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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176469
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】液封マウント製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
F16F13/10 L
F16F13/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095018
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047CA01
3J047DA01
3J047DA02
3J047FA02
3J047GA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より簡単に液封マウントを得ることができる液封マウント製造方法を、提供する。
【解決手段】液封マウントを製造するための、液封マウント製造方法であって、加硫成形により液無しマウント1を得る、加硫工程と、液無しマウントに作動液Lを注入する、作動液注入工程と、を含み、液無しマウントは、外筒部材2と、内側部材3と、外筒部材及び内側部材どうしを連結する本体ゴム4と、ダイヤフラム5と、本体ゴムとダイヤフラムとの間に位置する仕切り部材6と、を備え、液無しマウントの仕切り部材の表面は、ダイヤフラムに対して全周にわたって接合された、対ダイヤフラム接合部61と、対ダイヤフラム接合部の内周側に位置し、ダイヤフラムに対して接合されていないが接触している、対ダイヤフラム非接合部62と、本体ゴムに対して接合されていないが接触している、対本体ゴム非接合部63と、を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液封マウントを製造するための、液封マウント製造方法であって、
加硫成形により液無しマウントを得る、加硫工程と、
前記液無しマウントに作動液を注入する、作動液注入工程と、
を含み、
前記液無しマウントは、
外筒部材と、
内側部材と、
前記外筒部材及び前記内側部材どうしを連結する本体ゴムと、
ダイヤフラムと、
前記本体ゴムと前記ダイヤフラムとの間に位置する仕切り部材と、
を備え、
前記液無しマウントの前記仕切り部材の表面は、
前記ダイヤフラムに対して全周にわたって接合された、対ダイヤフラム接合部と、
前記対ダイヤフラム接合部の内周側に位置し、前記ダイヤフラムに対して接合されていないが接触している、対ダイヤフラム非接合部と、
前記本体ゴムに対して接合されていないが接触している、対本体ゴム非接合部と、
を有しており、
前記作動液注入工程では、前記仕切り部材の前記対ダイヤフラム非接合部と前記ダイヤフラムとの間の第1隙間に前記作動液が入り込むことにより副液室が形成され、前記仕切り部材の前記対本体ゴム非接合部と前記本体ゴムとの間の第2隙間に前記作動液が入り込むことにより主液室が形成されて、前記液封マウントが得られる、液封マウント製造方法。
【請求項2】
前記液無しマウントの前記仕切り部材は、前記第1隙間及び前記第2隙間どうしを連通するオリフィスを有している、請求項1に記載の液封マウント製造方法。
【請求項3】
前記液無しマウントは、前記ダイヤフラムと一体に形成された注入用チューブをさらに備えており、
前記液無しマウントにおいて、前記注入用チューブの中央孔は、前記第1隙間及び前記オリフィスに連通しており、
前記作動液注入工程では、前記注入用チューブから前記作動液を注入する、請求項2に記載の液封マウント製造方法。
【請求項4】
前記液無しマウントは、前記注入用チューブを留めるためのクリップ部をさらに備えており、
前記液封マウント製造方法は、前記作動液注入工程の後、前記注入用チューブを前記クリップ部に留めることによって前記注入用チューブの前記中央孔を封止する、注入用チューブ留め工程を、さらに含む、請求項3に記載の液封マウント製造方法。
【請求項5】
前記注入用チューブ留め工程では、前記注入用チューブにつられて前記ダイヤフラムが引っ張られることにより、前記第1隙間と前記オリフィスとの連通部が広げられる、請求項4に記載の液封マウント製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液封マウント製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれゴム及び金具どうしが加硫接着されてなる複数の組合せ部材を予め製造し、その後、これら複数の組合せ部材どうしを非圧縮性流体中で組み立ててかしめ固定する等して、液封マウントを製造する方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-169750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液封マウント製造方法は、複雑であり、簡単化の余地があった。
【0005】
この発明は、より簡単に液封マウントを得ることができる液封マウント製造方法を、提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕液封マウントを製造するための、液封マウント製造方法であって、
加硫成形により液無しマウントを得る、加硫工程と、
前記液無しマウントに作動液を注入する、作動液注入工程と、
を含み、
前記液無しマウントは、
外筒部材と、
内側部材と、
前記外筒部材及び前記内側部材どうしを連結する本体ゴムと、
ダイヤフラムと、
前記本体ゴムと前記ダイヤフラムとの間に位置する仕切り部材と、
を備え、
前記液無しマウントの前記仕切り部材の表面は、
前記ダイヤフラムに対して全周にわたって接合された、対ダイヤフラム接合部と、
前記対ダイヤフラム接合部の内周側に位置し、前記ダイヤフラムに対して接合されていないが接触している、対ダイヤフラム非接合部と、
前記本体ゴムに対して接合されていないが接触している、対本体ゴム非接合部と、
を有しており、
前記作動液注入工程では、前記仕切り部材の前記対ダイヤフラム非接合部と前記ダイヤフラムとの間の第1隙間に前記作動液が入り込むことにより副液室が形成され、前記仕切り部材の前記対本体ゴム非接合部と前記本体ゴムとの間の第2隙間に前記作動液が入り込むことにより主液室が形成されて、前記液封マウントが得られる、液封マウント製造方法。
【0007】
〔2〕前記液無しマウントの前記仕切り部材は、前記第1隙間及び前記第2隙間どうしを連通するオリフィスを有している、〔1〕に記載の液封マウント製造方法。
【0008】
〔3〕前記液無しマウントは、前記ダイヤフラムと一体に形成された注入用チューブをさらに備えており、
前記液無しマウントにおいて、前記注入用チューブの中央孔は、前記第1隙間及び前記オリフィスに連通しており、
前記作動液注入工程では、前記注入用チューブから前記作動液を注入する、〔2〕に記載の液封マウント製造方法。
【0009】
〔4〕前記液無しマウントは、前記注入用チューブを留めるためのクリップ部をさらに備えており、
前記液封マウント製造方法は、前記作動液注入工程の後、前記注入用チューブを前記クリップ部に留めることによって前記注入用チューブの前記中央孔を封止する、注入用チューブ留め工程を、さらに含む、〔3〕に記載の液封マウント製造方法。
【0010】
〔5〕前記注入用チューブ留め工程では、前記注入用チューブにつられて前記ダイヤフラムが引っ張られることにより、前記第1隙間と前記オリフィスとの連通部が広げられる、〔4〕に記載の液封マウント製造方法。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、より簡単に液封マウントを得ることができる液封マウント製造方法を、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る液封マウント製造方法におけるマウント骨格部作成工程を説明するための図面である。
図2】本発明の一実施形態に係る液封マウント製造方法における加硫工程を説明するための図面であり、加硫成形用金型内に未加硫ゴムを射出する直前の状態を概略的に示す、軸線方向断面図である。
図3図2の加硫工程により得られる液無しマウントを概略的に示す、軸線方向断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る液封マウント製造方法における作動液注入工程及び注入用チューブ留め工程の後に得られる液封マウントを概略的に示す、軸線方向断面図である。
図5図4の液封マウントを図4のA矢印の方向に見た様子を概略的に示す、A矢視図である。
図6図4の液封マウントの使用時の動作例を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る液封マウント製造方法によって得られる液封マウントは、例えば、車両の防振装置に用いられると好適であり、超小型モビリティ―等の廉価な車両の防振装置に用いられると特に好適である。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る液封マウント製造方法の実施形態を例示説明する。
【0014】
図1図5は、本発明の一実施形態に係る液封マウント製造方法を説明するための図面である。本実施形態の液封マウント製造方法は、例えば図4及び図6に示すような液封マウント1を製造するために使用されるものである。図6は、図4の液封マウント1の使用時の状態の一例を示している。図4及び図6の例の液封マウント1は、車両の防振装置(具体的には、エンジンマウント)に用いられるように構成されており、後述のように、いわゆる釣り下げ型に構成されている。
ただし、本明細書で説明する各例の液封マウント1は、釣り下げ型に限られず、例えば、いわゆる圧縮型に構成されてもよい。また、液封マウント1の軸線方向は、任意の方向に指向されてよい。
【0015】
本実施形態の液封マウント製造方法は、主に、マウント骨格部作成工程と、加硫工程と、作動液注入工程と、を含む。
マウント骨格部作成工程(図1)では、マウント骨格部1’’(図2)を作成する。マウント骨格部1’’は、その後の加硫工程(図2)において用いられる加硫成形用金型M内にセットされるように構成される。マウント骨格部1’’は、それぞれゴム以外の材料(例えば、樹脂及び/又は金属)から構成される複数の部材のみから構成されている。より具体的に、本実施形態において、マウント骨格部1’’は、それぞれゴム以外の材料(例えば、樹脂及び/又は金属)から構成される、外筒部材2と、内側部材3と、仕切り部材6と、を備えている。
加硫工程(図2)では、加硫成形用金型M内にマウント骨格部1’’をセットした状態で、未加硫ゴムを加硫成形用金型M内に射出して加硫成形を行うことにより、液無しマウント1’(図3)を得る。加硫工程では、それぞれゴムからなる部材である、本体ゴム4と、ダイヤフラム5と、が形成される。すなわち、液無しマウント1’は、マウント骨格部1’’を構成する、外筒部材2と、内側部材3と、仕切り部材6と、に加えて、本体ゴム4と、ダイヤフラム5と、をさらに備えている。マウント骨格部1’’の構成は、特に断りが無い限り、液無しマウント1’も同様に備えている。
作動液注入工程(図4)では、液無しマウント1’に作動液Lを注入し、それにより、液封マウント1(図4)を得る。液封マウント1は、液無しマウント1’に作動液Lが封入された構造を有している。したがって、液無しマウント1’の構成は、特に断りが無い限り、液封マウント1も同様に備えている。
【0016】
作動液Lは、例えば、エチレングリコール、シリコンオイル等からなる。
【0017】
本明細書では、液無しマウント1’や液封マウント1を単に「マウント(1’、1)」と呼ぶ場合がある。
また、本明細書では、マウント1’、1について説明する際、便宜のため、特に断りが無い限りは、各図面に示すように、マウント1’、1に入力が加わっておらず、マウント1’、1が静止した、通常の状態にあるときの構造について、説明するものとする。
【0018】
以下では、説明の便宜のため、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1の構成について簡単に説明した後、本実施形態の液封マウント製造方法の各工程について、より詳しく説明する。
【0019】
本明細書では、外筒部材2の中心軸線Oを、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1のそれぞれの中心軸線Oとみなすものとする。また、本明細書では、各図に矢印で示すように、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1の中心軸線Oに平行な方向を、「軸線方向(A)」といい、軸線方向Aにおける一方側を「軸線方向第1側(A1)」といい、軸線方向Aにおける他方側を「軸線方向第2側(A2)」という。本実施形態においては、例えば、軸線方向Aは略鉛直方向であり、軸線方向第1側A1は上側であり、軸線方向第2側A2は下側であり、マウント1が釣り下げ型に構成されているが、軸線方向は任意の方向に指向されてよい。例えば、軸線方向第1側A1を下側とし、軸線方向第2側A2を上側とする等して、マウント1を圧縮型に構成してもよい。また、本明細書では、特に断りが無い限り、軸線方向においてマウント骨格部1’’及びマウント1’、1の中心から遠い側を「軸線方向外側」といい、軸線方向においてマウント骨格部1’’及びマウント1’、1の中心に近い側を「軸線方向内側」といい、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1の中心軸線Oに垂直な方向を、「軸直方向」といい、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1の中心軸線Oに近い側を「内周側」といい、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1の中心軸線Oから遠い側を「外周側」といい、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1の中心軸線Oを中心とする周方向を「周方向」といい、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1の中心軸線Oを中心とする径方向を「径方向」という。
【0020】
図1図4図6に示すように、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1において、外筒部材2は、軸線方向Aに延在する略筒状をなしている。外筒部材2は、その内部に他の種々の部材が配置されるように構成されている。図6に示すように、外筒部材2は、液封マウント1の使用時において、振動受部材としての車体用ブラケットBVに連結されるように構成されている。
本実施形態において、外筒部材2は、本体部21と、フランジ部22と、環状部23と、を有している。本体部21は、軸線方向Aに延在する筒状(例えば、円筒状)をなしている。フランジ部22は、本体部21における軸線方向第1側A1の端部から外周側へ延在している。フランジ部22は、ボルト等の締結部材F1を介して、振動受部材としての車体用ブラケットBVに連結されるように構成されている(図6)。環状部23は、本体部21における軸線方向第2側A2の端部から内周側(図の例では、より具体的に、内周側かつ軸線方向第2側A2)へ延在しているとともに、中心軸線Oに至る手前で終端しており、それにより、中心軸線Oの周りを全周にわたって延在しており、ひいては、環状に延在している。環状部23の内周端部は、中心軸線O上に位置する中央穴23hを区画している。
ただし、外筒部材2の形状は、本実施形態とは異なるものでもよい。
外筒部材2は、本実施形態において金属(例えばアルミニウム)から構成されているが、樹脂等の他の材料から構成されてもよい。
【0021】
図1図4図6に示すように、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1において、内側部材3は、軸線方向Aに延在している。内側部材3は、外筒部材2の中央穴23hを挿通し、内側部材3の軸線方向第1側A1の部分が、外筒部材2の内部に位置するように、構成されている。図6に示すように、内側部材3は、液封マウント1の使用時において、振動発生部材としてのエンジン用ブラケットBEに連結されるように構成されている。
内側部材3を構成する材料としては、例えば、金属、及び/又は、樹脂等が挙げられる。
本実施形態において、内側部材3は、ピン部32と、ピストン部31と、を有している。
ピン部32は、外筒部材2と同軸状に軸線方向Aに延在する棒状に構成されている。ピン部32は、外筒部材2の中央穴23hを挿通し、ピン部32の軸線方向第1側A1の先端部32tが、外筒部材2の内部に位置するように、構成されている。本実施形態において、ピン部32は、軸線方向第2側A2において、めねじを有しており、このめねじに取り付けられるボルト等の締結部材F2を介して、振動発生部材としてのエンジン用ブラケットBEに連結されるように構成されている(図6)。
ピストン部31は、図1図2に示すように、外筒部材2の内部に位置するように構成されている。ピストン部31は、本実施形態において、キャップ部311と、羽根部312と、を有している。キャップ部311は、軸線方向第2側A2が開放された凹部311rを有するキャップ状に構成されており、凹部311r内にピン部32の軸線方向第1側A1の先端部32tが挿入された状態でピン部32の先端部32tに固定されるように構成されている。羽根部312は、キャップ部311から外周側(図の例では、より具体的に、外周側かつ軸線方向第1側A1)へ延在している。羽根部312は、本実施形態において、全周にわたって延在しており、ひいては、環状をなしている。羽根部312の外径は、外筒部材2の中央穴23hの直径よりも大きく、それにより、ピストン部31が外筒部材2の中央穴23hから軸線方向第2側A2へ抜けないようにされている。
ただし、ピン部32とピストン部31とは、一体に構成され、それにより、内側部材3が一部材からなっていてもよい。
ピン部32は、本実施形態において金属(例えばアルミニウム)から構成されているが、樹脂等の他の材料から構成されてもよい。
ピストン部31は、本実施形態において樹脂から構成されているが、金属(例えばアルミニウム)等の他の材料から構成されてもよい。
ピン部32とピストン部31とは、互いに異なる材料から構成されていてもよいし、あるいは、互いに同じ材料から構成されていてもよい。
【0022】
マウント1’、1において、本体ゴム4は、ゴムから構成されており、図3図4に示すように、外筒部材2及び内側部材3どうしを連結するように構成される。本体ゴム4は、仕切り部材6よりも軸線方向第2側A2に位置するとともに、外筒部材2の内部に位置している。
【0023】
マウント1’、1において、ダイヤフラム5は、ゴムから構成されている。ダイヤフラム5は、図3図4に示すように、仕切り部材6よりも軸線方向第1側A1に位置している。
【0024】
マウント骨格部1’’及びマウント1’、1において、仕切り部材6は、図2に示すように、内側部材3よりも軸線方向第1側A1に位置するように、構成されている。
仕切り部材6は、本実施形態において、略板状に構成されており、本体部66と、フランジ部67と、を有している。
本体部66は、略板状(例えば、略円板状)に構成されている。本体部66は、外筒部材2の軸線方向第1側A1の開放端面のほぼ全体を塞ぐように構成されており、本体部66の外周面が外筒部材2の本体部21の内周面に接触するように構成されている。
フランジ部67は、本体部66の外周端部から軸線方向第1側A1へ延在した後に外周側へ延在している。フランジ部67は、中心軸線Oの周りを全周にわたって延在しており、それにより、環状をなしている。フランジ部67の軸線方向第2側A2の面は、外筒部材2のフランジ部22の軸線方向第1側A1の面に接触するように構成されている。
マウント1’、1(図3図4)において、仕切り部材6は、軸線方向Aにおける本体ゴム4とダイヤフラム5との間に位置している。液封マウント1(図4)において、軸線方向Aにおける仕切り部材6と本体ゴム4との間には、主液室R2が区画されており、軸線方向Aにおける仕切り部材6とダイヤフラム5との間には、副液室R1が区画されている。これにより、仕切り部材6は、液封マウント1内の液室Rを、軸線方向Aにおいて主液室R2と副液室R1とに分割しているといえる。
仕切り部材6は、オリフィス64を有している。液封マウント1(図4)において、オリフィス64は、主液室R2及び副液室R1どうしを連通する。これにより、液室R内の作動液Lが、オリフィス64を介して、主液室R2と副液室R1との間を行き来できるようにされている(図6)。ひいては、オリフィス64内を行き来する作動液Lの流動抵抗による振動減衰効果を発揮することができる。また、オリフィス64内の液共振により所定の周波数での動特性を得ることができる。
仕切り部材6は、本実施形態において樹脂から構成されているが、金属(例えばアルミニウム)等の他の材料から構成されてもよい。
【0025】
つぎに、本実施形態の液封マウント製造方法の各工程について、より詳しく説明する。
【0026】
まず、マウント骨格部作成工程(図1)において、予め準備した外筒部材2、内側部材3、及び仕切り部材6どうしを組み付けて、マウント骨格部1’’(図2)を作成する。
マウント骨格部作成工程においては、マウント骨格部1’’を構成する各部材(外筒部材2、内側部材3、及び仕切り部材6)のうち一部又は全ての部材に対し、他の部材との接合(固定)を促すための表面加工処理を行う。これにより、この後、表面加工処理を行った部分で互いに突き合う(接触する)2つの部材どうしが、接合(固定)されることとなる。
【0027】
より具体的に、マウント骨格部作成工程(図1)において、本実施形態では、内側部材3を組み付けるにあたって、まず、ピン部32の先端部32tの外周面に、表面加工処理を施し、それにより、表面加工処理が施されてなる対ピストン部接合部34(各図においてドットハッチングにより示している。)を形成する。対ピストン部接合部34は、その後にピン部32及びピストン部31どうしが組付けられる際にピストン部31との接合が促されるように構成される。その後、ピストン部31を外筒部材2の内部に配置した状態で、ピン部32の先端部32tをピストン部31のキャップ部311の凹部311r内に挿入する。これにより、ピン部32の先端部32tがピストン部31の凹部311rに嵌合し、また、ピン部32及びピストン部31どうしが、対ピストン部接合部34にて接合される。
なお、本実施形態のように、ピン部32及びピストン部31のうち一方(本実施形態では、ピン部32)が金属から構成されるとともに、ピン部32及びピストン部31のうち他方(本実施形態では、ピストン部31)が樹脂から構成される場合、ピン部32及びピストン部31どうしを組み付けるにあたっては、ピン部32及びピストン部31のうち金属からなる方(本実施形態では、ピン部32)を電磁誘導加熱等により加熱して、ピン部32及びピストン部31のうち樹脂からなる方(本実施形態では、ピストン部31)に熱圧入するようにしてもよい。この場合、対ピストン部接合部34での接合をより確実なものとすることができる。
ピン部32の先端部32t、並びに、ピストン部31のキャップ部311の凹部311rは、図1に示す例のように、軸線方向第1側A1に向かうにつれて先細りとなるテーパー状に構成されていると、好適である。
ただし、対ピストン部接合部34は必須ではない。
また、上述のように、ピン部32とピストン部31とは、一体に構成され、それにより、内側部材3が一部材からなっていてもよい。
【0028】
また、マウント骨格部作成工程(図1)において、本実施形態では、内側部材3の表面の少なくとも一部に、表面加工処理を施し、それにより、表面加工処理が施されてなる対本体ゴム接合部33(各図においてドットハッチングにより示している。)を形成する。対本体ゴム接合部33は、その後の加硫工程(図2図3)において本体ゴム4との接合が促されるように構成される。より具体的には、図1に示す例のように、内側部材3のピストン部31の羽根部312の表面の少なくとも一部に、対本体ゴム接合部33を形成すると、好適である。図1に示す例において、内側部材3のピストン部31のキャップ部311の表面には、対本体ゴム接合部33が形成されないが、キャップ部311の表面の少なくとも一部に対本体ゴム接合部33を形成してもよい。
そして、加硫工程(図2図3)においては、内側部材3及び本体ゴム4どうしが、対本体ゴム接合部33にて接合されることとなる。
ただし、対本体ゴム接合部33は必須ではない。
【0029】
また、マウント骨格部作成工程(図1)において、本実施形態では、仕切り部材6及び外筒部材2どうしを組み付けるにあたって、まず、外筒部材2の本体部21の内周面のうち、仕切り部材6と接触することとなる部分に、表面加工処理を施し、それにより、表面加工処理が施されてなる対仕切り部材接合部24(各図においてドットハッチングにより示している。)を形成する。対仕切り部材接合部24は、その後に仕切り部材6及び外筒部材2どうしが組付けられる際に仕切り部材6との接合が促されるように構成される。その後、内側部材3のピストン部31が外筒部材2の内部に配置された状態で、仕切り部材6のフランジ部67が外筒部材2のフランジ部22に当たるまで、仕切り部材6の本体部66を外筒部材2の本体部21内に挿入する。これにより、仕切り部材6の本体部66が外筒部材2の本体部21に嵌合し、また、仕切り部材6及び外筒部材2どうしが、対仕切り部材接合部24にて接合される。
なお、本実施形態のように、仕切り部材6及び外筒部材2のうち一方(本実施形態では、外筒部材2)が金属から構成されるとともに、仕切り部材6及び外筒部材2のうち他方(本実施形態では、仕切り部材6)が樹脂から構成される場合、仕切り部材6及び外筒部材2どうしを組み付けるにあたっては、仕切り部材6及び外筒部材2のうち金属からなる方(本実施形態では、外筒部材2)を電磁誘導加熱等により加熱して、仕切り部材6及び外筒部材2のうち樹脂からなる方(本実施形態では、仕切り部材6)に熱圧入するようにしてもよい。この場合、対仕切り部材接合部24での接合をより確実なものとすることができる。
ただし、対仕切り部材接合部24は必須ではない。
【0030】
また、マウント骨格部作成工程(図1)において、本実施形態では、外筒部材2の表面のうち本体ゴム4と接触することとなる部分の少なくとも一部に、表面加工処理を施し、それにより、表面加工処理が施されてなる対本体ゴム接合部25(各図においてドットハッチングにより示している。)を形成する。対本体ゴム接合部25は、その後の加硫工程(図2図3)において本体ゴム4との接合が促されるように構成される。より具体的には、図1に示す例のように、外筒部材2の環状部23の軸線方向第1側A1の表面の少なくとも一部に、対本体ゴム接合部25を形成すると、好適である。図1に示す例において、外筒部材2の本体部21の内周面には、対本体ゴム接合部25が形成されないが、外筒部材2の本体部21の内周面のうち本体ゴム4と接触することとなる部分の少なくとも一部に対本体ゴム接合部25を形成してもよい。
そして、加硫工程(図2図3)においては、外筒部材2及び本体ゴム4どうしが、対本体ゴム接合部25にて接合されることとなる。
ただし、対本体ゴム接合部25は必須ではない。
【0031】
また、マウント骨格部作成工程(図1)において、本実施形態では、仕切り部材6の軸線方向第1側A1の表面の一部に、表面加工処理を施し、それにより、表面加工処理が施されてなる対ダイヤフラム接合部61(各図においてドットハッチングにより示している。)を形成する。対ダイヤフラム接合部61は、その後の加硫工程(図2図3)においてダイヤフラム5との接合が促されるように構成される。図1に示すように、仕切り部材6の軸線方向第1側A1の表面のうち外周側部分のみに対ダイヤフラム接合部61を形成すると、好適であり、例えば、仕切り部材6の軸線方向第1側A1の表面のうち、フランジ部67の軸線方向第1側A1の表面の少なくとも一部のみに、対ダイヤフラム接合部61を形成すると、好適である。対ダイヤフラム接合部61は、中心軸線Oの周りを全周にわたって延在し、それにより環状をなしている。図1に示す例のように、仕切り部材6の本体部66の軸線方向第1側A1の表面には、対ダイヤフラム接合部61を形成しないことが、好適である。
そして、加硫工程(図2図3)においては、仕切り部材6及びダイヤフラム5どうしが、対ダイヤフラム接合部61にて接合されることとなる。
【0032】
マウント骨格部作成工程(図1)において、仕切り部材6の軸線方向第2側A2の表面には、他の部材(本体ゴム4や内側部材3)との接合を促すための表面加工処理がされないことが、好適である。
また、マウント骨格部作成工程(図1)において、内側部材3の軸線方向第1側A1の端面35には、仕切り部材6との接合を促すための表面加工処理がされないことが、好適である。
【0033】
なお、対ピストン部接合部34、対本体ゴム接合部33、対仕切り部材接合部24、対本体ゴム接合部25、対ダイヤフラム接合部61のそれぞれにおける上記表面加工処理としては、例えば、表面加工処理の対象となる表面に、レーザーによる表面加工を施し、それにより、当該表面に多数の微小溝(ひいては、凹凸)を形成するものが挙げられる。この場合、アンカー効果により、当該表面において互いに接触する2つの部材どうしの接合が促される。この表面加工処理としては、例えば、特開2020-116862号公報、特許第6489908号に記載されたものを採用してもよい。
あるいは、対ピストン部接合部34、対本体ゴム接合部33、対仕切り部材接合部24、対本体ゴム接合部25、対ダイヤフラム接合部61のそれぞれにおける上記表面加工処理としては、例えば、表面加工処理の対象となる表面に、接着剤を塗布等するものでもよい。
【0034】
加硫工程(図2)では、加硫成形用金型M内にマウント骨格部1’’をセットした状態で、未加硫ゴムを加硫成形用金型M内に射出して加硫成形を行うことにより、液無しマウント1’(図3)を得る。
加硫成形用金型Mは、例えば、図2に示す例のように、軸線方向Aにおいて2分割されてなる第1分割型M1及び第2分割型M2を備える。第1分割型M1は、第2分割型M2に対して軸線方向第1側A1に位置している。
加硫成形用金型M内にマウント骨格部1’’がセットされた状態において、加硫成形用金型M内には、第1キャビティV1と、第2キャビティV2とが、区画される。第1キャビティV1は、軸線方向第2側A2を向く第1分割型M1の成形面と仕切り部材6の軸線方向第1側A1の面とによって区画されており、ダイヤフラム5を成形するように構成されている。第2キャビティV2は、軸線方向第1側A1を向く第2分割型M2の成形面(より具体的に、本実施形態では、後述の環状凸部M21)と仕切り部材6の軸線方向第2側A2の面と内側部材3(より具体的にはピストン部31)の表面と外筒部材2の内表面とによって区画されており、本体ゴム4を成形するように構成されている。
加硫工程では、第1キャビティV1及び第2キャビティV2内に未加硫ゴムが射出され、それにより、ダイヤフラム5及び本体ゴム4が形成される。
第1キャビティV1及び第2キャビティV2どうしは、繋がっていなくてもよいし、繋がっていてもよい。
加硫工程では、図2に示す例のように、仕切り部材6のオリフィス64内にゴムが入り込まないよう、オリフィス64が加硫成形用金型Mの一部等によって塞がれていると、好適である。
【0035】
加硫工程では、マウント骨格部1’’を構成する、ゴム以外の材料からなる部材(外筒部材2、内側部材3、仕切り部材6)と、ゴムからなる部材(本体ゴム4、ダイヤフラム5)とが、互いに接触する部分のうち、上記表面加工処理が施された部分(対本体ゴム接合部33、対本体ゴム接合部25、対ダイヤフラム接合部61)では、当該部分で互いに接触する2つの部材どうしが互いに接合されるのに対し、それ以外の部分においては、当該部分で互いに接触する2つの部材どうしが、互いに接合(固定)されない。
したがって、加硫工程により得られる液無しマウント1’(図3)において、仕切り部材6は、その軸線方向第1側A1の表面が、ダイヤフラム5に対して全周にわたって接合された、対ダイヤフラム接合部61と、対ダイヤフラム接合部61の内周側に位置し、ダイヤフラム5に対して接合されていないが接触している、対ダイヤフラム非接合部62と、を有することとなる。また、液無しマウント1’において、仕切り部材6は、その軸線方向第2側A2の表面が、そのほぼ全体にわたって、本体ゴム4に対して接合されていないが接触している、対本体ゴム非接合部63を、有することとなる。
また、液無しマウント1’(図3)において、内側部材3の表面は、対本体ゴム接合部33において、本体ゴム4と接合されているのに対し、それ以外の本体ゴム4と接触する部分においては、本体ゴム4と接合されていない。
また、液無しマウント1’(図3)において、外筒部材2の表面は、対本体ゴム接合部25において、本体ゴム4と接合されているのに対し、それ以外の本体ゴム4と接触する部分においては、本体ゴム4と接合されていない。
【0036】
なお、本明細書では、説明の便宜のため、仕切り部材6の対ダイヤフラム非接合部62とダイヤフラム5との間を、「第1隙間G1」といい、仕切り部材6の対本体ゴム非接合部63と本体ゴム4との間を、「第2隙間G2」という。ただし、液無しマウント1’において、第1隙間G1、第2隙間G2は、ほぼ又は完全につぶれた状態であり得る。
【0037】
液無しマウント1’において、仕切り部材6のオリフィス64は、第1隙間G1及び第2隙間のそれぞれに連通しており、言い換えれば、第1隙間G1及び第2隙間どうしを連通している(図3)。
【0038】
作動液注入工程(図4)では、液無しマウント1’に作動液Lを注入し、それにより、液封マウント1(図4)を得る。
より具体的に、作動液注入工程では、仕切り部材6の対ダイヤフラム非接合部62とダイヤフラム5との間の第1隙間G1に作動液Lが入り込んで、第1隙間G1が作動液Lによって膨張することによって、副液室R1が形成され、また、仕切り部材6の対本体ゴム非接合部63と本体ゴム4との間の第2隙間G2に作動液Lが入り込んで、第2隙間G2が作動液Lによって膨張することによって、主液室R2が形成されて、液封マウント1が得られる。このとき、副液室R1の外周側は、全周にわたって延在する対ダイヤフラム接合部61によって、封止されており、液漏れが防止される。また、主液室R2の外周側は、対仕切り部材接合部24、対本体ゴム接合部25によって封止されており、液漏れが防止される。対本体ゴム接合部33も、封止して、主液室R2のからの液漏れを防止する機能を有し得る。
【0039】
液封マウント1(図4)において、仕切り部材6のオリフィス64は、主液室R2及び副液室R1どうしを連通する。これにより、液室R内の作動液Lが、オリフィス64を介して、主液室R2と副液室R1との間を行き来できるようにされている(図6)。
【0040】
液封マウント1の使用時においては、図6に例示するように、外筒部材2が、振動受部材としての車体用ブラケットBVに連結され、内側部材3が、振動発生部材としてのエンジン用ブラケットBEに連結される。そして、振動発生部材BEの軸線方向Aの振動に応じて、主液室R2が拡縮し、それに応じて、作動液Lがオリフィス64を行き来して、副液室R1が拡縮する。このようにして、オリフィス64内を行き来する作動液Lの流動抵抗による振動減衰効果を発揮することができる。また、オリフィス64内の液共振により所定の周波数での動特性を得ることができる。
【0041】
なお、図6に例示するように、エンジン用ブラケットBEは、軸線方向Aの振動時に外筒部材2と衝突する部分において、ゴム等からなるリバウンドストッパーSを備えていると、好適である。この場合、エンジン用ブラケットBEひいては内側部材3が軸線方向第1側A1へと変位したときの液封マウント1内の衝撃(例えば、内側部材3と仕切り部材6との衝突による衝撃等)を和らげ、液封マウント1内部の破損を抑制できる。
【0042】
本実施形態による液封マウント製造方法によれば、上述のように、加硫工程において、外筒部材2と内側部材3と本体ゴム4とダイヤフラム5と仕切り部材6とを備えた液無しマウント1’を得るようにし、その際に、液無しマウント1’の仕切り部材6の表面が、対ダイヤフラム接合部61と、対ダイヤフラム非接合部62と、対本体ゴム非接合部63と、を有するものとし、作動液注入工程では、仕切り部材6の対ダイヤフラム非接合部62とダイヤフラム5との間の第1隙間G1に作動液Lが入り込むことにより副液室R1が形成され、仕切り部材6の対本体ゴム非接合部63と本体ゴム4との間の第2隙間G2に作動液Lが入り込むことにより主液室R2が形成される。副液室R1の外周側は、全周にわたって延在する対ダイヤフラム接合部61によって、封止される。このように、加硫工程を一度行うのみによって、ダイヤフラム5及び本体ゴム4を形成するとともに、仕切り部材6においてダイヤフラム5及び本体ゴム4と接合されない部分である対ダイヤフラム非接合部62及び対本体ゴム非接合部63における第1隙間G1及び第2隙間G2を拡張することにより副液室R1及び主液室R2として活用し、仕切り部材6においてダイヤフラム5と接合する部分である対ダイヤフラム接合部61を封止部として活用することができる。ひいては、例えば、複数の別々の加硫工程を経て複数の組合せ部材を予め製造し、その後、これら複数の組合せ部材どうしを組み立ててかしめ固定する場合等に比べて、加硫工程後の組み立て工程やかしめ工程等を削減することができ、より簡単に液封マウント1を得ることができる。よって、コストの低減が可能となる。
【0043】
本実施形態において、内側部材3のピストン部31は、羽根部312を軸線方向Aに貫通する貫通穴312hを有している。これにより、加硫工程において、本体ゴム4が貫通穴312hに入り込むことができ、ひいては、ピストン部31が本体ゴム4から位置ずれ等しにくくなる。
ただし、貫通穴312hは、必須ではない。
【0044】
本実施形態において、内側部材3(具体的には、ピストン部31)は、加硫工程(図2)をするにあたってマウント骨格部1’’が加硫成形用金型M内にセットされた状態において、内側部材3(具体的には、ピストン部31)の軸線方向第1側A1の端面35が、仕切り部材6の軸線方向第2側A2の面に接触するように、構成されている。これにより、加硫工程(図2)において、未加硫ゴムが第2キャビティV2内を流動する間、内側部材3が位置ずれ(特に、軸線方向第1側A1へ変位)するのを、抑制できる。
なお、本実施形態においては、マウント骨格部1’’が加硫成形用金型M内にセットされる際、内側部材3(具体的には、ピン部32)は、加硫成形用金型Mの第2分割型M2の成形面における環状凸部M21の中央凹部M22内に収容される(図2)。第2分割型M2の環状凸部M21は、外筒部材2の環状部23の中央穴23hの内周側において、外筒部材2の内部に入り込んで、軸線方向第1側A1へ向かって突出するように、構成されている。環状凸部M21は、中心軸線Oの周りで全周にわたって延在しており、それにより、環状をなしている。環状凸部M21の中央凹部M22は、中心軸線O上に位置している。本実施形態では、マウント骨格部1’’が加硫成形用金型M内にセットされた状態において、内側部材3は、内側部材3(具体的には、ピストン部31)の軸線方向第1側A1の端面35と仕切り部材6の軸線方向第2側A2の面との接触によって、軸線方向第1側A1への変位が抑制され、内側部材3(具体的には、ピン部32)が第2分割型M2の環状凸部M21の中央凹部M22内に収容されることによって、軸線方向第2側A2への変位や軸直方向での変位が抑制される。
ただし、これらの構成は、必須ではない。
【0045】
本実施形態においては、作動液注入工程(図4)において、加硫工程においてダイヤフラム5と一体に形成された注入用チューブ7(図3)から、作動液Lを液無しマウント1’の内部に注入する(図4)。加硫成形用金型Mの第1キャビティV1は、ダイヤフラム5に加えて、注入用チューブ7をも形成するように、構成される(図2)。注入用チューブ7は、ゴムから構成されており、筒状に構成されている。液無しマウント1’において、注入用チューブ7の中央孔71は、第1隙間G1と仕切り部材6のオリフィス64とに連通している(図3)。オリフィス64は、上述のように、第1隙間G1及び第2隙間G2のそれぞれに連通している。そして、作動液注入工程(図4)において、注入用チューブ7から注入された作動液L(図4において破線矢印にて示す。)は、第1隙間G1へと入り込むとともに、オリフィス64を介して第2隙間G2へと入り込む(図4)。このように、ダイヤフラム5と一体に形成された注入用チューブ7(図3)から作動液Lを注入することにより、作動液Lを注入するための機構及び当該機構の製造、並びに、作動液Lを注入する作業を、簡単化することができる。
ただし、作動液注入工程(図4)では、本実施形態とは異なる任意の機構及び手法により、液無しマウント1’に作動液Lを注入してよい。
【0046】
本実施形態においては、液無しマウント1’(図3)が、注入用チューブ7を留めるためのクリップ部8をさらに備えている。より具体的には、本実施形態においては、マウント骨格部1’’及びマウント1’、1が、クリップ部8を備えており、クリップ部8は、仕切り部材6と一体に構成されている。クリップ部8は、仕切り部材6と同じ材料から構成されてよい。より具体的に、本実施形態において、クリップ部8は、仕切り部材6のフランジ部67の外周端部に連続して設けられている。クリップ部8は、仕切り部材6の対ダイヤフラム接合部61よりも外周側に位置している。
図5に示すように、本実施形態において、クリップ部8は、スリット81を有している。スリット81は、マウント1’、1の幅方向(図4の左右方向、図5の前後方向)において、クリップ部8を貫通している。また、スリット81は、マウント1’、1の奥行方向(図4の前後方向、図5の左右方向)に延在しており、クリップ部8の奥行方向一方側の端面に開口しているとともに、クリップ部8の奥行方向他方側の端面に至る手前で終端している。スリット81の幅(スリット81の平面視(図5)における、スリット81の延在方向に垂直な方向での幅)は、注入用チューブ7の外径よりも小さい。
そして、本実施形態において、液封マウント製造方法は、作動液注入工程の後、注入用チューブ7をクリップ部8に留めることによって注入用チューブ7の中央孔71を封止する、注入用チューブ留め工程(図4図5)を、さらに含む。注入用チューブ留め工程においては、図4及び図5において矢印で示すように、注入用チューブ7が、横に倒された状態で、クリップ部8のスリット81の奥行方向一方側の開口側から奥行方向他方側に向かってスリット81内へと挿入され、それにより、注入用チューブ7が、クリップ部8に留められる。この際、注入用チューブ7は、スリット81内で潰された状態となり、それにより、注入用チューブ7の中央孔71が封止される。ひいては、液室R内の作動液Lが注入用チューブ7から漏れ出るのを防止できる。
このように、注入用チューブ留め工程によれば、注入用チューブ7を封止するための機構及び当該機構の製造を簡単化でき、また、注入用チューブ7を封止する作業を、工具を要さずにワンタッチでシンプルなものとすることができる。
なお、クリップ部8のスリット81の構成や延在方向等は、本実施形態とは異なっていてもよい。また、クリップ部8の構成や位置等も、本実施形態とは異なっていてもよい。
【0047】
本実施形態においては、注入用チューブ留め工程(図4図5)において、注入用チューブ7がクリップ部8に留められる際に、注入用チューブ7につられて、注入用チューブ7と一体のダイヤフラム5が引っ張られることにより、第1隙間G1とオリフィス64との連通部Jが広げられる。これにより、作動液Lが、第1隙間G1とオリフィス64との間で行き来しやすくなる。
ただし、このことは、必須ではない。
【0048】
なお、本実施形態では、振動受部材BV、振動発生部材BEが、それぞれ、車体用ブラケット、エンジン用ブラケットであり、それにより、液封マウント1が、エンジンマウントとして構成されている。ただし、液封マウント1は、他の用途に用いられてもよく、振動受部材BV、振動発生部材BEは、それぞれ、車体用ブラケット、エンジン用ブラケット以外の部材であってもよい。
【0049】
また、本実施形態では、液封マウント1が、主液室R2が副液室R1に対する下側に位置することにより、釣り下げ型に構成されているが、主液室R2が副液室R1に対する上側に位置することにより、圧縮型に構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る液封マウント製造方法によって得られる液封マウントは、例えば、車両の防振装置に用いられると好適であり、超小型モビリティ―等の廉価な車両の防振装置に用いられると特に好適である。
【符号の説明】
【0051】
1:液封マウント(マウント)、
1’:液無しマウント(マウント)、
1’’:マウント骨格部、
2:外筒部材、 21:本体部、 22:フランジ部、 23:環状部、 23h:中央穴、 24:対仕切り部材接合部、 25:対本体ゴム接合部、
3:内側部材、 31:ピストン部、 311:キャップ部、 311r:凹部、 312:羽根部、 312h:貫通穴、 32:ピン部、 32t:先端部、 33:対本体ゴム接合部、 34:対ピストン部接合、 35:軸線方向第1側の端面、
4:本体ゴム、
5:ダイヤフラム、
6:仕切り部材、 61:対ダイヤフラム接合部、 62:対ダイヤフラム非接合部、 63:対本体ゴム非接合部、 64:オリフィス、 65:対外筒部材接合部、 66:本体部、 67:フランジ部、
G1:第1隙間(隙間)、 G2:第2隙間(隙間)、
L:作動液、
R:液室、 R1:副液室、 R2:主液室、
J:第1隙間とオリフィスとの連通部、
7:注入用チューブ、 71:中央孔、
8:クリップ部、 81:スリット、
A:軸線方向、 A1:軸線方向第1側、 A2:軸線方向第2側、
O:中心軸線
M:加硫成形用金型、 M1:第1分割型、 M2:第2分割型、 M21:環状凸部、 M22:中央凹部、 V1:第1キャビティ、 V2:第2キャビティ、
BE:エンジン用ブラケット(振動発生部材)、 BV:車体用ブラケット(振動受部材)、
S:リバウンドストッパー、
F1、F2:締結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6