(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176430
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】積層フィルムおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20241212BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20241212BHJP
G09F 19/12 20060101ALI20241212BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20241212BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20241212BHJP
G02B 3/06 20060101ALI20241212BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20241212BHJP
H05B 33/02 20060101ALN20241212BHJP
H10K 50/80 20230101ALN20241212BHJP
【FI】
G02B5/08 A
G02B5/00 Z
G09F19/12 F
G09F19/12 L
G03H1/02
G02B3/00 A
G02B3/06
G02B5/04 A
H05B33/02
H10K50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094954
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉見 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
【テーマコード(参考)】
2H042
2K008
3K107
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042DA08
2K008AA13
2K008EE04
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC02
3K107CC33
3K107CC41
3K107EE28
3K107EE61
3K107FF06
3K107FF15
(57)【要約】
【課題】輝度が高く、かつ、色ムラが抑制されたデザインを実現し得る積層フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による積層フィルムは、第1主面と第2主面とを有し、第1主面が凹凸構造を有する、加飾層と;加飾層の第1主面に設けられた低屈折率層と;低屈折率層の加飾層と反対側に設けられた高屈折率層と;を有する。1つの実施形態においては、低屈折率層の屈折率は1.30以下であり、かつ、厚みは0.3μm以上であり;および/または、高屈折率層の屈折率は1.60~2.20であり、かつ、厚みは0.3μm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と第2主面とを有し、該第1主面が凹凸構造を有する、加飾層と;
該加飾層の第1主面に設けられた低屈折率層と;
該低屈折率層の該加飾層と反対側に設けられた高屈折率層と;
を有する、
積層フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層の屈折率が1.30以下であり、かつ、厚みが0.3μm以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記高屈折率層の屈折率が1.60~2.20であり、かつ、厚みが0.3μm以上である、請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記加飾層が光の方向変換機能を有する、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記加飾層の凹凸構造における凹凸の高さをH、凹凸のピッチをPとしたとき、P/Hが1.5以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記高屈折率層の前記低屈折率層と反対側に着色層をさらに有する、請求項1から5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
画像表示面と裏面とを有し、
該裏面に請求項1から5のいずれかに記載の積層フィルムが配置されている、
画像表示装置。
【請求項8】
画像表示面と裏面とを有し、
該裏面に請求項6に記載の積層フィルムが配置されている、
画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種製品のデザイン性向上の手段として、加飾フィルムが用いられている。例えば、スマートフォンおよびタブレット端末等を収容するカバーケースおよび/または画像表示装置の裏面(画像表示に関与しない面)を構成するガラスパネルに加飾フィルムを貼り合わせ、画像表示装置自体にデザイン性を付与する技術が提案されている。例えば、凹凸層と低屈折率層とを有する加飾フィルムが知られている。しかし、従来の加飾フィルムによれば、付与されたデザインの輝度が不十分である、および/または、付与されたデザインに色ムラが生じる、といった問題を生じる場合がある。したがって、画像表示装置の商品価値をさらに高めることができる加飾フィルムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-57471号公報
【特許文献2】特開2017-47594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、輝度が高く、かつ、色ムラが抑制されたデザインを実現し得る積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による積層フィルムは、第1主面と第2主面とを有し、該第1主面が凹凸構造を有する、加飾層と;該加飾層の第1主面に設けられた低屈折率層と;該低屈折率層の該加飾層と反対側に設けられた高屈折率層と;を有する。
[2]上記[1]において、上記低屈折率層の屈折率は1.30以下であり、かつ、厚みは0.3μm以上である。
[3]上記[1]または[2]において、上記高屈折率層の屈折率は1.60~2.20であり、かつ、厚みは0.3μm以上である。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記加飾層は光の方向変換機能を有する。
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、上記加飾層の凹凸構造における凹凸の高さをH、凹凸のピッチをPとしたとき、P/Hは1.5以上である。
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、上記積層フィルムは、上記高屈折率層の上記低屈折率層と反対側に着色層をさらに有する。
[7]本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。該画像表示装置は、画像表示面と裏面とを有し;該裏面に上記[1]から[6]のいずれかの積層フィルムが配置されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、輝度が高く、かつ、色ムラが抑制されたデザインを実現し得る積層フィルムが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【
図3】
図1の積層フィルムの使用形態を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、見やすくかつ理解を容易にするために、図面は模式的または概念的に描かれており、長さ、幅、形状、大きさ、比率、方向、個数等は実際と異なっている場合があり、図面間で対応していない場合がある。
【0009】
A.積層フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。図示例の積層フィルム100は、加飾層10と低屈折率層20と高屈折率層30とを有する。加飾層10は第1主面10aと第2主面10bとを有し、第1主面10aは凹凸構造を有する。低屈折率層20は、加飾層10の第1主面10aに設けられている。高屈折率層30は、低屈折率層20の加飾層10と反対側に設けられている。加飾層10に対してこのような位置関係で低屈折率層20と高屈折率層30とを組み合わせて設けることにより、輝度が高く、かつ、色ムラが抑制されたデザインを実現し得る積層フィルムが得られ得る。低屈折率層20および高屈折率層30は、これらの厚みと凹凸構造の高さ(深さ)との関係上、代表的には図示例のように加飾層10の凹凸構造に追従している。一方で、低屈折率層20または高屈折率層30のいずれかが凹凸構造の凹部を埋めて、加飾層と反対側を平坦面としてもよい。
【0010】
本発明の実施形態においては、加飾層10は、代表的には、光の方向変換機能を有する。加飾層10は、凹凸構造を制御して、例えば、光の透過、反射、回折、散乱、および拡散を組み合わせて制御することにより、目的に応じた意匠(デザイン)を発現することができる。このような加飾層を含む積層フィルムは、加飾層の種類に応じて以下のような効果を実現することができる:(1)各種製品を表面加飾し、これらの意匠性を向上させることができる;(2)視認角度によって各種製品の表面の色を変化させることができる;および(3)視認角度によって各種製品の表面に異なる像、文字等を表示させることができる。したがって、本発明の実施形態による積層フィルムは、加飾フィルム、光学積層体等とも称され得る。加飾層10は、具体的な構成に応じて第1主面側および第2主面側の一方または両方に意匠を発現し得る。積層フィルムの1つの使用形態(後述)においては、加飾層10は、好ましくは、少なくとも
図1の矢印側に意匠を発現し得る。加飾層としては、上記のような機能を有する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。加飾層の具体的な構成については、後述のB項で説明する。
【0011】
低屈折率層20は、代表的には、屈折率が1.30以下である。このような低屈折率層を所定の位置に設けることにより、加飾層との界面において適切な反射を実現し得る。その結果、積層フィルムの反射率を大きくすることができ、したがって、高い輝度を有する意匠を発現させることができる。低屈折率層20は、加飾層10の第1主面10aに接着層を介して形成されてもよく、当該第1主面に直接形成されてもよい。好ましくは、低屈折率層は、当該第1主面に直接形成されている。このような構成であれば、接着層の屈折率に起因する悪影響を回避することができる。このような直接形成は、例えば、後述するように低屈折率層形成用液を塗工または印刷することにより実現され得る。さらに、低屈折率層20の厚みは、好ましくは0.3μm以上である。低屈折率層の厚みがこのような範囲であれば、本発明の実施形態による効果がより顕著なものとなり得る。具体的には、積層フィルムの色相変化が抑制され得、結果として、発現する意匠の色ムラが抑制され得る。これは、低屈折率層と高屈折率層との間の薄膜干渉が抑制されるからであると推定され得る。低屈折率層の具体的な構成については、後述のC項で説明する。なお、接着層は、粘着剤で構成されていてもよく、接着剤で構成されていてもよい。接着層(を構成する接着剤または粘着剤)は業界で周知の構成が採用され得るので、詳細な説明は省略する。以下、特段の明示がなければ、他の「接着層」についても同様である。
【0012】
高屈折率層30は、代表的には、屈折率が1.60~2.20である。このような高屈折率層を所定の位置に設けることにより、低屈折率層を設ける効果との相乗的な効果により、積層フィルムにおいてさらに良好な反射を実現し得る。その結果、低屈折率層を単独で設ける場合よりも高い輝度を有する意匠を発現させることができる。高屈折率層30は、低屈折率層20に接着層を介して形成されてもよく、低屈折率層20に直接形成されてもよい。好ましくは、高屈折率層は、低屈折率層に直接形成されている。このような構成であれば、接着層の屈折率に起因する悪影響を回避することができる。このような直接形成は、例えば、後述するように高屈折率層形成用液を塗工または印刷することにより実現され得る。さらに、高屈折率層30の厚みは、好ましくは0.3μm以上である。高屈折率層の厚みがこのような範囲であれば、低屈折率層の厚みを所定値以上とする場合と同様に、本発明の実施形態による効果がより顕著なものとなり得る。具体的には、積層フィルムの色相変化が抑制され得、結果として、発現する意匠の色ムラが抑制され得る。1つの実施形態においては、高屈折率層の厚みは低屈折率層の厚みより大きい。この場合、高屈折率層の厚みと低屈折率層の厚みとの差は、例えば0.2μm~3.0μmであってもよく、また例えば1.0μm~2.0μmであってもよい。高屈折率層の具体的な構成については、後述のD項で説明する。
【0013】
図2は、本発明の別の実施形態による積層フィルムの概略断面図である。図示例の積層フィルム101は、高屈折率層30の低屈折率層20と反対側に着色層40をさらに有する。着色層40を設けることにより、反射により発現する意匠をより鮮明なものとすることができる。着色層40は、高屈折率層30に接着層を介して形成されてもよく、高屈折率層30に直接形成されてもよい。図示例においては、着色層40は、高屈折率層30に接着層50を介して形成されている。なお、この実施形態における接着層は、代表的には粘着剤層であり得る。着色層の具体的な構成については、後述のE項で説明する。
【0014】
必要に応じて、高屈折率層30側の最外層として粘着剤層(図示せず)が設けられてもよい。このような粘着剤層を設けることにより、積層フィルムは画像表示装置に貼り合わせ可能とされる。実用的には、積層フィルムが使用に供されるまではく離ライナー(図示せず)が仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、積層フィルムのロール形成が可能となる。
【0015】
以下、積層フィルムの構成要素について詳細に説明する。
【0016】
B.加飾層
本発明の実施形態においては、加飾層10は、代表的には上記のとおり、光の方向変換機能を有する。加飾層の具体例としては、賦形フィルム、反射型ホログラムフィルム、マイクロレンズアレイフィルム、プリズムフィルム、レンチキュラーレンズが挙げられる。なお、反射型ホログラムフィルム等も賦形フィルムに包含され得るが、本明細書においては、便宜上、賦形フィルムと反射型ホログラムフィルム等とを併記する。
【0017】
賦形フィルムとしては、目的に応じて任意の適切な構成が採用され得る。賦形フィルムの凹凸構造としては、例えば、直方体状の凹凸が平面視市松状に配置された構造、当該構造において凹部が
図1のような異なる角度の傾斜面(図示例では垂直面と傾斜面)を有している構造、当該構造において凹部が四角錐状である構造、当該構造において凹部が四角錐台形状である構造、当該構造において凹部がドーム状である構造、断面矩形で一方向に延びる凸部を一定間隔で有する(平面視ストライプ状、いわゆるライン&スペースの)凹凸形状、断面波形で一方向に延びる凸部を一定間隔で有する凹凸形状、断面三角形で一方向に延びる凸部を一定間隔で有する凹凸形状、ならびに、これらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
賦形フィルムは、任意の適切な方法により作製され得る。賦形フィルムは、例えば、柔らかい状態の樹脂シートに金型の凹凸構造を転写することにより作製され得る。柔らかい状態の樹脂シートとしては、例えば、半硬化の熱硬化性または活性エネルギー線硬化性樹脂シート、加熱により軟化した熱可塑性樹脂シートが挙げられる。熱硬化性または活性エネルギー線硬化性樹脂シートは、凹凸構造が転写された後、加熱または活性エネルギー線(代表的には、可視光線、紫外線)照射により硬化され、凹凸構造が固定される。熱可塑性樹脂シートは、凹凸構造が転写された後、冷却により固化され、凹凸構造が固定される。
【0019】
反射型ホログラムフィルムとしては、目的に応じて任意の適切な構成が採用され得る。反射型ホログラムフィルムの凹凸形状としては、光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現し得る任意の適切な微細凹凸形状を採用することができる。代表例としては、フーリエ変換構造、レンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ構造が挙げられる。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現し得るヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンのような凹凸形状であってもよい。1つの実施形態においては、反射型ホログラムフィルムは、反射光を回折光に変換し得る。
【0020】
マイクロレンズアレイフィルムは、代表的には、平坦な基体部と基体部の一方の面に設けられたレンズ部とを有する。レンズ部は複数のレンズで構成されている。レンズ部を構成するレンズは、代表的には凸レンズであり、例えばドーム形状を有していてもよい。レンズは、行列状(マトリックス状)に設けられてもよく、所定のパターン(例えば、ストライプ状)に設けられてもよく、ランダムに設けられてもよい。
【0021】
プリズムフィルムは、代表的には、平坦な基体部とプリズム部とを有する。プリズム部は、代表的には、基体部と反対側に凸となる断面三角形状で一方向に延びる単位プリズムが複数配列されて構成されている。単位プリズムが延びる方向(単位プリズムの稜線方向)は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0022】
レンチキュラーレンズは、代表的には、並列して(すなわち、ストライプ状に)設けられた複数の断面半円状の凸シリンドリカルレンズを有する。
【0023】
1つの実施形態においては、加飾層10の凹凸構造における凹凸の高さをH、凹凸のピッチをPとしたとき、P/Hは、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上であり、さらに好ましくは3.0以上であり、特に好ましくは5.0以上である。一方、P/Hは、好ましくは100以下であり、より好ましくは70以下であり、さらに好ましくは60以下であり、特に好ましくは50以下である。加飾層の凹凸構造のP/Hがこのような範囲であれば、本発明の実施形態による効果がより顕著なものとなり得る。P/Hが小さすぎると、低屈折率層を適切に形成できない場合がある。P/Hの上限は、所望される意匠性に応じて決定され得る。なお、本明細書において「凹凸の高さ」は、1つの凹凸部分における山(または頂部)から谷(または平端部)までの距離を意味し、凹凸が不規則構造である場合にはそれぞれの凹凸部分における山(または頂部)から谷(または平端部)までの距離の平均を意味する。また、「凹凸のピッチ」は、隣接する山(または頂部)から山(または頂部)までの距離を意味し、凹凸が不規則構造である場合にはそれぞれの隣接する山(または頂部)から山(または頂部)までの距離の平均を意味する。
【0024】
凹凸のピッチPおよび凹凸の高さHは、それぞれ、上記所望のP/Hが得られる限りにおいて適切に設定され得る。ピッチPは、好ましくは10μm~500μmであり、より好ましくは30μm~200μmであり、さらに好ましくは50μm~100μmである。高さHは、好ましくは0.1μm~100μmであり、より好ましくは1μm~50μmであり、さらに好ましくは2μm~20μmである。
【0025】
加飾層の厚み(凸部に対応する最大厚み)は、好ましくは50μm~3mm(3000μm)であり、より好ましくは100μm~1mm(1000μm)である。
【0026】
C.低屈折率層
低屈折率層20の屈折率は、代表的には上記のとおり1.30以下であり、その下限は1.00超である。低屈折率層20の屈折率は、好ましくは1.13~1.28であり、より好ましくは1.14~1.27であり、さらに好ましくは1.15~1.26であり、特に好ましくは1.16~1.25である。低屈折率層の屈折率がこのような範囲であれば、加飾層の第1主面(凹凸面)側に層を設けることによる加飾層の機能の低下を、極めて良好に抑制することができる。屈折率は、特に断らない限り、波長550nmにおいて測定した屈折率をいう。屈折率は、例えば、後述の実施例に記載の方法によって測定される値である。
【0027】
低屈折率層20の全光線透過率は、好ましくは85%~99%であり、より好ましくは87%~98%であり、さらに好ましくは89%~97%である。このような低屈折率層を加飾層の第1主面(凹凸面)側に設けることにより、例えば、積層フィルム全体として優れた透明性を実現することができる。その結果、例えば、積層フィルムを各種製品に適用した場合に、発現し得る意匠の視認性を確保することができる。全光線透過率は、例えば、後述のヘイズメーターにより測定することができる。
【0028】
低屈折率層20のヘイズは、好ましくは5%未満であり、より好ましくは3%未満である。一方、ヘイズは、例えば0.1%以上であり、0.2%以上であってもよい。このような低屈折率層を加飾層の第1主面(凹凸面)側に設けることにより、例えば、積層フィルム全体として優れた透明性を実現することができる。その結果、例えば、積層フィルムを各種製品に適用した場合に、発現し得る意匠の視認性を確保することができる。ヘイズは、例えば、ヘイズメーター(例えば、村上色彩技術研究所社製の「HM-150」)により測定した値を用いて、下記式より算出され得る。
ヘイズ(%)=[拡散透過率(%)/全光線透過率(%)]×100(%)
【0029】
低屈折率層20の厚みは、上記のとおり好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは1.2μm以上であり、特に好ましくは1.5μm以上であり、とりわけ好ましくは1.8μm以上である。また、低屈折率層の厚みは、例えば2.2μm以上であってもよく、また例えば2.5μm以上であってもよく、また例えば2.8μm以上であってもよい。一方、低屈折率層の厚みは、例えば20μm以下であってもよく、また例えば10μm以下であってもよく、また例えば8μm以下であってもよく、また例えば5μm以下であってもよい。低屈折率層の厚みがこのような範囲であれば、上記のとおり、積層フィルムの色相変化が抑制され得、結果として、発現する意匠の色ムラが抑制され得る。
【0030】
低屈折率層は、上記所望の特性を達成し得る、任意の適切な構成が採用され得る。低屈折率層を構成する材料としては、例えば、国際公開第2004/113966号、特開2013-254183号公報、および特開2012-189802号公報に記載の材料を採用し得る。低屈折率層を構成する材料の代表例としては、ケイ素化合物が挙げられる。ケイ素化合物としては、例えば、シリカ系化合物;加水分解性シラン類、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物;シラノール基を含有するケイ素化合物;ケイ酸塩を酸やイオン交換樹脂に接触させることにより得られる活性シリカが挙げられる。また、低屈折率層を構成する材料としては、有機ポリマー;重合性モノマー(例えば、(メタ)アクリル系モノマー、およびスチレン系モノマー);硬化性樹脂(例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素含有樹脂、およびウレタン樹脂)等も挙げられる。これらの材料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
1つの実施形態においては、低屈折率層は、その内部に空孔、間隙等の空間を含み得る。この場合、低屈折率層の気孔率は、好ましくは20体積%~60体積%であり、より好ましくは25体積%~55体積%であり、さらに好ましくは30体積%~50体積%であり、特に好ましくは35体積%~45体積%である。このような気孔率によれば、低屈折率層の屈折率を適切な範囲とすることができるとともに、強度を確保することができる。ここで、気孔率は、エリプソメーターで測定した屈折率の値から、Lorentz-Lorenz’s formula(ローレンツ・ローレンツの式)により算出された値である。
【0032】
低屈折率層に含まれ得る空孔のサイズは、目的および用途等に応じて、所望のサイズに調整することができる。低屈折率層に含まれ得る空孔のサイズは、例えば2nm以上であり、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは20nm以上である。一方、低屈折率層に含まれ得る空孔のサイズは、例えば500nm以下であり、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。なお、空孔のサイズは、空孔の長軸の直径および短軸の直径のうち、長軸の直径を指すものとする。
【0033】
空孔のサイズは、BET試験法により定量化できる。1つの実施形態においては、比表面積測定装置(例えば、マイクロメリティック社製の「ASAP2020」)のキャピラリに、測定サンプル(例えば、形成された低屈折率層)を0.1g投入した後、室温で24時間、減圧乾燥を行って、測定サンプルに含まれる気体を脱気する。そして、測定サンプルに窒素ガスを吸着させることで吸着等温線を描き、細孔分布を求める。これによって、空孔のサイズを評価することができる。
【0034】
上記内部に空間を有する低屈折率層としては、例えば、多孔質体で構成される多孔質層および/または空気層を少なくとも一部に含む層が挙げられる。低屈折率層は、代表的には、エアロゲルおよび/または粒子(例えば、中空微粒子および/または多孔質粒子であり得る)を含む。低屈折率層は、好ましくは、ナノポーラス層(具体的には、90%以上の空孔の直径が10-1nm~103nmの範囲内の多孔質層)であり得る。
【0035】
上記粒子としては、任意の適切な粒子を採用し得る。粒子は、代表的には、シリカ系化合物から構成される。粒子の形状としては、例えば、球状、板状、針状、ストリング状、およびブドウの房状が挙げられる。ストリング状の粒子としては、例えば、球状、板状、または針状の形状を有する複数の粒子が数珠状に連なった粒子、短繊維状の粒子(例えば、特開2001-188104号公報に記載の短繊維状の粒子)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ストリング状の粒子は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ブドウの房状の粒子としては、例えば、球状、板状、および針状の粒子が複数凝集してブドウの房状になったものが挙げられる。粒子の形状は、例えば、透過型電子顕微鏡観察により確認することができる。
【0036】
低屈折率層の一例として、微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位から構成され、この構成単位同士が結合(例えば、触媒作用を介して化学的に結合)した構造体が挙げられる。構成単位の形状としては、例えば、粒子状、繊維状、棒状、平板状が挙げられる。構成単位は、1つの形状のみを有していてもよく、2つ以上の形状を組み合わせて有していてもよい。
【0037】
低屈折率層の具体的な一例として、微細孔を有する粒子(以下、微細孔粒子と称する)同士が化学的に結合した多孔質体から構成される多孔質層が挙げられる。このような多孔質層は、例えば、微細孔粒子同士を化学的に結合させることにより得ることができる。微細孔粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状であってもよく、他の形状であってもよい。また、微細孔粒子は、例えば、ゾルゲル数珠状粒子、ナノ粒子(例えば、中空ナノシリカ・ナノバルーン粒子)、ナノ繊維等であってもよい。微細孔粒子は、代表的には無機物を含む。無機物の具体例としては、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。1つの実施形態においては、上記微細孔粒子は、例えばケイ素化合物の微細孔粒子であり、上記多孔質体は、例えばシリコーン多孔質体である。ケイ素化合物の微細孔粒子は、例えば、ゲル状シリカ化合物の粉砕物を含む。
【0038】
低屈折率層の別の例としては、例えば、ナノファイバー等の繊維状物質を含み、この繊維状物質の絡まり合いにより空間が形成された層が挙げられる。低屈折率層のさらに別の例としては、中空ナノ粒子やナノクレイを用いて形成された層、中空ナノバルーンやフッ化マグネシウムを用いて形成された層が挙げられる。低屈折率層は、単一の構成物質から構成されてもよいし、複数の構成物質から構成されてもよい。低屈折率層は、上記例の単一の形態で構成されてもよいし、上記例の複数の形態で構成されてもよい。
【0039】
上記多孔質層は、例えば、孔構造が連続した連泡構造体であってもよい。連泡構造とは、多孔質体(例えば、シリコーン多孔質体)において、三次元的に孔構造が連なっていることを意味し、孔構造の空間が連続している状態ともいえる。多孔質層が連泡構造を有することにより、気孔率を高めることができる。連泡構造は、例えば、中空粒子(例えば、中空シリカ)のような個々に孔構造を有する独泡粒子を用いて形成するのは困難であるが、例えば、シリカゾル粒子(ゾルを形成するゲル状ケイ素化合物の粉砕物)を用いる場合、シリカゾル粒子が三次元の樹状構造を有し得るために、塗工膜(ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を含むゾルの塗工膜)中で当該樹状粒子が沈降および堆積することで、容易に連泡構造を形成することができる。多孔質層は、連泡構造が複数の細孔分布を含むモノリス構造を有することが好ましい。モノリス構造は、例えば、ナノサイズの微細な空孔が存在する構造と、ナノサイズの微細な空孔が集合した連泡構造とを含む階層構造を意味する。モノリス構造によれば、例えば、微細な空孔で膜強度を付与しつつ、粗大な連泡構造で高い気孔率を付与し、膜強度と高気孔率とを両立させることができる。
【0040】
例えば、上記モノリス構造は、シリカゾル粒子に粉砕する前段階のゲル(ゲル状ケイ素化合物)において、生成する空隙構造の細孔分布を制御することにより形成され得る。また例えば、ゲル状ケイ素化合物を粉砕する際、粉砕後のシリカゾル粒子の粒度分布を所定のサイズに制御することにより、モノリス構造を形成し得る。なお、粒度分布は、例えば、動的光散乱法、レーザー回折法等の粒度分布評価装置、および走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡等により測定することができる。
【0041】
上記のように、多孔質層は、ゲル状ケイ素化合物等のゲル状化合物の粉砕物を含み得、この粉砕物同士は、例えば、化学的に結合(化学結合)している。化学結合としては、特に制限されず、例えば、架橋結合、共有結合、水素結合が挙げられる。多孔質層における粉砕物の体積平均粒子径は、例えば0.10μm以上であり、好ましくは0.20μm以上であり、より好ましくは0.40μm以上である。一方、多孔質層における粉砕物の体積平均粒子径は、例えば2.00μm以下であり、好ましくは1.50μm以下であり、より好ましくは1.00μm以下である。なお、体積平均粒子径は、粉砕物の粒度のバラツキの指標であり、粒度分布測定により求められる。
【0042】
低屈折率層は、ケイ素原子を含み得る。例えば、低屈折率層に含まれるケイ素原子は、シロキサン結合していることが好ましい。低屈折率層に含まれる全ケイ素原子のうち、未結合のケイ素原子(具体的には、残留シラノール)の割合は、例えば50%未満であり、好ましくは30%以下であり、より好ましくは15%以下である。
【0043】
低屈折率層は、例えば、加飾層の第1主面(凹凸面)に低屈折率層形成用液(塗工液とも称する場合がある)を塗工または印刷することにより形成され得る。より詳細には、低屈折率層は、加飾層の第1主面(凹凸面)に形成された低屈折率層形成用液の塗工膜または印刷層を加熱することにより形成され得る。
【0044】
1つの実施形態においては、上記塗工膜は、微細孔粒子を含む塗工液を用いて形成され得、この塗工液を加熱(乾燥を含む)することより微細孔粒子同士を化学的に結合させ得る。微細孔粒子を含む塗工液は、例えば、懸濁液である。塗工液に、例えば、微細孔粒子同士の架橋結合(例えば、微細孔粒子に含まれ得る残留シラノール基の脱水縮合反応)を促進する触媒(架橋反応促進剤)および/または触媒(架橋反応促進剤)を発生する物質(触媒発生剤)を添加してもよい。触媒としては、例えば、光活性触媒および熱活性触媒が挙げられる。触媒を発生する物質(触媒発生剤)としては、例えば、光触媒発生剤および熱触媒発生剤が挙げられる。光触媒発生剤としては、例えば、光塩基発生剤(光照射により塩基性触媒を発生する触媒)および光酸発生剤(光照射により酸性触媒を発生する物質)が挙げられる。例えば、微細孔粒子はゲル状化合物(好ましくは、ゲル状ケイ素化合物)の粉砕物であり、低屈折率層はゲル状化合物の粉砕物を含む多孔質体(好ましくは、シリコーン多孔質体)から構成される多孔質層である。このような微細孔粒子は、粉砕前のゲル状化合物の三次元構造が三次元基本構造に分散された状態を有し得、このような微細孔粒子を用いることで、三次元基本構造に基づく構造が形成され得る。具体的には、ゲル状化合物の三次元構造とは異なる新たな構造が形成され得る。こうして、最終的に得られる低屈折率層(多孔質層)は、例えば空気層と同程度の低屈折率を有し得る。また、微細孔粒子同士を化学的に結合させることにより、上記三次元基本構造が固定化され得、最終的に得られる低屈折率層(多孔質層)において、十分な強度を確保し得る。低屈折率層(多孔質層)の具体的な構成および形成方法の詳細は、例えば、国際公開第2019/151073号に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0045】
上記塗工液の塗工厚みは、低屈折率層に所望される厚みに応じて設定され得る。塗工膜(塗工液)の加熱温度は、例えば20℃以上であり、好ましくは50℃以上である。一方、塗工膜(塗工液)の加熱温度は、例えば200℃以下であり、好ましくは150℃以下である。塗工膜(塗工液)の加熱時間は、例えば10秒以上である。一方、塗工膜(塗工液)の加熱時間は、例えば24時間以下であり、好ましくは1時間以下であり、より好ましくは30分以下であり、さらに好ましくは10分以下である。
【0046】
D.高屈折率層
高屈折率層30の屈折率は、代表的には上記のとおり1.60~2.20である。高屈折率層30の屈折率は、好ましくは1.62~2.00であり、より好ましくは1.63~1.90であり、さらに好ましくは1.65~1.85であり、特に好ましくは1.67~1.80である。高屈折率層の屈折率がこのような範囲であれば、積層フィルムにおいてさらに良好な反射を実現し得る。その結果、非常に高い輝度を有する意匠を発現させることができる。
【0047】
高屈折率層30の全光線透過率は、好ましくは85%~99%であり、より好ましくは87%~98%であり、さらに好ましくは89%~97%である。高屈折率層の全光線透過率がこのような範囲であれば、例えば、積層フィルムを各種製品に適用した場合に、発現し得る意匠の視認性を良好に確保することができる。
【0048】
高屈折率層30のヘイズは、好ましくは2%未満であり、より好ましくは1.5%未満である。一方、ヘイズは、例えば0.1%以上であり、0.2%以上であってもよい。高屈折率層のヘイズがこのような範囲であれば、例えば、積層フィルムを各種製品に適用した場合に、発現し得る意匠の視認性を良好に確保することができる。
【0049】
高屈折率層30の厚みは、上記のとおり好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは1.2μm以上であり、特に好ましくは1.5μm以上であり、とりわけ好ましくは1.8μm以上である。また、高屈折率層の厚みは、例えば3.0μm以上であってもよく、また例えば3.5μm以上であってもよく、また例えば4.0μm以上であってもよい。一方、高屈折率層の厚みは、例えば20μm以下であってもよく、また例えば12μm以下であってもよく、また例えば10μm以下であってもよく、また例えば7μm以下であってもよい。高屈折率層の厚みがこのような範囲であれば、上記のとおり、積層フィルムの色相変化が抑制され得、結果として、発現する意匠の色ムラが抑制され得る。
【0050】
高屈折率層30としては、上記のような特性を満足する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。高屈折率層は、代表的には、バインダー樹脂(マトリックス)と屈折率調整材とを含む。バインダー樹脂としては、任意の適切な樹脂を用いることができる。好ましくは、水溶性樹脂である。水溶性樹脂の代表例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、水溶性アクリル樹脂が挙げられる。PVA系樹脂が好ましい。PVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。
【0051】
PVA系樹脂のケン化度は、好ましくは93.5モル%以上であり、より好ましくは95.0モル%以上であり、さらに好ましくは99.0モル%以上である。ケン化度の上限は、例えば100モル%であってもよく、また例えば99.95モル%であってもよく、また例えば99.93モル%であってもよい。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた高屈折率層が得られ得る。
【0052】
PVA系樹脂の重量平均分子量は、目的に応じて適切に選択し得る。重量平均分子量は、好ましくは20000~110000であり、より好ましくは30000~100000であり、さらに好ましくは40000~80000である。重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され得る。
【0053】
屈折率調整材は、実質的には、形成される層の屈折率を高くするために用いられる。したがって、屈折率調整材は、代表的には高屈折率材料であり、例えば2.30以上の屈折率を有し得る。屈折率調整材としては、このような屈折率を有する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。屈折率調整材の代表例としては、金属酸化物微粒子が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化チタン(TiO2)、シリカ(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化錫(SnO2)、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、酸化亜鉛(ZnO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)、燐錫化合物(PTO)、酸化アンチモン(Sb2O5)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6)が挙げられる。金属酸化物微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
高屈折率微粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm~100nmであり、より好ましくは2nm~50nmであり、さらに好ましくは5nm~20nmである。このような平均粒子径であれば、透明性に優れ、かつ、取扱いが容易である。当該平均粒子径は、二次粒子も1つの粒子とみなして、一次粒子と二次粒子とを区別することなく測定される値である。当該平均粒子径は、例えば、高屈折率層の断面の所定の領域を透過型電子顕微鏡で観察し、当該領域において観察される粒子(例えば、50個)の粒子径の平均値として求めることができる。
【0055】
高屈折率層における高屈折率微粒子の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して、例えば40重量部~300重量部であってもよく、また例えば70重量部~150重量部である。
【0056】
E.着色層
着色層50は、単色層であってもよく、所定のデザインが施された意匠層であってもよい。着色層は、好ましくは単色層であり、より好ましくは黒色の単色層である。このような構成であれば、積層フィルムにおいて反射により発現する意匠をより鮮明なものとすることができる。
【0057】
着色層は、代表的には、バインダー樹脂(マトリックス)と着色剤とを含む。バインダー樹脂としては、塩素化ポリオレフィン(例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。1つの実施形態においては、バインダー樹脂は熱重合性樹脂である。熱重合性樹脂は、光重合性樹脂に比べて使用量が少なくてすむので、着色剤の使用量(着色層における着色剤含有量)を増大させることができる。その結果、特に黒色の着色層を形成する場合に、全光線透過率が非常に小さく、優れた隠蔽性を有する着色層を形成することができる。1つの実施形態においては、バインダー樹脂はアクリル系樹脂であり、好ましくは多官能モノマー(例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート)を共重合成分として含むアクリル系樹脂である。多官能モノマーを共重合成分として含むアクリル系樹脂を用いることにより、適切な弾性率を有する着色層が形成され得る。
【0058】
着色剤としては、目的に応じて任意の適切な着色剤が用いられ得る。着色剤の具体例としては、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料;フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド、アニリンブラック等の有機顔料または染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢顔料(パール顔料)が挙げられる。黒色の着色層を形成する場合には、カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラックが好適に用いられる。この場合、着色剤は併用することが好ましい。可視光を広範囲かつ均等に吸収し、色付きのない(すなわち、真っ黒な)着色層を形成し得るからである。例えば、上記の着色剤に加えて、アゾ化合物および/またはキノン化合物が用いられ得る。1つの実施形態においては、着色剤は、主成分としてのカーボンブラックとその他の着色剤(例えば、アゾ化合物および/またはキノン化合物)とを含む。このような構成によれば、色つきがなく、かつ、経時安定性に優れた着色層を形成し得る。黒色の着色層を形成する場合には、着色剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは50重量部~200重量部の割合で用いられ得る。この場合、着色剤中のカーボンブラックの含有割合は、好ましくは80%~100%である。このような割合で着色剤(特にカーボンブラック)を用いることにより、全光線透過率が非常に小さく、かつ、経時安定性に優れた着色層を形成することができる。
【0059】
着色層の厚みは、例えば1μm~3mm(3000μm)であってもよく、また例えば10μm~1mm(1000μm)であってもよい。さらに、着色層は、厚み100μmにおける全光線透過率が好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。全光線透過率がこのような範囲であれば、積層フィルムにおいて反射により発現する意匠を格別に鮮明なものとすることができる。
【0060】
F.画像表示装置
本発明の実施形態による積層フィルムは、画像表示装置に用いられる。したがって、そのような画像表示装置もまた、本発明の実施形態に包含され得る。画像表示装置としては、代表的には、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)が挙げられる。画像表示装置の製品形態としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末が挙げられる。また、本発明の実施形態による積層フィルムは、画像表示装置を収容するカバーケースに用いられてもよい。
【0061】
図3は、本発明の1つの実施形態による画像表示装置(言い換えれば、
図1の積層フィルムの使用形態)を説明する概略断面図である。図示例の画像表示装置200は、画像表示面201と裏面(画像表示に関与しない面)202とを有する。画像表示装置200の裏面202には、
図1の積層フィルム100が配置されている。より詳細には、積層フィルム100は、高屈折率層30が画像表示装置200側になるようにして、粘着剤層120を介して画像表示装置200の裏面202に貼り合わせられている。このような実施形態によれば、積層フィルムにより画像表示装置の裏面に意匠が発現し、画像表示装置自体にデザイン性を付与することができる。このような実施形態によれば、例えばスマートフォンにケースを使用しない場合に、スマートフォンの商品価値を高めることができる。なお、
図3から明らかなとおり、積層フィルムによる意匠は、矢印のとおり画像表示装置200の裏面202に発現し、画像表示には関与しない。
【0062】
図3は、
図1の積層フィルムを画像表示装置に配置する実施形態を説明しているが、言うまでもなく、本発明の他の実施形態による積層フィルム(例えば、
図2の積層フィルム、図示しない実施形態による積層フィルム)もまた画像表示装置に配置され得る。
【実施例0063】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。また、特に明記しない限り、実施例における「%」および「部」は重量基準である。
【0064】
(1)屈折率
実施例および比較例で用いた低屈折率層または高屈折率層をアクリルフィルムに形成した。得られた積層体を25mm×50mmのサイズにカットした。カットした積層体を、粘着剤を介してガラス板(厚み:3mm)の表面に貼合した。上記ガラス板の裏面中央部(直径20mm程度)を黒マジックで塗りつぶして、該ガラス板の裏面で反射しないサンプルとした。エリプソメーター(J.A.Woollam Japan社製:VASE)に上記サンプルをセットし、550nmの波長、入射角50~80度の条件で、屈折率を測定した。
【0065】
(2)厚み
干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。
【0066】
(3)反射率
実施例および比較例で得られた積層フィルムについて、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、製品名「U4100」)を用いて可視光領域における分光反射率を求め、以下の基準で評価した。
○(良好):反射率が5.0%以上
×(不良):反射率が5.0%未満
【0067】
(4)色相変化
上記(3)で得られた分光反射率から色度値(x、y)を算出した。無彩色値(x´、y´)からの変化量Δxyを下記式から求めた。
Δxy={(x-x´)2+(y-y´)2}1/2
得られたΔxyを、下記の基準で色相変化の指標として評価した。
◎(優良) :Δxy(×102)が3.0未満
○(良好) :Δxy(×102)が3.0以上5.0未満
△(許容可能):Δxy(×102)が5.0以上7.0未満
【0068】
[製造例1]低屈折率層形成用塗工液の調製
(1)ケイ素化合物のゲル化
2.2gのジメチルスルホキシド(DMSO)に、ケイ素化合物の前駆体であるメチルトリメトキシシラン(MTMS)を0.95g溶解させて混合液Aを調製した。この混合液Aに、0.01mol/Lのシュウ酸水溶液を0.5g添加し、室温で30分撹拌を行うことでMTMSを加水分解して、トリス(ヒドロキシ)メチルシランを含む混合液Bを生成した。
5.5gのDMSOに、28重量%のアンモニア水0.38g、および純水0.2gを添加した後、さらに、上記混合液Bを追添し、室温で15分撹拌することで、トリス(ヒドロキシ)メチルシランのゲル化を行い、ゲル状ケイ素化合物を含む混合液Cを得た。
(2)熟成処理
上記のように調製したゲル状ケイ素化合物を含む混合液Cを、そのまま、40℃で20時間インキュベートして、熟成処理を行った。
(3)粉砕処理
次に、上記のように熟成処理したゲル状ケイ素化合物を、スパチュラを用いて数mm~数cmサイズの顆粒状に砕いた。次いで、混合液Cにイソプロピルアルコール(IPA)を40g添加し、軽く撹拌した後、室温で6時間静置して、ゲル中の溶媒および触媒をデカンテーションした。同様のデカンテーション処理を3回行うことにより、溶媒置換し、混合液Dを得た。次いで、混合液D中のゲル状ケイ素化合物を粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)した。粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)は、ホモジナイザー(エスエムテー社製、商品名「UH-50」)を使用し、5ccのスクリュー瓶に、混合液D中のゲル状化合物1.85gおよびIPAを1.15g秤量した後、50W、20kHzの条件で2分間の粉砕で行った。
この粉砕処理によって、上記混合液D中のゲル状ケイ素化合物が粉砕されたことにより、混合液Dは、粉砕物のゾル液Eとなった。ゾル液Eに含まれる粉砕物の粒度バラツキを示す体積平均粒子径を、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(日機装社製、UPA-EX150型)にて確認したところ、0.50~0.70μmであった。さらに、0.75gのゾル液Eに対し、光塩基発生剤(和光純薬工業株式会社、商品名:WPBG266)の1.5重量%濃度MEK(メチルエチルケトン)溶液を0.015g、ビス架橋促進剤((トリメトキシシリル)ヘキサン)の5%濃度MEK溶液を0.005gの比率で添加し、低屈折率層形成用塗工液1を得た。この塗工液を用いて形成される低屈折率層の屈折率は1.16であった。
【0069】
[製造例2]低屈折率層形成用塗工液の調製
0.75gのゾル液Eに対し、塩基発生剤(和光純薬工業株式会社、商品名:WPBG266)の1.5重量%濃度MEK(メチルエチルケトン)溶液を0.060g、ビス架橋促進剤((トリメトキシシリル)ヘキサン)の5%濃度MEK溶液を0.018gの比率で添加したこと以外は製造例1と同様にして、低屈折率層形成用塗工液2を得た。この塗工液を用いて形成される低屈折率層の屈折率は1.19であった。
【0070】
[製造例3]低屈折率層形成用塗工液の調製
0.75gのゾル液Eに対し、塩基発生剤(和光純薬工業株式会社、商品名:WPBG266)の1.5重量%濃度MEK(メチルエチルケトン)溶液を0.180g、ビス架橋促進剤((トリメトキシシリル)ヘキサン)の5%濃度MEK溶液を0.054gの比率で添加したこと以外は製造例1と同様にして、低屈折率層形成用塗工液3を得た。この塗工液を用いて形成される低屈折率層の屈折率は1.25であった。
【0071】
[製造例4]高屈折率層形成用塗工液の調製
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、製品名「JC-25」)の6.0%水溶液を調製した。この水溶液100部(固形分)に対して、酸化チタンゾル(多木化学社製、製品名「M-6」:酸化チタンの平均粒子径5nm)72部(固形分)を添加し、高屈折率層形成用塗工液Aを得た。この塗工液を用いて形成される高屈折率層の屈折率は1.65であった。
【0072】
[製造例5]高屈折率層形成用塗工液の調製
PVA水溶液100部(固形分)に対して酸化チタンゾル130部(固形分)を添加したこと以外は製造例4と同様にして、高屈折率層形成用塗工液Bを得た。この塗工液を用いて形成される高屈折率層の屈折率は1.70であった。
【0073】
[製造例6]高屈折率層形成用塗工液の調製
PVA水溶液100部(固形分)に対して酸化チタンゾル240部(固形分)を添加したこと以外は製造例4と同様にして、高屈折率層形成用塗工液Cを得た。この塗工液を用いて形成される高屈折率層の屈折率は1.75であった。
【0074】
[実施例1]
加飾層として、一方の面に凹凸構造を有するアクリルフィルムを用いた。アクリルフィルムの凹凸表面に、製造例1で調製した低屈折率層形成用塗工液1を塗工した。塗工膜を、温度100℃で1分処理して乾燥し、アクリルフィルムの凹凸表面上に低屈折率層(厚み3.0μm)を形成した。低屈折率層の屈折率は上記のとおり1.16であった。次に、低屈折率層表面に製造例5で調製した高屈折率層形成用塗工液Bを塗工した。塗工膜を、温度100℃で3分処理して乾燥し、低屈折率層上に高屈折率層(厚み4.5μm)を形成した。高屈折率層の屈折率は上記のとおり1.70であった。このようにして、加飾層/低屈折率層/高屈折率層の構成を有する積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、上記の「反射率」および「色相変化」の評価に供した。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例2~8]
低屈折率層形成用塗工液および高屈折率層形成用塗工液の種類および塗工厚みをそれぞれ変更し、表1に示す屈折率および厚みをそれぞれ有する低屈折率層および高屈折率層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
実施例1で用いたアクリルフィルムをそのまま、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
高屈折率層を形成しなかったこと以外は実施例2と同様にして、加飾層/低屈折率層の構成を有する積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、反射率が高く、かつ、色相変化が抑制された積層フィルムが得られることがわかる。このような積層フィルムは、輝度が高く、かつ、色ムラが抑制されたデザインを実現し得る。
本発明の実施形態による積層フィルムは、加飾フィルムとして好適に用いられ得、特に、画像表示装置の裏面(画像表示に関与しない面)に適用される加飾フィルムとして好適に用いられ得る。