IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本化薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガス発生器 図1
  • 特開-ガス発生器 図2
  • 特開-ガス発生器 図3
  • 特開-ガス発生器 図4
  • 特開-ガス発生器 図5
  • 特開-ガス発生器 図6
  • 特開-ガス発生器 図7
  • 特開-ガス発生器 図8
  • 特開-ガス発生器 図9
  • 特開-ガス発生器 図10
  • 特開-ガス発生器 図11
  • 特開-ガス発生器 図12
  • 特開-ガス発生器 図13
  • 特開-ガス発生器 図14
  • 特開-ガス発生器 図15
  • 特開-ガス発生器 図16
  • 特開-ガス発生器 図17
  • 特開-ガス発生器 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176402
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B60R21/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094907
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 智之
(72)【発明者】
【氏名】清水 潤
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 貴幸
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054DD11
3D054DD17
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】樹脂成形部からなる保持部を備えるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図る。
【解決手段】ガス発生器1は、ハウジングと点火器40と保持部30と雄型コネクタ130とを備える。点火器40を保持する保持部30は、ハウジングの底板部の外面に固着した外側被覆部を含む樹脂成形部からなる。外側被覆部は、凹状部35を含む雌型コネクタ34を有する。雄型コネクタ130は、凹状部35に差し込まれる部分の周面に係止突起136を含む。凹状部35は、内周面に係止凹部35a1を含み、内底面が平面状である。雌型コネクタ34の外部に露出する露出表面でありかつ凹状部35を取り囲むように位置する軸方向端面34aに、雄型コネクタ130の凹状部35への差し込み方向と直交する方向における雄型コネクタ130の向きを規制する向き規制用突起37が設けられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部および底板部と、ガス噴出口が設けられた筒状の周壁部とを含み、ガス発生剤が収容された燃焼室を内部に有するハウジングと、
前記ガス発生剤を燃焼させるための点火薬が装填された点火部、および、当該点火部に接続された端子ピンを有する点火器と、
前記底板部に設けられ、前記点火器を保持する保持部と、
前記点火器に接続される雄型コネクタとを備え、
前記底板部は、前記天板部側に向けて突設されるとともに、前記天板部側の端部に棚板部が設けられてなる突状筒部を有し、
前記棚板部には、開口部が設けられ、
前記点火器は、前記点火部が前記棚板部よりも前記天板部側に位置しかつ前記端子ピンが前記開口部に挿通された状態で前記保持部によって保持されることにより、前記底板部に対して組付けられ、
前記保持部は、前記開口部を閉塞するとともに、前記底板部の内面および外面の各々の少なくとも一部を覆う樹脂成形部からなり、
前記樹脂成形部は、前記点火部に固着するとともに、前記開口部に隣接する部分の前記底板部の前記内面に固着した内側被覆部と、前記突状筒部を規定する部分の前記底板部の前記外面に固着した外側被覆部とを含み、
前記外側被覆部は、前記突状筒部の軸方向に沿って外部に向けて露出する凹状部を含む雌型コネクタを有し、
前記雄型コネクタは、前記凹状部に対して差し込み可能であり、
前記雄型コネクタの前記凹状部に差し込まれる部分の周面には、係止突起が設けられ、
前記凹状部の内周面には、前記係止突起を係止可能な係止凹部が設けられ、
前記凹状部の内底面は、平面状であり、
前記雌型コネクタのうちの外部に向けて露出する露出表面であってかつ前記凹状部を取り囲むように位置する軸方向端面に、前記雄型コネクタの前記凹状部への差し込み方向と直交する方向における前記雄型コネクタの向きを規制するための向き規制用突起が設けられている、ガス発生器。
【請求項2】
前記雄型コネクタは、当該雄型コネクタが前記凹状部に差し込まれた状態において前記雌型コネクタの前記軸方向端面の一部に対して対向する対向部を有し、
前記端子ピンは、一対のピンである第1ピンおよび第2ピンからなり、
前記雄型コネクタは、前記一対のピンの各々を受け入れ可能な一対の第1端子刃および第2端子刃からなり、
前記第1端子刃に前記第1ピンが対応しかつ前記第2端子刃に前記第2ピンが対応した向きで前記雄型コネクタが前記凹状部に差し込まれる場合に、前記向き規制用突起が前記対向部に干渉しないことにより、前記雄型コネクタの前記凹状部に対する差し込みが可能になり、
前記第1端子刃に前記第2ピンが対応しかつ前記第2端子刃に前記第1ピンが対応した向きで前記雄型コネクタが前記凹状部に差し込まれる場合に、前記向き規制用突起が前記対向部に干渉することにより、前記雄型コネクタの前記凹状部に対する差し込みが不能となる、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記雌型コネクタの前記軸方向端面のうち、前記向き規制用突起が設けられた部分と異なる位置に一対の回転防止用突起が設けられ、
前記第1端子刃に前記第1ピンが対応しかつ前記第2端子刃に前記第2ピンが対応した向きで前記雄型コネクタが前記凹状部に差し込まれる際に、前記一対の回転防止用突起が前記対向部を挟み込むように位置することで前記雄型コネクタの回転を防止する、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記雄型コネクタが前記凹状部に差し込まれた状態において、前記雌型コネクタと前記雄型コネクタとによって挟み込まれることで圧縮し、これにより前記雌型コネクタと前記雄型コネクタとの間に生じる隙間を埋めることで前記凹状部の内部の空間を外部に対して液密に封止する弾性部材からなるシール部が、前記雄型コネクタに設けられている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に装備される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。
【0003】
ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニットからの通電によって点火器を着火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる機器である。点火器としては、ガス発生器が有する樹脂成形部としての保持部によって保持されるものがある。
【0004】
コントロールユニットからの点火器への通電は、たとえば、点火器とコントロールユニットとを結線するためのハーネスの雄型コネクタが、保持部に設けられた有底略円筒状の雌型コネクタの部位に差し込まれることで点火器の端子ピンに接続されることによって実現される。このような通電方法が採用された文献としては、たとえば特開2017-185907号公報(特許文献1)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-185907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス発生器においては、雄型コネクタの周面に設けられた係止突起を、雌型コネクタの内周面に設けられた係止凹部に係止させるいわゆるスナップフィットにより、差し込まれた雄型コネクタを雌型コネクタにて保持する組付構造が採用される場合がある。
【0007】
このようにアンダーカットとしての係止凹部が設けられた雌型コネクタを備える保持部を射出成形によって製造する場合には、射出成形された保持部を型から取り出す際に、型に設けられた可動部をアンダーカットから移動させることが必要になる。
【0008】
ここで、雌型コネクタの内周面以外の部分にも他の形状が付与された場合、たとえば、雌型コネクタの内底面に突部が設けられた場合には、型の構成上、可動部の一部が他の部分に比して薄肉化されてしまうことになる。そのため、これに対して何らの手当ても行なわない場合には、型の強度を十分に担保できないという問題が生じてしまうことになる。
【0009】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、樹脂成形部からなる保持部を備えてなるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、点火器と、保持部と、雄型コネクタとを備えている。上記ハウジングは、天板部および底板部と、ガス噴出口が設けられた筒状の周壁部とを含み、ガス発生剤が収容された燃焼室を内部に有している。上記点火器は、上記ガス発生剤を燃焼させるための点火薬が装填された点火部、および、当該点火部に接続された端子ピンを有している。上記保持部は、上記底板部に設けられ、上記点火器を保持する。上記雄型コネクタは、上記点火器に接続される。上記底板部は、上記天板部側に向けて突設されるとともに、上記天板部側の端部に棚板部が設けられてなる突状筒部を有している。上記棚板部には、開口部が設けられている。上記点火器は、上記点火部が上記棚板部よりも上記天板部側に位置しかつ上記端子ピンが上記開口部に挿通された状態で上記保持部によって保持されることにより、上記底板部に対して組付けられている。上記保持部は、上記開口部を閉塞するとともに、上記底板部の内面および外面の各々の少なくとも一部を覆う樹脂成形部からなる。上記樹脂成形部は、上記点火部に固着するとともに、上記開口部に隣接する部分の上記底板部の上記内面に固着した内側被覆部と、上記突状筒部を規定する部分の上記底板部の上記外面に固着した外側被覆部とを含んでいる。上記外側被覆部は、上記突状筒部の軸方向に沿って外部に向けて露出する凹状部を含む雌型コネクタを有している。上記雄型コネクタは、上記凹状部に対して差し込み可能である。上記雄型コネクタの上記凹状部に差し込まれる部分の周面には、係止突起が設けられている。上記凹状部の内周面には、上記係止突起を係止可能な係止凹部が設けられている。上記凹状部の内底面は、平面状である。上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記雌型コネクタのうちの外部に向けて露出する露出表面であってかつ上記凹状部を取り囲むように位置する軸方向端面に、上記雄型コネクタの上記凹状部への差し込み方向と直交する方向における上記雄型コネクタの向きを規制するための向き規制用突起が設けられている。
【0011】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記雄型コネクタが、当該雄型コネクタが上記凹状部に差し込まれた状態において上記雌型コネクタの上記軸方向端面の一部に対して対向する対向部を有していてもよく、かつ、上記端子ピンが、一対のピンである第1ピンおよび第2ピンからなり、上記雄型コネクタが、上記一対のピンの各々を受け入れ可能な一対の第1端子刃および第2端子刃からなっていてもよい。その場合には、上記第1端子刃に上記第1ピンが対応しかつ上記第2端子刃に上記第2ピンが対応した向きで上記雄型コネクタが上記凹状部に差し込まれる場合に、上記向き規制用突起が上記対向部に干渉しないことにより、上記雄型コネクタの上記凹状部に対する差し込みが可能になり、上記第1端子刃に上記第2ピンが対応しかつ上記第2端子刃に上記第1ピンが対応した向きで上記雄型コネクタが上記凹状部に差し込まれる場合に、上記向き規制用突起が上記対向部に干渉することにより、上記雄型コネクタの上記凹状部に対する差し込みが不能となることが好ましい。
【0012】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記雌型コネクタの上記軸方向端面のうち、上記向き規制用突起が設けられた部分と異なる位置に一対の回転防止用突起が設けられていてもよい。その場合には、上記第1端子刃に上記第1ピンが対応しかつ上記第2端子刃に上記第2ピンが対応した向きで上記雄型コネクタが上記凹状部に差し込まれる際に、上記一対の回転防止用突起が上記対向部を挟み込むように位置することで上記雄型コネクタの回転を防止することが好ましい。
【0013】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記雄型コネクタが上記凹状部に差し込まれた状態において、上記雌型コネクタと上記雄型コネクタとによって挟み込まれることで圧縮し、これにより上記雌型コネクタと上記雄型コネクタとの間に生じる隙間を埋めることで上記凹状部の内部の空間を外部に対して液密に封止する弾性部材からなるシール部が、上記雄型コネクタに設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂成形部からなる保持部を備えてなるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係るディスク型ガス発生器の概略図である。
図2図1に示す保持部の底面図および断面図である。
図3】実施の形態に係る雄型コネクタの側面図、平面図、底面図および断面図である。
図4】雄型コネクタが雌型コネクタの凹状部に差し込まれた第1の態様を示す概略図である。
図5】雄型コネクタが雌型コネクタの凹状部に差し込まれた第2の態様を示す概略図である。
図6図1に示す保持部の製造過程を説明するための概略図である。
図7図1に示す保持部の製造過程を説明するための概略図である。
図8図1に示す保持部の製造過程を説明するための概略図である。
図9】比較例に係る保持部の底面図および断面図である。
図10】比較例に係る保持部の製造過程を説明するための概略図である。
図11】比較例に係る保持部の製造過程を説明するための概略図である。
図12】比較例に係る保持部の製造過程を説明するための概略図である。
図13】第1変形例に係る保持部の製造に用いられる型を説明するための概略図である。
図14】第1変形例に係る保持部と実施の形態に係る保持部とに生じるパーティングラインを説明するための概略図である。
図15】第2変形例に係る保持部の底面図である。
図16】第3変形例に係る保持部の底面図である。
図17】第4変形例に係る保持部の底面図である。
図18】第5変形例に係る保持部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るディスク型ガス発生器の概略図である。まず、図1を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1の構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1は、軸方向の一端部および他端部が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有している。ハウジングの内部に設けられた収容空間には、内部構成部品としての保持部30、点火器40、カップ状部材50、伝火薬56、ガス発生剤61、下部側支持部材70、上部側支持部材80、クッション材85およびフィルタ90等が収容されている。ハウジングの内部に設けられた収容空間には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
【0019】
ハウジングは、シェル部材としての下部側シェル10および上部側シェル20を含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20の各々は、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440MPa以上780MPa以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
【0020】
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と筒状部12とを有している。上部側シェル20は、天板部21と筒状部22とを有している。
【0021】
下部側シェル10の筒状部12の上端は、上部側シェル20の筒状部22の下端に挿入されることで圧入されている。さらに、下部側シェル10の筒状部12と上部側シェル20の筒状部22とが、それらの当接部またはその近傍において接合されることにより、下部側シェル10と上部側シェル20とが固定されている。下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
【0022】
これにより、ハウジングの周壁部のうちの底板部11寄りの部分は、下部側シェル10の筒状部12によって構成されており、ハウジングの周壁部のうちの天板部21寄りの部分は、上部側シェル20の筒状部22によって構成されている。また、ハウジングの軸方向の一端部および他端部は、それぞれ下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21によって閉塞されている。
【0023】
下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突設される突状筒部13が設けられている。突状筒部13は、保持部30を介して点火器40が固定される部位である。突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、筒部13aと、筒部13aの天板部21側の端部に設けられた棚板部13bとを有している。
【0024】
棚板部13bには、平面視した状態において非点対称形状(たとえばD字状、樽型形状、長円形状等)の開口部15が設けられている。開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。
【0025】
下部側シェル10の底板部11の中央部には、筒部13aと棚板部13bとによって規定される窪み部14が形成されている。窪み部14は、保持部30に、凹状部35を含む雌型コネクタ34を設けるためのスペースとなる部位である。
【0026】
点火器40は、火炎を発生させるためのものであり、点火部41と、上述した一対の端子ピン42とを備えている。点火部41は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体とを含んでいる。一対の端子ピン42は、点火薬を着火させるために点火部41に接続されている。なお、以下においては、一対の端子ピン42のうちの一方を第1ピン42aと称し、他方を第2ピン42bとも称する。
【0027】
点火部41は、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン42が挿通されてこれを保持する基部とを備えており、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン42の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
【0028】
抵抗体としては、一般にニクロム線等が利用される。点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび基部は、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0029】
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合に一般に2ミリ秒以下である。
【0030】
点火器40は、点火部41が棚板部13bよりも天板部21側に位置し、かつ、棚板部13bに設けられた開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態で、底板部11に対して組付けられている。
【0031】
詳細には、底板部11に設けられた突状筒部13の周囲には、樹脂成形部からなる保持部30が設けられている。点火器40は、保持部30によって保持されることにより、底板部11に固定されている。なお、保持部30およびその周辺の構成については、後において詳述することとする。
【0032】
底板部11には、突状筒部13、保持部30および点火器40を覆うようにカップ状部材50が組付けられている。カップ状部材50は、底板部11側の端部が開口した有底略円筒状の形状を有している。カップ状部材50は、その内部に伝火薬56が収容された伝火室55を含んでいる。カップ状部材50は、伝火室55が点火器40の点火部41に面することとなるように、ガス発生剤61が収容された燃焼室60内に向けて突出して位置するように配置されている。
【0033】
カップ状部材50は、上述した伝火室55を規定する頂壁部51および側壁部52と、側壁部52の開口端側の部分から径方向外側に向けて延設された延設部53とを有している。
【0034】
延設部53は、下部側シェル10の底板部11の内表面に沿って延びるように形成されている。詳細には、延設部53は、突状筒部13が設けられた部分およびその近傍における底板部11の内底面の形状に沿うように曲成された形状を有しており、その径方向外側の部分にフランジ状に延出する先端部54を含んでいる。
【0035】
延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と下部側支持部材70との間に配置されている。これにより、先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と下部側支持部材70とによって挟み込まれている。
【0036】
下部側支持部材70は、その上方に配置されたガス発生剤61、クッション材85、上部側支持部材80および天板部21によって底板部11側に向けて押し付けられた状態にある。そのため、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が下部側支持部材70によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。これにより、カップ状部材50の固定にかしめ固定や圧入固定を利用せずとも、カップ状部材50が底板部11から脱落することが防止される。
【0037】
カップ状部材50は、頂壁部51および側壁部52のいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室55を取り囲んでいる。このカップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬56が着火された場合に伝火室55内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
【0038】
そのため、カップ状部材50としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
【0039】
なお、カップ状部材50としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部52に開口を有し、当該開口を閉鎖するようにシールテープが貼着されたもの等を利用することも可能である。また、カップ状部材50の固定方法も、上述した下部側支持部材70を用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
【0040】
伝火室55に充填された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬56としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要である。そのため、伝火薬56としては、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO32等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
【0041】
伝火薬56は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬56の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
【0042】
ハウジングの内部の空間のうち、上述したカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間には、ガス発生剤61が収容された燃焼室60が位置している。詳細には、上述したように、カップ状部材50は、ハウジングの内部に形成された燃焼室60内に突出して配置されており、このカップ状部材50の側壁部52の外表面に面する部分に設けられた空間ならびに頂壁部51の外表面に面する部分に設けられた空間が燃焼室60として構成されている。
【0043】
また、ガス発生剤61が収容された燃焼室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ90が配置されている。フィルタ90は、円筒状の形状を有している。フィルタ90は、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されている。
【0044】
ガス発生剤61は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。
【0045】
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。詳細には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
【0046】
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
【0047】
添加剤としては、たとえばバインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、たとえば窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、たとえば金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0048】
ガス発生剤61の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ディスク型ガス発生器1が組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤61の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤61の形状の他にもガス発生剤61の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0049】
フィルタ90は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの等が利用できる。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用できる。
【0050】
また、フィルタ90として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
【0051】
フィルタ90は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ90中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却しかつ残渣が外部に放出されないようにするためには、燃焼室60内にて発生したガスが確実にフィルタ90中を通過するようにすることが必要である。なお、フィルタ90は、ハウジングの周壁部を構成する上部側シェル20の筒状部22および下部側シェル10の筒状部12との間で所定の大きさの間隙部28が構成されることとなるように、当該筒状部12,22から離間して配置されている。
【0052】
フィルタ90に対面する部分の上部側シェル20の筒状部22には、複数のガス噴出口24が設けられている。複数のガス噴出口24は、フィルタ90を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
【0053】
また、上部側シェル20の筒状部22の内周面には、上記複数個のガス噴出口24を閉鎖するようにシール部材としての金属製のシールテープ26が貼り付けられている。このシールテープ26としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ26によって燃焼室60の気密性が確保されている。
【0054】
燃焼室60のうち、底板部11側に位置する端部近傍には、下部側支持部材70が配置されている。下部側支持部材70は、環状の形状を有しており、フィルタ90と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と底板部11とに実質的に宛がわれて配置されている。これにより、下部側支持部材70は、燃焼室60の上記端部近傍において、底板部11とガス発生剤61との間に位置している。
【0055】
下部側支持部材70は、フィルタ90の底板部11側に位置する軸方向端部の内周面に当接するように立設された当接部72と、当該当接部72から径方向内側に向けて延設された底部71とを有している。底部71は、下部側シェル10の底板部11の内底面に沿って延びるように形成されている。詳細には、底部71は、突状筒部13が設けられた部分を含む底板部11の内底面の形状に沿うように折り曲げられた形状を有しており、その径方向内側の部分に立設された先端部73を含んでいる。
【0056】
下部側支持部材70は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の内部を経由することなくフィルタ90の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止するための流出防止手段として機能する。下部側支持部材70は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
【0057】
ここで、上述したカップ状部材50の延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と底部71とによって挟み込まれて保持されている。このように構成することにより、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が下部側支持部材70の底部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
【0058】
燃焼室60のうち、天板部21側に位置する端部には、上部側支持部材80が配置されている。上部側支持部材80は、略円盤状の形状を有しており、フィルタ90と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上部側支持部材80は、燃焼室60の上記端部近傍において、天板部21とガス発生剤61との間に位置している。
【0059】
上部側支持部材80は、天板部21に当接する底部81と、当該底部81の周縁から立設された当接部82とを有している。当接部82は、フィルタ90の天板部21側に位置する軸方向端部の内周面に当接している。
【0060】
上部側支持部材80は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の内部を経由することなくフィルタ90の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止するための流出防止手段として機能する。上部側支持部材80は、下部側支持部材70と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
【0061】
この上部側支持部材80の内部には、燃焼室60に収容されたガス発生剤61に接触するように環状形状のクッション材85が配置されている。これにより、クッション材85は、燃焼室60の天板部21側の部分において天板部21とガス発生剤61との間に位置することになり、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧している。
【0062】
クッション材85は、成形体からなるガス発生剤61が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものである。クッション材85は、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。
【0063】
次に、図1を参照して、上述した本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1の動作について説明する。なお、以下において説明する動作は、点火器40と外部電源としてのコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの一部位である後述する雄型コネクタ130が、保持部30の雌型コネクタ34の凹状部35に差し込まれることで点火器40に接続された後に行なわれる(図4参照)。
【0064】
本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。伝火室55に収容された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬56の燃焼によってカップ状部材50は破裂または溶融し、上述の熱粒子が燃焼室60へと流れ込む。
【0065】
流れ込んだ熱粒子により、燃焼室60に収容されたガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。燃焼室60にて発生したガスは、フィルタ90の内部を通過し、その際、フィルタ90によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ90によって除去されて間隙部28に流れ込む。
【0066】
ハウジングの内部の空間の圧力上昇に伴い、上部側シェル20に設けられたガス噴出口24を閉鎖していたシールテープ26が開裂し、当該ガス噴出口24を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。その際、複数個のガス噴出口24は、段階的に開放されることになり、噴出されたガスは、ディスク型ガス発生器1に隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開する。
【0067】
図2(A)は、図1に示す保持部の底面図である。図2(B)および図2(C)は、それぞれ図2(A)中に示すIIB-IIB線およびIIC-IIC線に沿った模式断面図である。次に、図2および前述の図1を参照して、本実施の形態に係る保持部30の詳細な構成について説明する。
【0068】
図1および図2に示すように、保持部30は、型を用いた射出成形(より特定的にはインサート成形)によって形成される樹脂成形部からなるものである。保持部30は、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15を経由して底板部11の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように絶縁性の流動性樹脂材料を底板部11に付着させてこれを固化させることによって形成される。
【0069】
保持部30は、下部側シェル10の底板部11の内表面の一部を覆う内側被覆部31と、下部側シェル10の底板部11の外表面の一部を覆う外側被覆部32と、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15内に位置し、上記内側被覆部31および外側被覆部32にそれぞれ連続する連結部33とを有している。
【0070】
保持部30は、内側被覆部31、外側被覆部32および連結部33のそれぞれの底板部11側の表面において底板部11に固着している。
【0071】
また、内側被覆部31は、点火器40の点火部41の下方端寄りの部分の側面および下面と、点火器40の端子ピン42の上方端寄りの部分の表面とのそれぞれに固着している。外側被覆部32は、端子ピン42の上方端寄りの部分の表面に固着している。
【0072】
これにより、開口部15は、一対の端子ピン42と保持部30とによって閉塞された状態となり、当該部分におけるシール性が確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。なお、開口部15は、上述したように平面視非点対称形状に形成されている。そのため、開口部15を連結部33で埋め込むことにより、これら開口部15および連結部33は、保持部30が底板部11に対して回転してしまうことを防止する回り止め機構としても機能する。
【0073】
内側被覆部31、外側被覆部32および連結部33には、これらを貫通するように一対の貫通孔36が設けられている。一対の貫通孔36は、一対の端子ピン42が挿通される部分である。
【0074】
外側被覆部32は、下部側シェル10の底板部11に設けられた窪み部14内に位置する雌型コネクタ34を有している。雌型コネクタ34は、突状筒部13の軸方向に沿って外部に向けて露出する凹状部35を含んでいる。
【0075】
凹状部35内には、点火器40の端子ピン42の下方端寄りの部分が露出して配置されている。凹状部35には、後述する雄型コネクタ130が差し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
【0076】
凹状部35の内周面35aには、雄型コネクタ130に設けられた係止突起136を係止可能な係止凹部35a1が複数設けられている。本実施の形態においては、同一形状の3つの係止凹部35a1が、保持部30の軸方向に沿って見た場合に120°の回転対称位置に配置されている。
【0077】
雌型コネクタ34の軸方向端面34aは、外部に向けて露出する露出表面であり、かつ、凹状部35を取り囲むように位置している。軸方向端面34aには、平面視略矩形状の向き規制用突起37が設けられている。また、軸方向端面34aのうち、向き規制用突起37が設けられた部分と異なる位置には、平面視略矩形状の一対の回転防止用突起38が設けられている。これら向き規制用突起37および一対の回転防止用突起38の詳細については、後述することとする。
【0078】
ここで、凹状部35の内底面35bは、平面状に構成されている。このように構成することにより、保持部30の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることが可能になるが、この点については後において詳述することとする。
【0079】
射出成形によって形成される保持部30の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において保持部30の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
【0080】
なお、点火器40は、保持部30の成形の際に、開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態とされ、この状態において点火器40と下部側シェル10との間の空間を充填するように上述した流動性樹脂材料が流し込まれる。これにより、点火器40は、保持部30を介して底板部11に固定される。
【0081】
また、保持部30によって覆われることとなる部分の底板部11の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェル10を用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部11の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させることにより、その形成が可能である。
【0082】
このようにすれば、底板部11と保持部30との間に硬化した接着剤層が位置することになる。そのため、樹脂成形部からなる保持部30をより強固に底板部11に固着させることが可能になる。したがって、底板部11に設けられた開口部15を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することが可能になる。
【0083】
底板部11に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を原料として含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
【0084】
図3(A)ないし図3(C)は、それぞれ実施の形態に係る雄型コネクタの側面図、平面図および底面図である。図3(D)は、図3(B)中に示すIIID-IIID線に沿った模式断面図である。次に、図3を参照して、本実施の形態に係る雄型コネクタ130の詳細な構成について説明する。
【0085】
図3(A)ないし図3(D)に示すように、雄型コネクタ130は、胴状の本体部131と、対向部132と、ケーブル133とを有している。雄型コネクタ130は、点火器40と外部電源としてのコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの一部位を構成するものである。
【0086】
本体部131は、雌型コネクタ34の凹状部35に差し込まれる部位である。対向部132は、本体部131が凹状部35に差し込まれた状態において雌型コネクタ34の軸方向端面34aの一部に対して対向する部位である。ケーブル133は、本体部131の軸方向に沿って見た場合に対向部132から外側に向かって延在している。
【0087】
本体部131は、端子ピン42を構成する第1ピン42aおよび第2ピン42bの各々を受け入れ可能な一対の第1端子刃131aおよび第2端子刃131bからなる。
【0088】
本体部131の周面131cには、周面131cから外側に向けて突出する係止突起136が設けられている。係止突起136は、雄型コネクタ130が凹状部35に差し込まれた状態において、凹状部35の内周面35aの係止凹部35a1に係止される。これにより、雄型コネクタ130は、係止突起136および係止凹部35a1からなるいわゆるスナップフィットにて雌型コネクタ34に組付けられることになる。
【0089】
係止突起136の数は、係止凹部35a1の数と同一である限りにおいては特にこれが制限されるものではなく、単数であってもよいし、複数であってもよい。本実施の形態においては、同一のフック形状の3つの係止突起136が、本体部131の軸方向に沿って見た場合に120°の回転対称位置に配置されている。
【0090】
本体部131の周面131cには、略円環状のシール部134が設けられている。シール部134は、凹状部35の内部の空間を外部に対して液密に封止するためのものである。シール部134の材質は、弾性を有するものであれば特にこれが制限されるものではない。本実施の形態においては、ゴム製のシール部134が用いられている。
【0091】
図4(A)は、雄型コネクタが雌型コネクタの凹状部に差し込まれた第1の態様を示す概略図であり、図4(B)は、図4(A)中のIVB-IVB線に沿った模式断面図である。図5(A)は、雄型コネクタが雌型コネクタの凹状部に差し込まれた第2の態様を示す概略図であり、図5(B)は、図5(A)中のVB-VB線に沿った模式断面図である。次に、図4および図5を参照して、本実施の形態における雌型コネクタ34に対する雄型コネクタ130の組付けについて説明する。
【0092】
図4に示すように、雄型コネクタ130は、その本体部131が雌型コネクタ34の凹状部35に差し込まれた状態で、本体部131の係止突起136と凹状部35の係止凹部35a1とのスナップフィットによって雌型コネクタ34に組付けられている。
【0093】
この状態において、一対の回転防止用突起38は、本体部131の軸方向に沿って見た場合に、対向部132を挟み込むようにこれに宛がわれている。これにより、雄型コネクタ130に外力等が印加された場合等において、雄型コネクタ130が回転することを効果的に防止することができる。また、一対の回転防止用突起38は、雄型コネクタ130が凹状部35に差し込まれる際に雄型コネクタ130の凹状部35への差し込みを案内するガイドとしても機能する。
【0094】
さらに、上記状態において、本体部131に設けられたシール部134は、雄型コネクタ130の対向部132と雌型コネクタ34の軸方向端面34aとによって挟み込まれることで圧縮している。このようにしてシール部134が対向部132と軸方向端面34aとの間に生じる隙間を埋めることにより、凹状部35の内部の空間を外部に対して液密に封止することが可能になる。その結果、点火器40とコントロールユニットとの結線が確実に行なわれることになる。
【0095】
ここで、上述したように、端子ピン42は、一対の第1ピン42aおよび第2ピン42bからなるとともに、本体部131は、一対の第1端子刃131aおよび第2端子刃131bからなる。
【0096】
そのため、雄型コネクタ130が凹状部35に差し込まれる態様としては、第1端子刃131aに第1ピン42aが対応しかつ第2端子刃131bに第2ピン42bが対応した向きで雄型コネクタ130が凹状部35に差し込まれる第1の態様(図4参照)と、第1端子刃131aに第2ピン42bが対応しかつ第2端子刃131bに第1ピン42aが対応した向きで雄型コネクタ130が凹状部35に差し込まれる第2の態様(図5参照)とが想定される。
【0097】
ここで、雄型コネクタ130の凹状部35への差し込み方向と直交する方向における雄型コネクタ130の向きは、これら第1の態様と第2の態様とで互いに180°異なり、ひいては、ケーブル133の引き出し方向もまた180°異なることになる。したがって、雌型コネクタ34に対する雄型コネクタ130の組付け時の作業性の観点からは、上記2つの態様のうちの一方の場合においてのみ上記組付けが可能となるように構成されることが望ましい。
【0098】
この点、本実施の形態においては、向き規制用突起37が、第1の態様においては対向部132に干渉しないものの(図4参照)、第2の態様においては対向部132に干渉することとなるように(図5参照)、雌型コネクタ34の軸方向端面34aの所定位置に設けられている。そのため、雄型コネクタ130は、第1態様においては凹状部35に対して差し込みが可能になり、第2態様においては凹状部35に対して差し込みが不能になる。
【0099】
このように構成することにより、雄型コネクタ130の凹状部35への差し込み方向と直交する方向における雄型コネクタ130の向きを向き規制用突起37によって規制することが可能になる。
【0100】
また、雌型コネクタ34の軸方向端面34aに向き規制用突起37および一対の回転防止用突起38が設けられている場合には、これらの位置や形状等を特定することにより、ディスク型ガス発生器1の外観検査として行なわれる画像検査の際、あるいは、ディスク型ガス発生器1の製造工程でこれが治具へセットされる際等において、ディスク型ガス発生器1の位相決めを容易に行なうことが可能になる。これにより、ディスク型ガス発生器1の製造効率の向上を図ることができる。
【0101】
図6ないし図8は、本実施の形態に係る保持部の製造過程を説明するための概略図である。次に、図6ないし図8を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1が備える保持部30の製造方法について説明する。なお、図6ないし図8においては、図2(B)に対応する保持部30等の断面図を示している。
【0102】
まず、図6に示すように、ハウジングが下型101にセットされる。次に、下部側シェル10の突状筒部13に設けられた開口部15に端子ピン42が挿通するように、下部側シェル10の内側から、予め製造された点火器40が下型101にセットされる。次に、射出成形用の上型100がセットされる。
【0103】
ここで、射出成形によって製造される樹脂成形部としての保持部30にあっては、その雌型コネクタ34の凹状部35の内周面35aに、アンダーカットとしての係止凹部35a1が設けられることになる(図2等参照)。そのため、本実施の形態においては、アンダーカットとしての係止凹部35a1を設けるために、下型101にいわゆる傾斜コア機構を採用している。
【0104】
下型101は、固定部102と、複数の可動コア部103とを有している。固定部102は、固定コア部102aと、周囲部102bとを含んでいる。固定コア部102aは、下型101の中央に位置する部位である。複数の可動コア部103は、所定の方向に移動可能に構成された部位である。周囲部102bは、複数の可動コア部103を取り囲むように位置する部位である。
【0105】
固定コア部102aには、端子ピン42を受け入れる受け入れ部が設けられている。可動コア部103に対向する部分の固定コア部102aの周面は、上型100に近づくにつれて固定コア部102aが先細るように傾斜した形状を有している。
【0106】
複数の可動コア部103は、雌型コネクタ34の凹状部35の内周面35aにアンダーカットとしての係止凹部35a1を設けるためのものである。本実施の形態においては、係止凹部35a1の数に対応する3つの可動コア部103が、固定コア部102aの軸方向に沿って見た場合に120°の回転対称位置に配置されている。
【0107】
可動コア部103の側面のうちの突状筒部13の筒部13aに対向する部分には、当該部分から外側に突出した突起部103aが設けられている。係止凹部35a1は、この突起部103aに対応する位置に形成されることになる。可動コア部103の側面のうちの固定コア部102aの周面に対向する部分は、当該周面に沿うように傾斜した形状を有している。
【0108】
また、可動コア部103は、射出成形後の雌型コネクタ34の軸方向端面34aに対向することとなる対向面103bを有している。可動コア部103は、当該可動コア部103のうちの周囲部102bよりも上型100側に位置する部分と対向面103bとが外部に露出しており、それ以外の部分は、固定部102の内部に収容されている。
【0109】
次に、上型100に設けられた流動性樹脂材料の注入用のゲート100aを介して上型100および下型101間に流動性樹脂材料が流し込まれる。これにより、図7に示すように、樹脂成形部からなる保持部30が形成される。
【0110】
次に、図8に示すように、可動コア部103の突起部103aが凹状部35の係止凹部35a1から抜き出されるように、可動コア部103が移動させられる。
【0111】
より詳細には、上述したように、可動コア部103の側面のうちの固定コア部102aの周面に対向する部分は、当該周面に沿うように傾斜した形状を有している。そのため、可動コア部103を固定コア部102a側に向けて移動させることにより、これと同時に、可動コア部103は上型100側に向けて(すなわち、図中の上方向に向けて)も移動させられる。すなわち、可動コア部103は、斜め上方向に向けて移動させられる。これにより、可動コア部103の突起部103aが、凹状部35の係止凹部35a1から抜き出されることになる。
【0112】
次に、上型100と下型101とが、保持部30から離型させられる。以上の工程を経ることにより、ディスク型ガス発生器1が備える保持部30の製造が完了する。
【0113】
図9(A)は、比較例に係る保持部の底面図であり、図9(B)は、図9(A)中のIXB-IXB線に沿った断面図である。図10ないし図12は、比較例に係る保持部の製造過程を説明するための概略図である。次に、図9ないし図12を参照して、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xが備える保持部30Xの製造方法について説明するとともに、上述した本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1が備える保持部30の製造方法が当該比較例に係るディスク型ガス発生器1Xが備える保持部30Xの製造方法に比較して有利な点について説明する。
【0114】
図9(A)および図9(B)に示すように、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xが備える保持部30Xは、上述した本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1が備える保持部30と比較した場合に、まず、雌型コネクタ34の軸方向端面34aに、向き規制用突起37および回転防止用突起38(図2等参照)が設けられておらず、これらに代えて、これらの機能を有する単一の突部39が設けられている点が相違している。
【0115】
また、保持部30Xは、保持部30と比較した場合に、凹状部35Xの内底面35bXが平面状に構成されていない点が相違している。
【0116】
より詳細には、凹状部35Xの内底面35bXは、その中央部に、平面視略T字状の突部39を含んでいる。突部39には、端子ピン42が挿通される部分である貫通孔36が設けられている。
【0117】
また、凹状部35Xに差し込まれる雄型コネクタ(不図示)としては、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1において用いられる雄型コネクタ130の本体部131のうちの内底面35bXに対向する部分に、突部39と同様の平面視略T字状の凹部が設けられたものが用いられる。
【0118】
この雄型コネクタを凹状部35Xに差し込むに際しては、突部39が上記凹部に嵌合される。突部39と上記凹部とが平面視略T字状を有することにより、雄型コネクタの凹状部35Xへの差し込み方向と直交する方向における雄型コネクタの向きは、これら突部39と凹部とによって規制されることになる。
【0119】
ここで、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xが備える保持部30Xにおいては、上述したように、凹状部35Xの内底面35bXが突部39を含んでいる。すなわち、凹状部35Xの内底面35bXは、これが平面状に構成されていない。これに起因して、保持部30Xの製造方法において用いられる下型101Xの構成は、上述した本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1が備える保持部30の製造方法において用いられる下型101のそれとは異なっている。
【0120】
詳細には、図10に示すように、比較例における保持部30Xの製造方法にあっては、凹状部35Xの内周面35aにアンダーカットとしての係止凹部35a1を設けるために、下型101Xに、傾斜コア機構ではなく、いわゆるスライドコア機構を採用している。
【0121】
下型101Xは、固定部102Xと、複数の可動コア部103Xとを有している。固定部102Xは、固定コア部102aXと、周囲部102bXとを含んでいる。固定コア部102aXは、下型101Xの中央に位置する部位である。複数の可動コア部103Xは、所定の方向に移動可能に構成された部位である。周囲部102bXは、複数の可動コア部103Xを取り囲むように位置する部位である。
【0122】
固定コア部102aXには、端子ピン42を受け入れる受け入れ部が設けられている。また、可動コア部103Xに対向する部分の固定コア部102aXの周面には、後述するように固定コア部102aX側に向けてスライド移動する可動コア部103Xを収納するためのポケット部104が設けられている。
【0123】
複数の可動コア部103Xは、凹状部35Xの内周面35aにアンダーカットとしての係止凹部35a1を設けるためのものである。本比較例においては、係止凹部35a1の数に対応する3つの可動コア部103Xが、固定コア部102aXの軸方向に沿って見た場合に120°の回転対称位置に配置されている。
【0124】
可動コア部103Xの側面のうちの突状筒部13の筒部13aに対向する部分には、当該部分から外側に突出した突起部103aXが設けられている。係止凹部35a1は、この突起部103aXに対応する位置に形成されることになる。
【0125】
次に、上型100に設けられた流動性樹脂材料の注入用のゲート100aを介して上型100および下型101X間に流動性樹脂材料が流し込まれる。これにより、図11に示すように、樹脂成形部からなる保持部30Xが形成される。また、点火器40は、このようにして形成された保持部30を介して底板部11に固定される。
【0126】
次に、図12に示すように、可動コア部103Xの突起部103aXが凹状部35Xの係止凹部35a1から抜き出されるように、可動コア部103Xが移動させられる。
【0127】
より詳細には、可動コア部103Xが、固定コア部102aX側に向けてスライド移動させられる。スライド移動した可動コア部103Xは、上述した固定コア部102aXの周面に設けられたポケット部104に収納される。
【0128】
次に、上型100と下型101Xとが、保持部30Xから離型させられる。以上の工程を経ることにより、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xが備える保持部30Xの製造が完了する。
【0129】
ここで、上述の如く下型101Xにスライドコア機構が採用された場合には、可動コア部103Xが薄肉化してしまい、可動コア部103Xの耐久性が低下してしまうという問題が生じることになる。この点につき、図11を参照して説明する。
【0130】
可動コア部103Xがスライド移動できる領域は、点火器40の端子ピン42が挿通される領域およびその近傍の領域(すなわち、図中の領域R)よりも外側の領域のみに制限される。また、凹状部35Xの内周面35aおよび内底面35bXによって規定される空間は、相当程度に小さいものである。そのため、可動コア部103Xのスライド移動代を考慮した場合には、可動コア部103Xは、スライド移動方向(すなわち、図11中の左右方向)において相当程度に薄肉化されたものとなる。その結果、可動コア部103Xの薄肉化された部分における強度を十分に確保することができず、可動コア部103Xの耐久性が低下してしまうことになる。
【0131】
この点、保持部30Xの製造に用いられる下型101Xに、本実施の形態に係る下型101の如くの傾斜コア機構を採用できれば、当該傾斜コア機構を構成する可動コア部を、上述した可動コア部103Xのスライド移動代の分だけ肉厚にすることができ、これにより可動コア部の強度を確保できるようにも思える。
【0132】
しかしながら、比較例のように凹状部35Xの内底面35bXが突部39を含んでいる場合において傾斜コア機構を採用しようとすると、可動コア部が斜め上方向に移動しようとする際に、これが突部39の周面に干渉してしまう。そのため、比較例の如くの構成においては、傾斜コア機構を採用することができない。
【0133】
一方、本実施の形態においては、上述したように保持部30の凹状部35の内底面35bが平面状である。このように構成することにより、下型101に傾斜コア機構を採用可能になるため、可動コア部103を比較例に比べて肉厚にすることができる。その結果、可動コア部103の強度を十分に確保できることができ、可動コア部103の耐久性の向上を実現することができる。
【0134】
したがって、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1の如くの構成とすることにより、樹脂成形部からなる保持部を備えてなるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0135】
(第1変形例)
図13は、第1変形例に係る保持部の製造に用いられる型を説明するための概略図である。図14(A)および図14(B)は、それぞれ、第1変形例に係る保持部と実施の形態に係る保持部とに生じるパーティングラインを説明するための概略図である。以下、図13および図14を参照して、上述した実施の形態に基づいた第1変形例に係るディスク型ガス発生器1Aについて説明する。
【0136】
図13に示すように、第1変形例に係るディスク型ガス発生器1Aは、上述した実施の形態に係るディスク型ガス発生器1と比較した場合に、保持部30Aの製造に用いられる下型101Aの構成のみが相違している。
【0137】
より詳細には、本変形例においては、可動コア部103Aが、上述した実施の形態における可動コア部103が有する対向面103b(すなわち、図7等に示す、雌型コネクタ34の軸方向端面34aに対向することとなる面)を有していない。
【0138】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、樹脂成形部からなる保持部を備えてなるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0139】
また、このように構成した場合には、上述した実施の形態に比べ、保持部に形成されるパーティングラインを減少させることができる。パーティングラインとは、型同士の分割線に対応する部分の成形品に形成される、微少な突条部のことをいう。
【0140】
より詳細には、図14(A)に示すように、実施の形態においては、パーティングラインPL1が、雌型コネクタ34のうち、凹状部35の内周面35aから雌型コネクタ34の軸方向端面34aの一部に沿って延在している。一方で、図14(B)に示すように、本変形例においては、パーティングラインPL2が、雌型コネクタ34のうち、凹状部35の内周面35aに沿ってのみ延在しており、雌型コネクタ34の軸方向端面34aに沿っては延在していない。
【0141】
雌型コネクタ34の軸方向端面34aは、雄型コネクタ130の対向部132と共にシール部134を挟み込んでこれを圧縮する部位である。そのため、軸方向端面34aにパーティングラインが形成された場合には、このパーティングラインに沿ってリークが生じてしまい、シール性能が低下してしまうおそれがある。この点、本変形例の如く構成した場合には、上述したように軸方向端面34aにパーティングラインが形成されることを効果的に抑制できる。そのため、シール性能の向上が図られたディスク型ガス発生器1Aとすることができる。
【0142】
(第2変形例)
図15は、第2変形例に係る保持部の底面図である。以下、図15を参照して、上述した実施の形態に基づいた第2変形例に係るディスク型ガス発生器1Bについて説明する。
【0143】
図15に示すように、第2変形例に係るディスク型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態に係るディスク型ガス発生器1と比較した場合に、保持部30Bの構成のみが相違している。
【0144】
より詳細には、第2変形例においては、保持部30Bの雌型コネクタ34の軸方向端面34aに設けられた向き規制用突起37Bが、略円柱形状を有している。
【0145】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、樹脂成形部からなる保持部を備えてなるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0146】
(第3変形例)
図16は、第3変形例に係る保持部の底面図である。以下、図16を参照して、上述した実施の形態に基づいた第3変形例に係るディスク型ガス発生器1Cについて説明する。
【0147】
図16に示すように、第3変形例に係るディスク型ガス発生器1Cは、上述した実施の形態に係るディスク型ガス発生器1と比較した場合に、保持部30Cの構成のみが相違している。
【0148】
より詳細には、第3変形例においては、保持部30Cの雌型コネクタ34の軸方向端面に設けられた向き規制用突起37Cが、略円柱形状を有している。また、一対の回転防止用突起38Cが、保持部30Cを平面視した場合に周方向に沿って延在した形状を有している。
【0149】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、樹脂成形部からなる保持部を備えてなるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0150】
(第4変形例)
図17は、第4変形例に係る保持部の底面図である。以下、図17を参照して、上述した実施の形態に基づいた第4変形例に係るディスク型ガス発生器1Dについて説明する。
【0151】
図17に示すように、第4変形例に係るディスク型ガス発生器1Dは、上述した実施の形態に係るディスク型ガス発生器1と比較した場合に、保持部30Dの構成のみが相違している。
【0152】
より詳細には、第4変形例においては、保持部30Dの雌型コネクタ34の軸方向端面34aに設けられた一対の回転防止用突起38Dが、これらの長手方向と雄型コネクタ130のケーブル133の引き出し方向(図4(A)参照)とが一致するように配置されている。このように構成されたガイドとしての一対の回転防止用突起38Dにより、雄型コネクタ130の凹状部35への差し込みをより容易に行なうことが可能になる。
【0153】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、樹脂成形部からなる保持部を備えてなるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0154】
(第5変形例)
図18(A)は、第5変形例に係る保持部の底面図であり、図18(B)は、第5変形例に係る保持部にラベルが貼り付けられた態様を示す模式図である。以下、図18を参照して、上述した実施の形態に基づいた第5変形例に係るディスク型ガス発生器1Eについて説明する。
【0155】
図18(A)に示すように、第5変形例に係るディスク型ガス発生器1Eは、上述した実施の形態に係るディスク型ガス発生器1と比較した場合に、保持部30Eの構成のみが相違している。
【0156】
より詳細には、第5変形例においては、保持部30Eの雌型コネクタ34の軸方向端面に設けられた一対の回転防止用突起38Eが、保持部30Eを平面視した場合に周方向に沿って延在した形状を有している。
【0157】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られることになり、樹脂成形部からなる保持部を備えてなるガス発生器において、保持部の成形に用いられる型の耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0158】
また、図18(B)に示すように、向き規制用突起37および一対の回転防止用突起38Eは、保持部30EにラベルLを貼り付けるためのガイドとしても利用できる。本変形例においては、向き規制用突起37および一対の回転防止用突起38Eの外側面が、ラベルLを貼り付けるためのガイドとされている。ラベルLとしては、たとえば、バーコードラベルや、ディスク型ガス発生器の取り扱い上の注意事項を記載した警告用ラベル等、各種のラベルを適用できる。
【0159】
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0160】
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0161】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0162】
1,1A~1E,1X ディスク型ガス発生器、10 下部側シェル、11 底板部、12 筒状部、13 突状筒部、13a 筒部、13b 棚板部、14 窪み部、15 開口部、20 上部側シェル、21 天板部、22 筒状部、24 ガス噴出口、26 シールテープ、28 間隙部、30,30A~30E,30X 保持部、31 内側被覆部、32 外側被覆部、33 連結部、34 雌型コネクタ、34a 軸方向端面、35,35X 凹状部、35a 内周面、35a1 係止凹部、35b,35bX 内底面、36 貫通孔、37,37B,37C 向き規制用突起、38,38C~38E 回転防止用突起、39 突部、40 点火器、41 点火部、42 端子ピン、50 カップ状部材、51 頂壁部、52 側壁部、53 延設部、54 先端部、55 伝火室、56 伝火薬、60 燃焼室、61 ガス発生剤、70 下部側支持部材、71 底部、72 当接部、73 先端部、80 上部側支持部材、81 底部、82 当接部、85 クッション材、90 フィルタ、100 上型、100a ゲート、101,101A,101X 下型、102,102X 固定部、102a,102aX 固定コア部、102b,102bX 周囲部、103,103A,103X 可動コア部、103a,103aX 突起部、103b 対向面、104 ポケット部、130 雄型コネクタ、131 本体部、131a 第1端子刃、131b 第2端子刃、131c 周面、132 対向部、133 ケーブル、134 シール部、136 係止突起、L ラベル、PL1,PL2 パーティングライン、R 領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18