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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017644
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】可搬式コンテナ
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/28 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B65D25/28 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120431
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】591261602
【氏名又は名称】サーモス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】木暮 剛
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA04
3E062AB14
3E062AC02
3E062AC03
3E062HA04
3E062HB02
3E062HB07
3E062HC12
3E062HD02
3E062HD12
(57)【要約】
【課題】より簡易な構成で部材を減らし、製造コストの削減を実現することができる可搬式コンテナを提供する。
【解決手段】可搬式コンテナは、容器本体部15と、容器本体部15の外周面15aに固定される取付部材60と、取付部材60に回動軸Jを中心に回動可能に取り付けられるハンドルと、を備える。取付部材60は、ハンドルを容器本体部15の外周面15aに沿う保持姿勢で保持するように摺動部51c,51dが嵌まる保持凹部65bと、ハンドルの回動方向において保持凹部65bよりも容器本体部15の外周面15aから離れた位置に保持凹部65bに連続するように形成され、ハンドルへの回動操作により摺動部51c,51dが摺動しつつ乗り越え可能に形成される第1凸部65aと、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体部と、
前記容器本体部の外面に固定される取付部材と、
前記取付部材に回動軸を中心に回動可能に取り付けられるハンドルと、を備え、
前記取付部材は、
前記ハンドルを前記容器本体部の前記外面に沿う保持姿勢で保持するように前記ハンドルの一部が嵌まる保持凹部と、
前記ハンドルの回動方向において前記保持凹部よりも前記容器本体部の前記外面から離れた位置に前記保持凹部に連続するように形成され、前記ハンドルへの回動操作により前記ハンドルの一部が摺動しつつ乗り越え可能に形成される乗り越え凸部と、を備える、
可搬式コンテナ。
【請求項2】
前記ハンドルは、一部分が途切れた開口部を有する線材により形成されるハンドル線材部を備え、
前記ハンドル線材部は、
それぞれ前記開口部の両側に前記回動軸に沿って延び、前記取付部材により回動可能に支持される一対の回動軸部と、
それぞれ前記回動軸に交わる方向に延び、前記回動軸に沿う方向に並べられ、前記乗り越え凸部を乗り越えて前記保持凹部に保持される一対の摺動部と、を備え、
前記一対の摺動部は、前記ハンドル線材部が弾性変形することにより前記一対の摺動部の間の距離が変化するように形成され、前記ハンドル線材部が回動可能な状態で前記距離として第1距離だけ離れた位置に設けられ、
一対の前記保持凹部は、それぞれ前記摺動部を保持し、前記回動軸に沿う方向に互いに反対側を向くように形成され、前記回動軸に沿う方向に前記第1距離より大きい第2距離だけ離れた位置に設けられている、
請求項1に記載の可搬式コンテナ。
【請求項3】
前記容器本体部は、有底の円筒状で形成され、
前記取付部材は、
それぞれ、前記保持凹部及び前記乗り越え凸部を有し、前記容器本体部の外周面に交わる方向に延び、前記回動軸に沿う方向に並ぶ一対の側壁部と、
前記一対の側壁部における前記外周面から遠い端部同士を連結する連結板部と、
前記一対の側壁部における前記外周面に近い端部に位置し、前記外周面に固定される一対の固定部と、を備える、
請求項1又は2に記載の可搬式コンテナ。
【請求項4】
前記乗り越え凸部は、前記ハンドルが前記回動軸を中心に回動可能な状態から前記保持凹部に向けて回動されることにより、前記ハンドルが摺動する摺動面を備える、
請求項1又は2に記載の可搬式コンテナ。
【請求項5】
前記取付部材は、前記ハンドルの回動方向において前記保持凹部を挟んで前記乗り越え凸部と反対側の位置に設けられ、前記ハンドルの一部が前記保持凹部に嵌まった状態での前記ハンドルの前記容器本体部側への回動を規制する回動規制凸部を備える、
請求項1又は2に記載の可搬式コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の可搬式コンテナは、容器と、容器の側壁外面に回動可能に配置されるハンドルと、ハンドルを側壁外面に沿う方向に付勢する付勢部材と、を備える。この付勢部材の作用により、洗浄時又は乾燥時に、容器を倒立させても、ハンドルが倒れることが抑制され、可搬式コンテナの設置スペースを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6674784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、付勢部材が必要となるため、構成が複雑となっており、また、組み立ての手間も増えるためコスト高となっていた。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、より簡易な構成で部材を減らし、製造コストの削減を実現することができる可搬式コンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る可搬式コンテナは、容器本体部と、前記容器本体部の外面に固定される取付部材と、前記取付部材に回動軸を中心に回動可能に取り付けられるハンドルと、を備え、前記取付部材は、前記ハンドルを前記容器本体部の前記外面に沿う保持姿勢で保持するように前記ハンドルの一部が嵌まる保持凹部と、前記ハンドルの回動方向において前記保持凹部よりも前記容器本体部の前記外面から離れた位置に前記保持凹部に連続するように形成され、前記ハンドルへの回動操作により前記ハンドルの一部が摺動しつつ乗り越え可能に形成される乗り越え凸部と、を備える。
【0007】
また、前記ハンドルは、一部分が途切れた開口部を有する線材により形成されるハンドル線材部を備え、前記ハンドル線材部は、それぞれ前記開口部の両側に前記回動軸に沿って延び、前記取付部材により回動可能に支持される一対の回動軸部と、それぞれ前記回動軸に交わる方向に延び、前記回動軸に沿う方向に並べられ、前記乗り越え凸部を乗り越えて前記保持凹部に保持される一対の摺動部と、を備え、前記一対の摺動部は、前記ハンドル線材部が弾性変形することにより前記一対の摺動部の間の距離が変化するように形成され、前記ハンドル線材部が回動可能な状態で前記距離として第1距離だけ離れた位置に設けられ、一対の前記保持凹部は、それぞれ前記摺動部を保持し、前記回動軸に沿う方向に互いに反対側を向くように形成され、前記回動軸に沿う方向に前記第1距離より大きい第2距離だけ離れた位置に設けられている、ようにしてもよい。
【0008】
また、前記容器本体部は、有底の円筒状で形成され、前記取付部材は、それぞれ、前記保持凹部及び前記乗り越え凸部を有し、前記容器本体部の外周面に交わる方向に延び、前記回動軸に沿う方向に並ぶ一対の側壁部と、前記一対の側壁部における前記外周面から遠い端部同士を連結する連結板部と、前記一対の側壁部における前記外周面に近い端部に位置し、前記外周面に固定される一対の固定部と、を備える、ようにしてもよい。
【0009】
また、前記乗り越え凸部は、前記ハンドルが前記回動軸を中心に回動可能な状態から前記保持凹部に向けて回動されることにより、前記ハンドルが摺動する摺動面を備える、ようにしてもよい。
【0010】
また、前記取付部材は、前記ハンドルの回動方向において前記保持凹部を挟んで前記乗り越え凸部と反対側の位置に設けられ、前記ハンドルの一部が前記保持凹部に嵌まった状態での前記ハンドルの前記容器本体部側への回動を規制する回動規制凸部を備える、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より簡易な構成で部材を減らし、製造コストの削減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る可搬式コンテナの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る可搬式コンテナの正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る可搬式コンテナの側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るハンドル及び取付部材の斜視図である。
図5】(a)は図3のA-A線の断面図であり、(b)は(a)の一部を拡大した図である。
図6】本発明の一実施形態に係るハンドル及び取付部材の平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るハンドル線材部の斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る容器がコンベアを介して洗浄機に送られるときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る可搬式コンテナについて、図面を参照して説明する。本実施形態に係る可搬式コンテナは、収容物として食品を収納し運搬するためのものである。
図1及び図2に示すように、可搬式コンテナ1は、容器10と、蓋20と、一対のハンドル50と、を備える。可搬式コンテナ1は、金属材、例えば、ステンレス材で形成されている。
【0014】
(容器10)
図1及び図2に示すように、容器10は、容器本体部15と、一対の取付部材60と、を備える。
容器本体部15は、上方向に開口した有底筒状で形成されている。容器本体部15は、本例では、円筒形状をなす、いわゆる丸型食缶である。容器本体部15は、上部11と、中央部12と、下部13と、を備える。容器本体部15の下部13の直径は、容器本体部15の上部11の直径よりも小さく形成されている。容器本体部15の中央部12は、上部11と下部13の間に位置し、上部11と下部13を繋ぐようにスロープ状をなしている。
複数の容器10は互いに重ね合わせることで積み上げ可能である。例えば、複数の容器10のうち第1容器の下部13が複数の容器10のうち第2容器の上部11内に位置することにより、第2容器に第1容器が積み上げられる。
取付部材60については、後で詳述する。
【0015】
(蓋20)
蓋20は、容器10の上部の開口を塞ぐように容器10の上部に嵌まる。蓋20は略円板状をなす。
【0016】
(ハンドル50)
図1及び図2に示すように、一対のハンドル50は、人の手により把持される部位である。一対のハンドル50は、それぞれ取付部材60により、回動軸Jを中心に回動可能に支持される。
各ハンドル50は、ハンドル線材部51と、把持部52と、を備える。
【0017】
図7に示すように、ハンドル線材部51は、矩形状の線材により形成されている。ハンドル線材部51は、この線材の一部が途切れて形成される開口部51kを有する。開口部51kは、長方形のハンドル線材部51において短辺の中央部に位置する。
ハンドル線材部51は、一対の回動軸部51a,51bと、一対の摺動部51c,51dと、連結軸部51eと、を備える。
一対の回動軸部51a,51bは、それぞれ回動軸Jに沿って延び、開口部51kを介して回動軸Jに沿う方向に離れた位置に設けられる。
一対の摺動部51c,51dは、それぞれ回動軸部51a,51bの外側端部に連結され、回動軸部51a,51bに直交する方向に延びる。摺動部51c,51dは、取付部材60の後述するハンドル回動規制部65(図1参照)に摺動する部位である。各摺動部51c,51dは、回動軸部51a,51b側の上部51uと、連結軸部51e側の下部51jと、上部51u及び下部51jの間に位置する中央部51mと、を備える。上部51u及び下部51jは互いに平行をなし、中央部51mは上部51u及び下部51jに対して交差する。中央部51mを上部51u及び下部51jに対して傾斜させることにより、ハンドル50が図2の実線で示す保持状態にあるときに、把持部52が容器本体部15の外周面15aから距離を保つことが可能となる。
【0018】
図7に示すように、連結軸部51eは、摺動部51c,51dの下端部同士を連結する。連結軸部51eは、回動軸部51a,51bと平行な方向に延びる。連結軸部51eの長さは、摺動部51c,51dの長さよりも短い。
把持部52は、人の手で把持される部分であり、連結軸部51eの外周に線材がコイル状に巻かれて形成されている。
【0019】
ハンドル線材部51は、開口部51kが形成されているため、一対の摺動部51c,51d間の距離が変化するように弾性変形容易である。ハンドル50が回動軸Jを中心に回動可能な状態で、一対の摺動部51c,51d間は距離W1(図5(a)参照)に設定されている。距離W1は、一対の摺動部51c,51dの中心軸間の距離ではなく、摺動部51cの外周面のうち摺動部51dに最も近い位置と摺動部51dの外周面のうち摺動部51cに最も近い位置の間の距離に設定されている。
【0020】
(取付部材60)
図2に示すように、一対の取付部材60は、容器本体部15の外周面15aの上部11に固定され、容器本体部15の外周面15aの対岸側となる周方向に180°離れた位置に設けられている。取付部材60は、一枚の板材からプレス加工や曲げ加工等によって成形された、一体的な金属部材となっている。
一対の取付部材60は、それぞれハンドル50が回動軸Jを中心に回動可能に取り付けられ、ハンドル50を容器本体部15の外周面15aに沿う保持姿勢に保持する。回動軸Jは、外周面15aの接線方向に沿って延びている。
【0021】
取付部材60は、容器10の高さ方向から見て、容器本体部15の外周面15aに向かって開口する略コの字形状をなす。
詳しくは、図4に示すように、取付部材60は、一対の側壁部67と、一対の側壁部67同士を連結する連結板部69と、を備える。
一対の側壁部67は、それぞれ容器本体部15の外周面15aに交わる方向に延び、回動軸Jに沿って距離を持って対面して形成されている。連結板部69は、一対の側壁部67における容器本体部15の外周面15aから遠い端部を連結するように延びる。連結板部69は、容器本体部15の外周面15aから離れた位置にある。
【0022】
図3及び図4に示すように、各側壁部67は、ハンドル支持部61と、ハンドル回動規制部65と、固定部68と、を備える。
一対のハンドル支持部61は、それぞれハンドル50の回動軸Jに直交する方向に延びる平板状に形成され、回動軸Jに沿う方向に対面するように並べられている。ハンドル支持部61には貫通孔61hが形成されている。図6に示すように、貫通孔61hには、ハンドル50の回動軸部51a,51bが外側から通過する。これにより、ハンドル50は、貫通孔61hを通過する回動軸Jを中心に回動可能にハンドル支持部61により支持される。
【0023】
図3及び図4に示すように、一対のハンドル回動規制部65は、それぞれハンドル50を、把持部52が下方に位置し、かつ容器本体部15の外周面15aに沿う保持姿勢に保持する。一対のハンドル回動規制部65は、それぞれハンドル支持部61の下方で、かつハンドル支持部61よりも回動軸Jに沿う方向の外側に張り出したように形成されている。
図5(a)に示すように、一対のハンドル回動規制部65は、容器本体部15の外周面15aに交わる方向に沿って延びる波板状をなし、互いに回動軸Jに沿う方向に対面するように並べられている。一対のハンドル回動規制部65は、それぞれ、回動軸Jに沿う方向に対称(図5(a)では左右対称)に向き合って形成されている。
【0024】
図5(b)に示すように、各ハンドル回動規制部65は、第1凸部65aと、保持凹部65bと、第2凸部65cと、案内傾斜面65dと、を備える。
第1凸部65a、保持凹部65b、第2凸部65c及び案内傾斜面65dは、回動軸Jに直交する方向、すなわちハンドル50の回動方向に沿う正弦波状に形成されている。保持凹部65bは、第1凸部65aと第2凸部65cの間に位置し、ハンドル線材部51(正確には、摺動部51c,51d)が嵌まる、内側へ湾曲した凹状に形成されている。一対の保持凹部65b間の距離W2(図5(a)参照)は、ハンドル50が回動可能な状態にあるときの一対の摺動部51c,51d間の距離W1よりも大きく設定されている。距離W2は、各保持凹部65bの内底曲面の最も深さの深い位置(いわゆる谷底)の間の距離に設定されている。
【0025】
第2凸部65cは、保持凹部65bと固定部68の間に位置し、回動軸Jに沿う方向の外側に膨らむ湾曲凸状で形成されている。第2凸部65cは、保持凹部65bに連続するように保持凹部65bとともに波板状で形成され、保持凹部65bに嵌まるハンドル線材部51が固定部68側へ移動することを規制するように操作反力をハンドル50に付与する。第2凸部65cは、回動軸Jに沿う方向において第1凸部65aよりも外側に突出する。
なお、本実施形態において、保持凹部65bは第1凸部65aと第2凸部65cの間に位置するように設けられていたが、これに限らず、第2凸部65cが省略されてもよい。第2凸部65cが省略されても、同様に保持凹部65bを設けることは可能である。つまり、この場合、第1凸部65aと容器本体部15の外周面15aの間を保持凹部65bとすることができる。
【0026】
第1凸部65aは、保持凹部65bと案内傾斜面65dの間に位置し、回動軸Jに沿う方向の外側に膨らむ湾曲凸状で形成されている。第1凸部65aは、保持凹部65bに嵌まるハンドル線材部51が容器10に加わる振動等によって容器本体部15の外周面15aから離れる側へ移動することを規制する。また、第1凸部65aは、ハンドル線材部51に操作力が加えられることにより、ハンドル線材部51が乗り越え可能に形成されている。
【0027】
案内傾斜面65dは、ハンドル線材部51が回動可能な状態から保持凹部65bに向けて回動された場合に、ハンドル線材部51の摺動部51c,51d間を押し広げつつ、ハンドル線材部51を第1凸部65aの頂点に向けて案内する摺動面を有する。案内傾斜面65dは、容器10の外周面15aに近づくにつれて、回動軸Jに沿う方向の外側へ向かう。
【0028】
図1及び図5(a)に示すように、固定部68は、取付部材60における容器10の外周面15aに接する部位に位置し、平面視で略コの字形状である取付部材60の開口側の両端部に回動軸Jの両外側へ折り曲げられるように形成されている。固定部68は、容器10の高さ方向において、ハンドル支持部61及びハンドル回動規制部65の全域にわたって形成されている。固定部68は、容器10の外周面15aの接線方向に延び、容器10の高さ方向に長い長方形の板状をなす。各固定部68は、本例では、容器10の外周面15aに溶接により固定され、各固定部68と容器10の外周面15aの間には溶融部が形成されている。
【0029】
連結板部69は、回動軸Jに沿って延びる板状をなし、回動軸Jに沿って向き合うように並ぶ一対のハンドル支持部61及びハンドル回動規制部65同士を連結する。
また、図4に示すように、取付部材60は、ハンドル支持部61とハンドル回動規制部65の間で高さ方向に貫通する貫通孔60hを有する。貫通孔60hは、ハンドル支持部61とハンドル回動規制部65の間の切れ目として形成されている。貫通孔60hは、容器10の直立時又は倒立時に、取付部材60内に水が溜まることを抑制する。
【0030】
(作用)
図2に示すように、各ハンドル50は、一点鎖線で示す保持凹部65bから外れた状態(以下、回動許容状態と呼ぶ)と、実線で示す保持凹部65bに嵌まった状態(以下、保持状態と呼ぶ)との間で状態を遷移可能である。各ハンドル50は、回動許容状態では、回動軸Jを中心に回動可能である。これにより、各把持部52を上方に位置させるように各ハンドル50を回動し、この状態で人が各把持部52を把持しつつ、可搬式コンテナ1を運ぶことができる。
【0031】
次に、ハンドル50が回動許容状態から保持状態へ状態を遷移する際の作用について説明する。
図2の矢印Y1で示すように、回動許容状態からハンドル50を容器本体部15の外周面15aに近づくように回動させる。これにより、図5(a)の矢印Y2で示すように、ハンドル線材部51の各摺動部51c,51dは、それぞれ案内傾斜面65dに接触及び摺動し、案内傾斜面65dによって押し広げられることで互いに離れるように弾性変形する。この弾性変形により、一対の摺動部51c,51d間の距離は、回動許容状態での距離W1よりも大きくなるように押し広げられる。そして、図5(b)に示すように、摺動部51c,51dが第1凸部65aの外側の面である摺動面65eを摺動しつつ保持凹部65bに近づき、各摺動部51c,51dが各第1凸部65aを乗り越えて保持凹部65bに到達する。各摺動部51c,51dが保持凹部65bに到達すると、保持凹部65b内で一対の摺動部51c,51dが回動許容状態と同じ状態に戻るよう、互いに近づく方向に弾性力が作用することで、保持凹部65b内で摺動部51c,51dが保持される。これにより、ハンドル50が保持状態となる。この保持状態では、図2の実線で示すように、ハンドル50、例えば、把持部52が容器本体部15の外周面15aから離れた状態に維持される。
なお、摺動部51c,51dと第1凸部65aの摺動面65eの摺動は、線接触で行われるため、摺動による摩耗が発生しづらい。つまり、例えば、摺動部51c,51dが摺動面65eの上端部や下端部のエッジ、あるいは取付部材60の板厚側の面で摺動することがない。言い換えると、摺動面65eは、一対のハンドル回動規制部65の回動軸Jに沿う方向に対称に形成されている外側の面であり、摺動部51c,51dに点接触することがない。このため、ハンドル50の一部が摺動の度に削れてしまうようなことが抑制される。
【0032】
この保持状態では、容器10の輸送時又は洗浄時に、ハンドル50が保持凹部65bから回動方向に外れることが抑制される。この保持状態は、容器10に加わる振動等によっては解除されず、人がハンドル50に力を加えたときに解除可能である。この保持状態において、把持部52が容器本体部15の外周面15aに近づく方向に押されたとしても、第2凸部65cにより各摺動部51c,51dの移動が規制されるように操作反力が発生する。これにより、把持部52が容器本体部15の外周面15aに接触することが抑制される。従って、容器10の輸送時に把持部52が容器本体部15に接触する音が発生しづらい。
さらに、把持部52が容器本体部15の外周面15aから一定の距離を保って維持されていることで、保持状態から回動許容状態へ遷移する際に把持部52と外周面15aとの間に指が入るため、操作しやすい。
なお、上述した第2凸部65cを省略し、かつ第1凸部65aと容器本体部15の外周面15aの間を保持凹部65bとする場合においても、ハンドル50の中央部51mを上部51u及び下部51jに対して大きく傾斜させることにより、同様の機能を有することができる。
また、この保持状態から把持部52が容器本体部15の外周面15aから離れるように回動操作されると、各摺動部51c,51dが押し広げられることで互いに離れる方向に弾性変形しつつ各第1凸部65aを乗り越える。これにより、ハンドル50が保持状態から回動許容状態へ状態が遷移する。
【0033】
図8に示すように、複数の容器10は、コンベア80及び洗浄機70を用いて洗浄される。コンベア80は、それに載せられた複数の容器10を、洗浄機70内を通過するように運ぶ。洗浄機70は、通過する容器10を温水の噴射等により洗浄する。
作業者は、複数の容器10の開口側がコンベア80の設置面81を向く倒立状態で、複数の容器10が設置面81に並べられる。このとき、ハンドル50は、容器10の外周面15aに沿う保持状態とされる。このため、ハンドル50が回動して広がることが抑制される。これにより、隣り合う容器10との間隔が小さくなり、設置スペースを低減することができるため、限られた設置スペースでより多くの容器10を洗浄することができ、洗浄効率を高めることができる。
上記では、容器10を洗浄する場合について説明したが、上記洗浄後には通常、容器10を乾燥する。収納庫を兼ねた乾燥庫内に容器10を複数個収納して、熱風を循環させて乾燥させる。その場合も上記洗浄時と同様に、複数の容器10を乾燥庫内に収納するため、収納スペースを低減することができる。これにより、限られた収納スペースでより多くの容器10を収納し乾燥することができ、乾燥効率を高めることができる。
また、ハンドル50が容器10の外周面15aに沿う保持状態とされることで、複数の容器10のハンドル50同士が引っかかることなどがなく、作業がしやすい。
【0034】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)可搬式コンテナ1は、容器本体部15と、容器本体部15の外周面15aに固定される取付部材60と、取付部材60に回動軸Jを中心に回動可能に取り付けられるハンドル50と、を備える。取付部材60は、ハンドル50を容器本体部15の外周面15aに沿う保持姿勢で保持するようにハンドル50の一部(摺動部51c,51d)が嵌まる保持凹部65bと、ハンドル50の回動方向において保持凹部65bよりも容器本体部15の外周面15aから離れた位置に保持凹部65bに連続するように形成され、ハンドル50への回動操作によりハンドル50の一部が摺動しつつ乗り越え可能に形成される乗り越え凸部の一例である第1凸部65aと、を備える。
この構成によれば、保持凹部65bにてハンドル50が保持されるため、付勢部材が不要となり、部品点数が少なく、より簡易な構成を実現することができる。また、部品点数が少ないため、製造コストの削減を実現することができ、さらに、組み立てが容易となる。
また、ハンドル50が保持凹部65bから脱出するためには、第1凸部65aを乗り越える必要がある。このため、意図せずにハンドル50が保持凹部65bから脱出することが抑制される。
また、ハンドル50を保持凹部65bに進入させる前に、第1凸部65aを乗り越える必要がある。このため、ハンドル50が保持凹部65bに進入して保持状態となったことを作業者は認識しやすい。
【0035】
(2)ハンドル50は、一部分が途切れた開口部51kを有する線材により形成されるハンドル線材部51を備える。ハンドル線材部51は、開口部51kの両側に回動軸Jに沿って延び、取付部材60により回動可能に支持される一対の回動軸部51a,51bと、回動軸Jに直交する方向に延び、回動軸Jに沿う方向に並べられ、第1凸部65aを乗り越えて保持凹部65bに保持される一対の摺動部51c,51dと、を備える。一対の摺動部51c,51dは、ハンドル線材部51が弾性変形することにより一対の摺動部51c,51dの間の距離が変化するように形成され、ハンドル線材部51が回動可能な状態でこの距離として第1距離の一例である距離W1だけ離れた位置に設けられている。一対の保持凹部65bは、それぞれ摺動部51c,51dを保持し、回動軸Jに沿う方向に互いに反対側を向くように形成され、回動軸Jに沿う方向に距離W1より大きい第2距離の一例である距離W2だけ離れた位置に設けられている。
この構成によれば、ハンドル線材部51の弾性力により、一対の摺動部51c,51dが一対の保持凹部65bを挟み込むように保持凹部65b内に保持される。よって、ハンドル線材部51が保持凹部65bにより、ガタつきなく、確実に保持される。
また、容器10の輸送時に、保持状態にあるハンドル50が容器本体部15に接触することが抑制され、これにより、接触音が発生しづらい。
【0036】
(3)容器本体部15は、有底の円筒状で形成されている。取付部材60は、それぞれ、保持凹部65b及び第1凸部65aを有し、容器本体部15の外周面15aに交わる方向に延び、回動軸Jに沿う方向に並ぶ一対の側壁部67と、一対の側壁部67における外周面15aから遠い端部同士を連結する連結板部69と、一対の側壁部67における外周面15aに近い端部に位置し、外周面15aに固定される一対の固定部68と、を備える。
例えば、比較例として、取付部材が容器本体部15の外周面15aに沿う板状に形成されている構成では、取付部材の曲率と容器本体部15の外周面15aの曲率を一致させる必要がある。これら曲率が一致しないと、取付部材が外周面15aに対してガタつきが生じ、取付部材を外周面15aに固定する作業、例えば、溶接作業が困難である。この点、上記構成によれば、一対の固定部68のみが容器本体部15の外周面15aに固定され、連結板部69が容器本体部15の外周面15aから離れているため、上述したガタつきの発生が抑制され、取付部材60を外周面15aに固定する作業、例えば、溶接作業が容易となる。
【0037】
(4)第1凸部65aは、ハンドル50が回動軸Jを中心に回動可能な回動許容状態から保持凹部65bに向けて回動されることにより、ハンドル50が摺動する摺動面65eを備える。
この構成によれば、ハンドル50が摺動面65eに線接触で摺動するため、ハンドル50が取付部材60のエッジに当たって削れることが抑制される。このため、ハンドル50が摩耗、破損するリスクが少ない。
【0038】
(5)取付部材60は、ハンドル50の回動方向において保持凹部65bを挟んで第1凸部65aと反対側の位置に設けられ、保持凹部65bに連続するように形成され、ハンドル50の一部が保持凹部65bに嵌まった状態でのハンドル50の外周面15a側への回動を規制する回動規制凸部の一例である第2凸部65cを備える。
この構成によれば、第2凸部65cにより、保持状態にあるハンドル50が容器本体部15の外周面15a側へ回動することを抑制し、ハンドル50が容器本体部15の外周面15aに接触することを抑制することができる。
【0039】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0040】
(変形例)
上記実施形態においては、容器10は、円筒形状をなす、いわゆる丸型食缶であったが、これに限らず、有底の略直方体で形成される、いわゆる角型食缶であってもよい。
上記実施形態において、可搬式コンテナ1は、容器10を外容器として、この外容器内に収容される内容器を備えていてもよい。
上記実施形態においては、可搬式コンテナ1の全ての部品は、金属製であったが、全ての部品のうち少なくとも何れかが樹脂製であってもよい。
【0041】
上記実施形態においては、ハンドル支持部61とハンドル回動規制部65は一体で形成されていたが、互いに別体で形成されていてもよい。また、ハンドル支持部61とハンドル回動規制部65は互いに離れた位置に設けられていてもよい。
上記実施形態においては、ハンドル線材部51は、矩形形状をなしていたが、矩形以外の多角形形状であってもよいし、円形形状又は楕円形形状であってもよい。つまり、一対の摺動部51c,51dが一対の保持凹部65bを挟み込むように保持凹部65b内に保持される形状であればよい。
上記実施形態において、固定部68は、溶接に限らず、ネジやロウ付けにより容器10の外周面15aに固定されてもよい。
上記実施形態においては、連結板部69は、容器10の外面から離れた位置に設けられていたが、容器10の外面に接する位置に設けられていてもよい。
上記実施形態において、可搬式コンテナ1は、容器本体部15の外周面15aに固定される複数のパッチン錠を備えていてもよい。このパッチン錠は、蓋20を容器10に対して閉じた状態で固定する。
【符号の説明】
【0042】
1…可搬式コンテナ、10…容器、11…上部、12…中央部、13…下部、15…容器本体部、15a…外周面、20…蓋、50…ハンドル、51…ハンドル線材部、51a,51b…回動軸部、51c,51d…摺動部、51e…連結軸部、51k…開口部、51u…上部、51m…中央部、51j…下部、52…把持部、60…取付部材、60h,61h…貫通孔、61…ハンドル支持部、65…ハンドル回動規制部、65a…第1凸部、65b…保持凹部、65c…第2凸部、65d…案内傾斜面、65e…摺動面、67…側壁部、68…固定部、69…連結板部、70…洗浄機、80…コンベア、81…設置面、J…回動軸、W1,W2…距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8