(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176443
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】トラッキングシステム、並びにそのトラッキングシステムを用いた建設機械アタッチメントの状態検知システム、遭難者探索システムおよび不動物の状態検知システム
(51)【国際特許分類】
H04L 1/16 20230101AFI20241212BHJP
【FI】
H04L1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094979
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】508327618
【氏名又は名称】株式会社共和電子製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】水野 悟司
(72)【発明者】
【氏名】小島 由裕
(72)【発明者】
【氏名】山下 和範
(72)【発明者】
【氏名】西 光平
【テーマコード(参考)】
5K014
【Fターム(参考)】
5K014DA02
5K014FA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】データ送受信に失敗したデータの送受信の再試行を行い、未送信データの一時保存を継続しつつ、新たなデータの蓄積を行い、データ送信に漏れが無いように管理するトラッキングシステム及び方法を提供する。
【解決手段】追跡対象の位置、姿勢、移動速度の少なくとも何れかの変化を自律的に計測して、当該変化を自律的に外部システムに通信するトラッキングシステム100であって、追跡対象の位置データを取得するGPSモジュール110と、追跡対象に生じた変化を計測するセンサーモジュール120と、中央制御装置130と、メモリ装置140と、特定通信装置150と、計測結果をメモリ装置に保存するGPSデータ一時保存手段131と、センサーデータ一時保存手段132と、を備える。特定通信装置は、LPWA通信規格に基づいて外部の特定通信アンテナ310を介して、データ通信を外部システム300に対して行う通信制御手段152を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
追跡対象の位置、姿勢、移動速度の少なくともいずれかの変化を自律的に計測して、当該変化を自律的に外部システムに通信するトラッキングシステムであって、
第1の所定時間間隔にて、前記追跡対象の位置データを取得するGPSモジュールと、
第2の所定時間間隔にて、前記追跡対象に生じた加速度データ、磁気変化データ、照度変化データ、温度変化データ、時刻データの少なくともいずれかの変化を計測するセンサーモジュールと、
中央制御装置と、メモリ装置と、特定通信装置とを備え、
前記GPSモジュールが、前記第1の所定時間間隔にて得られた前記追跡対象の位置データの計測結果を前記メモリ装置に書き込むGPSデータ一時保存手段を備え、
前記センサーモジュールが、前記第2の所定時間間隔にて得られた前記追跡対象の前記加速度データ、前記磁気変化データ、前記照度変化データ、前記温度変化データ、前記時刻データのいずれかのセンサーデータを前記メモリ装置に書き込むセンサーデータ一時保存手段を備え、
前記特定通信装置が、Low Power Wide Area通信規格に基づく特定通信モジュールと、外部の特定通信アンテナの通信可能エリア内にあれば、前記外部の特定通信アンテナを介して、第3の所定時間間隔にて、前記メモリ装置に一時保存されている前記GPSデータおよび前記センサーデータのデータ通信を前記外部システムに対して行う通信制御手段を備えたことを特徴とするトラッキングシステム。
【請求項2】
前記通信制御手段が、第3の所定時間間隔の経過を契機として、前記特定通信装置がデータ通信できなかった場合、前記メモリ装置に書き込まれている未送信の前記GPSデータおよび前記センサーデータの前記メモリ装置内での一時保存を継続し、次の第3の所定時間間隔の経過を契機として、前記未送信の前記GPSデータおよび前記センサーデータと、次の第3の所定時間間隔までの間に新たに書き込まれた前記GPSデータおよび前記センサーデータのデータ通信を前記特定通信モジュールに実行させることを特徴とする請求項1に記載のトラッキングシステム。
【請求項3】
前記GPSモジュールまたは前記中央制御装置により、前記GPSデータが計測にかかる前記第1の所定時間間隔ごとにGPSデータシリアル番号が付与されて前記メモリ装置に書き込まれ、
前記センサーモジュールまたは前記中央制御装置により、前記センサーデータが計測にかかる前記第2の所定時間間隔ごとにセンサーデータシリアル番号が付与されて前記メモリ装置に書き込まれ、
前記特定通信手段によって前記データ通信を行う際には前記GPSデータシリアル番号付きの前記GPSデータ、および、前記センサーデータシリアル番号付きの前記センサーデータが送信されることを特徴とする請求項2に記載のトラッキングシステム。
【請求項4】
前記通信制御手段または前記中央制御装置が、前記外部の特定通信アンテナを介して前記外部システムから、前記GPSデータシリアル番号または前記センサーデータシリアル番号を指定したデータの再送リクエストを受け付け、前記再送リクエストで指定された前記GPSデータシリアル番号付きの前記GPSデータ、および、指定された前記センサーデータシリアル番号付きの前記センサーデータを再送することを特徴とする請求項3に記載のトラッキングシステム。
【請求項5】
前記特定通信モジュールが、省電力かつ長距離での無線通信を可能としたLow Power Wide Area-networkの装置である請求項1から4のいずれかに記載のトラッキングシステム。
【請求項6】
前記追跡対象が、建設機械の可動部でかつ取り替え部材である建設機械アタッチメントであり、
前記センサーモジュールが、当該追跡対象に生じた前記加速度データと前記時刻データをそれぞれ計測することが可能なものであり、
前記センサーデータのデータ通信を受けた外部システムにおいて、当該建設機械アタッチメントの使用状態の時間および不使用状態の時間を検知できる請求項5に記載のトラッキングシステムを利用した建設機械アタッチメントの状態検知システム。
【請求項7】
前記追跡対象が、農機具であり
前記センサーモジュールが、当該追跡対象に生じた前記加速度データと前記時刻データをそれぞれ計測することが可能なものであり、
前記センサーデータのデータ通信を受けた外部システムにおいて、当該農機具の位置、使用状態の時間および不使用状態の時間を検知できる請求項5に記載のトラッキングシステムを利用した農機具の状態検知システム。
【請求項8】
前記追跡対象が、登山入山者、海洋乗船者、子供または徘徊者の人間であり、
当該人間が請求項5に記載のトラッキングシステムを身に着けており、
前記GPSデータのデータ通信を受けた外部システムにおいて、当該追跡対象の人間の位置を検知できる請求項5に記載のトラッキングシステムを利用した遭難者探索システム。
【請求項9】
前記外部の特定通信アンテナが、飛行可能なドローンに搭載されたものであり、前記遭難者が前記ドローンの搭載している前記特定通信アンテナの通信可能エリア内に居る場合に、前記遭難者が身に着けている請求項5に記載のトラッキングシステムからの前記データ通信により前記遭難者の位置に関する情報を得ることができる請求項8に記載の遭難者探索システム。
【請求項10】
前記追跡対象が、通常は不動物である岩、盛り土、林、道路、橋梁、またはトンネルであり、
当該不動物に請求項5に記載のトラッキングシステムを装着しており、
前記センサーモジュールが、少なくとも当該追跡対象に生じた前記加速度データを計測することが可能なものであり、
前記GPSデータおよび前記センサーデータのデータ通信を受けた外部システムにおいて、当該不動物の移動または移動の兆候を検知できる請求項5に記載のトラッキングシステムを利用した不動物の状態検知システム。
【請求項11】
追跡対象の位置、姿勢、移動速度の少なくともいずれかの変化を自律的に計測して、当該変化を自律的に外部システムに通信するトラッキング方法であって、
GPSモジュールにより、第1の所定時間間隔にて、前記追跡対象の位置データを取得し、
センサーモジュールにより、第2の所定時間間隔にて、前記追跡対象に生じた加速度データ、磁気変化データ、照度変化データ、温度変化データ、時刻データの少なくともいずれかの変化を計測し、
中央制御装置と、メモリ装置と、特定通信装置を装備し、
前記GPSモジュールが、前記第1の所定時間間隔にて得られた前記追跡対象の位置データの計測結果を前記メモリ装置に書き込むGPSデータ一時保存を実行し、
前記センサーモジュールが、前記第2の所定時間間隔にて得られた前記追跡対象の前記加速度データ、前記磁気変化データ、前記照度変化データ、前記温度変化データ、前記時刻データのいずれかのセンサーデータを前記メモリ装置に書き込むセンサーデータ一時保存を実行し
前記特定通信装置が、外部の特定通信アンテナの通信可能エリア内にあれば、特定通信規格により、前記外部の特定通信アンテナを介して、第3の所定時間間隔にて、前記メモリ装置に一時保存されている前記GPSデータおよび前記センサーデータのデータ通信を前記外部システムに対して行う特定通信を実行することを特徴とするトラッキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追跡対象の位置、姿勢、移動速度の少なくともいずれかの変化を自律的に計測して、当該変化を自律的に外部システムに通信するトラッキングシステムに関する。
適用例としては、建設機械の可動部でかつ取り替え部材である建設機械アタッチメントの状態検知システム、農機具の状態検知システム、遭難者探索システム、岩や盛り土の不動物の状態検知システムなどがある。
【背景技術】
【0002】
近年、データ通信はコンピューター同士のデータ通信のみならず、様々なオブジェクトに通信モジュールが設けられ、ネットワークを介して制御システム側に対してデータ通信を行う技術であるIoT(Internet of Things)が拡がりつつある。その通信方式として、LPWA通信(Low Power Wide Area data transmission)(省電力広域通信)が注目されている。
図8に示すように通信規格には様々なものがあるが、一般のコンピューター間の通信規格や携帯電話ネットワーク規格(例えば、Wi-Fi、3G、4G、5G)は高速通信を目指すものでIoTとしては過剰スペックである。LPWAはIoTをターゲットに比較的に低スペックに抑えることで低コスト化を目指したものである。LPWAの伝送速度は、有線LANや無線LANと比較すると非常に遅いものの、LPWAにはメリットも多く、例えば、広範囲に伝送でき、周波数帯幅も狭帯域であり、且つ、消費電力が極めて少ないという特性を有しており、データ容量が小さく、間歇的に多数回送信するセンサネットワークなどに適していると言われている。
【0003】
LPWAに基づく通信規格としては、免許不要の周波数帯域(アンライセンスバンド)を利用する通信方式と、免許が必要な周波数帯域(ライセンスバンド)を利用する通信方式がある。前者には、例えば、Sigfox(通信周波数サブGHz帯、最大通信速度100bps、通信距離は数十km程度)、LoRaWAN(通信周波数サブGHz帯、最大通信速度250kbps、通信距離は最大10km程度)、ELTRES、ZETAなどがある。後者としては、LTE-M、NB-IoTなどが挙げられる。
特に、近年Sigfoxが注目されている。SigfoxはフランスUnaBiz SAS社で開発された通信方式であり、通信速度が最大100bps程度の低速通信規格ではあるが、通信距離は数十km程度と長距離であり、低価格・低消費電力の特長を持ちグローバルIoTネットワークに適している通信方式として注目されている。
図9に示す特許文献1(特開2023-61535号)に開示された建設機械作業管理システムや、
図10に示す特許文献2(特開2009-44309号)に開示された無線通信端末などが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2020-136985号公報
【特許文献2】特開2009-044309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術におけるLPWAに基づく通信規格は、IoTデバイスに適した通信規格であるが、基本的には固定されたオブジェクトへの適用に優れているものの、比較的高速に移動し得るオブジェクトへの適用には向いていない通信規格とされている。
第1の問題は、従来技術のLPWAは、データ送受信に失敗したデータの再試行が難しかったという点である。上記したように、LPWAでは小容量のデータ送受信でも失敗することがあるが、データ送受信の失敗を低減しようとすると一般的な対策では高スペック化する必要があるところ、LPWAによりシステムを構築・運用する者は低コスト化を重視して高スペック化の対策はせず、間歇的なデータ送受信のうち、そのうちの数回のデータ送受信が失敗してもデータが欠けたまま運用することもあった。
【0006】
第2の問題は、従来技術のLPWAは、小容量のデータでも送受信時間がかかり、受信側でエラー率が高くなるおそれがある点である。上記したLPWAに基づく通信規格は通信速度が遅く、1回のデータ送受信に時間がかかる。例えば、Sigfoxの場合には7~8秒程度は必要とされている。そのため、移動するオブジェクトの移動速度が速いと受信側において受信エラー率が高くなるという問題点があった。
【0007】
第3の問題は、従来技術のLPWAは、狭帯域無線通信ゆえ、ドップラーシフトによる周波数のズレに弱い点である。上記したLPWAに基づく通信規格は狭帯域無線通信であり、例えば、Sigfoxの場合では通信周波数がサブGHz帯であり狭帯域である。そのため、移動するオブジェクトの移動速度が速いと通信にドップラーシフトによる周波数のズレが生じ得るため、通信が途切れてしまう可能性がある。
【0008】
しかし、その一方で、LPWAに基づく通信規格には様々な可能性、ポテンシャルを持つものである。
本発明者らは、LPWAに基づく通信モジュールにおいて、低コストながら対策を行うことにより、データ送受信に失敗したデータの再試行を実現できることに気付いた。
また、本発明者らは、各種センサーモジュールを組み込むことにより、特定の環境や条件下にあるオブジェクト、例えば、移動しても定位置に戻ってくるというルーチンを繰り返すオブジェクトや、移動速度が比較的遅いオブジェクト(モノ、人体)などへの適用が可能であり、また、通常状態では移動しないはずのオブジェクトの移動検知や、登山者や海上遭難時の遭難者探索などに適用できる可能性を見い出した。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、LPWAに基づく通信モジュールにおけるデータ送受信に失敗したデータの送受信の再試行を可能すること、および、特定の環境や条件下にあるオブジェクトへ適用、それらオブジェクトを取り扱うアプリケーションに組み込むことができる通信装置、通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のトラッキングシステムは、追跡対象の位置、姿勢、移動速度の少なくともいずれかの変化を自律的に計測して、当該変化を自律的に外部システムに通信するトラッキングシステムであって、第1の所定時間間隔にて、前記追跡対象の位置データを取得するGPSモジュールと、第2の所定時間間隔にて、前記追跡対象に生じた加速度データ、磁気変化データ、照度変化データ、温度変化データ、時刻データの少なくともいずれかの変化を計測するセンサーモジュールと、中央制御装置と、メモリ装置と、特定通信装置とを備え、前記GPSモジュールが、前記第1の所定時間間隔にて得られた前記追跡対象の位置データの計測結果を前記メモリ装置に書き込むGPSデータ一時保存手段を備え、前記センサーモジュールが、前記第2の所定時間間隔にて得られた前記追跡対象の前記加速度データ、前記磁気変化データ、前記照度変化データ、前記温度変化データ、前記時刻データのいずれかのセンサーデータを前記メモリ装置に書き込むセンサーデータ一時保存手段を備え、前記特定通信モジュールが、Low Power Wide Area通信規格に基づく通信モジュールと、外部の特定通信アンテナの通信可能エリア内にあれば、前記外部の特定通信アンテナを介して、第3の所定時間間隔にて、前記メモリ装置に一時保存されている前記GPSデータおよび前記センサーデータのデータ通信を前記外部システムに対して行う通信制御手段を備えたことを特徴とするトラッキングシステムである。
なお、上記の前記特定通信モジュールの例としては、省電力かつ長距離での無線通信を可能としたLow Power Wide Area-networkの通信装置とすることができる。
【0011】
上記構成により、LPWA通信モジュール、GPSモジュール、センサーモジュール、中央制御装置、メモリ装置、GPSデータ一時保存手段、センサーデータ一時保存手段、通信制御手段という簡易な装置構成により、データ送受信に失敗したデータの送受信の再試行を行うことができるとともに、様々なセンサーとデータ送受信の再試行機能を用いて、特定の環境や条件下にあるオブジェクトへ適用や、それらオブジェクトを取り扱うアプリケーションへの組み込みが可能となる。
【0012】
次に、上記構成において、前記特定通信装置が、第3の所定時間間隔の経過を契機として、前記外部の特定通信アンテナを介したデータ通信ができなかった場合、前記メモリ装置に書き込まれている未送信の前記GPSデータおよび前記センサーデータの前記メモリ装置内での一時保存を継続し、次の第3の所定時間間隔の経過を契機として、前記未送信の前記GPSデータおよび前記センサーデータと、次の第3の所定時間間隔までの間に新たに書き込まれた前記GPSデータおよび前記センサーデータのデータ通信を実行することが好ましい。
LPWA通信モジュールを用いたデータ送受信が不能である状態がしばらく続くこともあるため、所定間隔で何度もデータ送受信を再試行することが好ましい。
【0013】
次に、上記のデータ送受信の再試行を確実にするため、前記GPSモジュールまたは前記中央制御装置により、前記GPSデータが計測にかかる前記第1の所定時間間隔ごとにGPSデータシリアル番号が付与されて前記メモリ装置に書き込まれ、前記センサーモジュールまたは前記中央制御装置により、前記センサーデータが計測にかかる前記第2の所定時間間隔ごとにセンサーデータシリアル番号が付与されて前記メモリ装置に書き込まれ、前記特定通信手段によって前記データ通信を行う際には前記GPSデータシリアル番号付きの前記GPSデータ、および、前記センサーデータシリアル番号付きの前記センサーデータを送信することが好ましい。
上記構成により、データ未送信のものの一時保存を継続しつつ、新たなデータの蓄積を行い、データ送信に漏れが無いように管理しやすくなる。
【0014】
例えば、データ送受信の再試行の処理において、前記特定通信装置または前記中央制御装置が、前記外部の特定通信アンテナを介して前記外部システムから、前記GPSデータシリアル番号または前記センサーデータシリアル番号を指定したデータの再送リクエストを受け付け、前記再送リクエストで指定された前記GPSデータシリアル番号付きの前記GPSデータ、および、指定された前記センサーデータシリアル番号付きの前記センサーデータを再送することが好ましい。
上記構成により、比較的コンピュータリソースに余裕がある外部のセンター側において、GPSデータシリアル番号と、センサーデータシリアル番号を手掛かりに、データ受信済みのものとデータ未受信のものを把握し、データ未受信のものを指定してデータの再送リクエストを行うことができ、トラッキングシステムと外部のセンター側のデータ送受信を効率化することができる。
【0015】
次に、本発明のトラッキングシステムを適用したアプリケーションとしては複数のものがあり得る。
例えば、追跡対象が、建設機械の可動部でかつ取り替え部材である建設機械アタッチメントであり、前記センサーモジュールが、当該追跡対象に生じた前記加速度データと前記時刻データをそれぞれ計測することが可能なものであり、前記センサーデータのデータ通信を受けた外部システムにおいて、当該建設機械アタッチメントの使用状態の時間および不使用状態の時間を検知できる建設機械アタッチメントの状態検知システムがある。
【0016】
また、例えば、追跡対象が、農機具であり、前記センサーモジュールが、当該追跡対象に生じた前記加速度データと前記時刻データをそれぞれ計測することが可能なものであり、前記センサーデータのデータ通信を受けた外部システムにおいて、当該農機具の位置、使用状態の時間および不使用状態の時間を検知できる利用した農機具の状態検知システムがある。
【0017】
また、例えば、追跡対象が、登山入山者または海洋乗船者の人間であり、当該人間が本発明にかかるトラッキングシステムを身に着けており、前記GPSデータのデータ通信を受けた外部システムにおいて、当該追跡対象の人間の位置を検知できる遭難者探索システムがある。
この遭難者探索システムにおいて、前記外部の特定通信アンテナが、飛行可能なドローンに搭載されたものとすることができる。前記遭難者が前記ドローンの搭載している前記特定通信アンテナの通信可能エリア内に居る場合に、前記特定通信手段にて前記遭難者が身に着けているトラッキングシステムからの前記データ通信により前記遭難者の位置に関する情報を得ることができる。
【0018】
また、例えば、追跡対象が、追跡対象が、通常は不動物である岩、盛り土、林、道路、橋梁、またはトンネルであり、当該不動物に本発明にかかるトラッキングシステムを装着し、前記センサーモジュールが、少なくとも当該追跡対象に生じた前記加速度データを計測することが可能なものであり、前記GPSデータおよび前記センサーデータのデータ通信を受けた外部システムにおいて、当該不動物の移動または移動の兆候を検知できる不動物の状態検知システムがある。
【発明の効果】
【0019】
本発明のトラッキングシステムによれば、LPWA通信モジュール、GPSモジュール、センサーモジュール、中央制御装置、メモリ装置、GPSデータ一時保存手段、センサーデータ一時保存手段、通信制御手段という簡易な装置構成により、データ送受信に失敗したデータの送受信の再試行を行うことができる。データ未送信のものの一時保存を継続しつつ、新たなデータの蓄積を行い、データ送信に漏れが無いように管理できる。
様々なセンサーとデータ送受信の再試行機能を用いて、特定の環境や条件下にあるオブジェクトへ適用や、それらオブジェクトを取り扱うアプリケーションへの組み込みが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のトラッキングシステム100の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】正常手順のルーチンを示すフローチャートである。
【
図3】再送が必要なデータについて、シリアル番号を添えてトラッキングシステム100に対して再送のリクエストを行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】トラッキングシステム100と外部システム300の間でACK/NCKのやりとりを行う運用を想定する場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】建設機械アタッチメントの状態検知システム400aを簡単に示す図である。
【
図6】遭難者探索システム400cの構成を簡単に示す図である。
【
図7】不動物の状態検知システム400dの構成を簡単に説明する図である。
【
図8】様々な通信規格を鳥瞰して説明する図である。
【
図9】従来の特許文献1(特開2023-61535号)に開示された建設機械作業管理システムを示す図である。
【
図10】従来の特許文献2(特開2009-44309号)に開示された無線通信端末を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明のトラッキングシステムおよびそのトラッキングシステムを適用した各種システムの実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例0022】
実施例1にかかる本発明のトラッキングシステム100の例を示す。
本発明のトラッキングシステム100は、追跡対象の位置、姿勢、移動速度の少なくともいずれかの変化を自律的に計測して、当該変化を自律的に外部システムに通信するものである。
図1は、本発明のトラッキングシステム100の構成例を模式的に示す図である。トラッキングシステム100内部の構成をブロックとして模式的に示しており、電気回路や細かい構成要素は図示を省略している。トラッキングシステム100は基板上に形成され、当該基板がバッテリとともに筐体の中に収められている構成が想定されるが、ここでは説明を省略する。
【0023】
図1に示すように、本実施例1の構成例では、トラッキングシステム100は、GPSモジュール110、センサーモジュール120,中央制御装置130、メモリ装置140、特定通信装置150を備えた構造となっている。
図1には、追跡対象200、外部システム300、外部の特定通信アンテナ310も併せて図示されている。
【0024】
GPSモジュール110は、第1の所定時間間隔にて、追跡対象200の位置データを取得するモジュールである。
GPSとは、上空にある数個のGPS衛星からの受信信号を利用して現在位置を知る全地球測位システムであるが、GPSモジュール110は、このGPS衛星からの信号を受信する機能を備えたモジュールである。近年このGPS衛星からの信号を受信するGPSモジュール110は小型化が進み、数センチ程度の大きさとなっている。
GPSモジュール110は、第1の所定時間間隔にて得られた追跡対象の位置データの計測結果を中央制御装置130に出力し、中央制御装置130がGPSデータ一時保存手段131を備えており、GPSデータ一時保存手段131がGPSデータをメモリ装置140に書き込む。
第1の所定時間間隔は限定されないが、例えば、数分、数時間など自在に設定できる。ここでは、例えば、20分とすると、20分に1回、GPSモジュール110で取得した位置情報をGPSデータ一時保存手段131によりメモリ装置140に書き込むルーチンとなる。
【0025】
センサーモジュール120は、第2の所定時間間隔にて、追跡対象200に生じたセンシング対象のデータを計測する。センシングデータとしては、例えば、加速度データ、磁気変化データ、照度変化データ、温度変化データ、時刻データなどがあり得る。
【0026】
加速度データをセンシングするセンサは、いわゆるジャイロセンサとして提供されており、近年このジャイロセンサは小型化が進み、数センチ程度の大きさとなっている。
【0027】
磁気変化データをセンシングするセンサは、磁気センサとして提供されており、一般的に磁界の大きさや変化量を電気信号として変換するセンサである。磁気センサにはコイル、リードスイッチ、ホール素子、MRセンサー素子、超電導量子干渉素子などがある。近年この磁気センサも小型化が進み、数ミリから数センチ程度の大きさとなっている。
【0028】
照度変化データをセンシングするセンサは、いわゆる照度センサとして提供されており、周囲の明るさを感知するセンサである。フォトダイオードとトランジスタが一体化した構造であり、受光素子に入射した光を電流に変換し、明るさを検知する仕組みである。照度センサーは、人間の視感度に近い光学特性を持ち、センサ箇所の光環境の変化を捉えることができ、例えば、追跡対象200が屋外で日光に晒されているのか、屋内で陰に隠れているのかなどを検知することができる。
【0029】
温度変化データをセンシングするセンサは、いわゆる温度センサとして提供されており、周囲の温度を感知するセンサである。接触型と非接触型があるが、本発明では限定されず、用途やアプリケーションに応じてどちらでも搭載可能である。トランジスタやダイオードの温度特性を利用した温度センサや、半導体の抵抗温度特性を利用したサーミスタ型の温度センサ、熱電対に生じる熱起電力(ゼーベック効果)を利用した温度センサ、サーモグラフィなどに利用される放射温度センサで、赤外線を受けたセンサ素子の温度変化を、抵抗変化、熱起電力、焦電効果などにより電気信号として出力するものなどがある。
近年、温度センサは小型化が進み、数センチ程度の大きさとなっている。
【0030】
時刻データはいわゆるタイマで取得可能であり、近年このタイマは小型化が進み、チップ化されている。
【0031】
センサーモジュール120は、第2の所定時間間隔にて得られた追跡対象200をセンシングした結果としての加速度データ、磁気変化データ、照度変化データ、温度変化データ、時刻データのいずれかまたは組み合わせのセンサーデータを中央制御装置130に出力し、中央制御装置130がセンサーデータ一時保存手段132を備えており、センサーデータ一時保存手段132がセンサーデータをメモリ装置140に書き込む。
【0032】
センサーモジュール120が、センシングを実行する第2の所定時間間隔であるが、限定されないが、例えば、数分、数時間など自在に設定できる。ここでは、例えば、20分とすると、20分に1回、センサーモジュール120で取得したセンサデータをセンサデータ一時保存手段132によりメモリ装置140に書き込むルーチンとなる。
なお、この例では、GPSモジュール110から位置データを取得してGPSデータ一時保存手段131がメモリ装置140に書き込む間隔である第1の所定時間間隔と、センサーモジュール120がセンシングしたセンサデータ取得してセンサーデータ一時保存手段132がメモリ装置140に書き込む間隔である第2の所定時間間隔が同じである例となっているが、同じ時間間隔でも良く、異なる時間間隔でも良い。ここでは同じ時間間隔とする。
【0033】
中央制御装置130は、マイクロプロセッサベースのコントローラICで、一般のパソコンなどに搭載されているCPUでも良いが、一般のパソコンのCPUは過剰スペックであり、本発明のトラッキングシステム100に搭載する中央制御装置130としては、処理速度が低速で処理能力も制限された低仕様のもので良い。なお、小型化されている方が良く、数センチ程度のチップ化されていることが好ましい。
この構成例では、中央制御装置130は、GPSデータ一時保存手段131と、センサーデータ一時保存手段132を備えた例となっている。
GPSデータ一時保存手段131は、第1の所定時間間隔にて得られた追跡対象の位置データの計測結果をメモリ装置140に書き込むものである。
センサーデータ一時保存手段132は、第2の所定時間間隔にて得られた追跡対象をセンシングして得られたセンサーデータの計測結果をメモリ装置140に書き込むものである。
なお、これらのGPSデータ一時保存手段131とセンサーデータ一時保存手段132は、中央制御装置130をそのように機能させるプログラムとして与えられ、内部メモリまたは外部のメモリ装置140に記憶されているもので良い。
【0034】
メモリ装置140は、汎用的なメモリ装置で良い。メモリ容量は小さくとも良い。
中央制御装置130に組み込まれた内部メモリを活用しても良いが、この構成例では、ある程度の容量を確保するため、外部メモリとして搭載する。
【0035】
特定通信装置150は、特定通信モジュール151と、通信制御手段152を備えている。
通信モジュール151は、LPWA(Low Power Wide Area)通信規格でデータ送受信可能な通信モジュールである。
LPWA通信規格のものとしては、数種類あり、例えば、Sigfox、LoRaWAN、ELTRES、ZETA、LTE-M、NB-IoTなどが知られており、本発明ではそれらのいずれかに限定されないが、ここでは、例えば、Sigfoxを用いた通信モジュール151とする。
つまり、この例では、特定通信装置150の通信モジュール151はSigfoxの通信規格に適合するものであり、トラッキングシステム100の通信能力は、通信周波数サブGHz帯を利用し、最大通信速度100bpsで、通信距離は数十km程度の通信エリアを持つものとなっている。
【0036】
特定通信装置150の通信制御手段152は、外部の特定通信アンテナ310の通信可能エリア内にあれば、外部の特定通信アンテナ310を介して、第3の所定時間間隔にて、メモリ装置140に一時保存されているGPSデータおよびセンサーデータのデータ通信を外部システム300に対して行うものである。
【0037】
特定通信装置150が、外部システム300に対してメモリ装置140に一時保存されているGPSデータおよびセンサーデータのデータ通信を実行する第3の所定時間間隔であるが、限定されず、例えば、数分、数時間など自在に設定できる。ここでは、例えば、20分とする。つまり、20分に1回、メモリ装置140に書き込まれているGPSデータおよびセンサーデータを外部システム300に通信するルーチンとなる。
なお、この例では、特定通信装置150がメモリ装置140に一時保存されているGPSデータおよびセンサーデータのデータ通信を実行する第3の所定時間間隔と、GPSモジュールが位置データを取得してメモリ装置140に書き込む間隔である第1の所定時間間隔と、センサーモジュール120がセンシングしたセンサデータ取得してメモリ装置140に書き込む間隔である第2の所定時間間隔が同じ例となっているが、同じ時間間隔でも良く、異なる時間間隔でも良い。ここでは同じ時間間隔とする。
以上がトラッキングシステム100の構成の説明である。
【0038】
次に、外部システム300および外部の特定通信アンテナ310についても説明する。
外部の特定通信アンテナ310は、特定通信装置150の通信モジュール151と特定周波数などでデータの送受信が可能なアンテナである。ここでは、例えば、通信モジュール151がSigfoxの通信規格に適合するものであるとすると、外部の特定通信アンテナ310はSigfoxの通信(通信周波数サブGHz帯)をキャッチできるものであれば良い。
外部の特定通信アンテナ310は土地やビルに固設されたものでも良く、移動体に搭載されたものでも良い。
外部システム300は、外部の特定通信アンテナ310を介して通信可能なもので良く、Sigfoxの通信規格で想定されるセンター側や中継システムからデータ転送を受けられるものでも良い。なお、外部の特定通信アンテナ310からSigfoxのセンターシステムや中継システムまで、送受信データが複数の外部の特定通信アンテナ310間をリレーするものであっても良い。
【0039】
以下、本発明のトラッキングシステム100を用いて追跡対象200から得たGPSデータおよびセンサーデータのデータ通信の基本的な流れについて説明する。
なお、実際の運用にあたっては、追跡対象200の違いや運用の違いに応じて、種々のバリエーションがあるが、それは実施例2以降において説明することとし、ここでは、基本的な流れを説明する。
【0040】
準備として、追跡対象200に対して本発明のトラッキングシステム100を装着する。
追跡対象200の種類にもよるが、追跡対象200に貼付したり、追跡対象200に巻き付けたり、追跡対象200の筐体内に搭載したり、追跡対象200である人体の衣服やライフジャケットなどに収納してもらう。バッテリや電池などについて十分な容量を確保せしめることが好ましい。
正常手順としては、
図2に示す正常手順1から正常手順11の手順の繰り返しが基本である。
【0041】
なお、第1の所定時間間隔と第2の所定時間間隔は異なる時間間隔でも良く同じ時間間隔でも良い。第3の所定時間間隔は、第1の所定時間間隔と第2の所定時間間隔の公倍数であるものとする。つまり、第1の所定時間間隔、第2の所定時間間隔、第3の所定時間間隔が、それぞれ15分、10分、30分とすると、30分経過の間にGPSデータはメモリ装置140に2回分のGPSデータが記憶され、センサーデータはメモリ装置140に3回分のセンサーデータが記憶される。そして30分に1回の頻度でそれら2回分のGPSデータと3回分のセンサーデータが特定通信装置150によりメモリ装置140内のデータが送信されることとなる。
図2のフローチャートでは、第1の所定時間間隔(例えば15分)で繰り返されるGPSモジュール110に関する正常手順1から正常手順5と、第2の所定時間間隔(例えば10分)で繰り返されるセンサーモジュール120に関する正常手順6から正常手順10が独立しており、第3の所定時間間隔(例えば30分)の経過で正常手順11が実行される。
【0042】
[正常手順0:S0]
直近の正常手順11が完了した後、時間経過がゼロクリアされる。
【0043】
[正常手順1:S1]
第1の所定時間間隔(例えば15分)にて、GPSモジュール110によって、追跡対象200の位置データを取得する。
【0044】
[正常手順2:S2]
GPSモジュール110は中央制御装置130に手順1で取得した追跡対象200の位置データを出力する。
【0045】
[正常手順3:S3]
GPSデータ一時保存手段131が位置データをメモリ装置140に書き込み、一時保存を行う。
【0046】
[正常手順4:S4]
中央制御装置130は、第1の所定時間が経過したかをカウントし、第1の所定時間が経過していない場合(ステップS4:N)は時間待ちをし、第1の所定時間が経過すれば(ステップS4:Y)は正常手順5に進む。
【0047】
[正常手順5:S5]
中央制御装置130は、第3の所定時間(例えば30分)が経過したかをカウントし、第3の所定時間が経過していない場合(ステップS5:N)は正常手順1に戻って次のGPSデータの取得を実行し、第3の所定時間が経過すれば(ステップS5:Y)は正常手順11に進む。
【0048】
[正常手順6:S6]
第2の所定時間間隔(例えば10分)にて、センサーモジュール120によって追跡対象200に生じた変化を計測する。センシングデータとしては、加速度データ、磁気変化データ、照度変化データ、温度変化データ、時刻データなどがあり得る。運用に応じていずれか一種のデータを単独に取得しても良いし、複数種類のデータを複合的に取得しても良い。
【0049】
[正常手順7:S7]
センサーモジュール120は中央制御装置130に手順3で取得した追跡対象200のセンシングデータを出力する。
【0050】
[正常手順8:S8]
中央制御装置130のセンサーデータ一時保存手段132は、手順7で取得した追跡対象200に関するセンシングデータをメモリ装置140内に書き込み、一時保存する。
【0051】
[正常手順9:S9]
中央制御装置130は、第1の所定時間が経過したかをカウントし、第2の所定時間が経過していない場合(ステップS9:N)は時間待ちをし、第2の所定時間が経過すれば(ステップS9:Y)は正常手順10に進む。
【0052】
[正常手順10:S10]
中央制御装置130は、第3の所定時間(例えば30分)が経過したかをカウントし、第3の所定時間が経過していない場合(ステップS10:N)は正常手順6に戻って次のセンサーデータの取得を実行し、第3の所定時間が経過すれば(ステップS10:Y)は正常手順11に進む。なお、第3の所定時間は正常手順1から5のGPSデータの取得の流れでも、正常手順6から10のセンサーデータ取得の流れでも同じ時間間隔なので、正常手順5から正常手順11へ移行するタイミングと、正常手順10から正常手順11へ移行するタイミングは同時となる。
【0053】
[正常手順11:S11]
特定通信装置150は、第3の所定時間間隔(例えば30分)にて、通信制御手段152の制御のもと、特定通信モジュール151を用いて外部の特定通信アンテナ310を介して、メモリ装置140に一時保存されているGPSデータおよびセンサーデータのデータ通信を外部システム300に送信する。
ここで、トラッキングシステム100が、外部の特定通信アンテナ310の通信可能エリア内にあれば、外部の特定通信アンテナ310を介して外部システム300に対して、第3の所定時間間隔(例えば30分)にて、メモリ装置140に一時保存されていたGPSデータおよびセンサーデータのデータ通信が実行できる。
この正常手順1から正常手順11が、基本的な繰り返し手順である。
【0054】
なお、この正常手順11において、外部システム300へのデータ送受信が失敗した場合は、別途、並行して再送に関する補助ルーチン処理が立ち上がるが、その間もGPSデータ取得、センサデータ取得は継続する必要があるため、この基本的な正常手順1から正常手順11の繰り返し処理は維持されるものとする。
なお、GPSデータおよびセンサーデータが外部システム300において正常に受信されない場合とは、例えば、トラッキングシステム100が、外部の特定通信アンテナ310の通信可能エリア内にない場合や、悪天候や通信障害により全部のデータまたは一部のデータが欠けてしまう場合などがあり得る。
【0055】
図2に示した正常手順1から正常手順11では、メモリ装置140に一時保存されていたGPSデータおよびセンサーデータの消し込みについては触れられていないが、データ通信が外部の特定通信アンテナ310を介して外部システム300に対して正常に受信されたことが確認できるまでは再送信の必要があり得るので、メモリ装置140内に所定の時間経過まで一時保存を継続するか、または、外部システム300から正常受信の通知があるまでメモリ装置140に一時保存を継続するなどの運用が好ましい。
【0056】
[再送に関する補助ルーチン処理]
一般のLPWAでは、LPWAと外部システム300間でデータ送受信の成功を確認し合ういわゆるACK/NCKのやりとりでの確認は想定されていない。この実施例では、本発明のトラッキングシステム100において、再送に関する補助ルーチン処理として、外部システム300間でデータ送受信の成功を確認し合ういわゆるACK/NCKのやりとりはない運用を想定する場合(ケース1)と、ACK/NCKのやりとりを行う運用を想定する場合(ケース2)に分けて以下説明する。
【0057】
[再送に関する補助ルーチン処理:ACK/NCKのやりとりはない運用(ケース1)]
[第1のケースの再送手順]
第1のケースの場合の再送手順を説明する。
第1のケースの場合のエラー対策は、外部システム300側でGPSデータおよびセンサーデータを管理し、受信されていないGPSデータおよびセンサーデータを特定してトラッキングシステム100に再送を要求し、トラッキングシステム100側は外部システム300からの再送要求に従い、該当するGPSデータおよびセンサーデータを再送する。そのために、データ送受信に失敗したデータを確実に特定するためデータID番号を付けてシーケンス制御を行う工夫がある。
つまり、シーケンス制御を行うため、GPSデータについては、第1の所定時間間隔(例えば15分)ごとに計測された各々のGPSデータに対して、GPSモジュール110または中央制御装置130によってGPSデータシリアル番号を付与することでシーケンス管理を行う。正常手順3においてGPSデータシリアル番号が付与された形でGPSデータをメモリ装置140に書き込まれる。
【0058】
また、センサーデータについては、第2の所定時間間隔(例えば10分)ごとに計測された各々のセンサーデータに対して、センサーモジュール120または中央制御装置130によってセンサーデータシリアル番号を付与することで、シーケンス管理を行う。上記の正常手順8においてセンサーデータシリアル番号が付与された形でセンサーデータをメモリ装置140に書き込まれる。
上記の正常手順11において、特定通信装置150によってデータ通信を行う際にはGPSデータシリアル番号付きのGPSデータ、および、センサーデータシリアル番号付きのセンサーデータが送信される。
【0059】
ここで、正常手順11のあと、特定通信装置150はデータ送受信が失敗したか否かは分からないが、この第1のケースでは、正常手順11まで完了しても、後から外部システム300から再送リクエストを受ける可能性があるので、データ送受信が完了したGPSデータまたはセンサーデータもメモリ装置140から消去せずに一時保存を継続する。
【0060】
外部システム300においてシーケンス制御が行われ、外部システム300は受信したデータのシーケンス順で欠けているものがあるかどうかを把握する。欠けているものがなければ、そのまま特に再送リクエストは行わない。
ここで、外部システム300がそれまでに受信したGPSデータおよびセンサーデータのシーケンス順で欠けているものがあることを把握したとする。
外部システム300は、再送が必要なデータについて、GPSデータシリアル番号またはセンサーデータシリアル番号を添えてトラッキングシステム100に対して再送のリクエストを行う。その処理の流れを
図3に示す。
【0061】
[エラー時手順1-1:S21]
特定通信装置150の通信制御手段152または中央制御装置130が、外部システム300からGPSデータシリアル番号またはセンサーデータシリアル番号を指定したデータの再送リクエストの受信をモニタする(S21)。
【0062】
[エラー時手順1-2:S22]
再送リクエストが来た場合には、特定通信装置150の通信制御手段152または中央制御装置130は、次に訪れる第3の所定時間間隔の経過を契機として、再送リクエストで指定されたGPSデータシリアル番号またはセンサーデータシリアル番号が付与されているGPSデータまたはセンサーデータを含めて再送する(S22)。
【0063】
[エラー時手順1-3:S23]
この第1のケースの場合は、このエラー時手順1-2実行後も、外部システム300でデータ受信が成功したのか再び失敗しているのかは分からない。そこで、メモリ装置140内に一時保存されていたGPSデータおよびセンサーデータを消去せず、そのまま一時保存を継続するが、延々と待ち続けるのではなく、所定の再送受付時間(例えば、12時間や24時間)を経過したかを確認する(S23)。
再送リクエストが来ていない場合(S21:N)も同様、このエラー時手順1-3(S23)に移行し、所定の再送受付時間(例えば、12時間)を経過したかを確認する(S23)。
所定の再送受付時間が経過していなければ(S23:N)、再送リクエストの受信のモニタ状態に戻る(S21へ戻る)
【0064】
[エラー時手順1-4:S24]
上記のエラー時手順1-3で、一時保存の期間が相当期間(例えば、12時間や24時間の所定時間)に達すれば、外部システム300からの再送リクエストは来ないと想定し、メモリ装置140内での一時保存を停止し、該当するデータを消去する。なお、一時保存の期間をどのぐらいとするかは、メモリ装置140の容量や運用などにより決めれば良い。
【0065】
[再送に関する補助ルーチン処理:ACK/NCKのやりとりがある運用(ケース2)]
[第2のケースの再送手順]
第2のケースの場合の再送手順を説明する。
上記したように、一般のLPWAでは、LPWAと外部システム300間でデータ送受信の成功を確認し合ういわゆるACK/NCKのやりとりでの確認は想定されていない。しかし、この実施例では、本発明のトラッキングシステム100において、再送に関する補助ルーチン処理として、トラッキングシステム100と外部システム300の間でACK/NCKのやりとりを行う運用を想定する場合(ケース2)も可能である。その場合の処理の流れは
図4に示す以下の流れのようになる。
この第2のケースの場合のエラー対策は、毎回、トラッキングシステム100と外部システム300側で、送受信の成功/失敗を確認し合うので、ACKが返ってこずに受信されていないGPSデータおよびセンサーデータはトラッキングシステム100側から再送する。そのためデータID番号を付けることは必須ではないが、データID番号があった方が役に立つことが多いため、ここではデータID番号は付与されている前提でも良い。
【0066】
[第2のケースの再送手順]
[エラー時手順2-1]
上記の正常手順11のあと、特定通信装置150または中央制御装置130は、外部システム300からACKが返ってくることをモニタする(S31)。
【0067】
[エラー時手順2-2]
外部システム300からACKが返ってくれば(S31:Y)、一時保存を継続していたGPSデータおよびセンサーデータを含めてデータ送受信が正常に実行できたので、メモリ装置140内に一時保存されていたGPSデータおよびセンサーデータを消去する(S32)。
その後、再び、次のデータの送受信時のACKのモニタ待ちに向け、エラー時手順2-1へ戻る。
【0068】
[エラー時手順2-3]
特定通信装置150が特定通信モジュール151によってデータ通信できなかった場合、つまり、外部システム300からACKが返ってこなかった場合(S31:N)、外部システム300からのACKの返信が何らかの理由で遅れている可能性があるため、メモリ装置140に書き込まれている未送信のGPSデータおよびセンサーデータのメモリ装置140内での一時保存を継続しつつ、所定のACK待ち時間の経過をモニタする(S33)。
所定のACK待ち時間がまだ経過していない場合は(S33:N)、特定通信装置150または中央制御装置130は、外部システム300からACKが返ってくることをモニタする状態へ戻る(S31へ)。
所定のACK待ち時間がまだ経過した場合は(S33:Y)、エラー時手順2-4:S34に進む。
【0069】
[エラー時手順2-4:S34]
次の第3の所定時間間隔(例えば30分)の経過を契機として、メモリ装置140内に一時保存が継続されているACKが返ってこず未送信扱いのGPSデータおよびセンサーデータの再送処理を特定通信モジュール151に実行させる(S34)。なお、並行して
図2に示した正常手順11により、第3の所定時間間隔までの間に新たにメモリ装置140内に書き込まれたGPSデータおよびセンサーデータのデータ通信も特定通信モジュール151に実行させる(S11)。
その後、特定通信装置150または中央制御装置130は、外部システム300からACKが返ってくることをモニタする状態へ戻る(S31へ)。
【0070】
なお、再送したGPSデータおよびセンサーデータについて、再送にも関わらず今回もACKが返ってこない場合(S31:N)は、再びデータ送受信に失敗している可能性があるのでメモリ装置140に書き込まれている未送信のGPSデータおよびセンサーデータのメモリ装置140内での一時保存を継続しつつ、次の所定のACK待ち時間の経過をモニタし(S33)、ACKが返ってこないまま所定のACK待ち時間が経過すれば(S33:Y)、もう一度再送する(S34)。
ACKが返ってくるまでこのエラー時手順2-1からエラー時手順2-4を繰り返す。
【0071】
外部システム300からACKが返ってくれば(S31:Y)、該当するGPSデータおよびセンサーデータはメモリ装置140から削除する消し込みを行なう(S32)
このようにこの第2のケースでは、メモリ装置140内に一時保存されているデータのうち、送受信が完了のものと、未了のものを中央制御装置130または特定通信装置150が自ら管理することとなる。
【0072】
以上、実施例1にかかるトラッキングシステム100により、GPSモジュール、センサーモジュール、中央制御装置、メモリ装置、GPSデータ一時保存手段、センサーデータ一時保存手段、通信制御手段(LPWA通信モジュール)という簡易な装置構成により、GPSデータやセンサーデータを収集し、外部システム300に対して送信することができ、データ送受信に失敗したデータの送受信の再試行も行うことができる。データ未送信のものの一時保存を継続しつつ、新たなデータの蓄積を行い、データ送信に漏れが無いように管理できる。