(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176426
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】内燃機関制御装置及び内燃機関の制御方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
F02D45/00 368
F02D45/00 364G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094946
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】助川 義寛
(72)【発明者】
【氏名】赤城 好彦
(72)【発明者】
【氏名】押領司 一浩
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384BA29
3G384DA38
3G384FA01Z
3G384FA06Z
3G384FA11Z
3G384FA28Z
3G384FA33Z
3G384FA37Z
3G384FA58Z
(57)【要約】
【課題】ピストン温度の推定精度が低下することを抑制できる内燃機関制御装置及び内燃機関の制御方法を提供する。
【解決手段】内燃機関制御装置は、ピストン温度推定部12と、温度補正判定部15と、温度補正部14と、目標量算出部16と、を備えている。ピストン温度推定部12は、内燃機関のピストン温度を推定する。温度補正判定部15は、ピストン推定温度を補正する補正タイミングであるか否かを判定する。温度補正部14は、温度補正判定部15において判定された補正タイミングでピストン温度推定部12によって推定されたピストン推定温度を所定温度に補正する。目標量算出部16は、ピストン推定温度又は温度補正部によって所定温度に補正されたピストン温度に基づいて、内燃機関のアクチュエータの制御目標量を算出する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に設けたセンサからのセンサ出力及びアクチュエータ操作量、内燃機関状態量に基づいて前記内燃機関のピストン温度を推定するピストン温度推定部と、
前記センサ出力及びアクチュエータ操作量、内燃機関状態量に基づいて、前記ピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度を補正する補正タイミングであるか否かを判定する温度補正判定部と、
前記温度補正判定部において判定された前記補正タイミングで前記ピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度を所定温度に補正する温度補正部と、
前記ピストン温度推定部によって推定された前記ピストン推定温度又は前記温度補正部によって前記所定温度に補正された前記ピストン温度に基づいて、前記内燃機関のアクチュエータの制御目標量を算出する目標量算出部と、
を備えた内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記温度補正判定部は、少なくとも前記ピストン温度が原因のノックが発生したタイミングを前記補正タイミングと判定する
請求項1に記載の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記温度補正判定部は、少なくとも前記ピストン推定温度とノック時の前記ピストン温度との偏差が所定以上の場合で、かつ、前記ピストン温度が原因のノックが発生したタイミングを前記補正タイミングと判定する
請求項2に記載の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記温度補正判定部は、前記内燃機関のオイルジェット流量が変化したときのノック強度の変化に基づいて、ノックの発生原因が、前記ピストン温度が原因のノックであるか否かを判定する
請求項2に記載の内燃機関制御装置。
【請求項5】
前記温度補正判定部は、点火時期が一定の状態で、前記オイルジェット流量の変化に対するノック強度の変化が予め設定した所定値よりも大きい場合、前記ピストン温度が原因のノックであると判定する
請求項4に記載の内燃機関制御装置。
【請求項6】
前記温度補正判定部は、オイルジェット流量が変化したときの点火時期の変化に基づいて、ノックの発生原因が、前記ピストン温度が原因のノックであるか否かを判定する
請求項2に記載の内燃機関制御装置。
【請求項7】
前記温度補正判定部は、ノック強度が一定の状態で、前記オイルジェット流量の変化に対する点火時期の変化が予め設定した所定値よりも大きい場合、前記ピストン温度が原因のノックであると判定する
請求項6に記載の内燃機関制御装置。
【請求項8】
前記温度補正判定部は、前記内燃機関の油温と水温との温度差に基づいて、ノックの発生原因が、前記ピストン温度が原因のノックであるか否かを判定する
請求項2に記載の内燃機関制御装置。
【請求項9】
前記温度補正判定部は、前記油温から前記水温を引いた温度差が予め設定した所定値より大きい場合に前記ピストン温度が原因のノックと判定する
請求項8に記載の内燃機関制御装置。
【請求項10】
前記温度補正部は、ノックが発生した際の前記ピストンの温度を前記所定温度に設定する
請求項1に記載の内燃機関制御装置。
【請求項11】
前記温度補正部は、前記内燃機関の外乱に基づいて、前記所定温度を変更する
請求項10に記載の内燃機関制御装置。
【請求項12】
前記温度補正部は、前記外乱として、燃料のオクタン価、燃料のアルコール濃度、燃料の蒸発潜熱、前記内燃機関の回転速度、吸入空気の湿度、EGR率、吸入空気量、吸入空気の圧力、吸入空気の温度、空燃比、圧縮比、デポジット堆積量の少なくともひとつの大きさに基づいて、前記所定温度を変更する
請求項11に記載の内燃機関制御装置。
【請求項13】
内燃機関に設けたセンサからのセンサ出力及びアクチュエータ操作量、内燃機関状態量に基づいて前記内燃機関のピストン温度をピストン温度推定部で推定する処理と、
前記センサ出力及びアクチュエータ操作量、内燃機関状態量に基づいて、前記ピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度を補正する補正タイミングであるか否かを温度補正判定部で判定する処理と、
前記温度補正判定部において判定された前記補正タイミングで前記ピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度を所定温度に温度補正部で補正する処理と、
前記ピストン温度推定部によって推定された前記ピストン推定温度又は前記温度補正部によって前記所定温度に補正された前記ピストン温度に基づいて、前記内燃機関のアクチュエータの制御目標量を目標量算出部で算出する処理と、
を含む内燃機関の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関制御装置及び内燃機関の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、車両に搭載された内燃機関は、気温、湿度、気圧等の特定の環境条件で適合された各種アクチュエータの操作量に応じて動作する。例えば、実路走行時においては、適合時に想定する環境条件や内燃機関の運転条件から外れた条件で走行する場合がある。この環境条件は、各種センサを用いて検出され、検出した条件に応じた操作量の補正が行われる。
【0003】
また、実路走行時に、適合条件となるのは環境条件だけでなく、内燃機関そのものの状態(例えば壁温、冷却水温、部品)が変化し、適合時に想定した状態からずれる。このため、実路走行時に自動車の各種性能(燃費性能、排気性能)の向上には、内燃機関の状態を推定、検知することで運転中の状態を把握し、把握した内燃機関の状態に応じたアクチュエータの操作が重要になる。
【0004】
内燃機関の性能に関わる状態としては、内燃機関のピストン温度がある。ピストン温度は、燃費性能や排気性能に対して影響するアクチュエータの操作量に関連する物理量である。例えば、ピストン温度が高い条件では、ピストン近くのガスの加熱が進むため、異常燃焼(ノッキング)が発生しやすくする。一方で、ピストン温度が低い条件では、ピストンに付着した燃料が液体のまま残存しやすいため、未燃炭化水素や、すすの発生につながり排気性能が悪化する可能性がある。そのため、内燃機関に設けた各種アクチュエータを操作するためには、ピストン温度の推定精度を向上させることが求められている。
【0005】
ピストン温度を推定し、内燃機関に設けたアクチュエータを制御する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、エンジン状態推定部と、壁面温度推定部と、操作量算出部と、を備えた内燃機関制御装置が記載されている。エンジン状態推定部は、運転条件に関するパラメータ及び燃焼の化学的条件に関するパラメータ、動作状況に関するパラメータに基づいて、ガスから壁面へのエネルギ伝達量を算出する。壁面温度推定部は、ガスから壁面へのエネルギ伝達量に基づいて、壁面温度を推定する。そして、操作量算出部は、壁面温度推定部が推定した壁面温度に基づいて、内燃機関に設けたアクチュエータの操作量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、内燃機関内のガスからピストンへのエネルギ伝達量を時間積分することでピストン温度を推定していた。また、時間積分の過程で、内燃機関内のガスからピストンへのエネルギ伝達量に含まれる誤差が蓄積される。そのため、特許文献1に記載された技術では、ピストン温度の推定精度が時間経過とともに低下するという問題を有していた。
【0008】
本目的は、上記の問題点を考慮し、ピストン温度の推定精度が低下することを抑制できる内燃機関制御装置及び内燃機関の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するため、内燃機関制御装置は、ピストン温度推定部と、温度補正判定部と、温度補正部と、目標量算出部と、を備えている。ピストン温度推定部は、内燃機関に設けたセンサからのセンサ出力及びアクチュエータ操作量、内燃機関状態量に基づいて内燃機関のピストン温度を推定する。温度補正判定部は、センサ出力及びアクチュエータ操作量、内燃機関状態量に基づいて、ピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度を補正する補正タイミングであるか否かを判定する。温度補正部は、温度補正判定部において判定された補正タイミングでピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度を所定温度に補正する。目標量算出部は、ピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度又は温度補正部によって所定温度に補正されたピストン温度に基づいて、内燃機関のアクチュエータの制御目標量を算出する。
【0010】
また、内燃機関の制御方法は、以下(1)から(4)に示す処理を含む。
(1)内燃機関に設けたセンサからのセンサ出力及びアクチュエータ操作量、内燃機関状態量に基づいて内燃機関のピストン温度をピストン温度推定部で推定する処理。
(2)センサ出力及びアクチュエータ操作量、内燃機関状態量に基づいて、ピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度を補正する補正タイミングであるか否かを温度補正判定部で判定する処理。
(3)温度補正判定部において判定された補正タイミングでピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度を所定温度に温度補正部で補正する処理。
(4)ピストン温度推定部によって推定されたピストン推定温度又は温度補正部によって所定温度に補正されたピストン温度に基づいて、内燃機関のアクチュエータの制御目標量を目標量算出部で算出する処理。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の内燃機関制御装置及び内燃機関の制御方法によれば、ピストン温度の推定精度が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置により制御される内燃機関を示す概略構成図である。
【
図2】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置における目標点火時期の決定動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置における目標オイルジェット流量の決定動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置におけるピストン温度・目標量算出部の構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置におけるピストン温度推定部の構成を示すブロック図である。
【
図7】ピストンへのエネルギ伝達量にプラス誤差が生じていた場合のピストン推定温度と実際のピストン温度の時間履歴を示す説明図である。
【
図8】ピストン温度とノック強度の関係を示す説明図である。
【
図9】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置におけるピストン推定温度の補正タイミングの決定動作を示すフローチャートである。
【
図10】オイルジェット流量とノック強度の関係を示す説明図である。
【
図11】オイルジェット流量と点火時期の関係を示す説明図である。
【
図12】油温と水温の温度差とノック原因の関係を示す説明図である。
【
図13】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置における温度補正指令と温度補正値の決定動作を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置におけるピストン推定温度の算出動作を示したフローチャートである。
【
図15】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置におけるピストン推定温度の補正動作によるノック判定、温度補正判定、ピストン推定温度、ピストン温度推定誤差の時間履歴の例を示した説明図である。
【
図16】燃料のオクタン価、燃料中のアルコール濃度、燃料の蒸発潜熱、内燃機関の回転速度、吸入空気の湿度、EGR率(吸入空気に対する再循環ガスの質量比)の変化に対するノック時ピストン温度の変化の例を示した説明図である。
【
図17】吸入空気量、吸入空気の圧力、吸入空気の温度、空燃比、圧縮比、燃焼室へのデポジッド堆積量の変化に対するノック時ピストン温度の変化の例を示した説明図である。
【
図18】ピストン推定温度とノックリスク度との関係を示した説明図である。
【
図19】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置における目標量算出部で実施されるノックリスク度に基づいたオイルジェット流量の決定方法の一例を示した説明図である。
【
図20】実施の形態例にかかる内燃機関制御装置における目標量算出部で実施されるノックリスク度に基づいたオイルジェット流量の決定方法の他の例を示した説明図である。
【
図21】
図21A及び
図21Bは、実施の形態例にかかる内燃機関制御装置におけるノックリスク度に基づいた点火進角速度の決定方法の一例を示した説明図である。
【
図22】ノック判定、目標点火時期、ピストン温度、ノックリスク度の時間履歴の例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、内燃機関制御装置の実施の形態例について、
図1~
図22を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0014】
1.実施の形態例
まず、実施の形態例(以下、「本例」という)にかかる内燃機関制御装置について、
図1からを参照して説明する。
図1は、内燃機関を示す概略構成図である。
【0015】
1-1.内燃機関の構成例
まず、内燃機関の構成例について説明する
図1に示す内燃機関100は、吸入行程、圧縮行程、燃焼(膨張)行程、排気行程の4行程を繰り返す、火花点火式の4サイクルガソリン内燃機関である。さらに、内燃機関100は、例えば、4つの気筒(シリンダ)を備えた多気筒エンジンである。なお、内燃機関100が有する気筒の数は、4つに限定されるものではなく、6つ又は8つ以上の気筒を有していてもよい。または、内燃機関100が有する気筒の数は、3つ以下の気筒を有していてもよい。また、内燃機関100のサイクル数は、4サイクルに限定されるものではない、
【0016】
図1に示すように、内燃機関100は、シリンダヘッド24と、シリンダブロック23と、ピストン25と、吸気弁26と、排気弁27と、を備えている。そして、シリンダヘッド24、シリンダブロック23、ピストン25、吸気弁26及び排気弁27によって燃焼室が形成されている。シリンダヘッド24には、点火プラグ及び点火コイル22が設置されている。
【0017】
また、内燃機関100は、電子制御スロットル弁31と、吸気ポート32と、排気ポート33と、触媒コンバータ34と、燃料噴射装置35と、を備えている。さらに、内燃機関100は、エアフローセンサ36と、空燃比センサ37と、ノックセンサ38と、油温センサ39と、オイルパン40と、水温センサ41とを備えている。そして、内燃機関100は、ECU(Engine Control Unit)2によって制御される。
【0018】
燃焼用の空気は、電子制御スロットル弁31及び吸気ポート32を通って、燃焼室内に取り込まれる。そして、燃焼室から排出される燃焼後のガス(排気ガス)は、排気ポート33及び触媒コンバータ34を通って大気に排出される。また、燃料は、燃料噴射装置35によって吸気ポート32内に供給される。
【0019】
燃焼室に取り込まれる空気の量は、電子制御スロットル弁31の上流側に設けられたエアフローセンサ36の出力をECU2が読み取ることによって計量される。また、エアフローセンサ36内には、温度センサや湿度センサが併設されている。そして、エアフローセンサ36の出力をECU2が読み取ることで、吸入する空気の温度と湿度が検出される。
【0020】
燃焼室から排出されたガス(排気ガス)の空燃比は、触媒コンバータ34の上流側に設けられた空燃比センサ37の出力をECU2が読み取ることで検出される。また、シリンダブロック23にはノックセンサ38が設けられている。ECU2は、ノックセンサ38の出力を読み取ることで、燃焼室内のノック状態を検出する。
【0021】
また、シリンダブロック23内には水ジャケット42が設けられており、図示しない冷却水ポンプによって水ジャケット42に冷却水が流れることで、シリンダブロック23が冷却される。冷却水の熱は、図示しないラジエータによって大気中に放出される。水ジャケット42には、水温センサ41が設置されている。そして、水温センサ41の出力をECU2が読み取ることで冷却水の温度(水温)が検出される。
【0022】
シリンダブロック23の下部には、オイルを貯留するオイルパン40が設けられている。そして、オイルパン40には、油温センサ39が設けられている。油温センサ39の出力をECU2が読み取ることでオイルの温度(油温)が検出される。
【0023】
さらに、シリンダブロック23には、オイルジェット53が取り付けられる。オイルジェット53は、ピストン25の裏面側へ向けてオイルを噴射することでピストン25を冷却する機能を有する。
【0024】
オイルジェット53が噴射するオイルの流量(オイルジェット流量)は、オイルジェット53に接続された図示しないオイルポンプのオイル吐出圧によって変化する。または、オイルジェット53が噴射するオイルの流量は、オイルジェット53に内蔵された図示しないバルブ機構の開度によって変化する。オイルポンプの吐出圧又はオイルジェット53に内蔵されたバルブ機構の開度は、ECU2から送出される操作信号値によって変更される。
【0025】
シリンダブロック23には、オイルジェット53を含めたオイル供給部位へオイルを供給するオイル供給通路(メインギャラリー)56が設けられている。シリンダブロック23の下部に設けられたオイルパン40に貯留されているオイルは、図示しないオイルポンプにより加圧される。そして、オイルポンプによって加圧されたオイルは、オイル供給通路56を介して、オイルジェット53の他、潤滑部位や油圧作動機器等へ供給される。
【0026】
オイルジェット53の構造としては、例えば、ダイキャスト型、ろう付け2ピース型、及びろう付け一体型が挙げられる。ダイキャスト型やろう付け2ピース型の場合、チェックボールを内蔵した固定ボルトによりオイルジェット53がシリンダブロック23へ締結される。ろう付け一体型で、バルブ機構を内蔵している場合には、チェックボールを内蔵していない一般的な固定ボルトによりオイルジェット53がシリンダブロック側へ固定される。
【0027】
チェックボールは、スプリングによりオイル供給通路56内のオイル油圧がスプリングのセット荷重を上回ることによりオイルがオイルジェット53へ供給される。つまり、内燃機関100のオイル供給通路56へ供給されるオイルの油圧が所定値以上となると自発的にオイルが噴射するようにオイルジェット53が構成されている。
【0028】
一方、オイルジェット53がバルブ機構を内蔵している場合には、このバルブをソレノイド式とし、その開度を調整することでオイルジェットの停止や、噴射時のオイルジェット流量が調整される。
【0029】
吸気弁26及び排気弁27の開閉タイミングは、図示しないバルブタイミング可変機構によって調整される。
【0030】
ECU2は、アクセル開度センサ62の出力信号に基づいて、要求トルクを演算する。すなわち、アクセル開度センサ62は、内燃機関100への要求トルクを検出する要求トルク検出センサとして用いられる。また、ECU2は、クランク角度センサ10の出力信号に基づいて、内燃機関100の回転速度を演算する。そして、ECU2は、各種センサの出力から得られる内燃機関100の運転状態に基づき、空気流量、燃料噴射量、点火時期、燃料圧力、油圧、バルブタイミング等の内燃機関100の主要な作動量を最適に演算する。
【0031】
ECU2により演算した燃料噴射量は、開弁パルス信号に変換され、燃料噴射装置35に出力される。また、ECU2により演算された点火時期は、点火信号として点火コイル22に出力される。さらに、ECU2により演算されたスロットル開度は、スロットル駆動信号として電子制御スロットル弁31に出力される。
【0032】
また、内燃機関100は、吸気ポート(吸気管)32と排気ポート(排気管)33とを接続する不図示のEGR(Exhaust Gas Recirculation)配管を設けてもよい。そして、このEGR配管により、排気ポート33を通過する排気ガスの一部を吸気ポート32に戻してもよい。この場合、ECU2は、各種センサの出力から得られる内燃機関100の運転状態に基づき、EGR配管に設けた流量調整バルブの開度を操作することで、吸気ポート32に戻す排気ガスの流量(EGR量)を調整する。
【0033】
また、内燃機関100は、不図示の圧縮比可変機構を設けてもよい。圧縮比可変機構は、ピストン25のストローク量を調整することで圧縮比を変更する機構である。この場合、ECU2は、各種センサの出力から得られる内燃機関100の運転状態に基づき、不図示の圧縮比可変機構を操作することで、内燃機関100の圧縮比を調整する。
【0034】
また、内燃機関100の燃料は、ガソリン、アルコール(エタノール、メタノール)、合成燃料(eFuel)などの液体燃料や、メタン、プロパン、水素、アンモニア等の気体燃料、これらを混合した混合燃料などが使用される。
【0035】
1-2.ECUの構成例
次に、
図2を参照してECU2の構成例について説明する。
図2は、ECU2の構成を示すブロック図である。
【0036】
図2に示すように、ECU2は、入力回路3と、入出力ポート4と、RAM(Random Access Memory)5と、ROM(Read Only Memory)6と、CPU(Central Processing Unit)7を有する。また、ECU2は、オイルジェット制御部8と、点火制御部9と、ピストン温度・目標量算出部11と、を有している。
【0037】
入力回路3には、水温センサ41からの水温、エアフローセンサ36からの吸入空気量、ノックセンサ38からのノック強度など、各センサからのセンサ出力値が入力される。入力回路3は、入力された信号に対してノイズ除去等の信号処理を行って、入出力ポート4へ送る。入出力ポート4の入力ポートに入力された値はRAM5に格納される。
【0038】
ROM6には、CPU7により実行される各種演算処理の内容を記述した制御プログラムや、各処理に用いられるマップやデータテーブル等が記憶されている。RAM5には、入出力ポート4の入力ポートに入力された値や、制御プログラムに従って演算された各アクチュエータの操作量を表す値を格納する格納領域が設けられている。また、RAM5に格納された各アクチュエータの操作量を表す値は、入出力ポート4の出力ポートに送られる。
【0039】
ピストン温度・目標量算出部11は、入出力ポート4から受け取ったセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関の状態量を受け取り、ピストン温度を推定する。そして、ピストン温度・目標量算出部11は、ピストン推定温度に基づいた各アクチュエータの制御目標量を算出し、オイルジェット制御部8、点火制御部9に出力する。
【0040】
オイルジェット制御部8は、入出力ポート4から受け取ったセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関100の状態量に基づいて既存目標オイルジェット流量を求める。また、オイルジェット制御部8は、ピストン温度・目標量算出部11から付加目標オイルジェット流量を受け取る。そして、オイルジェット制御部8は、既存目標オイルジェット流量と付加目標オイルジェット流量のうちいずれかをオイルジェットの制御目標量として選択し、オイルジェット53の操作量を決定する。
【0041】
点火制御部9は、入出力ポート4から受け取ったセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関100の状態量に基づいて既存目標点火時期を求める。また、点火制御部9は、ピストン温度・目標量算出部11から付加目標点火時期を受け取る。そして、点火制御部9は、既存目標点火時期と付加目標点火時期のうちいずれかを点火時期の制御目標量として選択し、点火コイル22の操作量を決定する。
【0042】
すなわち、オイルジェット制御部8と点火制御部9は、ピストン温度・目標量算出部11によって決定されたアクチュエータ制御目標量(以下、付加目標量とする)を受け取る。また、オイルジェット制御部8と点火制御部9は、ピストン温度・目標量算出部11を介さずに入出力ポート4から受け取ったセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量に基づいて決定されたアクチュエータ制御目標量(以下、既存目標量とする)を求める。そして、オイルジェット制御部8と点火制御部9は、付加目標量と、既存目標量の2つの目標量から、現在の内燃機関制御に最適なアクチュエータ制御目標量を選択する。また、オイルジェット制御部8と点火制御部9は、選択した制御目標量を達成するためのアクチュエータ操作量を求めてアクチュエータに出力する。
【0043】
このように、オイルジェット制御部8と点火制御部9において付加目標量と既存目標量を選択するのは、内燃機関状態等によって最適な目標量が変化する可能性があるためである。例えば、ノック発生時には内燃機関100を保護するために直ちに点火時期を遅角化する必要がある。ここで、付加目標量は、ピストン推定温度に基づいて決定されるため応答の遅れや誤差を生じる可能性がある。そこで、ノック発生時には、ピストン温度・目標量算出部11を介さずに入出力ポート4から受け取ったセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量に基づいて決定されたノック時の点火時期(既存目標量)を目標点火時期として点火制御するのが望ましい。
【0044】
1-3.目標点火時期の決定動作
次に、
図3を参照して目標点火時期の決定動作について説明する。
図3は、目標点火時期の決定動作を示すフローチャートである。
【0045】
図3に示すように、点火制御部9は、ノック判定がONであるか否かを判断する(ステップS11)。ステップS11の処理において、ノック判定がOFFである、すなわちノックが発生していないと判断した場合(ステップS11のNO判定)、点火制御部9は、ピストン温度・目標量算出部11によって算出された目標点火時期(付加目標量)を制御目標量として選択する(ステップS12)。
【0046】
また、ステップS11の処理において、ノック判定がONである、すなわちノックが発生していると判断した場合(ステップS11のYES判定)、点火制御部9は、入出力ポート4から受け取ったセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量に基づいて決定されたノック時点火時期を制御目標量として選択する(ステップS13)。具体的には、点火制御部9は、内燃機関100をノック状態から非ノック状態に移行させるための遅角側点火時期を制御目標量として選択する(ステップS13)。
【0047】
このように、点火時期の制御目標量の選択を行うことによって、ピストン推定温度に基づいて点火時期を操作する効果を得ることができる。さらに、ノック発生時には、ノックによる内燃機関100の損傷を防止することができる。
【0048】
1-4.目標オイルジェット流量の決定動作
次に、
図4を参照して目標オイルジェット流量の決定動作について説明する。
図4は、目標オイルジェット流量の決定動作を示すフローチャートである。
【0049】
ここで、ピストン摺動面でのフリクションが大きい場合には、潤滑を即すためにオイルジェット増量が必要となる場合がある。この場合には、油温や水温に基づいて決定された既存目標量を目標オイルジェット流量としてオイルジェット制御するのが望ましい。
【0050】
図4に示すように、オイルジェット制御部8は、油温(又は水温)が予め定めた閾値(例えば20℃)よりも高いか否かを判断する(ステップS21)。ステップS21の処理において、油温が閾値よりも高いと場合(ステップS21のYES判定)、オイルジェット制御部8は、ピストン温度・目標量算出部11によって算出された目標オイルジェット流量(付加目標量)を制御目標量として選択する(ステップS22)。
【0051】
また、ステップS21の処理において、油温が閾値以下である場合(ステップS21のNO判定)オイルジェット制御部8は、入出力ポート4から受け取った油温に基づいて決定されたオイルジェット流量(既存目標量)を制御目標量として選択する(ステップS23)。
【0052】
このように、オイルジェット流量の制御目標量の選択を行うことによって、ピストン推定温度に基づいてオイルジェット流量を操作する効果を得ることができる。さらに、ピストン摺動面でのフリクション低減が必要な場合には、油温(または水温)に基づいて適切なフリクション低減を図ることができる。
【0053】
なお、本例では、アクチュエータ操作量を決定する制御部の一例として、オイルジェット制御部8と点火制御部9を用いる例を示したが、これらに限定するものではない。例えば、アクチュエータ操作量を決定する制御部としては、燃料噴射制御部(燃料噴射弁、燃料ポンプの操作量を出力)や、バルブタイミング制御部(バルブタイミング機構の操作量を出力)、可変圧縮比制御部(可変圧縮比機構の操作量を出力)、空気量制御部(電子制御スロットルバルブの操作量を出力)、油圧制御部(オイルポンプの操作量を出力)など他のアクチュエータ制御部などであってもよい。
【0054】
2.ピストン温度・目標算出部の構成例
次に、
図5を参照してピストン温度・目標量算出部11の構成例について説明する。
図5は、ECU2の内部構成の一部であるピストン温度・目標量算出部11の構成を示すブロック図である。
【0055】
図5に示すように、ピストン温度・目標量算出部11は、ピストン温度推定部12と、温度補正部14と、温度補正判定部15と、目標量算出部16と、を備えている。ピストン温度推定部12は、入出力ポート4からセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量を受け取る。そして、ピストン温度推定部12は、センサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量に基づいて、ピストン温度を推定する。また、ピストン温度推定部12は、推定したピストン温度を目標量算出部16や温度補正判定部15に出力する。
【0056】
温度補正判定部15は、入出力ポート4からセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量を受け取る。また、温度補正判定部15は、ピストン温度推定部12からピストン推定温度を受け取る。そして、温度補正判定部15は、センサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量、ピストン推定温度に基づいて、ピストン温度を補正するタイミングを判定する。また、温度補正判定部15は、判定した温度補正タイミングを温度補正部14に出力する。
【0057】
温度補正部14は、温度補正判定部15によって判定した温度補正のタイミングに基づいて、ピストン温度推定部12に補正指令及び温度補正値を出力する。また、温度補正部14は、後述するノック時ピストン温度Tkを目標量算出部16に出力する。そして、目標量算出部16は、ピストンの推定温度に基づいて各アクチュエータの制御目標量を求める。
【0058】
2-1.ピストン温度推定部の構成例
次に、
図6を参照してピストン温度推定部12の構成例について説明する。
図6は、ピストン温度・目標量算出部11の内部構成の一部であるピストン温度推定部12の構成を示すブロック図である。
【0059】
図6に示すように、ピストン温度推定部12は、エネルギ伝達量推定部17と、温度演算部18とを備えている。エネルギ伝達量推定部17は、入出力ポート4からセンサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量を受け取る。そして、エネルギ伝達量推定部17は、センサ出力値や各アクチュエータの操作量、内燃機関状態量に基づいて、ピストン25へのエネルギ伝達量を求める。また、エネルギ伝達量推定部17は、求めたエネルギ伝達量を温度演算部18に出力する。
【0060】
温度演算部18は、ピストン25へのエネルギ伝達量からピストン温度を求める。ここで、温度演算部18は、エネルギ伝達量推定部17から入力されたピストン25へのエネルギ伝達量を用いて、下記数式1によってピストン推定温度を算出する。
[数式1]
【0061】
数式1は、ピストン25へのエネルギ伝達量Q(t)に対する時間積分の形で表されている。そのため、ピストン25へのエネルギ伝達量Q(t)に誤差が含まれると、時間経過とともにその誤差が蓄積するおそれがある。
【0062】
図7は、ピストンへのエネルギ伝達量にプラス誤差が生じていた場合のピストン推定温度と実際のピストン温度の時間履歴を示す説明図である。
もし、ピストン25へのエネルギ伝達量Q(t)にプラス誤差が生じていた場合、
図7に示すように、ピストン推定温度は、実温度よりも高くなる。ここで、ピストンへのエネルギ伝達量Q(t)にプラス誤差が生じていた場合とは、ピストンへ25のエネルギ伝達量Qを過大に見積もった場合である。そして、
図7に示すように、ピストン推定温度と実温度との差異(ピストン温度の推定誤差)は時間経過とともに増大する。
【0063】
図8は、ピストン温度とノック強度の関係の一例を示す図である。
ピストン25の高温化がノック発生の原因である場合、ピストン温度とノック強度との間には
図8に示されるように強い線形相関があることが知られている。ここで、ピストン25の高温化がノック発生の原因である場合とは、ピストンからの伝熱によって加熱されたピストン表面のガスの自着火がノックの発生原因である場合である。
【0064】
一般的な内燃機関制御装置では、ノックセンサ38の出力に基づいてノック強度を求め、そのノック強度が予め定められたノック判定閾値を超えたときにノック状態である(以下、ノック判定ON)と判断する。また、
図8で示されるように、ピストン温度とノック強度との間に相関があることから、ノック判定ONにおける(すなわち、ノック強度がノック判定閾値である)ピストン温度はほぼ一定であると考えられる。以下、ノック強度がノック判定閾値を超えた際の、ピストン温度をノック時ピストン温度(所定温度)Tkとする。
【0065】
そこで、本例のピストン温度・目標量算出部11では、所定条件を満たしたときに、ピストン推定温度をノック時ピストン温度Tkに補正する。これにより、時間経過に伴うピストン温度の推定精度低下を防止する。
【0066】
3.ピストン推定温度の補正動作
次に、ピストン推定温度の補正動作について
図9から
図14を参照して説明する。
3-1.ピストン推定温度の補正タイミングの決定動作
まず、
図9を参照してピストン推定温度の補正タイミングの決定動作について説明する。
図9は、ピストン推定温度の補正タイミングの決定動作を示すフローチャートである。
【0067】
図9に示すように、温度補正判定部15は、ECU2で算出されたノック状態フラグを読み取り、現在のノック発生状態を判定する(ステップS31)。ステップS31の処理において、温度補正判定部15は、ノック判定がONである(ノック状態)と判断した場合、ステップS32の処理に移行し、ノック判定がOFFである(ノック状態ではない)と判断した場合、ステップS35の処理に移行する。ステップS35の処理において、温度補正判定部15は、温度補正判定フラグをOFF(ピストン推定温度の補正タイミングではない)に設定する。そして、温度補正判定部15は、温度補正判定フラグがOFFであると温度補正部14に送出して、ステップS31の処理に戻る。
【0068】
これに対して、ステップS32の処理において、温度補正判定部15は、現在のピストン推定温度T(t)とノック時ピストン温度Tkとの偏差ΔT=|T(t)-Tk|が予め定めた閾値Tc(例えば10℃)以上か否かを判定する。ステップS32の処理において、偏差ΔTが閾値Tc以上であると判断した場合(ステップS32のYES判定)、ステップS33の処理に移行する。また、ステップS32の処理において、偏差ΔTが閾値Tc以上ではないと判断した場合(ステップS32のNO判定)、ステップS35の処理に移行する。
【0069】
次に、ステップS33の処理において、温度補正判定部15は、ノックがピストン温度原因のノックであるか否かを判定する。ステップS33の処理において、ノックがピストン温度原因であると判断した場合(ステップS33のYES判定)、ステップS34の処理に移行する。また、ステップS33の処理において、ノックがピストン温度原因ではないと判断した場合(ステップS33のNO判定)、ステップS35の処理に移行する。
【0070】
次に、温度補正判定部15は、ステップS34の処理において、温度補正判定フラグをONに設定(ピストン推定温度の補正タイミングである)する。そして、温度補正判定部15は、温度補正判定フラグがONであると温度補正部14に送出して、ステップS31の処理に戻る。
【0071】
以上の処理によって、ピストン温度原因のノックが発生し、かつ現在のピストン推定温度に閾値Tc以上の誤差が発生していると判断された場合には、温度補正判定フラグがONであると温度補正判定部15から温度補正部14に送出される。それ以外の場合には、温度補正判定フラグがOFFであると温度補正判定部15から温度補正部14に送出されることになる。
【0072】
なお、ステップS32の処理に示す、現在のピストン推定温度に閾値Tc以上の誤差が発生しているかの判定処理は、省略してもよい。すなわち、現在のピストン推定温度の誤差の大きさに関わらず、ピストン温度原因のノックが発生した場合には、温度補正判定ON(温度補正判定フラグがON)を温度補正判定部15から温度補正部14に送出する。そして、ピストン温度原因のノックが発生していない場合には、温度補正判定OFF(温度補正判定フラグがOFF)を温度補正判定部15から温度補正部14に送出してもよい。しかしながら、ステップS32の処理における、現在のピストン推定温度に閾値Tc以上の誤差が発生しているかの判定処理を実施することで、ECU2における演算負荷を低減することができる。
【0073】
3-2.ピストン温度原因のノックを判定する方法
次に、ステップS33の処理における現在発生しているノックがピストン温度原因のノックであるか否かを判定する方法について
図10から
図12を参照して説明する。
【0074】
図10は、オイルジェット流量とノック強度の関係を示す説明図である。また、
図10では、点火時期を一定としてオイルジェット流量を変えた場合のノック強度変化の例を示している。
図10に示すように、ノックがピストン温度原因の場合には、オイルジェット流量を増やしてピストンの冷却を高めるとノック強度は、顕著に低下する。一方、ノックがピストン温度以外の原因で発生している場合(例えば、シリンダヘッドやシリンダライナの高温化によってノックが発生している場合)は、オイルジェット流量を増やしてピストンの冷却を高めてもノック強度の変化は小さい。
【0075】
したがって、
図10に示すように、オイルジェット流量の変化に対するノック強度の変化の大きさからピストン温度原因のノックであるか否かを判定することができる。より具体的には、オイルジェット流量の変化に対するノック強度の変化の大きさが予め定めた閾値(例えば、オイルジェット流量変化10%に対してノック強度変化10%)以上の場合は、ピストン温度が原因のノックであると判定する。そして、オイルジェット流量の変化に対するノック強度の変化の大きさが予め定めた閾値より小さい場合は、ピストン温度以外が原因のノックであると判定することができる。
【0076】
図11は、オイルジェット流量と点火時期の関係を示す説明図である。また、
図11では、ノック強度を一定としてオイルジェット流量を変えた場合の点火時期変化(トレースノックの点火時期変化)を示している。
図11に示すように、ピストン温度がノック原因の場合には、オイルジェット流量を増やしてピストンの冷却を高めると点火時期の進角が大きくなる。一方、ピストン温度以外がノック原因の場合は、オイルジェット流量の変化に対して点火時期の変化は小さい。
【0077】
したがって、
図11に示すように、オイルジェット流量の変化に対する点火時期の変化の大きさからピストン温度原因のノックであるか否かを判定することができる。より具体的には、オイルジェット流量の変化に対する点火時期の変化の大きさが予め定めた閾値(例えばオイルジェット流量変化10%に対して点火時期変化0.1°)以上の場合は、ピストン温度が原因のノックであると判定する。そして、オイルジェット流量の変化に対する点火時期の変化の大きさが予め定めた閾値より小さい場合は、ピストン温度以外が原因のノックであると判定することができる。
【0078】
図12は、油温と水温の温度差とノック原因の関係を示す説明図である。
図12に示すように、ピストン温度は油温との相関が高く、ピストン温度以外のノック原因となるシリンダヘッド温度やシリンダライナ温度は水温との相関が高い。そこで、油温と水温の温度差(油温―水温)の大きさが予め設定した閾値ΔTc(例えば30℃)より大きい場合は、ピストン温度が原因のノックであると判定する。そして、油温と水温の温度差(油温―水温)の大きさが閾値ΔTc以下の場合は、ピストン温度以外が原因のノックであると判定することができる。
【0079】
3-3.温度補正指令と温度補正値の決定動作
次に、
図13を参照して、温度補正部14における温度補正指令と温度補正値の決定動作について説明する。
図13は、温度補正指令と温度補正値の決定動作を示すフローチャートである。
【0080】
図13に示すように、まず、温度補正部14は、温度補正判定部15から温度補正判定結果を受け取る。そして、温度補正部14は、温度補正判定フラグがONであるか否かを判定する(ステップS41)。ステップS41の処理において、温度補正部14は、温度補正判定フラグがON(ピストン推定温度の補正タイミングである)であると判断した場合(ステップS41のYES判定)、ステップS42の処理に移行する。また、ステップS41の処理において、温度補正部14は、温度補正判定フラグがOFF(ピストン推定温度の補正タイミングではない)であると判断した場合(ステップS41のNO判定)、ステップS44の処理に移行する。
【0081】
ステップS44の処理では、温度補正部14は、ピストン温度推定部12に温度補正指令OFF(ピストン推定温度を補正しない)を送出し、ステップS41の処理に戻る。
【0082】
次に、ステップS42の処理では、温度補正部14は、ピストン推定温度の温度補正値にノック時ピストン温度Tkを設定する。そして、温度補正部14は、ピストン温度推定部12に温度補正指令ON(ピストン推定温度を補正する)と温度補正値(ノック時ピストン温度Tk)を送出し(ステップS43)、ステップS41の処理に戻る。
【0083】
3-4.ピストン推定温度の算出動作
次に、
図14を参照してピストン温度推定部12におけるピストン推定温度の算出動作について説明する。
図14は、ピストン推定温度の算出動作を示したフローチャートである。
【0084】
図14に示すように、まず、ピストン温度推定部12は、温度補正部14から温度補正指令を受け取る。そして、ピストン温度推定部12は、温度補正指令がONであるか否かを判定する(ステップS51)。ステップS51の処理において、ピストン温度推定部12は、温度補正指令がON(ピストン推定温度を補正する)であると判断した場合(ステップS51のYES判定)、ピストン推定温度を補正するための処理、すなわちステップS52の処理に移行する
【0085】
また、ステップS51の処理において、ピストン温度推定部12は、温度補正指令がOFF(ピストン推定温度を補正しない)であると判断した場合(ステップS51のNO判定)、エネルギ伝達量に基づいたピストン推定温度の算出をする。すなわち、ステップS53の処理に移行する。
【0086】
ピストン推定温度を補正するための処理では、まず、ピストン温度推定部12は、現在のピストン推定温度を温度補正部14から受け取った温度補正値に置き換える(ステップS52)。そして、後述するステップS55の処理に移行する。
【0087】
これに対して、エネルギ伝達量に基づいたピストン推定温度の算出処理では、まず、ピストン温度推定部12は、アクチュエータ操作量、センサ出力、内燃機関状態量に基づいてピストン25へのエネルギ伝達量を算出する(ステップS53)。次に、ピストン温度推定部12は、上述した数式1を用いてピストン25へのエネルギ伝達量を積分することでピストン推定温度を算出する(ステップS54)。そして、ステップS55の処理に移行する。
【0088】
ステップS555の処理では、ピストン温度推定部12は、算出又は置き換えたピストン推定温度を目標量算出部16に送り出し、ステップS51の処理に戻る。
【0089】
図15は、ピストン推定温度の補正動作によるノック判定、温度補正判定、ピストン推定温度、ピストン温度推定誤差の時間履歴の例を示した説明図である。
図15に示すように、本例のピストン推定温度の補正動作によると、ノック判定ON時において所定条件を満たしたときに、ピストン推定温度がノック時ピストン温度Tkに補正される。このような温度補正によってピストン温度推定誤差の蓄積が抑制される。その結果、時間経過にともなうピストン推定温度の精度低下を防止することが可能となる。
【0090】
3-5.ノック時ピストン温度の変更
ところでノックの発生し易さは燃料の性状、環境条件、内燃機関の劣化状態など(以下、これらを外乱と略す)によって変化することが知られている。したがって、ピストン温度が原因のノックであっても、ノック時ピストン温度Tkは、外乱の程度によって変化すると考えられる。そのため、温度補正部14で決定される温度補正値であるノック時ピストン温度Tkを、外乱の程度の大きさによって変更するのが望ましい。
【0091】
図16は、燃料のオクタン価、燃料中のアルコール濃度、燃料の蒸発潜熱、内燃機関の回転速度、吸入空気の湿度、EGR率(吸入空気に対する再循環ガスの質量比)の変化に対するノック時ピストン温度Tkの変化の例を示した説明図である。
燃料のオクタン価、燃料中のアルコール濃度、燃料の蒸発潜熱、内燃機関の回転速度、吸入空気の湿度、EGR率が大きいほどノックが発生しにくくなる。そのため、
図16に示すように、燃料のオクタン価、燃料中のアルコール濃度、燃料の蒸発潜熱、内燃機関の回転速度、吸入空気の湿度、EGR率が大きいほど、ノック時ピストン温度Tkは、高くなる。したがって、温度補正部14では、燃料のオクタン価、燃料中のアルコール濃度、燃料の蒸発潜熱、内燃機関の回転速度、吸入空気の湿度、EGR率が大きいほど温度補正値が高くなるように設定するのが望ましい。
【0092】
図17は、吸入空気量、吸入空気の圧力、吸入空気の温度、空燃比、圧縮比、燃焼室へのデポジッド堆積量の変化に対するノック時ピストン温度Tkの変化の例を示した説明図である。
吸入空気量、吸入空気の圧力、吸入空気の温度、空燃比、圧縮比、燃焼室へのデポジッド堆積量が大きいほどノックが発生しやすくなる。そのため、
図17に示すように、吸入空気量、吸入空気の圧力、吸入空気の温度、空燃比、圧縮比、燃焼室へのデポジッド堆積量が大きいほど、ノック時ピストン温度Tkは、低くなる。したがって、温度補正部14では、吸入空気量、吸入空気の圧力、吸入空気の温度、空燃比、圧縮比、燃焼室へのデポジッド堆積量が大きいほど温度補正値が低くなるように設定するのが望ましい。
【0093】
なお、外乱としては、上記の
図16及び
図17に示す例に限定されるものではなく、ノックの発生し易さに影響する因子を包括的に含む。温度補正部14は、その程度が大きくなるほどノックが発生し難くなる因子に対しては、因子が大きくなるほど温度補正値を高く設定する。また、温度補正部14は、その程度が大きくなるほどノックが発生し易くなる因子に対しては、因子が大きくなるほど温度補正値を低く設定する。このように外乱の程度に対して温度補正値を変更することで、補正後のピストン推定温度の精度がより向上する。
【0094】
そのため、温度補正部14又は、ピストン温度・目標量算出部11は、外乱を検出するセンサからの外乱情報を取得する。そして、温度補正部14又はピストン温度・目標量算出部11は、取得した外乱情報に基づいて、予め設定したマップやデータテーブル、数式を用いて温度補正値(ノック時ピストン温度Tk)を算出する。
【0095】
3-6.アクチュエータ制御目標量の決定方法
次に、本例のクチュエータ制御目標量の決定方法について
図18から
図22を参照して説明する。
【0096】
[オイルジェット流量の決定方法]
まず、
図18から
図20を参照してアクチュエータ制御目標量として、オイルジェット流量の決定方法について説明する。
図18は、ピストン推定温度とノックリスク度との関係を示した説明図である。
【0097】
上述したように、ピストン温度とノック強度の間には強い線形相関があることが知られている。本例のECU2では、ピストン推定温度をノックのリスク度を測る手段として用いる。具体的には、
図18に示されるようにノックリスク度は、ピストン推定温度に比例する量とする。例えば、ピストン推定温度がノック時ピストン温度Tkのときにノックリスク度を1、ピストン推定温度が0℃のときにノックリスク度を0と定義する。このようにして定義されたノックリスク度は、0から1に向かって1に近づくほどノックが発生するリスクが高くなることを示す指標となる。すなわち、目標量算出部16は、ノック時ピストン温度Tkからノックリスク度を算出する。そして、目標量算出部16は、ノックリスク度に基づいてオイルジェット流量の制御目標値を決定する。
【0098】
図19は、目標量算出部16で実施されるノックリスク度に基づいたオイルジェット流量の決定方法の一例を示した説明図である。
図19に示すように、目標量算出部16は、ノックリスク度が予め定められた第1閾値C1(例えば0.9)を超えると目標オイルジェット流量をG0からG1に増加する。また、目標量算出部16は、ノックリスク度が予め定められた第2閾値C2(例えば0.8)を下回ると目標オイルジェット流量をG1からG0に減少する。
【0099】
なお、増加の閾値である第1閾値C1と減少の閾値である第2閾値C2に幅を持たせることで、オイルジェット流量に振動が発生することを防止できる。
【0100】
図20は、目標量算出部16で実施されるノックリスク度に基づいたオイルジェット流量の決定方法の他の例を示した説明図である。
図20に示すように、目標量算出部16はノックリスク度が予め定められた閾値C1(例えば0.9)を超えると目標オイルジェット流量が上限値Gmaxに達するまでノックリスク度が高くなるほど目標オイルジェット流量を増加する。
【0101】
なお、ノックリスク度の代わりに直接、ピストン推定温度に基づいてオイルジェット流量を決定してもよい。例えば、目標量算出部16は、ピストン推定温度が予め定められた第1閾値(例えば150℃)を超えると目標オイルジェット流量をG0からG1に増加する。また、目標量算出部16は、ピストン推定温度が予め定められた第2閾値(例えば140℃)を下回ると目標オイルジェット流量をG1からG0に減少するようにしてもよい。
【0102】
さらに、目標量算出部16は、ピストン推定温度が予め定められた閾値(例えば150℃)を超えると目標オイルジェット流量が上限値Gmaxに達するまでピストン推定温度が高くなるほど目標オイルジェット流量を増加するようにしてもよい。
【0103】
ただし、ノックリスク度は、ノック時ピストン温度Tkで規格化された指標である。そのため、外乱によってノック時ピストン温度Tkが変わってもその影響がノックリスク度に自動的に反映される。したがって、ノックリスク度を用いて目標オイルジェット量を決定することで、ノック時ピストン温度Tkが変化してもオイルジェット流量の変更点を判断するための閾値(C1、C2)を変更する必要が無くなる。その結果、制御用ソフトウエアを簡素化できる利点がある。
【0104】
このように、ピストン推定温度、もしくはピストン推定温度によって求めたノックリスク度に基づいてオイルジェット流量を決定することで、ノックの発生リスクが高い場合にノックが発生する前に予めオイルジェット流量を増やしてピストン25の冷却が促進される。これにより、ノック発生を防止したり、ノックが発生してもそのノック強度を軽減したりすることができる。その結果、内燃機関100の出力の向上や排気損失の低減を図ることができる。
【0105】
また、ピストン推定温度、もしくはピストン推定温度によって求めたノックリスク度に基づいてオイルジェット流量を決定すると、ノックの発生リスクが低い場合に、オイルジェット流量が少なくなる。そのため、油圧ポンプの負荷に伴うフリクション損失の低減や、ピストン25の冷却を抑えることによる冷却損失の低減を図ることができる。
【0106】
[目標点火時期の決定方法]
次に、
図21から
図22を参照してアクチュエータ制御目標量として、目標点火時期の決定方法について説明する。
【0107】
一般に火花点火式の内燃機関ではノックが発生しノック判定がONになると、点火時期を通常の点火時期(Minimum Advance for Best Torque, MBT)より遅角側に設定する、いわゆる点火リタード制御を実施する。そして、ノックが収まりノック判定がOFFになった後に、遅角した点火時期をMBTに向かって進角する点火時期回復制御を実施する。
【0108】
本例のECU2では、ピストン推定温度に基づいて、点火時期回復制御における点火進角速度(単位時間当たりの点火進角度dθig/dt)をノックリスク度の大きさによって変更する。
図21A及び
図21Bは、ノックリスク度に基づいて点火進角速度の決定方法の一例を示す説明図である。
図22は、ノック判定、目標点火時期、ピストン温度、ノックリスク度の時間履歴の例を示した説明図である。
図21A及び
図21Bに示すように、本例では、ノックリスクが低い場合の点火進角速度をノックリスクが高い場合の点火進角速度に比べて速くする。また、ノックリスク度は、
図18に示すようにピストン推定温度を用いて算出する。
【0109】
このとき、
図21Bに示すように、点火進角速度に上限値、または下限値を設けてもよい。点火進角速度に上限値を設けることで、ノックリスク度が低い場合に、過度に進角速度が速くなってノックが再発生するリスクを低減できる。また。点火進角速度に下限値を設けることで、ノックリスク度が高い場合に、過度に点火進角速度が遅くなって点火時期をMBTよりも遅角している期間が長期化するリスクを低減できる。
【0110】
なお、ノックリスク度の代わりに直接ピストン推定温度に基づいて点火進角速度を決定してもよい。すなわち、ピストン推定温度が低い場合の点火進角速度をピストン推定温度が高い場合の点火進角速度に比べて速くしてもよい。
【0111】
ただし、上述したように、外乱によってノック時ピストン温度Tkが変わってもその影響がノックリスク度に自動的に反映される。そのため、ノックリスク度を用いて点火進角速度を決定することで、制御用ソフトウエアを簡素化できる利点がある。
【0112】
このように、点火時期回復制御における点火進角速度をピストン推定温度、もしくはノックリスク度に基づいて変更することで、以下のような作用、メリットがある。
図22に示すように、ノック判定直後は、点火時期の遅角量が大きいのでピストン温度が下がりノックリスク度が低くなる。そのため、速い点火進角速度が設定され点火遅角量は、急速に小さくなる。これにより、
図22の点線で示される点火進角速度を一定とした場合(従来例)に比べて、点火時期の遅角に伴う排気損失を低減できる。
【0113】
一方、点火遅角量が小さくなるとピストン温度が上がりノックリスク度が高くなるため、遅い点火進角速度が設定される。そのため、点火進角速度が遅い場合、
図22の点線で示される点火進角速度を一定とした場合(従来例)に比べて点火進角に伴うピストン温度の上昇速度が緩やかになる。
【0114】
また、点火時期回復制御では、点火進角を停止した後もピストン25の熱容量によってピストン温度上昇が継続し、ピストン温度のオーバーシュートによってノックが再発生するおそれがある。しかしながら、本例のECU2によれば、点火遅角量が小さいときに点火進角速度を低く設定している。これにより、ピストン温度のオーバーシュートを抑制し、ノックの再発生を防止することができる。すなわち、本例のピストン推定温度、もしくはノックリスク度に基づいた点火時期の決定方法によれば、ノック後の点火時期回復制御において、ノックの再発生を防止しつつ点火遅角量を減らすことで排気損失の低減が可能である。
【0115】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0116】
また、上記の各構成要素、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路の設計などによりハードウエアで実現してもよい。また、上記の各構成要素、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0117】
2…ECU(内燃機関制御装置)、 3…入力回路、 4…入出力ポート、 5…RAM、 6…ROM、 7…CPU、 8…オイルジェット制御部、 9…点火制御部、 10…クランク角度センサ、 11…ピストン温度・目標量算出部、 12…ピストン温度推定部、 14…温度補正部、 15…温度補正判定部、 16…目標量算出部、 17…エネルギ伝達量推定部、 18…温度演算部、 22…点火コイル、 23…シリンダブロック、 24…シリンダヘッド、 25…ピストン、 26…吸気弁、 27…排気弁、 31…電子制御スロットル弁、 32…吸気ポート、 33…排気ポート、 34…触媒コンバータ、 35…燃料噴射装置、 36…エアフローセンサ、 37…空燃比センサ、 38…ノックセンサ、 39…油温センサ、 40…オイルパン、 41…水温センサ、 42…水ジャケット、 53…オイルジェット、 56…オイル供給通路、 62…アクセル開度センサ、 100…内燃機関