(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176394
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】透明表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20241212BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20241212BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241212BHJP
H10K 50/842 20230101ALI20241212BHJP
H10K 59/90 20230101ALI20241212BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241212BHJP
H10K 50/87 20230101ALI20241212BHJP
【FI】
G09F9/30 309
G09F9/30 308D
G09F9/30 365
G09F9/33
G09F9/00 304B
G09F9/00 343
H10K50/842
H10K59/90
H10K59/10
H10K50/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094892
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC05
3K107CC23
3K107CC24
3K107DD14
3K107EE42
3K107EE48
3K107EE62
3K107FF06
3K107FF15
5C094AA35
5C094BA03
5C094BA23
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA07
5C094DA12
5C094DB01
5C094EB02
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB04
5C094FB05
5G435AA12
5G435BB04
5G435BB05
5G435CC09
5G435GG44
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】表示パネルの透光性を維持し、かつ、冷却性能を有する透明表示装置を提供する。
【解決手段】透光性を有し、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを備え、表示部を有するアレイ基板2と、透光性を有し、第3主面と、第3主面の反対側の第4主面とを備えた透明基板5と、平面視において、第2主面と第3主面との相互間を接続する複数の封止材4と、透光性を有する冷却媒体の入口9aを規定する開口部8と、冷却媒体の出口9bを規定する開口部8と、アレイ基板2、透明基板5および複数の封止材4により囲まれた流路と、を有し、冷却媒体が、一方の開口部8から他方の開口部8に向かって流路を流れる、透明表示装置1を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを備え、表示部を有するアレイ基板と、
透光性を有し、第3主面と、前記第3主面の反対側の第4主面とを備えた透明基板と、
前記第1主面に対し垂直な方向において、前記第2主面と前記第3主面との相互間を接続する複数の封止材と、
冷却媒体の入口である第1開口部と、
前記冷却媒体の出口である第2開口部と、
前記アレイ基板、前記透明基板および前記複数の封止材により囲まれた流路と、
を有し、
前記冷却媒体は、透光性を有し、
前記流路は、前記第1開口部と前記第2開口部とを接続する、透明表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の透明表示装置において、
前記冷却媒体は、前記アレイ基板の前記第2主面に接して流れる、透明表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の透明表示装置において、
透光性を有し、前記第2主面と前記第3主面との相互間を接続する接続部をさらに有し、
前記接続部は、前記流路を規定している、透明表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の透明表示装置において、
前記アレイ基板の前記表示部は、支持基板と、前記支持基板上に形成され、前記アレイ基板の前記第1主面に沿って並ぶ複数の発光素子により構成されている、透明表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の透明表示装置において、
前記複数の発光素子のそれぞれは、発光ダイオードまたは有機発光ダイオードである、透明表示装置。
【請求項6】
請求項3記載の透明表示装置において、
前記アレイ基板は、支持基板と、前記支持基板上に形成された、複数の配線および前記アレイ基板の前記第1主面に沿って並ぶ複数の発光素子を有し、
平面視において、前記複数の配線の一部と前記接続部とが、互いに重なる領域で同一の方向に延在している、透明表示装置。
【請求項7】
請求項1記載の透明表示装置において、
前記冷却媒体を、前記第2開口部から前記透明表示装置の外部を通って前記第1開口部へ循環する循環流路と、
前記循環流路に設けられた冷却部と、
をさらに有する、透明表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却機構を備えた透明表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過率の高い回路基板上に微細な自発光素子(例えば発光ダイオード)を複数並べて構成される透明表示装置がある。このような透明表示装置は反射または拡散を用いないため光の損失が少なく、高輝度を実現できる。
【0003】
特許文献1(特開2003-124671号公報)には、ノート型パーソナルコンピュータのディスプレイケース内であってディスプレイの裏側に放熱パイプを配置し、放熱パイプ内を流れる冷却水によりディスプレイを冷却することが記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2016-119362号公報)には、透明有機ELパネルの裏面に金属細線を格子状に形成して、当該金属細線を透明な放熱シートで被うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-124671号公報
【特許文献2】特開2016-119362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板上に自発光素子が配列された透明表示装置において高輝度の表示を行う場合、素子自身および基板回路の発熱が問題になる場合がある。すなわち、素子の温度上昇による発光効率の低下、または、高温による素子若しくは回路へのダメージ発生などが起こり得る。
【0007】
温度上昇を防ぐ対策として、ヒートシンクなどを用いて発熱部を冷却する方法がある。しかし、当該透明表示装置の場合、発熱部は透明表示装置の表示部である。このため、CPU(Central Processing Unit)の冷却などに用いられるヒートシンクのような非透明な放熱機構を採用することができない。
【0008】
本発明の目的は、透明表示装置の性能を向上させることにある。
【0009】
その他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
一実施の形態である透明表示装置は、透光性を有し、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを備え、表示部を有するアレイ基板と、透光性を有し、第3主面と、前記第3主面の反対側の第4主面とを備えた透明基板と、平面視において、前記第2主面と前記第3主面との相互間を接続する複数の封止材と、透光性を有する冷却媒体の入口を規定する第1開口部と、前記冷却媒体の出口を規定する第2開口部と、前記アレイ基板、前記透明基板および前記複数の封止材により囲まれた流路と、を有し、前記冷却媒体が、前記第1開口部から前記第2開口部に向かって前記流路を流れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る透明表示装置を示す模式的斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る透明表示装置のアレイ基板を示す平面図である。
【
図3】実施の形態1に係る透明表示装置の1つの画素を示す平面図である。
【
図4】実施の形態1に係る透明表示装置の画素回路を示す回路図である。
【
図5】実施の形態1に係る透明表示装置の複数の画素を模式的に示す平面図である。
【
図6】実施の形態2に係る透明表示装置を示す平面図である。
【
図8】実施の形態2に係る透明表示装置の製造方法を示す断面図である。
【
図9】
図8に続く透明表示装置の製造方法を示す断面図である。
【
図10】
図9に続く透明表示装置の製造方法を示す断面図である。
【
図11】実施の形態2の変形例1に係る透明表示装置の製造方法を示す断面図である。
【
図12】
図11に続く透明表示装置の製造方法を示す断面図である。
【
図13】実施の形態2の変形例2に係る透明表示装置の製造方法を示す平面図である。
【
図14】
図13に続く透明表示装置の製造方法を示す平面図である。
【
図15】比較例に係る透明表示装置の製造方法を示す平面図である。
【
図16】
図15に続く透明表示装置の製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一または関連する符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
本願でいう平面形状とは、平面視における対象物の形状を指す。ここでいう平面視とは、対象物の特に大きい面である主面に対し垂直な方向から対象物を見る場合の位置関係である。
【0015】
また、ある要素について、RGB(赤、緑、青)の各色に区別して説明する必要がある場合は、その要素を示す符号の後に、R、GまたはBの記号を付して区別する。ただし、その要素について、RGBの各色に区別して説明する必要がない場合は、その要素を示す符号のみを用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
<透明表示装置の構成>
図1を参照して、本実施の形態に係る透明表示装置1について説明する。
図1は、本実施の形態に係る透明表示装置を示す模式的斜視図である。
【0017】
図1に示すように、透明表示装置1は、アレイ基板2と、透明基板5と、アレイ基板2と透明基板5との相互間を接続する封止材4とを備えている。
【0018】
アレイ基板2は、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを備えている。また、アレイ基板2は支持基板を有しており、支持基板の主面上には、トランジスタと、配線および絶縁膜を含む配線層と、それらの上の発光素子3とが設けられている。
【0019】
複数の発光素子3は、例えば赤色に発光する発光素子3R、緑色に発光する発光素子3G、および、青色に発光する発光素子3Bに分けられる。3つの発光素子3R、3Gおよび3Bは、まとまって配置されており、1つの画素Pixを構成している。言い換えれば、1つの画素Pixは3つの発光素子3R、3Gおよび3Bにより構成されている。支持基板の主面上には、このような画素PixがX方向およびY方向において行列状に複数並んでいる。つまり、複数の発光素子3は、アレイ基板2の第1主面および第2主面のそれぞれに沿って並んでいる。アレイ基板2は、支持基板と、上述したトランジスタ、配線層および発光素子3とを含んでいる。本願でいう主面は、いずれもX-Y平面に沿うものであり、この主面に対する垂直な方向(法線方向)はZ方向である。
【0020】
X方向およびY方向は、互いに直交する方向である。ただし、X方向は、Y方向と直交しないで交差してもよい。透明基板5は、第3主面と、第3主面の反対側の第4主面とを備えている。X方向およびY方向のそれぞれに対して直行する方向であるZ方向において、アレイ基板2の第2主面と透明基板5の第3主面とは対向している。すなわち、アレイ基板2と透明基板5とは、第1主面、第2主面、第3主面および第4主面のそれぞれに対し垂直な方向(Z方向)において互いに重なっている。対向するアレイ基板2と透明基板5との間には固形物が形成されていない空間(流路)があり、当該空間をX方向で挟むように、2つの封止材4が形成されている。2つの封止材4のうちの1つは、アレイ基板2と透明基板5とのそれぞれのX方向における一方の端部同士を接続している。2つの封止材4のうちの他の1つは、アレイ基板2と透明基板5とのそれぞれのX方向における他方の端部同士を接続している。
【0021】
アレイ基板2、封止材4および透明基板5のそれぞれは、ここではY方向に延在している。平面視において、アレイ基板2および透明基板5の形状は長方形である。ただし、アレイ基板2および透明基板5はX方向に延在していてもよい。また、アレイ基板2および透明基板5はそれぞれの平面形状は長方形に限らず、正方形などであってもよい。
【0022】
透明表示装置1をY方向から見ると、上記空間は、順に接続されて環状となっているアレイ基板2、封止材4、透明基板5および封止材4により周囲を囲まれている。平面視において、当該空間はY方向に延在している。すなわち、アレイ基板2、2つの封止材4および透明基板5からなる透明表示装置1の形状は、中央に空洞を有する角筒形状である。当該空洞(空間)は、主にアレイ基板2を冷却するための冷却媒体(液体または気体)が通過する流路である。透明表示装置1は、Y方向における両端(両側の側面)のそれぞれに開口部8を有している。この2つの開口部8同士は流路により接続されている。すなわち、Y方向における一方の開口部8は、流路の入口9aを規定するものであり、Y方向における他方の開口部8は、流路の出口9bを規定するものである。各開口部8の周囲は、順に接続されて環状となっているアレイ基板2、封止材4、透明基板5および封止材4により構成されている。
【0023】
上記支持基板および透明基板5は、ガラス基板または可撓性を有する樹脂基板であり、いずれも透光性を有する。透明基板5の材料としては、ガラス、アクリルまたはサファイアなどの透明素材が使用できる。上記トランジスタは、例えばTFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)である。アレイ基板2は、TFT基板、配線基板またはバックプレーン基板と言い換えてもよい。アレイ基板2を構成する部分のうち、配線および発光素子3は透光性を有していないことが考えられるが、絶縁膜は透光性を有している。平面視において、アレイ基板2の第1主面に対する配線および発光素子3の面積は小さいため、アレイ基板2は全体として透光性を有している。
【0024】
流路に流す冷却媒体は透光性を有していれば気体でも液体でもよい。気体の冷却媒体としては、例えば乾燥空気または水素ガスが使用できる。液体の冷却媒体としては、例えば水などが使用できる。発光素子3は、アノード端子およびカソード端子を有する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)である。発光素子3は、例えば、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)であってもよい。
【0025】
したがって、冷却媒体を流路に含む透明表示装置1は、平面視において透光性を有している。このため、例えばアレイ基板2の第1主面側にいる観察者に視認される。観察者は、放出光と、背景光とを組み合わせて認識することができる。このように透明表示パネルを用いた観察者は、透明表示装置1を挟んで向こう側に位置する背景も視認できる。また、第1主面側に並ぶ複数の画素Pixを例えば選択的に発光させることで、透明表示装置1の表面(表示パネル)に画像を表示できる。このとき、観察者は表示画像と背景とを重ね合わせて視認することが可能である。なお、図を分かり易くするため、
図1ではアレイ基板2により隠れているアレイ基板2の一部の輪郭並びに封止材4および透明基板5の輪郭を破線で示しているが、透明基板5の一部の輪郭の破線による図示を省略している。
【0026】
封止材4は、透明表示装置1の外周部に形成されるものであるが、透明表示装置1の全体の透光性を高めるため、透明な材料で構成されていることが望ましい。封止材4の材料には、冷却媒体である気体または液体を通さない材料を用いる。
【0027】
図1には示していないが、透明表示装置1の開口部8のそれぞれには、透明表示装置1の外部との接続用の循環流路(例えばパイプ)が、冷却媒体が漏れることのないように接続されている。透明表示装置1の流路の出口9bは、循環流路(外部流路)を介してポンプ6に接続されている。ポンプ6は、例えばパイプなどの循環流路を介して冷却部(冷却機構)7に接続されている。冷却部7は循環流路を介して透明表示装置1の流路の入口9aに接続されている。ポンプ6は、循環流路を介して冷却媒体を冷却部7、透明表示装置1およびポンプ6の順に循環(圧送)させる流体機械である。冷却部7は、例えば金属製の板を複数並べたヒートシンクであり、または、当該ヒートシンクに送風を行うファンを備え、当該ヒートシンクにより冷却媒体を冷却するものである。また、冷却部7は、触媒を用いて冷却媒体を冷却するクーラーであってもよい。このように、循環流路にはポンプ6と冷却部7とが設けられている。循環流路は、冷却媒体を、出口9bから透明表示装置1の外部を通って入口9aへ循環するものである。
【0028】
ここでは、透明表示装置1の出口9bと冷却部7との間にポンプ6が接続されている構成について説明したが、透明表示装置1の入口9aと冷却部7との間にポンプ6が接続されていてもよい。
【0029】
透明表示装置1を構成する発光素子および基板回路(上記トランジスタおよび配線など)は発熱するため、アレイ基板2の第2主面に接して流れる冷却媒体により、透明表示装置1を冷却することができる。透明表示装置1の熱を奪った冷却媒体(例えば空気または水)は、ポンプ6により送出され、冷却部7で冷却され、再び透明表示装置1の冷却に用いられる。言い換えれば、冷却媒体は、出口9bから透明表示装置1の外部を通って入口9aへ循環する途中において、冷却部7により冷却される。冷却部7において冷却媒体の放熱を行うため、冷却媒体の温度が上昇し続けること、およびそれに伴って透明表示装置1の温度が過度に上昇することを防げる。
【0030】
次に、アレイ基板2の具体的な構造について、
図2~
図5を用いて説明する。
図2は本実施の形態に係る透明表示装置のアレイ基板を示す平面図である。
図3は本実施の形態に係る透明表示装置の1つの画素を示す平面図である。
図4は本実施の形態に係る透明表示装置の画素回路を示す回路図である。
図5は本実施の形態に係る透明表示装置の複数の画素を模式的に示す平面図である。
【0031】
図2に示すように、透明表示装置1は、アレイ基板2と、画素Pixと、駆動回路15と、駆動IC(Integrated Circuit)210と、カソード配線60と、を含む。アレイ基板2は、各画素Pixを駆動するための駆動回路基板であり、バックプレーンまたはアクティブマトリクス基板とも呼ばれる。アレイ基板2は、支持基板21、複数のトランジスタ、複数の容量および各種配線などを有する。特に図示しないが、アレイ基板2上には、駆動回路15および駆動IC210を駆動するための制御信号および電力を入力するためのフレキシブルプリント基板(FPC)などが接続されていてもよい。
【0032】
図2に示すように、透明表示装置1は、表示領域AAと、周辺領域GAとを有する。表示領域AAは、複数の画素Pixと重なって配置され、画像を表示する領域である。周辺領域GAは、複数の画素Pixと重ならない領域であり、表示領域AAの外側に配置される。
【0033】
複数の画素Pixは、支持基板21の表示領域AAにおいて、X方向およびY方向に配列される。X方向およびY方向は、支持基板21の主面に対して平行な方向である。
【0034】
駆動回路15は、駆動IC210または外部からの各種制御信号に基づいて複数のゲート線GL(
図4参照)を駆動する回路である。駆動回路15は、複数のゲート線GLを順次または同時に選択し、選択されたゲート線GLにゲート駆動信号を供給する。これにより、駆動回路15は、ゲート線に接続された複数の画素Pixを選択する。
【0035】
駆動IC210は、透明表示装置1の表示を制御する回路である。駆動IC210は、支持基板21の周辺領域GAにCOG(Chip On Glass)として実装される。これに限定されず、駆動IC210は、支持基板21の周辺領域GAに接続されたフレキシブルプリント基板やリジット基板の上に実装されてもよい。
【0036】
カソード配線60は、支持基板21の周辺領域GAに設けられる。カソード配線60は、表示領域AAの複数の画素Pixおよび周辺領域GAの駆動回路15を囲んで設けられる。複数の発光素子3のカソードは、共通のカソード配線60に電気的に接続され、基準電位(例えば、グランド電位)が供給される。より具体的には、発光素子3のカソード端子(図示しない)は、カソード電極(図示しない)およびカソード電源線LVSSを介して、カソード配線60に接続される。
【0037】
図3に示すように、1つの画素Pixは、複数の副画素49を含む。例えば、画素Pixは、第1副画素49Rと、第2副画素49Gと、第3副画素49Bとを有する。第1副画素49Rは、第1色としての原色の赤色を表示する。第2副画素49Gは、第2色としての原色の緑色を表示する。第3副画素49Bは、第3色としての原色の青色を表示する。
図3に示すように、1つの画素Pixにおいて、第1副画素49Rと、第2副画素49Gと、第3副画素49BとはX方向で並ぶ。
図1では、1つの画素Pixを構成する発光素子3がL字型に並ぶ構成を示したが、
図2に示すように第1副画素49R、第2副画素49Gおよび第3副画素49Bが直線状に並んでいてもよい。なお、第1色、第2色、第3色は、それぞれ赤色、緑色、青色に限られず、補色などの任意の色を選択することができる。以下において、第1副画素49Rと、第2副画素49Gと、第3副画素49Bとをそれぞれ区別する必要がない場合、副画素49という。
【0038】
第1副画素49R、第2副画素49Gおよび第3副画素49Bは、それぞれ、発光素子3R、発光素子3Gおよび発光素子3Bと、アノード電極23と、を有する。透明表示装置1は、第1副画素49R、第2副画素49Gおよび第3副画素49Bにおいて、発光素子3R、3Gおよび3B毎に異なる光を出射することで画像を表示する。発光素子3Rは、赤色の光を出射する。発光素子3Gは、緑色の光を出射する。発光素子3Bは、青色の光を出射する。
【0039】
発光素子3は、複数の副画素49の各々に設けられる。発光素子3は、平面視で、3μm以上、300μm以下程度の大きさを有するLEDチップである。厳密な定義ではないが、チップサイズが100μmを下回るものは、マイクロLED(micro LED)と呼ばれる。各画素にマイクロLEDを備える透明表示装置1は、マイクロLED表示装置とも呼ばれる。なお、マイクロLEDのマイクロは、発光素子3の大きさを限定するものではない。
【0040】
なお、複数の発光素子3は、4色以上の異なる光を出射してもよい。また、複数の副画素49の配置は、
図2に示す構成に限定されない。例えば、第1副画素49Rは第2副画素49GとX方向に隣り合っていてもよい。第1副画素49R、第2副画素49Gおよび第3副画素49Bは、三角格子状に配置されてもよい。また、第1副画素49R、第2副画素49Gおよび第3副画素49Bの、X方向での配置順も異なっていてもよい。
【0041】
図4は、画素回路を示す回路図である。
図4に示す画素回路は、支持基板21に設けられ、駆動信号(電流)を各発光素子3に供給する回路である。
図4に示すように、複数のゲート線GLは、それぞれX方向に延在し、複数の第1副画素49R、第2副画素49Gおよび第3副画素49Bに接続される。複数の第1信号線SL-1、第2信号線SL-2および第3信号線SL-3は、それぞれY方向に延在する。第1信号線SL-1は、Y方向に配列された複数の第1副画素49Rに接続される。第2信号線SL-2は、Y方向に配列された複数の第2副画素49Gに接続される。第3信号線SL-3は、Y方向に配列された複数の第3副画素49Bに接続される。なお、以下の説明では、第1信号線SL-1、第2信号線SL-2および第3信号線SL-3を区別して説明する必要がない場合には、単に信号線SLと表す。
【0042】
各副画素49は、それぞれ、2つのトランジスタと、1つの容量とを含む。具体的には、各副画素49は、駆動トランジスタDRTと、書込トランジスタSSTと、容量Csとを含む。
【0043】
各副画素49が有する複数のトランジスタは、それぞれn型TFTで構成される。ただし、これに限定されず、各トランジスタは、それぞれp型TFTで構成されてもよい。
【0044】
駆動トランジスタDRTのゲートは、書込トランジスタSSTのドレインに接続される。駆動トランジスタDRTのソースは、アノード電源線LVDDに接続される。駆動トランジスタDRTのドレインは、発光素子3のアノードに接続されている。発光素子3のカソードは、カソード電源線LVSSに接続され、基準電位が供給される。
【0045】
書込トランジスタSSTのゲートは、ゲート線GLに接続される。書込トランジスタS
STのソースは、信号線SLに接続される。書込トランジスタSSTのドレインは、駆動トランジスタDRTのゲートに接続されている。
【0046】
容量Csは、一端が駆動トランジスタDRTのゲートと書込トランジスタSSTのドレインとに接続され、他端が共通配線LCsに接続されている。共通配線LCsは、カソード電源線LVSSと電気的に接続され、基準電位が供給される。容量Csは、駆動トランジスタDRTの寄生容量とリーク電流とによるゲート電圧の変動を抑えるために、画素回路に付加されている。
【0047】
書込トランジスタSSTは、2ノード間の導通と非導通とを選択するスイッチング素子として機能する。駆動トランジスタDRTは、ゲートとドレインとの間の電圧に応じて、発光素子3に流れる電流を制御する電流制御素子として機能する。
【0048】
具体的には、駆動回路15が、複数のゲート線GLを選択し、選択されたゲート線GLにゲート駆動信号を供給する。ゲート駆動信号によりゲート線GLの電位がH(ハイ)レベルになると、書込トランジスタSSTがオンになる。これにより、信号線SLから供給される映像信号に基づいて容量Csに電荷が蓄積される。駆動トランジスタDRTのゲートドレイン間の電圧は、容量Csの電荷量に応じて決定される。
【0049】
駆動トランジスタDRTには、アノード電源線LVDDから供給されたアノード電源電位PVDDに基づいて電流が流れる。駆動トランジスタDRTは、ゲートドレイン間の電圧の電圧に応じた電流を、発光素子3に供給する。発光素子3は、この電流に応じた輝度で発光する。また、書込トランジスタSSTがオフになった後も、発光素子3には、駆動トランジスタDRTを介してアノード電源線LVDDから電流が供給される。
【0050】
次に、画素Pixの平面視での具体的な構成例について説明する。
図5は、複数の画素を模式的に示す平面図である。
図5では、表示領域AAに複数配列された画素Pixのうち、2行4列の8個の画素Pixを拡大して示している。具体的には、
図5に示すように、画素Pix(1、1)、Pix(2、1)、Pix(3、1)、Pix(4、1)は、X方向に配列される。また、画素Pix(1、1)、Pix(1、2)は、Y方向に配列される。画素Pix(2、1)、Pix(2、2)は、Y方向に配列される。画素Pix(3、1)、Pix(3、2)は、Y方向に配列される。画素Pix(4、1)、Pix(4、2)は、Y方向に配列される。なお、画素Pix(1、1)、Pix(2、1)、Pix(3、1)、Pix(4、1)、Pix(1、2)、Pix(2、2)、Pix(3、2)、Pix(4、2)を区別して説明する必要がない場合には、単に画素Pixと表す。
【0051】
複数の画素Pixは、それぞれ、発光素子3R(第1副画素49R)、発光素子3G(第2副画素49G)、発光素子3B(第3副画素49B)、第1信号線SL-1、第2信号線SL-2、第3信号線SL-3およびゲート線GLを有する。発光素子3Rは、第1信号線SL-1に電気的に接続される。発光素子3Gは、第2信号線SL-2に電気的に接続される。発光素子3Bは、第3信号線SL-3に電気的に接続される。
【0052】
本実施形態では、X方向に隣接する2つの画素Pixで、複数の発光素子3と、複数の信号線SL(信号線群SLG)とがひとまとまりに近接して配置される。隣接する一方の画素Pixと、他方の画素Pixとは、Y方向に平行な仮想線を対称軸として、反転するような位置関係で配置される。
【0053】
X方向に隣り合う2つの画素Pix(例えば、画素Pix(2、2)と画素Pix(3、2))は、X方向に隣り合う2つの信号線群SLGと、Y方向に隣り合う2つのゲート線GLとで囲まれた領域である。
【0054】
複数の画素Pixは、それぞれ、透光領域CAと、非透光領域NCAとを有する。透光領域CAは、所定の領域において、開口率が80%以上の領域である。すなわち、透光領域CAは、所定の領域の面積に対する、信号線SL、ゲート線GLなどの各種配線や、発光素子3に接続されたアノード電極23などと重ならない領域の割合が80%以上となる領域である。非透光領域NCAは、所定の領域において、開口率が80%よりも小さい領域である。すなわち、非透光領域NCAは、所定の領域の面積に対する、信号線SL、ゲート線GLなどの各種配線や、発光素子3に接続されたアノード電極23などと重ならない領域の割合が80%よりも小さい領域である。
【0055】
透明表示装置1は、非透光領域NCAの面積に比べて透光領域CAの面積が大きく設けられている。このため、発光素子3が発光しない画素Pixでは、透光領域CAを介してアレイ基板2の第1主面側から第2主面側の背景が視認され、また、アレイ基板2の第2主面側から第1主面側の背景が視認される。そして、本実施形態の透明表示装置1は、駆動IC210から映像信号が入力されると、画素Pixの発光素子3が映像信号に応じて発光する。そして、画素Pixで表示される画像は、背景とともに視認される。つまり、透明表示装置1は、表示領域AAの向こう側が透けて見える態様で用いられる、いわゆる透明ディスプレイである。
【0056】
次に、X方向に隣接する画素Pix(1、1)と画素Pix(2、1)に着目して、各画素Pixの構成の具体例を説明する。ここでは、X方向の一方(
図5の右側方向)を+X方向と表し、X方向の他方(
図5の左側方向)を-X方向と表す場合がある。同様に、Y方向の一方(
図5の上側方向)を+Y方向と表し、Y方向の他方(
図5の下側方向)を-Y方向と表す場合がある。
【0057】
信号線群SLGは、X方向に隣り合う複数の信号線SLを含む。具体的には、
図5の左側の画素Pix(1、1)(第1画素)に接続された3本の信号線SLと、その右側の画素Pix(2、1)(第2画素)に接続された3本の信号線SLとが、X方向に隣り合って配置され、ひとまとまりの信号線群SLGとして形成される。つまり、信号線群SLGは、1対の第1信号線SL-1、1対の第2信号線SL-2および1対の第3信号線SL-3を含む。信号線群SLGは、X方向で、第3信号線SL-3、第2信号線SL-2、第1信号線SL-1、第3信号線SL-3、第2信号線SL-2、第1信号線SL-1の順に配置される。左側の画素Pix(1、1)に接続された3本の信号線SLと、右側の画素Pix(2、1)に接続された3本の信号線SLとが、同じ配置関係でX方向に配列される。ただし、これに限定されず、信号線群SLGの配置は適宜変更してもよい。1つの信号線群SLGで、複数の信号線SLは、X方向に間隔を設けて配列される。
【0058】
複数の画素Pixのそれぞれにおいて、発光素子3R、3Gおよび3Bは、X方向に隣り合って配置され、信号線群SLGとゲート線GLとの交差部近傍に設けられる。具体的には、X方向で、信号線群SLGは、画素Pix(1、1)を構成する複数の発光素子3と、画素Pix(2、1)を構成する複数の発光素子3との間に設けられる。また、Y方向で、信号線群SLGと交差するゲート線GLは、画素Pix(1、1)を構成する複数の発光素子3と、画素Pix(2、1)を構成する複数の発光素子3との間に設けられる。
【0059】
画素Pix(1、1)を構成する発光素子3R、3Gおよび3Bは、順にX方向に配列される。発光素子3R、3Gおよび3Bは、信号線群SLGとX方向(-X方向)に隣り合って配置される。また、画素Pix(1、1)を構成する発光素子3R、3Gおよび3Bは、信号線群SLGと交差するゲート線GLの-Y方向に隣り合って配置される。
【0060】
画素Pix(2、1)を構成する発光素子3R、3Gおよび3Bは、順にX方向に配列され、信号線群SLGとX方向(+X方向)に隣り合って配置される。また、画素Pix(2、1)を構成する発光素子3R、3Gおよび3Bは、ゲート線GLの+Y方向に隣り合って配置される。画素Pix(1、1)の複数の発光素子3と、画素Pix(2、1)の複数の発光素子3とは、X方向で同じ配置関係で配列される。ただし、複数の発光素子3の配置の順番は、画素Pix毎に異なっていてもよい。
【0061】
発光素子3は、それぞれ、書込トランジスタSSTの半導体層71を介して、各信号線SLに接続される。また、発光素子3は、それぞれ、絶縁層を貫通するコンタクトホール内の導電性接続部を介して、アノード電源線LVDDに電気的に接続される。アノード電源線LVDDおよびカソード電源線LVSSは、ゲート線GLと重なって設けられ、X方向に延在する。なお、
図5では、図面を分かり易くするために、アノード電源線LVDDおよびカソード電源線LVSSを二点鎖線で表している。ゲート線GLは、支持基板21上に形成されており、ゲート線GL上にアノード電源線LVDDが形成され、アノード電源線LVDD上にカソード電源線LVSSが形成されている。
【0062】
画素Pix(3、1)および画素Pix(4、1)の構成は、画素Pix(1、1)および画素Pix(2、1)と同様である。つまり、X方向に隣接する2つの画素Pix毎に、複数の信号線SLが束ねて配置されて信号線群SLGが形成される。そして、X方向に隣接する2つの画素Pixをそれぞれ構成する複数の発光素子3はそれぞれの信号線群SLGに近接して配置される。また、画素Pix(2、1)の複数の発光素子3および画素Pix(3、1)の複数の発光素子3は、X方向に隣り合う信号線群SLGの間に配置される。
【0063】
以上に説明したように、アレイ基板2には、非透光領域NCAが存在し、信号線SL、ゲート線GLなどの各種配線、および発光素子3などは非透光な部分である。
【0064】
<本実施の形態の効果>
透明表示装置は、発光素子自身および基板回路の発熱が問題になる場合がある。特に、自発光素子を各画素に配置している透明表示装置は、アレイ基板全体において自発光素子が発熱するため、発光素子の温度上昇による発光効率の低下、または、高温による素子(発光素子またはトランジスタなど)若しくは回路へのダメージ発生などが起こり易くなる。温度上昇によるこのような問題を防ぐため、ヒートシンクなどを用いて発熱部を冷却する方法がある。
【0065】
しかし、金属製のヒートシンクは非透明であるため、透明であることが必須な透明表示装置に採用することはできない。例えば金属からなる非透明なパイプに水などの冷却媒体を流して表示パネルを冷却する方法もあるが、上記と同様に、非透明な部品を用いて表示パネルを冷却することは、透明表示装置の透光性を損なうため採用できない。
【0066】
ヒートシンクを設けない場合、発熱を抑えるために、発光素子の輝度を低下させる、または、熱源である発光素子の密度を低下させるなどの対策を採ることが考えられる。しかしその場合、透明表示装置に表示する画像の視認性および解像度などの性能が低下する。
【0067】
そこで、本実施の形態では、
図1に示すように、アレイ基板2の第2主面側(裏側)に透明基板5と封止材4とアレイ基板2とで囲んだ流路を構成している。当該流路に水などの冷却媒体を流すことで、透明表示装置1(主にアレイ基板2)を冷却することができる。さらに、平面視において互いに重なるアレイ基板2および透明基板5はいずれも透光性を有しており、流路を流れる冷却媒体も透明である。したがって、透明表示装置1の透光性を損なわず、かつ、透明表示装置1を冷却できる。よって、温度上昇による発光素子の発光効率の低下、および、高温による素子または回路へのダメージ発生を防げる。温度上昇の抑制が可能となるため、発光素子の輝度をさらに高めることも可能である。以上より、透明表示装置の性能を向上できる。
【0068】
(実施の形態2)
上記本実施の形態1では、冷却媒体が透明表示装置の右側の入口から左側の出口へ直線状に流れる構造について説明したが、冷却媒体の入口と出口とは、互いに平行な一対の側面のそれぞれに形成する必要はない。例えば、入口と出口とは同一の側面に形成されていてもよく、互いに垂直な2つの側面に形成されていてもよい。
【0069】
また、透明表示装置内の流路は一直線である必要はない。以下では、アレイ基板と透明基板との間に透明素材からなる壁を形成することで曲がりくねった流路を形成した構造について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係る透明表示装置を示す平面図である。
図7は、
図6のA-A線における断面図である。
図6および以後の説明で用いる
図14並びに
図16では、図を分かり易くするため、封止材4にハッチングを付している。
【0070】
図6および
図7に示すように、アレイ基板2と透明基板5との間には、封止材4の他に、透明素材からなる複数の接続部(板材、壁材、流路形成部)10を有している。アレイ基板2と透明基板5との間は接続部10により接続されている。つまり、接続部10および封止材4は、アレイ基板2の第2主面12と透明基板5の第3主面13とに接している。言い換えれば、接続部10および封止材4は、アレイ基板2と透明基板5との間に亘って形成されている。接続部10は透光性を有する材料からなり、当該材料には例えばシリコーンの一種であるPDMS(ジメチルポリシロキサン)などが使用可能である。
【0071】
接続部10は板状の形状を有しており、流路と他の流路とを隔てる壁として設けられている。平面視における接続部10の形状(レイアウト)は、直線状、90度に曲がる部分を有するL字型の形状または曲線状など、種々選択可能である。
図6では、L字型の接続部10も直線状の接続部10も、平面視における一端(一部)が、透明表示装置1aの外周部の封止材4に接している。これは、接続部10が封止材4から離間していることで、アレイ基板2と透明基板5との間の空間において冷却媒体が殆ど流れない領域が生じ、透明表示装置1aの温度にばらつきが生じることを防ぐためである。
【0072】
図7に示すように、接続部10はアレイ基板2の第2主面12に押し付けられているため、Z方向におけるアレイ基板2側の端部が、X-Y平面に沿う方向である横方向に広がるように変形している。接続部10同士は互いに離間しており、それらの間に流路が形成されている。封止材4は、ここではアレイ基板2の第2主面12の一部および透明基板5の第3主面13の一部だけでなく、アレイ基板2および透明基板5のそれぞれのX-Y平面に沿う方向における側面を覆っている。ただし、封止材4は当該側面を覆っていなくてもよい。また、封止材4の一部が、アレイ基板2の第1主面11の外周部または透明基板5の第4主面14の外周部を覆っていてもよい。
【0073】
接続部10がアレイ基板2と透明基板5との間に形成されていることで、流路は入口9aから出口9bまでの間に1回または複数回折れ曲がっており、冷却媒体は当該流路に沿って流れる。
図6では、透明表示装置1aのX方向における1つの側面に入口9aと出口9bとを形成している。
図6に矢印で示すように、入口9aから透明表示装置1aに入った冷却媒体は、順に-Y方向、+X方向、+Y方向、+X方向、-Y方向、-X方向に流れて、出口9bから透明表示装置1aの外に出る。ここでは、透明表示装置1aは第1方向に流れる流路と、第1方向とは異なる方向に流れる流路とを有しており、それらの流路同士の間を透明な接続部10により隔てている。すなわち、接続部10は流路を規定している。
【0074】
接続部10は透明素材ではあるが、観察者が視認可能である場合、透明表示装置1aの透光性を損なう虞がある。そこで、平面視において、接続部10を
図5に示す非透光な部分(例えば信号線SL、ゲート線GLなどの各種配線)と重ねて配置し、接続部10と当該部分とは、互いに重なった領域で同一方向に延在していてもよい。これにより、接続部10を設けることによる透明表示装置1aの透光性の低下を抑制できる。
【0075】
次に、
図8~
図10の断面図を用いて、本実施の形態の透明表示装置の製造方法について説明する。
【0076】
まず、
図8に示すように、アレイ基板2と透明基板5とを用意する。アレイ基板2は、支持基板上に画素回路および発光素子を有するものである。透明基板5は、第3主面13上に接続された複数の接続部10を備えている。接続部10は、例えば透明基板5の第3主面13上に型を密接させた状態で、当該型の空洞に例えば液状のPDMSを流し込むことで形成できる。接続部10は透明基板5ではなくアレイ基板2の第2主面12上に形成してもよい。接続部10の断面形状は矩形(例えば長方形)である。
【0077】
次に、
図9に示すように、アレイ基板2の第2主面12と、透明基板5の第3主面13とを対向させた状態で、アレイ基板2と透明基板5とを互いに押し付け合う。アレイ基板2と透明基板5とを互いに押し付け合うことで、アレイ基板2と透明基板5との間の接続部10はアレイ基板2と透明基板5との双方に密着する。このとき、接続部10は可撓性を有し、アレイ基板2に押し付けられることで変形する。これによりX-Y平面に沿う方向において、アレイ基板2側の端部の幅が、透明基板5側の端部の幅に比べて広くなる。このように接続部10が変形しており断面形状が矩形でなくなっていることは、接続部10がアレイ基板2と透明基板5とに密着していることを意味している。
【0078】
次に、
図10に示すように、接続部10がアレイ基板2と透明基板5との双方に接している状態で、X-Y平面に沿う方向におけるアレイ基板2および透明基板5のそれぞれの端部同士に接する封止材4を形成する。封止材4は平面視においてアレイ基板2および透明基板5のそれぞれの外周部近傍に形成する。ただし、アレイ基板2および透明基板5のそれぞれの外周部において封止材4を形成しない箇所を設けることで、
図6を用いて説明した入口9aおよび出口9bである2つの開口部8を形成する。封止材4を形成することで、アレイ基板2および透明基板5が互いに固定され、透明表示装置1aが略完成する。
【0079】
封止材4は、例えば液状の封止材4を硬化させることで形成できる。封止材4の形成は、例えば、アレイ基板2と透明基板5とを互いに押し付けた状態で行い、そのまま封止材4を硬化させる。これにより、接続部10がアレイ基板2と透明基板5との双方に密着した状態を維持できる。接続部10をアレイ基板2および透明基板5に密着させることで、接続部10とアレイ基板2または透明基板5との間の隙間から冷却媒体が漏れることを防げる。
【0080】
封止材4は、ここではアレイ基板2の第2主面12の一部および透明基板5の第3主面13の一部だけでなく、アレイ基板2および透明基板5のそれぞれのX-Y平面に沿う方向における側面を覆っている。ただし、封止材4は当該側面を覆っていなくてもよい。また、封止材4の一部が、アレイ基板2の第1主面11の外周部またはアレイ基板2の第4主面14の外周部を覆っていてもよい。
【0081】
<本実施の形態の効果>
本実施の形態では、接続部10を設けて流路を平面視において折れ曲がった複雑なパターンで形成することができる。これにより、アレイ基板2の第2主面12の全体に均等に冷却媒体を流すことができる。すなわち、第2主面12の所定の領域と他の領域とで意図せず冷却媒体の流れに差が生じることを防げるため、冷却効果のばらつきの発生を防げる。すなわち、冷却の効率を向上できる。
【0082】
また、冷却媒体の入口9aおよび出口9bの形成位置の自由度が高くなり、設計が容易となる。透明表示装置は、表示パネルの横に不透明な部分(枠)を設けると美的外観が損なわれることが考えられる。したがって、冷却媒体の入口9aおよび出口9bは、平面視における透明表示装置1aの1つの側面に集約することが好ましい場合がある。
【0083】
また、冷却媒体が流れる方向に対して垂直な方向における流路の幅が狭い流路と広い流路とを作り分けてもよい。この場合、幅が広い流路に比べ、幅が狭い流路では冷却媒体が高速で流れる。これにより、特に高温になり易い箇所を強く冷却し、かつ、温度上昇し難い箇所の冷却効果を意図的に弱めることができる。よって、局所的な温度上昇を防ぎ、透明表示装置1の全体の温度を一定に保てる。すなわち、透明表示装置1の温度にばらつきが発生することを防げる。
【0084】
<変形例1>
本実施の形態の変形例1について、
図11および
図12を用いて説明する。
【0085】
図8~
図10では、接続部10がアレイ基板2と透明基板5との双方に接している状態で封止材4を形成することについて説明したが、接続部10がそれらの基板のうち一方に接していなくても、封止材が硬化する際の収縮を利用して、接続部10を当該一方の基板に密着させてもよい。
【0086】
本変形例ではまず、
図8を用いて説明したように、アレイ基板2、透明基板5およびそれらの一方に接する接続部10を用意する。
【0087】
次に、
図11に示すように、X-Y平面に沿う方向におけるアレイ基板2および透明基板5のそれぞれの端部同士に接する封止材4aを形成する。このとき、接続部10がアレイ基板2および透明基板5のうち一方に接していてもよいが、当該一方の基板から離間していてもよい。封止材4aには、液状から固体へ硬化する際の収縮率が高い材料を用いる。
【0088】
次に、
図12に示すように、封止材4aを硬化させることで、本変形の透明表示装置1bを形成する。このとき、封止材4aは硬化時の収縮でZ方向における長さが短くなる。これにより、アレイ基板2および透明基板5が相互に近づくように力が働くため、接続部10はアレイ基板2および透明基板5の双方に密着する。接続部10をアレイ基板2および透明基板5に密着させることで、接続部10とアレイ基板2または透明基板5との間の隙間から冷却媒体が漏れることを防げる。
【0089】
このように封止材4aの収縮を利用して透明表示装置1bを形成することで、
図9を用いて説明したようにアレイ基板2と透明基板5とを相互に押し付ける工程およびそのための装置が不要となり、透明表示装置1bの製造工程が簡易化される。よって、透明表示装置1bの製造コストを低減できる。
【0090】
<変形例2>
以下では、接続部を表示パネルの外周部にも形成する場合について、
図13および
図14を用いて説明する。
【0091】
ここで、比較例として、アレイ基板と透明基板との間に接続部を形成した後、封止材を形成して、封止材および接続部を壁として有する流路を形成することについて説明する。
【0092】
比較例では、まず
図15に示すように、透明基板5の第3主面上に接続部10を形成する。ここで形成する1または複数の接続部10には、後に完成する透明表示装置において流路の最外周の壁を構成するものは含まれていない。
【0093】
次に、
図16に示すように、アレイ基板2(図示しない)と透明基板5とを互いに対向させて押し付け合うことでアレイ基板2に接続部10を密着させ、その状態で封止材4を形成する。これにより、透明表示装置1xを形成する。
【0094】
このとき、欠陥X1に示すように、流路の壁を構成する封止材4と接続部10とが意図せず離間する虞がある。このような欠陥X1は、封止材4が足りない場合、封止材4の粘性が足りない場合、または、封止材4の粘性が過度に高くて流れて行った場合などには、封すべき場所抜けが生じる。このような隙間が生じると予定外の流路が形成されるため、本来の流路に冷却媒体が流れ難くなり、十分な冷却効果が得られなくなる。
【0095】
また、欠陥X2に示すように、封止材4が不要な箇所に封止材4が入り込む虞がある。このような欠陥X2は、封止材4の量が多い場合、または、封止材4の粘性が低い場合などに生じる。封止材4が流路へ過度に侵入すると、流路が狭くなって冷却媒体の流れを阻害する問題、アレイ基板2の一部が冷却できない問題、または、流路が塞がれる問題などが生じ得る。
【0096】
また、欠陥X3に示すように、入口9aでも出口9bでもない場所に封止材4の開口部が形成される虞がある。このような欠陥X3は、欠陥X1と同様の理由で生じ得る。欠陥X3のような開口部が存在すると流路が密閉されず解放部が存在することとなるため、冷却媒体が漏れ出て十分な冷却効果が得られなくなる。
【0097】
そこで本変形例では、まず、
図13に示すように、透明基板5の第3主面上に接続部10を形成する。ここで形成する1または複数の接続部10には、後に完成する透明表示装置において流路の最外周の壁を構成するものを含む。つまり、平面視において、接続部10は、透明基板5またはアレイ基板2の外周部に沿って形成された部分であって、後に入口9aおよび出口9bのそれぞれに対応する少なくとも2つの開口部8a、8bを備えた部分を有している。また、接続部10は、平面視において、透明基板5またはアレイ基板2の外周部に沿って形成された当該部分に囲まれた内側に位置する部分も含んでおり、それらの部分同士は互いに接している。
【0098】
次に、
図14に示すように、アレイ基板2(図示しない)と透明基板5とを互いに対向させて押し付け合うことでアレイ基板2に接続部10を密着させ、その状態で封止材4を形成する。これにより、透明表示装置1cを形成する。なお、変形例1のように封止材4の硬化時の収縮を利用して接続部10をアレイ基板2と透明基板5とに密着させてもよい。これにより、本変形例の透明表示装置1cが形成される。
【0099】
ここで、封止材4は、平面視において、透明基板5またはアレイ基板2の外周部に沿って形成された部分である接続部10の外側に形成される。つまり、封止材4は、平面視において、透明基板5またはアレイ基板2の外周部に沿って形成された部分である接続部10よりも、透明基板5またはアレイ基板2のそれぞれの端部側に形成される。つまり、透明表示装置1cの流路を構成する壁は全て接続部10により構成される。この場合、封止材4はアレイ基板2と透明基板5との相互を固定するために用いられ、流路を形成するためには用いられない。したがって、封止材4は冷却媒体に接しない。
【0100】
平面視において、封止材4は、透明基板5またはアレイ基板2の外周部に沿って、接続部10と連続的に接している。接続部10は、透明基板5またはアレイ基板2の外周部に沿って形成された部分であって、入口9aおよび出口9bに対応する開口部8a、8bを備えている。
【0101】
これにより、封止材4が足りないなどの理由で流路に隙間が生じる欠陥X1は、発生しない。また、封止材4が多いなどの理由で流路に封止材4が入り込む欠陥X2は生じない。また、封止材4が足りないなどの理由で流路に開口部が生じる欠陥X3は、発生しない。よって、本変形例では冷却効果の低下を防げる。
【0102】
以上、実施の形態および代表的な変形例について説明したが、上記した技術は、例示した変形例以外の種々の変形例に適用可能である。例えば、上記実施の形態1、2では、発光素子3がLEDまたはOLEDである場合について説明したが、本実施の形態の表示パネルは、アレイ基板上に液晶層を有する液晶パネルであってもよい。その場合、例えば表示パネルの側面側(X方向またはY方向における外側)に光源が設置され、光源は液晶層に光を照射する。このとき、冷却媒体は、当該光源から表示パネルに伝導された熱、または画素回路から生じる熱を奪うことにより、透明表示装置を冷却する。
【0103】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、発光装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1、1a、1b、1c、1x 透明表示装置
2 アレイ基板
3、3B、3G、3R 発光素子
4、4a 封止材
5 透明基板
6 ポンプ
7 冷却部
8、8a、8b 開口部
9a 入口
9b 出口
10 接続部
Pix 画素
X1、X2、X3 欠陥