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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176398
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20241212BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02N11/00 A
B60R16/03 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094900
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】下池 昌弥
(57)【要約】
【課題】車両走行時においても効果的に発電することができる発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置11は、車両10に備えられて温度差を利用して発電する装置である。発電装置11は、空間部13と、発電部14と、開閉部15と、を具備する。空間部13は、車室12と車外との間に形成された空間である。発電部14は、車室12と空間部13との間に配置され、車室12と空間部13との温度差を利用して発電する機器である。開閉部15は、閉状態となることで空間部13を閉鎖し、開状態となることで車外と空間部13とを連通させる部位である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられて発電する発電装置であり、
車室と車外との間に形成された空間である空間部と、
前記車室と前記空間部との間に配置され、前記車室と前記空間部との温度差を利用して発電する発電部と、
閉状態となることで前記空間部を閉鎖し、開状態となることで前記車外と前記空間部とを連通させる開閉部と、を具備することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記空間部は、ルーフと前記車室との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記空間部の温度を計測する空間部温度センサと、
前記車外の温度を計測する車外温度センサと、
演算制御部と、を更に具備し、
前記演算制御部は、前記車室が前記車外よりも低温であることで生じる前記温度差を利用して前記発電部が発電している場合において、前記空間部温度センサにより計測した前記空間部の温度が、前記車外温度センサにより計測した前記車外の温度よりも低ければ、前記開閉部を開状態とすることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
演算制御部を更に具備し、
前記演算制御部は、前記車室が前記車外よりも高温であることで生じる前記温度差を利用して前記発電部が発電している場合は、前記開閉部を開状態とすることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項5】
前記開閉部は、車両前方側に配設された第1開閉部と、車両後方側に配設された第2開閉部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられる発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駆動源をバッテリとする電気自動車が登場している。係る電気自動車では、バッテリから発生する電力によりモータを駆動することで、車両を走行させる。更に、係る電気自動車では、車両搭載の電装品、車室空調装置も、バッテリから発生する電力により駆動される。
【0003】
しかしながら、電気自動車のバッテリは、一定の容量しか有していない。よって、長距離走行や車室空調装置の長時間使用など、消費電力が多い状況が続くと、バッテリ残量が急速に減少し充電が必要になる。また、電気自動車の充電には数時間が必要とされ、充電設備も充分には設置されていない。
【0004】
更に、電気自動車では、ナビゲーション、スマートフォンの充電等によっても電力が消費される。これらにより、バッテリ残量が減少し、運転中に電力が逼迫することもある。
【0005】
よって、電気自動車における電力事情を改善する発明が提案されている。
【0006】
特許文献1では、車両に搭載された太陽電池を透光性のカバーで覆い、空気流路を形成する。更には、特許文献1では、ルーフとリアパネルで空気取入口を作成し、フラップを用いて車室内外と連通させる切替え手段を設ける。これにより、低外気温時に太陽電池の温度上昇を抑えることができる。
【0007】
特許文献2では、車両に於いてゼーベック効果により発電することが記載されている。具体的には、特許文献2では、導電部材は、車両のルーフ部を貫通し、車室外の高温部と内側の低温部に位置する。更に、発電部で日光照射によりルーフ部の温度が上昇し、断熱材により車室内外が断熱される。その結果、温度差が生じ、ゼーベック効果により電位差が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04-356213号公報
【特許文献2】特開2016-215797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した各特許文献に記載された発明では、効率的に且つ安定的に発電する観点から改善の余地があった。
【0010】
具体的には、上記した特許文献に記載された発明では、太陽光発電またはゼーベック効果を用いて発電を行っているものの、発電を行う発電部は車体のルーフ等の露出部分に取り付けられていた。よって、外的要因に起因して、発電部における発電効率が低下する恐れがあった。例えば、車両走行時における走行風の影響により、発電効率か低下する恐れがあった。
【0011】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、車両走行時においても効果的に発電することができる発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態に係る発電装置は、車両に備えられて温度差を利用して発電する発電装置であり、車室と車外との間に形成された空間である空間部と、前記車室と前記空間部との間に配置され、前記車室と前記空間部との前記温度差を利用して発電する発電部と、閉状態となることで前記空間部を閉鎖し、開状態となることで前記車外と前記空間部とを連通させる開閉部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態に係る発電装置によれば、車室と車外との温度差を利用して発電することができ、発電された電気を車両で用いることで、例えば、車両の連続走行距離を延長することができる。また、開閉部を開状態または閉状態とすることで、発電部が配設される空間部と車室との温度差を大きくし、発電部により効果的に発電できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る発電装置を備えた車両を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る発電装置を備えた車両を部分的に示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る発電装置および車両の接続構成を示すブロック図である。
図4A】本発明の実施形態に係る発電装置の動作を示す断面図である。
図4B】本発明の実施形態に係る発電装置の動作を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態を示すグラフであり、濃色ルーフおよび車室の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る発電装置11および車両10を図面に基づき詳細に説明する。更に、以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0016】
図1は、発電装置11を備えた車両10を示す断面図である。
【0017】
車両10は、例えば、エンジン車、EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等である。本実施形態に係る発電装置11は、後述する発電部14により効果的に発電を行うため、エンジンを有さない車両10において、車両10の連続走行距離を延長する等の効果を奏することができる。
【0018】
発電装置11は、車両10の車体22に備えられ、車室12と車外との温度差を利用して発電する装置である。発電装置11の詳細は、図2等を参照して後述する。発電装置11により発電された電力は、例えば、ここでは図示しないバッテリに充電される。または、発電装置11により発電された電力は、ここでは図示しない機器、例えば車室空調装置等を動作させるために用いられても良い。
【0019】
車載空調装置25は、車室12を空調する機器である。車載空調装置25は、例えば、蒸気圧縮型冷凍サイクルにより、車室12を空調する。車載空調装置25は、車室12の室温が高温であれば、車室12を冷房する。一方、車載空調装置25は、車室12の室温が低温であれば、車室12を暖房する。後述するように、本実施形態の発電装置11は、車載空調装置25により空調される車室12と車外との温度差を用いて発電する。よって、消費エネルギが大きい車載空調装置25を運転させている場合であっても、バッテリの消費を抑えることができる。
【0020】
車外温度センサ17および車室内温度センサ23は、車両10に備えられたセンサである。車外温度センサ17は、車両10において日光が照射されない部分、例えば、車体22のバンパー開口部またはその近傍に配置され、車外の温度を計測する。車室内温度センサ23は、車室12に配置され、車室12の温度を計測する。
【0021】
図2は、発電装置11が配設された部分の車両10を示す断面図である。
【0022】
発電装置11は、温度差を用いて発電する装置である。発電装置11は、空間部13と、発電部14と、開閉部15と、を具備する。
【0023】
空間部13は、車室12と車外との間に形成された空間である。具体的には、空間部13は、ルーフ21と車室12との間に配置される。空間部13は、ルーフ21と、ルーフ21の下方に配置された空間部構成部材24との間に形成される、扁平空間である。空間部13の上面はルーフ21の下面が形成する。一方、空間部13の下面は、後述する空間部構成部材24の上面が形成する。係る構成により、後述するように、空間部13と車室12との温度差を利用し、ゼーベック効果により発電することができる。
【0024】
空間部構成部材24は、略トレイ形状を呈する板状の部材であり、ルーフ21の下方に配置される。空間部構成部材24は、熱交換する発電部14と車室12との間に配置されるため、熱伝導性に優れた材料が好ましい。空間部構成部材24を構成する材料としては、金属、セラミック、合成樹脂等を採用できる。空間部構成部材24の下面は、車室12に露出する。または、空間部構成部材24の下面は、車室12の天井を形成する、図示しない装飾板材により覆われる。
【0025】
ルーフ21は、車両10の最上部に配置される部位であり、更に、略平坦とされる部位である。よって、ルーフ21は、日射を受けることで高温となる部位を広く確保することができ、後述する発電に際して適した部位である。ルーフ21の色としては、太陽光の吸収率が高い暗色または濃色、例えば黒色が好ましい。ルーフ21の上面の色として暗色または濃色を採用することで、晴天時においてルーフ21の上面に日光が照射されることにより、ルーフ21の温度を高温にすることができる。この際、空間部13もルーフ21と同程度に高温とされる。よって、空間部13と車室12との温度差を大きくし、発電装置11の発電量を大きくできる。
【0026】
発電部14は、車室12と空間部13との間に配置され、車室12と空間部13との温度差を利用して発電する機器である。発電部14の上面は、空間部13に晒される。発電部14の下面は、空間部構成部材24の底面等を介して、車室12と熱的に結合する。発電部14としては、熱を電気に変換するゼーベック効果を用いた熱電発電素子を採用できる。この熱電発電素子は、上下面に温度差が生じると熱電変換材料から電圧が発生し、これにより電力が発生する。発電部14は、空間部13を構成する部材の底面、即ち空間部構成部材24の上面に密着する。発電部14が発電した電力は、例えば、ここでは図示しないバッテリや電装品に供給される。
【0027】
開閉部15は、閉状態となることで空間部13を閉鎖し、開状態となることで車外と空間部13とを連通させる部位である。開閉部15は、車両前方側に配設された第1開閉部151と、車両後方側に配設された第2開閉部152と、を有する。
【0028】
第1開閉部151は、空間部13の前端側においてルーフ21と連続する部材である。第1開閉部151は、車両10の幅方向に沿って長手方向を有する細長い板状部材である。第1開閉部151の車両幅方向に沿う長さは、空間部13または発電部14と同等程度である。第1開閉部151の開閉動作は、回動によるものでも良いし、スライドによるものでも良い。ここでは、第1開閉部151は回動動作により開閉する。即ち、第1開閉部151の前端部が、車体22に対して回動可能に接続され、当該回動は第1モータ26により駆動される。換言すると、第1開閉部151は、空間部13の前端部分に形成されたルーフ21の開口を開閉する部位である。
【0029】
第2開閉部152は、空間部13の後端側においてルーフ21と連続する部材である。第2開閉部152は、車両10の幅方向に沿って長手方向を有する細長い板状部材である。第2開閉部152の車両幅方向に沿う長さは、空間部13または発電部14と同等程度である。第2開閉部152の開閉動作は、回動によるものでも良いし、スライドによるものでも良い。ここでは、第2開閉部152は回動動作により開閉する。即ち、第2開閉部152の後端部が、車体22に対して回動可能に接続され、当該回動は第2モータ27により駆動される。換言すると、第2開閉部152は、空間部13の後端部分に形成されたルーフ21の開口を開閉する部位である。
【0030】
空間部温度センサ16は、空間部13の内部における空気の温度を計測するセンサである。
【0031】
係る構成の発電装置11により発電することができる。例えば、夏期に於いてルーフ21に日光が照射する場合、ルーフ21の上面は、100℃程度の高温となる。よって、空間部13の内部温度も同程度の温度となる。一方、車室12の温度は、ルーフ21の上面よりも低温である。特に、前述した車載空調装置25により車室12を冷房した場合、車室12の室内温度は、例えば、25℃程度である。係る場合、発電部14の上面と、発電部14の下面との間で、約75℃の温度差がある。よって、発電部14は、この温度差に応じて、ゼーベック効果により効果的に発電できる。
【0032】
図3は、発電装置11および車両10の接続構成を示すブロック図である。
【0033】
演算制御部18は、例えば、CPU(Central processing unit)等の半導体素子から成る。演算制御部18は、記憶部としてRAM(Random Access Memory)、ROM(Read only memory)等の半導体記憶装置を含んでも良い。かかる記憶部は、プログラム、パラメータ等を記憶する。演算制御部18は、記憶部から読み出したプログラム、パラメータ等に基づき、後述する機能や方法を実行する。本実施形態では、演算制御部18は、各温度センサ等の出力に基づき、第1開閉部151および第2開閉部152を開閉するべく、第1モータ26および第2モータ27の回転動作を制御する。
【0034】
演算制御部18の入力側端子には、空間部温度センサ16、車外温度センサ17、走行検知センサ19および車室内温度センサ23が接続される。
【0035】
空間部温度センサ16は、図2に図示して説明した通りであり、空間部13の室内温度を示す情報を演算制御部18に伝送する。
【0036】
車外温度センサ17は、図1に図示して説明した通りであり、車外の室内温度を示す情報を演算制御部18に伝送する。
【0037】
走行検知センサ19は、車両10が走行しているか否か、および、走行時における車速を検知するセンサである。走行検知センサ19は、タイヤ等の回転速度または測位情報により、車両10の車速等を検知し、係る情報を演算制御部18に伝送する。
【0038】
車室内温度センサ23は、車室12の室内温度を検知し、係る情報を演算制御部18に伝送する。
【0039】
演算制御部18の出力側端子には、第1モータ26および第2モータ27が接続される。
【0040】
第1モータ26は、図2に示した通りであり、演算制御部18から入力される制御信号に基づき、第1開閉部151の回動を駆動するアクチュエータである。
【0041】
第2モータ27は、図2に示した通りであり、演算制御部18から入力される制御信号に基づき、第2開閉部152の回動を駆動するアクチュエータである。
【0042】
図4Aおよび図4Bを参照して、第1開閉部151および第2開閉部152の開閉状況を説明する。図4Aおよび図4Bでは、車両10が走行することで発生する走行風20の流れを矢印で示す。
【0043】
図4Aは、開閉部15が閉状態の場合の、発電装置11の動作を示す断面図である。ここでは、前述した演算制御部18の指示に基づき、第1開閉部151および第2開閉部152は閉状態とされる。この場合、空間部13は閉鎖状態となり、車両10の停車時においても、車両10の走行時においても、車外から空間部13に空気は導入されない。即ち、車両10が走行することで発生する走行風20は、空間部13には導入されず、ルーフ21の上面に沿って後方に流れる。
【0044】
図4Bは、開閉部15が開状態の場合の、発電装置11の動作を示す断面図である。ここでは、前述した演算制御部18の指示に基づき、第1モータ26および第2モータ27は、第1開閉部151および第2開閉部152を、夫々開状態とする。この場合、空間部13は開放状態となり、空間部13の前方端部および後方端部は、第1開口部28および第2開口部29を介して、車外と連通する。よって、車両10が走行することで発生する走行風20の一部は、空間部13に導入され、空間部13の内部を流通する。
【0045】
上記した各図を参照して、夏期と冬期に分けて、各状態における発電装置11の動作を説明する。
【0046】
夏期に於いて、空間部温度センサ16で検知した空間部13の室内温度が、車外温度センサ17で検知した車外温度よりも高い場合、演算制御部18は、第1モータ26および第2モータ27を制御し、第1開閉部151および第2開閉部152を、図4Aに示す閉状態とする。このようにすることで、比較的に低温である外気が空間部13に進入することが抑止され、空間部13の温度低下を抑止できる。一方、夏期に於いては、車室12は車載空調装置25により冷房されている。前述した様に、空間部13の温度は約100℃であり、車室12の温度は約25℃である。よって、空間部13の室内温度と、車室12の室内温度との温度差を大きく確保でき、発電部14の発電量を大きく確保できる。これは、車両10の停車時および走行時においても共通である。
【0047】
一方、夏期に於いて、空間部温度センサ16で検知した空間部13の室内温度が、車外温度センサ17で検知した車外温度よりも低い場合、演算制御部18は、第1モータ26および第2モータ27を制御し、第1開閉部151および第2開閉部152を、図4Bに示す開状態とする。このようにすることで、比較的高温の外気が、開閉部15から空間部13に流動することで、空間部13の室内温度が高まる。一方、夏期に於いては、車室12は車載空調装置25により冷房されている。これにより、空間部13の室内温度と、車室12の室内温度との温度差を大きく確保でき、発電部14の発電量を大きく確保できる。これは、車両10の停車時および走行時においても共通である。特に、車両10の走行時においては、第1開閉部151が開状態と成ることで形成される第1開口部28から、空間部13の内部に、高温の外気が導入される。また、発電部14を加熱した空気は、第2開閉部152が開状態となることで形成される第2開口部29から、車外に放出される。よって、空間部13の内部を高温に保つことができ、これにより、発電部14の発電量を大きく確保できる。この際、第1開閉部151および第2開閉部152が、走行風20を良好にガイドすることで、走行風20の流通がスムーズになる。よって、空間部13の内部を、更に効果的に高温化することができる。
【0048】
また、冬期に於いては、図1に示すように、車載空調装置25により車室12を暖房している。よって、車室12は車外よりも高温である。一例として、車室12の室内温度は約25℃であり、車外温度は約5℃である。よって、図2を参照して、空間部13は車室12よりも低温となる。従って、発電部14の上面は、発電部14の下面よりも低温となり、ゼーベック効果による発電が行われる。このことから、発電部14は、冬期の停車時においても、冬期の走行時においても、係る温度差を用いて発電することができる。この場合、第1開閉部151および第2開閉部152は、開状態でも良いし、閉状態でも良い。
【0049】
ここで、冬期においては、ルーフ21の上面に日光が照射されると、ルーフ21が温められることにより空間部13の室内温度が上昇する。即ち、空間部13の温度は、外気温よりも高くなる。そのようになると、空間部13と、車室12との温度差が小さくなり、発電部14の出力が低くなることが考えられる。このような場合、演算制御部18は、図4Bに示す様に、第1モータ26および第2モータ27を制御し、第1開閉部151および第2開閉部152を開状態とする。また、演算制御部18は、前述した各センサの出力によらず、冬期においては、第1開閉部151および第2開閉部152を開状態とすることができる。
【0050】
そのようにすると、第1開閉部151および第2開閉部152が開状態と成ることで、第1開口部28および第2開口部29を介して、空間部13が車外と連通する。よって、空間部13の内部で加熱された空気が、第1開口部28および第2開口部29を介して、外部に放出される。これに伴い、低温である外気が第1開口部28および第2開口部29を介して、空間部13に導入される。この結果、空間部13の内部温度が低くなり、空間部13と車室12との温度差が大きくなる。よって発電部14の発電量を大きくできる。
【0051】
この際、車両10が走行中であれば、走行風20が第1開口部28から空間部13に導入され、空間部13を冷却した走行風20が第2開口部29から車外に吹き出される。よって、空間部13が更に好適に冷却され、空間部13と車室12との温度差が更に大きくなる。よって、発電部14の発電量を更に大きくできる。
【0052】
図5は、夏期の車両走行時に於ける、ルーフ21および車室12の温度変化を示すグラフである。このグラフでは、横軸は車両10の走行時間を示し、縦軸は温度を示す。また、ルーフ21の温度を実線で示し、車室12の室内温度を一点鎖線で示す。更に、開始から40分までは車両10の車速は時速40kmであり、40分から60分までは時速100kmであり、その後は停車してアイドリングしている状態である。
【0053】
車室12の室内温度は、最初は50℃程度であるが、車載空調装置25による冷房を行うことで、20℃程度で安定している。
【0054】
一方、ルーフ21の上面温度は、車両10が走行する当初は約100℃である。また、車両10が時速40kmで走行している間は、ルーフ21の上面温度は徐々に低下し、約60℃で安定する。また、車両10の車速が時速100kmとなると、ルーフ21の上面温度は更に低下し、45℃程度で安定する。一方、車両10が停車すると、ルーフ21の上面温度は再び上昇し、元の100℃程度となる。
【0055】
車両10の走行時においてルーフ21の温度が低下する理由は、走行風20によりルーフ21が冷却されるからである。また、車速が早くなると、ルーフ21の温度が更に低下する理由は、車速が大きくなると、更に高速化した走行風20によりルーフ21が冷却される程度が大きくなるからである。
【0056】
ここで、走行風20によりルーフ21が冷却されると、ルーフ21と車室12との温度差が小さくなり、前述した発電部14による発電量が小さくなることが考えられる。本実施形態では、大きな発電量を確保するために、ルーフ21と車室12との温度差が大きくなることが好ましい。そのため本実施形態では、図4Aを参照して、空間部温度センサ16で計測した空間部13の室内温度が、車外の温度よりも高ければ、第1開閉部151および第2開閉部152を閉状態とする。このようにすることで、空間部13および発電部14が走行風20により冷却されることを抑制し、空間部13と車室12との温度差を大きく確保し、発電部14による発電量を大きくできる。一方、図4Bを参照して、空間部温度センサ16で計測した空間部13の室内温度が、車外の温度よりも低ければ、第1開閉部151および第2開閉部152を開状態とする。このようにすることで、空間部13に比較的高温の外気を導入し、空間部13と車室12との温度差を大きく確保し、発電部14による発電量を大きくできる。
【0057】
以下に、前述した本実施形態から把握できる技術的思想を、その効果と共に記載する。
【0058】
本発明の発電装置は、車両に備えられて温度差を利用して発電する発電装置であり、車室と車外との間に形成された空間である空間部と、前記車室と前記空間部との間に配置され、前記車室と前記空間部との前記温度差を利用して発電する発電部と、閉状態となることで前記空間部を閉鎖し、開状態となることで前記車外と前記空間部とを連通させる開閉部と、を具備することを特徴とする。本発明の発電装置によれば、車室と車外との温度差を利用して発電することができ、発電された電気を車両で用いることで、例えば、車両の連続走行距離を延長することができる。また、開閉部を開状態または閉状態とすることで、空間部と車室との温度差を大きくし、発電部により効果的に発電できる。
【0059】
また、本発明の発電装置では、前記空間部は、ルーフと前記車室との間に形成されることを特徴とする。本発明の発電装置によれば、ルーフに照射される太陽光により空間部と車室との温度差が大きくなり、発電部からの発電量を大きくできる。
【0060】
また、本発明の発電装置では、前記空間部の温度を計測する空間部温度センサと、前記車外の温度を計測する車外温度センサと、演算制御部と、を更に具備し、前記演算制御部は、前記車室が前記車外よりも低温であることで生じる前記温度差を利用して前記発電部が発電している場合において、前記空間部温度センサにより計測した前記空間部の温度が、前記車外温度センサにより計測した前記車外の温度よりも低ければ、前記開閉部を開状態とすることを特徴とする。本発明の発電装置によれば、車外から空間部に高温の空気を導入することができ、空間部と車室との温度差を大きくし、発電部からの発電量を大きくできる。
【0061】
また、本発明の発電装置では、演算制御部を更に具備し、前記演算制御部は、前記車室が前記車外よりも高温であることで生じる前記温度差を利用して前記発電部が発電している場合は、前記開閉部を開状態とすることを特徴とする。本発明の発電装置によれば、比較的温度が低い車外の空気を空間部に導入することで、空間部の内部の空気が日照により加熱することが抑制され、空間部を車室に対して低温にすることができる。よって、発電部からの発電量を大きくできる。
【0062】
また、本発明の発電装置では、前記開閉部は、車両前方側に配設された第1開閉部と、車両後方側に配設された第2開閉部と、を有することを特徴とする。本発明の発電装置によれば、第1開閉部および第2開閉部を同時に開状態にすることで、車両走行時において、第1開閉部から空間部に高温の空気を取り入れ、第2開閉部から空間部の空気を車外に放出できる。よって、走行時において、空間部と車室との温度差を大きくし、発電部の発電量を大きくできる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0064】
例えば、図1を参照して、本実施形態ではルーフ21に発電装置11を配設したが、車体22の他の部位に発電装置11を配設することもできる。例えば、車体22のボンネット等に発電装置11を配設することもできる。
【符号の説明】
【0065】
10 車両
11 発電装置
12 車室
13 空間部
14 発電部
15 開閉部
151 第1開閉部
152 第2開閉部
16 空間部温度センサ
17 車外温度センサ
18 演算制御部
19 走行検知センサ
20 走行風
21 ルーフ
22 車体
23 車室内温度センサ
24 空間部構成部材
25 車載空調装置
26 第1モータ
27 第2モータ
28 第1開口部
29 第2開口部



図1
図2
図3
図4A
図4B
図5