(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176404
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094909
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 文昭
【テーマコード(参考)】
5F146
【Fターム(参考)】
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】硬化性組成物に対する光の照射条件の変更によるアライメント結果の変化を低減するために有利な技術を提供する。
【解決手段】モールドを使って基板の上に硬化性組成物の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置は、前記基板のショット領域と前記モールドのパターン領域とのアライメントを行うアライメント機構と、前記ショット領域と前記パターン領域との間の前記硬化性組成物に光を照射し、前記硬化性組成物を硬化させる硬化部と、前記硬化部による光の照射条件の変化に応じて、前記アライメント機構による前記アライメントの制御情報を変更する制御部と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドを使って基板の上に硬化性組成物の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板のショット領域と前記モールドのパターン領域とのアライメントを行うアライメント機構と、
前記ショット領域と前記パターン領域との間の前記硬化性組成物に光を照射し、前記硬化性組成物を硬化させる硬化部と、
前記硬化部による光の照射条件の変化に応じて、前記アライメント機構による前記アライメントの制御情報を変更する制御部と、
を備えることを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記照射条件の変化を引き起こす処理を行うように構成され、
前記制御部は、前記処理による前記照射条件の前記変化に応じて前記制御情報を変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記アライメントは、前記ショット領域と前記パターン領域との間の形状差の低減を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記アライメントは、前記ショット領域と前記パターン領域との間の倍率差の低減を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記制御情報は、前記アライメント機構による前記アライメントの終了時における前記ショット領域と前記パターン領域との目標アライメント誤差を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記変化の前の前記照射条件において前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、前記変化の後の前記照射条件において前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、の差分に基づいて、前記アライメントの終了時における前記目標アライメント誤差を変更する、
ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、予め準備された特性情報に基づいて前記制御情報を変更し、
前記特性情報は、前記照射条件と、前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、の関係を示す情報である、
ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記照射条件の変化によって前記硬化性組成物の硬化時における硬化収縮率が変化し、
前記制御部は、前記硬化収縮率の変化によって生じる前記重ね合わせ誤差の変動分を低減するように、前記アライメント機構による前記アライメントの終了時における前記目標アライメント誤差を変更する、
ことを特徴とする請求項7に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記照射条件は、照度に関する条件を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記照射条件は、露光量に関する条件を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
基板のショット領域とモールドのパターン領域とのアライメントを行うアライメント工程と、前記アライメント工程の後に、前記ショット領域と前記パターン領域との間の硬化性組成物に光を照射して前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、を含むインプリント方法であって、
前記硬化工程における光の照射条件の変化に応じて、前記アライメント工程における前記アライメントを制御するための制御情報を変更する変更工程を含む、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項12】
前記照射条件の変化を引き起こす処理を行う調整工程を更に含み、
前記変更工程では、前記処理による前記照射条件の前記変化に応じて前記制御情報を変更する、
ことを特徴とする請求項11に記載のインプリント方法。
【請求項13】
前記アライメントは、前記ショット領域と前記パターン領域との間の形状差の低減を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載のインプリント方法。
【請求項14】
前記アライメントは、前記ショット領域と前記パターン領域との間の倍率差の低減を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載のインプリント方法。
【請求項15】
前記制御情報は、前記アライメント工程の終了時における前記ショット領域と前記パターン領域との目標アライメント誤差を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載のインプリント方法。
【請求項16】
前記変更工程では、前記変化の前の前記照射条件において前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、前記変化の後の前記照射条件において前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、の差分に基づいて、前記アライメントの終了時における前記目標アライメント誤差を変更する、
ことを特徴とする請求項15に記載のインプリント方法。
【請求項17】
前記変更工程では、予め準備された特性情報に基づいて前記制御情報を変更し、
前記特性情報は、前記照射条件と、前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、の関係を示す情報である、
ことを特徴とする請求項15に記載のインプリント方法。
【請求項18】
前記照射条件の変化によって前記硬化性組成物の硬化時における硬化収縮率が変化し、
前記変更工程では、前記硬化収縮率の変化によって生じる前記重ね合わせ誤差の変動分を低減するように、前記アライメント工程の終了時における前記目標アライメント誤差を変更する、
ことを特徴とする請求項17に記載のインプリント方法。
【請求項19】
前記照射条件は、照度に関する条件を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載のインプリント方法。
【請求項20】
前記照射条件は、露光量に関する条件を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載のインプリント方法。
【請求項21】
請求項11乃至20のいずれか1項に記載のインプリント方法によって基板の上に硬化性組成物の硬化物からなるパターンを形成するインプリント工程と、
前記インプリント工程を経た前記基板を処理することによって物品を得る処理工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モールド(テンプレート)を使って基板の上に硬化性組成物の硬化物からなるパターンを形成するインプリント技術が知られている。特許文献1は、モールドを変形させることによって倍率誤差を補償することが記載されている。特許文献2には、基板とテンプレートとのアライメントを行っている間に露光源からの光の照度を変化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-504141号公報
【特許文献2】特開2019-50313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化性組成物に対する光の照射条件が変化すると、基板とモールドとのアライメント結果が変化しうる。そこで、本発明は、硬化性組成物に対する光の照射条件の変化によるアライメント結果の変化を低減するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの側面は、モールドを使って基板の上に硬化性組成物の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置に係り、前記インプリント装置は、前記基板のショット領域と前記モールドのパターン領域とのアライメントを行うアライメント機構と、前記ショット領域と前記パターン領域との間の前記硬化性組成物に光を照射し、前記硬化性組成物を硬化させる硬化部と、前記硬化部による光の照射条件の変化に応じて、前記アライメント機構による前記アライメントの制御情報を変更する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、硬化性組成物に対する光の照射条件の変化によるアライメント結果の変化を低減するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態のインプリント装置の構成を模式的に示す図。
【
図3】インプリント装置の動作シーケンスを例示する図。
【
図4】モールド変形機構によるモールドの形状制御の一例を示す図。
【
図5】基板の複数のショット領域の配置を例示する図。
【
図6】ショット番号に対する照度の割り当てを例示する図。
【
図7】光の照射条件とアライメント誤差(重ね合わせ誤差)との関係を示す特性情報を例示する図。
【
図8】照射条件の変化に応じて決定されるアライメント補正量をアライメント目標値へ反映した場合のアライメント動作の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
本明細書および添付図面では、基板の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。アライメント(位置合わせ)は、基板のショット領域とモールドのパターン領域とのアライメント誤差(重ね合わせ誤差)が低減されるように基板およびモールドの少なくとも一方の位置および/または姿勢を制御することを含みうる。また、アライメントは、基板のショット領域およびモールドのパターン領域の少なくとも一方の形状を補正あるいは変更するための制御を含みうる。
【0010】
図1には、本開示の一実施形態のインプリント装置1の構成が示されている。インプリント装置1は、モールド17を使って基板15の上に硬化性組成物16の硬化物からなるパターンを形成するように構成されうる。インプリント装置1は、例えば、基板駆動機構11、モールド駆動機構5、ディスペンサ14、アライメント計測器18、硬化部2および制御部20を備えうる。
【0011】
基板15は、例えば、単結晶シリコンウエハまたはSOI(Silicon on Insulator)ウエハでありうるが、他の基板であってもよい。基板15の被処理面には、インプリント材としての硬化性組成物がディスペンサ14によって供給、配置あるいは塗布されうる。
【0012】
基板駆動機構11は、基板15を保持し駆動する。モールド駆動機構5は、モールド17を保持し駆動する。基板駆動機構11およびモールド駆動機構5は、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域とを相対的に駆動する相対駆動機構30を構成しうる。相対駆動機構30による基板15のショット領域とモールド17のパターン領域との相対的な駆動は、基板15の上の硬化性組成物16に対するモールド17のパターン領域の接触、及び、硬化性組成物16の硬化物からのモールド17の分離のための駆動を含みうる。相対駆動機構30は、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域とのアライメントを行うアライメント機構AAを構成しうる。
【0013】
基板駆動機構11は、基板15を保持する基板保持部(不図示)を含む基板ステージ12、および、基板ステージ12を駆動することによって基板15を駆動する基板駆動アクチュエータ13を含みうる。基板駆動機構11は、基板15を複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。モールド駆動機構5は、モールド17を保持するモールド保持部7、および、モールド保持部7を駆動することによってモールド17を駆動するモールド駆動アクチュエータ6を含みうる。モールド駆動機構5は、モールド17を複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0014】
インプリント装置1は、モールド17を変形させるモールド変形機構8を備えうる。モールド変形機構8は、例えば、モールド17の側面に力を加えることによってモールド17を変形させうる。モールド変形機構8は、アライメント機構AAの一部を構成しうる。
図2には、モールド変形機構8の構成が例示されている。インプリント装置1は、更に、基板15に対して赤外光等によって熱分布を与えることによって基板15のショット領域を変形させる基板変形部を備えてもよく、そのような基板変形部もアライメント機構AAの一部を構成しうる。
【0015】
ディスペンサ14は、基板15に硬化性組成物16を供給、配置あるいは塗布するための装置である。ディスペンサ14は、不図示の吐出ノズルを有し、吐出ノズルから基板15に硬化性組成物16を吐出(例えば、滴下)するように構成されうる。ディスペンサ14は、必須ではなく、インプリント装置1がディスペンサ14を備えない場合には、外部のディスペンサによって硬化性組成物16が配置された基板15がインプリント装置1に提供されうる。
【0016】
硬化性組成物は、硬化用のエネルギー、本実施形態では光が与えられることにより硬化する。硬化用のエネルギーとしての光は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択され、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。硬化性組成物は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。また、硬化性組成物は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に供給されてもよい。硬化性組成物の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。
【0017】
硬化部2は、硬化性組成物16に光3を照射し、硬化性組成物16を硬化させるように構成されうる。より具体的には、硬化部2は、アライメント機構AAによるアライメントの後に、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域との間の硬化性組成物16に光3を照射し、硬化性組成物16を硬化させうる。硬化部2は、アライメント機構AAによるアライメントが完了する前に、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域との間の硬化性組成物16への光3の照射を開始してもよい。硬化部2は、例えば、硬化性組成物16を硬化させる光3を発生する光源4、および、硬化性組成物16に対する光3の照射条件(例えば、照度、露光量、ショット領域内の照度分布)を調整する調整部9を含みうる。光源4としては、例えば、紫外線ランプ、紫外線LED、Laser等が採用されうる。調整部9は、光源4への投入エネルギー(例えば、ランプへの投入電力、LEDへの投入電流)を変更する機能を有しうる。あるいは、調整部9は、光3の照度を変更可能なNDフィルタなどを使用してもよい。あるいは、調整部9は、基板のショット領域内の照度分布を変更するために、例えば、光3の光路に配置されたDMD(Digital Micromirror Device)を含んでもよい。
【0018】
アライメント計測器18は、アライメントスコープを有しうる。アライメントスコープは、光学系、撮像部(例えば、CCDカメラ)、および、照明部を含みうる。アライメント計測器18は、基板15のショット領域の形状及びモールド17のパターン領域の形状を計測するために、基板15のショット領域に設けられた複数の基板側マーク26とモールド17に設けられた複数のモールド側マーク25の相対位置を計測しうる。基板側マーク26およびモールド側マーク25は、アライメントマークと呼ばれうる。基板側マーク26およびモールド側マーク25は、マーク対を構成しうる。通常、複数のマーク対の各々について、基板側マーク26とモールド側マーク25との相対位置(位置ずれ)を計測することによって、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域とのアライメント誤差(重ね合わせ誤差)を検出することができる。アライメント誤差は、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域との間の形状差を含みうる。あるいは、アライメント誤差は、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域との間の倍率差を含みうる。あるいは、アライメント誤差は、例えば、X軸方向、Y軸方向、θ軸方向の位置ずれ情報、および、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域との倍率ずれや台形ずれ等の形状差情報を含みうる。
【0019】
アライメント計測器18は、複数のマーク対を同時に計測するために複数のアライメントスコープを有してもよい。マーク対の位置は、例えば、ショット領域のサイズや、デバイスパターン設計等により依存しうる。そこで、様々な位置に配置されたマーク対が観察可能なように、アライメント計測器18は、アライメントスコープを移動させる駆動機構を有してもよい。アライメントスコープに組み込まれる照明部は、例えば、ハロゲンランプ、LED、Laser等の少なくとも1つを含みうる。照明部からのアライメント計測光19は、マーク対を照明し、該マーク対からの光によって形成される像が撮像部によって撮像されうる。
【0020】
制御部20は、インプリント装置1の上記の複数の構成要素の動作、及び調整等を制御しうる。制御部20は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。制御部20は、詳細を後述するように、硬化部2による光の照射条件の変化に応じて、アライメント機構AAによるアライメントの制御情報を変更しうる。
【0021】
以上の他、インプリント装置1は、基板駆動機構11を支持するためのベース定盤21、モールド駆動機構5を支持するための支持定盤23、支持定盤23を支持する支柱22等を備えうる。
【0022】
図3には、インプリント装置1において、1つのロットを構成する複数の基板15の上に硬化性組成物16の硬化物からなるパターンを形成する動作シーケンスが示されている。この動作シーケンスは、制御部20によって制御される。この例では、1つのロットを構成する複数の基板15に対して同一のモールド17が用いられる。
【0023】
ステップS1では、制御部20は、モールド17をモールド駆動機構5にロードするように不図示のモールド搬送機構を制御し、モールド17をモールド保持部7に保持させる。次に、ステップS2では、制御部20は、アライメント計測器18のアライメントスコープの計測視野に計測対象のマーク対が収まるようにアライメントスコープの位置を調整する。ステップS3では、制御部20は、基板15を基板ステージ12の上にロードするように不図示の基板搬送機構を制御し、基板15を基板ステージ12に保持させる。
【0024】
次に、ステップS4では、制御部20は、基板15のショット領域の上に対する硬化性組成物16の供給を制御する。これは、基板15を基板駆動機構11によって走査駆動しながらディスペンサ14から硬化性組成物16を吐出することによってなされうる。次に、ステップS5では、制御部20は、基板15のショット領域の上の硬化性組成物16とモールド17のパターン領域とを接触させるように相対駆動機構30を制御する。また、ステップS5では、制御部20は、基板15のショット領域とモールド17のパターン領域とのアライメント動作が行われるようにアライメント機構AAを制御する。アライメント動作は、アライメント計測器18を使ってアライメント誤差を検出しながらアライメント機構AAによってそのアライメント誤差を低減させる動作である。アライメント誤差の検出は、アライメント計測器18を使って複数のマーク対の各々について基板側マーク26とモールド側マーク25との相対位置を計測することによってショット領域とパターン領域との位置ずれおよび形状差を検出することを含みうる。ステップS5のアライメント動作は、ステップS6において所定の充填時間が経過すると判断されるまで継続されうる。所定の充填時間は、基板15のショット領域の表面とモールド17のパターン領域の表面との間に画定される空間に対して硬化性組成物16が十分に充填されるように決定された時間でありうる。
【0025】
所定の充填時間が経過した後、ステップS7において、制御部20は、基板15とモールド17との間の硬化性組成物16に光3が照射されることによって硬化性組成物16が硬化されるように硬化部2を制御する。また、ステップS7において、制御部20は、硬化性組成物16の硬化物からモールド17が分離されるように相対駆動機構30を制御する。これにより、基板15のショット領域の上には、モールド17のパターン領域のパターンが転写された硬化性組成物16の硬化物が残る。
【0026】
ステップS8では、制御部20は、基板15の全てのショット領域に対してステップS4~S7の処理が実行されたかどうかを判断し、未処理のショット領域が残っている場合には、その未処理のショット領域についてステップS4~S7の処理を実行する。一方、全てのショット領域についてステップS4~S7の処理が実行された場合には、ステップS9で基板15が基板ステージ12の上からアンロードされる。
【0027】
ステップS10では、制御部20は、処理すべき全ての基板15に対してステップS3~S8の処理が実行されたかどうかを判断し、未処理の基板15が残っている場合には、その未処理の基板についてステップS3~S8の処理を実行する。一方、全ての基板15についてステップS3~S8の処理が実行された場合には、ステップS10でモールド17がモールド保持部7からアンロードされ、
図3に示された処理が終了する。
【0028】
図4には、
図3のステップS5~S7におけるアライメント機構AAによるアライメント動作の制御の例として、アライメント機構AAのモールド変形機構8によるモールド17の形状制御が模式的に示されている。ここでは、具体的な例として、モールド変形機構8によるモールド17の倍率制御について説明するが、これはモールド変形機構8によるモールド17の形状制御の一例として理解することができる。
図4において、縦軸は、モールド17のパターン領域と基板15のショット領域との倍率差を表し、横軸は、時間を表している。倍率差は、アライメント計測器18を使ってモールド側マーク25と基板側マーク26との相対ずれ量を複数のマーク対について計測することによって検出されうる。
【0029】
時刻T=T0では、倍率差が初期倍率差M0である。この状態から、ステップS5、S6の実行によって、ステップS7の開始前(光3の照射前)における目標倍率差M1まで倍率差が低減される。具体的には、制御部20は、アライメント計測器18を使って検出される倍率差が目標倍率差M1と一致するようにモールド変形機構8を制御し、モールド17の倍率を調整する。また、
図4の時刻T0~T1において、倍率差を目標倍率差M1まで低減する動作と並行して、ショット領域とパターン領域との間の空間に硬化性組成物16が充填される。所定の充填時間が経過した後、ステップS5、S6が終了しうる。
【0030】
次に、ステップS7において硬化部2によって硬化性組成物16に対して硬化用の光3が照射される。ここで、2つの照射条件、具体的には、2つの照度I1、I2(I1>I2)におけるアライメント状態(倍率差)の変化を例示的に説明する。まず、硬化用の光3の照度がI1である場合について説明する。
図4では、照度がI1である場合における倍率差の変化が実線で示されている。時刻T1において、硬化部2から硬化性組成物16に対する硬化用の光3の照射が開始される。これは、例えば、光3の光路を遮断状態から非遮断状態へ切り替えることができるシャッター機構を用いて、または、光源4を消灯状態から点灯状態へ制御する制御によって実現されうる。時刻T2では、硬化部2から硬化性組成物16に対する硬化用の光3の照射が終了される。これは、例えば、光3の光路を非遮断状態から遮断状態へ切り替えることができるシャッター機構を用いて、または、光源4を点灯状態から消灯状態へ制御する制御によって実現されうる。光3の照射時間は(T2-T1)である。照射時間(T2-T1)は、硬化性組成物16を十分に硬化させるために必要な露光量と光3の照度I1とにより決定されうる。硬化性組成物16に対する光3の照射により時刻T1では倍率差がM1であったものが、時刻T2ではM2へと変化する。この変化は、硬化性組成物16の硬化収縮と呼ばれる現象により発生しうる。そして、M2がインプリントによる最終的なショット倍率となる。ステップS7において光3の照射動作によって硬化性組成物16が硬化するため、ステップS7においては、モールド変形機構8によりモールド17を十分に変形させることができない。そこで、最終的な倍率差(アライメント誤差、重ね合わせ誤差)がM2となるように、ステップS5、S6における目標倍率差M1は、硬化性組成物16の硬化収縮による変動分を考慮して決定されうる。
【0031】
次に、硬化用の光3の照度がI2である場合について説明する。
図4では、照度がI2である場合における倍率差の変化が破線で示されている。照度を変化させる処理(調整)は、例えば、アライメント誤差の低減などを目的として行われうる。その他、光源4の経時的な劣化により照度が変化しうる。時刻T0~T1での動作は、硬化性組成物16に対して光3が照射されないので、照度がI2である場合における倍率差の変化は、照度がI1である場合と同様である。照度がI2である場合には、時刻T1~T3の期間で硬化性組成物16に対して光3が照射されうる。照度がI1である場合と照度がI1である場合とで照射時間が異なるのは、硬化性組成物16の硬化に必要な露光量が照度によらず一定である一方で、照度が変化したことによる。照度がI2である場合の照射時間(T3-T1)により、時刻T1においてM1であった倍率差(アライメント誤差、重ね合わせ誤差)が時刻T3においてM3へと変化する。照度がI2である場合の最終的な倍率差M3と照度がI1である場合の最終的な倍率差M2とは、互いに異なる値である。照度の変化により最終的な倍率差(アライメント誤差、重ね合わせ誤差)が変化する理由は、硬化性組成物16の硬化時における硬化収縮率が光3の照度および露光量により異なるためである。
【0032】
硬化性組成物16に照射される光3の照度の変化によって倍率差(アライメント誤差、重ね合わせ誤差)が変化してしまうと、歩留まりが低下する可能性がある。よって、インプリント装置1には、硬化部2による光の照射条件(上記の例では、照度)の変化に対してアライメント誤差(上記の例では、倍率差)の変化が鈍感であることが望まれる。
【0033】
そこで、制御部20は、硬化部2による光3の照射条件の変化に応じて、アライメント機構AAによるアライメントの制御情報を変更しうる。硬化部2による光3の照射条件の変化は、制御部20又は他の構成要素によって光3の照射条件を意図的に調整する処理によって引き起こされる場合もあるし、光源4の劣化等によって意図せずして引き起こされる場合もある。前者の意図的な調整は、例えば、硬化部2が光3の照度を調整する調整機能(調整部9)を有する場合においては、その調整機能を通してなされうる。あるいは、意図的な調整は、硬化部2が選択可能な複数の照射モードを有する場合において、制御部20が照射モードを選択することによってなされうる。
【0034】
本実施形態では、硬化性組成物16に対する光3の照射条件とアライメント誤差との関係を示す特性情報が事前に生成される。特性情報の生成のための処理は、例えば、制御部20によって実行されうる。そして、制御部20は、
図3に示す処理シーケンスの実行の際に特性情報と照射条件とに基づいてアライメント機構AAによるアライメントの制御情報を変更(あるいは決定)しうる。あるいは、制御部20は、
図3に示される動作シーケンスの実行の際に、照射条件の変化に応じて、特性情報に基づいてアライメント機構AAによるアライメントの制御情報を変更しうる。
【0035】
以下、特性情報の生成について例示的に説明する。まず、制御部20は、例えば、調整部9に与える指令値を変更することにより硬化性組成物16に対する光3の照射条件を変更しながら、各照射条件において基板15のショット領域に対するインプリント処理を行うことによってサンプルを形成する。ここで、インプリント処理は、(硬化性組成物16の硬化物からなるパターンを形成する処理である。その後、インプリント装置1においてアライメント計測器18を使って、又は、外部の検査装置によって、各サンプルにおけるアライメント誤差あるいは重ね合わせ誤差(例えば、倍率差)が検出されうる。制御部20は、このようにして得られた検出結果を処理することによって特性情報を生成しうる。
【0036】
一例において、
図5に模式的に示されるように複数のショット領域を有する基板15が準備され、本生産用のインプリント処理において使用されうる照度の範囲を十分にカバーするように決定された複数の照度のそれぞれにおいて、インプリント処理が行われうる。ここで、
図5では、各ショット領域は矩形で示され、ショット領域の識別IDとして、ショット番号1、2、3、・・・N、N+1、N+2、・・・が与えられている。
図6には、
図5に例示された基板15の各ショット領域のインプリント処理に適用される照度がI0、I0+ΔI、・・・として例示されている。
図5、
図6に示された例では、ショット領域の数がMであり、本生産用のインプリント処理において使用されうる照度の範囲(以下、照度範囲)をMで均等にわることによって、照度の変更幅ΔIが決定される。I0は照度範囲における最小照度であり、ショット番号が1のショット領域は、インプリント処理において、アライメントの後に最小照度I0で硬化用の光3が硬化性組成物16に照射され硬化性組成物16が硬化される。ショット番号が2のショット領域は、インプリント処理において、アライメントの後に最小照度I0+ΔIで硬化用の光3が硬化性組成物16に照射され硬化性組成物16が硬化される。
【0037】
図7には、以上のようにして各ショット領域に対するインプリント処理がなされた基板15をインプリント装置1においてアライメント計測器18を使って、又は、外部の検査装置によって計測することによって得られた特性情報27が模式的に示されている。
図7の例では、照射条件が照度(設定照度)であり、アライメント誤差が倍率差である。特性情報27は、制御部20のメモリに格納されうる。特性情報27は、インプリント処理において使用されうる硬化性組成物16の種類ごとに生成または準備されうる。これは、硬化性組成物16の種類によって硬化収縮率が異なるためである。特性情報27は、インプリント処理において使用されうるモールド17の仕様または識別IDごとに生成または準備されうる。これは、モールド17の仕様または識別IDごとに照射条件に対するアライメント誤差が異なるためである。
【0038】
以下、本生産用のインプリント処理について例示的に説明する。ここでは、一例として、硬化性組成物に照射される光3の照度がI1に設定された初期状態において、アライメント機構AAによるアライメントの制御情報が調整(最適化)されたインプリント装置1を考える。また、初期状態の後に、光3の照度がI1からI2に変化する場合を考える。I1からI2への変化は、意図的に引き起こされてもよいし、意図せずに引き起こされてもよい。制御部20は、特性情報27を参照し、照度の変化の前後における照度I1、I2にそれぞれ対応する倍率差M2、M3の差分(M3-M2)に基づいてアライメント補正量(アライメントの制御情報の補正量)を決定しうる。より広義には、制御部20は、特性情報27を参照し、照射条件の変化前におけるアライメント誤差と照射条件の変化後におけるアライメント誤差との差分(M3-M2)に基づいてアライメント補正量(アライメントの制御情報の補正量)を決定しうる。アライメント補正量は、時刻T3(即ち、硬化後)において、ショット領域とパターン領域(硬化性組成物16の硬化物)とのアライメント誤差(重ね合わせ誤差)が許容範囲(ここでは倍率差M2)に収まるように決定される。
【0039】
アライメント補正量を決定する際に、レシピ(インプリント処理を制御するための制御ファイル)に設定された照度値が特性情報27に存在しない場合もありうる。このような場合には、特性情報27に含まれる複数のデータのうちレシピに設定された照度値に最も近いデータを用いて、アライメント補正量を決定してもよい。あるいは、特性情報27に含まれる複数のデータのうちレシピに設定された照度値の近傍の2以上のデータを補完することによってアライメント補正量を決定してもよい。
【0040】
図8には、照射条件の変化に応じて決定されるアライメント補正量をアライメント目標値(アライメントの制御情報)へ反映した場合のアライメント動作の例が模式的に示されている。
図8には、光3の照度がI2である場合のアライメント機構AAによるアライメントの制御の例として、アライメント機構AAのモールド変形機構8によるモールド17の形状制御が模式的に示されている。ここでは、具体的な例として、モールド変形機構8によるモールド17の倍率制御について説明するが、これはモールド変形機構8によるモールド17の形状制御の一例として理解することができる。縦軸は、モールド17のパターン領域と基板15のショット領域との倍率差(アライメント誤差あるいは重ね合わせ誤差としても理解される)、横軸は、時間を表している。
図8において、破線は、比較例、即ち照度I2で本実施形態のアライメント補正を行わない場合のアライメントにおける倍率差の変化を示していて、これは
図4の破線と同じである。比較例では、インプリント処理の終了時、即ち時刻T3における倍率差(硬化後の倍率差)はM3となり、照度がI1である場合のインプリント処理の終了時の倍率差M2(
図4参照)とは異なる。
【0041】
本実施形態では、制御部20は、ステップS5、S6のアライメント工程の終了時T1における目標倍率差(目標アライメント誤差)、即ちアライメントの制御情報を、前述のアライメント補正量に基づいてM1からM4に変更する。そして、制御部20は、変更後の目標倍率差M4に基づいてアライメント機構AAによるアライメントを制御する。目標倍率差M4は、例えば、M4=M1-(M3-M2)として決定されうる。本実施形態におけるアライメントは、
図8において、一点鎖線で示されている。ステップS7の終了時(時刻T3)、即ち硬化後における倍率差は、
図4の照度I1でのインプリント時の最終的な倍率差M2と同じ値となる。
【0042】
以上のように、制御部20は、硬化部2による光3の照射条件の変化に応じて特性情報27を使ってアライメント補正を行う。換言すると、制御部20は、硬化部2による光3の照射条件の変化に応じてアライメント機構AAによるアライメントの制御情報(ここでは、目標倍率差M4)を変更する。これにより、照射条件の変化によるアライメント誤差の変化(通常は、アライメント誤差の増加)を低減し、歩留まりの低下を抑制することができる。
【0043】
以下、変形例として、アライメント補正量を決定するための他の方法を例示的に説明する。
図4に例示されるアライメント誤差(倍率差)の変化は、アライメント計測器18を使ってモールド側マーク25と基板側マーク26との相対ずれ量を複数のマーク対について計測することによって検出される。したがって、光3の照度がI2である場合におけるステップS7の終了時刻T3での倍率差M3は、アライメント計測器18を使って計測することができる。つまり、倍率差M3およびインプリント処理の終了時T3での倍率差M2をアライメントずれ量M3を使って計測することができる。目標倍率差M4は、前述の通りM4=M1-(M3-M2)という計算で求めることができる。そこで、例えば、本生産用のロットにおいて、少なくとも1枚の基板の少なくとも1つのショット領域を使って試験的にインプリント処理を行ってサンプルを形成し、そのサンプルの倍率差をアライメント計測器18を使って計測する。これによって得られた倍率差と、本来の目標倍率差との差分を用いて、アライメント補正量を決定すればよい。基板の残りのショット領域のインプリント処理において、このアライメント補正量を反映しアライメントを行うことによって、目標倍率差を満たすアライメントを実現することができる。この方法によれ、特性情報を事前に求めるための処理が不要になると利点がある。
【0044】
ここまでは、硬化性組成物16に対する光3の照射条件として主に照度に注目した例に説明した。しかし、硬化性組成物16に照射される光3の照度以外の照射条件、例えば露光量が変化した場合についても、同様の処理でアライメント補正量(アライメントの制御情報)を決定することができる。露光量が変化すると、基板15およびモールド17へ入射するエネルギーが変化するので、基板15およびモールド17に与えられる熱量が変化する。これにより、基板15およびモールド17が熱によって変形する量が変化し、アライメント誤差(倍率差)も変化しうる。このような倍率差の変化についても、上記の方法によってアライメント補正量を決定し、そのアライメント補正量に基づいてアライメントを制御することができる。なお、露光量の変更は、例えば、硬化性組成物への光3の照射時間を変更すること、または、照射時間を変更せずに調整部9によって照度を変更することにより実現可能である。
【0045】
更には、ショット領域内における光3の照度分布を変更した場合についても、上記の方法によってアライメント補正量を決定し、そのアライメント補正量に基づいてアライメントを制御することができる。ショット領域内における光3の照度分布を調整することによってショット領域には、その照度分布に応じた熱分布が形成されうる。これにより、基板15およびモールド17の熱による変形量が変化し、アライメント誤差(倍率差)が変化しうる。ショット領域内の照度分布の調整によって、ショット領域の形状の高次成分を調整することができる。これによりアライメント誤差を高次成分についても低減できる。これについても、上記の方法でアライメント補正量を決定し、そのアライメント補正量に基づいてアライメントを制御することができる。なお、照度分布を変化させたときのアライメント誤差をアライメント計測器18を使って計測する場合には、計測した高次成分に応じた数のアライメントスコープをアライメント計測器18に備えることが望ましい。
【0046】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0047】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0048】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。
図9(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0049】
図9(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図9(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0050】
図9(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0051】
図9(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図9(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0052】
本明細書および図面は、以下の開示を含む。
(項目1)
モールドを使って基板の上に硬化性組成物の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板のショット領域と前記モールドのパターン領域とのアライメントを行うアライメント機構と、
前記ショット領域と前記パターン領域との間の前記硬化性組成物に光を照射し、前記硬化性組成物を硬化させる硬化部と、
前記硬化部による光の照射条件の変化に応じて、前記アライメント機構による前記アライメントの制御情報を変更する制御部と、
を備えることを特徴とするインプリント装置。
(項目2)
前記制御部は、前記照射条件の変化を引き起こす処理を行うように構成され、
前記制御部は、前記処理による前記照射条件の前記変化に応じて前記制御情報を変更する、
ことを特徴とする項目1に記載のインプリント装置。
(項目3)
前記アライメントは、前記ショット領域と前記パターン領域との間の形状差の低減を含む、
ことを特徴とする項目1又は2に記載のインプリント装置。
(項目4)
前記アライメントは、前記ショット領域と前記パターン領域との間の倍率差の低減を含む、
ことを特徴とする項目1又は2に記載のインプリント装置。
(項目5)
前記制御情報は、前記アライメント機構による前記アライメントの終了時における前記ショット領域と前記パターン領域との目標アライメント誤差を含む、
ことを特徴とする項目1乃至4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
(項目6)
前記制御部は、前記変化の前の前記照射条件において前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、前記変化の後の前記照射条件において前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、の差分に基づいて、前記アライメントの終了時における前記目標アライメント誤差を変更する、
ことを特徴とする項目5に記載のインプリント装置。
(項目7)
前記制御部は、予め準備された特性情報に基づいて前記制御情報を変更し、
前記特性情報は、前記照射条件と、前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、の関係を示す情報である、
ことを特徴とする項目5又は6に記載のインプリント装置。
(項目8)
前記照射条件の変化によって前記硬化性組成物の硬化時における硬化収縮率が変化し、
前記制御部は、前記硬化収縮率の変化によって生じる前記重ね合わせ誤差の変動分を低減するように、前記アライメント機構による前記アライメントの終了時における前記目標アライメント誤差を変更する、
ことを特徴とする項目7に記載のインプリント装置。
(項目9)
前記照射条件は、照度に関する条件を含む、
ことを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
(項目10)
前記照射条件は、露光量に関する条件を含む、
ことを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
(項目11)
基板のショット領域とモールドのパターン領域とのアライメントを行うアライメント工程と、前記アライメント工程の後に、前記ショット領域と前記パターン領域との間の硬化性組成物に光を照射して前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、を含むインプリント方法であって、
前記硬化工程における光の照射条件の変化に応じて、前記アライメント工程における前記アライメントを制御するための制御情報を変更する変更工程を含む、
ことを特徴とするインプリント方法。
(項目12)
前記照射条件の変化を引き起こす処理を行う調整工程を更に含み、
前記変更工程では、前記処理による前記照射条件の前記変化に応じて前記制御情報を変更する、
ことを特徴とする項目11に記載のインプリント方法。
(項目13)
前記アライメントは、前記ショット領域と前記パターン領域との間の形状差の低減を含む、
ことを特徴とする項目11又は12に記載のインプリント方法。
(項目14)
前記アライメントは、前記ショット領域と前記パターン領域との間の倍率差の低減を含む、
ことを特徴とする項目11又は12に記載のインプリント方法。
(項目15)
前記制御情報は、前記アライメント工程の終了時における前記ショット領域と前記パターン領域との目標アライメント誤差を含む、
ことを特徴とする項目11乃至1のいずれか1項に記載のインプリント方法。
(項目16)
前記変更工程では、前記変化の前の前記照射条件において前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、前記変化の後の前記照射条件において前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、の差分に基づいて、前記アライメントの終了時における前記目標アライメント誤差を変更する、
ことを特徴とする項目15に記載のインプリント方法。
(項目17)
前記変更工程では、予め準備された特性情報に基づいて前記制御情報を変更し、
前記特性情報は、前記照射条件と、前記ショット領域と硬化後の前記硬化性組成物との間に生じる重ね合わせ誤差と、の関係を示す情報である、
ことを特徴とする項目15又は16に記載のインプリント方法。
(項目18)
前記照射条件の変化によって前記硬化性組成物の硬化時における硬化収縮率が変化し、
前記変更工程では、前記硬化収縮率の変化によって生じる前記重ね合わせ誤差の変動分を低減するように、前記アライメント工程の終了時における前記目標アライメント誤差を変更する、
ことを特徴とする項目17に記載のインプリント方法。
(項目19)
前記照射条件は、照度に関する条件を含む、
ことを特徴とする項目11乃至18のいずれか1項に記載のインプリント方法。
(項目20)
前記照射条件は、露光量に関する条件を含む、
ことを特徴とする項目11乃至18のいずれか1項に記載のインプリント方法。
(項目21)
項目11乃至20のいずれか1項に記載のインプリント方法によって基板の上に硬化性組成物の硬化物からなるパターンを形成するインプリント工程と、
前記インプリント工程を経た前記基板を処理することによって物品を得る処理工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【0053】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0054】
1:インプリント装置、AA:アライメント機構、2:硬化部、15:基板、16:硬化性組成物、17:モールド、20:制御部