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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176453
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】永電磁ホルダ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/02 20060101AFI20241212BHJP
   H01F 7/04 20060101ALI20241212BHJP
   H01F 7/20 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01F7/02 F
H01F7/04 A
H01F7/20 H
H01F7/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094995
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康広
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で対象物の吸着状態を判別することができる永電磁ホルダを提供する。
【解決手段】永電磁ホルダ10は、磁力発生部12と、ヨーク部14と、リードスイッチ16とを備える。磁力発生部12は、コイル20、コイル20への通電方向によって第1方向X1または第2方向X2に磁化される第1磁石22と、磁化方向が固定された第2磁石24とを含む。ヨーク部14は吸着対象物100に吸着する吸着面14aを有する。リードスイッチ16は、ヨーク部14に設けられ、磁力発生部12から発生する磁束に基づいて作動する。吸着面14aは、第1磁石22の磁化方向によって、吸着対象物100に吸着する状態と、吸着対象物100に吸着しない状態とに切り替えられる。リードスイッチ16は、吸着面14aに吸着対象物100が吸着している場合に閉状態になり、吸着面14aに吸着対象物100が吸着していない場合に開状態になる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル、前記コイルへの通電方向によって前記コイルの軸方向に沿う第1方向または前記第1方向とは反対の第2方向に磁化される第1磁石、および磁化方向が固定された第2磁石を含む磁力発生部と、
前記磁力発生部を収容し、かつ吸着対象物に吸着する吸着面を有するヨーク部と、
前記ヨーク部に設けられ、前記磁力発生部から発生する磁束に基づいて作動するリードスイッチと、を備え、
前記吸着面は、前記第1磁石の磁化方向によって、前記吸着対象物に吸着する状態と、前記吸着対象物に吸着しない状態とに切り替えられ、
前記リードスイッチは、前記吸着面に前記吸着対象物が吸着している場合に閉状態になり、前記吸着面に前記吸着対象物が吸着していない場合に開状態になる、永電磁ホルダ。
【請求項2】
前記第2磁石は、筒形状を有し、前記コイルと同軸状に設けられ、かつ前記コイルの軸方向に沿う方向に磁化されており、
前記コイルの径方向において、前記第1磁石は、前記コイルおよび前記第2磁石の内側に設けられ、
前記吸着面は、前記コイルの軸方向において前記第1磁石および前記第2磁石の一方側に設けられ、
前記リードスイッチは、前記径方向において前記コイルおよび前記第2磁石の外側に設けられる、請求項1に記載の永電磁ホルダ。
【請求項3】
前記第2磁石を囲むように前記ヨーク部内に設けられた筒状の非磁性部を備え、
前記非磁性部は、前記吸着面まで延びるように設けられ、
前記吸着面は、前記径方向において前記非磁性部の内側の第1領域と、前記径方向において前記非磁性部の外側の第2領域とを含み、
前記リードスイッチは、前記径方向において前記非磁性部よりも外側に設けられる、請求項2に記載の永電磁ホルダ。
【請求項4】
前記リードスイッチは、前記リードスイッチの長さ方向が前記コイルの軸方向に沿う方向となるように前記ヨーク部に保持されている、請求項3に記載の永電磁ホルダ。
【請求項5】
前記リードスイッチは、前記ヨーク部内に形成された空洞部内に保持されている、請求項4に記載の永電磁ホルダ。
【請求項6】
前記空洞部は、前記径方向において前記リードスイッチの両端部に対向する一対の誘導面と、前記一対の誘導面の間に設けられかつ前記一対の誘導面から前記径方向において前記リードスイッチから離れる方向に凹む凹面とを含む、請求項5に記載の永電磁ホルダ。
【請求項7】
前記リードスイッチの少なくとも一部は、前記第1磁石および前記第2磁石よりも前記コイルの軸方向における前記一方側に位置している、請求項2または3に記載の永電磁ホルダ。
【請求項8】
互いに前記コイルの径方向に並ぶように設けられる複数の前記磁力発生部を備え、
前記ヨーク部は、前記複数の磁力発生部を収容する、請求項1または2に記載の永電磁ホルダ。
【請求項9】
前記リードスイッチは、隣り合う前記磁力発生部の間に設けられる、請求項8に記載の永電磁ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石の磁力によって対象物を吸着する状態と、対象物を吸着しない状態とに切り替え可能な永電磁ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石の磁力によって吸着対象物を吸着する種々の吸着装置が提案されている。このような吸着装置には、対象物の吸着状態を判定するための機構が設けられる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、永久磁石と、ヨークと、吸着状態判別装置とを備えた吸着装置が開示されている。吸着状態判別装置は、ヨークの所定位置で磁束密度を検出するセンサと、予め規定された関係式を用いてセンサが検出した磁束密度に基づいて吸着状態の良否を判別する判別部とを備えている。センサは、ホールセンサ、サーチコイル等から構成される。
【0004】
特許文献1には、上記の構成により、ヨークに設けられたセンサでヨークから漏れ出る磁束密度を検出し、検出された磁束密度に基づいて吸着状態の良否を判別することで、吸着状態の良否を適切に判別することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-89281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のように、ホールセンサ、サーチコイル等によって構成されるセンサを用いて対象物の吸着状態を判別する場合には、センサの出力電圧を適切に計測するとともに、計測した出力電圧に基づいて吸着状態を適切に判定する機能が必要になるので、装置構成が複雑になる。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構成で吸着対象物の吸着状態を判別することができる永電磁ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面における永電磁ホルダは、
コイル、前記コイルへの通電方向によって前記コイルの軸方向に沿う第1方向または前記第1方向とは反対の第2方向に磁化される第1磁石、および磁化方向が固定された第2磁石を含む磁力発生部と、
前記磁力発生部を収容し、かつ吸着対象物に吸着する吸着面を有するヨーク部と、
前記ヨーク部に設けられ、前記磁力発生部から発生する磁束に基づいて作動するリードスイッチと、を備え、
前記吸着面は、前記第1磁石の磁化方向によって、前記吸着対象物に吸着する状態と、前記吸着対象物に吸着しない状態とに切り替えられ、
前記リードスイッチは、前記吸着面に前記吸着対象物が吸着している場合に閉状態になり、前記吸着面に前記吸着対象物が吸着していない場合に開状態になる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成で吸着対象物の吸着状態を判別することができる永電磁ホルダが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る永電磁ホルダを示す正面図である。
図2図2は、永電磁ホルダを示す平面図である。
図3図3は、図2のA-A部分を示す概略断面図である。
図4図4は、吸着面が吸着対象物に吸着する状態のときの永電磁ホルダを示す図である。
図5図5は、吸着面が吸着対象物に吸着する状態において、吸着面から吸着対象物が僅かに離れた状態の永電磁ホルダを示す図である。
図6図6は、吸着面が吸着対象物に吸着しない状態のときの永電磁ホルダを示す図である。
図7図7は、リードスイッチへの磁束の流れを説明するための図である。
図8図8は、永電磁ホルダの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る永電磁ホルダについて図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(永電磁ホルダの構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る永電磁ホルダを示す正面図であり、図2は、永電磁ホルダを示す平面図である。また、図3は、図2のA-A部分を示す概略断面図である。詳細は後述するが、本実施形態に係る永電磁ホルダ10は、磁性体材料からなる吸着対象物100を吸着する状態と、吸着対象物100を吸着しない状態とに切り替え可能に構成されている。永電磁ホルダ10は、例えば、工業用ロボット、無人搬送装置、ドローン等において、鉄製品等を吸着して保持するために用いられるが、永電磁ホルダ10の用途はこれらの用途に限定されず、磁性体材料からなる吸着対象物を吸着する種々の用途に利用できる。
【0013】
図1図3に示すように、本実施形態に係る永電磁ホルダ10は、磁力発生部12と、磁力発生部12を収容するヨーク部14と、ヨーク部14に設けられたリードスイッチ16とを備えている。
【0014】
図3に示すように、磁力発生部12は、コイル20、第1磁石22および第2磁石24を有している。なお、図1および図3においては、コイル20の軸方向に平行な方向を矢印Xで示している。以下においては、コイル20の軸方向に平行な方向を、単に軸方向Xと記載する。
【0015】
コイル20は、図示しない外部電源に電気的に接続されている。コイル20は、ソレノイドコイルである。コイル20の内側に、第1磁石22が設けられている。コイル20は、通電されることによって第1磁石22を着磁する。
【0016】
本実施形態では、第1磁石22は、円柱形状を有し、コイル20と同軸状に設けられている。第1磁石22は、コイル20への通電方向によって、軸方向Xに沿う第1方向X1、または第1方向X1とは反対の第2方向X2に磁化される。すなわち、第1磁石22の磁化方向は、コイル20によって着磁される際のコイル20の通電方向に応じて切り替わる。なお、本明細書において磁石の磁化方向とは、S極からN極に向かう方向を意味する。図3に示す状態では、第1磁石22は、第1方向X1に磁化されている。
【0017】
第1磁石22としては、例えば、アルニコ磁石、鉄クロムコバルト磁石等を用いることができる。なお、本実施形態では、第1磁石22は、軸方向Xの長さが直径(軸方向Xに直交する方向の長さ)よりも小さい形状を有しているが、軸方向Xの長さが直径よりも大きくてもよい。また、本実施形態では、軸方向Xにおいて第1磁石22の長さはコイル20の長さよりも小さいが、軸方向Xにおいて第1磁石22の長さがコイル20の長さよりも大きくてもよい。
【0018】
第2磁石24は、円筒形状を有し、コイル20および第1磁石22と同軸状に設けられている。本実施形態では、コイル20の外側に第2磁石24が設けられている。第2磁石24の磁化方向は固定されている。本実施形態では、第2磁石24は、軸方向Xに沿う方向に磁化されている。より具体的には、第2磁石24は、第1方向X1に磁化されている。第2磁石24の保磁力は、第1磁石22よりも大きい。第2磁石24としては、例えば、ネオジム磁石が用いられる。
【0019】
磁力発生部12は、ヨーク部14に収容されている。ヨーク部14は、鉄等の磁性体材料によって構成されている。本実施形態では、ヨーク部14は、略直方体形状を有している。ヨーク部14には、吸着対象物100に吸着する吸着面14aが設けられている。吸着面14aは、軸方向Xにおいて第1磁石22および第2磁石24の一方側に設けられている。
【0020】
本実施形態では、ヨーク部14は、第1ヨーク部材40、第2ヨーク部材42および第3ヨーク部材44を有している。本実施形態では、第1ヨーク部材40は、略円柱形状を有している。第1ヨーク部材40は、軸方向Xにおいて、コイル20、第1磁石22および第2磁石24の一方側に設けられている。本実施形態では、第1ヨーク部材40と第2磁石24とは略同一の外径を有し、第1ヨーク部材40の外周面と第2磁石24の外周面とは略面一となっている。
【0021】
軸方向Xにおいて、第1ヨーク部材40の一方側の端面41の中央部には、凹部41aが形成されている。本実施形態では、端面41において、凹部41aの外側の円環状の領域41bが、吸着面14aの第1領域として機能する。以下、端面41の領域41bを、第1領域41bと記載する。
【0022】
第2ヨーク部材42は、角筒状に形成され、第1ヨーク部材40を外側から囲むように設けられている。本実施形態では、第2ヨーク部材42は、断面矩形の外周面、および断面円形の内周面を有している。本実施形態では、軸方向Xにおける第2ヨーク部材42の一方側の端面43が、吸着面14aの第2領域として機能する。以下、端面43を、第2領域43と記載する。
【0023】
吸着面14a(第1領域41bおよび第2領域43)は、軸方向Xに交差する方向に延びるように、平面状に形成されている。本実施形態では、吸着面14aは、軸方向Xに略直交する方向に延びるように設けられている。
【0024】
第2ヨーク部材42には、軸方向Xにおける他方側に向かって開口する空洞部45が形成されている。空洞部45は、底面45a、底面45aの外縁から軸方向Xにおける他方側に向かって延びる筒状の壁面45b、壁面45bから軸方向Xに交差する方向に延びる環状のフランジ面45c、およびフランジ面45cの外縁から軸方向Xにおける他方側に向かって延びる筒状の壁面45dを有している。
【0025】
コイル20の径方向において、第1ヨーク部材40と第2ヨーク部材42との間には隙間が形成されている。この隙間に、樹脂等の非磁性体材料からなる円筒状のスペーサ50が挿入されている。スペーサ50は、第2磁石24および第1ヨーク部材40を囲むように、かつ吸着面14aまで延びるように設けられている。コイル20の径方向において、吸着面14aの第1領域41bはスペーサ50の内側に位置し、吸着面14aの第2領域43はスペーサ50の外側に位置している。本実施形態では、スペーサ50が、非磁性部として機能する。なお、第1ヨーク部材40と第2ヨーク部材42との間にスペーサ50を挿入しなくてもよい。この場合、上記隙間内の空気が非磁性部として機能する。
【0026】
第3ヨーク部材44は、軸方向Xにおいて、コイル20、第1磁石22および第2磁石24の他方側に設けられている。第3ヨーク部材44は、第2ヨーク部材42の外周面と略同一形状の外周面を有している。本実施形態では、第2ヨーク部材42の外周面と第3ヨーク部材44の外周面とが略面一になるように、第2ヨーク部材42と第3ヨーク部材44とが接続されている。第3ヨーク部材44と第2磁石24との間には、環状のスペーサ52が設けられている。スペーサ52は、例えば、磁性体材料からなる。
【0027】
第3ヨーク部材44には、軸方向Xにおける一方側に向かって開口する空洞部47が形成されている。空洞部47は、軸方向Xにおいて空洞部45に対向するように設けられている。空洞部47は、底面47a、および底面47aの外縁から軸方向Xにおける一方側に向かって延びる筒状の壁面47bを有している。本実施形態では、軸方向Xにおける第3ヨーク部材44の一方側の端面49のうち、空洞部47の周囲の環状の領域49aは、空洞部45内に露出している。以下、空洞部45内に露出した端面49の領域49aを、露出面49aと記載する。
【0028】
リードスイッチ16は、コイル20の径方向においてスペーサ50よりも外側に設けられている。リードスイッチ16の少なくとも一部は、軸方向Xにおいて、第1磁石22および第2磁石24よりも一方側(吸着面14a側)に位置している。本実施形態では、リードスイッチ16は、空洞部45,47によって形成される空間内に設けられる。より具体的には、図示しない弾性接着剤を空洞部45,47内に充填することによって、空洞部45,47内にリードスイッチ16が保持される。本実施形態では、リードスイッチ16の長さ方向が軸方向Xに沿う方向となるように、空洞部45,47内にリードスイッチ16が保持される。
【0029】
リードスイッチ16は、一対のリード片16aと、リード片16aの先端部(接点部)を収容するガラス管16bとを有している。一対のリード片16aは、一対のリード線18(図2参照)を介して外部の検出部に電気的に接続され、当該検出部によってリードスイッチ16の接点部の開閉が検出される。なお、詳細な説明は省略するが、本実施形態では、空洞部45,47内において、一対のリード片16aと一対のリード線18とが接続されている。一対のリード線18は、ヨーク部14(本実施形態では、第3ヨーク部材44)に形成されたガイド孔(図示せず)を通って、空洞部45,47からヨーク部14の外部に引き出されている。なお、リードスイッチ16としては、磁石から発生する磁束によって接点部が開閉する公知の種々のリードスイッチを利用することができるので、リードスイッチ16の詳細な説明は省略する。
【0030】
本実施形態では、一対のリード片16aのうちガラス管16bから露出する部分が壁面45b,47bに対向し、一対のリード片16aの接点部(リードスイッチ16の中央部)が壁面45dに対向するように、空洞部45,47内にリードスイッチ16が保持されている。本実施形態では、壁面45b,47bが、コイル20の径方向においてリードスイッチ16の両端部に対向する一対の誘導面として機能している。また、フランジ面45c、壁面45dおよび端面49の露出面49aが、一対の誘導面から径方向においてリードスイッチから離れる方向に凹む凹面として機能している。一対の誘導面(壁面45b,47b)および凹面(フランジ面45c、壁面45dおよび露出面49a)の機能については後述する。
【0031】
(永電磁ホルダの動作)
本実施形態に係る永電磁ホルダ10では、コイル20の通電方向を変えて第1磁石22の磁化方向を切り替えることによって、吸着面14aが、吸着対象物100に吸着する状態および吸着対象物100に吸着しない状態のいずれかの状態に切り替えられる。吸着面14aの状態を上記のように切り替える際のコイル20への通電時間は、例えば、0.01~0.2秒程度である。なお、第1磁石22の磁化方向を切り替える方法は、従来の永電磁ホルダ10と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0032】
図4は、吸着面14aが吸着対象物100に吸着する状態のときの永電磁ホルダ10を示す図である。なお、図4および後述の図5,6においては、太線によって磁束の流れを簡略化して示している。図4に示す例では、第1磁石22の磁化方向は、第2磁石24と同様に、第1方向X1に設定されている。この場合、第1磁石22および第2磁石24によって発生された磁束は、吸着面14aの第1領域41bを介して第1ヨーク部材40から吸着対象物100へ流れた後、吸着面14aの第2領域43を介して吸着対象物100から第2ヨーク部材42へ流れる。これにより、吸着面14aに吸着対象物100が吸着される。この際、リードスイッチ16にも磁束が流れ、リードスイッチ16が閉状態となる。
【0033】
なお、図5に示すように、吸着面14aから吸着対象物100が離れた場合でも、吸着面14aと吸着対象物100との距離が小さい場合には、第1磁石22および第2磁石24によって発生された磁束の一部が、吸着対象物100を通るように流れる。ただし、リードスイッチ16に流れる磁束の磁束密度は、吸着面14aに吸着対象物100が吸着している場合に比べて低下する。本実施形態では、吸着面14aに吸着対象物100が吸着している場合にのみリードスイッチ16が閉状態となり、吸着対象物100が吸着面14aから僅かでも離れた場合にはリードスイッチ16が開状態となるように、リードスイッチ16の感動値および位置等が決定される。
【0034】
図6は、吸着面14aが吸着対象物100に吸着しない状態のときの永電磁ホルダ10を示す図である。図6に示す例では、第1磁石22の磁化方向(第2方向X2)と、第2磁石24の磁化方向(第1方向X1)とは反対である。この場合、吸着面14aに吸着対象物100が接触したとしても、第1磁石22および第2磁石24によって発生された磁束は、吸着対象物100および第2ヨーク部材42には流れない、またはほとんど流れない。このため、吸着面14aに吸着対象物100は吸着されない。リードスイッチ16にも磁束が流れない、またはほとんど流れないので、リードスイッチ16は開状態となる。
【0035】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態に係る永電磁ホルダ10では、リードスイッチ16が開状態であるか、閉状態であるかを検出することによって、吸着面14aに吸着対象物100が吸着しているかどうかを判別することができる。この場合、磁束密度を検出する場合に比べて、より簡単な構成で吸着対象物100が吸着しているかどうかを判別することができる。
【0036】
本実施形態では、第1磁石22は、コイル20の径方向においてコイル20および第2磁石24の内側に設けられ、リードスイッチ16は、コイル20の径方向においてコイル20および第2磁石24の外側に設けられている。この場合、リードスイッチ16、コイル20(または第2磁石24)、および第1磁石22を、コイル20の径方向から見て互いに重なるように配置することができるので、軸方向Xにおける永電磁ホルダ10の寸法を小さくすることができる。なお、本実施形態では、リードスイッチ16、コイル20、第1磁石22、および第2磁石24を、コイル20の径方向から見て互いに重なるように配置している。これにより、軸方向Xにおける永電磁ホルダ10の寸法を十分に小さくすることができる。
【0037】
本実施形態では、リードスイッチ16は、長さ方向が軸方向Xに沿う方向となるように、空洞部45,47内に保持されている。本実施形態では、第1磁石22および第2磁石24によって発生された磁束は、スペーサ50の外側において、第2ヨーク部材42を主に軸方向Xに流れる。このため、リードスイッチ16の長さ方向を、軸方向Xに沿う方向とすることにより、リードスイッチ16に流れる磁束の磁束密度を十分に確保することができる。これにより、リードスイッチ16を容易に作動させることができる。
【0038】
また、上記のように、リードスイッチ16を空洞部45,47内に保持することによって、リードスイッチ16を保護できる。これにより、リードスイッチ16の劣化を抑制できる。なお、本実施形態では、リードスイッチ16は、空洞部45,47内に充填された弾性接着剤によって保持されている。これにより、リードスイッチ16をより確実に保護できる。
【0039】
また、本実施形態では、空洞部45,47は、コイル20の径方向においてリードスイッチ16の両端部に対向する一対の誘導面(壁面45b,47b)と、一対の誘導面(壁面45b,47b)の間において少なくともコイル20側に凹む凹面(フランジ面45c、壁面45dおよび露出面49aによって形成される面)とを含む。これにより、リードスイッチ16の中心部の周囲に十分な隙間を形成することができる。ここで、図7に矢印で示すように、吸着対象物100から、第2ヨーク部材42のうちリードスイッチ16の近傍の部分へ流れた磁束は、空洞部45,47を迂回する経路と、リードスイッチ16を通る経路とに分かれて、第3ヨーク部材44へ向かって流れる。この際、空洞部45,47を迂回する経路よりもリードスイッチ16を流れる経路の方が短くなるため、第2ヨーク部材42のうちリードスイッチ16の近傍の部分へ流れた磁束は、リードスイッチ16に流れやすくなる。特に、本実施形態では、上記のようにリードスイッチ16の周囲に十分な隙間を形成することができるので、空洞部45,47を迂回する経路の距離を十分に長くすることができる。その結果、磁束を効率よくリードスイッチ16に流すことができ、リードスイッチ16を確実に作動させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、リードスイッチ16の少なくとも一部は、第1磁石22および第2磁石24よりも軸方向Xにおける一方側(吸着面14a側)に位置している。この場合、吸着対象物100から吸着面14aを介して第2ヨーク部材42に流れ込んだ磁束を、リードスイッチ16に効率よく流すことができる。
【0041】
(変形例)
上述の実施形態では、コイル20の外側に第2磁石24が設けられる場合について説明したが、第2磁石24の外側にコイル20が設けられてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、第2磁石24は、軸方向Xにおける一方側がN極となり、他方側がS極となるように磁化されているが、第2磁石24の磁化方向が上述の実施形態と反対であってもよい。この場合も、第1磁石22の磁化方向を第2磁石24の磁化方向に一致させることにより、吸着面14aが吸着対象物100を吸着する状態になり、第1磁石22の磁化方向を第2磁石24の磁化方向とは反対にすることにより、吸着面14aが吸着対象物100を吸着しない状態になる。
【0043】
上述の実施形態では、ヨーク部14が、3つのヨーク部材40,42,44によって構成される場合について説明したが、ヨーク部14が、2つまたは4つ以上のヨーク部材によって構成されてもよい。例えば、上述の永電磁ホルダ10において、第2ヨーク部材42と第3ヨーク部材44とが一体形成されていてもよい。
【0044】
上述の実施形態では、第1磁石22が円柱形状を有する場合について説明したが、第1磁石22が角柱形状を有していてもよい。また、上述の実施形態では、第2磁石24が円筒形状を有する場合について説明したが、第2磁石24が角筒形状を有していてもよい。
【0045】
上述の実施形態では、永電磁ホルダ10が一つのリードスイッチ16を備える場合について説明したが、永電磁ホルダ10が複数のリードスイッチ16を備えていてもよい。この場合、例えば、図5に示す状態(吸着面14aが吸着対象物100を吸着可能であるが、吸着面14aから吸着対象物100が離れている状態)と、図6に示す状態(吸着面14aが吸着対象物100を吸着できない状態)とを判別できるように、感動値が異なる複数のリードスイッチ16を設けてもよい。
【0046】
上述の実施形態では、永電磁ホルダ10が一つの磁力発生部12を備える場合について説明したが、図8に示すように、永電磁ホルダ10aが複数(図8では3つ)の磁力発生部12を備えていてもよい。なお、図8において(a)は、永電磁ホルダ10aを示す概略正面図であり、(b)は、永電磁ホルダ10aを示す概略平面図である。
【0047】
図8に示す永電磁ホルダ10aでは、3つの磁力発生部12がヨーク部140に収容されている。ヨーク部140は、軸方向Xにおいて各磁力発生部12の一方側に設けられる3つの第1ヨーク部材(上述の第1ヨーク部材40と同様の構成)、3つの第1ヨーク部材の外側を囲むように設けられる第2ヨーク部材42a、および軸方向Xにおける他方側から3つの磁力発生部12を覆うように第2ヨーク部材42aに接続される第3ヨーク部材44aを有している。各磁力発生部12と第2ヨーク部材42aとの間には、上述の永電磁ホルダ10と同様に、スペーサ50(図3参照)が設けられている。また、本実施形態では、3つの第1ヨーク部材と第2ヨーク部材42aとによって、吸着面140aが形成されている。
【0048】
本実施形態では、3つの磁力発生部12が、コイル20(図3参照)の径方向に並ぶように設けられている。リードスイッチ16は、隣り合う磁力発生部12の間に設けられている。本実施形態においても、第2ヨーク部材42aと第3ヨーク部材44aとによって、上述の永電磁ホルダ10の空洞部45,47と同様の空洞部が形成され、その空洞部内にリードスイッチ16が保持されている。なお、図8に示す例では、左端の磁力発生部12と中央の磁力発生部12との間にリードスイッチ16が設けられているが、右端の磁力発生部12と中央の磁力発生部12との間にさらにリードスイッチ16が設けられてもよい。
【0049】
本実施形態においても、上述の永電磁ホルダ10と同様に、吸着面140aに吸着対象物100(図1参照)が吸着している場合にのみリードスイッチ16が閉状態となり、吸着対象物100が僅かでも離れた場合にはリードスイッチ16が開状態となるように、リードスイッチ16の感動値および位置等が決定される。したがって、本実施形態に係る永電磁ホルダ10aにおいても、リードスイッチ16が開状態であるか、閉状態であるかを検出することによって、吸着面140aに吸着対象物100が吸着しているかどうかを判別することができる。
【0050】
なお、詳細な説明は省略するが、磁力発生部の構成は上述の例に限定されない。磁力発生部は、少なくとも、コイル、コイルへの通電方向によってコイルの軸方向に沿う第1方向または第1方向とは反対の第2方向に磁化される第1磁石、および磁化方向が固定された第2磁石を含み、リードスイッチ16を作動させることができるように構成されていればよく、公知の種々の永電磁ホルダの構成を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、簡単な構成で吸着対象物の吸着状態を判別することができる永電磁ホルダが得られる。
【符号の説明】
【0052】
10,10a 永電磁ホルダ
12 磁力発生部
14,140 ヨーク部
14a,140a 吸着面
16 リードスイッチ
20 コイル
22 第1磁石
24 第2磁石
45,47 空洞部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8