記記録装置に装着してからの経過日数の上限を示す情報であり、
前記アルゴリズムは、前記経過日数と前記到達度との非線形な関係を示す情報であることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項13】
前記第1寿命情報は、前記記録装置の設計変更によって変更されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項14】
前記第2寿命情報は、前記記録ヘッドの設計変更によって変更されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項15】
着脱可能な記録ヘッドの寿命に関する第1寿命情報を第1記憶手段から取得するステップと、
前記記録ヘッドの寿命に関する第2寿命情報を、前記記録ヘッドが保持する第2記憶手段から取得するステップと、
前記第1寿命情報および前記第2寿命情報を基に前記記録ヘッドの第3寿命情報を決定する決定ステップと、
を備えることを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項16】
記録装置で動作するプログラムであって、前記記録装置を、
着脱可能な記録ヘッドの寿命に関する第1寿命情報を記憶する第1記憶手段と、
前記第1記憶手段から前記第1寿命情報を取得し、かつ、前記記録ヘッドが保持する第2記憶手段から前記記録ヘッドの第2寿命情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記第1寿命情報および前記第2寿命情報を基に、前記記録ヘッドの第3寿命情報を決定する決定手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、記録装置、記録装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のカラープリンタにおいては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどのインクをそれぞれ吐出する記録ヘッドからインクを吐出することで画像記録を行う。記録ヘッドは消耗品として扱われることもあり、特許文献1には、取り付けられてからの連続使用時間やまたは通電時間等を利用し、ヘッドの継続使用可否を判定する例が開示されている。また、従来、記録装置または記録ヘッドにおいて、設計変更を実施することによって記録ヘッドの劣化を軽減し、より長い期間インクジェッドヘッドを使用できるようにする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録ヘッドの使用開始から寿命に達し交換するまでの推移は、記録ヘッドの交換をユーザーに要求してからユーザーが準備するという観点から、正確に把握することが求められている。しかし、記録ヘッドの設計変更等により正確な寿命を把握するのが困難になり、記録ヘッドの交換を適切なタイミングで報知することができない場合があった。
【0005】
そこで、本開示は、記録ヘッドの寿命を適切に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る記録装置は、
着脱可能な記録ヘッドの寿命に関する第1寿命情報を記憶する第1記憶手段と、前記第1記憶手段から前記第1寿命情報を取得し、かつ、前記記録ヘッドが保持する第2記憶手段から前記記録ヘッドの第2寿命情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記第1寿命情報および前記第2寿命情報を基に、前記記録ヘッドの第3寿命情報を決定する決定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、好適に記録ヘッドの寿命を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】記録装置の記録制御系回路の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】画像データ処理を行う概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】記録ヘッドの寿命到達度の推移を示す図である。
【
図6】記録ヘッドの寿命を決定するテーブルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<実施形態1>
図1は、本実施形態において適用可能なカラーインクジェット記録装置100(以下、記録装置100という)の構成を示す概略図である。不図示の4つのインクタンクは、4色のインク(シアン、マゼンタ、黄、および黒)をそれぞれ収容しており、これら4色のインクを記録ヘッド201~204に対して供給可能に構成されている。記録ヘッド201~204は、4色のインクに対応して設けられ、インクタンクから供給されるインクを吐出できるように構成されている。本実施形態において、記録ヘッド201~204は、着脱可能な部品であるものとして説明する。
【0011】
搬送ローラ103は、補助ローラ104とともに記録媒体(記録用紙)107を挟持しながら回転して記録媒体107をX方向に搬送する。また、記録媒体107を保持する役割を担っている。記録装置100は、記録媒体107を搬送方向Xに動かしつつ、記録ヘッド201~204からインクを吐出して画像を記録する。記録が終了すると、記録ヘッド201~204は不図示の位置へ退避し、記録ヘッドのメンテナンス等が行われる。記録ヘッド201~204からインクを吐出する記録動作は、後述の制御手段による制御に基づいて行われる。
【0012】
図2は、
図1に示した記録装置100の記録制御系回路の概略構成を示すブロック図である。記録装置100は、インターフェイス400を介して、ホストコンピュータ(以下、ホストPC)1200等のデータ供給装置に接続されている。データ供給装置から送信される各種データまたは記録に関連する制御信号等は、記録装置100の記録制御部500に入力される。記録制御部500は、CPU501(ASICでも良い)、ROM502、RAM503を含む。CPU501は、ROM502に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM503をワークエリアとしながら記録装置100全体を制御する。例えば、インターフェイス400を介してホストPC1200から印刷ジョブが入力されると、CPU501は受信した画像データに対して後述する所定の画像処理を施す。そして、画像処理後の画像データに基づいて、モータドライバ403及びヘッドドライバ405~408を駆動することにより、記録媒体に画像を記録する。搬送モータ401は、記録媒体107の搬送のために搬送ローラ103を回転させる。モータドライバ403は、CPU301の指示の下、搬送モータ401を駆動する。ヘッドドライバ405~408は、CPU301の指示の下、記録ヘッド201~204を駆動する。尚、本実施形態において記録ヘッド201は黒インク、記録ヘッド202はシアンインク、記録ヘッド203はマゼンダインク、記録ヘッド204は黄インクが流し込まれているものとする。
【0013】
ROM502には、各種プログラムの他、記録ヘッド201~204の寿命に関する情報である寿命情報が記憶されている。具体的に寿命情報とは、記録ヘッドを記録装置に装着してから吐出を行うことができる回数(吐出回数)の上限、または記録ヘッドを記録装置に装着してから使用することができる日数(経過日数)の上限を示す情報である。
【0014】
また、記録ヘッド201~204のそれぞれにも、自身の寿命に関する情報を記憶する記憶素子301~304が設けられている。CPU501は、ROM502に記憶された情報と、記録ヘッド201~204の記憶素子301~304に記憶された情報とを参照することにより、現在搭載されている記録ヘッド201~204の寿命を判断する。寿命の判断方法については、後に詳しく説明する。
【0015】
図3は、記録装置100とホストPCとで構成される画像処理システムにおける画像データ処理を行う概略構成を示す機能ブロック図である。記録装置100の記録制御部500は、
図2のインターフェイスを介して、プリンタドライバがインストールされたホストPC1200より転送されるデータの処理を行う。ホストPC1200では、アプリケーションから入力画像データ1000を受け取る。そして、受け取った入力画像データ1000に基づいて1200dpiの解像度でレンダリング処理1001を行う。これによって記録用多値RGBデータ1002が生成される。本実施形態では、記録用多値RGBデータ1002は、RGBそれぞれ256値のデータである。生成された記録用多値RGBデータ1002は、記録制御部500に転送される。
【0016】
記録制御部500では、記録用多値RGBデータ1002を多値CMYKデータ1008に変換するための色変換処理1007を行う。多値CMYKデータは、CMYKそれぞれ256値のデータである。次いで、多値CMYKデータ1008を量子化処理1009(例えば、誤差拡散法やディザ法)によって量子化(2値化)する。これにより、解像度1200dpiの2値CMYKデータ1010が生成される。このデータをヘッドドライバ405~408へ送り、記録ヘッド201~204からインクが記録用紙107上へ吐出される。
【0017】
以下では、記録ヘッド201~204の使用開始から劣化等により使用することができなくなるまでの日数である「寿命」をより好適に判定する方法を説明していく。寿命をより正確に判定することにより、ユーザーに記録ヘッドの交換を促がす報知をより正確なタイミングで行うことができ、ユーザーにとって記録ヘッドの管理が容易になる。
【0018】
図4(a)~(d)は、記録ヘッドを記録装置に装着し、インクを流し込んでからの経過日数と、寿命到達度との関係を説明する図である。寿命到達度とは、記録ヘッドが寿命に到達するまでの劣化の割合を示すものである。本実施形態においては、このような寿命到達度を、CPU501がROM502等を用いて管理する。
【0019】
図4(a)は、記録ヘッドを記録装置100に装着し、黒インクを流し込んでからの経過日数と、寿命到達度の関係を示したグラフである。CPU501は、701で示した折れ線を使って、経過日数から寿命到達度を導出する。
図4(a)に示すように、経過日数が400日に至るまでは寿命到達度が緩やかに上昇するが、400日を超えてからは急激に上昇する。尚、記録装置100がROM502を用いて記憶する情報としては、
図4(a)に示したグラフそのものでもよいが、1日ごとの寿命到達度を示す情報であっても良い。また、例えば、
図4(b)に示した表のように3点の情報を記憶しておけば、線形補間することにより、折れ線701のような寿命到達度を導出することができる。
【0020】
図4(d)は、記録装置100のROM502に記憶されたインク色毎の寿命情報の一例を示す図である。寿命到達度と経過日数との対応関係が、3点について、インク色ごとに設定されている。記録装置100は、このような寿命情報に基づいて、
図4(c)に示すような折れ線701~404を導出する。
【0021】
図4(c)は、
図4(d)の寿命情報として記憶された3点を直線で結ぶことによって導出した、経過日数と寿命到達度の関係を示すグラフである。
図4(c)において、折れ線702はシアンインク、折れ線703はマゼンタインク、折れ線704は黄インクにそれぞれ対応する。折れ線701~704を見ると、寿命到達度が0%から10%に到達するまでの経過日数は各色で異なるが、寿命到達度が10%から100%に到達するまでの経過日数は100日で統一されている。言い換えると、寿命到達度が10%になった後では、折れ線の傾きが各インク色で等しく設定されている。そして、本実施形態では、寿命到達度が10%を超えてから所定の日数が経過した時点(例えば寿命到達度が50%になった時点)で、ユーザーに対しヘッド交換の予告を報知する。このようにすれば、交換予告してから交換に至るまでの日数をインクの種類によらず揃えることができる。上記は寿命到達度が50%になった時点で報知するとしたが、寿命到達度が50%以降であれば、交換予告してから交換に至るまでの日数を揃えるという目的を達成できる。また、ヘッドを交換する時間は印刷できない時間(=ダウンタイム)となるため、ヘッド交換直前の数値はユーザーにとって特に重要と考えられる。他の色のヘッド交換に合わせて少し前倒してヘッド交換することや、途中で止めずに連続して印刷するために少し前倒してヘッド交換することもユーザーにとって利便性が上がるケースがある。こうした要望に応えるために、交換予告してから交換に至るまでの日数や時間を揃えることは、とても重要である。また、ユーザーに対してより詳細に報知をするために、段階的にヘッド交換を予告しても良い。また、寿命到達度の数値そのものを表示しても良い。
【0022】
図5は、記録装置100のROM502に記憶可能な、インク色毎の寿命情報の別の例を示す図である。
図4(d)では各色について3点の対応関係を示したが、本例ではさらに多くの点の情報を記憶する場合を示す。本例において、寿命到達度が0%から55%に到達するまでの経過日数は各色で異なるが、寿命到達度が55%から100%に到達するまでの経過日数は50日で統一されている。本例の場合、例えば、寿命到達度が55%に達した段階でユーザーに交換を促がす報知を行うことで、ユーザーはインク色によらず、残り50日で交換を行うという意識付けを行うことができる。
【0023】
一方、本実施形態の記録ヘッド201~204は、自身の寿命に関する情報を記憶した記憶素子301~304を有する。記録ヘッドの記憶素子301~304は、書き換え可能な形態であることが好ましい。書き換え可能な記憶素子であれば、その記録ヘッド201~204が最初に記録装置に装着された日時や、搭載された記録装置100の履歴などを記録装置100によって書き込むことができる。但し、記録ヘッドは交換部品であるため、コスト低減のためにも記憶素子の容量は最低限に抑えられることが好ましい。記録ヘッド201~204においては、どのインク色の記録ヘッドとして記録装置100に装着されても良い状態で市場に流通しており、記録装置100に装着されインクが流し込まれた時に、記録装置100によって寿命が再設定される。
【0024】
記録ヘッドが記録装置100から取り外された後で別の記録装置100に取り付けられる場合もある。このような場合も想定して、本実施形態の記録装置100は、記録ヘッドの記憶素子301~304に記憶された情報(例えば、記録ヘッドの取り付け日など)に基づいて、寿命到達度と経過日数との新たな対応関係を導出する。具体的には、例えば、記録ヘッドに記憶されている、その記録ヘッドが最初に装着された日の情報と、今現在の時刻とを比較し、その記録ヘッドの経過日数を求めることができる。
【0025】
また、設計変更などによって、市場に出回る記録ヘッドの寿命が延命されることがある。例えば、インクの腐食によって記録ヘッドが劣化することに対し、腐食される部材の厚さを厚くする等の処置が製造工程で追加された場合、その記録ヘッドの寿命は従来品よりも長くなる。このような観点においても、記録ヘッドに、その記録ヘッドの寿命情報を記憶する記憶素子を備えておくことは有効である。
【0026】
以下、記録ヘッド201~204の記憶素子301~304に記憶される寿命情報、記録装置100のROM502に記憶される寿命情報、記録装置のCPU501が実行する処理について、説明する。
【0027】
まず、記録ヘッド201~204の記憶素子301~304と、記録装置100のROM501には、記録ヘッドの寿命となる経過日数が記憶されている。
図4及び
図5の例だと「黒=500、シアン=350、マゼンタ=300、黄=250」である。本実施形態では、これらの情報は、記録ヘッドや記録装置の設計変更によって変更される可能性を有している。各記録ヘッドにおいては、その記録ヘッドが、初めて記録装置に装着され、その装着位置が黒の位置であった場合、記録装置は「500日」をその記録ヘッドの寿命として設定する。同様に、その記録ヘッドが記録装置のシアンの位置に装着された場合は「350日」を、マゼンタの位置に装着された場合は「300日」を、黄の位置に装着された場合は「250日」を、その記録ヘッドの寿命として設定する。
【0028】
記録装置100においては、記録ヘッド201~204の記憶素子301~304に記憶された寿命情報と記録装置100のROM502に記憶された寿命情報とを照合する。そして、これらが同じ寿命を示す場合は、その寿命を当該記録ヘッドの寿命情報(寿命数値)として設定する。但し、記録ヘッドに取り付けられた記憶素子301~304は壊れることもある。このような場合、記録装置100は、記録装置100内のROM502に記憶された、寿命情報を初期設定としての寿命情報として決定する。
図4の例で言えば、「黒=500、シアン=350、マゼンタ=300、黄=250」である。また、記録装置100は、この寿命情報(寿命数値)を寿命到達度へ換算するためのアルゴリズムを保持する。例えば、
図4(c)に示す折れ線のアルゴリズムの場合は、寿命到達度を以下の式(1)及び式(2)で表すことができる。
【0029】
(寿命到達度[%])=経過日数÷(寿命-100)×10{(寿命)-100>経過日数の場合}・・・式(1)
(寿命到達度[%])=経過日数×0.9-(寿命-(0.1×寿命))+100{(寿命)-100≦経過日数の場合}・・・式(2)
そして、上記数式で表したアルゴリズムに基づいて寿命到達度を導出し、その寿命到達度に基づいて、ユーザーにヘッド交換を促せばよい。
【0030】
次に、記録ヘッドの記憶素子に記憶されている寿命と、記録装置に保持されている寿命とが異なる場合について説明する。また、これ以降の説明では、便宜上、記録ヘッド201の記憶素子301を例に説明するが、実際は記録ヘッド201~204の記憶素子301~304のすべてに適用されるものである。
【0031】
記録ヘッド201の記憶素子301に記憶されている寿命情報と、記録装置に保持されている寿命情報とが異なる場合とは、例えば、記録ヘッド201の設計変更によって記録ヘッドの寿命が延びた場合が挙げられる。また、例えば、記録装置が記録ヘッド201を保温する温度が変更されるなど、記録装置100側の設計変更に伴って記録ヘッド201の寿命が延びる場合もある。このような場合は、設計変更後の記録装置100のROM502に、設計変更後の寿命情報を記憶しておくことが望ましい。
【0032】
なお、記録装置100のROM502には、旧寿命(設計変更前の寿命)と新寿命(設計変更後の寿命)の両方を記憶しておいてもよい。また、設計変更後の記録ヘッド201の記憶素子301においても、設計変更前の寿命と設計変更後の寿命が記憶されていても良い。いずれにしても、CPUは、記録装置100のROM502に記憶されている寿命と、記録ヘッド201の記憶素子301に記憶されている寿命とを比較し、より長い寿命を示す寿命情報を、その記録ヘッドの寿命情報として決定すればよい。そして、決定した新しい寿命に基づいて寿命到達度を導出すればよい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、記録装置100のROMに記憶されている寿命情報と、記録ヘッドの記憶素子に記憶されている寿命情報とに基づいて、記録ヘッドの寿命を適切に決定することができる。更に、決定された寿命と、記録装置100にて保持する寿命到達度を導出するためのアルゴリズムを用いることで、ユーザーへの交換予告をより正確に行うことができる。
【0034】
<実施形態2>
実施形態1では、記録ヘッド201が保持する寿命情報と記録装置100が保持する記録ヘッドの寿命情報とが異なる場合には、より寿命が長い方の寿命情報を新しい寿命情報として決定した。これに対し、本実施形態では、記録ヘッド201の記憶素子301に記憶された、優先情報に基づいて、寿命情報を決定する。
【0035】
記録ヘッド201は、ユーザー次第では寿命に到達する前に交換される可能性もある。このような場合、記録装置100側が、記録ヘッド201が交換された旨を把握していないと、正確な寿命を把握することができない虞がある。そこで、本実施形態では、いずれの寿命を優先するかを判定する優先情報を記録ヘッド201の記憶素子301に記憶しておく。そして、記録装置100のCPU501は、記憶素子301に記憶された寿命情報と優先情報とを取得し、取得した優先情報に基づいて新しい寿命を決定する。
【0036】
以上により、例えば記録ヘッドの交換が頻繁に行われる場合においても、記録ヘッドの寿命を優先する優先情報を記録ヘッドが有することにより、記録装置100は、記録ヘッドの寿命を優先することができ、正確な寿命到達度の導出を行うことができる。
【0037】
<実施形態3>
本実施形態では、記録ヘッド201が持つ寿命情報と、記録装置100が持つ寿命情報とを基に、記録装置100が有するテーブルを参照することで新しい寿命を決定する。
【0038】
図6は、記録装置100に記憶された、記録ヘッド201の寿命を決定するためのテーブルを示す図である。本テーブルには、記録ヘッド201が保持する記録ヘッドの寿命と、記録装置100が保持する記録ヘッド201の寿命との組み合わせに、新しい寿命が対応付けられている。本テーブルは、記録装置100が予め保持しておく情報である。組み合わせによって導出される新しい寿命は、記録ヘッド201が保証できる寿命として設定されるものであり、記録装置100のアップデート等に伴い更新されてもよい。
【0039】
図6に示すテーブル情報には、具体的に、記録装置100が保持する記録ヘッド201の寿命(経過日数)として「500日」、記録装置100側で設計変更があった場合の記録ヘッド201の寿命として「1000日」が記載されている。また、記録ヘッド201が保持する寿命(経過日数)として「=500日」、また記録ヘッド201側で設計変更があった場合の記録ヘッド201の寿命(経過日数)「>500日」が用意されている。記録装置のCPU501は、このようなテーブルを参照することにより、記録ヘッド201が保持する寿命情報と記録装置100が保持する寿命情報との組み合わせに応じて、基に新しい寿命を決定すれば良い。例えば、記録装置100および記録ヘッド201の両者で設計変更が行われ、記録装置100が保持する寿命が「1000日」、記録ヘッド201の記憶素子301が保持する寿命が500日より大きかった場合を考える。この場合、CPU501は、テーブルを参照し新しい寿命を「1400」と導出することができる。新しい寿命を導出したら、新しい寿命と寿命到達度を決定するアルゴリズムとを用いて寿命到達度を決定することができる。
【0040】
尚、ここでは、記録ヘッド201、または記録装置100の設計変更が1回行われる例を取り上げたが、設計変更の回数が今後も増えることが見込まれる場合がある。そのような場合には、変更される寿命の数値それぞれに対応したテーブルを用意しても良いが、寿命の値を因子とするアルゴリズムを記録装置100が保持し、アルゴリズムを用いて寿命到達度を決定してもよい。
【0041】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、記録ヘッドの寿命を、記録装置に装着しインクを流し込んでからの経過日数として説明した。しかしながら、寿命は他の要素で定義しても良い。例えば、記録ヘッドの寿命は、記録ヘッドを使用してからの総吐出回数としてもよい。この場合であっても、総吐出回数を用いて寿命到達度を導出することはできる。
【0042】
また、実施形態1にて説明したアルゴリズムでは、
図4(a)に示すような折れ線に基づいて、寿命到達度を導出する形態で説明した。しかし、アルゴリズムの形態はこれに限らない。例えば、吐出回数と寿命到達度との関係を傾きが一定の線形関係で表すような形態があってもよい。また、吐出回数と寿命到達度との関係が緩やかなカーブを描くような非線形な関係で表わす形態があってもよい。
【0043】
本開示は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0044】
また、本開示は以下の構成を含む。
(構成1)
着脱可能な記録ヘッドの寿命に関する第1寿命情報を記憶する第1記憶手段と、
前記第1記憶手段から前記第1寿命情報を取得し、かつ、前記記録ヘッドが保持する第2記憶手段から前記記録ヘッドの第2寿命情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記第1寿命情報および前記第2寿命情報を基に、前記記録ヘッドの第3寿命情報を決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
(構成2)
前記第1寿命情報と前記第2寿命情報とがともに同じ寿命を示す場合、前記決定手段は、前記同じ寿命を前記第3寿命情報として決定することを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成3)
前記第1寿命情報と前記第2寿命情報とが異なる寿命を示す場合、前記決定手段は、前記第1寿命情報と前記第2寿命情報のうち、より長い寿命を示す寿命情報を前記第3寿命情報として決定することを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成4)
前記第2記憶手段には、前記第2寿命情報と、前記第1寿命情報および前記第2寿命情報のいずれを優先するかを示す優先情報が記憶されており、
前記決定手段は、前記第1寿命情報と前記第2寿命情報とが異なる寿命を示す場合、前記優先情報に従って前記第3寿命情報を決定することを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成5)
前記記録装置は、前記第1寿命情報と前記第2寿命情報との組み合わせと、前記第3寿命情報とを対応付けたテーブルを記憶する第3記憶手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記第1寿命情報と前記第2寿命情報とが異なる数値を示す場合、前記テーブルに従って、前記第3寿命情報を決定することを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成6)
前記記録装置は、前記決定手段により決定した第3寿命情報を基に、前記記録ヘッドが寿命に達するまでの到達度を導出する導出手段をさらに備えることを特徴とする構成2乃至5のいずれか一項に記載の記録装置。
(構成7)
前記記録装置は、前記導出した前記到達度を基に前記記録ヘッドの交換を促がす報知を行う報知手段をさらに備えることを特徴とする構成6に記載の記録装置。
(構成8)
前記導出手段は、前記記録装置が有するアルゴリズムを用いることにより、前記第3寿命情報に基づいて前記到達度を導出することを特徴とする構成6に記載の記録装置。
(構成9)
前記第1寿命情報、前記第2寿命情報、及び前記第3寿命情報は、前記記録ヘッドを前記記録装置に装着してからの吐出回数の上限を示す情報であり、
前記アルゴリズムは、前記吐出回数と前記到達度との線形関係を示す情報であることを特徴とする構成8に記載の記録装置。
(構成10)
前記第1寿命情報、前記第2寿命情報、及び前記第3寿命情報は、前記記録ヘッドを前記記録装置に装着してからの吐出回数の上限を示す情報であり、
前記アルゴリズムは、前記吐出回数と前記到達度との非線形な関係を示す情報であることを特徴とする構成8に記載の記録装置。
(構成11)
前記第1寿命情報、前記第2寿命情報、及び前記第3寿命情報は、前記記録ヘッドを前記記録装置に装着してからの経過日数の上限を示す情報であり、
前記アルゴリズムは、前記経過日数と前記到達度との線形関係を示す情報であることを特徴とする構成8に記載の記録装置。
(構成12)
前記第1寿命情報、前記第2寿命情報、及び前記第3寿命情報は、前記記録ヘッドを前記記録装置に装着してからの経過日数の上限を示す情報であり、
前記アルゴリズムは、前記経過日数と前記到達度との非線形な関係を示す情報であることを特徴とする構成8に記載の記録装置。
(構成13)
前記第1寿命情報は、前記記録装置の設計変更によって変更されることを特徴とする構成1乃至12のいずれか一項に記載の記録装置。
(構成14)
前記第2寿命情報は、前記記録ヘッドの設計変更によって変更されることを特徴とする構成1乃至13のいずれか一項に記載の記録装置。
(構成15)
着脱可能な記録ヘッドの寿命に関する第1寿命情報を第1記憶手段から取得するステップと、
前記記録ヘッドの寿命に関する第2寿命情報を、前記記録ヘッドが保持する第2記憶手段から取得するステップと、
前記第1寿命情報および前記第2寿命情報を基に前記記録ヘッドの第3寿命情報を決定する決定ステップと、
を備えることを特徴とする記録装置の制御方法。
(構成16)
記録装置で動作するプログラムであって、前記記録装置を、
着脱可能な記録ヘッドの寿命に関する第1寿命情報を記憶する第1記憶手段と、
前記第1記憶手段から前記第1寿命情報を取得し、かつ、前記記録ヘッドが保持する第2記憶手段から前記記録ヘッドの第2寿命情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記第1寿命情報および前記第2寿命情報を基に、前記記録ヘッドの第3寿命情報を決定する決定手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。