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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176448
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20241212BHJP
   B61D 47/00 20060101ALI20241212BHJP
   B61B 3/02 20060101ALI20241212BHJP
   B66C 17/00 20060101ALI20241212BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20241212BHJP
   B65G 1/00 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B61D47/00 A
B61B3/02 B
B66C17/00
F16B5/02 E
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094985
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】杉野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】奥村 康之
(72)【発明者】
【氏名】安部 健史
【テーマコード(参考)】
3D101
3F022
3F203
3J001
【Fターム(参考)】
3D101BA05
3D101BB16
3D101BB36
3F022EE05
3F022KK12
3F022LL12
3F022MM57
3F203AA10
3F203BA04
3F203CB04
3F203DA08
3F203EB05
3J001FA11
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA03
3J001KA21
3J001KB05
(57)【要約】
【課題】搬送動作に伴う振動等に起因してカバーが破損するのを抑制することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置は、走行部と、走行部に懸下された本体部(100)と、本体部(100)を覆うとともに、当該本体部(100)に固定するための固定穴(CRA2)を有する後方カバー(CR)と、固定穴(CRA2)に連通可能な連通穴(HA2)が設けられた補強部材(H)と、を備える。後方カバー(CR)は、固定穴(CRA2)及び連通穴(HA2)を挿通したネジ(B2)によって補強部材(H)とともに本体部(100)に締結されている。補強部材(H)の端部(HT)は、後方カバー(CR)から離間している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って走行するための走行部と、
前記走行部に懸下された本体部と、
前記本体部を覆うとともに、当該本体部に固定するための固定穴を有するカバーと、を備えた搬送装置であって、
前記固定穴に連通可能な連通穴が設けられた補強部材を更に具備しており、
前記カバーは、前記固定穴及び前記連通穴を挿通した固定部材によって前記補強部材とともに前記本体部に締結されており、
前記補強部材の端部は、前記カバーから離間している、搬送装置。
【請求項2】
前記補強部材は、細長の板状部材であり、
前記カバーと前記本体部との間に設けられている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記補強部材の少なくとも一方の端部において、前記補強部材は最端部に向かうにつれて前記カバーから離間する屈曲形状をなしている、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記カバーと前記補強部材との間に設けられた接着剤層を、さらに備えている、請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や倉庫等において、無人搬送装置(物品搬送車)を利用した物品の自動搬送が実用化されている。また、このような搬送装置として、例えば、天井に敷設された軌道に沿って走行する天井搬送車が知られている。また、このような天井搬送車においては、その走行方向である、前後方向にカバーを設けることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-088394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送装置において、搬送動作に伴う振動等に起因するカバーの破損対策については、改善の余地がある。
【0005】
本開示は、搬送動作に伴う振動等に起因してカバーが破損するのを抑制することができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の搬送装置は、軌道に沿って走行するための走行部と、前記走行部に懸下された本体部と、前記本体部を覆うとともに、当該本体部に固定するための固定穴を有するカバーと、を備えた搬送装置であって、前記固定穴に連通可能な連通穴が設けられた補強部材を更に具備しており、前記カバーは、前記固定穴及び前記連通穴を挿通した固定部材によって前記補強部材とともに前記本体部に締結されており、前記補強部材の端部は、前記カバーから離間している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、搬送動作に伴う振動等に起因してカバーが破損するのを抑制することができる搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る搬送装置の斜視図である。
図2】上記搬送装置を備えた搬送システムの構成例の斜視図である。
図3図1に示した後方カバーを取り外した状態の上記搬送装置の斜視図である。
図4】上記後方カバーの構成例の斜視図である。
図5図3に一点鎖線の円Xで囲んだ部分における、前方カバーの固定例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔一実施形態〕
以下、本開示の一実施形態について、図1乃至図5を参照して詳細に説明する。まず、図1及び図2を用いて、本開示の一実施形態に係る搬送装置1と当該搬送装置1を備えた搬送システムSについて説明する。以下の説明では、図1の両矢印で示されるように、搬送装置1の上下方向、前後方向、及び左右方向を定義する。なお、図2に示すように、搬送システムSにおいては、搬送装置1は、前後方向のいずれか一方向に走行し得る。
【0010】
<搬送装置1及び搬送システムSの構成>
図1は、本開示の一実施形態に係る搬送装置1の斜視図である。図2は、上記搬送装置1を備えた搬送システムSの構成例の斜視図である。なお、図1では、図面の簡略化のために、軌道としての走行レール50の図示は省略している。
【0011】
図1及び図2に示すように、搬送装置1は、例えば、天井または天井近傍に敷設された走行レール50に沿って物品を搬送する天井搬送車等である。なお、搬送装置1は天井搬送車に限定されず、例えば、床面に敷設されたレールに沿って物品を搬送する搬送車等であってもよい。換言すれば、搬送システムSは、搬送装置1と、搬送装置1が走行可能な走行レール50と、を備える。
【0012】
搬送装置1は、走行レール50に沿って走行するための走行部10を備える。また、搬送装置1は、走行部10に懸下された本体部100として、例えば、台車部20と、移載機部30と、落下防止部40と、を備える。落下防止部40は搬送装置1の前方及び後方に設けられている。搬送装置1は、本体部100の前方において、本体部100の一部を構成する前方の落下防止部40を覆う前方カバーCFを備えている。また搬送装置1は、本体部100の後方において、本体部100の一部を構成する後方の落下防止部40を覆う後方カバーRFと、を備える。走行部10は、前方の走行車輪が設けられる前方ボギー部及び後方の走行車輪が設けられる後方ボギー部を有し、両ボギー部に搭載された走行モータによって走行レール50上を走行する。
【0013】
台車部20は、スライド駆動部と、旋回駆動部と、昇降駆動部と、を備える。また、台車部20の各部は、図示しない制御部によって制御される。具体的にいえば、制御部は、スライド駆動部を制御して、移載機部30で把持した物品を搬送装置1の進行方向に対して垂直にスライドさせる。また、制御部は、旋回駆動部を制御して、載置された物品を搬送装置1の旋回中心軸に対して旋回させる。また、制御部は、昇降駆動部を制御して、移載機部30を台車部20と移載ポートとの間で昇降させる。
【0014】
<前方カバーCF及び後方カバーCRの構成例>
次に、図3乃至図5も参照して、本実施形態の搬送装置1のカバーとしての前方カバーCF及び後方カバーCRについて具体的に説明する。図3は、図1に示した後方カバーCRを取り外した状態の上記搬送装置1の斜視図である。図4は、上記後方カバーCRの構成例の斜視図である。図5は、図3に一点鎖線の円Xで囲んだ部分における、前方カバーCFの固定例を説明する図である。
【0015】
また、搬送装置1では、走行部10の走行動作に伴って、振動が、例えば、前方及び後方の落下防止部40にそれぞれ設けられた前方カバーCF及び後方カバーCRを含む当該搬送装置1全体に発生することがある。しかしながら、本実施形態の搬送装置1では、後に詳述するように、振動が生じたとしても、その影響を極力排除して搬送装置1、ひいては搬送システムSに障害が生じるのを極力抑制できるよう構成されている。
【0016】
前方カバーCFは、台車部20の前方に設けられた落下防止部40の表面を覆うように当該落下防止部40に固定されている。また、後方カバーCRは、台車部20の後方に設けられた落下防止部40の表面を覆うように当該落下防止部40に固定されている。これらの前方カバーCF及び後方カバーCRは、例えば、塩化ビニル樹脂等の硬質及び軽量の合成樹脂材を用いて構成されており、台車部20の前方及び後方の落下防止部40をそれぞれ覆うことによって本体部100を保護するようになっている。
【0017】
また、後方カバーCRは、図3及び図4に示すように、被覆対象の落下防止部40の外側表面の形状に応じた、湾曲形状を有するように構成されており、2つの補強部材Hによって当該落下防止部40に固定されている。
【0018】
具体的にいえば、後方カバーCRの側面部が、落下防止部40の前方から左右方向にかけて落下防止部40の外形を覆う形状を有するとともに、後端部には前後方向及び上下方向に平行な平面部分を有している。
【0019】
また、後方カバーCRにおいては、図4に示すように、例えば、前方の落下防止部40に固定するための2つの固定穴CRA1及びCRA2が、上述の各端部の平面部分の上端部側及び下端部側にそれぞれ形成されている。後方カバーCRにおいては、固定穴CRA1及びCRA2に対して、図3に示すように、2つのネジB1及びB2がそれぞれ挿通することにより、補強部材Hを介在させて落下防止部40に取り付けられている。
【0020】
また、後方カバーCRにおいては、固定穴CRA2の下方の下端部側で上記平面部分と連続的に設けられた湾曲部と、当該湾曲部に連続的に、かつ、後方の落下防止部40の底部を覆う底面部分とが設けられている。また、湾曲部においては、上下方向において、下端部側の最先端部、すなわち上記平面部分とは反対側の端部が後方の落下防止部40側に所定の曲率で湾曲するように形成されている。
【0021】
後方カバーCRの取付部分と前方カバーCFの取付部分とは、同様の形状を有しており、前方カバーCFは、後方カバーCRと同様に、2つのネジB1及びB2によって補強部材Hとともに前方の落下防止部40に固定されている。
【0022】
このように前方カバーCF及び後方カバーCRは、それぞれ対応する落下防止部40の前面及び後面を覆うように設けられている。このため、前方カバーCF及び後方カバーCRは、上記のような合成樹脂材を用いたことによる軽量化が図られている点とも相まって、走行部10による搬送装置1の走行動作(搬送動作)を阻害するのを極力抑制しつつ、落下防止部40、ひいては本体部100を保護可能となっている。
【0023】
<補強部材Hの構成例>
補強部材Hは、図4に示すように、細長の板状部材を用いて構成されている。具体的にいえば、補強部材Hには、例えば、ステンレス等の金属板または合成樹脂板が使用されている。また、補強部材Hは、図4に矢印にて図示するように、補強対象の前方カバーCFまたは後方カバーCRの上述の各端部の平面部分の落下防止部40側に設けられる。これにより、補強部材Hは、対応する前方カバーCFまたは後方カバーCRを補強する。
【0024】
換言すれば、補強部材Hは、前方カバーCF及び後方カバーCRに各々取り付けられることによって前方カバーCF及び後方カバーCRの各強度を向上させる。なお、補強部材Hにおいては、前方カバーCF及び後方カバーCRの強度よりも大きい強度を有することが前方カバーCF及び後方カバーCRの各強度を容易に向上させること可能となる点で好ましい。なお、ステンレスを用いた場合、補強部材Hの厚みは、例えば、0.3mm~3.0mm程度の範囲内の値とすることが、強度の向上及び重量化の抑制の両立を容易に図ることができる点で好ましい。
【0025】
また、補強部材Hは、図4に示すように、固定穴CRA1及びCRA2にそれぞれ連通可能な連通穴HA1及びHA2が設けられている。補強部材Hにおいては、図3に示すように、2つのネジB1及びB2が固定穴CRA1及びCRA2と連通穴HA1及びHA2をそれぞれ挿通することにより、当該補強部材Hは、前方カバーCFまたは後方カバーCRと落下防止部40との間に固定されている。
【0026】
具体的にいえば、図5に示すように、補強部材Hは、補強本体部H1と、補強本体部H1の端部に設けられた屈曲部HTと、を備える。補強本体部H1は、図5に例示するように、前方カバーCFの上記平面部分CF1に平行な平板状部であり、接着剤層としての両面テープTを介在させて平面部分CF1に固着される。
【0027】
また、屈曲部HTは、図5に例示するように、上下方向において、前方カバーCFの湾曲部CFTと離間するように構成されている。具体的にいえば、前方カバーCFにおいては、後方カバーCRと同様に、図5に示すように、固定穴CFA2の下方の下端部側で平面部分CF1と連続的に設けられた湾曲部CFTと、湾曲部CFTに連続的に、かつ、前方の落下防止部40の底部を覆う底面部分CF2とが設けられている。また、湾曲部CFTにおいては、上下方向において、下端部側の最先端部、すなわち平面部分CF1とは反対側の端部が前方の落下防止部40側に所定の曲率で湾曲するように形成されている。一方、補強部材Hにおいては、屈曲部HTは、その最先端部に向かうにつれて前方カバーCFの湾曲部CFTから離間する屈曲形状をなしている。
【0028】
より具体的にいえば、補強部材Hにおいては、図5に例示するように、上下方向において、屈曲部HTの曲率は、湾曲部CFTの曲率よりも大きい値が選択されることにより、屈曲部HTが湾曲部CFTから離間して湾曲部CFTよりも落下防止部40側に位置するようになっている。但し、図5に示すように、落下防止部40の下端部には、補強部材Hとの接触を回避するための凹部が設けられており、補強部材Hは当該下端部に当接しないように構成されている。また、前方カバーCFにおいては、湾曲部CFTに連続的に形成されるとともに、落下防止部40の下端部を覆う底面部分CF2が設けられている。
【0029】
また、補強部材Hにおいては、上端部側においても、下端部側と同様に、図4に示すように、最端部に向かうにつれて後方カバーCRから離間する屈曲形状をなしている。
【0030】
以上のように補強部材Hにおいては、上端部側及び下端部側において、前方カバーCF及び後方カバーCRから離間する屈曲形状をなしているので、補強部材Hの上端部及び下端部が前方カバーCF及び後方カバーCRの各端部と接触することを防ぐことができる。したがって、本実施形態では、補強部材Hによる前方カバーCF及び後方カバーCRの各破損の発生を確実に抑制することができる。
【0031】
また、図5に例示するように、ネジB2は、ワッシャーW2、前方カバーCFの固定穴CFA2、両面テープTの貫通穴TA2、補強部材Hの連通穴HA2、及び雌ネジまたはポップリベットW1を順次挿通して落下防止部40に固定されている。ネジB1もまた、ネジB2と同様に、落下防止部40に固定されている。これらのネジB1及びB2は、例えば、固定穴CFA1及びCFA2と連通穴HA1及びHA2とをそれぞれ挿通することにより、補強部材Hとともに前方カバーCFを本体部100に締結する固定部材である。
【0032】
なお、上記の説明では、固定部材として、例えばネジB1及びB2を用いた場合について説明したが、本開示の固定部材はこれに限定されるものではなく、固定穴CFA1及びCFA2等に挿通可能なものであればよい。具体的にいえば、本開示の固定部材として、例えば、ピンまたはプッシュリベットなどを用いることができる。
【0033】
以上のように、本実施形態の搬送装置1は、走行部10と、走行部10に懸下された本体部100と、本体部100の前方側及び後方側をそれぞれ覆うとともに、当該本体部100に固定するための固定穴CFA1等を有する前方カバーCF及び後方カバーCRと、を備える。本実施形態の搬送装置1は、固定穴CFA1等に連通可能な連通穴HA1等が設けられた補強部材Hを備える。前方カバーCF及び後方カバーCRは、各々、固定穴CFA1等及び連通穴HA1等を挿通したネジB1またはB2によって補強部材Hとともに本体部100に締結されている。補強部材Hの端部HTは、前方カバーCF及び後方カバーCRから離間している。
【0034】
以上の構成により、本実施形態の搬送装置1は、搬送動作に伴う振動等に起因して前方カバーCF及び後方カバーCRが破損するのを抑制することができる。具体的にいえば、例えば、前方カバーCFの固定穴CFA1においては、経年変化が生じた場合、搬送装置1の搬送動作に伴って、当該ネジB1においては繰り返しの振動が発生することがある。このような繰り返しの振動が発生すると、補強部材Hを設けていない比較例では、ネジがカバーの固定穴の縁に断続的に接触することとなり、固定穴の縁を起点とするクラックが生じて当該カバーに割れなどの破損を発生するおそれがある。さらに、比較例では、上記のようなカバーの割れなどの破損部品が、搬送動作中に搬送装置から落下して、搬送対象物または搬送装置の周囲環境などを汚染するおそれも生じる。
【0035】
これに対して、本実施形態の搬送装置1では、補強部材Hが設けられているので、搬送動作に伴って、繰り返しの振動等が前方カバーCF及び後方カバーCRに生じた場合でも、前方カバーCF及び後方カバーCRが、各々、振動等によって本体部100及び補強部材Hと接触することを抑えることができる。これにより、本実施形態の搬送装置1では、搬送動作に伴う振動等に起因して前方カバーCF及び後方カバーCRが破損するのを抑制することができる。
【0036】
また、本開示の発明者等の検証試験によれば、上記比較例に比べて、補強部材Hを設けた場合、前方カバーCF及び後方カバーCRの各強度を4倍以上大きくすることが確認された。また、検証試験として、走行に伴う振動に相当する程度の振動を搬送装置1に繰り返し与えた。その結果、90万回以上の振動を発生させた場合でも、本実施形態では、クラックなどの破損が前方カバーCF及び後方カバーCRに生じていないことが確かめられた。
【0037】
一方、補強部材を設けずに、カバーを本体部に対して、ネジで直接的に取り付けた構成の比較例では、20万回程度の振動の繰り返しで、ネジが挿通されるカバーの固定穴において、その縁を起点とするクラックが発生したことが確かめられた。
【0038】
また、本実施形態の搬送装置1では、細長の板状部材である、補強部材Hが前方カバーCF及び後方カバーCRと本体部100との各間に設けられている。これにより、本実施形態では、搬送動作に伴う振動等に起因してカバーが破損するのを確実に抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の搬送装置1では、両面テープTが前方カバーCF及び後方カバーCRと補強部材Hとの各間に設けられている。これにより、本実施形態の搬送装置1では、両面テープTによって前方カバーCF及び後方カバーCRと補強部材Hとの各間に生じる衝撃を緩衝することができる。この結果、本実施形態の搬送装置1では、搬送動作に伴う振動等に起因して前方カバーCF及び後方カバーCRが破損するのをより確実に抑制することができる。
【0040】
なお、上記の説明では、接着剤層として、両面テープTを用いた場合について説明したが、本開示の接着剤層は前方カバーCF及び後方カバーCRと補強部材Hとの各間に設けられるものであれば何等限定されない。具体的にいえば、例えば、補強部材Hの表面上に塗布された接着剤または粘着剤を接着剤層として用いることができる。
【0041】
また、本実施形態の搬送装置1では、前方カバーCF及び後方カバーCRと本体部100との各間に設けられた補強部材Hを用いて、搬送動作に伴う振動等に起因して前方カバーCF及び後方カバーCRが破損するのを抑制可能としている。このように簡単な構成を用いて前方カバーCF及び後方カバーCRの各破損を抑えることができるので、補強部材が設置されていない、既製品(上記比較例)に対しても、カバーの破損対策を容易に施すことができる。
【0042】
なお、上記の説明では、前方カバーCF及び後方カバーCRと本体部100との各間に補強部材Hを設けた場合を説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではなく、前方カバーCFまたは後方カバーCRの本体部100とは反対側、つまり前方カバーCFまたは後方カバーCRの外側に補強部材Hを設ける構成でもよい。
【0043】
但し、上記実施形態のように、前方カバーCF及び後方カバーCRの各内側に補強部材Hを設ける場合の方が、外側に補強部材Hを設ける場合に比べて、搬送装置1の見栄えがよい点で好ましい。また、外側に補強部材Hを設ける場合に比べて、搬送装置1の取扱性を向上することができる点でも好ましい。
【0044】
具体的にいえば、補強部材Hを外側に設ける場合において、上記実施形態と同様に、当該補強部材Hの端部が対応する前方カバーCFまたは後方カバーCRとの接触を確実に抑えるために、当該端部を前方カバーCFまたは後方カバーCRから離間するように外側に向かって屈曲させることが好ましい。このため、補強部材Hを外側に設ける場合においては、補強部材Hを内側に設ける場合と異なり、外側に向かう突出部が搬送装置に形成されることとなり、当該搬送装置の取扱性の低下を招くおそれがある。
【0045】
これに対して、補強部材Hを内側に設ける場合においては、図5に示したように、当該補強部材Hの端部HTは搬送装置1の外側に突出することがない。このため、補強部材Hを内側に設ける場合においては、搬送装置1の取扱性を向上することができる。
【0046】
また、上記の説明では、2つのネジB1及びB2を用いて、補強部材Hの上端部側及び下端部側を固定する場合について説明したが、ネジの設置数及び設置箇所はこれに限定されるものではなく、例えば、補強部材Hの上端部と下端部との間の中央部においてもネジによって固定してもよい。
【0047】
なお、上記の説明では、搬送装置1として、例えば、天井または天井近傍に敷設された軌道としての走行レール50に沿って物品を搬送する天井搬送車を構成した場合について説明したが、本開示の搬送装置はこれに限定されない。本開示は、例えば、マストと、マストに沿って昇降される昇降台と、昇降台を覆うカバーとを有するスタッカークレーンに適用することができる。この場合、昇降台の昇降(搬送)動作に伴う振動等に起因してカバーが破損するのを抑制することができる。
【0048】
また、上記の説明では、前方カバーCFと後方カバーCRとを設けた場合について説明したが、本開示のカバーはこれに限定されるものではなく、例えば、前方カバーCF及び後方カバーCRのいずれか一方のカバーのみ設けたり、本体部の側方を覆う側方カバーを設けたりする構成でもよい。
【0049】
〔まとめ〕
本開示の第1態様に係る搬送装置は、軌道に沿って走行するための走行部と、前記走行部に懸下された本体部と、前記本体部を覆うとともに、当該本体部に固定するための固定穴を有するカバーと、を備えた搬送装置であって、前記固定穴に連通可能な連通穴が設けられた補強部材を更に具備しており、前記カバーは、前記固定穴及び前記連通穴を挿通した固定部材によって前記補強部材とともに前記本体部に締結されており、前記補強部材の端部は、前記カバーから離間している。
【0050】
第1態様に係る搬送装置によれば、搬送動作に伴う振動等に起因してカバーが破損するのを抑制することができる。
【0051】
本開示の第2態様に係る搬送装置は、第1態様に係る搬送装置において、前記補強部材は、細長の板状部材であり、前記カバーと前記本体部との間に設けられてもよい。
【0052】
第2態様に係る搬送装置によれば、搬送動作に伴う振動等に起因してカバーが破損するのを確実に抑制することができる。
【0053】
本開示の第3態様に係る搬送装置は、第1態様または第2態様に係る搬送装置において、前記補強部材の少なくとも一方の端部において、前記補強部材は最端部に向かうにつれて前記カバーから離間する屈曲形状をなしてもよい。
【0054】
第3態様に係る搬送装置によれば、補強部材の端部がカバーの端部と接触することを防ぐことができ、補強部材によるカバーの破損の発生を確実に抑制することができる。
【0055】
本開示の第4態様に係る搬送装置は、第1態様から第3態様のいずれかの態様に係る搬送装置において、前記カバーと前記補強部材との間に設けられた接着剤層を、さらに備えてもよい。
【0056】
第4態様に係る搬送装置によれば、接着剤層をカバーと補強部材との間に設けているので、接着剤層によってカバーと補強部材との間に生じる衝撃を緩衝することができる。この結果、搬送動作に伴う振動等に起因してカバーが破損するのをより確実に抑制することができる。
【0057】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 搬送装置
10 走行部
100 本体部
CF 前方カバー(カバー)
CFA1、CFA2 固定穴
CR 後方カバー(カバー)
CRA2 固定穴
H 補強部材
HA1、HA2 連通穴
HT 端部
B1、B2 ネジ(固定部材)
T 両面テープ(接着剤層)
図1
図2
図3
図4
図5