(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176410
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ラミネートチューブ容器用積層体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20241212BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241212BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/32 C
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094919
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 良祐
(72)【発明者】
【氏名】永野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】関本 純輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 みどり
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA22
3E086AB01
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3E086BA13
3E086BA15
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4F100AK01A
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4F100AK04E
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4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】本発明では、製造コストを抑制しつつ、光輝性印刷層をサイドシーム部に設けた場合においても、ラミネート強度が損なわれない、新規なラミネートチューブ容器用積層体を提供する。
【解決手段】
図1(a)に示すように、本発明のラミネートチューブ容器用積層体100では、
シーラント層110、160の一部を重ね合わせてヒートシールして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、印刷層130が、サイドシーム部の略全体にわたって存在することとなる光輝性印刷層132を含み、
光輝性印刷層132が、光輝性顔料、ポリウレタンアクリレート及び光重合開始剤を含有しており、かつポリイソシアネートを含有しておらず、
外側シーラント層110及び内側シーラント層160が、ポリエチレン系樹脂で構成されており、
印刷層のうち、少なくとも1層が、基材層140の被印刷層に直接接触している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シーラント層、外側接着層、1又は複数の印刷層、基材層、内側接着層、及び内側シーラント層をこの順で有する積層体で構成されており、
前記外側シーラント層の一部と前記内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、前記印刷層が、前記サイドシーム部の略全体にわたって存在することとなる光輝性印刷層を含み、
前記光輝性印刷層が、紫外線硬化フレキソ光輝性インキで構成されており、かつ前記紫外線硬化フレキソ光輝性インキが、光輝性顔料、ポリウレタンアクリレート及び光重合開始剤を含有しており、かつポリイソシアネートを含有しておらず、
前記光重合開始剤が、ベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さず、
前記外側シーラント層及び前記内側シーラント層が、ポリエチレン系樹脂で構成されており、
前記基材層が、被印刷層を有しており、前記印刷層のうち、少なくとも1層が、前記被印刷層に直接接触している、
ラミネートチューブ容器用積層体。
【請求項2】
前記印刷層が、前記基材層に直接接触している下地印刷層を更に有し、かつ前記外側シーラント層の一部と前記内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、前記下地印刷層が、サイドシーム部の略全体にわたって存在することとなる、請求項1に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
【請求項3】
前記下地印刷層が、ポリイソシアネートを含有している、請求項2に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
【請求項4】
前記光輝性印刷層が、前記下地印刷層に直接接触している、請求項2又は3に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
【請求項5】
前記光輝性顔料の含有率が、前記紫外線硬化フレキソ光輝性インキの質量に対して1質量%以上30質量%以下である、請求項1又は2に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
【請求項6】
前記光重合開始剤の含有率が、前記紫外線硬化フレキソ光輝性インキの質量に対して1質量%以上30質量%以下である、請求項1又は2に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
【請求項7】
前記被印刷層が、ポリエチレン系樹脂で構成されている、請求項1又は2に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
【請求項8】
前記外側接着層が、2液硬化型のドライラミネート接着剤である、請求項1又は2に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のラミネートチューブ容器用積層体を有し、
前記外側シーラント層の一部と前記内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、前記ラミネートチューブ容器用積層体が筒状にされている、
ラミネートチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートチューブ容器用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラミネートチューブ容器は種々の方法で製造されている。例えば、積層シートを製造し、その両端部の最外層と最内層とをヒートシールして筒状胴部を製造し、その後に、その筒状胴部の一方の開口部に口部、肩部等からなる頭部を形成し、その口部にキャップを螺合させることにより、ラミネートチューブ容器が製造される。上記の最外層と最内層とをヒートシールした箇所は、サイドシーム部と称されることがある。このように製造されたラミネートチューブ容器は、その筒状胴部の開放端から、例えば、練り歯磨きなどの半流動性の内容物を充填し、その開放端を密閉シールして底部シール部を形成して、チューブ状の包装製品とすることができる。
【0003】
また、ラミネートチューブ容器の識別性又は外観を向上させるために、ラミネートチューブ容器の胴部に基材及び印刷層を組み込むことが知られている。
【0004】
特許文献1では、積層フィルムの最内層がラミネートチューブ容器の胴部内周面層となるようにして筒状体に成形されるラミネートチューブ容器胴部形成用積層シートが開示されている。この積層フィルムは、最内層から順に、ヒートシール性フィルム(I)と、バリア性層と、乳白ポリエチレン系樹脂フィルムと、片面に有色印刷インキ層を形成した透明基材フィルムと、透明ヒートシール性フィルム(II)とが、接着層を介して積層されている。
【0005】
印刷層を有するラミネートチューブ容器に関しては、サイドシーム部を含めて全面に印刷すること(「フルプリント印刷」とも呼ばれる)が提案されている。例えば、特許文献2では、積層されている表層、接着剤層、UVインキ層及び基材積層体を含むチューブ用積層体が開示されている。表層は、ポリオレフィンを含む。接着剤層は、エステル部分を有するポリオールとポリイソシアネートとの2液型接着剤で形成されている。基材積層体のUVインキ層と接する面は、ポリオレフィンで形成されている。UVインキ層は、基材積層体の表面のシール部に対応する箇所に配置されている。
【0006】
また、高級感のあるプラスチック容器を提供するための印刷に関しては、パールインキ等により得られる光輝性印刷層を用いることが知られている。特許文献3では、表層、光輝性印刷積層体、及び基材をこの順で有する、ラミネートチューブ用積層体が開示されている。光輝性印刷積層体は、互いに積層されている複数の光輝性印刷層を有する。複数の光輝性印刷層は、それぞれ紫外線硬化性樹脂、及び無機光輝性顔料を含有している。紫外線硬化性樹脂は、脂肪族系ポリウレタンアクリレート、及びベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さない光重合開始剤を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-223934号公報
【特許文献2】国際公開第2014/178403号
【特許文献3】特開2021-178446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、製造コストを抑制しつつ、光輝性印刷層をサイドシーム部に設けた場合においても、ラミネート強度が損なわれない、新規なラミネートチューブ容器用積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉外側シーラント層、外側接着層、1又は複数の印刷層、基材層、内側接着層、及び内側シーラント層をこの順で有する積層体で構成されており、
前記外側シーラント層の一部と前記内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、前記印刷層が、前記サイドシーム部の略全体にわたって存在することとなる光輝性印刷層を含み、
前記光輝性印刷層が、紫外線硬化フレキソ光輝性インキで構成されており、かつ前記紫外線硬化フレキソ光輝性インキが、光輝性顔料、ポリウレタンアクリレート及び光重合開始剤を含有しており、かつポリイソシアネートを含有しておらず、
前記光重合開始剤が、ベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さず、
前記外側シーラント層及び前記内側シーラント層が、ポリエチレン系樹脂で構成されており、
前記基材層が、被印刷層を有しており、前記印刷層のうち、少なくとも1層が、前記被印刷層に直接接触している、
ラミネートチューブ容器用積層体。
〈態様2〉前記印刷層が、前記基材層に直接接触している下地印刷層を更に有し、かつ前記外側シーラント層の一部と前記内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、前記下地印刷層が、サイドシーム部の略全体にわたって存在することとなる、態様1に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
〈態様3〉前記下地印刷層が、ポリイソシアネートを含有している、態様2に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
〈態様4〉前記光輝性印刷層が、前記下地印刷層に直接接触している、態様2又は3に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
〈態様5〉前記光輝性顔料の含有率が、前記紫外線硬化フレキソ光輝性インキの質量に対して1質量%以上30質量%以下である、態様1~4のいずれか一項に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
〈態様6〉前記光重合開始剤の含有率が、前記紫外線硬化フレキソ光輝性インキの質量に対して1質量%以上30質量%以下である、態様1~5のいずれか一項に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
〈態様7〉前記被印刷層が、ポリエチレン系樹脂で構成されている、態様1~6のいずれか一項に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
〈態様8〉前記外側接着層が、2液硬化型のドライラミネート接着剤である、態様1~7のいずれか一項に記載のラミネートチューブ容器用積層体。
〈態様9〉態様1~8のいずれか一項に記載のラミネートチューブ容器用積層体を有し、
前記外側シーラント層の一部と前記内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、前記ラミネートチューブ容器用積層体が筒状にされている、
ラミネートチューブ容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造コストを抑制しつつ、光輝性印刷層をサイドシーム部に設けた場合においても、ラミネート強度が損なわれない、新規なラミネートチューブ容器用積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、本発明のラミネートチューブ容器用積層体の一態様の側面断面図である。
図1(b)は、本発明のラミネートチューブ容器用積層体の別の態様の側面断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明のラミネートチューブ容器の一態様の概略側面図である。
図2(b)は、
図2(a)の線IIb-IIbにおける、本発明のラミネートチューブ容器の一態様の概略断面図である。
図2(c)は、
図2(b)の線IIcで囲まれた部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《ラミネートチューブ容器用積層体》
図1(a)に示すように、本発明のラミネートチューブ容器用積層体100は、
外側シーラント層110、外側接着層120、1又は複数の印刷層130、基材層140、内側接着層150、及び内側シーラント層160をこの順で有する積層体で構成されており、
前記外側シーラント層110の一部と前記内側シーラント層160の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、前記印刷層130が、前記サイドシーム部の略全体にわたって存在することとなる光輝性印刷層132を含み、
前記光輝性印刷層132が、紫外線硬化フレキソ光輝性インキで構成されており、かつ前記紫外線硬化フレキソ光輝性インキが、光輝性顔料、ポリウレタンアクリレート及び光重合開始剤を含有しており、かつポリイソシアネートを含有しておらず、
前記光重合開始剤が、ベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さず、
前記外側シーラント層110及び前記内側シーラント層160が、ポリエチレン系樹脂で構成されており、
前記基材層140が、被印刷層を有しており、前記印刷層のうち、少なくとも1層が、前記被印刷層に直接接触している。
【0013】
光輝性印刷層は、比較的大きく扁平な形状を有する願料である光輝性願料を含有する。このような光輝性印刷層を有する従来のラミネートチューブにおいて、光輝性印刷層をサイドシーム部に含有させるようにして積層させる場合、ラミネート強度を損なわないためには、ポリイソシアネートを光輝性印刷層に含有させる必要があると考えられていた。一方、光輝性印刷層を構成するインキにポリイソシアネートを含有させた場合、その反応性により、光輝性印刷インクの保存が困難となっていた。光輝性願料は比較的高価であるので、光輝性印刷インクの保存が困難なことはコストに関して大きな問題であった。
【0014】
これに対し、本発明者らは、ポリウレタンアクリレート及び光重合開始剤の組合せによれば、ポリイソシアネートを含有させずに、基材層上の全体に積層させた場合においてもラミネート強度を損なうことがない光輝性印刷層が得られることを見出した。
【0015】
図1(b)に示すように、印刷層130は、下地印刷層134、及び他の印刷層136を更に有していてよい。
【0016】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0017】
〈外側シーラント層及び内側シーラント層〉
外側シーラント層及び内側シーラント層は、ポリエチレン系樹脂で構成されている。
【0018】
ここで、本明細書において、ポリエチレン系樹脂は、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0019】
外側シーラント層及び内側シーラント層の厚さは、特に限定されず、例えば50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、85μm以上、90μm以上、又は95μm以上であってよく、また200μm以下、190μm以下、180μm以下、170μm以下、160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、125μm以下、120μm以下、115μm以下、110μm以下、又は105μm以下であってよい。外側シーラント層及び内側シーラント層は、互いに同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0020】
〈外側接着層〉
外側接着層は、外側シーラント層と、1又は複数の印刷層との間に存在し、それによってこれらを互いに接着している層である。
【0021】
接着層としては、例えばドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、ノンソルベントラミネート接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等を用いることができる。中でも、ドライラミネート接着剤、特に2液硬化型ドライラミネート接着剤を用いることが好ましい。
【0022】
〈印刷層〉
印刷層は、1又は複数の印刷層である。これらの印刷層のうち、少なくとも1層が、基材層の被印刷層に直接接触している。
【0023】
前記外側シーラント層の一部と前記内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、これらの印刷層は、サイドシーム部の略全体にわたって存在している光輝性印刷層を含む。
【0024】
ここで、「サイドシーム部の略全体」とは、サイドシーム部の面積の90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上を占めていることを意味している。
【0025】
外側シーラント層の一部と内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、前記印刷層が、かつサイドシーム部の略全体にわたって存在することとなる下地印刷層を有していてよい。この場合、下地印刷層は、被印刷層に直接接触している。
【0026】
(光輝性印刷層)
光輝性印刷層は、紫外線硬化フレキソ光輝性インキで構成されている層である。紫外線硬化フレキソ光輝性インキは、光輝性顔料、ポリウレタンアクリレート及び光重合開始剤を含有しており、かつポリイソシアネートを含有していない。
【0027】
光輝性印刷層は、サイドシーム部の略全体にわたって存在している。光輝性印刷層が複数層存在している場合には、そのうちの1層又は複数層がサイドシーム部の略全体にわたって存在していてよく、特に全ての光輝性印刷層がサイドシーム部の略全体にわたって存在してよい。
【0028】
光輝性印刷層は、基材層の略全体にわたって存在してよい。
【0029】
光輝性印刷層が単層である場合には、光輝性印刷層の厚さは、1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であり、かつ7μm以下、又は6μmであることが、光輝性をもたらす観点から好ましい。
【0030】
光輝性印刷層が複数層存在している場合には、光輝性印刷層の厚さは、10μm以上、15μm以上、20μm以上、又は25μm以上であることが、意匠性の観点から好ましく、また40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であることが、黄変の抑制の観点から好ましい。
【0031】
(光輝性印刷層:光輝性顔料)
光輝性顔料としては、例えば鱗片状金属顔料、パール顔料等を用いることができる。
【0032】
鱗片状金属顔料としては、例えばアルミニウム粉末、特にアルミフレーク等を用いることができる。
【0033】
パール顔料は、合成雲母、天然雲母、又は合成雲母、天然雲母、ガラス、アルミナフレークに酸化チタンやシリカを被覆した顔料であることができる。
【0034】
光輝性印刷層における光輝性顔料の含有率は、光輝性印刷層の質量に対して、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は9質量%以上であってよく、また25質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、又は12質量%以下であってよい。
【0035】
光輝性印刷層においては、無機光輝性顔料以外の顔料の含有率が、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下である場合には、黄変が目立ちやすくなることから、本発明の構成がより有益となる。この含有率は、0質量%又は0質量%超であってよい。
【0036】
(光輝性印刷層:ポリウレタンアクリレート)
ポリウレタンアクリレートとしては、例えば脂肪族ポリウレタンアクリレート、及び芳香族ポリウレタンアクリレートを用いることができ、中でも脂肪族ポリウレタンアクリレートを用いることが、ラミネート強度の観点から好ましい。これらのポリウレタンアクリレートとしては、商業的に入手可能なものを用いることができる。
【0037】
なお、本発明において、「芳香族系ポリウレタンアクリレート」とは、ベンゼン環を有するポリウレタンアクリレートを指し、また「脂肪族系ポリウレタンアクリレート」とは、ベンゼン環を有さないポリウレタンアクリレートを指す。
【0038】
(光輝性印刷層:光重合開始剤)
光重合開始剤は、ベンゼン環の数が3個未満、すなわち2個、1個又は0個であり、かつアミノ基を有さない光重合開始剤である。
【0039】
このような光重合開始剤としては、例えばオキシフェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル及びオキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン(イルガキュア754)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガキュア184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)等が挙げられる。
【0040】
光重合開始剤の含有量は、脂肪族系ポリウレタンアクリレート100質量部に対して、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、又は5質量部以上であってよく、また10質量部以下、9質量部以下、8質量部以下、7質量部以下、又は6質量部以下であってよい。
【0041】
(下地印刷層)
下地印刷層は、印刷層のうち、基材層の被印刷層に直接接触している層である。外側シーラント層の一部と内側シーラント層の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部を形成するようにして、筒状のラミネートチューブ容器にしたときに、下地印刷層が、サイドシーム部の略全体にわたって存在することとなる。
【0042】
下地印刷層は、基材層の略全体にわたって存在していてよい。
【0043】
下地印刷層は、ポリイソシアネートを含有していることが、ラミネート強度を得る観点から好ましい。この場合、ポリイソシアネートの含有率は、下地印刷層の質量に対して、、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってよく、また25質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
【0044】
ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート等を用いることができる。
【0045】
下地印刷層は、光輝性印刷層と直接接触していることが、ラミネート強度を得る観点から好ましい。
【0046】
下地印刷層としては、商業的に入手可能なインクに、ポリイソシアネートを添加した組成物を用いることができる。
【0047】
(他の印刷層)
他の印刷層は、表示、装飾等を目的とする随意の印刷層であってよい。印刷層は、随意の印刷手段により積層させることができる。
【0048】
〈基材層〉
基材層は、印刷層がその表面に積層されている非浸透性の基材である。基材層は、単層であってもよく、又は複数の層が積層されている積層体であってもよく、複数の同じ種類の層を含んでいてもよい。
【0049】
基材層は、例えば被印刷層、バリア層、及び補強層を有していてよい。これらの層は、随意の積層手段により積層されていてよく、例えば接着層を介して積層されていてもよい。この接着層としては、外側接着層に関して挙げた接着層を用いることができる。
【0050】
かかる基材層としては、例えば以下の層構成を有する基材を用いることができる:
・LDPE(75μm)/乳白LDPE(160μm)/LDPE(50μm)/PET(12μm)/LLDPE(100μm)
・LLDPE(55μm)/透明LDPE(80μm)/EAA(20μm)/AL(12μm)/EMAA(25μm)/PET(12μm)
【0051】
(被印刷層)
被印刷層は、印刷層を印刷できる程度の非浸透性を有する層であれば、特に限定されず、例えば樹脂層であってよい。
【0052】
被印刷層としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。かかる熱可塑性樹脂を、フィルム又は押出し樹脂の態様で用いることができる。また、フィルムは、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を用いることができる。ポリエチレン系樹脂は、外側シーラント層及び内側シーラント層に関する記載を参照することができる。
【0054】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
ビニル系ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0056】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0057】
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0058】
(バリア層)
バリア層としては、例えば無機物蒸着層、金属箔層、有機物コート層等を用いることができる。
【0059】
無機物蒸着層としては、例えばシリカ蒸着膜、アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ・アルミナ蒸着膜を用いることができる。
【0060】
金属箔層としては、例えばアルミニウム箔、銅箔、チタン箔等の単体金属箔、アルミニウム合金箔、ステンレス箔等の合金箔を用いることができる。
【0061】
有機物コート層としては、例えば塩化ビニリデンコート層、ポリフッ化ビニリデンコート層を用いることができる。
【0062】
バリア層として無機物蒸着膜又は有機物コート層を用いる場合、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、チューブ用積層体としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0063】
バリア層として金属箔層を用いる場合、バリア層の厚さは、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、チューブ用積層体としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0064】
(補強層)
補強層は、延伸フィルムから構成されている層であってよい。
【0065】
補強層は、例えばポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等で構成されている延伸フィルムであってよい。
【0066】
補強層が延伸フィルムで構成されている場合、補強層を構成する延伸フィルムは、例えばフラット法延伸によって得られる延伸フィルムであってよく、1軸延伸フィルムであっても2軸延伸フィルムであってもよい。2軸延伸フィルムは、逐次2軸延伸フィルムであっても同時2軸延伸フィルムであってもよく、又はこれらの延伸操作を複数回行って得られる延伸フィルムであってもよい。
【0067】
補強層の厚みは、5μm以上、7μm以上、10μm以上、12μm以上、又は25μm以上であることが、ラミネートチューブに実用的な経時復元性を付与する観点から好ましい。一方で、補強層の厚みは、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下、又は12μm以下であることが、短期形状保持性を損なわず、かつ、ラミネートチューブ原反の総厚みを過度に大きくしない観点から好ましい。
【0068】
〈内側接着層〉
内側接着層は、基材層とシーラント層との間に存在し、それによってこれらを互いに接着している層である。
【0069】
内側接着層としては、外側接着層に関して挙げた接着層を用いることができる。特に、内側接着層は、基材層の材質、特に基材層のうちの最も内側シーラント層側の層の材質に応じて選択されてよい。
【0070】
《ラミネートチューブ容器》
図2に示すように、本発明のラミネートチューブ容器200は、上記のラミネートチューブ容器用積層体100を有する。外側シーラント層110の一部と、内側シーラント層160の一部とが重ね合わせられてヒートシールされることにより、サイドシーム部210を形成するようにして、ラミネートチューブ用積層体100が筒状にされている。
【0071】
また、図示していないが、本発明のラミネートチューブ容器は、肩部及びキャップ部を有する頭部、並びに頭部と反対側に存在している尾シール部を有していてよい。
【0072】
ラミネートチューブ容器には、薬品、化粧品、食品などの内容物を充填することができる。内容物としては、例えば、練り歯磨き、保湿クリーム、日焼け止めなどが挙げられる。
【0073】
ラミネートチューブ容器は、例えば以下の工程を含む方法により製造されることができる:
ラミネートチューブ用積層体を、基材、特に基材のシーラント層が内側となるように丸めながら、積層体の端部同士を重ね合せてヒートシールすることによりサイドシーム部を形成して、胴部を得る工程;及び
胴部の開口部の周縁に、肩部及びキャップ部を有する頭部を結合させて、ラミネートチューブ容器を得る工程。
【実施例0074】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0075】
《積層体の作製》
〈実施例〉
基材層として、以下の層構成を有する積層体を準備した:
LLDPE(55μm)/透明LDPE(80μm)/EAA(20μm)/AL/EMAA(25μm)/PET(12μm)
上記の構成において、LLDPE(55μm)が被印刷層に相当する。
【0076】
上記の積層体のPET側に、2液硬化型ドライラミネート接着剤により、内側シーラント層としてのLLDPEフィルム(厚さ100μm)を接着させた。
【0077】
次いで、被印刷層の全面に、厚さ1μmの下地印刷層を積層させた。下地印刷層としては、ヘキサメチレンジイソシアネートを添加した紫外線硬化型フレキソ黒色インキを用いた。
【0078】
次いで、下地印刷層上の全面に、光輝性印刷層(パール印刷層)を、1度刷りで5μm積層させた。印刷した。
【0079】
光輝性印刷層としては、脂肪族系ポリウレタンアクリレート樹脂(EBECRYL270、ダイセル・オルネクス社)85質量部、パール顔料(Pyrisma、メルク社)10質量部、及びベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さない光重合開始剤(イルガキュア184、IGM Resins B.V.社)5質量部を混合させた組成物を用いた。脂肪族系ポリウレタンアクリレート100質量部に対する光重合開始剤の含有量は、6質量部であった。また、光輝性印刷層は、ポリイソシアネートを含有していなかった。
【0080】
下地印刷層及び光輝性印刷層の積層は、以下の条件でのフレキソ印刷により塗工し、塗工物に紫外線(UV)を照射して硬化させることにより行った。
印刷機:フレキシプルーフ
アニロックスロール:180線/inch
UV照射条件:160W
【0081】
光輝性印刷層と、外側シーラント層としてのLLDPEフィルムとを、外側接着層としての2液硬化型ドライラミネート接着剤を介して接着させて、実施例のラミネートチューブ容器用積層体を作製した。
【0082】
〈比較例1〉
光輝性印刷層として、実施例1における組成物95質量部に対して、ヘキサメチレンジイソシアネート5質量部を添加した組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして、比較例1のラミネートチューブ容器用積層体を得た。
【0083】
〈比較例2〉
光輝性印刷層を積層させず、かつ下地印刷層にイソシアネートを含有させなかったことを除き、実施例1と同様にして、比較例2のラミネートチューブ容器用積層体を得た。
【0084】
〈比較例3〉
光輝性印刷層を積層させなかったことを除き、実施例1と同様にして、比較例3のラミネートチューブ容器用積層体を作製した。
【0085】
《評価》
〈インキの再利用性〉
実施例及び比較例のインキを用意し、常温で8時間放置し、目視により外観を確認した。評価基準は以下のとおりである。
A:気泡が発生せず、再利用可能なものであった。
B:気泡が発生し、再利用不可能なものであった。
【0086】
〈ラミネート強度〉
インキの再利用性の評価が「A」であった実施例及び比較例2に関し、作製したラミネートチューブ容器用積層体を、15mm幅の短冊状に切り出し、外側シーラント層を剥離した試験片を準備した。この試験片を用い、JIS K 6854-3に準拠して、引張試験機によりラミネート強度を測定した。
【0087】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0088】
【0089】
表1から、ポリウレタンアクリレート及び光重合開始剤の特定の組合せを含有しているインキで構成されている光輝性印刷層を含み、かつこのインキがポリイソシアネートを含有していない、実施例のラミネートチューブ容器用積層体は、インキの再利用性及びラミネート強度が良好であることが理解できよう。
【0090】
これに対し、光輝性印刷層のインキがポリイソシアネートを含有している比較例1及び3のインキは、インキの再利用性が良好ではないことが理解できよう。
【0091】
また、比較例2の結果から、ポリウレタンアクリレート及び光重合開始剤の特定の組合せを含有しているインキで構成されていないインキからポリイソシアネートを除いた場合には、十分なラミネート強度が得られないことが理解できよう。