(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176441
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電動車両のモータの制御方法、制御装置、及びそれを備える電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20241212BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20241212BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20241212BHJP
H02P 29/02 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L58/18
B60L7/14
H02P29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094974
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】腹岡 塁
【テーマコード(参考)】
5H125
5H501
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB03
5H125BA00
5H125BC01
5H125CA01
5H125CB02
5H125EE08
5H125EE22
5H125EE42
5H125EE51
5H501AA20
5H501CC04
5H501CC09
5H501HA08
5H501HB07
5H501LL01
5H501LL22
5H501MM02
(57)【要約】
【課題】バッテリ関連部品を電気的に保護して、搭載されるバッテリおよびバッテリ制御回路の選択肢を広げることができる制御方法を提供する。
【解決手段】電動二輪車1のモータ14の制御方法は、電動二輪車1をモータ14により駆動するとき、車両状態に応じて、電動二輪車1のバッテリパック17,18を流れる電流に関連する電流関連値の電流関連上限値を設定することと、電動二輪車1に入力されるアクセル操作量と電流関連上限値とに基づいて、電流関連値が電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータ14に対して指令する指令トルクのトルク上限値を算出すること、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両をモータにより駆動するとき、車両状態に応じて、前記電動車両のバッテリを流れる電流に関連する電流関連値の電流関連上限値を設定することと、
前記電動車両に入力されるアクセル操作量と前記電流関連上限値とに基づいて、前記電流関連値が前記電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータに対して指令する指令トルクのトルク上限値を算出すること、を備える、電動車両のモータの制御方法。
【請求項2】
前記指令トルクは、前記アクセル操作量が最大である場合、前記電流関連値が前記電流関連上限値となるように、前記アクセル操作量の増加に応じて増大するように算出される、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記指令トルクは、以下の関係により算出される、請求項2に記載の制御方法。
指令トルク=補正前指令トルク×(電流関連上限値/最大電流関連上限値)
補正前指令トルクは、運転者が入力するアクセル操作量に基づくトルクである。
最大電流関連上限値は、電流関連上限値の最大値である。
【請求項4】
前記指令トルクは、前記アクセル操作量と前記モータの回転数とに基づいて、算出される、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項5】
前記電流関連上限値は、前記バッテリを流れることを許容される上限電流に基づいて設定される、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項6】
前記バッテリが、電気的に並列接続される複数のバッテリを含む場合、
前記複数のバッテリごとに、前記電流関連上限値が設定されて、
前記電流関連上限値は、前記複数のバッテリごとに設定される前記電流関連上限値の内、最も小さい前記電流関連上限値に基づいて設定される、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項7】
前記制御方法は、
前記バッテリを前記モータに向けて電力を放出する放電状態にすることにより、前記モータを駆動する駆動制御と、
前記電動車両が回生制動するとき、前記バッテリを前記モータから電力を供給される充電状態にすることにより、前記バッテリを充電する回生制御と、を備えており、
前記電流関連上限値は、前記バッテリが前記放電状態又は前記充電状態であるかに応じて変動する、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項8】
前記回生制御は、
前記電動車両が回生制動するとき、前記電流関連値が前記電流関連上限値以下である場合、前記バッテリが前記充電状態となり、前記バッテリが充電されることと、
前記電動車両が回生制動するとき、前記電流関連値が前記電流関連上限値を超える場合、前記バッテリが前記充電状態を解除されること、を含む、請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記電流関連上限値は、前記バッテリと前記モータに対して電気的に接続される電気回路に含まれる回路素子の上限電流に基づいて設定される、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項10】
前記電気回路は、
前記バッテリに対して電気的に接続されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に対して電気的に並列接続されている、ダイオードと、を有しており、
前記電流関連上限値は、前記スイッチング素子が開くとき、前記ダイオードの許容電流に設定される、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記バッテリは、前記スイッチング素子が閉じていることによって、電流が前記モータから前記バッテリに向けて流れることを許容する充電可能状態である場合、前記バッテリの過充電を防ぐ条件を満足するとき、前記スイッチング素子が開くことによって、電流が前記モータから前記バッテリに向けて流れることを禁止する充電禁止状態に切り替わる、請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
電動車両をモータにより駆動するとき、車両状態に応じて、前記電動車両のバッテリを流れる電流に関連する電流関連値の電流関連上限値を設定する電流関連上限値設定部と、
前記電動車両に入力されるアクセル操作量と前記電流関連上限値とに基づいて、前記電流関連値が前記電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータに指令する指令トルクのトルク上限値を算出するトルク上限値算出部、を備える、電動車両のモータの制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の制御装置を備える、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両のモータの制御方法、制御装置、及びそれを備える電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両のモータの制御方法、制御装置、及びそれを備える電動車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、バッテリの放電電力の上限値を設定して、バッテリの放電電力を上限値以下に抑制する。
【0005】
バッテリの放電電力を抑制するためには、バッテリ又はバッテリに対して電気的に接続されるバッテリ制御回路に電流制限機能を組み込むなど、バッテリ又はバッテリ制御回路に対して付加的な機能又は部品を追加する必要がある。一般的な電動車両は、バッテリ関連部品を電気的に保護するため、バッテリの放電電力を抑制する機能を必要とする。したがって、一般的な電動車両は、種々のバッテリおよびバッテリ制御回路が自由に選択されて搭載されることが難しい。
【0006】
そこで、本開示は、バッテリ関連部品を電気的に保護して、搭載されるバッテリおよびバッテリ制御回路の選択肢を広げることができる、制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、電動車両をモータにより駆動するとき、車両状態に応じて、前記電動車両のバッテリを流れる電流に関連する電流関連値の電流関連上限値を設定することと、
前記電動車両に入力されるアクセル操作量と前記電流関連上限値とに基づいて、前記電流関連値が前記電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータに対して指令する指令トルクのトルク上限値を算出すること、を備える、電動車両のモータの制御方法を提供する。
【0008】
本開示によれば、電動車両のモータの制御方法は、バッテリを流れる電流に関連する電流関連値が電流関連上限値以下になるように、モータへの指令トルクのトルク上限値を算出する。指令トルクのトルク上限値が算出されることにより、許容電流が小さいバッテリが搭載されたとしても、又は電流制限機能を有していないバッテリおよびバッテリ制御回路が搭載されたとしても、バッテリ関連部品を電気的に保護することができる。したがって、電動車両は、バッテリ関連部品を保護する機能を備えると共に、種々のバッテリおよびバッテリ制御回路が自由に選択されて搭載されることができる。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本開示に係る電動車両のモータの制御方法によれば、バッテリ関連部品を電気的に保護して、搭載されるバッテリおよびバッテリ制御回路の選択肢を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電動車両の側面図である。
【
図3】
図2の回路に含まれるバッテリの回路図である。
【
図4】
図2の回路に含まれるモータを制御するシステムを示すブロック図である。
【
図5】
図4の電流関連上限値設定回路により用いられるバッテリが放電しているときの上限電流のマップである。
【
図6】
図4の電流関連上限値設定回路により用いられるバッテリが充電しているときの上限電流のマップである。
【
図7】
図4の指令トルク算出回路により補正される指令トルクの一実施例を示すグラフである。
【
図8】
図4の指令トルク算出回路により補正される指令トルクの他の実施例を示すグラフである。
【
図9】
図2の回路を用いて行われるモータの制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0012】
[電動車両の構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る電動車両(以下、「電動二輪車」という)1の側面図である。本実施形態における前方、後方、右方向、左方向などの方向は、それぞれ、電動二輪車1に乗る運転者から見た方向である。
【0013】
電動二輪車1は、電動二輪車1の本体2と、本体2より前方に配置されている前輪3と、本体2より後方に配置されている後輪4と、を備えている。
【0014】
前輪3は、上下方向に延びるフロントフォーク5の下部に回転自在に支持されている。フロントフォーク5は、その上端部に設けられたアッパーブラケット6と、アッパーブラケット6の下方に設けられたロアブラケット7とを介して、操舵軸8に支持されている。操舵軸8は、本体2に取り付けられているヘッドパイプ9によって回動可能に支持されている。
【0015】
アッパーブラケット6には、左右に延びるハンドルバー10が取り付けられている。運転者によるハンドルバー10の左右への揺動操作によって、操舵軸8を回転軸として、前輪3が操舵される。
【0016】
ハンドルバー10には、両側において、アクセルグリップ11が回転可能に取り付けられている。運転者は、電動二輪車1を発進又は加速させるとき、アクセルグリップ11を回転させることによって、発進要求又は加速要求を行う。アクセルグリップ11は、後述するコントロールユニット24に対して電気的に接続されているアクセルグリップセンサ12を有している。アクセルグリップセンサ12は、アクセルグリップ11を回転させることによって入力されるアクセル操作量を検出して、該アクセル操作量を含む信号をコントロールユニット24に対して送信する。
【0017】
本体2の車幅方向内側には、電動二輪車1を走行させるため、後輪4を駆動する駆動系部品13が配置されている。駆動系部品13は、モータ14と、動力伝達部品15とを有する。モータ14は、電力が供給されることによって駆動力を生じる。本実施例では、モータ14は三相交流モータである。動力伝達部品15は、モータ14の出力軸と、駆動輪である後輪とを動力伝達可能に接続する。動力伝達部品15は、たとえばスプロットとチェーンとを含んで、モータ14の駆動力を後輪4に伝達する。また、電動二輪車1は、モータ14の周辺において、後述するコントロールユニット24に電気的に接続されているモータ回転数センサ16を備えている。モータ回転数センサ16は、モータ14の回転数を検出して、該回転数を含む信号をコントロールユニット24に送信する。
【0018】
本体2の車幅方向内側には、モータ14に対して電力を供給する充放電可能な2つのバッテリパック17,18が配置されている。2つのバッテリパック17,18は、それぞれ、本体2に対して着脱自在である。各バッテリパックは、本体2から取り外された状態で、車外充電装置によって充電可能に構成される。充電されたバッテリパックは、ユーザによって、本体2に装着される。本実施形態では、2つのバッテリパック17,18が配置されているが、1つ又は3つ以上のバッテリパックが配置されていてもよい。
【0019】
本体2の車幅方向内側には、2つのバッテリパック17,18の装着有無を検出するバッテリ装着検出用センサ19,20が配置されている。バッテリ装着検出用センサ19,20は、2つのバッテリパック17,18の本体2に対する装着有無を検出して、2つのバッテリパック17,18の装着有無を含む信号を後述するコントロールユニット24に送信する。
【0020】
本体2の車幅方向内側には、モータドライバ21が配置されている。モータドライバ21は、モータ14に対して電気的に接続されて、バッテリパック17,18からモータ14に対して供給する電力を制御することによって、モータ14が出力する駆動トルクを制御する。
【0021】
本体2の車幅方向内側には、スイッチボックス22が配置されている。スイッチボックス22は、2つのバッテリパック17,18の両方がモータ14に対して電力を供給する並列接続状態か、バッテリパック17,18のいずれかがモータ14に対して電力を供給する単独接続状態かを選択可能に、2つのバッテリパック17,18とモータ14との間の電気的接続を制御する。
【0022】
フロントフォーク5の下部には、前輪3の回転速度を検出する車輪速センサ23が配置されている。車輪速センサ23は、前輪3の回転速度を含む信号を後述するコントロールユニット24に送信する。
【0023】
本体2の車幅方向内側には、コントロールユニット24が配置されている。コントロールユニット24は、アクセルグリップセンサ12、モータ回転数センサ16、バッテリ装着検出用センサ19,20、モータドライバ21、スイッチボックス22、及び車輪速センサ23などの電装部品と電気的に接続されている。コントロールユニット24は、アクセルグリップセンサ12などから送信される信号に応じて、駆動系部品13、特にモータ14の制御を行う集積回路であって、制御処理を行うプロセッサ24aと、制御プログラムを記憶しているメモリ24bと、上述の電装部品に対して信号の送受信を行う入出力インターフェース24cと、を有している。
【0024】
本実施形態において、コントロールユニット24は、2つのバッテリパック17,18に対して電気的に接続されて、充放電を許可する制御を行う。一方、コントロールユニット24以外の2つのバッテリパック17,18の充放電を制御するバッテリ制御装置が、本体2の車幅方向内側に配置されていてもよい。
【0025】
[電気回路の構成]
図2は、
図1の電動二輪車1の回路図であって、特にモータ14と、2つのバッテリパック17,18と、モータドライバ21と、スイッチボックス22と、コントロールユニット24と、を電気的に接続している電気回路25を示している。
【0026】
本実施形態において、電気回路25は、2つのバッテリパック17,18を互いに並列接続すると共に、2つのバッテリパック17,18を後述するインバータ回路27を介してモータ14に対して電気的に接続している電力経路26を有している。電力経路26は、2つのバッテリパック17,18からモータ14に向けて電力を供給すると共に、モータ14から2つのバッテリパック17,18に向けて電力を供給する電気的な経路である。
【0027】
電気回路25は、2つのバッテリパック17,18からモータ14に向けて供給される、又はモータ14から2つのバッテリパック17,18に向けて供給される交流電力の周波数を調整するインバータ回路27を有している。インバータ回路27は、互いに三相ブリッジ接続されているスイッチング素子27a~27fを有している。スイッチング素子27a~27fは、それぞれ、MOSFETであって、ゲートがモータドライバ21に対して電気的に接続されている。
【0028】
スイッチング素子27a~27fは、電圧がゲートに印加されているとき、ソースとドレインとの間を導通するように閉じる一方、電圧がゲートに印加されていないとき、ソースとドレインとの間を導通しないように開く特性を有している。したがって、モータドライバ21は、スイッチング素子27a~27fのゲートに印加する電圧を制御することによって、スイッチング素子27a~27fの開閉を切り替えて、2つのバッテリパック17,18からモータ14に向けて供給される、又はモータ14から2つのバッテリパック17,18に向けて供給される交流電力の周波数を調整する。
【0029】
モータドライバ21は、集積回路であって、コントロールユニット24に対して電気的に接続されており、コントロールユニット24から送信される、モータ14に対して指令トルクを出力させる指示を含む電気的信号に従って、インバータ回路27を制御して、モータ14を駆動する。
【0030】
モータドライバ21は、上述のように、スイッチング素子27a~27fの開閉を切り替えることによって、電動二輪車1が走行するとき、2つのバッテリパック17,18からモータ14に対して電力を供給して、モータ14を駆動するように構成されている。また、モータドライバ21は、スイッチング素子27a~27fの開閉を切り替えることによって、電動二輪車1が回生制動するとき、モータ14から2つのバッテリパック17,18に対して電力を供給して、2つのバッテリパック17,18を充電するように構成されている。
【0031】
2つのバッテリパック17,18は、それぞれ、コントロールユニット24に対して電気的に接続されている、後述するバッテリマネジメントユニット17f,18fを有する。バッテリマネジメントユニット17f,18fは、バッテリパック17,18の放電又は充電を許可又は禁止するように制御すると共に、バッテリパック17,18の温度とSOC(充電率)などの情報を取得して、コントロールユニット24に対して電気的信号として送信する。
【0032】
電気回路25は、バッテリ装着検出用センサ19,20を有している。バッテリ装着検出用センサ19,20は、それぞれ、バッテリパック17,18の電位を検出できるように、バッテリパック17,18の正極側と負極側に対して電気的に接続されている。また、バッテリ装着検出用センサ19,20は、それぞれ、コントロールユニット24に対して電気的に接続されている。バッテリ装着検出用センサ19,20は、それぞれ、バッテリパック17,18の電位を検出するとき、バッテリパック17,18の電位を含む電気的信号をコントロールユニット24に対して送信する。コントロールユニット24は、バッテリパック17,18の電位が検出されたことに基づいて、バッテリパック17,18が装着されていることを判定する。また、バッテリ装着検出用センサ19,20は、それぞれ、バッテリパック17,18の電位を検出しないとき、バッテリパック17,18の電位が検出されないことを含む電気的信号をコントロールユニット24に対して送信する。コントロールユニット24は、バッテリパック17,18の電位が検出されないことに基づいて、バッテリパック17,18が装着されていないことを判定する。
【0033】
図2に示す実施例において、2つのバッテリパック17,18が電力経路26に対して電気的に接続されているが、バッテリパック17,18のいずれかだけが電力経路26に対して電気的に接続されていてもよい。この場合、コントロールユニット24は、バッテリ装着検出用センサ19,20から送信されるバッテリパック17,18の電位に基づいて、2つのバッテリパック17,18の内のいずれかだけが電力経路26に対して電気的に接続されていることを判断する。
【0034】
電気回路25は、バッテリパック17,18と電力経路26に対して電気的にそれぞれ接続されているスイッチング素子28,29を有している。スイッチング素子28,29は、それぞれ、スイッチボックス22に対して電気的に接続されている。スイッチング素子28,29は、それぞれ、スイッチボックス22から送信される導通と遮断の指示を含む電気的信号に従って、バッテリパック17,18と電力経路26との間の導通と遮断を切り替える。本実施形態において、スイッチング素子28,29はそれぞれ、リレー素子であるが、MOSFETであってもよい。
【0035】
スイッチボックス22は、集積回路であって、コントロールユニット24に対して電気的に接続されており、コントロールユニット24から送信される、2つのバッテリパック17,18と電力経路26との間の導通と遮断を切り替える指示を含む電気的信号に従って、スイッチング素子28,29を作動して、電力経路26を介する2つのバッテリパック17,18とインバータ回路27との間の導通と遮断を切り替える。
【0036】
[バッテリパックの構成]
図3は、
図2の電気回路25に含まれるバッテリパック17の回路図である。本実施形態において、バッテリパック17は、特別な仕様を含まない一般的な構成を有する。また、バッテリパック18は、バッテリパック17と同じ構成を有するため、説明を省略する。
【0037】
バッテリパック17は、モータ14に対して供給するための電力を充放電するバッテリセル17aを有している。本実施形態において、バッテリセル17aは、複数のバッテリセルから構成されているが、単一のバッテリセルから構成されていてもよい。
【0038】
本実施形態において、バッテリパック17は、バッテリセル17aに対して電気的に接続されている充電用スイッチング素子17bと、充電用スイッチング素子17bに対して電気的に並列接続されている放電時整流ダイオード17cと、充電用スイッチング素子17bと放電時整流ダイオード17cを介して、バッテリセル17aに対して電気的に接続されている放電用スイッチング素子17dと、放電用スイッチング素子17dと電気的に並列接続されている充電時整流ダイオード17eと、を有している。
【0039】
放電時整流ダイオード17cは、電流がバッテリセル17aからインバータ回路27に向けて流れることを許容して、電流がインバータ回路27からバッテリセル17aに向けて流れることを阻止する。また、充電時整流ダイオード17eは、電流がインバータ回路27からバッテリセル17aに向けて流れることを許容して、電流がバッテリセル17aからインバータ回路27に向けて流れることを阻止する。
【0040】
バッテリパック17は、充電用スイッチング素子17bと放電用スイッチング素子17dに対して電気的に接続されているバッテリマネジメントユニット17fを有している。バッテリマネジメントユニット17fは、充電用スイッチング素子17bと放電用スイッチング素子17dの開閉を切り替えて、バッテリパック17の放電又は充電を許可又は禁止するように制御すると共に、コントロールユニット24に対して電気的に接続されて、バッテリパック17の放電又は充電を許可又は禁止する指示を含む電気的信号を受信すると共に、バッテリパック17の温度とSOC(充電率)とバッテリセル17aを流れる電流などの情報を含む電気的信号を送信する。
【0041】
本実施形態において、充電用スイッチング素子17bと放電用スイッチング素子17dは、それぞれ、MOSFETであって、ゲートがバッテリマネジメントユニット17fに対して電気的に接続されているが、他のリレー素子であってもよい。
【0042】
充電用スイッチング素子17bと放電用スイッチング素子17dは、電圧がゲートに印加されているとき、ソースとドレインとの間を導通するように閉じる一方、電圧がゲートに印加されていないとき、ソースとドレインとの間を導通しないように開く特性を有している。したがって、バッテリマネジメントユニット17fは、充電用スイッチング素子17bのゲートに印加する電圧を制御することによって、電流がインバータ回路27からバッテリセル17aに向けて流れることを許容する充電可能状態か、電流がインバータ回路27からバッテリセル17aに向けて流れることを禁止する充電禁止状態かを選択的に切り替える。より詳しくは、バッテリマネジメントユニット17fは、充電用スイッチング素子17bを閉じることによって、バッテリパック17を充電可能状態に切り替える。また、バッテリマネジメントユニット17fは、充電用スイッチング素子17bを開くことによって、バッテリパック17を充電禁止状態に切り替える。
【0043】
また、バッテリマネジメントユニット17fは、放電用スイッチング素子17dのゲートに印加する電圧を制御することによって、電流がバッテリセル17aからインバータ回路27に向けて流れることを許容する放電可能状態か、電流がバッテリセル17aからインバータ回路27に向けて流れることを禁止する放電禁止状態かを選択的に切り替える。より詳しくは、バッテリマネジメントユニット17fは、放電用スイッチング素子17dを閉じることによって、バッテリパック17を放電可能状態に切り替える。また、バッテリマネジメントユニット17fは、放電用スイッチング素子17dを開くことによって、バッテリパック17を放電禁止状態に切り替える。
【0044】
バッテリマネジメントユニット17fは、充電用スイッチング素子17bと放電用スイッチング素子17dの両方を閉じることによって、バッテリパック17を充電可能状態且つ放電可能状態に切り替えてもよい。また、バッテリマネジメントユニット17fは、充電用スイッチング素子17bと放電用スイッチング素子17dの両方を開くことによって、バッテリパック17を充電禁止状態且つ放電禁止状態に切り替えてもよい。
【0045】
バッテリマネジメントユニット17fは、集積回路であって、充電用スイッチング素子17bと放電用スイッチング素子17dのゲートに印加する電圧を制御することによって、バッテリパック17の放電可能状態、放電禁止状態、充電可能状態、及び充電禁止状態を切り替える。
【0046】
バッテリセル17aのSOCが100%に近い状態である場合、バッテリセル17aは劣化するおそれがある。したがって、バッテリマネジメントユニット17fは、バッテリセル17aのSOCが100%に近い状態であることを判定した場合、バッテリセル17aの劣化を抑えるため、充電用スイッチング素子17bを開いて、バッテリパック17を充電禁止状態に切り替える。また、バッテリマネジメントユニット17fは、後述する温度センサ17hを介して、バッテリパック17の温度が充電を禁止すべき温度条件に到達していることを判定した場合、同様に、バッテリセル17aの劣化を抑えるため、充電用スイッチング素子17bを開いて、バッテリパック17を充電禁止状態に切り替える。さらに、バッテリマネジメントユニット17fは、電動二輪車1が走行している場合、意図しない充電を防ぐため、充電用スイッチング素子17bを開いて、バッテリパック17を充電禁止状態に切り替えることがある。
【0047】
放電時整流ダイオード17cと充電時整流ダイオード17eは、それぞれ、放電時整流ダイオード17cと充電時整流ダイオード17eを流れる電流の上限値である許容電流を有する。上述のように、バッテリパック17が充電禁止状態であって、且つ放電可能状態である場合、すなわち充電用スイッチング素子17bが開いて、放電用スイッチング素子17dが閉じている場合、電流がバッテリセル17aからインバータ回路27に向けて流れるとき、大きな電流が放電時整流ダイオード17cを流れやすくなる。したがって、放電時整流ダイオード17cを流れる電流が許容電流を超えることがある。放電時整流ダイオード17cを流れる電流が許容電流を超える場合、放電時整流ダイオード17cは損傷するおそれがある。
【0048】
バッテリパック17は、バッテリセル17aの電位を測定する電位測定回路17gと、バッテリパック17の温度を測定する温度センサ17hと、バッテリセル17aを流れる電流を測定する電流測定回路17iとを有している。
【0049】
電位測定回路17gは、バッテリセル17aの正極と負極、及びバッテリマネジメントユニット17fに対して電気的に接続されており、測定された電位を含む信号をバッテリマネジメントユニット17fに対して送信する。
【0050】
温度センサ17hは、バッテリマネジメントユニット17fに対して電気的に接続されており、バッテリパック17の温度を含む信号をバッテリマネジメントユニット17fに対して送信する。
【0051】
電流測定回路17iは、充電用スイッチング素子17bと放電時整流ダイオード17cと放電用スイッチング素子17dと充電時整流ダイオード17eとを介して、バッテリセル17a、及びバッテリマネジメントユニット17fに対して電気的に接続されており、測定された電流を含む信号をバッテリマネジメントユニット17fに対して送信する。
【0052】
バッテリマネジメントユニット17fは、コントロールユニット24に対して電気的に接続されており、バッテリセル17aの電位からバッテリセル17aのSOCを算出して、該バッテリセル17aの電位及びSOCとバッテリパック17の温度とバッテリセル17aを流れる電流を含む電気的信号をコントロールユニット24に対して送信する。
【0053】
本実施形態において、バッテリマネジメントユニット17f,18fは、それぞれのバッテリパック17,18内の回路に関して短絡や断線などの異常がある場合、エラー情報を含む電気的信号をコントロールユニット24に対して送信する。コントロールユニット24は、バッテリマネジメントユニット17f,18fのいずれかから上記エラー情報を含む電気的信号を受信する場合、バッテリマネジメントユニット17f,18fを介して、充電用スイッチング素子17b,18bと放電用スイッチング素子17d,18dをそれぞれ開いて、異常を有するバッテリパック17,18を放電禁止状態且つ充電禁止状態に切り替える。
【0054】
[スイッチボックスの構成]
図2に示す実施形態において、スイッチボックス22は、コントロールユニット24から送信される電気的信号に基づいて、スイッチング素子28,29を作動して、電力経路26に対して、2つのバッテリパック17,18をそれぞれ並列接続させるか、又は2つのバッテリパック17,18のいずれかだけを接続させるかを切り替える。
【0055】
コントロールユニット24は、バッテリマネジメントユニット17f,18fから送信される電気的信号に含まれるバッテリセル17a,18aの電位に基づいて、バッテリセル17a,18aの電位差が所定の閾値以下であれば、スイッチボックス22に対して、2つのバッテリパック17,18をそれぞれ並列接続させる指示を含む電気的信号を送信する。スイッチボックス22は、コントロールユニット24から、2つのバッテリパック17,18をそれぞれ並列接続させる指示を含む電気的信号を受信することによって、スイッチング素子28,29をそれぞれ閉じて、電力経路26を介して、2つのバッテリパック17,18をインバータ回路27に対してそれぞれ並列接続させる。2つのバッテリパック17,18が電力経路26を介してインバータ回路27に対して電気的に並列接続されることにより、電動二輪車1が走行するとき、モータ14は2つのバッテリパック17,18から電力を供給されて駆動すると共に、電動二輪車1が回生制動するとき、2つのバッテリパック17,18はモータ14から電力を供給されて充電される。
【0056】
コントロールユニット24は、電動二輪車1が走行するとき、バッテリマネジメントユニット17f,18fから送信される電気的信号に含まれるバッテリセル17a,18aの電位に基づいて、バッテリセル17a,18aの電位差が所定の閾値よりも大きければ、スイッチボックス22に対して、2つのバッテリパック17,18の内の電位が大きいバッテリパックを接続させる指示を含む電気的信号を送信する。スイッチボックス22は、コントロールユニット24から、2つのバッテリパック17,18の内の電位が大きいバッテリパックを接続させる指示を含む電気的信号を受信することによって、スイッチング素子28,29の内の一方を閉じて、電力経路26を介して、2つのバッテリパック17,18の内の電位が大きいバッテリパックをインバータ回路27に対して接続させる。バッテリパック17,18の一方が電力経路26を介してインバータ回路27に対して電気的に接続されることにより、電動二輪車1が走行するとき、モータ14はバッテリパック17,18の一方から電力を供給されて駆動する。
【0057】
コントロールユニット24は、電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリマネジメントユニット17f,18fから送信される電気的信号に含まれるバッテリセル17a,18aの電位に基づいて、バッテリセル17a,18aの電位差が所定の閾値よりも大きければ、スイッチボックス22に対して、2つのバッテリパック17,18の内の電位が小さいバッテリパックを接続させる指示を含む電気的信号を送信する。スイッチボックス22は、コントロールユニット24から、2つのバッテリパック17,18の内の電位が小さいバッテリパックを接続させる指示を含む電気的信号を受信することによって、スイッチング素子28,29の内の一方を閉じて、電力経路26を介して、2つのバッテリパック17,18の内の電位が小さいバッテリパックをインバータ回路27に対して接続させる。バッテリパック17,18の一方が電力経路26を介してインバータ回路27に対して電気的に接続されることにより、電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18の一方はモータ14から電力を供給されて充電される。
【0058】
コントロールユニット24は、モータ14がバッテリパック17,18の一方から電力を供給されて駆動する、又はバッテリパック17,18の一方がモータ14から電力を供給されて充電される場合であっても、バッテリマネジメントユニット17f,18fから送信される電気的信号に含まれるバッテリセル17a,18aの電位に基づいて、バッテリセル17a,18aの電位差が所定の閾値以下になったと判断すれば、2つのバッテリパック17,18の内の一方だけを接続させる状態から、2つのバッテリパック17,18を電気的に並列接続させる状態に切り替える指示を含む電気的信号をスイッチボックス22に対して送信する。スイッチボックス22は、コントロールユニット24から、2つのバッテリパック17,18の内の一方だけを接続させる状態から、2つのバッテリパック17,18を電気的に並列接続させる状態に切り替える指示を含む電気的信号を受信することによって、スイッチング素子28,29をそれぞれ閉じて、電力経路26を介して、2つのバッテリパック17,18をインバータ回路27に対して電気的に並列接続させる。
【0059】
[コントロールユニットの構成]
図4は、
図2の電気回路25に含まれるモータ14を制御するシステムを示すブロック図であって、特にコントロールユニット24のプロセッサ24aに含まれる制御回路を示している。
【0060】
本明細書中に記載されている構成要素により実現される機能は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs(Application Specific Integrated Circuits)、CPU(a Central Processing Unit)、従来型の回路、および/又はそれらの組合せを含む、circuitry又はprocessing circuitryにおいて実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含み、circuitry又はprocessing circuitryとみなされる。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する、programmed processorであってもよい。本明細書において、circuitry、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。当該ハードウェアがcircuityのタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該circuitry、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成する為に用いられるソフトウェアの組合せである。
【0061】
プロセッサ21aは、電流関連上限値設定回路30と、トルク上限値算出回路31と、指令トルク算出回路32と、バッテリ充電判断回路33とを有している。
【0062】
電流関連上限値設定回路30は、バッテリマネジメントユニット17f,18fから送信されるバッテリセル17a,18aのSOCとバッテリパック17,18の温度を含む信号に基づいて、バッテリパック17,18の上限電流を設定して、該上限電流に基づいて、バッテリパック17,18を流れる電流に関連する電力又は温度などの電流関連値の電流関連上限値を設定する。
【0063】
本実施形態において、コントロールユニット24のメモリ24bは、後述するバッテリパックのSOCと温度に対する上限電流のマップを記憶している。電流関連上限値設定回路30は、上記マップを用いて、バッテリパック17,18の上限電流を設定して、該上限電流に基づいて、バッテリパック17,18を流れる電流に関連する電力又は温度などの電流関連値の電流関連上限値を設定する。また、コントロールユニット24のメモリ24bは、マップの代替として、バッテリパックのSOCと温度に基づいて上限電流を算出する演算式を記憶していてもよい。この場合、電流関連上限値設定回路30は、上記演算式を用いて、バッテリパック17,18の上限電流を設定して、該上限電流に基づいて、バッテリパック17,18を流れる電流に関連する電力又は温度などの電流関連値の電流関連上限値を設定する。
【0064】
トルク上限値算出回路31は、アクセルグリップセンサ12から送信されるアクセル操作量を含む信号と電流関連上限値に基づいて、電流関連値が電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータドライバ21を介してモータ14に対して指令する指令トルクのトルク上限値を算出する。より詳しくは、電流関連上限値に係る上限電流に基づいて、モータ14が有する印加電流と出力トルクとの間の特性からトルク上限値を算出する。
【0065】
指令トルク算出回路32は、電流関連値が電流関連上限値以下となるように、アクセル操作量と、モータ回転数センサ16から送信されるモータ14の回転数とに基づいて、指令トルクを算出する。より詳しくは、指令トルクは、電流関連値が電流関連上限値以下となるように、アクセル操作量とモータ14の回転数とに基づいて、トルク上限値以下の値として算出される。また、指令トルクは、アクセル操作量が最大である場合、電流関連値が電流関連上限値となるように、アクセル操作量の増加に応じて増大すると共に、トルク上限値以下となるように抑制されて算出される。
【0066】
バッテリ充電判断回路33は、電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流に応じて、バッテリパック17,18を充電するか否かを判断する。より詳しくは、電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下である場合、バッテリパック17,18は充電可能状態に切り替えられて、充電が行われる。電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流を超える場合、バッテリパック17,18は充電禁止状態に切り替えられて、充電が停止される。
【0067】
コントロールユニット24のメモリ24bは、上述の電流関連上限値設定回路30、トルク上限値算出回路31、指令トルク算出回路32、及びバッテリ充電判断回路33の各機能を実行させるための処理プログラムが記憶されている。
【0068】
プロセッサ24aは、メモリ21bに記憶されている電流関連上限値設定回路30、トルク上限値算出回路31、指令トルク算出回路32、及びバッテリ充電判断回路33の各機能を実行させるための処理プログラムを実行することで、電流関連上限値設定回路30、トルク上限値算出回路31、指令トルク算出回路32、及びバッテリ充電判断回路33の各機能を実現する。
【0069】
本実施形態では、プロセッサ24aは、集積回路として、電流関連上限値設定回路30、トルク上限値算出回路31、指令トルク算出回路32、及びバッテリ充電判断回路33を個別に含んでいるが、電流関連上限値設定回路30、トルク上限値算出回路31、指令トルク算出回路32、及びバッテリ充電判断回路33の各機能がまとめられたマイクロプロセッサであってもよい。
【0070】
[電流関連上限値設定回路]
本実施形態において、電流関連上限値設定回路30は、電流関連上限値として、バッテリパック17,18を流れる電流の上限電流を設定する。
【0071】
電流関連上限値設定回路30は、バッテリマネジメントユニット17f,18fから送信されるバッテリセル17a,18aのSOCとバッテリパック17,18の温度を含む電気的信号に基づいて、バッテリパック17,18ごとに上限電流を設定して、バッテリパック17,18ごとに設定される上限電流の内、最も小さい上限電流を電流関連上限値として設定する。
【0072】
バッテリパック17,18の上限電流は、バッテリパック17,18が放電状態又は充電状態であるかに応じて変動する。より詳しくは、バッテリパック17,18が放電状態である場合、モータ14が十分大きなトルクを出力できるように、バッテリパック17,18の上限電流は、バッテリパック17,18が充電状態である場合に比べて大きな値が設定される。また、バッテリパック17,18が充電状態である場合、バッテリパック17,18を電気的に保護するため、バッテリパック17,18の上限電流は、バッテリパック17,18が放電状態である場合に比べて小さな値が設定される。
【0073】
図5は、
図4の電流関連上限値設定回路30により用いられるバッテリパック17,18が放電状態であるときの上限電流のマップであって、横軸はバッテリパック17,18の温度を示し、縦軸はバッテリパック17,18のSOCを示している。
図5のマップにおいて、バッテリパック17,18の温度とSOCに対応する上限電流の領域I1,I2,I3が定められている。それぞれの上限電流の領域I1,I2,I3における電流値[A]の大きさは、I1>I2>I3の関係となる。
【0074】
図5のマップは、コントロールユニット24のメモリ24bに記憶されている。電流関連上限値設定回路30は、
図5のマップを用いて、バッテリパック17,18の温度とSOCに基づいて、該当する領域I1,I2,I3の上限電流をバッテリパック17,18ごとに設定して、バッテリパック17,18の上限電流の内、最小の値を電流関連上限値として設定する。
【0075】
図6は、
図4の電流関連上限値設定回路30により用いられるバッテリパック17,18が充電状態であるときの上限電流のマップであって、横軸はバッテリパック17,18の温度を示し、縦軸はバッテリパック17,18のSOCを示している。
図6のマップにおいて、バッテリパック17,18の温度とSOCに対応する上限電流の領域I11,I12,I13が定められている。それぞれの上限電流の領域I11,I12,I13における電流値[A]の大きさは、I11>I12>I13の関係となる。
【0076】
図6のマップは、コントロールユニット24のメモリ24bに記憶されている。電流関連上限値設定回路30は、
図6のマップを用いて、バッテリパック17,18の温度とSOCに基づいて、該当する領域I11,I12,I13の上限電流をバッテリパック17,18ごとに設定して、バッテリパック17,18の上限電流の内、最小の値を電流関連上限値として設定する。
【0077】
図2に示す実施例において、2つのバッテリパック17,18が電力経路26に対して電気的に接続されているが、バッテリパック17,18のいずれかだけが電力経路26に対して電気的に接続されている場合、電流関連上限値設定回路30は、接続されているバッテリパック17,18の上限電流を電流関連上限値として設定する。
【0078】
本実施形態において、バッテリセル17a,18aのSOCが100%に近い状態である場合、バッテリパック17,18の温度が充電を禁止すべき温度条件に到達している場合、又はバッテリパック17,18の意図しない充電を防ぐ必要がある場合、バッテリマネジメントユニット17f,18fは、バッテリセル17a,18aが過充電されて劣化することを抑えるため、充電用スイッチング素子17b,18bを開いて、バッテリパック17,18を充電禁止状態に切り替える。充電用スイッチング素子17b,18bが開いている状態で、電動二輪車1が走行するとき、バッテリマネジメントユニット17f,18fは、放電用スイッチング素子17d,18dを閉じて、バッテリパック17,18を放電可能状態に切り替える。このとき、電流が放電時整流ダイオード17c,18cを集中して流れるため、放電時整流ダイオード17c,18cを流れる電流が許容電流を超えるおそれがある。
【0079】
電流関連上限値設定回路30は、上述のように、バッテリパック17,18が充電禁止状態であって、且つ放電可能状態である場合、放電時整流ダイオード17c,18cを電気的に保護するため、放電時整流ダイオード17c,18cの許容電流をバッテリパック17,18の上限電流として設定する。さらに、電流関連上限値設定回路30は、放電時整流ダイオード17c,18cの許容電流を設定されたバッテリパック17,18の上限電流の内、最小の値を電流関連上限値として設定する。
【0080】
[トルク上限値算出回路]
トルク上限値算出回路31は、アクセルグリップセンサ12から送信されるアクセル操作量と、電流関連上限値設定回路30によって設定される電流関連上限値とに基づいて、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下となる状態を維持するように、モータドライバ21を介してモータ14に対して指令する指令トルクのトルク上限値を算出する。より詳しくは、電流関連上限値に係る上限電流に基づいて、モータ14が有する印加電流と出力トルクとの間の特性からトルク上限値を算出する。
【0081】
[指令トルク算出回路]
指令トルク算出回路32は、アクセルグリップセンサ12から送信されるアクセル操作量と、モータ回転数センサ16から送信されるモータ14の回転数とに基づいて、モータドライバ21を介してモータ14に対して指令する指令トルクを算出する。
【0082】
指令トルク算出回路32は、指令トルクがトルク上限値算出回路31によって算出されるトルク上限値を超える場合、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下となる状態を維持するため、指令トルクがトルク上限値以下になるように、指令トルクを補正する。
【0083】
図7は、
図4の指令トルク算出回路32により補正される指令トルクの一実施例を示すグラフであって、横軸はアクセル操作量を示し、縦軸は指令トルクを示している。
図7のグラフの実線は、補正後の指令トルクの推移を示し、一点鎖線は、トルク上限値算出回路31によって算出されるトルク上限値を示し、破線は、アクセル操作量に基づく補正前指令トルクの推移を示している。
図7のグラフの実線で示すように、指令トルクがトルク上限値に達する場合、指令トルクは、定常値であるトルク上限値に補正される。
【0084】
図8は、
図4の指令トルク算出回路32により補正される指令トルクの他の実施例を示すグラフであって、横軸はアクセル操作量を示し、縦軸は指令トルクを示している。
図8のグラフの実線は、補正後の指令トルクの推移を示し、一点鎖線は、トルク上限値算出回路31によって算出されるトルク上限値を示し、破線は、アクセル操作量に基づく補正前指令トルクの推移を示している。
図8のグラフの実線で示すように、指令トルクは、アクセル操作量が最大になるまで、トルク上限値以下になるように抑制されて、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下となるように、アクセル操作量に応じて増加する比率が抑制されて、補正前指令トルクに比して緩やかに増大するように補正される。より詳しくは、指令トルクは、以下の関係に従って補正される。
指令トルク=補正前指令トルク×(電流関連上限値/最大電流関連上限値)
最大電流関連上限値は、電流関連上限値の最大値であって、
図5と
図6に示すマップの上限電流の領域I1,I11に対応する値である。
【0085】
[バッテリ充電判断回路]
バッテリ充電判断回路33は、電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流に応じて、バッテリパック17,18を充電するか否かを判断する。より詳しくは、電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下である場合、バッテリマネジメントユニット17f,18fが充電用スイッチング素子17b,18bを閉じることによって、バッテリパック17,18は充電可能状態に切り替えられて、充電が行われる。電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流を超える場合、バッテリマネジメントユニット17f,18fが充電用スイッチング素子17b,18bを開くことによって、バッテリパック17,18は充電禁止状態に切り替えられて、充電が停止される。
【0086】
[制御方法]
図2に示す電気回路25によって実行される制御方法は、バッテリパック17,18をモータ14に向けて電力を放出する放電状態にすることにより、モータ14を駆動する駆動制御と、バッテリパック17,18をモータ14から電力を供給される充電状態にすることにより、バッテリパック17,18を充電する回生制御と、を備える。
【0087】
図9は、
図2の電気回路25を用いて行われるモータ14の制御のフローチャートであって、特にプロセッサ24aによって実行される制御処理を示している。コントロールユニット24のメモリ24bには、図示するフローチャートに沿って制御を行うためのプログラムが記憶されている。
【0088】
ステップS1において、コントロールユニット24は、バッテリ装着検出用センサ19,20から送信されるバッテリパック17,18の電位を取得して、2つのバッテリパック17,18が電力経路26に対して電気的に接続されているのか、又はバッテリパック17,18のいずれかだけが電力経路26に対して電気的に接続されているのかを判断する。
【0089】
次に、ステップS2において、コントロールユニット24は、バッテリマネジメントユニット17f,18fから送信されるバッテリセル17a,18aのSOCと、バッテリパック17,18の温度を取得する。
【0090】
次に、ステップS3において、コントロールユニット24の電流関連上限値設定回路30は、上述のように、電流関連上限値として、バッテリパック17,18を流れる電流の上限電流を設定する。より詳しくは、電流関連上限値設定回路30は、駆動制御が行われている、すなわちバッテリパック17,18が放電状態である場合、
図5に示すマップを用いて、バッテリセル17a,18aのSOC及びバッテリパック17,18の温度に基づいて上限電流を設定する。または、電流関連上限値設定回路30は、回生制御が行われている、すなわちバッテリパック17,18が充電状態である場合、
図6に示すマップを用いて、バッテリセル17a,18aのSOC及びバッテリパック17,18の温度に基づいて上限電流を設定する。2つのバッテリパック17,18が電力経路26に対して電気的に接続されている場合、2つのバッテリパック17,18の上限電流の内、最小の値が電流関連上限値として設定される。また、バッテリパック17,18のいずれかだけが電力経路26に対して電気的に接続されている場合、接続されているバッテリパック17,18の上限電流が電流関連上限値として設定される。さらに、スイッチボックス22がスイッチング素子28,29の内の一方を閉じて、バッテリパック17,18のいずれかだけが、電力経路26を介して、インバータ回路27に対して電気的に接続されている場合、接続されているバッテリパック17,18の上限電流が電流関連上限値として設定される。
【0091】
次に、ステップS4において、コントロールユニット24により、駆動制御が行われているとき、バッテリパック17,18が充電禁止状態であるか否かが判断される。より詳しくは、駆動制御が行われている、すなわちバッテリパック17,18が放電可能状態であるとき、バッテリパック17,18が充電禁止状態である場合(ステップS4がYES)、制御処理はステップS5に進む一方、バッテリパック17,18が充電禁止状態でない場合(ステップS4がNO)、制御処理はステップS5を飛ばしてステップS6に進む。
【0092】
ステップS5において、電流関連上限値設定回路30は、バッテリパック17,18が放電可能状態且つ充電禁止状態であるため、上述のように、放電時整流ダイオード17c,18cの電気的な保護を目的として、放電時整流ダイオード17c,18cの許容電流をバッテリパック17,18の上限電流として設定する。さらに、電流関連上限値設定回路30は、放電時整流ダイオード17c,18cの許容電流を設定されたバッテリパック17,18の上限電流の内、最小の値を電流関連上限値として再設定する。バッテリパック17,18のいずれかだけが電力経路26に対して電気的に接続されている場合、電流関連上限値設定回路30は、接続されているバッテリパック17,18の放電時整流ダイオード17c,18cの許容電流を電流関連上限値として再設定する。
【0093】
次に、ステップS6において、コントロールユニット24により、回生制御が行われている、すなわちバッテリパック17,18がモータ14から電力を供給されている充電状態であるか否かが判断される。より詳しくは、バッテリパック17,18が充電状態である場合(ステップS6がYES)、制御処理はステップS7に進む一方、バッテリパック17,18が充電状態でない場合(ステップS6がNO)、すなわち駆動制御が行われている場合、制御処理はステップS7,S8を飛ばしてステップS9に進む。
【0094】
ステップS7において、コントロールユニット24のバッテリ充電判断回路33により、バッテリパック17,18の電流関連値、すなわち電流が、電流関連上限値、すなわち上限電流よりも大きいか否かが判断される。より詳しくは、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流よりも大きい場合(ステップS7がYES)、制御処理はステップS8に進む一方、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下である場合(ステップS7がNO)、制御処理はステップS8を飛ばしてステップS9に進む、すなわち上述のように、バッテリパック17,18は充電状態を維持して、回生制御による充電が行われる。
【0095】
ステップS8において、バッテリ充電判断回路33は、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流よりも大きいため、上述のように、充電用スイッチング素子17b,18bを開く指示を含む電気的信号をバッテリマネジメントユニット17f,18fに対して送信する。バッテリマネジメントユニット17f,18fは、充電用スイッチング素子17b,18bを開くことによって、バッテリパック17,18を充電禁止状態に切り替えて、バッテリパック17,18の充電状態を解除して、バッテリパック17,18の充電が停止される。
【0096】
次に、ステップS9において、コントロールユニット24のトルク上限値算出回路31は、上述のように、電流関連上限値、すなわちバッテリパック17,18の上限電流に基づいて、モータ14が有する印加電流と出力トルクとの間の特性からトルク上限値を算出する。
【0097】
次に、ステップS10において、コントロールユニット24は、アクセルグリップセンサ12から送信されるアクセル操作量と、モータ回転数センサ16から送信されるモータ14の回転数とを取得する。
【0098】
次に、ステップS11において、コントロールユニット24の指令トルク算出回路32は、上述のように、アクセル操作量とモータ14の回転数とに基づいて、モータドライバ21を介してモータ14に対して指令する指令トルクを算出する。
【0099】
次に、ステップS12において、指令トルク算出回路32により、指令トルクを補正する必要があるか否かが判断される。より詳しくは、指令トルクがトルク上限値を超える場合(ステップS12がYES)、指令トルクを補正する必要があると判断されて、制御処理はステップS13に進む一方、指令トルクがトルク上限値以下である場合(ステップS12がNO)、指令トルクを補正する必要がないと判断されて、制御処理はステップS13を飛ばしてステップS14に進む。
【0100】
ステップS13において、指令トルク算出回路32は、上述のように、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下となる状態を維持するため、指令トルクがトルク上限値以下になるように、指令トルクを補正する。本実施例において、
図8に示す指令トルクに対する補正の方法により、補正後の指令トルクを算出する。
【0101】
次に、ステップS14において、コントロールユニット24は、モータ14に出力させる指令トルクを電気的信号としてモータドライバ21に対して送信する。モータドライバ21は、指令トルクを含む電気的信号を受信することにより、モータ14が指令トルクを出力するように、インバータ回路27を制御してモータ14を駆動する、又はインバータ回路27を制御してモータ14を回生制動させる。
【0102】
以上のステップS1からステップS14までを含むフローに沿って、駆動制御及び回生制御を含むモータ14の制御が行われる。
【0103】
[作用効果]
このように構成した電動二輪車1は、以下の特徴を有する。
【0104】
本実施形態の電動二輪車1のモータ14の制御方法は、
電動二輪車1をモータ14により駆動するとき、車両状態に応じて、電動二輪車1のバッテリパック17,18を流れる電流に関連する電流関連値の電流関連上限値を設定することと、
電動二輪車1に入力されるアクセル操作量と電流関連上限値とに基づいて、電流関連値が電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータ14に対して指令する指令トルクのトルク上限値を算出すること、を備える。
【0105】
本実施形態によれば、電動二輪車1のモータ14の制御方法は、バッテリパック17,18を流れる電流に関連する電流関連値が電流関連上限値以下になるように、モータ14への指令トルクのトルク上限値を算出する。指令トルクのトルク上限値が算出されることにより、許容電流が小さいバッテリパック17,18が搭載されたとしても、又は電流制限機能を有していないバッテリパック17,18が搭載されたとしても、バッテリ関連部品を電気的に保護することができる。したがって、電動二輪車1は、バッテリ関連部品を保護する機能を備えると共に、種々のバッテリおよびバッテリ制御回路が自由に選択されて搭載されることができる。
また、指令トルクのトルク上限値が算出されることによって、バッテリパック17,18自体を電流制御する場合に比して、運転フィーリングへの影響を抑えやすい。
【0106】
また、指令トルクは、アクセル操作量が最大である場合、電流関連値が電流関連上限値となるように、アクセル操作量の増加に応じて増大するように算出される。
【0107】
本実施形態によれば、アクセル操作量に応じて、指令トルクを変化させることができる。また、アクセル操作量が最大になるまで、バッテリパック17,18を流れる電流に関連する電流関連値が電流関連上限値以下になるように制御されるため、アクセル操作量の増加に応じて指令トルクを増加させて、運転者の操作フィーリングに近づけることができる。
【0108】
また、指令トルクは、以下の関係により算出される。
指令トルク=補正前指令トルク×(電流関連上限値/最大電流関連上限値)
補正前指令トルクは、運転者が入力するアクセル操作量に基づくトルクである。
最大電流関連上限値は、電流関連上限値の最大値である。
【0109】
本実施形態によれば、指令トルクは、アクセル操作量が最大になるまで、トルク上限値以下になるように抑制されて、電流関連値が電流関連上限値以下となるため、バッテリ関連部品を電気的に保護することができる。
【0110】
また、指令トルクは、アクセル操作量とモータ14の回転数とに基づいて、算出される。
【0111】
本実施形態によれば、指令トルクは、アクセル操作量とモータ14の回転数とに基づいて、算出されるため、発進時と定速走行時とで指令トルクを異ならせることができる。例えば、モータ14の回転数を考慮して、指令トルクを設定することにより、発進時などの回転数が低い状態でも、電流関連値が電流関連上限値を超えることを抑制して、適切な発進トルクを電動二輪車1に与えることができる。
【0112】
また、電流関連上限値は、バッテリパック17,18を流れることを許容される上限電流に基づいて設定される。
【0113】
本実施形態によれば、電流関連上限値は、バッテリパック17,18を流れることを許容される上限電流に基づいて設定されることによって、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下になるように制御されるため、バッテリパック17,18を電気的に保護しやすい。
また、電流に関連する電力又は温度などを電流関連値として、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下になるように制御することもできる。
【0114】
また、バッテリパック17,18ごとに、上限電流が設定されて、
電流関連上限値は、バッテリパック17,18ごとに設定される上限電流の内、最も小さい上限電流に基づいて設定される。
【0115】
本実施形態によれば、電流関連上限値が、バッテリパック17,18ごとに設定される上限電流の内、最も小さい上限電流に基づいて設定されることによって、バッテリパック17,18を流れる電流が最も小さい上限電流以下になるように制御されるため、全てのバッテリパック17,18を電気的に保護しやすい。
【0116】
また、制御方法は、
バッテリパック17,18をモータ14に向けて電力を放出する放電状態にすることにより、モータ14を駆動する駆動制御と、
電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18をモータ14から電力を供給される充電状態にすることにより、バッテリパック17,18を充電する回生制御と、を備えており、
上限電流は、バッテリパック17,18が放電状態又は充電状態であるかに応じて変動する。
【0117】
本実施形態によれば、上限電流は、バッテリパック17,18が放電状態又は充電状態であるかに応じて変動して、適切な値を設定されるため、バッテリパック17,18が放電状態又は充電状態であったとしても、バッテリパック17,18を電気的に保護しやすい。
【0118】
また、回生制御は、
電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流以下である場合、バッテリパック17,18が充電状態となり、バッテリパック17,18が充電されることと、
電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流を超える場合、バッテリパック17,18が充電状態を解除されること、を含む。
【0119】
本実施形態によれば、電動二輪車1が回生制動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流が上限電流を超える場合、バッテリパック17,18が充電状態を解除されるため、バッテリパック17,18が過充電されにくくなり、バッテリパック17,18を電気的に保護しやすい。
【0120】
また、電流関連上限値は、バッテリパック17,18とモータ14に対して電気的に接続される電気回路25に含まれる回路素子の上限電流に基づいて設定される。
【0121】
本実施形態によれば、電流関連上限値は、回路素子を電気的に保護するための上限電流に基づいて設定されることによって、回路素子を流れる電流が上限電流以下になるように制御されるため、回路素子を電気的に保護しやすい。
【0122】
また、電気回路25は、
バッテリセル17a,18aに対して電気的に接続される充電用スイッチング素子17b,18b及び放電用スイッチング素子17d,18dと、
充電用スイッチング素子17b,18bに対して電気的に並列接続されている、放電時整流ダイオード17c,18c及び充電時整流ダイオード17e,18eと、を有しており、
電流関連上限値は、充電用スイッチング素子17b,18bが開くとき、放電時整流ダイオード17c,18cの許容電流に設定される。
【0123】
本実施形態によれば、バッテリパック17,18がモータ14に向けて電力を放出する放電状態であって、充電用スイッチング素子17b,18bが開くとき、電流関連上限値は放電時整流ダイオード17c,18cの許容電流に設定されるため、放電時整流ダイオード17c,18cを電気的に保護しやすい。
【0124】
また、バッテリパック17,18は、充電用スイッチング素子17b,18bが閉じていることによって、電流がモータ14からバッテリパック17,18に向けて流れることを許容する充電可能状態である場合、バッテリセル17a,18aの過充電を防ぐ条件を満足するとき、充電用スイッチング素子17b,18bが開くことによって、電流がモータ14からバッテリパック17,18に向けて流れることを禁止する充電禁止状態に切り替わる。
【0125】
本実施形態によれば、バッテリパック17,18が、充電可能状態である場合、バッテリセル17a,18aの過充電を防ぐ条件を満足するとき、充電禁止状態に切り替わることによって、バッテリセル17a,18aの過充電が防がれる。
【0126】
また、本実施形態の電動二輪車1のモータ14のコントロールユニット24は、
電動二輪車1をモータ14により駆動するとき、車両状態に応じて、電動二輪車1のバッテリパック17,18を流れる電流に関連する電流関連値の電流関連上限値を設定する電流関連上限値設定回路30と、
電動二輪車1に入力されるアクセル操作量と電流関連上限値とに基づいて、電流関連値が電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータ14に指令する指令トルクのトルク上限値を算出するトルク上限値算出回路31、を備える。
【0127】
本実施形態によれば、電動二輪車1のモータ14のコントロールユニット24は、バッテリパック17,18を流れる電流に関連する電流関連値が電流関連上限値以下になるように、モータ14への指令トルクのトルク上限値を算出する。指令トルクのトルク上限値が算出されることにより、許容電流が小さいバッテリパック17,18が搭載されたとしても、又は電流制限機能を有していないバッテリパック17,18が搭載されたとしても、バッテリ関連部品を電気的に保護することができる。したがって、電動二輪車1は、バッテリ関連部品を保護する機能を備えると共に、種々のバッテリおよびバッテリ制御回路が自由に選択されて搭載されることができる。
また、指令トルクのトルク上限値が算出されることによって、バッテリパック17,18自体を電流制御する場合に比して、運転フィーリングへの影響を抑えやすい。
【0128】
また、本実施形態の電動二輪車1は、コントロールユニット24を備える。
【0129】
本実施形態によれば、電動二輪車1が駆動するとき、バッテリパック17,18を流れる電流に関連する電流関連値が電流関連上限値以下になるように、モータ14への指令トルクのトルク上限値を算出する。指令トルクのトルク上限値が算出されることにより、許容電流が小さいバッテリパック17,18が搭載されたとしても、又は電流制限機能を有していないバッテリパック17,18が搭載されたとしても、バッテリ関連部品を電気的に保護することができる。したがって、電動二輪車1は、バッテリ関連部品を保護する機能を備えると共に、種々のバッテリおよびバッテリ制御回路が自由に選択されて搭載されることができる。
また、指令トルクのトルク上限値が算出されることによって、バッテリパック17,18自体を電流制御する場合に比して、運転フィーリングへの影響を抑えやすい。たとえば、指令トルクがトルク上限値以下である場合、指令トルクを抑制することなくモータ14に指令することによって、運転フィーリングへの影響を抑えやすい。また、指令トルクがトルク上限値より大きい場合、指令トルクを抑制するように補正してモータ14に指令することによって、バッテリ関連部品を電気的に保護できる。特に、
図8に示す指令トルクに対する補正の方法により、指令トルクが、トルク上限値の近傍において、急変し難くなり、運転フィーリングへの影響を抑えやすい。
【0130】
[他の実施形態]
なお、本開示は、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0131】
上述の実施形態では、電動車両1は電動二輪車であるが、三輪車や四輪車であってもよい。好ましくは、左右輪が車幅方向に間隔を空けて並ぶ四輪車に比して軽量で、運転フィーリングへの影響が大きい鞍乗型車両に対して好適に用いられ得る。鞍乗型車両は、運転者が、乗車姿勢において、運転者の両足が車両の左右両側に対してそれぞれ位置するように、鞍上のシートに着座するタイプの車両を意味する。
【0132】
上述の実施形態では、2つのバッテリパック17,18は、並列接続されているが、直列接続されていてもよい。また、単一のバッテリパックが電力経路に対して電気的に接続されていてもよい。
【0133】
上述の実施形態では、2つのバッテリパック17,18は、本体2に対して着脱自在であるが、本体2に対して着脱不能に搭載されていてもよい。
【0134】
上述の実施形態では、バッテリパック17,18の上限電流が電流関連上限値として設定されているが、バッテリパック17,18を流れる電流に関連する値、例えば電流の増加に応じて大きくなる電力又は温度などの上限値が電流関連上限値として設定されてもよい。
【0135】
上述の実施形態では、電流関連上限値設定回路30は、バッテリパック17,18が充電禁止状態であって、且つ放電可能状態である場合、放電時整流ダイオード17c,18cを電気的に保護するため、放電時整流ダイオード17c,18cの許容電流をバッテリパック17,18の上限電流として設定するが、バッテリパック17,18が放電禁止状態であって、且つ充電可能状態である場合、バッテリパック17,18の過剰な放電から充電時整流ダイオード17e,18eを電気的に保護するため、充電時整流ダイオード17e,18eの許容電流をバッテリパック17,18の上限電流として設定してもよい。
【0136】
本開示は、電動車両に限らず、モータによって走行するモードを備えるハイブリッド車両に対しても適用できる。車両構造、すなわちバッテリパックやモータなどの部品のレイアウトは、上述の実施形態で開示された配置関係以外であってもよい。たとえば、モータはインホイールモータであってもよく、バッテリパックは本体以外に搭載されていてもよい。
【0137】
上述の実施形態では、電動二輪車は、電気回路25を備えているが、他の構成の電気回路を備えていてもよい。たとえば、コントロールユニットがバッテリマネジメントユニットの機能の一部又はすべてを有してもよい。また、スイッチボックスの代替として、コントロールユニットが、スイッチボックスの機能を有して、スイッチング素子の開閉を切り替えることによって、電力経路を介するバッテリパックとインバータ回路との間の電気的接続を制御してもよい。さらに、スイッチボックスが、コントロールユニットの機能の一部を有してもよい。
【0138】
本開示の第1の態様は、
電動車両をモータにより駆動するとき、車両状態に応じて、前記電動車両のバッテリを流れる電流に関連する電流関連値の電流関連上限値を設定することと、
前記電動車両に入力されるアクセル操作量と前記電流関連上限値とに基づいて、前記電流関連値が前記電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータに対して指令する指令トルクのトルク上限値を算出すること、を備える、電動車両のモータの制御方法を提供する。
【0139】
本開示の第2の態様は、
前記指令トルクは、前記アクセル操作量が最大である場合、前記電流関連値が前記電流関連上限値となるように、前記アクセル操作量の増加に応じて増大するように算出される、第1の態様に記載の制御方法を提供する。
【0140】
本開示の第3の態様は、
前記指令トルクは、以下の関係により算出される、第2の態様に記載の制御方法を提供する。
指令トルク=補正前指令トルク×(電流関連上限値/最大電流関連上限値)
補正前指令トルクは、運転者が入力するアクセル操作量に基づくトルクである。
最大電流関連上限値は、電流関連上限値の最大値である。
【0141】
本開示の第4の態様は、
前記指令トルクは、前記アクセル操作量と前記モータの回転数とに基づいて、算出される、第1又は第2の態様に記載の制御方法を提供する。
【0142】
本開示の第5の態様は、
前記電流関連上限値は、前記バッテリを流れることを許容される上限電流に基づいて設定される、第1の態様から第4の態様のいずれかに記載の制御方法を提供する。
【0143】
本開示の第6の態様は、
前記バッテリが、電気的に並列接続される複数のバッテリを含む場合、
前記複数のバッテリごとに、前記電流関連上限値が設定されて、
前記電流関連上限値は、前記複数のバッテリごとに設定される前記電流関連上限値の内、最も小さい前記電流関連上限値に基づいて設定される、第1の態様から第5の態様のいずれかに記載の制御方法を提供する。
【0144】
本開示の第7の態様は、
前記制御方法は、
前記バッテリを前記モータに向けて電力を放出する放電状態にすることにより、前記モータを駆動する駆動制御と、
前記電動車両が回生制動するとき、前記バッテリを前記モータから電力を供給される充電状態にすることにより、前記バッテリを充電する回生制御と、を備えており、
前記電流関連上限値は、前記バッテリが前記放電状態又は前記充電状態であるかに応じて変動する、第1の態様から第6の態様のいずれかに記載の制御方法を提供する。
【0145】
本開示の第8の態様は、
前記回生制御は、
前記電動車両が回生制動するとき、前記電流関連値が前記電流関連上限値以下である場合、前記バッテリが前記充電状態となり、前記バッテリが充電されることと、
前記電動車両が回生制動するとき、前記電流関連値が前記電流関連上限値を超える場合、前記バッテリが前記充電状態を解除されること、を含む、第7の態様に記載の制御方法を提供する。
【0146】
本開示の第9の態様は、
前記電流関連上限値は、前記バッテリと前記モータに対して電気的に接続される電気回路に含まれる回路素子の上限電流に基づいて設定される、第1の態様から第8の態様のいずれかに記載の制御方法を提供する。
【0147】
本開示の第10の態様は、
前記電気回路は、
前記バッテリに対して電気的に接続されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に対して電気的に並列接続されている、ダイオードと、を有しており、
前記電流関連上限値は、前記スイッチング素子が開くとき、前記ダイオードの許容電流に設定される、第9の態様に記載の制御方法を提供する。
【0148】
本開示の第11の態様は、
前記バッテリは、前記スイッチング素子が閉じていることによって、電流が前記モータから前記バッテリに向けて流れることを許容する充電可能状態である場合、前記バッテリの過充電を防ぐ条件を満足するとき、前記スイッチング素子が開くことによって、電流が前記モータから前記バッテリに向けて流れることを禁止する充電禁止状態に切り替わる、第10の態様に記載の制御方法を提供する。
【0149】
本開示の第12の態様は、
電動車両をモータにより駆動するとき、車両状態に応じて、前記電動車両のバッテリを流れる電流に関連する電流関連値の電流関連上限値を設定する電流関連上限値設定部と、
前記電動車両に入力されるアクセル操作量と前記電流関連上限値とに基づいて、前記電流関連値が前記電流関連上限値以下となる状態を維持するように、モータに指令する指令トルクのトルク上限値を算出するトルク上限値算出部、を備える、電動車両のモータの制御装置を提供する。
【0150】
本開示の第13の態様は、
第12の態様に記載の制御装置を備える、電動車両を提供する。
【符号の説明】
【0151】
1 電動車両(電動二輪車)
14 モータ
17,18 バッテリパック
17a,18a バッテリセル
17b,18b 充電用スイッチング素子
17c,18c 放電時整流ダイオード
17d,18d 放電用スイッチング素子
17e,18e 充電時整流ダイオード
24 コントロールユニット
25 電気回路
30 電流関連上限値設定部(電流関連上限値設定回路)
31 トルク上限値算出部(トルク上限値算出回路)