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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176466
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】減塩かつ減糖された合わせ調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/12 20160101AFI20241212BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20241212BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
A23L27/12
A23L27/00 Z
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095012
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】591137628
【氏名又は名称】中野BC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】児玉 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】我藤 伸樹
【テーマコード(参考)】
4B018
4B047
【Fターム(参考)】
4B018LB09
4B018MD52
4B018MD91
4B018MD94
4B018ME01
4B018ME03
4B018ME04
4B018ME14
4B047LB03
4B047LG23
4B047LG38
4B047LG60
4B047LG63
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】合わせ調味料において、減塩かつ減糖したことによる味の低下を改善し、十分な旨味を持ち、通常の合わせ調味料と同等以上の風味を提供することができる。
【解決手段】
本発明の合わせ調味料はバラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物を有効成分として含む。醤油、酒、みりん、砂糖をベースとした減塩かつ減糖した合わせ調味料において、上記果実処理物を添加することで損なわれた旨味、コク、塩味が改善され、減塩、減糖前と同等かそれ以上の風味を与えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物を含有することを特徴とする減塩かつ減糖された合わせ調味料。
【請求項2】
果実処理物が果実を搾汁した果汁又は糖質で抽出した糖抽出果汁である請求項1に記載の減塩かつ減糖された合わせ調味料。
【請求項3】
合わせ調味料が減塩醤油を用いたものである請求項1~2に記載の減塩かつ減糖された合わせ調味料。
【請求項4】
減塩かつ減糖された合わせ調味料において低下する風味を、バラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物を含有させることにより改善・増強させる方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩分、および糖分の使用量を低減したことを感じさせず、かつ十分な旨味を有する減塩かつ減糖された合わせ調味料を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム)は調理・調味料において、飲食物に塩味を付与する重要なものである。また、殺菌作用を持つため、調理に用いられるだけでなく梅干しや漬物等の日本古来の保存食品において食材の保存性を高める重要な役割を担っている。
食塩は生命活動に必須である一方で、摂取しすぎると高血圧症、腎臓病などの生活習慣病の要因となる。日本人の食塩の平均摂取量はWHOの推奨摂取量よりも多く、そのため、食塩の摂取量の低減が推奨されている。
【0003】
食塩の摂取量の低減のためには減塩醤油や塩味料が用いられることが多く、様々な商品が販売されている。しかし、食塩の量を減らすことによって塩味が薄くなるだけでなく料理のうま味を損なってしまうことがあり、塩味や旨味を改善するための塩味料の開発が行われている(特許文献1)。しかし、特許文献1に記載の塩味料は、材料である柑橘果皮からの抽出過程、濃縮過程、粉末加工過程と、多くのプロセスを経るため実施が困難である。また、バラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物をもちいて減塩かつ減糖した合わせ調味料の風味を改善するような方法はいまだ報告されていない。
【0004】
砂糖は調理・調味料において飲食物に甘みを付与する重要なものであり、また、食品の水分活性を低下させることから、食材の保存性を高める役割を担っている。
砂糖は生物のエネルギー源や甘味料として重要なものである一方で、過度な糖類の摂取は肥満を引き起こし、糖尿病や高血圧、がんなど、生活習慣病のリスクを高める。また、糖類を過剰に摂取することによって、体内でたんぱく質と糖が結合した終末糖化産物(AGEs)が生成される。AGEsは強い毒性を持ち、老化を進める原因物質であると考えられている。そのため、糖類においても摂取の低減が推奨されている。
【0005】
和食文化において、醤油、みりん、日本酒、および砂糖を用いた合わせ調味料を一般的に万能だれと呼び、混ぜ合わせる割合を変えることで、たとえば、鶏の照り焼きや魚の煮つけ、きんぴら、みたらしのたれなど、様々な料理に用いることができる。
万能たれの組み合わせ、混ぜ合わせの割合にはいわゆる黄金比とよばれる配合比率があり、たとえば、てりやきのたれには(醤油:みりん:日本酒:砂糖)=(1:1:1:1)または(2:2:2:1)、きんぴらのたれには(醤油:日本酒:砂糖)=(1:1:1)など、多くの組み合わせがある(非特許文献1、2)。特許文献2では、醤油、みりん、日本酒の3種からなる合わせ調味料において黄金比といわれる配合比率((醤油:みりん:日本酒)=(1:1:1))から、醤油の割合を減らし、みりんの割合を増やすことで、減塩しながらも減塩前と同等の塩味を感じられる調味料および製造方法を示している。しかし、みりんを増量することで糖分が増加しており、減塩と減糖を両立した調味料とはいえず、減塩と減糖を両立し、かつ風味の低下を感じさせない調味料およびその製造方法はいまだ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-153380
【特許文献2】特許第7113567号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“鶏の照り焼き(照り焼きチキン)のレシピ/作り方”、令和2年4月、[online]、白ごはん.com、[令和5年5月29日検索]、インターネット、<https://www.sirogohan.com/recipe/teriyaki/>(
【非特許文献2】“料理の基本12品(味付け黄金比)”、[online]、 オレンジページnet、[令和5年5月29日検索]、インターネット、<https://www.orangepage.net/ymsr/features/golden-ratio/posts/2775>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在数多くの減塩商品が販売されているが、中でも最も消費者に身近なものは減塩(低塩)醤油である。しかし、塩分を減らしている分、減塩醤油は普通の醤油に比べて味わいが劣ってしまうという欠点を持っている。
本発明の課題は、醤油、みりん、日本酒および砂糖をベースとして減塩および減糖しながらも十分な旨味を感じさせることができる調味料、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、バラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物が減塩、減糖による風味の低下を改善する効果を有することを発見した。合わせ調味料において減塩および減糖をしても風味を維持・上昇させることを見出し、市販の減塩醤油を用いて作製したたれに梅糖抽果汁を加えることで普通醤油を用いて作製したたれと同等以上の風味を得られることを発見し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食塩および砂糖の使用量を減らしながらも十分な旨味を感じさせることができる調味料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】減塩醤油、梅糖抽果汁入り減塩醤油、普通醤油を使用したたれの総合評価の比較
図2】減塩醤油、梅糖抽果汁入り減塩醤油、普通醤油を使用したたれの官能評価の比較。
図3】合わせ調味料に梅糖抽果汁を加えた際の総合評価の比較。
図4】合わせ調味料に梅糖抽果汁を加えた際の官能評価の比較。
図5】砂糖を梅糖抽果汁に置き替える割合の比較(総合評価)。
図6】砂糖を梅糖抽果汁に置き替える割合の比較(官能評価)。
図7】スモモ亜属果実処理物間の総合評価の比較
図8】スモモ亜属果実処理物間の官能評価の比較
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はバラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物を有効成分として含有する、醤油、みりん、日本酒および砂糖を有する合わせ調味料および、その製造方法である。以下、本発明の合わせ調味料について詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いられるバラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物とは、果実を搾汁した果汁または糖質で糖抽出した糖抽出果汁が挙げられる。スモモ亜属の果実としては、たとえば、梅、スモモ、アンズなどが挙げられる。
【0014】
本発明に使用される果汁は、バラ科サクラ属スモモ亜属の果実から搾汁されたものであればよい。果汁は清澄なものであればより好ましく、処理としては例えば、酵素処理、遠心分離、珪藻土ろ過等が挙げられる。果汁はストレート果汁でも濃縮果汁でもよい。
【0015】
本発明に使用される糖抽果汁は、バラ科サクラ属スモモ亜属の果実から糖抽出した果汁である。糖質抽出の際の糖質の使用量は特に限定されず、例えば果実100質量部に対して100~200質量部、好ましくは100~150質量部の割合で使用される。また、使用する糖質の種類は特に限定されず、例えば、上白糖、グラニュー糖、三温糖、中ざら糖、白ざら糖、氷砂糖、液糖、黒糖などが挙げられる。果実は生か冷凍かは問われないが、一般的に冷凍果実を使用すると抽出期間が短くなる。さらに、果実の品種は特に限定されず、例えば、梅では南高、小粒南高、古城、白加賀、鶯宿、豊後、高田梅、十郎、紅映、花香実、李梅、紅さし、紅の舞などが挙げられる。スモモでは大石早生、ソルダム、太陽、貴陽、秋姫などが、アンズでは平和、昭和、新潟大実、信州大実、ハーコット、ゴールドコットなどが挙げられる。
【0016】
本発明における合わせ調味料は醤油、みりん、日本酒、砂糖をベースとした一般的な調味料であり、砂糖の一部または全部をバラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物に置き換えたものである。置き換える割合については、25重量%以上、100重量%以下が好ましく、30重量%以上90重量%未満がさらに好ましく、40重量%以上80重量%未満がより好ましい。25重量%より低ければ十分な風味の改善効果が得られない。100重量%の全量置き換えでは、果実処理物由来の酸味が感じられるが、十分な風味の改善が得られる。そのため、使用する料理によって本範囲内で適宜調整することが好ましい。
【0017】
果実処理物として糖抽果汁を用いる場合、糖抽果汁のBxはおよそ50%程度であるため、糖抽果汁100g中に含まれる砂糖は50g以下とすることができる。よって、たとえば砂糖の75重量%を糖抽果汁に置換することはおよそ40%の減糖に相当する。
【0018】
本発明においてに使用される醤油は、日本農林規格に定めるしょうゆである。すなわち、日本農林規格に定めるしょうゆが採用でき、具体的には同規格に定められているこいくちしょうゆ(濃口醤油)、うすくちしょうゆ(薄口醤油)などが挙げられ、いずれを採用してもよい。日本農林規格の概要では、醤油とは以下に掲げるものである(これらに砂糖、アルコール類を補助的に加えたものを含む)。
1,大豆(脱脂加工大豆を含む。以下同じ。)若しくは大豆及び麦、米等の穀類(これに小麦グルテンを加えたものを含む。)を蒸煮その他の方法で処理して、こうじ菌を培養したもの(以下「しょうゆこうじ」という。)又はしょうゆこうじに米を蒸し、若しくは膨化したもの若しくはこれをこうじ菌により糖化したものを加えたものに食塩水または生揚げを加えたもの(以下「もろみ」という。)を発酵させ、及び熟成させて得られた清澄な液体調味料(製造工程においてセルラーゼ等の酵素(たん白分解酵素を除く。)を補助的に使用したものを含む。本醸造式によるもの。)
2,もろみにアミノ酸液(大豆等の植物性たん白質を酸により処理したものをいう。以下同じ。)、酵素分解調味液(大豆等の植物性たん白質をたん白分解酵素により処理したものをいう。以下同じ。)又は発酵分解調味液(小麦グルテンを発酵させ、分解したものをいう。以下同じ。)を加えて発酵させ、及び熟成させて得られた清澄な液体調味料(混合醸造方式によるもの)。
3,1、2若しくは生揚げ又はこのうち2つ以上を混合したものにアミノ酸液、酵素分解調味液若しくは発酵分解調味液又はこのうち2つ以上を混合したものを加えたもの(混合方式によるもの)。
【0019】
本発明において使用される減塩醤油は、品質表示基準において、しょうゆ100g中の食塩量が9g以下のものであって、かつ、健康増進法第31条第1項の規定に基づく表示を行ったものであり、たとえばキッコーマン社製の「減塩しょうゆ」が挙げられる。また、低塩醤油とは品質表示基準において上記醤油において塩分を80%以下に抑えたものであって、かつ、健康増進法第31条第1項の規定に基づく表示を行ったものである。
【0020】
本発明において使用されるみりんは酒税法第3条11項に定められたみりんである。すなわち、以下に掲げるものでアルコール分が15度未満のもの(エキス分が40度以上であることその他政令で定める要件を満たすものに限る。)をいう。
1,米及び米こうじに焼酎又はアルコールを加えて、こしたもの
2,米、米こうじ及び焼酎又はアルコールにみりんその他政令で定める物品を加えて、こしたもの
3,みりんに焼酎又はアルコールを加えたもの
4,みりんにみりんかすを加えて、こしたもの
【0021】
本発明において使用される日本酒は酒税法第3条7号に定められる清酒である。すなわち、以下に掲げる酒類でアルコールが22度未満のものをいう。
1,米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
2,米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その他原料中当該政令で定める物品の重量が米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十を超えないものに限る。)
3,清酒に清酒かすを加えて、こしたもの
日本酒は普通酒であっても特定名称酒(本醸造酒、特別本醸造酒、純米酒、特別純米酒、吟醸酒、純米吟醸酒、大吟醸酒、純米大吟醸酒)であってもよい。また、合わせ調味料の風味を損なわない限り、日本酒の代わりに焼酎や醸造アルコールを用いてもよい。
【0022】
本発明において使用される砂糖は一般的に用いられる砂糖である。例えば、上白糖、グラニュー糖、三温糖、液糖などが挙げられる。含みつ糖を用いてもよく、この場合は調味料に複雑味を付与できる。
【0023】
本発明における合わせ調味料は上述した醤油、みりん、日本酒、砂糖およびバラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物を混ぜ合わせ、加熱することで得ることができる。合わせ調味料はこれら以外の調味料を含有していてもよいが、本発明の効力を損なわない範囲で使用することが好ましい。醤油、みりん、日本酒、砂糖およびスモモ亜属果実処理物以外に添加可能な成分としては、食塩、糖質を含まない調味料が好ましいが、糖質を含むはちみつや果物(たとえば、りんご)を加えることによって味に更なる深みを生むことができる。
【0024】
本発明における合わせ調味料は料理によって使用量を調整すればよい。本調味料を使用できる食材に制限はなく、食材としては野菜、肉、魚介が例示可能である。野菜ではダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ等の根菜類;ナス、ピーマン、カボチャ等の果菜類;キャベツ、ハクサイ等の葉菜類が挙げられる。肉類では、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、猪肉など、魚介類では、ブリ、ウナギ、アナゴ等が挙げられる。
【実施例0025】
以下、本発明における実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、容量は調理用計量スプーンで量り取ったものである。また、Bx(ブリックス)は、デジタル屈折計(株式会社アタゴ製)を用いて測定、ショ糖濃度(百分率(%))として算出し、酸度は1/10N水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、クエン酸濃度に換算して百分率(%)として算出した。
【0026】
<実施例1>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅糖抽果汁)=(2、2、2、0.6、1.5)重量で示すと以下のとおりである。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅糖抽果汁)=(36g、36g、30g、4.5g、13.5g)
砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油、梅糖抽果汁を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。(比較例1の砂糖の75重量%を梅糖抽果汁におきかえたもの。)
【0027】
<実施例2>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅糖抽果汁)=(2、2、2、0、1)
重量で示すと以下のとおりである。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅糖抽果汁)=(36g、36g、30g、0g、18g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油、梅糖抽果汁を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。(比較例1の砂糖の100重量%を梅糖抽果汁におきかえたもの。)
【0028】
<実施例3>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅糖抽果汁)=(2、2、2、1、0.5)
重量で示すと以下のとおりである。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅糖抽果汁)=(36g、36g、30g、9g、9g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油、梅糖抽果汁を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。(比較例1の砂糖の50重量%を梅糖抽果汁におきかえたもの。)
【0029】
<実施例4>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅糖抽果汁)=(2、2、2、1.5、0.25)
重量で示すと以下のとおりである。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅糖抽果汁)=(36g、36g、30g、13.5g、4.5g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油、梅糖抽果汁を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。(比較例1の砂糖の25重量%を梅糖抽果汁におきかえたもの。)
【0030】
梅5倍濃縮果汁、スモモ濃縮果汁、アンズ濃縮果汁を、それぞれ希釈・加糖し、梅糖抽果汁と同じBx、酸度(Bx53%、酸度1.8%)に調整し、以下の実施例5~7を作製した(梅5倍濃縮果汁は10倍、スモモ濃縮果汁およびアンズ濃縮果汁は2.5倍希釈しつつ加糖し、梅糖抽果汁の糖酸比にあわせたものを調整物とする)。
<実施例5>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅5倍濃縮果汁調整物)=(2、2、2、0.6、1.5)。
重量で示すと以下のとおりである。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、梅5倍濃縮果汁調整物)=(36g、36g、30g、4.5g、13.5g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油、梅5倍濃縮果汁を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。
【0031】
<実施例6>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、スモモ濃縮果汁調整物)=(2、2、2、0.6、1.5)。
重量で示すと以下のとおりである。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、スモモ濃縮果汁調整物)=(36g、36g、30g、4.5g、13.5g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油、スモモ濃縮果汁を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。
【0032】
<実施例7>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、アンズ濃縮果汁調整物)=(2、2、2、0.6、1.5)。
重量で示すと以下のとおりである。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、アンズ濃縮果汁調整物)=(36g、36g、30g、4.5g、13.5g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油、アンズ濃縮果汁を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。
【0033】
<比較例1>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖)=(2、2、2、2)
重量で示すと以下のとおりである
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖)=(36g、36g、30g、18g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。
【0034】
<比較例2>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(醤油、みりん、日本酒、砂糖)=(2、2、2、2)
重量で示すと以下のとおりである
(醤油、みりん、日本酒、砂糖)=(36g、36g、30g、18g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから醤油を加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。
【0035】
<比較例3>
以下の組成に示す容量比率で合わせ調味料を作製した。
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、レモンシロップ)=(2、2、2、1.5、0.6)
重量で示すと以下のとおりである
(減塩醤油、みりん、日本酒、砂糖、レモンシロップ)=(36g、36g、4.5g、13.5g)砂糖、みりん、日本酒を鍋に加え、アルコールを煮切ってから減塩醤油、レモンシロップを加え、Bx60%程度になるまで煮詰めた。
【0036】
なお、醤油としてはキッコーマン社製の「特選丸大豆しょうゆ」、減塩醤油としてはキッコーマン社製の「減塩しょうゆ 塩分50%カット」、みりんは中野BC株式会社製の「宝来本みりん」、日本酒は中野BC株式会社製の「長久 上撰」、砂糖は新日本精糖株式会社製の「カップ印 グラニュー糖」、梅糖抽果汁は中野BC株式会社製の「うめ糖抽果汁」、梅5倍濃縮果汁は中野BC株式会社製の「うめ5倍濃縮果汁」、スモモ濃縮果汁は株式会社果香製の「レッドプラム濃縮果汁」、アンズ濃縮果汁は雄山株式会社製の「アプリコット濃縮果汁」を用いた。レモンシロップは以下の手順に示すとおりに作製したものを用いた。市販のレモン果実を半分にカットし、果汁を絞って果皮と果汁に分離した。果皮と果汁と砂糖を重量比0.7:0.3:1で混合・浸漬・抽出して作製したレモンシロップを用いた(Bx53%、酸度1.8%)。
【0037】
実施例での減塩の割合は減塩醤油の減塩割合に依存し、今回の減塩の割合は50%であった。
【0038】
実施例1と比較例1、2を焼いたちくわに絡めて官能検査を行い、梅糖抽果汁による減塩醤油の風味のマスキングおよび増強の程度を比較した。比較例1の点数を全て4点とし、総合評価として7段階(7:非常に良い、6:良い、5:やや良い、4:変わらない、3:やや悪い、2:悪い、1:非常に悪い)で評価し、旨味、甘味、塩味、酸味、コク、それぞれの項目についても7段階(7:非常に強い、6:強い、5やや強い、4:変わらない、3:やや弱い、2:弱い、1:非常に弱い)で相対評価した。各項目の評価について、4.5点以上で差が現れたと判断した。訓練されたパネラーは6名であった。
結果を表1に示した。比較例2と実施例1の総合評価はそれぞれ5.2点、5.8点であり、どちらも比較例1よりも高評価を得られた(図1)。比較例2の点数を1とすると、比較例1の評価は0.8点となり、減塩醤油を使用することによって味のコク、旨味が損なわれ、評価が下がる結果となった。一方、実施例1の評価は1.1点となり、梅糖抽果汁を使用することで普通醤油を使用した際に比べて同等以上の評価が得られた(図1)。具体的には、減塩醤油を使用することによって弱くなった旨味、コク、塩味が、梅糖抽果汁を使用すること(実施例1)でそれぞれ5.6点、6点、5点と、普通の醤油を使用した時の評価(旨味、コク、塩味がそれぞれ5.5点、5.1点、5.6点)と同等かそれ以上であった。さらに、梅糖抽果汁は梅:砂糖=1:1(w/w)であるため、実施例1は砂糖の使用量が比較例2のおよそ60%になっている。それにもかかわらず、甘味が5点であり、比較例2(4.8点)より高くなった(図2)。実施例1は比較例2と同等以上の評価が得られただけでなく、酸味の増強により適度なさっぱり感が得られるため好ましいという意見が多かった。以上より、梅糖抽果汁は減塩醤油を使用することで弱くなってしまう調味料の風味を増強する効果があることが確かめられた。

【0039】
【表1】
【0040】
実施例1と比較例1をウナギの白焼きにつけることでかば焼き風にし、官能検査を行った。比較例1の点数を全て4点とし、総合評価として7段階(7:非常に良い、6:良い、5:やや良い、4:変わらない、3:やや悪い、2:悪い、1:非常に悪い)で評価し、旨味、甘味、塩味、酸味、コク、それぞれの項目についても7段階(7:非常に強い、6:強い、5やや強い、4:変わらない、3:やや弱い、2:弱い、1:非常に弱い)で相対評価した。総合評価について4.5点以上でやや効果あり、5.0点以上で十分な効果ありと判断し、各項目の評価においては、4.5点以上で差が現れたと判断した。訓練を受けたパネラーは7名であった。実施例1は砂糖の使用量が減っているにもかかわらず6.2点と、高い総合評価を得た(図3)。具体的には、旨味、コク、甘味がそれぞれ6.1点、6.1点、5.3点であり、比較例1(各4点)より約1.5倍の評価となり減塩醤油による味の弱さ、薄さをマスキングおよび増強出来ていた。(図4)。さらに、塩味および酸味は4.2点、4.4点であり、味全体のバランスにほとんど影響を与えていなかった。
実施例1は味に深みがありつつもしつこくなく、ウナギの生臭さも抑えられているとの意見が多かった。減塩醤油の欠点である味わい不足の点を梅糖抽果汁によって改善できていただけでなく、おいしさを向上させることができた。
【0041】
実施例1~4および比較例1の合わせ調味料について、訓練を受けたパネラー6名で、そのまま味わう方法で官能検査を行った。比較例1を基準として、比較項目を7段階(7:非常に強い、6:強い、5やや強い、4:変わらない、3:やや弱い、2:弱い、1:非常に弱い)で、総合評価についても同様に7段階(7:非常に良い>>1:非常に悪い)で相対評価した。評価において、4.5点以上で差が現れたと判断し、総合評価については4.5点以上でやや効果あり、5.0点以上で十分な効果ありと判断した。実施例1(比較例1の砂糖の75%を梅糖抽果汁におきかえたもの)、実施例3(50%置換)はそれぞれ5.8点、5.3点であり、かなり高い評価を得られたが、実施例2(100%置換)は4.8点、実施例4(25%置換)は4.6点であり、風味の改善効果があるものの実施例1,3ほど顕著ではなかった(表2、図5)。具体的には、梅糖抽果汁が砂糖を置換する割合が、重量換算で75%置換および50%置換では酸味がそれぞれ5.3点、4.8点であり、比較例1と差が現れるものの、旨味はそれぞれ6.1点、5.5点、コクはそれぞれ6.1点、5.3点であり、これらの味が強化されたため、総合評価においても十分な効果があると認められた。一方、100%置換では酸味が6.3点と強く表れているため、甘味が3.5点と、低く感じられた。酸味が強く表れることで、さっぱりした風味になるものの味全体のバランスが崩れるため、旨味、甘味、塩味、コクの評価が実施例1に劣り、総合評価についても低くなったが、梅糖抽果汁の効果は十分に表れた。25%置換においても、旨味(5.1点)、甘味(4.5点)、塩味(4.5点)、コク(4.6点)において差がみられ、梅糖抽果汁の効果が表れた(図6)。つまり、梅糖抽果汁の置換割合に比例して評価が高くなり、75%で最高点、それを超えると、酸味が強く表れて味のバランスを崩すため、評価が下がっていく傾向が見られたが、全量置き換えでも減塩醤油のマスキング効果は認められた。梅糖抽果汁を適正な割合で使用することで、減塩による風味の低下を防ぐだけでなく、風味を増強することがわかる。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例1および5~7、比較例1、3を焼いたちくわに絡めて官能検査を行い、スモモ亜属果実、また、その他果実による効果の差異について検討した。評価方法は上記方法と同じ方法で行った。結果を表3、図7および図8に示した。実施例1および実施例5~7は総合評価がそれぞれ5.6点、5.3点、4.5点、4.6点であり、比較例1に比べて高い評価を得たのに対して、比較例3は3.8点であり、比較例1と差異がなかった。具体的には、実施例1(梅糖抽果汁)は旨味(5.5点)、甘味(4.8点)、酸味(5.1点)、塩味(5.1点)、コク(5.4点)のすべてで比較例1よりも高い値を得た。実施例5(梅5倍濃縮果汁)は、旨味(4.8点)、甘味(4.6点)、コク(5.3点)が、実施例1に比べて少し劣るが、比較例1より高くなっており、塩味(5.3点)はより増強された。実施例6(スモモ濃縮果汁)は旨味(5.1点)、甘味(4.6点)、酸味(5.3点)、塩味(4.5点)、コク(5.0点)が、実施例7(アンズ濃縮果汁)は旨味(5.0点)、甘味(4.1点)、酸味(4.6点)、塩味(4.6点)、コク(4.3点)が、実施例1に及ばないものの減塩醤油を使用したことによる風味低下を十分に改善した。一方、比較例3(レモンシロップ)は旨味(4.1点)、甘味(4.5点)、酸味(4.8点)、塩味(4.1点)、コク(4.3点)と、甘味と酸味以外の効果が認められなかった。
このことから、減塩醤油を使用したことによる合わせ調味料の風味は、バラ科サクラ属スモモ亜属の果実処理物によって改善され、これはスモモ亜属に特有の効果であることが明らかになった。
【0044】
【表3】
【0045】
なお、上記の試験はそれぞれ別日に行ったため、実施例1の評価点が多少異なっているが、同一の配合比率で実施し、いずれも同じ傾向を示しているため、本発明への影響はない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
たとえば、減塩醤油、減塩めんつゆ、減塩だしなどの減塩調味料は各製造業者から、販売されているが、減塩されているため、塩味、旨味が損なわれ、味に深みのない、さっぱりとした、もの足りない味わいのものが多い。本発明において、減塩かつ減糖しながらも深いコクと旨味を強調する合わせ調味料を提供することが可能になった。そのため、これまではなかった例えば、てりやきのたれ、みたらし、焼き肉のたれのような味に深みのある調味料においても、減塩・減糖と旨味の両立が可能になり、消費者の味の満足度を損なうことなく減塩および減糖の選択肢を与えることができるようになる。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8