(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176391
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】釣用のパンツ
(51)【国際特許分類】
A01K 97/00 20060101AFI20241212BHJP
A41D 13/012 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A01K97/00 Z
A41D13/012
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094889
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 遥水
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進也
【テーマコード(参考)】
2B109
3B211
【Fターム(参考)】
2B109FA01
3B211AA05
3B211AB12
(57)【要約】
【課題】救命胴衣や釣用服等の着用感を低下させることがなく、見た目も良好な釣用のパンツを提供する。
【解決手段】本発明に係る釣用のパンツ1は、本体1Aと接続ベルト8A,8Bとを有している。接続ベルト8A,8Bは、一端側が救命胴衣50と接続可能であり、他端側が本体1Aの股間位置P1に対して胴回り開口2側に固定されていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と接続ベルトとを有する釣用のパンツであり、
前記接続ベルトは、一端側が救命胴衣又は釣用服と接続可能であり、他端側が前記本体の股間位置に対して胴回り開口側に固定されていることを特徴とする釣用のパンツ。
【請求項2】
前記接続ベルトは、前記本体に設けられたポケット内に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の釣用のパンツ。
【請求項3】
前記接続ベルトは、前記ポケットから突出する長さを有し、その端部には、前記救命胴衣又は釣用服に設けられた取付部材に接続可能な接続具が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の釣用のパンツ。
【請求項4】
前記ポケットの開口部は、縦方向、又は、後方側に向けて下降傾斜する方向に延在していることを特徴とする請求項2に記載の釣用のパンツ。
【請求項5】
前記接続ベルトのポケット内での固定位置は、ポケット深さの中間位置よりもポケットの開口側であることを特徴とする請求項2に記載の釣用のパンツ。
【請求項6】
前記ポケットの底部に水抜き用の孔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の釣用のパンツ。
【請求項7】
前記本体は、帯状部材の両端が固定されており、
前記接続ベルトは、前記帯状部材に対して巻き付け固定されていることを特徴とする請求項1に記載の釣用のパンツ。
【請求項8】
前記接続ベルトの本体に固定される位置は、本体の前方側であることを特徴とする請求項1に記載の釣用のパンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りに際して着衣される釣用のパンツに関し、詳細には、救命胴衣又は釣用服と連結される連結ベルトが装着された釣用のパンツ(釣用ズボン)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣人は、釣りをする際にレインウェアを着衣することがある。また、釣人は、磯釣りや船釣り等、前記レインウェアを着衣するに際して、所定の浮力を備えたべスト型の救命胴衣(フローティングベスト)や、各種の小物を収容可能な釣用ベストを併せて着衣することがある。
【0003】
前記救命胴衣は、釣人が海や川等、水中に落下した際、釣人が沈まないように一定の基準を満たした浮力体を備えており、釣人が落下した際には、救命胴衣が浮力体の浮力によって首から抜けないように構成されている。例えば、特許文献1には、前身頃及び後身頃に浮力体が収容されており、左右の前身頃の下端と後身頃の下端には、一対の股ベルトの端部が固定されている。前記股ベルトには、係止具(バックル)が設けられており、着衣時には、各股ベルトを股下に通した状態で係止具を固定することで(特許文献1の
図6参照)、釣人が水中に落下しても、救命胴衣が脱げないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した救命胴衣は、股ベルトを装着すると、着衣しているパンツがずり上がってしまい、パンツや股ベルトが足の付け根に食い込んで着用感が悪くなる。また、股間に股ベルトを通すと見た目が悪くなってしまう。
このため、従来の救命胴衣は、股ベルトを使用しないことが多くなり、したがって、釣人が水中に落下した際、救命胴衣が脱げ易くなって十分な効果が発揮できなくなってしまう。
【0006】
本発明は、救命胴衣や釣用服の着用感を低下させることがなく、見た目も良好な釣用のパンツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣用のパンツは、本体と接続ベルトとを有し、前記接続ベルトは、一端側が救命胴衣又は釣用服と接続可能であり、他端側が前記本体の股間位置に対して胴回り開口側に固定されていることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の釣用のパンツは、接続ベルトの一端側が固定されており、その接続ベルトの他端側を救命胴衣(釣用服)と接続するように構成されている。このため、従来の救命胴衣のように、着衣者の股を通す股ベルトを設ける必要がなくなり、着衣時の見た目が良くなる。また、接続ベルトは、股下を通して前側と後側を接続するのではなく、釣用パンツの本体と救命胴衣を接続することから、接続ベルトが本体や股下に食い込むことはなく、着用感の向上が図れる。
【0009】
なお、上記した接続ベルトは、釣用のパンツに一端側が固定され、他端側が救命胴衣、或いは、釣用服に接続される構成であれば良い。この場合、釣用服は、前記救命胴衣とは異なり、浮力を備えていない上着、例えば、釣用ベストや合羽(レインウェアの上着)等が含まれる。このような釣用服は、例えば、渓流釣りで着衣する際に、釣用のパンツと接続した状態で川の中に立ち込んでも、釣用服の着衣状態が安定し、裾がめくり上がってしぶきなどが入ることを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、救命胴衣や釣用服等の着用感を低下させることがなく、見た目も良好な釣用のパンツが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は釣用のジャケットと本実施形態に係る釣用のパンツを示す図、(b)は救命胴衣(フローティングベスト)の一例を示す図。
【
図2】釣用のパンツと救命胴衣との接続関係を説明する図。
【
図4】釣用のパンツのポケットの内部を示す図であり、(a)はポケットの内部を示す図、(b)はポケットの裏地部分を引き出して示す図。
【
図6】ポケット内での接続ベルトの固定状態を示す図。
【
図7】ポケットから接続ベルトを取り出した状態を示す図。
【
図8】ポケット内での接続ベルトの固定位置の変形例を示す図。
【
図10】釣用のパンツの着衣者と接続ベルトの位置関係を示す図。
【
図11】ポケットの大きさと接続ベルトのサイズ関係の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る釣用のパンツを含んだ釣用衣服(レインウェアとも称される)を示す図である。
図1(a)は、釣用のパンツ1及びジャケット(上着)70の一構成例を示しており、
図1(b)は、釣用のパンツ1と接続される救命胴衣50の一構成例を示す図である。
【0013】
図1(a)に示す釣用のパンツ1は、単独で販売されても良いし、ジャケット70と共にセットとして販売されるものであっても良い。また、
図1(b)に示す救命胴衣50は、各種の汎用品であっても良いし、前記釣用のパンツ1及びジャケット70と共にセット化されるものであっても良い。更に、釣用のパンツ1については、
図1に示す構成以外にも、長靴と一体化されたウェーダータイプであっても良いし、吊ベルトの無いズボンタイプであっても良い。
【0014】
以下、本実施形態に係る釣用のパンツ1の構成について説明する。
釣用のパンツ1の本体1Aは、防水性、通湿性のある生地で作成されており、胴回り開口2から下方に伸び、脚を挿通する左右の脚部3A,3Bを備えている。各脚部3A,3Bは、股間位置(股下基部)P1で左右に分かれており、その下方が股下部3、その上方が股上部4を構成している。
【0015】
本実施形態の本体1Aの胴回り開口2の縁部には、着衣者の両肩に掛ける公知の吊ベルト(サスペンダー)5が設けられており、着衣した際に釣用のパンツ1が脱げないように構成されている。この場合、吊ベルト5は、本体1Aに固定されていても良いし、着脱可能であっても良い。また、釣用のパンツ1が脱げないように、前記胴回り開口2に沿ってゴムベルトを配設した構成であっても良い。
【0016】
前記本体1Aの股上部4には、左右にポケット7A,7Bが設けられており、各ポケット内には、前記救命胴衣50と接続可能な接続ベルト8A,8Bが収納されている。前記各ポケットは、本体1Aとは別の袋状の部材を本体1Aの裏地に止着して構成されていても良いし、本体1Aの裏地に対して周囲を止着したシート材等で構成しても良い。
【0017】
以下、前記ポケット内に収納される接続ベルトの構成について、
図2から
図6を参照して説明する。なお、両ポケット内に収納される接続ベルトは、同一の構成であるため、左ポケット7A側に収納される接続ベルト8Aについて説明する。
【0018】
前記接続ベルト8Aは、ナイロン等の繊維材で形成された変形可能な帯状部9、及び、帯状部9の先端に設けられ、一般的に公知の長さ調整が可能な調整部10Aと接続具(雄側バックル)10Bとを備えている。前記帯状部9は、基端部がポケット内に固定されており、基端部から先側はフリー状態となっている。本実施形態では、両端12a,12bがポケットを構成する内部の生地1Bに止着された固定テープ(帯状部材)12の中間部12cに取り付けられている。具体的には、生地1Bとの間で隙間を有する中間部12cに帯状部9の先端部分を巻回し、重なり部分9aを縫着することで固定されている。
【0019】
前記固定テープ12は、接続ベルト(帯状部9)に強い引張力が作用しても、生地1Bから外れたり、損傷することがないように、ナイロン等の繊維材で形成され、生地1Bに対して縫着しておくことが好ましい。
【0020】
前記ポケット7Aの開口部7aは、縦方向(鉛直方向)、又は、後方側(尻側)に向けて下降傾斜する方向に延在しており、手が差し込み易いように構成されている。また、開口部7aには、内部に異物などが入らないように、開口/閉塞するファスナ7bを配設することが好ましい。このファスナ7bは、渓流やサーフに立ち込んだ際、水や海水が少しでもポケット内に入らないように、下から上にスライドさせて開口部を閉塞する構成にすることが好ましい。
【0021】
前記救命胴衣50には、前記帯状部9の接続具10Bが接続される被接続具(雌側バックル)15Bが設けられている。前記被接続具15Bは、救命胴衣50に固定された帯状部15Aの先端に設けられており、前記被接続具15Bを摘まんで任意の位置に移動し易いように構成されている。前記帯状部15Aの基部は、前記釣用パンツの両側のポケット7A,7Bに設けられた接続具10Bと接続し易いように、救命胴衣50の左右の前身頃51,52と後見頃53との境界部分で、腕を挿通させる左右の開口部51a,52aの下側にそれぞれ固定されている。
【0022】
これにより、釣用のパンツ1側の各帯状部9の接続具10Bを、それぞれの被接続具15Bに接続することで、釣用のパンツ1と救命胴衣50は、安定して一体的に連結された状態となる。また、前記帯状部15Aの基部を、腕を挿通させる左右の開口部51a,51bの下側に設けたことで、着衣者が落水した場合、救命胴衣50が脱げ難くなる。
なお、前記被接続具15Bは、前記救命胴衣50に対して直接、固定しても良く、その固定位置については限定されることはない。また、前記被接続具15Bを設けた帯状部15Aの基部の固定位置についても限定されることはない。
【0023】
本実施形態の両側のポケット7A,7Bに設けられた帯状部9は、ポケット内に完全に収納されて、使用時にポケットの開口部から摘まみ出せる程度の長さ、具体的には、開口部から10~20cm程度、飛び出る程度の長さに構成されている。
このように、帯状部9は、普段はポケット内に収容しておき、使用時に救命胴衣と接続できるので、救命胴衣50を着衣しない場合、接続具10Bが体に当たる等、不快感が生じることはない。なお、帯状部9は、予め各ポケット7A,7Bから突出した状態でポケット内に固定されていても良い。
【0024】
前記帯状部9は、15mm~25mm程度の幅W1があれば良く、前記固定テープ12は、30mm~40mm程度の幅W2があれば良い。このような幅であれば、接続強度を十分に確保することができ、各種の小物と共にポケット内に収納することが可能となる。
【0025】
また、前記接続ベルト8A,8Bの固定位置、詳細には、救命胴衣50が浮力を受けた際に接続ベルトの帯状部9に対して最も引張力が作用する固定位置P2は、前記本体1Aの股間位置P1に対して胴回り開口側(上側)となるように構成されている。
【0026】
次に、上記した構成の釣用のパンツの使用例について説明する。
着衣者が釣用のパンツ1を履いて、救命胴衣50を着衣した際、左右のポケット7A,7Bから上記した接続ベルト8A,8Bを引き延ばし、先端の接続具10Bを前記救命胴衣50の被接続具15Bに接続する。このような接続状態では、従来の救命胴衣の股ベルトのように、ベルト(帯状部)を股下に通す必要がないため、着用感が良くなり(従来は、股下にベルトが食い込んで着用感が悪い)、安全性も確保することができる。また、股下にベルトを通さないことから見た目も良くなる。
【0027】
前記接続ベルト8A,8Bのポケット内での固定位置P2は、本体1Aの股間位置P1に対して胴回り開口側(上側)にあるため、釣用のパンツ1の脚部3A,3Bが不必要にずり上がるようなこともなく、着用感が悪化することもない。
【0028】
さらに、前記接続ベルトの帯状部9は、ポケット内の生地1Bに両端が縫着された固定テープ12の中間部12cに巻き付け固定されているので、固定状態の安定化が図れると共に帯状部を上側に引っ張る力を固定テープの横方向の力に分散することができ、固定強度の向上が図れる。
【0029】
上記した固定テープ12のポケット内での固定位置、すなわち、接続ベルト8A,8Bの固定位置は、
図6に示すように、ポケット7A,7B内の中間位置付近(好ましくは中間位置よりもポケットの開口側)にすることが好ましい。
【0030】
このような固定位置にすることで、ポケット7A,7Bに収容した小物が底に溜まっても接続ベルトと干渉し難くなり、小物を取り出し易くなる。また、このような固定位置では、
図7に示すように、ファスナ7bを、開口部7aに対して上方に摺動して開口するように設けておくことで、帯状部9をポケットの下側から導出することができる。これにより、着衣した上着70の裾部分をめくり上げることもない。
なお、固定テープ12のポケット7A,7B内での固定位置は、
図8に示すように、底側であっても良い。また、帯状部9については、例えば、ポケットの任意の位置に導出部(帯状部の断面形状に対応する開口スリット)を設けておき、そこから外部に導出させる構成であっても良い。このような導出部を設けることで、救命胴衣50の被接続具15Bに合わせて最適な位置で帯状部9をポケットから導出して接続させることができる。
【0031】
前記ポケット7A,7Bには、
図9に示すように、底部に水抜き用の孔20を設けておいても良い。このような孔20を設けておくことで、雨や着水時にポケット内に溜まった水を排水することができる。また、上記したポケットの開口部は左右で非対称になっていても良い。
図9では、左ポケット7Aの開口部7a´が後方側(尻側)に向けて下降傾斜する方向に延在し、右ポケット7Bの開口部7aが縦方向(鉛直方向)に延在しており、両側で非対称であるものの、手を差し込みやすいように構成されている。
【0032】
また、前記接続ベルト8A,8Bの本体1Aに固定される位置(上記した固定位置P2)は、
図10に示すように、本体1Aの前方側にすることが好ましい。具体的には、着衣者の中央垂線Xに対して前方側にすることで、座って釣りをする際、帯状部や接続具が太ももの裏側に位置することがないため、着用感が良くなる。また、着衣者が落水しても、顔部分が仰向けになり易い(うつ伏せになり難い)ことから、安全性の向上が図れる。
【0033】
上記したポケット7A,7Bのサイズについては、釣用のパンツの大きさに応じて変更しても良い。例えば、
図11に示すように、サイズに関係なく、ポケットの高さHを一定値(例えば31.92cm)にしておき、その幅L1をサイズに応じて変更(例えば、Mサイズ23.62cm、Lサイズ24.62cm、XLサイズ25.62cm、2XLサイズ26.62cm、3XLサイズ27.62cm)しても良い。また、固定テープ12のサイズについては、その大きさに関係なく、一定の大きさであっても良い。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記した釣用のパンツの構成(素材や形状)については、限定されることはなく、前記接続ベルト8A,8Bが接続されるのは、救命胴衣50以外にも、一般的な釣用ベストであっても良い。また、前記接続ベルト8A,8Bは、帯状部9を短くする等、ポケット内で救命胴衣側に設けた接続ベルトと接続する構成であっても良い。或いは、帯状部を設けることなく接続具のみを設け、救命胴衣側に設けた接続ベルトの被接続具と接続するような構成であっても良い。
【0035】
更に、前記接続ベルト8A,8Bは、釣用のパンツの本体1Aに露出した状態で固定しても良い。この場合、釣糸や釣針が引っ掛かることがあるので、フラップなどで覆うように構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
1 釣用のパンツ
1A 本体
7A,7B ポケット
8A,8B 接続ベルト
9 帯状部
10B 接続具
15A 帯状部
15B 被接続具
50 救命胴衣
70 上着(ジャケット)