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特開2024-176435印刷方法、印刷ヘッドユニットおよびロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176435
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】印刷方法、印刷ヘッドユニットおよびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20241212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241212BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241212BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20241212BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20241212BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20241212BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20241212BHJP
   B05C 9/10 20060101ALI20241212BHJP
   B05C 9/06 20060101ALI20241212BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241212BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241212BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B41J2/01 451
B41J2/21
B41J2/01 129
B05C5/00 101
B05C11/00
B05B12/00 A
B05B13/04
B05C9/10
B05C9/06
B05D7/24 301M
B05D7/00 K
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094963
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】八尋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】小口 秀輝
【テーマコード(参考)】
2C056
3C707
4D075
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA11
2C056EB27
2C056FA09
2C056FD20
3C707AS13
3C707BS12
3C707DS01
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075AE03
4D075BB01Z
4D075BB20Z
4D075BB26Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA23
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA19
4D075EA21
4D075EA33
4D075EB24
4D075EC11
4D075EC30
4D075EC37
4F035AA03
4F035AA04
4F035BA22
4F035BB03
4F035BB06
4F035BB07
4F035BC02
4F035CA01
4F035CC01
4F035CD06
4F035CD12
4F035CD18
4F035CD19
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA38
4F041BA59
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB04
4F042CC10
4F042CC11
4F042DA00
4F042DH09
4F042ED02
(57)【要約】
【課題】印刷を失敗しても、インク塗膜の除去による対象物への影響を抑えつつ、容易に修正することができる印刷方法、印刷ヘッドユニットおよびロボットシステムを提供すること。
【解決手段】インク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドを支持して移動させるロボットアームを備えるロボットと、を用い、対象物に印刷を行う印刷方法であって、前記対象物には剥離可能な下地層が設けられ、前記ロボットが前記インク吐出ヘッドを走査させながら、前記インク吐出ヘッドが前記下地層に向けてインクを吐出するステップを含むことを特徴とする印刷方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドを支持して移動させるロボットアームを備えるロボットと、を用い、対象物に印刷を行う印刷方法であって、
前記対象物には剥離可能な下地層が設けられ、前記ロボットが前記インク吐出ヘッドを走査させながら、前記インク吐出ヘッドが前記下地層に向けてインクを吐出するステップを含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記下地層に吐出された前記インクにより形成されたインク塗膜を検査し、検査結果を出力するステップと、
前記検査結果が合格か不合格かを判定するステップと、
前記検査結果が前記不合格であった場合に、前記インク塗膜を除去するステップと、
を含む請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記インク塗膜を除去するステップは、
前記インク塗膜に向けて剥離剤を供給する処理と、
前記剥離剤が供給された領域を拭き取る処理と、
を含む請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
液体吐出ヘッドから前記剥離剤を吐出する請求項3に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記検査結果は、前記インク塗膜を撮像して得られる画像を含み、
前記検査結果が合格か不合格かを判定するステップは、前記画像が合格基準を満たすか否かを判定し、満たす場合には前記合格とする処理を含む請求項2ないし4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記検査結果が合格か不合格かを判定するステップは、前記画像に含まれるパターンがテンプレート画像と一致する場合に前記合格とするテンプレートマッチング処理を含む請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記インクを吐出するステップよりも前に設けられ、前記下地層を形成するステップを含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記下地層は、顔料を含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記顔料の色は、前記対象物の前記下地層が設けられている面の色と同じである請求項8に記載の印刷方法。
【請求項10】
前記下地層は、重合性モノマーを含有する硬化型液体の塗膜である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項11】
前記下地層は、前記対象物に貼り付けられたシートである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項12】
前記インクは、重合性モノマーを含有する硬化型インクである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項13】
ロボットアームに支持され、対象物に対して走査されることにより印刷を行う印刷ヘッドユニットであって、
前記ロボットアームに取り付けられる取付部と、
前記対象物には剥離可能な下地層が設けられ、前記下地層に向けてインクを吐出するインク吐出ヘッドと、
吐出された前記インクにより形成されるインク塗膜を検査する検査装置と、
前記下地層を剥離可能な状態に変化させる剥離剤を供給する剥離剤供給装置と、
を備えることを特徴とする印刷ヘッドユニット。
【請求項14】
対象物に対して印刷を行うロボットシステムであって、
請求項13に記載の印刷ヘッドユニットと、
前記印刷ヘッドユニットを支持して移動させるロボットアームを備えるロボットと、
前記インク吐出ヘッド、前記ロボット、前記検査装置および前記剥離剤供給装置の各動作を制御することにより、前記印刷を行わせる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記検査装置から出力される検査結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果が合格か不合格かを判定する判定部と、
前記検査結果が前記不合格である場合に、前記インク塗膜に向けて前記剥離剤を供給させる剥離処理部と、
を有することを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、印刷ヘッドユニットおよびロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の可動部の動作を組み合わせてインクジェットプリントヘッドを移動させ、立体物の表面に印刷を行う立体物印刷装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、三次元的な対象物にインクジェット印刷を行うシステムであって、ジョイントアーム・ロボットと、印刷ヘッドと、これらの間に配置されたピエゾアクチュエーターと、を備えるシステムが開示されている。ロボットは、対象物の表面に沿って印刷ヘッドを移動させるように構成されている。これにより、非平面の領域にもインクジェット印刷を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-202781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象物にインクを吐出する印刷を行ったとき、印刷の失敗が認められた場合には、印刷を停止して新たな対象物を用意するか、または、印刷をやり直す。新たな対象物を用意する場合には、対象物が無駄になってしまう。一方、印刷をやり直す場合、失敗の原因となったインクを除去する必要がある。
【0006】
しかしながら、インクを除去する作業を行ったとき、対象物の印刷面に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、対象物への悪影響を抑えつつ、印刷をやり直すことができる印刷方法を実現することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の適用例に係る印刷方法は、
インク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドを支持して移動させるロボットアームを備えるロボットと、を用い、対象物に印刷を行う印刷方法であって、
前記対象物には剥離可能な下地層が設けられ、前記ロボットが前記インク吐出ヘッドを走査させながら、前記インク吐出ヘッドが前記下地層に向けてインクを吐出するステップを含む。
【0008】
本発明の適用例に係る印刷ヘッドユニットは、
ロボットアームに支持され、対象物に対して走査されることにより印刷を行う印刷ヘッドユニットであって、
前記ロボットアームに取り付けられる取付部と、
前記対象物には剥離可能な下地層が設けられ、前記下地層に向けてインクを吐出するインク吐出ヘッドと、
吐出された前記インクにより形成されるインク塗膜を検査する検査装置と、
前記下地層を剥離可能な状態に変化させる剥離剤を供給する剥離剤供給装置と、
を備える。
【0009】
本発明の適用例に係るロボットシステムは、
対象物に対して印刷を行うロボットシステムであって、
本発明の適用例に係る印刷ヘッドユニットと、
前記印刷ヘッドユニットを支持して移動させるロボットアームを備えるロボットと、
前記インク吐出ヘッド、前記ロボット、前記検査装置および前記剥離剤供給装置の各動作を制御することにより、前記印刷を行わせる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記検査装置から出力される検査結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果が合格か不合格かを判定する判定部と、
前記検査結果が前記不合格である場合に、前記インク塗膜に向けて前記剥離剤を供給させる剥離処理部と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す斜視図である。
図2図1に示すロボットシステムの機能ブロック図である。
図3図1に示す印刷ヘッドユニットを示す平面図である。
図4】第1実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
図5図4に示す印刷方法を説明するための図であって、図4に示す各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図6図4に示す印刷方法を説明するための図であって、図4に示す各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図7図4に示す印刷方法を説明するための図であって、図4に示す各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図8図4に示す印刷方法を説明するための図であって、図4に示す各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図9図4に示す印刷方法を説明するための図であって、図4に示す各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図10図4に示す印刷方法を説明するための図であって、図4に示す各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図11】第2実施形態に係る印刷方法を説明するための図であって、印刷方法の各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図12】第2実施形態に係る印刷方法を説明するための図であって、印刷方法の各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図13】第2実施形態に係る印刷方法を説明するための図であって、印刷方法の各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図14】第2実施形態に係る印刷方法を説明するための図であって、印刷方法の各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
図15】第2実施形態に係る印刷方法を説明するための図であって、印刷方法の各ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の印刷方法、印刷ヘッドユニットおよびロボットシステムの好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
1.第1実施形態
まず、第1実施形態に係る印刷方法、印刷ヘッドユニットおよびロボットシステムについて説明する。
【0013】
1.1.ロボットシステム
図1は、第1実施形態に係るロボットシステム100の全体構成を示す斜視図である。図2は、図1に示すロボットシステム100の機能ブロック図である。図3は、図1に示す印刷ヘッドユニット10を示す平面図である。
【0014】
図1に示すロボットシステム100は、ロボット200と、印刷ヘッドユニット10(第1実施形態に係る印刷ヘッドユニット)と、対象物Qを支持および固定する固定部材700と、制御装置900と、を備える。
【0015】
ロボット200は、6つの駆動軸を有する6軸の垂直多関節ロボットである。ロボット200は、床に固定された基台210と、基台210に接続されたロボットアーム220と、ロボットアーム220に取り付けられた移動ステージ300と、を有する。なお、移動ステージ300は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。その場合、印刷ヘッドユニット10を直接、ロボットアーム220に取り付ければよい。また、ロボット200が有する駆動軸は、6つより少なくても多くてもよい。また、ロボット200は、水平多関節ロボットであってもよいし、複数のロボットアームを有する多腕ロボットであってもよい。
【0016】
ロボットアーム220は、複数のアーム221、222、223、224、225、226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1~J6を備えている。このうち、関節J2、J3、J5は、曲げ関節であり、関節J1、J4、J6は、ねじり関節である。また、ロボットアーム220には、図2に示すアーム駆動機構230が設けられている。アーム駆動機構230は、図1に示す関節J1、J2、J3、J4、J5、J6にそれぞれ設けられたモーターMおよびエンコーダーEで構成されている。モーターMは、関節J1、J2、J3、J4、J5、J6をそれぞれ駆動する駆動源である。エンコーダーEは、モーターMの回転量(アームの回動角)を検出する。
【0017】
アーム226の先端部には、図1に示すように、移動ステージ300を介して印刷ヘッドユニット10が取り付けられている。図1に示す印刷ヘッドユニット10は、取付部11と、インク吐出ヘッド400と、検査装置500と、剥離剤供給装置800と、塗膜除去装置840と、を備える。
【0018】
取付部11は、移動ステージ300を介してアーム226の先端部に接続されている。また、取付部11は、インク吐出ヘッド400、検査装置500、剥離剤供給装置800および塗膜除去装置840を支持している。このような取付部11は、例えば十分な剛性を有するプレートで構成される。これにより、互いの位置関係を保持しつつ、インク吐出ヘッド400、検査装置500、剥離剤供給装置800および塗膜除去装置840をロボットアーム220に接続することができる。なお、取付部11の構成は、これに限定されない。
【0019】
インク吐出ヘッド400は、図示しない貯留室および貯留室の壁面に配置された振動板と、貯留室に繋がる、図3に示す下地剤吐出孔411およびインク吐出孔412と、を有し、振動板が振動することにより貯留室内の下地剤やインクが下地剤吐出孔411やインク吐出孔412から吐出する構成となっている。以下の説明では、インクを吐出することを「印刷」ともいう。なお、対象物Qの印刷面Q1に、下地剤を含む下地層があらかじめ設けられている場合には、下地剤吐出孔411が省略されていてもよい。また、インク吐出ヘッド400の構成は、上記の構成に限定されない。
【0020】
インク吐出ヘッド400から吐出される下地剤は、対象物Qに下地層を形成する成分を含む液体材料である。下地層を形成する成分は、対象物Qの印刷面Q1に付着した後、後述する剥離剤供給装置800から供給される剥離剤によって剥離可能になる成分である。後述するインクを吐出する位置にこのような成分を供給してあらかじめ下地層を成膜することにより、インクによる印刷時、インク塗膜に不良が生じた場合でも、下地層を除去することによってインク塗膜も除去することができる。これにより、印刷不良が発生しても、対象物Qを廃棄する必要がなく、印刷を容易にやり直すことができる。
【0021】
下地剤としては、例えば、顔料と分散媒とを含む顔料含有液体、重合性モノマー、重合開始剤および分散媒を含む硬化型液体等が挙げられる。下地剤が顔料含有液体である場合、吐出された下地剤から分散媒が除去されると、顔料を含む分散質が残存する。この分散質が下地層の構成材料となる。また、下地剤が硬化型液体である場合、吐出された下地剤が硬化すると、硬化膜が形成され、この硬化膜が下地層となる。これにより、表面の平滑性に優れる下地層を形成できる。
【0022】
インク吐出ヘッド400から吐出されるインクは、対象物Qに色材を含む塗膜を形成し、文字、画像、模様等の印刷結果を得るための液体材料である。インク吐出ヘッド400から吐出されるインクは、特に限定されず、例えば、硬化型インク、非硬化型インクが挙げられる。
【0023】
硬化型インクとは、未硬化の状態で吐出された後、硬化反応を生じ、硬化する特性を有するインクである。このような硬化型インクは、インク吐出ヘッド400から吐出され、対象物Qに着弾した後、硬化して定着する。硬化型インクには、紫外線硬化型インク(UVインク)のような光硬化型インク、レジンインクのような熱硬化型インク等が挙げられる。このような硬化型インクには、色材、重合性モノマー、重合開始剤等が含まれる。
【0024】
非硬化型インクとは、重合性モノマーをほとんど含まず、硬化性を有さないインクである。このような非硬化型インクは、インク吐出ヘッド400から吐出され、対象物Qに着弾した後、分散媒の除去に伴って色材が定着する。非硬化型インクには、色材と水系分散媒とを含む水系インク、色材と溶剤系分散媒とを含む溶剤系インク等が挙げられる。色材としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。
【0025】
インク吐出ヘッド400から吐出されるインクには、硬化型インクが好ましく用いられる。硬化型インクを用いることにより、耐摩擦性に優れるとともに、硬化処理を行うことで速乾性に優れるインク塗膜を形成することができる。
【0026】
なお、上記のインク吐出ヘッド400は、下地剤およびインクの双方を吐出するように構成されているが、これらは個別のヘッドから吐出されるようになっていてもよい。
【0027】
また、ロボットシステム100は、プリントコントローラー420を備える。インク吐出ヘッド400は、図2に示すように、プリントコントローラー420に接続されている。図1の例では、プリントコントローラー420がインク吐出ヘッド400と同様、移動ステージ300を介してアーム226の先端部に取り付けられている。プリントコントローラー420は、制御装置900から出力される制御信号に基づいて、インク吐出ヘッド400の動作を制御する。これにより、対象物Qの印刷面Q1のうち、印刷データに基づく領域に対して下地剤およびインクが吐出される。その結果、下地層およびインク塗膜が形成される。
【0028】
プリントコントローラー420は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサー、メモリー、外部インターフェース等を含む。なお、プリントコントローラー420は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでいてもよい。また、プリントコントローラー420は、制御装置900に組み込まれていてもよい。
【0029】
図3に示す検査装置500は、撮像部510を有する。撮像部510は、対象物Qの印刷面Q1に形成されたインク塗膜を撮像する。撮像部510で撮像した画像に基づいて、インク塗膜の検査を行うことができる。なお、本明細書において「検査」とは、形成されたインク塗膜の画像を撮像することをいう。
【0030】
本実施形態において、検査装置500は、印刷ヘッドユニット10に含まれているが、必ずしも含まれていなくてもよい。その場合、検査装置500は、例えばロボットアーム220の任意の位置に設けられていてもよいし、ロボットアーム220とは異なる位置に設けられていてもよい。ロボットアーム220とは異なる位置としては、例えば、ロボット200が配置されている空間の天井や壁、床に建てられた支柱等が挙げられる。
【0031】
撮像部510は、例えばカメラである。カメラとしては、例えば、モノクロカメラ、カラーカメラ、分光カメラ等が挙げられる。
【0032】
このうち、モノクロカメラやカラーカメラは、2次元の輝度情報を少なくとも含む画像を取得できる。輝度情報は、2次元の画素における輝度値である。このような画像を用いることで、対象物Qに吐出されたインクの位置や形状を検査することができる。
【0033】
また、分光カメラは、2次元の輝度情報および色情報を少なくとも含む画像を取得できる。色情報は、画素における色度および明度である。このような色情報を伴う画像を用いることで、対象物Qに吐出されたインクの位置や形状だけでなく、インクの色、つまりインクの種類を検査することができる。
【0034】
図3に示す剥離剤供給装置800は、剥離剤吐出部810を有する。剥離剤吐出部810は、下地層上に形成されたインク塗膜に向けて剥離剤を供給する。これにより、剥離剤が供給された位置に設けられている下地層を印刷面Q1から剥離させることができる。その結果、インク塗膜も除去することができ、印刷面Q1において印刷のやり直しによる修正が可能になる。
【0035】
図3に示す剥離剤供給装置800は、一例として、剥離剤を吐出する液体吐出ヘッドになっている。このような構成によれば、必要な量の剥離剤をインク塗膜に向けて高い位置精度で供給することができる。なお、剥離剤が供給される位置の精度は、インク吐出ヘッド400よりも低くても構わない。このため、剥離剤供給装置800は、ディスペンサー、スプレーヘッド等で置き換えられていてもよい。
【0036】
本実施形態において、剥離剤供給装置800は、印刷ヘッドユニット10に含まれているが、必ずしも含まれていなくてもよい。その場合、剥離剤供給装置800は、例えばロボットアーム220の任意の位置に設けられていてもよいし、ロボットアーム220とは異なる位置に設けられていてもよい。ロボットアーム220とは異なる位置としては、例えば、ロボット200が配置されている空間の天井や壁、床に建てられた支柱等が挙げられる。
【0037】
また、剥離剤供給装置800は、剥離剤を用いることなく除去可能であるといった下地層の形態次第では、ロボットシステム100から省略されていてもよい。
【0038】
剥離剤供給装置800から供給される剥離剤は、後述する下地層42を剥離可能な状態にする液体である。このような液体としては、例えば、下地層42を膨潤、溶解等させる有機溶剤が挙げられる。具体的には、アクリル系シンナー、ウレタン系シンナー、エポキシ系シンナー、メラミン系シンナー、ラッカー系シンナー等の各種シンナー系溶剤、アセトン、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、ベンゼン等の有機溶剤が挙げられる。
【0039】
図3に示す塗膜除去装置840は、塗膜拭取部850を有する。塗膜拭取部850は、剥離剤が供給されたインク塗膜や下地層を拭き取ることによって除去する。図3に示す塗膜拭取部850は、2つの図示しないローラーと、これらに掛け渡されている環状ベルト854と、を備える。ローラーは、図示しないモーターによって回転し、それに伴って環状ベルト854が回転する。環状ベルト854は、例えば、織布、不織布のような布帛、刷毛等を表面に有する。なお、塗膜拭取部850は、拭き取り以外の方法で塗膜を除去する機器で置き換えられていてもよい。拭き取り以外の方法としては、例えば、減圧による吸引、流体による洗浄、流体や粉体による飛散等の方法が挙げられる。流体としては、空気やガスのような気体、水や溶剤のような液体が挙げられ、環境負荷が低いという観点で水が好ましく用いられる。
【0040】
本実施形態において、塗膜除去装置840は、印刷ヘッドユニット10に含まれているが、必ずしも含まれていなくてもよい。その場合、塗膜除去装置840は、例えばロボットアーム220の任意の位置に設けられていてもよい。
【0041】
また、塗膜除去装置840は、下地層の形態次第で、ロボットシステム100から省略されていてもよい。
【0042】
移動ステージ300は、図3に示すように、アーム226に接続された基部310と、基部310に対して移動するステージ320と、基部310に対してステージ320を移動させる移動機構330と、を有する。図3に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸としたとき、ステージ320は、基部310に対してY軸に沿う方向に移動可能なYステージ320Yと、Yステージ320Yに対してX軸に沿う方向に移動可能なXステージ320Xと、を有する。Xステージ320XおよびYステージ320Yは、図示しないリニアガイドによってX軸方向およびY軸方向に直動案内されており、滑らかに移動することができる。印刷ヘッドユニット10は、Xステージ320Xに取り付けられている。なお、ステージ320は、基部310に対してZ軸まわりに回転可能な回転ステージを有していてもよい。
【0043】
移動機構330は、Yステージ320Yを基部310に対してY軸に沿う方向に移動させるY移動機構330Yと、Xステージ320XをYステージ320Yに対してX軸に沿う方向に移動させるX移動機構330Xと、を有する。
【0044】
Y移動機構330YおよびX移動機構330Xは、それぞれ、駆動源として圧電アクチュエーター340を有する。圧電アクチュエーター340は、圧電素子の伸縮を利用して振動し、その振動をXステージ320XおよびYステージ320Yに伝達することによって移動させる。つまり、移動ステージ300は、ピエゾ駆動により、ロボットアーム220に対して印刷ヘッドユニット10を移動させるように構成されている。これにより、移動ステージ300の小型化および軽量化を図ることができる。また、移動ステージ300の駆動精度が向上する。さらに、圧電アクチュエーター340は、停止時の保持トルクが大きいため、ブレーキを追加する必要がない点、および、停止時のステージ320の位置安定性が高い点でも有用である。なお、駆動源は、圧電アクチュエーター340以外のアクチュエーターであってもよい。
【0045】
また、ロボットシステム100は、図1および図2に示すように、ロボットコントローラー600を備える。モーターMおよびエンコーダーEは、ロボットコントローラー600に接続されている。ロボットコントローラー600は、制御装置900から出力される制御信号に基づいて、ロボット200の動作を制御する。
【0046】
ロボットコントローラー600は、機能部として、アーム制御部610、移動ステージコントローラー620、および、記憶部630を有する。
【0047】
アーム制御部610は、アーム駆動機構230の動作を制御する制御信号を出力することにより、ロボットアーム220を目的とする姿勢に制御する。
【0048】
移動ステージコントローラー620は、移動ステージ300の動作を制御する制御信号を出力することにより、ロボットアーム220に対して印刷ヘッドユニット10を目的とする位置に移動させる。なお、移動ステージコントローラー620は、ロボットコントローラー600から独立していてもよい。
【0049】
記憶部630は、ロボットコントローラー600での処理に必要なプログラム、プログラムの実行に必要なデータ等を格納する。
【0050】
ロボットコントローラー600は、例えば、1個以上のCPUのようなプロセッサー、メモリー、外部インターフェース等を含む。なお、ロボットコントローラー600は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでいてもよい。
【0051】
制御装置900は、ロボットコントローラー600、プリントコントローラー420、検査装置500、剥離剤供給装置800および塗膜除去装置840の各動作を制御して、対象物Qに対する印刷を実行させる。制御装置900は、図2に示すように、機能部として、印刷制御部910および記憶部930を有する。印刷制御部910は、印刷データ生成部912、検査結果取得部914、判定部916、剥離処理部918および除去処理部920を含む。
【0052】
印刷データ生成部912は、印刷データを生成し、ロボットコントローラー600およびプリントコントローラー420に出力する。印刷データとは、対象物Qに印刷する文字、画像等を構成するデータである。
【0053】
検査結果取得部914は、検査装置500の動作を制御し、対象物Qの印刷面Q1に形成された直後のインク塗膜を検査装置500に撮像させる。そして、得られた画像を検査結果として出力させ、取得する。
【0054】
判定部916は、検査結果取得部914が取得した検査結果の合否を判定する。合否の判定方法としては、例えば、検査結果が2次元の輝度情報を含む画像である場合には、画像に含まれるパターンが、あらかじめ登録されているテンプレート画像(合格基準)と一致するか否かを判定する方法が挙げられる。この判定では、公知のテンプレートマッチング処理の技術に基づいて合否が判定される。このような方法によれば、合否判定をより効率よく行うことができる。
【0055】
また、検査結果が色情報を含む画像である場合には、形成されたインク塗膜の色相および彩度からなる色度ならびに明度が、あらかじめ登録されている合格基準を満たしているか否かを判定する方法が挙げられる。具体的には、例えば、L*a*b*表色系において、検査結果に含まれる色情報と基準の色との差(色差ΔE)が所定の範囲内にあるか否かを判定する方法が挙げられる。そして、判定部916は、色差ΔEが所定の範囲内にある場合、合格とし、所定の範囲内にない場合、不合格(否)とする。このように色情報を用いることで、形成されたインク塗膜の位置や形状だけでなく、インク塗膜の色に基づく合否判定を行うことができる。その結果、印刷結果に色の不良が生じるのを抑制することができる。
【0056】
剥離処理部918は、剥離剤供給装置800による下地層の剥離処理を制御する。具体的には、判定部916での判定が不合格であった場合、該当する領域のインク塗膜およびその下地にある下地層に向けて剥離剤供給装置800から剥離剤を供給させる。一方、判定部916での判定が合格であった場合、剥離剤供給装置800は、該当する領域には剥離剤を供給しない。
【0057】
除去処理部920は、塗膜除去装置840によるインク塗膜および下地層の除去処理を制御する。具体的には、除去処理部920は、剥離剤供給装置800が剥離処理を行った領域のインク塗膜および下地層を、塗膜除去装置840に除去させる。
【0058】
記憶部930は、制御装置900の動作に必要なプログラム、プログラムの実行に必要なデータ等を格納する。
【0059】
制御装置900は、例えば、コンピューターで構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することにより、前述した機能を実現する。なお、制御装置900は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでいてもよい。
【0060】
以上、第1実施形態に係るロボットシステム100の構成について説明したが、移動ステージ300は、ロボットアーム220から離れた位置、例えば固定部材700に取り付けられ、対象物Qを支持していてもよい。この場合、移動ステージ300は、ロボットアーム220の動作に同期して、対象物Qの位置を微調整するように構成されていてもよい。また、移動ステージ300は、例えば印刷方向D1と直交する直交方向D2におけるロボットアーム220のぶれをキャンセルするように、印刷ヘッドユニット10を移動させる機能を有していてもよい。
【0061】
1.2.印刷方法
次に、第1実施形態に係る印刷方法について説明する。なお、以下の説明では、一例として、前述したロボットシステム100を用いた方法について説明するが、印刷方法は、ロボットシステム100以外のロボットシステムを用いる方法であってもよい。
【0062】
図4は、第1実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。図5ないし図10は、それぞれ、図4に示す印刷方法を説明するための図であって、図4に示す各ステップにおけるロボットシステム100の動作を説明する図である。
【0063】
第1実施形態に係る印刷方法は、対象物Qに対してロボット200が印刷ヘッドユニット10を印刷方向D1に走査させながら、インク吐出ヘッド400がインク44を吐出し、対象物Qに印刷を行う方法である。
【0064】
図4に示す印刷方法は、下地層形成ステップS100と、インク吐出ステップS102と、検査ステップS104と、判定ステップS106と、塗膜除去ステップS110と、を有する。以下、各ステップについて順に説明する。
【0065】
1.2.1.下地層形成ステップ
下地層形成ステップS100では、印刷制御部910の印刷データ生成部912が対象物Qの印刷面Q1の形状や大きさ等を取得する。そして、印刷面Q1におけるロボット200の作動条件を決定する。作動条件としては、特に限定されないが、例えば印刷面Q1におけるロボットアーム220の姿勢、移動経路、加速度、減速度および最大速度等、ならびに、移動ステージ300の移動量、移動速度等が挙げられる。これらの作動条件は、印刷制御部910にあらかじめ入力された情報や適宜入力される画像データ等に基づいて、印刷データ生成部912が設定する。
【0066】
次に、下地層形成ステップS100では、印刷データ生成部912が生成した印刷データを、ロボットコントローラー600およびプリントコントローラー420に出力する。ロボットコントローラー600は、印刷データに基づいてロボット200の動作を制御する。プリントコントローラー420は、印刷データに基づいてインク吐出ヘッド400の動作を制御する。そして、ロボット200が印刷ヘッドユニット10を印刷方向D1に走査させながら、図5に示すように、インク吐出ヘッド400が印刷面Q1に向けて下地剤40を吐出する。吐出された下地剤40は、印刷データに設定された範囲(所定範囲)に着弾し、下地層42を形成する。ここでいう「所定範囲」とは、例えば、下地層42の形成後、後述するステップでインク44の吐出および検査を行う最小単位の領域のことをいう。下地層42の形成後、インク44の吐出および検査を所定範囲ごとに繰り返すことで、目的とする印刷結果が得られる。
【0067】
このようにして形成された図5の下地層42は、後述するインク44の吐出領域と重なるため、図6に示すインク塗膜46の下地となる。下地層42は、後述する塗膜除去ステップS110で供給される剥離剤の作用で剥離可能になる成分を含む。このため、インク塗膜46に不良が生じた場合には、剥離剤を供給することにより、印刷面Q1から下地層42を剥離し、それに伴ってインク塗膜46も剥離できる。これにより、印刷面Q1を元の状態に戻すことができ、印刷をやり直すことができる。このため、対象物Qを廃棄等することなく、再印刷に供することができる。
【0068】
また、後述するステップで形成されるインク塗膜46は、下地層42を介して定着するため、剥離される場合でも、印刷面Q1に直接定着している場合に比べて、印刷面Q1に損傷等を与えにくい。このため、印刷をやり直す場合、損傷等の少ない印刷面Q1に対してやり直すことができる。これにより、再印刷時の印刷品質の低下を抑制できる。
【0069】
さらに、下地層42は、印刷面Q1の凹凸を軽減する作用もある。下地層42を設けることにより、インク塗膜46の表面の平滑性を高めることができる。これにより、インク塗膜46の発色の均一性等の印刷品質を高めることができる。
【0070】
剥離可能な下地層42とは、例えば、剥離剤の供給、剥離力の印加、熱の印加、超音波の印加、電磁波の印加等のような剥離処理が加えられることにより、印刷面Q1から剥離可能な状態に変化する被膜のことをいう。剥離可能な状態に変化するとは、印刷面Q1から失われた状態になること、または、拭き取り等の除去処理を追加することによって印刷面Q1から容易に離れられる状態に変化することをいう。
【0071】
なお、上記の剥離処理は、下地層42を剥離可能な状態にする一方、印刷面Q1に対しては変化を及ぼさない処理であるのが好ましい。これにより、インク塗膜46や下地層42を剥離、除去した場合でも、印刷面Q1を印刷前の状態に戻すことができる。その結果、再び印刷を行った場合でも、印刷前と比べて印刷品質の低下を抑制することができる。したがって、剥離処理の選択においては、印刷面Q1に対する影響を考慮して選択することが好ましい。なお、変化を及ぼさない処理とは、例えば、剥離剤を用いる剥離処理の場合、剥離剤の仕様書等で使用可能とされている材料で構成された印刷面Q1に対して剥離剤を吐出する処理等が挙げられる。
【0072】
また、上記の剥離処理は、インク塗膜46に対する変化を抑えられる処理であるのが好ましい。インク塗膜46に対する変化を抑えられるとは、印刷面Q1に直接形成されたインク塗膜46に対して剥離処理を行ったと仮定したとき、下地層42に比べて、剥離可能な状態に変化する程度が小さいことを指す。具体的には、除去処理で除去可能な状態に至るまでの時間が長いこと等を指す。一例を挙げると、下地層42に比べて、同一の状態に至るまでの時間が1.5倍以上であるのが好ましく、2.0倍以上であるのがより好ましい。このような基準で剥離処理を選択することにより、誤って剥離対象とする範囲以外の部位に剥離処理を行ってしまった場合でも、インク塗膜46に影響が及ばず、二次的な印刷不良の原因になるのを抑制できる。したがって、剥離処理の選択においては、インク塗膜46に対する影響を考慮して選択することが好ましい。
【0073】
なお、下地層42は、インク塗膜46が形成される予定の領域全体に設けられていることが好ましいが、下地層42の一部に欠けがあったり、ピンホールがあったりしてもよい。この場合でも、周囲の下地層42が容易に剥離されるのに伴って、下地層42のない領域のインク塗膜46も剥離できる確率が高くなる。これを踏まえると、下地層42は、インク塗膜46が形成される面積の70%以上に設けられていることが好ましく、80%以上に設けられていることがより好ましい。
【0074】
また、本実施形態では、インク塗膜46の下地となる領域に対して選択的に下地層42を形成する。この場合、必要な領域のみに下地剤40を吐出すればよいので、下地剤40の消費量を抑えることができる。一方、インク塗膜46が形成される領域を含む印刷面Q1の広い範囲、好ましくは全面に下地層42を形成するようにしてもよい。この場合、下地層42とインク塗膜46との位置ずれ等を考慮する必要がないため、印刷をより高速に行うことができる。
【0075】
さらに、下地層42の形態は、前述した下地剤40の塗膜以外の形態であってもよい。例えば、下地層42は、貼り付けられたシートであってもよい。この場合、印刷面Q1の全面または全面未満の範囲に下地層42を形成する作業を効率よく行える。
【0076】
一方、下地層42は、気相成膜法により成膜された被膜であってもよいし、液相成膜法により成膜された被膜であってもよい。このうち、液相成膜法としては、例えば、浸漬法、ディスペンサー法、噴霧法、スクリーン印刷法、コーター塗布法、スピンコート法等が挙げられる。
【0077】
下地層42は、色材として顔料を含有する場合、印刷面Q1の色に応じて顔料の色を選択することにより、下地層42の色を適宜変更することができる。
【0078】
顔料の色は、特に限定されないが、印刷面Q1の色に応じて適宜設定されることが好ましい。具体的には、顔料の色を、印刷面Q1、すなわち対象物Qの下地層42が設けられている面の色と同じにすることが好ましい。これにより、インク塗膜46が薄くて下地が透ける場合でも、意図しない発色になることが抑制される。その結果、印刷品質の低下を抑制できる。
【0079】
なお、色が同じとは、次のような条件を満たすことを指す。まず、印刷面Q1に、下地層42およびインク塗膜46をそれぞれ成膜する。膜厚は1μmとする。次に、下地層42およびインク塗膜46の各反射色を、分光測色計で測定し、L*a*b*表色系における色差ΔEを求める。この色差ΔEが20以下であることを、色が同じという。なお、下地層42およびインク塗膜46の各反射色の色差ΔEは、12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。これにより、色が透けることによる影響をより小さく抑えることができる。
【0080】
下地層42の膜厚は、特に限定されないが、0.05μm以上30μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上10μm以下であるのがより好ましく、0.3μm以上5μm以下であるのがさらに好ましい。下地層42の膜厚が前記範囲内であれば、下地層42が大きく途切れることなく成膜できる。このため、下地層42の上述した機能を良好に発揮させることができる。また、印刷面Q1に凹凸がある場合でも、凹凸を軽減する作用を十分に有する下地層42が得られる。なお、下地層42の膜厚は、下地層42の断面を拡大観察し、5カ所以上で測定した下地層42の厚さの平均値である。
【0081】
また、下地層42があらかじめ設けられている対象物Qの入手が可能であれば、本ステップは省略されていてもよい。
【0082】
1.2.2.インク吐出ステップ
インク吐出ステップS102では、印刷データ生成部912が生成した印刷データを、ロボットコントローラー600およびプリントコントローラー420に出力する。ロボットコントローラー600は、印刷データに基づいてロボット200の動作を制御する。プリントコントローラー420も、印刷データに基づいてインク吐出ヘッド400の動作を制御する。そして、ロボット200が印刷ヘッドユニット10を印刷方向D1に走査させながら、図6に示すように、下地層42に重なるようにインク44を吐出する。吐出されたインク44は、下地層42上に着弾し、インク塗膜46を形成する。インク44が例えば硬化型インクであれば、インク塗膜46は、吐出されたインク44が乾燥した状態、つまり、硬化前の状態にある塗膜である。また、インク44が例えば非硬化型インクであれば、インク塗膜46は、吐出されたインク44中の分散媒が揮発等で除去されて色材が定着した状態にある塗膜である。
【0083】
インク塗膜46の膜厚は、特に限定されないが、0.05μm以上30μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上10μm以下であるのがより好ましく、0.3μm以上5μm以下であるのがさらに好ましい。インク塗膜46の膜厚が前記範囲内であれば、下地の色が透けにくく、インク塗膜46の発色性の低下を抑制できる。このため、高い品質の印刷結果が得られる。なお、インク塗膜46の膜厚は、インク塗膜46の断面を拡大観察し、5カ所以上で測定したインク塗膜46の厚さの平均値である。
【0084】
また、インク44が硬化型インクである場合には、インク塗膜46に対し、必要に応じて、仮硬化処理を施すようにしてもよい。仮硬化処理は、インク44が本硬化しない程度にインク塗膜46を硬化させる処理である。仮硬化処理を施すことで、インク塗膜46の濡れ広がりを止めた状態で検査ステップS104に移行できる。このため、意図しない濡れ広がりに伴う印刷不良の発生を抑制することができる。
【0085】
1.2.3.検査ステップ
検査ステップS104では、印刷面Q1上に形成されたインク塗膜46を検査する。具体的には、図7に示すように、検査装置500でインク塗膜46を撮像する。制御装置900の検査結果取得部914は、得られた画像を検査結果として取得する。検査結果として画像を用いることで、インク塗膜46の位置や形状を効率よく検査することができる。
【0086】
また、本実施形態では、検査装置500が印刷ヘッドユニット10に組み込まれているため、インク塗膜46の検査を所定範囲ごとに行うことができる。これにより、検査用の画像のサイズが小さくて済み、検査装置500の簡素化も図ることができる。このため、検査ステップS104および判定ステップS106の高速化を図ることができる。また、検査の待ち時間が長くなるのを抑制できるため、インク塗膜46に意図しない濡れ広がり等の変化が生じるのを抑制することができる。
【0087】
なお、所定範囲のインク塗膜46を形成した直後に検査を行うのではなく、所定範囲のインク塗膜46を複数単位にわたって形成した後、複数単位のインク塗膜46をまとめて検査するようにしてもよい。また、インク塗膜46の所定範囲は、特に限定されず、例えば、検査装置500の検査範囲やインク44の乾燥時間等を考慮して設定される。
【0088】
1.2.4.判定ステップ
判定ステップS106では、制御装置900の判定部916が、合格基準に照らして検査結果が合格か不合格かを判定する。
【0089】
検査結果が合格であった場合、その所定範囲の印刷を終了する。なお、インク44が硬化型インクである場合には、判定ステップS106で検査結果が合格と判断された後、インク塗膜46を硬化させる硬化処理を行うようにしてもよい。
【0090】
一方、検査結果が不合格であった場合、塗膜除去ステップS110に移行する。これにより、検査結果が不合格であるインク塗膜46(印刷不良のインク塗膜46)がそのまま所定範囲の印刷結果となってしまうことが防止できる。その結果、不良の少ない印刷結果を得ることができる。
【0091】
1.2.6.塗膜除去ステップ
本実施形態では、塗膜除去ステップS110が、剥離剤供給処理と、塗膜拭取処理と、を含む。
【0092】
剥離剤供給処理では、検査結果が不合格となったインク塗膜46に対し、図8に示すように、剥離剤供給装置800が剥離剤50を供給する。剥離剤50が供給されると、インク塗膜46を透過したり、隙間を抜けたりして、剥離剤50が下地層42に作用する。これにより、下地層42が剥離可能な状態に変化する。
【0093】
なお、下地層42が剥離剤を用いることなく剥離可能な状態にあるときは、剥離剤供給処理が省略されていてもよい。
【0094】
また、剥離剤50は、検査結果が不合格となったインク塗膜46だけでなく、合格であったインク塗膜46に供給されてもよい。この場合、印刷不良のインク塗膜46を含む広い範囲で印刷をやり直すことができる。これにより、印刷ムラの発生等を抑制することができる。
【0095】
塗膜拭取処理では、剥離剤50が供給されたインク塗膜46および下地層42を、図9に示すように、塗膜除去装置840により除去する。これにより、対象物Qを再生することができ、対象物Qの無駄な廃棄を防止することができる。インク塗膜46および下地層42を除去した後、下地層形成ステップS100に戻り、印刷を再開する。その場合、印刷再開後の下地層形成ステップS100では、塗膜拭取処理で除去された部分から印刷を再開するように、印刷データが設定される。このような塗膜除去ステップS110を行うことにより、印刷不良が残るおそれがなくなり、品質に優れた印刷物を得ることができる。また、塗膜除去ステップS110の剥離剤供給処理および塗膜拭取処理により、印刷不良のインク塗膜46を選択的に除去することができるので、印刷不良の修正を短時間で行うことができる。
【0096】
なお、下地層42が剥離剤を用いることなく剥離可能な状態にあるときには、剥離剤供給処理および塗膜拭取処理に代えて、一部の下地層42、または、一部の下地層42を含む広い範囲、例えば下地層42全体を除去する処理を行うようにしてもよい。具体的には、下地層42がシートである場合には、本ステップにおいてそのシートを剥がす処理を行うようにしてもよい。
【0097】
以上のような印刷方法によるインク塗膜46の形成を所定範囲ごとに繰り返せば、図10に示すように、インク塗膜46を連続させることができる。これにより、印刷データが反映された印刷結果を得ることができる。
【0098】
このような印刷方法によれば、例えば、文字や画像等が印刷されたシール等を貼る作業を、印刷によって代替することができる。例えば、ヘルメット等の対象物Qの表面にマークを付ける場合、上記の印刷方法でマークを印刷することができる。上記の印刷方法では、印刷面Q1が曲面であっても精度よく印刷を行うことができる。また、印刷の途中でスジが入ってしまう等の印刷不良が発生しても、ヘルメットを廃棄することなく修正できる。
【0099】
なお、図3に示す印刷ヘッドユニット10では、インク吐出ヘッド400、検査装置500、剥離剤供給装置800および塗膜除去装置840がこの順で並んでおり、ロボット200によって一体的に走査される。このため、インク吐出ヘッド400によってインク塗膜46が形成された後、印刷ヘッドユニット10を印刷方向D1に走査させると、インク塗膜46上には、検査装置500、剥離剤供給装置800および塗膜除去装置840が順次移動することになる。これにより、インク44の吐出、インク塗膜46の検査、剥離剤50の供給およびインク塗膜46の除去を連続して行うことができる。その結果、精度の高い印刷結果を得ることができる。
【0100】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る印刷方法およびロボットシステムについて説明する。
【0101】
図11ないし図15は、それぞれ第2実施形態に係る印刷方法を説明するための図であって、印刷方法の各ステップにおけるロボットシステム100の動作を説明する図である。
【0102】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図11ないし図15において、前記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0103】
第2実施形態に係るロボットシステム100は、インク吐出ヘッド400、検査装置500、剥離剤供給装置800および塗膜除去装置840が、互いに異なるロボット200A、ロボット200B、ロボット200Cおよびロボット200Dに取り付けられていること以外、第1実施形態に係るロボットシステム100と同様である。
【0104】
第2実施形態では、まず、図11および図12に示すように、ロボット200Aに取り付けられたインク吐出ヘッド400から下地剤40およびインク44を順次吐出する。そして、印刷面Q1上に下地層42およびインク塗膜46を形成する。
【0105】
次に、インク塗膜46上にロボット200Bに取り付けられた検査装置500を移動させる。そして、図13に示すように、検査装置500でインク塗膜46を検査する。
【0106】
次に、検査結果が合格か不合格か判定し、その検査結果が不合格であった場合、インク塗膜46上にロボット200Cに取り付けられた剥離剤供給装置800を移動させる。そして、図14に示すように、剥離剤供給装置800が剥離剤50を供給する。
【0107】
次に、剥離剤50が供給されたインク塗膜46上にロボット200Dに取り付けられた塗膜除去装置840を移動させる。そして、剥離剤50が供給されたインク塗膜46および下地層42を、図15に示すように、塗膜除去装置840により除去する。
【0108】
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2実施形態では、インク塗膜46に対する検査のタイミング、剥離剤50を供給するタイミング、および、インク塗膜46を除去するタイミングを、それぞれ自在に調整することができる。このため、例えば、吐出されたインク44や剥離剤50が濡れ広がるのを待ってから検査や除去を行うことも可能になる。
【0109】
3.各実施形態が奏する効果
以上のように、前記実施形態に係る印刷方法は、インク吐出ヘッド400と、ロボット200と、を用い、対象物Qに印刷を行う印刷方法である。ロボット200は、インク吐出ヘッド400を支持して移動させるロボットアーム220を備える。また、対象物Qには剥離可能な下地層42が設けられている。そして、この印刷方法は、インク吐出ステップS102を含む。インク吐出ステップS102では、ロボット200がインク吐出ヘッド400を走査させながら、インク吐出ヘッド400が下地層42に向けてインク44を吐出する。
【0110】
このような構成によれば、印刷を失敗しても、下地層42が剥離可能な状態にあるため、インク塗膜46の除去による対象物Qへの影響を抑えつつ、容易に修正することができる。このため、対象物Qを廃棄等することなく、再印刷に供することができる。
【0111】
また、前記実施形態に係る印刷方法は、検査ステップS104と、判定ステップS106と、塗膜除去ステップS110と、を含む。検査ステップS104では、下地層42に吐出されたインク44により形成されたインク塗膜46を検査し、検査結果を出力する。判定ステップS106では、検査結果が合格か不合格かを判定する。塗膜除去ステップS110では、検査結果が不合格であった場合に、インク塗膜46を除去する。
【0112】
このような構成によれば、検査の結果、印刷不良があった場合に、その原因となったインク塗膜46を除去することができる。これにより、対象物Qに印刷不良が残るおそれがなくなり、品質に優れた印刷物を得ることができる。
【0113】
また、塗膜除去ステップS110(インク塗膜を除去するステップ)は、インク塗膜46に向けて剥離剤50を供給する処理(剥離剤供給処理)と、剥離剤50が供給された領域を拭き取る処理(塗膜拭取処理)と、を含んでいてもよい。
【0114】
このような構成によれば、印刷不良のインク塗膜46を選択的に除去することができるので、印刷不良の修正を短時間で行うことができる。
【0115】
また、前記実施形態に係る印刷方法では、液体吐出ヘッドである剥離剤供給装置800から剥離剤50を吐出する。
【0116】
これにより、必要な量の剥離剤50をインク塗膜46に向けて高い位置精度で供給することができる。
【0117】
また、検査結果は、インク塗膜46を撮像して得られる画像を含んでいてもよい。そして、検査ステップS104(検査結果が合格か不合格かを判定するステップ)は、画像が合格基準を満たすか否かを判定し、満たす場合には合格とする処理を含んでいてもよい。
【0118】
このような構成によれば、インク塗膜46の位置や形状を効率よく検査することができる。
【0119】
また、検査ステップS104(検査結果が合格か不合格かを判定するステップ)は、画像に含まれるパターンがテンプレート画像と一致する場合に合格とするテンプレートマッチング処理を含んでいてもよい。
このような構成によれば、合否判定をより効率よく行うことができる。
【0120】
また、前記実施形態に係る印刷方法は、インク吐出ステップS102(インク44を吐出するステップ)よりも前に設けられる下地層形成ステップS100(下地層42を形成するステップ)を含む。
【0121】
このような構成によれば、インク塗膜46の下地となる領域に対して選択的に下地層42を形成することができる。この場合、必要な領域のみに下地剤40を吐出すればよいので、下地剤40の消費量を抑えることができる。
【0122】
また、下地層42は、顔料を含有していてもよい。
この場合、顔料の色を選択することにより、下地層42の色を適宜変更することができる。
【0123】
また、顔料の色は、対象物Qの下地層42が設けられている面(印刷面Q1)の色と同じであることが好ましい。
【0124】
これにより、インク塗膜46が薄くて下地が透ける場合でも、意図しない発色になることが抑制される。その結果、印刷品質の低下を抑制できる。
【0125】
また、下地層42は、重合性モノマーを含有する硬化型液体の塗膜であってもよい。
この場合、硬化膜が下地層42となる。これにより、表面の平滑性に優れる下地層42を形成できる。
【0126】
また、下地層42は、対象物Qに貼り付けられたシートであってもよい。
この場合、対象物Qの印刷面Q1の全面または広い範囲に下地層42を形成する作業を効率よく行える。
【0127】
また、インク44は、重合性モノマーを含有する硬化型インクであってもよい。
これにより、耐摩擦性に優れるとともに、硬化処理を行うことで速乾性に優れるインク塗膜46を形成することができる。
【0128】
また、前記実施形態に係る印刷ヘッドユニット10は、ロボットアーム220に支持され、対象物Qに対して走査されることにより印刷を行う。この印刷ヘッドユニット10は、取付部11と、インク吐出ヘッド400と、検査装置500と、剥離剤供給装置800と、を備える。取付部11は、ロボットアーム220に取り付けられる。インク吐出ヘッド400は、下地層42に向けてインク44を吐出する。検査装置500は、吐出されたインク44により形成されるインク塗膜46を検査する。剥離剤供給装置800は、下地層42を剥離可能な状態に変化させる剥離剤50を供給する。
【0129】
このような構成によれば、印刷を失敗しても、インク塗膜46を検査し、必要に応じて剥離剤50を供給して下地層42を剥離可能な状態に変化させる印刷ヘッドユニット10が得られる。このような印刷ヘッドユニット10によれば、その後にインク塗膜46を除去した場合、除去による対象物Qへの影響を抑えつつ、印刷を容易に修正することが可能である。また、このような印刷ヘッドユニット10によれば、対象物Qを廃棄等することなく、再印刷に供することができる。
【0130】
また、前記実施形態に係るロボットシステム100は、対象物Qに対して印刷を行うロボットシステムであって、印刷ヘッドユニット10と、ロボット200と、制御装置900と、を備える。ロボット200は、印刷ヘッドユニット10を支持して移動させるロボットアーム220を備える。制御装置900は、インク吐出ヘッド400、ロボット200、検査装置500および剥離剤供給装置800の各動作を制御することにより、印刷を行わせる。また、制御装置900は、検査結果取得部914と、判定部916と、剥離処理部918と、を有する。検査結果取得部914は、検査装置500から出力される検査結果を取得する。判定部916は、検査結果が合格か不合格かを判定する。剥離処理部918は、検査結果が不合格である場合に、インク塗膜46に向けて剥離剤50を供給させる。
【0131】
このような構成によれば、印刷を失敗しても、インク塗膜46を検査し、必要に応じて剥離剤50を供給して下地層42を剥離可能な状態に変化させるロボットシステム100が得られる。このようなロボットシステム100によれば、その後にインク塗膜46を除去した場合、除去による対象物Qへの影響を抑えつつ、印刷を容易に修正することが可能である。また、このようなロボットシステム100によれば、対象物Qを廃棄等することなく、再印刷に供することができる。
【0132】
以上、本発明の印刷方法、印刷ヘッドユニットおよびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明の印刷方法、印刷ヘッドユニットおよびロボットシステムは、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の印刷方法は、前記実施形態に任意の目的の工程や動作が付加されたものであってもよい。また、本発明の印刷ヘッドユニットおよびロボットシステムは、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0133】
10…印刷ヘッドユニット、11…取付部、40…下地剤、42…下地層、44…インク、46…インク塗膜、50…剥離剤、100…ロボットシステム、200…ロボット、200A…ロボット、200B…ロボット、200C…ロボット、200D…ロボット、210…基台、220…ロボットアーム、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、230…アーム駆動機構、300…移動ステージ、310…基部、320…ステージ、320X…Xステージ、320Y…Yステージ、330…移動機構、330X…X移動機構、330Y…Y移動機構、340…圧電アクチュエーター、400…インク吐出ヘッド、411…下地剤吐出孔、412…インク吐出孔、420…プリントコントローラー、500…検査装置、510…撮像部、600…ロボットコントローラー、610…アーム制御部、620…移動ステージコントローラー、630…記憶部、700…固定部材、800…剥離剤供給装置、810…剥離剤吐出部、840…塗膜除去装置、850…塗膜拭取部、854…環状ベルト、900…制御装置、910…印刷制御部、912…印刷データ生成部、914…検査結果取得部、916…判定部、918…剥離処理部、920…除去処理部、930…記憶部、D1…印刷方向、D2…直交方向、E…エンコーダー、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、M…モーター、Q…対象物、Q1…印刷面、S100…下地層形成ステップ、S102…インク吐出ステップ、S104…検査ステップ、S106…判定ステップ、S110…塗膜除去ステップ
図1
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