(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176457
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ドレン排水溝材
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20241212BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E04D13/04 J
E04F15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095002
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 貴好
(72)【発明者】
【氏名】平田 大二郎
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA08
2E220AA18
2E220AB04
2E220AC11
2E220DA02
2E220DA05
2E220EA11
2E220GA32X
(57)【要約】
【課題】 台車や車イス、歩行補助器、キャリーバッグなどの車輪あるいはキャスターが通過するとき発生する衝撃音の発生を効果的に抑制し、しかも十分な排水量が確保できるドレン排水溝材を提供する
【解決手段】
床面に設置されてドレンホースからのドレン水を流す排水溝を有するドレン排水溝材において、排水溝と、排水溝の左右に位置する溝縁と、溝縁の外側に位置する溝材縁と、で構成され、排水溝は、排水溝底面と、前記溝縁の内側立設面と、で構成され、排水溝を上方から塞ぐ蓋体が取り付けられており、溝材縁の上面の最低部の高さと、前記蓋体の上面の最高部の高さと、の差(段差)が2.4mm以上4.0mm未満であり、ドレン排水溝材と蓋体との間に形成される排水空間の断面積が100mm
2以上150mm
2以下とするドレン排水溝材。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されてドレンホースからのドレン水を流す排水溝を有するドレン排水溝材であって、
排水溝と、前記排水溝の左右に位置する溝縁と、前記溝縁の外側に位置する溝材縁と、で構成され、
前記排水溝は、排水溝底面と、前記溝縁の内側立設面と、で構成され、
前記排水溝を上方から塞ぐ蓋体が取り付けられており、
前記ドレン排水溝材の長さ方向に略垂直な縦断面において、前記溝材縁の上面の最低部の高さと、前記蓋体の上面の最高部の高さと、の差(段差)が2.4mm以上4.0mm未満であり、
前記ドレン排水溝材の長さ方向に略垂直な縦断面において、前記ドレン排水溝材と前記蓋体との間に形成される排水空間の断面積が100mm2以上150mm2以下であること、
を特徴とするドレン排水溝材。
【請求項2】
前記溝材縁の上面の最低部と、前記蓋体の上面の最高部と、を結ぶ線の傾斜を示す角度が4°以上7°以下であること、
を特徴とする請求項1に記載のドレン排水溝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレンホースからのドレン水を流すためのドレン排水溝材に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅の共通廊下又はベランダ等の屋外には冷暖房機の室外機が設置される。その室外機からはドレン水がドレンホースを通じて廊下又は床面に排出される。
ドレン水が廊下又はベランダの床面に垂れ流されると、ドレン水が広がることで埃又は砂等が付着し、廊下又は床面に汚れ又はしみができたりカビが発生したりする。また、ドレン水により廊下又は床面が濡れることで滑りやすくなり、歩行者の転倒事故が発生しやすくなる。
そのため、溝状の排水路を有するドレン材が提供されている。
【0003】
かかるドレン材は床材の間に敷設される。すなわち、ドレン材は共用廊下又はベランダを横断して設置される。そのため、ドレン材の上を台車や車イス、歩行補助器、キャリーバッグなどの車輪あるいはキャスターが通過するとき、ドレン材上にせり上がった車輪が低部に至って落下して衝撃音を発する。
【0004】
この点、例えば特許文献1(特開2018-197434号公報)は、車輪が通過する際に発生する音を低減させるべく、「ドレン材の長手方向に沿って前記ドレン水を流すよう、底部と前記底部の両側に設けられた側部とを有する排水路を備え、前記排水路は、前記底部から立設して前記ドレン材の長手方向に沿って形成される、少なくとも一つの壁部と、前記壁部と前記側部と間、又は、隣り合う壁部の間に形成される溝部と、を備え、前記壁部の前記底部からの高さは、前記側部の前記底部からの高さと同じ大きさで形成されるか、又は、前記側部の前記底部からの高さより所定の長さだけ低く形成され」るドレン材を開示する。
しかし、かかるドレン材では、排水路が上方に露出し、人、台車、更にはドレン材の周囲がドレン水で濡れたり汚れたりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、台車や車イス、歩行補助器、キャリーバッグなどの車輪あるいはキャスターが通過するとき発生する衝撃音の発生を効果的に抑制し、しかも十分な排水量が確保できるドレン排水溝材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明のドレン排水溝材は、
床面に設置されてドレンホースからのドレン水を流す排水溝を有するドレン排水溝材であって、
排水溝と、前記排水溝の左右に位置する溝縁と、前記溝縁の外側に位置する溝材縁と、で構成され、
前記排水溝は、排水溝底面と、前記溝縁の内側立設面と、で構成され、
前記排水溝を上方から塞ぐ蓋体が取り付けられていること、
を特徴とする。
【0008】
このような構成を有する本発明のドレン排水溝材では、蓋と排水溝との間に十分な排水量を確保しつつ、蓋により排水溝をその上方から隔離し、ドレン水で人、台車、ドレン排水溝材の周囲を汚すことを防止することができる。
【0009】
本発明のドレン排水溝材においては、前記ドレン排水溝材の長さ方向に略垂直な縦断面において、前記溝材縁の上面の最低部の高さと、前記蓋体の上面の最高部の高さと、の差(段差)が2.4mm以上4.0mm未満である。
【0010】
このような構成を有する本発明のドレン排水溝材によれば、段差が十分に抑制されているため、台車等の車輪がドレン排水溝材を通過する際に生ずる衝撃音を効果的に抑制することができる。
【0011】
また、本発明のドレン排水溝材においては、前記ドレン排水溝材の長さ方向に略垂直な縦断面において、前記ドレン排水溝材と前記蓋体との間に形成される排水空間の断面積が100mm2以上150mm2以下である。
【0012】
このような構成を有する本発明のドレン排水溝材によれば、少なくともエアコンディショナー2台分の室外機から排出されるドレン水の排水量をカバーし得る十分な排水量を確保することができる。
【0013】
更に、本発明のドレン排水溝材においては、前記溝材縁の上面の最低部と、前記蓋体の上面の最高部と、を結ぶ線の傾斜を示す角度が4°以上7°以下であること、が好ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明のドレン排水溝材によれば、傾斜が十分に緩やかであるから、台車等の車輪がドレン排水溝材を通過する際に生ずる衝撃音を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蓋と排水溝との間に十分な排水量を確保しつつ、蓋により排水溝をその上方から隔離し、ドレン水で人、台車、ドレン排水溝材の周囲を汚すことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の代表的な実施形態に係る屋外床面設備の一例を示す部分断面斜視図である。
【
図2】ドレン排水溝材1を含むドレン排水設備の斜視図である。
【
図4】ドレン排水溝材1の段差及び傾斜角の説明図である。
【
図6】床面9に敷設されたドレン排水溝材1及び床材3の概略図である。
【
図8】台車通過音試験の方法を説明するための概略図である。
【
図9】耐キャスター性試験の方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るドレン排水溝材の代表的な実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて大小や長短の比率や数量を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0018】
1.ドレン排水溝材1の構成
図1に示すように、マンション等の集合住宅における共通廊下やベランダ等である屋外の床面に、ドレン排水溝材1、床材3、及び、ドレン連結具5が敷設される。
ドレン排水溝材1及び床材3は、床面9に貼り付け等により固定されている。ドレン排水溝材1は、その長手方向(
図1の矢印L方向)が床面9を横断し、下流側端部が排水溝部91に臨むように、配置されている。
床材3は、ドレン排水溝材1の両側に配置されている。床材3としては、床シート、床タイル等が挙げられるが、これらに限られない。
ドレン連結具5は、ドレン排水溝材1の上流側端部に取り付けられており、冷暖房装置の室外機8から延びたドレンホース81をドレン排水溝材1に連結している(
図1及び
図2参照)。
【0019】
次に、ドレン排水溝材1を詳細に説明する。
例えば
図3に示すように、ドレン排水溝材1は、排水の流路である排水溝11、排水溝11の左右に位置する溝縁13,14、及び、溝縁13,14の外側に位置する溝材縁15,16を含んで構成される。
【0020】
例えば
図4(1)に示すように、排水溝11は、排水溝底面111、及び、溝縁13,14の内側面131,141で構成され、全体として略U字状ないし略凹状の断面形状を有する。なお、内側面131,141は、溝縁13,14において排水溝11に臨む内側の面であり、排水溝底面111の左右両端から立ち上がるので、内側立設面とも言える。
【0021】
具体的には、排水溝底面111には、流下する排水の整流を補助するべく凸条113を設けてもよい。凸条113は排水溝11の長さ方向に続く帯状ないし板状の突起である。凸条113の高さとしては例えば0.2以上0.8mm以下が好適である。
【0022】
凸条113は複数設けられてもよい。その場合の好ましい凸条113数は3~20であるが、これに限られない。また、凸条113の幅(排水溝底面111の幅方向の長さ)は必ずしも均一でなくてもよく、例えば、後述する蓋体21の脚27と対向する凸条113の幅は残りの凸条113の幅よりも広くてよい。
また、複数の凸条113は互いに平行であってよいし、長さ方向に連続的に形成されていてもよいし、不連続に(途切れ途切れに又は所定の間隔で)形成されていてもよい。
【0023】
また、両側の溝縁13,14の内側面131,141には、後述する蓋体21の両端縁(嵌合凸部25,26)を受け入れて嵌合する嵌合溝133,143が長さ方向に形成されることが望ましい。これにより蓋体21とドレン排水溝材1が着脱自在に一体化ないし合体し、したがってキャスター走行や人の歩行、風雨などで蓋体21がドレン排水溝材1から意図せず外れることを防止できる。
なお、嵌合溝133,143は、溝縁13,14の長さ方向に連続的に形成されていてもよいし、不連続に(途切れ途切れに又は所定の間隔で)形成されていてもよい。
【0024】
溝縁13,14の外側には溝材縁15,16が配置されている。溝材縁15,16は略矩形状をなし、その上面は略平坦で、かつ略水平に形成されることが望ましい。
【0025】
溝材縁15,16の内側寄りには傾斜面151,161が設けられている。傾斜面151,161は、後述する蓋面23と滑らかに(略面一になるように)接続し、これにより衝撃音の発生を抑制する。
なお、傾斜面151,161自体の高さは例えば0.5mm以上1.0mm以下程度であり、これは後述する段差の高さに算入される。
【0026】
ドレン排水溝材1は、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂の押出成形で作成され、とくに軟質塩化ビニル樹脂製であることが好ましい。
【0027】
ドレン排水溝材1の寸法例を挙げる。ただし、本発明がかかる寸法に限られるものではないことは言うまでもない。
排水溝11の幅は例えば50mm以上70mm以下である。
溝縁13,14の内側面131,141の高さ(即ち排水溝11の深さ)は例えば2mm以上4mm以下である。
溝材縁15,16も含めたドレン排水溝材1の全幅は例えば70mm以上90mm以下である。
ドレン排水溝材1の全高(後述の蓋体21を除く。)は例えば3mm以上5mm以下である。
蓋体21を装着した状態のドレン排水溝材1(以下、蓋付きドレン排水溝材1ということがある。)の全高は例えば3mm以上9mm以下である。
【0028】
ドレン排水溝材1には、排水溝11を覆うように蓋体21が設けられる。蓋体21があることで、風などで排水溝11内を流下する排水が吹き飛ばされたり、また人の歩行時に排水と直接接触したりすることなどが避けられるため、床面9の水濡れとそれに起因する人の転倒、汚れなどの防止になる。本実施形態では、蓋体21は、ドレン排水溝材1とは別体でドレン排水溝材1に着脱自在に取り付けられるが(例えば
図5参照)、ドレン排水溝材1と一体的に構成されてもよい。
【0029】
詳細に説明すると、例えば
図4(1)に示すように、蓋体21は略板状をなし、蓋面23と、その両側に外向きに突出する嵌合凸部25,26と、を含む。
蓋面23は、中高になるように幅方向の両端から中央に向けて上方に傾斜している。つまり、蓋面23は、溝材縁15,16の傾斜面151,161から上向きに膨出し、滑らかな略円弧状ないし略ドーム状をなす。かかる膨出形状は、車輪の通過に伴う衝撃音を抑制しつつ、排水溝11と蓋体21との間に所定の断面積(ドレン排水溝材の長さ方向に略垂直な縦断面)を持つ排水空間Vを形成する役割をも果たす(
図5(B)参照)。
【0030】
発明者らは、衝撃音の抑制と所定の排水量の確保の両立に好適な排水空間の断面積Vについて鋭意検討を重ね、概ね100mm2以上150mm2以下が適切であることを見出した。
また、蓋面23の膨出高さは例えば0.5mm以上1.0mm以下である。
【0031】
本実施形態では、後述する段差及び傾斜角を適切な範囲に設定することで、衝撃音の音量(音圧)を抑制している。
具体的には、段差は、ドレン排水溝材1の長さ方向に略垂直な縦断面において、溝材縁15,16の上面の最低部の高さと、蓋体21の上面の最高部の高さと、の差である。
図4(1)において、溝材縁15,16の上面の最低部の高さは(C)で表され、蓋体21の上面の最高部の高さは(D)で表される。発明者らは、衝撃音の抑制に好適なこれらの高さの差(段差)[(C)-(D)]について鋭意検討を重ね、概ね2.4mm以上4.0mm未満が好適であることを突き止めた。
【0032】
また、傾斜角は、溝材縁15,16の上面の最低部(
図4(2)において符号Lで示す。)と、蓋体21の上面の最高部(
図4(2)に符号Hで示す。)と、を結ぶ線の(水平線に対する)傾斜Rである。発明者らは、衝撃音の抑制に好適な傾斜Rについて鋭意検討を重ね、概ね4°以上7°以下が好適であることを突き止めた。
【0033】
かえって蓋体21の説明に戻ると、嵌合凸部25,26は、溝縁13,14の内側面131,141の嵌合溝133,143に嵌合する(例えば
図3参照)。嵌合凸部25,26は、蓋体21の長さ方向に連続的に形成されていてもよいし、不連続に(途切れ途切れに又は所定の間隔で)形成されていてもよい。
【0034】
蓋体21の嵌合凸部25,26の端縁間の幅(
図4(1)の長さ(B))は、ドレン排水溝材1の嵌合溝133,143の外縁間の幅(
図4(1)の長さ(A))よりも大きいことが望ましい。これにより、蓋面23の捻じれや変形が抑制でき、蓋体21の膨出の形態を保持できる。
【0035】
蓋体21の下面には、下向きに突出する脚27が設けられてもよい。蓋体21が上方からの荷重で下方に撓んだ時に、脚27の下端側が排水溝11に接触して蓋体21の更なる撓みを抑制することができる。
脚27は、蓋体21の長さ方向に連続的に形成されてもよいし、不連続に(途切れ途切れに又は所定の間隔で)形成されていてもよい。
【0036】
脚27は、蓋体21の幅方向に沿って複数設けられてもよい。この場合、脚27の高さ(突出度合い)は一律でもよいし、場所によって異なってもよい。後者の場合、例えば、各々の脚27と排水溝11との間の距離が略同じになるように、中央の脚27ほど高さを大きくしてもよい。
【0037】
蓋体21の上面には、歩行時の防滑性などを担保するべく、上向きに突出する凸条29を設けてもよい。凸条29は、蓋体21の長さ方向に連続的に形成されてもよいし、不連続に(途切れ途切れに又は所定の間隔で)形成されていてもよい。
凸条29の高さは、車輪通過時の衝撃音の抑制の観点から、0.3mm以下であることが望ましく、防滑性との両立の観点からは0.3mm程度がより望ましい。
【0038】
蓋体21は塩化ビニル樹脂などの合成樹脂の押出成形で作成され、とくに軟質塩化ビニル樹脂製のものが好ましい。
【0039】
蓋体21の寸法例を挙げる。ただし、本発明がかかる寸法に限られるものではないことは言うまでもない。
嵌合凸部25,26を含む蓋体21の全幅は例えば50mm以上~70mm以下である。
蓋体21の厚さは例えば1.5mm以上2.0mm以下である。
蓋面23(嵌合凸部25,26を除く。)の幅は例えば40mm以上60mm以下である。
【0040】
次いで、ドレンホース81とドレン排水溝材1とを繋ぐドレン連結具5について説明する。
室外機8等から排出されるドレン水は、ドレンホース81の内部を伝って、ドレン排水溝材1の排水溝11に導入される。その際、ドレン連結具5を介してドレンホース81の先端と排水溝11を接続することで、ドレンホース81の先端から排水溝11へのドレン水の導入がスムーズになる。そして、排水溝11に上流側に流入したドレン排水は、排水溝11と蓋体21で形成された排水空間Vを流下し、廊下等の排水溝11に排出される(
図1参照)。
【0041】
かかるドレン連結具5は、ドレン排水溝材1の嵌合溝133,143に嵌め込まれるベース51と、ドレンホース81を連結するべくベース51から立ち上がる中空の接続部52と、を含む。ベース51は図示しない開口を有し、かかる開口により接続部52とベース51の下面側(すなわちドレン排水溝材1の排水溝11)とが連通する。
【0042】
2.ドレン排水溝材1の敷設
ドレン排水溝材1を床面9へ敷設する手順を説明する。
図7に示すように、床下地面92には、居室側から廊下やバルコニーを横断して屋外側の排水溝91に亘って水勾配Sが設けられている。その水勾配Sは概ね1/150以上1/50以下であり、通常は1/100程度である。
【0043】
厚さ3.5mm程度の合成樹脂やゴム製の床材3二枚を、所定の間隙を設けて床下地面92に貼着する。ここで、各床材3の間の間隙は、ドレン排水溝材1の全幅に相当する広さである。
【0044】
その間隙から露出する床下地面92に、ドレン排水溝材1の裏面を接着する(
図6参照)。このとき、蓋体21は、ドレン排水溝材1とは別体である場合には、ドレン排水溝材1に装着されていてもよいし、設置完了後に装着されてもよい。また、ドレン排水溝材1および蓋体21の少なくとも一方を軟質の合成樹脂で作製することで、装着が容易である。
【0045】
各床材3の端縁とドレン排水溝材1(溝材縁15,16)の端縁は、合成樹脂による熱溶接、接着剤などを用いた接着、溶着などによって接合され、これによって床材3とドレン排水溝材1との間は止水される。
このように床材3はドレン排水溝材1と接合させる必要があるため、ドレン排水溝材1と同じ材質が好ましい。
【0046】
敷設された床材3の上面とドレン排水溝材1における溝材縁15,16の上面とは、段差をなくしてキャスターの通過に伴う音の発生を極力抑える観点から、略同一の高さが望ましい。たとえ高さ差ないし段差が生じたとしても、ドレン排水溝材1における溝材縁15,16の上面を床材3の上面よりも高くすることが好ましく、なかでも、その高さ差は1.0mm以下が好ましい。
【0047】
3.各種試験の実施
ドレン排水溝材1の試験体No.1~8を準備し、(1)排水性、(2)通過音、及び(3)耐キャスター性の試験を実施した。
【0048】
試験体No.1~8の寸法は次の表1のとおりである。ここに、表1中の(A)~(D)は
図4(1)中の符号(A)~(D)に対応している。
【0049】
【0050】
(1)排水性試験
排水性試験の試験方法・条件は次のとおりである。
すなわち、1/100勾配に設定したモルタル下地上にドレン排水溝材1の試験体No.1~8(長さ1800mm)を敷設し、送液ポンプより接続具を介して水を排水溝11に注水する。ここでは、送液ポンプとして、Cole-Parmer製の送液ポンプMasterflex・7524-50 MASTERFLEX L/S digital economy driveを用いた。
そして、試験体No.1~8が適切に排水したかどうかを目視により確認する。具体的には、排水の流下状況、蓋体21の端縁と排水溝11の間からの排水の滲み出しや漏水の状況を確認する。
【0051】
ここでは、100ml/min以上500ml/min以下の流水量で試験を行い、基準となる流水量として、エアコンディショナー2台の最大排水量を想定した100ml/minに安全率1.5を乗じた150ml/minを採用した。
【0052】
そして、排水性能を次の3段階で評価した。
◎:蓋体21端縁と排水溝11の間から排水の滲みなし
〇:蓋体21端縁と排水溝11の間から排水が滲み出る(漏水なし)
×:蓋体21端縁と排水溝11の間から排水が漏水
【0053】
試験結果は次の表2とおりである。
【0054】
【0055】
表2より、試験体No.2~8が所定の基準を満たす排水性を有することが分かる。
【0056】
(2)台車通過音試験
台車通過音試験の試験方法・条件は次のとおりである。
図8に示すように、平滑な床下地面92上に軟質塩化ビニル製の床材3とドレン排水溝材1の試験体No.1~8を敷設した床を準備する。その床上を、運搬用台車71を歩行速度と同等の約3.3km/hで走行させる。
ここでは、台車71として、トラスコ中山株式会社製台車202N(サイズ810mm×510mm、自重17.5kg、車輪:径φ130mm、幅25mm(接地面)、4輪)を用いた。ただし、台車71に重りを載せていない。
【0057】
試験体No.1~8上を台車71が通過する際の最大音圧(db)を音圧騒音測定器72で測定する。測定器72としてリオン株式会社製精密騒音計NL-62A(校正証明書付)を用いた。
ここでは、測定された音圧が、床材3のみを敷設した床の上を台車71を走行させたときに発生する音圧に対して5dB以下となるかどうかを基準とした。
なお、本試験は23℃及び5℃の環境温度の下で実施された。
【0058】
試験結果は次の表3とおりである。
【0059】
【0060】
表3より、23℃の環境温度下では、試験体No.1~8の全てが所定の基準を満たすが、5℃の環境温度下では、試験体No.1~4のみが所定の基準を満たすことが分かる。
【0061】
(3)耐キャスター性試験
耐キャスター性試験は4輪100kgf荷重の台車71を想定したものであり、試験方法・条件は次のとおりである。
すなわち、300mm角のスレート板上に床材3及び蓋付きドレン排水溝材1を敷設した床を準備する。その床上を250Nの荷重を掛けたキャスター(1輪)を往復運動させて、ドレン排水溝材1からの蓋体21の外れや破損、傷の状態(キャスター軌跡)を目視で評価する。
【0062】
キャスターの往復運動は、
図9(A)及び(B)に示すようにスウィブル軌道及び往復軌道の2種類実施され、それぞれ7000回往復させる。スウィブル軌跡の試験はJIS A 1454 21.2.2. A-1法に準拠した。
また、使用したキャスターは、スウィブル軌跡では赤茶色フェノール製であり、往復軌跡ではゴム巻き車輪である。
なお、試験時における環境温度は23℃であった。
【0063】
ここでは、耐キャスター性を次の3段階で評価した。
〇:問題なし
△:蓋体21は外れないが、やや傷が目立つ
×:蓋体21が外れ、傷が目立つ
【0064】
試験結果は次の表4とおりである。
【0065】
【0066】
表4より、往復軌跡の試験では試験体No.1~8の全てが問題なしであったが、スウィブル軌跡の試験では、試験体No.1~4のみで問題なしであったことが分かる。
【0067】
したがって、上記試験(1)~(3)を総合すると、試験体No.2~4が所定の基準を満たし良好であると言える。
このことから、段差が概ね2.4mm以上4.0mm未満であること及び断面積が概ね100mm2以上150mm2以下であることが好適であることが分かる。また、傾斜が概ね4°以上7°以下であることが好適であることも分かる。
【0068】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更後の態様(変形例)も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1 ドレン排水溝材
3 床材
5 ドレン連結具
11 排水溝
111 排水溝底面
13,14 溝縁
131,141 内側面
15,16 溝材縁
21 蓋体