(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176422
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ブロックイソシアネート組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 263/00 20060101AFI20241212BHJP
C07C 265/14 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C07C263/00
C07C265/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094938
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】藤原 篤史
(72)【発明者】
【氏名】稲田 博
(72)【発明者】
【氏名】小杉 裕士
(72)【発明者】
【氏名】大西 一広
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC55
4H006BA07
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA11
4H006BA19
4H006BA22
4H006BA37
4H006BC10
4H006BC11
4H006BD70
(57)【要約】
【課題】連続運転性に優れたブロックイソシアネート組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】第一級アミン化合物と、炭酸誘導体と、ブロック剤とを熱処理により反応させる第1工程と、第1工程で得られた組成物中に含まれる炭酸誘導体を、一般式(I)で表される構造に変換させる第2工程を含む。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一級アミン化合物と、下記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体と、ブロック剤とを熱処理により反応させて第1のブロックイソシアネート組成物を得る第1工程と、前記第1のブロックイソシアネート組成物中に含まれる下記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体を、下記一般式(I)で表される構造に変換させて、第2のブロックイソシアネート組成物を得る第2工程を含む、ブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【化1】
(一般式(I)中、R
11は1価の有機基であり、R
12、R
13、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、1価の有機基又は水素である。)
【化2】
(一般式(II)中、X
1は1価の有機基である。)
【化3】
(一般式(III)中、X
2及びX
3はそれぞれ独立に水素又は一価の有機基である。)
【請求項2】
前記第1工程における前記ブロック剤が、ヒドロキシ化合物、アミン化合物及びアンモニアからなる群より選ばれる1種類以上の化合物を含む、請求項1に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程における前記第一級アミン化合物が、下記一般式(IV)で表されるアミン化合物である、請求項1又は2に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【化4】
(一般式(IV)中、R
41は、n41価の有機基である。n41は1以上12以下の整数である。)
【請求項4】
前記第1工程における前記ブロック剤が、下記一般式(V)で表される芳香族ヒドロキシ化合物である、請求項1又は2に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【化5】
(一般式(V)中、環A
51は、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素環である。R
51は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、炭素数1以上20以下のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1以上20以下のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数6以上20以下のアリールオキシ基、炭素数7以上20以下のアラルキル基、又は炭素数7以上20以下のアラルキルオキシ基である。R
51は、環A
51と結合して環構造を形成してもよい。また、n51は1以上10以下の整数である。)
【請求項5】
前記第1工程における前記ブロック剤が、下記一般式(VI)で表される脂肪族ヒドロキシ化合物である、請求項1又は2に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【化6】
(一般式(VI)中、R
61は、置換又は無置換の、エーテル基、カルボニル基又はエステル基を有してもよい、炭素数1以上24以下の脂肪族炭化水素基である。)
【請求項6】
前記第1工程における前記ブロック剤が、下記一般式(VII)で表される第二級アミン化合物である、請求項1又は2に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【化7】
(一般式(VII)中、R
71及びR
72はそれぞれ独立に、1価の有機基である。R
71及びR
72は互いに結合して、炭素-炭素結合、炭素-酸素-炭素結合又は炭素-窒素-炭素結合により環構造を形成していてもよい。)
【請求項7】
前記第2工程において、下記一般式(VIII)で表される第二級アミン化合物からなる群より選ばれる1種類以上の化合物を含む、請求項1又は2に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【化8】
(一般式(VIII)中、R
81及びR
82はそれぞれ独立に、1価の有機基である。R
81及びR
82は互いに結合して、炭素-炭素結合、炭素-酸素-炭素結合又は炭素-窒素-炭素結合により環構造を形成していてもよい。R
81及びR
82のうち少なくとも1つは芳香族基を有する。)
【請求項8】
前記第2工程において、ルイス酸触媒を前記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体に対して1質量ppb以上含む、請求項1又は2に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックイソシアネート組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートは、ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤等の製造原料として広く用いられている。イソシアネートの主な工業的製造方法は、アミン化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン法)であり、全世界の生産量のほぼ全量がホスゲン法により生産されている。しかしながら、ホスゲン法には、原料のホスゲン及び副生成物の塩化水素に関して、多くの問題がある。
【0003】
このような背景から、ホスゲンを使用しないイソシアネートの製造方法が望まれている。例えば、特許文献1には、非芳香族アミンと、アルキルアリールカーボネートとを反応させてカルバメートを製造し、得られたカルバメートを熱分解して、イソシアネートを製造する方法が記載されている。また、特許文献2には、アルカリ触媒の存在下、ジアミンとジメチルカーボネートとを反応させてウレタン化合物を合成し、次いでウレタン化合物を触媒存在下で熱分解させて、ジイソシアネート化合物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-252846号公報
【特許文献2】特開昭64-85956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸誘導体を用いてイソシアネートを製造する場合、炭酸誘導体の種類によっては、反応器及び配管の閉塞を誘起し、連続運転性を低下させるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、連続運転性に優れたブロックイソシアネート組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
【0008】
(1) 第一級アミン化合物と、下記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体と、ブロック剤とを熱処理により反応させて第1のブロックイソシアネート組成物を得る第1工程と、前記第1のブロックイソシアネート組成物中に含まれる下記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体を、下記一般式(I)で表される構造に変換させて、第2のブロックイソシアネート組成物を得る第2工程を含む、ブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【0009】
【0010】
(一般式(I)中、R11は1価の有機基であり、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、1価の有機基又は水素である。)
【0011】
【0012】
(一般式(II)中、X1は1価の有機基である。)
【0013】
【0014】
(一般式(III)中、X2及びX3はそれぞれ独立に水素又は一価の有機基である。)
【0015】
(2) 前記第1工程における前記ブロック剤が、ヒドロキシ化合物、アミン化合物及びアンモニアからなる群より選ばれる1種類以上の化合物を含む、(1)に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
(3) 前記第1工程における前記第一級アミン化合物が、下記一般式(IV)で表されるアミン化合物である、(1)又は(2)に記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【0016】
【0017】
(一般式(IV)中、R41は、n41価の有機基である。n41は1以上12以下の整数である。)
【0018】
(4) 前記第1工程における前記ブロック剤が、下記一般式(V)で表される芳香族ヒドロキシ化合物である、(1)~(3)のいずれか一つに記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【0019】
【0020】
(一般式(V)中、環A51は、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素環である。R51は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、炭素数1以上20以下のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1以上20以下のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数6以上20以下のアリールオキシ基、炭素数7以上20以下のアラルキル基、又は炭素数7以上20以下のアラルキルオキシ基である。R51は、環A51と結合して環構造を形成してもよい。また、n51は1以上10以下の整数である。)
【0021】
(5) 前記第1工程における前記ブロック剤が、下記一般式(VI)で表される脂肪族ヒドロキシ化合物である、(1)~(3)のいずれか一つに記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【0022】
【0023】
(一般式(VI)中、R61は、置換又は無置換の、エーテル基、カルボニル基又はエステル基を有してもよい、炭素数1以上24以下の脂肪族炭化水素基である。)
【0024】
(6) 前記第1工程における前記ブロック剤が、下記一般式(VII)で表される第二級アミン化合物である、(1)~(3)のいずれか一つに記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【0025】
【0026】
(一般式(VII)中、R71及びR72はそれぞれ独立に、1価の有機基である。R71及びR72は互いに結合して、炭素-炭素結合、炭素-酸素-炭素結合又は炭素-窒素-炭素結合により環構造を形成していてもよい。)
【0027】
(7) 前記第2工程において、下記一般式(VIII)で表される第二級アミン化合物からなる群より選ばれる1種類以上の化合物を含む、(1)~(6)のいずれか一つに記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【0028】
【0029】
(一般式(VIII)中、R81及びR82はそれぞれ独立に、1価の有機基である。R81及びR82は互いに結合して、炭素-炭素結合、炭素-酸素-炭素結合又は炭素-窒素-炭素結合により環構造を形成していてもよい。R81及びR82のうち少なくとも1つは芳香族基を有する。)
【0030】
(8) 前記第2工程において、ルイス酸触媒を前記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体に対して1質量ppb以上含む、(1)~(7)のいずれか一つに記載のブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
上記態様のブロックイソシアネート組成物の製造方法によれば、連続運転性に優れたブロックイソシアネート組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の本実施形態に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0033】
なお、本明細書において、「活性水素」とは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子と結合している水素原子、及び、活性メチレン基の水素原子を指す。例えば、-OH基、-C(=O)OH基、-SH基、-NH2基、-NH-基、-C(=O)-C(-H)2-C(=O)-基等の原子団に含まれる水素原子である。
【0034】
本実施形態に係るブロックイソシアネート組成物の製造方法は、第一級アミン化合物と、下記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体と、ブロック剤とを熱処理により反応させて第1のブロックイソシアネート組成物を得る第1工程と、前記第1のブロックイソシアネート組成物中に含まれる下記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体を、下記一般式(I)で表される構造(以下、「キナゾリンジオン構造(I)」と称する場合がある)に変換させて、第2のブロックイソシアネート組成物を得る第2工程を含む。
【0035】
【0036】
(一般式(I)中、R11は1価の有機基であり、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、1価の有機基又は水素である。)
【0037】
【0038】
(一般式(II)中、X1は1価の有機基である。)
【0039】
【0040】
(一般式(III)中、X2及びX3はそれぞれ独立に水素又は一価の有機基である。)
【0041】
<キナゾリンジオン構造(I)>
キナゾリンジオン構造(I)は、キナゾリン-2,4(1H,3H)-ジオン[quinazoline-2,4(1H,3H)-dione]骨格(以下、「キナゾリンジオン骨格」と称する場合がある)を有する。キナゾリンジオン骨格は、-C(=O)-NH-C(=O)-基に活性水素を含む。
【0042】
ただし、キナゾリンジオン骨格に含まれる-C(=O)-NH-C(=O)-基が、-C(-OH)=N-C(=O)-又は-C(=O)-N=C(-OH)-で表される互変異性を示してもよい。
【0043】
発明者らは、イソシアネートの製造に用いる炭酸誘導体を、キナゾリンジオン構造(I)に変換しながら、ブロックイソシアネート組成物を製造することで、反応器及び配管の閉塞による連続運転性の低下の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0044】
[R11、R12、R13、R14及びR15]
上記一般式(I)中、R11、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、1価の有機基又は水素である。R11及びR12は互いに結合して、炭素-炭素結合、炭素-酸素-炭素結合又は炭素-窒素-炭素結合により環構造を形成していてもよい。
【0045】
中でも、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、置換又は無置換の、エーテル基、カルボニル基、エステル基、イミノ基(-NH-)、アミド基又はイミド基を有してもよい、炭素数1以上70以下の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上70以下の1価の芳香族炭化水素基又は水素であることが好ましい。
【0046】
また、R11は、置換又は無置換の、エーテル基、カルボニル基、エステル基、イミノ基(-NH-)、アミド基又はイミド基を有してもよい、炭素数1以上70以下の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上70以下の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0047】
R11、R12、R13、R14及びR15のうち少なくとも1つにおいて、脂肪族炭化水素基を選択した場合、炭素数は1以上70以下が好ましく、1以上20以下がより好ましく、1以上12以下がさらに好ましく、1以上10以下が特に好ましい。
R11、R12、R13、R14及びR15における脂肪族炭化水素基としては、無置換でも置換基を有してもよい、直鎖のアルキル基、分岐のアルキル基、シクロアルキル基等が挙げられる。これらの脂肪族炭化水素基の置換基としては、例えば、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0048】
R11、R12、R13、R14及びR15における脂肪族炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基の各異性体、ヘキシル基の各異性体、ヘプチル基の各異性体、オクチル基の各異性体、ノニル基の各異性体、デシル基の各異性体、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。中でも、無置換の、炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又はイソブチル基が好ましい。
【0049】
R11、R12、R13、R14及びR15のうち少なくとも1つにおいて、芳香族炭化水素基を選択した場合、炭素数は6以上70以下が好ましく、6以上20以下がより好ましく、6以上12以下がさらに好ましく、6以上10以下が特に好ましい。
R11、R12、R13、R14及びR15における芳香族炭化水素基としては、無置換でも置換基を有してもよい、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基の置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。R11、R12、R13、R14及びR15における芳香族炭化水素基の置換基として選択される脂肪族炭化水素基としては、R11、R12、R13、R14及びR15における脂肪族炭化水素基として例示されたものと同じものが挙げられる。置換基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0050】
R11、R12、R13、R14及びR15における芳香族炭化水素基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントリル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0051】
R11及びR12が互いに結合して環構造を形成する場合、R11及びR12が互いに結合してなる基は、2価の有機基である。R11及びR12が互いに結合してなる基としては、置換又は無置換の、エーテル基、カルボニル基、エステル基、イミノ基(-NH-)、アミド基又はイミド基を有してもよい、炭素数1以上70以下の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上70以下の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0052】
R11及びR12が互いに結合してなる基において、2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
R11及びR12が互いに結合してなる基において、2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基が挙げられる。
【0053】
キナゾリンジオン構造(I)のうち、R11、R11に結合する窒素原子並びにR12、R13、R14及びR15に結合するベンゼン環は、第二級アミン化合物に由来することが好ましい。
【0054】
R11は、R11及びR12が互いに結合して環構造を形成する場合か否かを問わず、キナゾリンジオン骨格の窒素原子と結合する位置に炭素原子を有することが好ましい。R11がキナゾリンジオン骨格の窒素原子と結合する位置における、R11の炭素原子としては、第一級炭素原子、第二級炭素原子、第三級炭素原子又は芳香族性を有する炭素原子であることが好ましい。
【0055】
好ましいキナゾリンジオン構造(I)としては、次の(I-1)、(I-2)及び(I-3)が挙げられる。
【0056】
(I-1)は、上記一般式(I)中、R11は1価の有機基であり、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、1価の有機基又は水素である。
【0057】
(I-1)において、R11としては、置換又は無置換の、炭素数1以上12以下の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上12以下の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。R11として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基の各異性体、ヘキシル基の各異性体、ヘプチル基の各異性体、オクチル基の各異性体、ノニル基の各異性体、デシル基の各異性体、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基等が挙げられる。中でも、無置換の、炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又はイソブチル基が好ましい。
【0058】
(I-1)において、R12、R13、R14及びR15が1価の有機基となる数は、0以上4以下の整数であり、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
R12、R13、R14及びR15のいずれか1つ以上が1価の有機基である場合は、キナゾリンジオン骨格におけるベンゼン環の置換基(以下、「ベンゼン環の置換基」と称する場合がある)となる。ベンゼン環の置換基としては、置換又は無置換の、炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基が挙げられる。ベンゼン環の置換基は、エーテル基、カルボニル基、エステル基を有してもよい。
【0059】
ベンゼン環の置換基が脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である場合としては、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上12以下のアラルキル基が挙げられる。
ベンゼン環の置換基がエーテル基を有する場合としては、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数6以上12以下のアリールオキシ基又は炭素数7以上12以下のアラルキルオキシ基が挙げられる。
ベンゼン環の置換基がカルボニル基を有する場合としては、炭素数1以上12以下のアルキルカルボニル基、炭素数6以上12以下のアリールカルボニル基又は炭素数7以上12以下のアラルキルカルボニル基が挙げられる。
ベンゼン環の置換基がエステル基を有する場合としては、炭素数1以上12以下のアルコキシカルボニル基若しくはアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6以上12以下のアリールオキシカルボニル基若しくはアリールカルボニルオキシ基又は炭素数7以上12以下のアラルキルオキシカルボニル基若しくはアラルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0060】
ベンゼン環の置換基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基の各異性体、ヘキシル基の各異性体、ヘプチル基の各異性体、オクチル基の各異性体、ノニル基の各異性体、デシル基の各異性体、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基等が挙げられる。中でも、無置換の、炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又はイソブチル基が好ましい。
【0061】
(I-2)は、上記一般式(I)中、R11及びR12が互いに結合して、炭素-炭素結合により環構造を形成しており、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、1価の有機基又は水素である。R11及びR12が互いに結合してなる基は、置換又は無置換の、炭素数1以上12以下の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上12以下の2価の芳香族炭化水素基である。
【0062】
R11及びR12が互いに結合してなる基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、フェニレン基等が挙げられる。
R13、R14及びR15がベンゼン環の置換基となる数は、0以上3以下の整数であり、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。(I-2)におけるR13、R14及びR15がベンゼン環の置換基となる場合の具体例としては、(I-1)において、ベンゼン環の置換基として例示されたものと同じものが挙げられる。
【0063】
(I-3)は、上記一般式(I)中、R11及びR12が互いに結合して、炭素-炭素結合、炭素-酸素-炭素結合又は炭素-窒素-炭素結合により環構造を形成しており、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、1価の有機基又は水素である。R11及びR12が互いに結合してなる基は、一般式-R16-Z16-で表される2価の有機基である。キナゾリンジオン骨格に対し、R16はR11が結合するのと同じ窒素原子に結合し、Z16はR12が結合するのと同じ炭素原子に結合する。Z16は、-O-、-NH-又は-C(=O)-である。R16は、置換又は無置換の、炭素数1以上12以下の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上12以下の2価の芳香族炭化水素基である。
【0064】
R16として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、フェニレン基等が挙げられる。
R13、R14及びR15がベンゼン環の置換基となる数は、0以上3以下の整数であり、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。(I-3)におけるR13、R14及びR15がベンゼン環の置換基となる場合の具体例としては、(I-1)において、ベンゼン環の置換基として例示されたものと同じものが挙げられる。
【0065】
上記一般式(I)並びに(I-1)、(I-2)及び(I-3)の中でも、着色低減効果がより高くなることから、R11、R12、R13、R14及びR15並びにR11及びR12が互いに結合してなる基は、オレフィン型又はアセチレン型の不飽和炭素-炭素結合を含まないことが好ましい。R11、R12、R13、R14及びR15並びにR11及びR12が互いに結合してなる基に含まれる炭化水素基は、飽和の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0066】
また、熱安定性の観点から、R11、R12、R13、R14及びR15並びにR11及びR12が互いに結合してなる基は、(I-3)におけるZ16を除き、炭素原子及び水素原子のみから構成される構造であることが好ましい。
【0067】
(I-1)の中では、R11が1価の脂肪族炭化水素基であり、R12、R13、R14及びR15のうち3つ以上が水素であり、R12、R13、R14及びR15のうち1つ以下が無置換の、炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
より好ましい(I-1)としては、R11が炭素数1以上12以下の1価の脂肪族炭化水素基であり、R12、R13、R14及びR15のうち3つ以上が水素であり、R12、R13、R14及びR15のうち1つ以下がメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0068】
(I-2)の中では、R11及びR12が互いに結合してなる基が2価の脂肪族炭化水素基であり、R13、R14及びR15のうち2つ以上が水素であり、R13、R14及びR15のうち1つ以下が無置換の、炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
より好ましい(I-2)としては、R11及びR12が互いに結合してなる基が炭素数1以上12以下の2価の脂肪族炭化水素基であり、R13、R14及びR15のうち2つ以上が水素であり、R13、R14及びR15のうち1つ以下がメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0069】
(I-3)の中では、R16が2価の脂肪族炭化水素基であり、R13、R14及びR15のうち2つ以上が水素であり、R13、R14及びR15のうち1つ以下が無置換の、炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
より好ましい(I-3)としては、R16が炭素数1以上12以下の2価の脂肪族炭化水素基であり、R13、R14及びR15のうち2つ以上が水素であり、R13、R14及びR15のうち1つ以下がメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0070】
<第1工程>
第1工程では、第一級アミン化合物と、上記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体と、ブロック剤とを熱処理により反応させて第1のブロックイソシアネート組成物を得る。
【0071】
第1工程において、第一級アミン化合物とブロック剤との添加量の比は、任意に選択可能である。
モル比で表す場合には、第一級アミン化合物のアミノ基のモル量とブロック剤が有する活性水素のモル量の比が1:1、又は、ブロック剤が有する活性水素のモル量が第一級アミン化合物のアミノ基のモル量よりも多くなる比率で行われることが一般的である。
質量比で表す場合には、ブロック剤が第一級アミン化合物よりも過剰となる量存在することが好ましく、例えば、第一級アミン化合物とブロック剤との添加量が質量比で1:1~1:999とすることができる。
【0072】
第1工程において、第一級アミン化合物と炭酸誘導体との添加量の比は、任意に選択可能である。
モル比で表す場合には、第一級アミン化合物のアミノ基のモル量と炭酸誘導体が有するカルボニル基のモル量の比が1:0.5~1:20の範囲で行われることが一般的である。
質量比で表す場合には、例えば、第一級アミン化合物と炭酸誘導体との添加量が質量比で1:0.01~1:99とすることができる。
【0073】
第1工程の反応温度に関しては、特に限定されず、第一級アミン化合物と炭酸誘導体とブロック剤との、反応速度、熱変性及び着色の程度に応じて適宜選択される。ブロックイソシアネート化合物の変性を抑制する観点から、反応温度は350℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、260℃以下がさらに好ましい。一方、反応温度が低温の場合、凝縮器の温度を低温に設定する必要を生じ、新たな設備を必要とする場合があるため、その観点からは、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。
【0074】
第1工程の反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常、絶対圧で20Pa以上2×107Pa以下の範囲で行われる。
【0075】
第1工程は酸素の存在下で行われていてもよい。第1工程を酸素存在下で実施する場合は、ブロックイソシアネート化合物の熱変性及び着色が引き起こされることから、ブロックイソシアネート化合物の製造装置内の酸素存在量は低減されていることが好ましい。一方、大型の製造設備を考えた場合、ブロックイソシアネート化合物の製造装置内の酸素存在量を下げるためには、製造設備への空気の漏れ込みを低減する必要があり、そのため設備の設計基準がより厳しくなり設備費の増加が引き起こされる。その観点から、第1工程に供給されるガス中の酸素濃度は高い条件で管理することが好ましく、0容積%超で管理することが好ましく、0.0001容積%超で管理することがより好ましく、0.001容積%超で管理することがさらに好ましい。
【0076】
第1工程において、任意の溶媒を任意の割合で用いてもよい。溶媒としては、第一級アミン化合物、炭酸誘導体、ブロック剤、ブロックイソシアネート化合物等との反応性を有さない不活性溶媒が好ましい。そのような溶媒としては、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、リン酸エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒又は炭酸誘導体系溶媒が好ましい。
【0077】
第1工程において、反応混合物は、任意の金属を任意の割合で含んでもよい。金属の形態は、錯体であってもよく、或いは、固体であってもよい。金属は、第一級アミン化合物と炭酸誘導体の反応を促進する一方で、熱変性、劣化、及び着色を引き起こす場合がある。第一級アミン化合物の質量に対して、金属の含有量は10質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.1質量ppm未満がさらに好ましい。
【0078】
第1工程において、反応混合物は、有機酸、無機酸、有機塩基又は無機塩基を含んでいてもよい。これらの酸や塩基は、第一級アミン化合物と炭酸誘導体の反応を促進することができる。一方、これらの酸や塩基はブロックイソシアネートの変性反応の触媒としても作用する。これらの観点から、これらの有機酸や無機酸、有機塩基及び無機塩基の含有量は、ブロックイソシアネート化合物の質量に対して、10質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.1質量%未満がさらに好ましく、1質量ppb未満が特に好ましい。
【0079】
第1工程において、ブロックイソシアネート化合物は、ブロックイソシアネート化合物を含む第1のブロックイソシアネート組成物として得られる。ブロックイソシアネート化合物は、熱分解によりイソシアネート化合物とブロック剤に分解し得る化合物である。
【0080】
なお、ブロックイソシアネート組成物とは、ブロックイソシアネート化合物を組成物中に0質量%超100質量%以下含む組成物を意味する。ブロックイソシアネート組成物中には、ブロックイソシアネート化合物が含まれていることを除き、特に制限は無く、溶媒、ブロック剤、イソシアネート、触媒、第一級アミン化合物等を任意の割合で含んでいてもよい。
【0081】
上記のことから、ブロックイソシアネート化合物としてブロックイソシアネート組成物をそのまま用いてもよく、或いは、ブロックイソシアネート組成物からブロックイソシアネート化合物を精製して用いてもよい。
【0082】
反応装置としては、特に限定されず、公知のブロックイソシアネートの製造装置が使用できる。例えば、凝縮装置及び処理装置からなる群より選ばれる1種以上の装置に接続された容器内に原料等を添加し、容器を加熱して、ブロックイソシアネート化合物の製造を行い、その後或いは同時に炭酸誘導体に由来する化合物を含む蒸気を凝縮装置又は処理装置に導き、ブロックイソシアネート化合物をバッチ方式で合成する装置、所定の反応温度に加熱された蒸留塔に原料等を連続的に導入し、ブロックイソシアネート化合物を製造すると同時に生成した炭酸誘導体に由来する化合物を含む蒸気を分離し、ブロックイソシアネート化合物を連続的に得る装置を用いることができる。また、第一級アミン化合物及び炭酸誘導体をブロック剤の存在下又は非存在下で部分的に又は完全に反応させた後、得られた反応物からブロックイソシアネート化合物を製造することも可能である。
【0083】
反応装置のうち、第一級アミン化合物、炭酸誘導体、及びブロック剤を含む混合物、並びに、反応によって生成するブロックイソシアネート組成物と接触する部位の材質は、第一級アミン化合物、炭酸誘導体、ブロック剤、ブロックイソシアネート化合物、その他の成分の変性等に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよい。材質として具体的には、例えば、鉄鋼、ステンレス、セラミック、カーボン、及びこれらをライニングしたものが挙げられる。
【0084】
<炭酸誘導体>
第1工程において、炭酸誘導体としては、上記一般式(II)及び/又は(III)で表される炭酸誘導体(以下、それぞれ「炭酸誘導体(II)」及び「炭酸誘導体(III)」と称する場合がある)が用いられる。炭酸誘導体(II)及び炭酸誘導体(III)は、少なくとも一つの-C(=O)-NH2基を含む。
【0085】
[炭酸誘導体(II)]
炭酸誘導体(II)は、上記一般式(II)のとおり、-O-C(=O)-NH2基を有する。上記一般式(II)におけるX1としては、1価の有機基であれば特に限定されないが、炭酸誘導体(II)がN-無置換カルバミン酸エステルであることが好ましい。このため、X1は、置換又は無置換の、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であることが好ましい。
【0086】
中でも、X1としては、置換若しくは無置換の、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であることが好ましい。X1のアルキル基、アラルキル基又はアリール基が有する置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0087】
[炭酸誘導体(III)]
炭酸誘導体(III)は、上記一般式(III)のとおり、>N-C(=O)-NH2基を有する。上記一般式(III)におけるX2及びX3としては、それぞれ独立に水素又は一価の有機基であれば、特に限定されないが、炭酸誘導体(III)が、無置換の尿素化合物、一置換の尿素化合物又はN,N-二置換の尿素化合物であることが好ましい。
【0088】
中でも、X2及びX3としては、それぞれ独立に水素又は置換若しくは無置換の、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基若しくは炭素数7以上20以下のアラルキル基であることが好ましい。X2及びX3のアルキル基、アリール基又はアラルキル基が有する置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。X2及びX3を構成する炭素数の合計は0以上20以下の整数であることが好ましい。
【0089】
炭酸誘導体(III)は、無置換のNH2基を少なくとも一つ有する、ビウレット化合物であってもよい。この場合、X2又はX3のいずれか一方が、下記一般式(III-a)で表される基であることが好ましい。
【0090】
R31-(R32-)N-C(=O)- (III-a)
【0091】
上記一般式(III-a)中、R31及びR32は、それぞれ独立に水素又は置換若しくは無置換の、アルキル基、アラルキル基若しくはアリール基である。
【0092】
中でも、R31及びR32としては、それぞれ独立に水素又は置換若しくは無置換の、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基若しくは炭素数7以上20以下のアラルキル基であることが好ましい。R31及びR32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基が有する置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。R31及びR32を構成する炭素数の合計は0以上20以下の整数であることが好ましい。
【0093】
炭酸誘導体(III)は、無置換のNH2基を有する、アロファネート化合物であってもよい。この場合、X2又はX3のいずれか一方が、下記一般式(III-b)で表される基であることが好ましい。
【0094】
R33-O-C(=O)- (III-b)
【0095】
上記一般式(III-b)中、R33は、置換又は無置換の、アルキル基、アラルキル基又はアリール基である。
【0096】
中でも、R33としては、置換又は無置換の、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であることが好ましい。R33のアルキル基、アリール基又はアラルキル基が有する置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。R33を構成する炭素数の合計は1以上20以下の整数であることが好ましい。
【0097】
<第一級アミン化合物>
第1工程における第一級アミン化合物としては、下記一般式(IV)で表されるアミン化合物(以下、「第一級アミン化合物(IV)」と称する場合がある)が好ましく用いられる。
【0098】
【0099】
(一般式(IV)中、R41は、n41価の有機基である。n41は1以上12以下の整数である。)
【0100】
R41としては、1価以上12価以下の有機基であれば特に限定されないが、炭素原子及び水素原子からなる有機基(炭化水素基)又は炭素原子、酸素原子及び水素原子からなる有機基であることが好ましく、活性水素を有しない有機基であることがより好ましい。R41が有する酸素原子は、エーテル基又はエステル基を構成することが好ましい。
【0101】
R41における脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルキレン基、アルカントリイル基、シクロアルキル基、シクロアルキレン基若しくはシクロアルカントリイル基、又は、これらの二つ以上から構成される基が好ましい。
【0102】
R41における芳香族炭化水素基としては、置換又は無置換の炭素数6以上13以下の芳香環を有する基が好ましい。置換基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0103】
第一級アミン化合物(IV)としては、単官能第一級アミン化合物、2官能第一級アミン化合物、多官能第一級アミン化合物が挙げられる。
【0104】
単官能第一級アミン化合物においてR41となる1価の有機基としては、置換又は無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0105】
2官能第一級アミン化合物においてR41となる2価の有機基としては、置換又は無置換の、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アリーレンジアルキレン基、アルキレンジアリーレン基、アルキレンジシクロアルキレン基等が挙げられる。2官能第一級アミン化合物が、イソホロンジアミン等の、アミノアルキル基を有する化合物であってもよく、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジアミン等の、アミノシクロアルキル基を有する化合物であってもよく、ジフェニルメタンジアミン等の、アミノアリール基を有する化合物であってもよく、リジンアルキルエステル等の、カルボニル基を有する化合物であってもよい。
【0106】
多官能第一級アミン化合物においてR41となる多価の有機基としては、置換又は無置換の、アルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、アレーントリイル基等が挙げられる。多官能第一級アミン化合物が、4-アミノメチル-1,8-オクタメチレンジアミン等の、アミノアルキル基を有する化合物であってもよく、リジンアミノアルキルエステル等の、カルボニル基を有する化合物であってもよい。
【0107】
<ブロック剤>
ブロック剤は、活性水素を有する化合物である。第1工程におけるブロック剤が、ヒドロキシ化合物、アミン化合物及びアンモニアからなる群より選ばれる1種類以上の化合物を含むことが好ましい。また、ヒドロキシ化合物としては、芳香族ヒドロキシ化合物及び脂肪族ヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種類以上の化合物が挙げられる。
【0108】
[芳香族ヒドロキシ化合物であるブロック剤]
ブロック剤として好ましい芳香族ヒドロキシ化合物としては、下記一般式(V)で表される芳香族ヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0109】
【0110】
(一般式(V)中、環A51は、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素環である。R51は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、炭素数1以上20以下のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1以上20以下のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数6以上20以下のアリールオキシ基、炭素数7以上20以下のアラルキル基、又は炭素数7以上20以下のアラルキルオキシ基である。R51は、環A51と結合して環構造を形成してもよい。また、n51は1以上10以下の整数である。)
【0111】
環A51は、単環でもよく、縮合環等の多環でもよい。環A51として具体的には、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ナフタセン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、ペンタレン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ビフェニレン環、アセナフチレン環、アセアントリレン環、アセフェナントリレン環等が挙げられる。中でも、環A51としては、ベンゼン環、ナフタレン環、又はアントラセン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0112】
一般式(V)に示すヒドロキシ基は、環A51において芳香族性を有する炭素原子と結合し、フェノール性を有する。環A51及びn51個のR51を有する芳香族炭化水素基は、置換又は無置換の、アリール基等の、1価の芳香族炭化水素基であってもよい。
【0113】
R51は、水素原子を除いて、環A51の置換基である。環A51は、一般式(V)に示したとおり、一つのヒドロキシ基と、n51個のR51を有する。n51個のR51はそれぞれ独立に、R51において例示された群から互いに異なるものを選択してもよく、同一のものを二つ以上選択してもよい。環A51は、上記R51以外にも、環A51を構成する炭素原子と結合した水素原子及び/又は置換基を有していてもよい。環A51を構成する炭素原子と結合した水素原子、置換基及び官能基が、一般式(V)に示した一つのヒドロキシ基及びn51個のR51のみでもよい。
【0114】
[脂肪族ヒドロキシ化合物であるブロック剤]
ブロック剤として好ましい脂肪族ヒドロキシ化合物としては、下記一般式(VI)で表される脂肪族ヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0115】
【0116】
(一般式(VI)中、R61は、置換又は無置換の、エーテル基、カルボニル基又はエステル基を有してもよい、炭素数1以上24以下の脂肪族炭化水素基である。)
【0117】
R61は、1価の脂肪族炭化水素基である。R61における脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上24以下であり、1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましい。R61における脂肪族炭化水素基は飽和でも、不飽和でもよい。一般式(VI)に示した一つのヒドロキシ基は、R61において飽和の炭素原子と結合して、アルコール性を有する。
【0118】
[第二級アミン化合物であるブロック剤]
ブロック剤として好ましい第二級アミン化合物としては、下記一般式(VII)で表される第二級アミン化合物(以下、「第二級アミン化合物(VII)」と称する場合がある)が挙げられる。
【0119】
【0120】
(一般式(VII)中、R71及びR72はそれぞれ独立に、1価の有機基である。R71及びR72は互いに結合して、炭素-炭素結合、炭素-酸素-炭素結合又は炭素-窒素-炭素結合により環構造を形成していてもよい。)
【0121】
中でも、R71及びR72は、置換又は無置換の、エーテル基、カルボニル基、又はエステル基を有してもよい、炭素数1以上70以下の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上70以下の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。R71及びR72は、活性水素を含まない有機基であることが好ましく、置換又は無置換のアミノ基を含まない有機基であることがより好ましい。
【0122】
R71及びR72における脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基等が挙げられる。R71及びR72における脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上70以下が好ましく、1以上20以下がより好ましく、1以上12以下がさらに好ましく、1以上10以下が特に好ましい。R71及びR72における脂肪族炭化水素基の置換基としては、例えば、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0123】
R71及びR72における芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。R71及びR72における芳香族炭化水素基の炭素数は、6以上70以下が好ましく、6以上20以下がより好ましく、6以上12以下がさらに好ましく、6以上10以下が特に好ましい。R71及びR72における芳香族炭化水素基の置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0124】
R71及びR72が互いに結合して環構造を形成する場合、R71及びR72が互いに結合してなる基は、2価の有機基である。R71及びR72が互いに結合してなる基としては、置換又は無置換の、エーテル基、カルボニル基、エステル基、置換イミノ基(-N(-R73)-)、-CH=N-基、置換アミド基(-C(=O)-N(-R74)-)又は置換イミド基(-C(=O)-N(-R75)-C(=O)-)を有してもよい、炭素数1以上70以下の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上70以下の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。R73、R74及びR75としては、1価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0125】
<第2工程>
第2工程は、第1工程で得られた第1のブロックイソシアネート組成物中に含まれる炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)を、キナゾリンジオン構造(I)に変換させる。これにより、第2のブロックイソシアネート組成物が得られる。
【0126】
第2工程の反応温度及び反応圧力は、特に限定されないが、第1工程の反応温度及び反応圧力と同一でも異なってもよい。第2工程は、第1工程と同一の反応混合物中で実施されてもよい。連続運転性の観点では、第1工程及び第2工程が、同一の反応装置で実施されてもよい。
【0127】
第2工程は、第2工程を実施する反応装置から、溶媒を回収する工程を含んでもよい。
【0128】
炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)は、ビウレットおよびシアヌル酸といった副生成物を生成する場合があり、これらは堆積物の原因となり得るため、配管の閉塞を誘起し、連続運転性を低下させるおそれがある。第2工程において、炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)を、キナゾリンジオン構造(I)に変換させ、第2のブロックイソシアネート組成物を得ることにより、連続運転性に優れた製造方法となる。
【0129】
第2のブロックイソシアネート組成物で低減される炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)は、第1工程で用いられる炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)と同一の化合物でもよく、互いに異なる化合物でもよい。炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)の中でも、配管の閉塞を誘起する化合物が低減されることが好ましい。
【0130】
<第二級アミン化合物(VIII)>
第2工程において、下記一般式(VIII)で表される第二級アミン化合物(以下、「第二級アミン化合物(VIII)」と称する場合がある)からなる群より選ばれる1種類以上の化合物を含むことが好ましい。
【0131】
【0132】
(一般式(VIII)中、R81及びR82はそれぞれ独立に、1価の有機基である。R81及びR82は互いに結合して、炭素-炭素結合、炭素-酸素-炭素結合又は炭素-窒素-炭素結合により環構造を形成していてもよい。R81及びR82のうち少なくとも1つは芳香族基を有する。)
【0133】
第二級アミン化合物(VIII)におけるR81及びR82としては、R81及びR82のうち少なくとも1つに芳香族基を有する限り、第二級アミン化合物(VII)におけるR71及びR72として例示されたものと同じものが挙げられる。第二級アミン化合物(VIII)は、第二級アミン化合物(VII)と同一の化合物でもよく、異なる化合物でもよい。第二級アミン化合物(VIII)は、第2工程において第1のブロックイソシアネート組成物に添加されてもよい。
【0134】
第二級アミン化合物(VIII)は、炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)と反応して、キナゾリンジオン構造(I)に変換される化合物であってもよい。この場合の第二級アミン化合物(VIII)は、R81及びR82の一つが、キナゾリンジオン構造(I)のR11と同一であり、かつ、R81及びR82の他の一つが、キナゾリンジオン構造(I)のベンゼン環並びにR12、R13、R14及びR15を有する、置換又は無置換のフェニル基である。第二級アミン化合物(VIII)のR81及びR82が互いに結合して環構造を形成している場合は、それに対応して、キナゾリンジオン構造(I)のR11及びR12が互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0135】
第2工程において、第二級アミン化合物(VIII)と炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)との添加量の比は、任意に選択可能である。
モル比で表す場合には、第二級アミン化合物(VIII)のモル量と炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)のモル量の比が1:1でもよく、第二級アミン化合物(VIII)のモル量が炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)のモル量よりも多くなる比率でもよく、炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)のモル量が第二級アミン化合物(VIII)のモル量よりも多くなる比率でもよい。
【0136】
[ルイス酸触媒]
第2工程において、ルイス酸触媒を炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)に対して1質量ppb以上含むことが好ましい。ルイス酸触媒としては、例えば金属化合物等が挙げられる。ルイス酸触媒は、Ti,Zr,Fe,Ru,Rh,Pd等の遷移金属又はZn,Al,Sn等の典型金属を含んでもよい。金属化合物としては、金属塩化物等が挙げられる。
【実施例0137】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、原料として使用した試薬はいずれも精製品を使用した。
【0138】
[実施例1~23]
充填剤の充填された凝縮管(凝縮管の凝縮液は500mLのSUS製耐圧容器中に入る構造)及びアンモニアトラップを備える500mLのSUS製耐圧容器中に、表1の(IV)に示す第一級アミン化合物、表1の(II)及び(III)に示す炭酸誘導体、表1の(V)~(VII)に示すブロック剤を加え、耐圧容器内温を240℃、凝縮管の温度を60℃に設定した。また窒素ボンベと酸素ボンベから合成ガスを生成し、酸素濃度計で合成ガス中の酸素濃度が0.1VOL%であることを確認した後、耐圧容器に合成ガスを供給して絶対圧405kPaになるよう調整し、その後2時間反応させた。その後、表1の(VIII)に示す第二級アミン化合物及び表1の「触媒」に示す金属塩化物を反応混合物に加え、表1の「第2工程」における反応温度(Tre)、絶対圧による反応圧力(Pre)、凝縮管温度(Tco)、反応時間(t)に示す反応条件で反応させた。得られた反応液中に含まれる炭酸誘導体、遊離のブロック剤及び遊離の第二級アミン化合物を減圧留去し、ブロックイソシアネート組成物を得た。
【0139】
得られたブロックイソシアネート組成物を分析し、炭酸誘導体とブロック剤との反応生成物(表1では、単に「生成物」と称する)、ビウレット、MPBIU及び一般式(I)で表される化合物のmol%を求めた。
【0140】
[比較例1]
第2工程において、表1の「(VIII)」に示す第二級アミン化合物及び表1の「触媒」に示す金属塩化物を反応混合物に添加しないことを除き、実施例1~23と同様の方法で、ブロックイソシアネート組成物を製造した。
【0141】
なお、以下の表において、各略称は以下の化合物を意味する。
【0142】
(第一級アミン化合物)
HDA:1,6-ヘキサメチレンジアミン
IPDA:イソホロンジアミン(異性体混合物)
TDA:ジアミノトルエン(異性体混合物)
MDA:ジフェニルメタンジアミン(異性体混合物)
【0143】
(炭酸誘導体)
BIURET:ビウレット
MPBIU:1-メチル-1-フェニルビウレット
【0144】
(ブロック剤)
PhOH:フェノール
o-cresol:o-クレゾール
m-cresol:m-クレゾール
p-cresol:p-クレゾール
n-BuOH:ノルマルブタノール
【0145】
(第二級アミン化合物)
NMA:N-メチルアニリン
NEA:N-エチルアニリン
NBA:N-ブチルアニリン
DPA:N,N-ジフェニルアミン
【0146】
【0147】
表1から、遊離の炭酸誘導体を一般式(I)で表される構造に変換させた場合、炭酸誘導体とブロック剤との反応生成物の量が低減した。炭酸誘導体とブロック剤との反応生成物は、炭酸誘導体(II)及び/又は炭酸誘導体(III)に該当する化合物である。
遊離の炭酸誘導体を一般式(I)で表される構造に変換させない場合、炭酸誘導体とブロック剤との反応生成物からなる炭酸誘導体が大量に残存した。