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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176476
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】無人航空機直下作業防護装置
(51)【国際特許分類】
   E01F 3/00 20060101AFI20241212BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20241212BHJP
   B64U 10/17 20230101ALI20241212BHJP
   B64U 101/67 20230101ALN20241212BHJP
【FI】
E01F3/00
B64U10/13
B64U10/17
B64U101:67
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095030
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】518279381
【氏名又は名称】株式会社DroneWorkSystem
(74)【代理人】
【識別番号】100177747
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】手島 朋広
(57)【要約】
【課題】無人航空機で貨物を空輸する場合、積み降ろしの都度に離着陸を繰り返し、作業効率が低下し、バッテリーも消耗する。また、安全確保のため、作業員は無人航空機の直下を避けて作業を行う。無人航空機がホバリング状態で安全に積み降ろしをできれば、生産性の向上が実現できる。
【解決手段】作業員の上で無人航空機がホバリングした状態でも、安全かつ効率的に貨物の積み下ろしをできる無人航空機直下作業防護装置とした。その構成は、作業員を護る防護部、これを作業員の頭上に保持する支持部を備え、防護部の外縁の一部に、無人航空機から垂下されるロープを安定して導くために導入部となる凹部を設ける。防護部ともに横方向の作業領域を確保するための防護拡張部を備え、これを横方向及び斜め方向に移動可能な仕様とした。高さ調整も可能で、傾斜がある現場でも安定して配置でき、垂直方向の作業領域も確保できる無人航空機直下作業防護装置とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員を落下物から護る防護部と、この防護部を作業員の頭上に保持する支持部とを有し、前記防護部の外縁の一部に一又は複数の凹部を設けて、作業員が無人航空機から垂下されるロープを前記凹部に沿わせて手繰り寄せるための導入部としたことを特徴とする無人航空機直下作業防護装置。
【請求項2】
作業員を落下物から護る防護部と、この防護部を作業員の頭上に保持する支持部とを有し、前記防護部は更に一又は複数の防護拡張部を有し、移動機構により前記防護拡張部を横方向に移動可能であり、前記防護拡張部の外縁の一部に一又は複数の凹部を設けて、作業員が無人航空機から垂下されるロープを前記凹部に沿わせて手繰り寄せるための導入部としたことを特徴とする無人航空機直下作業防護装置。
【請求項3】
作業員を落下物から護る防護部と、この防護部を作業員の頭上に保持する支持部とを有し、前記防護部の外縁の一部に一又は複数の凹部を設けて、作業員が無人航空機から垂下されるロープを前記凹部に沿わせて手繰り寄せるための導入部とし、前記支持部は、高さ調整機構により前記防護部の高さ及び傾きを調整可能であることを特徴とする無人航空機直下作業防護装置。
【請求項4】
作業員を落下物から護る防護部と、この防護部を作業員の頭上に保持する支持部とを有し、前記防護部は更に一又は複数の防護拡張部を有し、移動機構により前記防護拡張部を横方向に移動可能であり、かつ、角度調整機構により前記防護拡張部を斜め方向に移動可能であり、前記防護拡張部の外縁の一部に一又は複数の凹部を設けて、作業員が無人航空機から垂下されるロープを前記凹部に沿わせて手繰り寄せるための導入部とし、前記支持部は、高さ調整機構により前記防護部及び前記防護拡張部の高さ及び傾きを調整可能であることを特徴とする無人航空機直下作業防護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機を用いた貨物等の運搬業務に関する技術分野に属する。特に、貨物等の積み降ろしの際、無人航空機の直下で作業を行う作業員を墜落事故等の被害から護る可動式の防護装置であり、無人航空機の利活用における安全性と生産性の向上に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
無人航空機は、測量・点検・警備・物流・農業など幅広い分野で活用が進んでいる。出願人も、無人航空機を用いて様々な業務や実証実験を行っているが、その一つに林業分野での取り組みがある。この林業分野では、他の産業にも共通する作業員の高齢化という課題もあるが、それに加えて現場の多くが山間部の傾斜地という厳しい作業環境であり、作業員に対する負荷が高い作業も多いため、省力化とともに安全性や生産性の向上が求められる産業分野の一つであると考えられる。そして、そのような目的のため、情報技術や無人航空機を積極的に活用する新たな林業分野での取り組みに対しては、スマート林業として今後の更なる改善と発展に大きな期待が寄せられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-186523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
林業分野に限らず、現在、幅広い産業分野において、無人航空機を用いた貨物の運搬に関する取り組みが、様々な主体によって行われている。貨物の空輸時における安全性の確保は必須の要請であるが、運搬する貨物を積み降ろしする際にも、作業の安全性とともに作業効率を両立して向上させることが非常に重要になっている。
無人航空機の性能は著しく向上しており、運搬する貨物が相当の重量物となることも多い。そして、出願人がこれまで取り組んできた林業分野での無人航空機の活用に関し、例えば、植林用の苗木を山間の傾斜地まで無人航空機で空輸する場合、苗木を積み降ろしする都度に、無人航空機が離着陸を繰り返している。このような作業手順は、林業分野のみならず、他の分野でも一般化しており、貨物の積み降ろしの都度に無人航空機が離着陸を行い、その際の作業員は自らの安全を確保するため、無人航空機の直下に入らないように常に注意を払いながら慎重に作業を行っている。
そして、無人航空機の離着陸はバッテリーに対する負荷が大きく、離着陸回数の増加は飛行距離の低下と空輸回数の制約を招いている。また、離着陸に要する時間そのものも作業時間の遅延に直結している実状がある。
このような現状に対しては、無人航空機が貨物の積み降ろしの都度に離着陸を行わずにすみ、作業員の上空でホバリングをした状態のまま、安全かつ効率的に貨物の積み降ろし作業を行うことが可能になれば、林業分野における無人航空機による苗木の運搬業務はもとより、他の産業分野での貨物の運搬業務においても、生産性の向上を実現できることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような問題意識に基づき、ロープで貨物を吊り上げた無人航空機が作業員の頭上でホバリングした状態にあっても、その直下において、作業員が安全かつ効率的に貨物の積み降ろし作業を行うことができる無人航空機直下作業防護装置の技術的思想に想到した。
この無人航空機直下作業防護装置の基本構成は、頭上の無人航空機や貨物の落下から作業員を防護するための防護部と、これを作業員の頭上に保持するための支持部を備えている。そして、防護部の外縁の一部についてロープを導き入れることが可能な凹部とし、作業員が無人航空機から垂下されたロープを把持して、この凹部である導入部においてロープの揺動を抑制し、貨物を安定した状態で自己の傍まで導くことが可能なものとした。この導入部については、外縁の一部を突出させて凹部を形成する場合、これとは逆に、突出部とする部材を外縁に付加して凹部を形成する場合、奥に向かうに連れて横幅が漸次に狭まるスリット形状の加工を外縁側に施す場合などが考えられる。
更に、作業員を護る固定的な防護部に加えて、横方向へのスライド移動を可能にした防護拡張部を備える仕様がある。この防護部と、移動機構による防護拡張部の横移動によって、より広い作業範囲において作業員が落下物から安全に防護される。また、支持部に高さ調整機構を備え、防護部及び防護拡張部の高さや傾きを調整できる無人航空機直下作業防護装置とする。
そして、固定式の防護部と組み合わされる移動式の防護拡張部が、横方向の移動機構とともに角度調整機構を備えるものとし、横方向のみならず、上下の斜め方向にも防護拡張部を移動して、貨物の積み降ろし作業を最適な状態で行うことができる無人航空機直下作業防護装置とした。
【発明の効果】
【0006】
この無人航空機直下作業防護装置を用いることで、作業員は頭上を防護部で護られた安全な状態で貨物の積み降ろし作業を行うことができる。これまでの一般的な作業手順では、積み降ろしの都度に無人航空機が離着陸を繰り返していたが、この無人航空機直下作業防護装置を使用することにより、無人航空機の頻繁な離着陸の必要性はなくなり、作業員の頭上でホバリングをした状態のまま、安全かつ効率的に積み降ろし作業を行うことができる。
この時の作業員は、無人航空機から垂下されたロープを防護部の外縁に設けられた導入部に沿わせてロープの揺動を抑え、防護部の下で作業を行う自己の傍まで貨物を安定した状態で移動させ、安全かつ効率的に積み降ろし作業を行うことが可能である。
また、防護拡張部を横方向に移動させることで、防護部と防護拡張部で護られた作業員には、水平方向の作業空間が幅広く確保される。
そして、この無人航空機直下作業防護装置は、特に林業分野など傾斜地での利用を見込むことから、支持部の一部を伸縮可能又は屈伸可能にするなど高さ調整機構をこれに付与することで、作業現場の傾斜や凹凸に対しても柔軟に対応できる装置になる。
更には、防護拡張部の移動方向を横方向のみでなく、斜め方向にも移動可能とする角度調整機構を付加することで、作業現場の傾斜や凹凸の状況に対応させて地表面から防護拡張部までの高さを変え、垂直方向の作業空間もより広く確保できるものとなる。また、作業員は、上空の無人航空機の動きを把握しやすくするために、防護拡張部の角度を適宜に調整することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】無人航空機直下作業防護装置の斜視図である。
図2】無人航空機直下作業防護装置の平面図である。
図3】導入部の外形状を例示した平面図である。
図4】防護拡張部の移動機構の一例を表した正面図(一部)である。
図5】支持部の高さ調整機構の一例を表した側面図(一部)である。
図6】防護拡張部の角度調整機構の一例を表した側面図(一部)である。
図7】防護拡張部を斜め方向に移動させた状態を表した側面図である。
図8】無人航空機直下作業防護装置の傾斜地での使用状況を表した側面図である。
図9】無人航空機直下作業防護装置の凹凸地での使用状況を表した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を用いて、本発明に係る無人航空機直下作業防護装置1を説明する。
現在、無人航空機を使用して貨物の運搬業務を行う際、積み降ろし作業の一般的な手順として、無人航空機が着陸した状態で貨物を積載し、同じく、無人航空機が着陸した状態で貨物の荷卸しを行っている。即ち、無人航空機で貨物を運搬する場合には、無人航空機がその都度に離着陸を繰り返しながら、貨物の積み降ろし作業を行うことが標準的な作業方法とされている。
一方で、無人航空機の動力源であるバッテリーに掛かる負荷という観点からは、離着陸時における電力消費割合は非常に大きく、そのような負荷を可能な限り軽減し、飛行距離や運搬回数を増加させたいという強い要請がある。
また、労働災害の未然防止という観点からは、積み降ろし作業に従事する作業員は、その頭上を飛行する無人航空機と落下物の脅威に常に曝されており、その直下に入り込むリスクを避けるように留意をしつつ、自己の安全を確保している現状がある。
【0009】
図1は、本発明に係る無人航空機直下作業防護装置1の外観の一例を表した斜視図である。なお、以下においては、図1の斜め右下側を無人航空機直下作業防護装置1の前方とし、その反対側である左上側を後方として説明を行う。
また、この図1の無人航空機直下作業防護装置1は、本発明に関する様々な仕様について、以下において段階的な説明を行っていく際に、順次に登場してくる緒機構を統合して兼ね備える仕様となっている。謂わば、本発明に係る無人航空機直下作業防護装置1における最上位の仕様を図示したものである。
【0010】
無人航空機から貨物を積み卸しする作業員は、この無人航空機直下作業防護装置1の中に留まりながら、安全に作業を行うことができる。そして、作業員の上空を無人航空機が飛行し、貨物の積み降ろしを行う際には、この無人航空機直下作業防護装置1と作業員の直上において、無人航空機がホバリングした状態のまま、運搬する貨物をロープで吊り上げ、運搬してきた貨物を吊り下ろすものである。
そのため、垂下したロープで貨物を昇降させる無人航空機が、予想せぬ機体トラブルや突風など何らかの影響により墜落した場合でも、無人航空機直下作業防護装置1で護られた作業員は、頭上の無人航空機の直下においても、安全かつ効率的に貨物の積み降ろしを行うことが可能になる。
【0011】
始めに、本発明に係る無人航空機直下作業防護装置1の最も簡潔な構成からなる基本的な仕様について説明を行う。
但し、図1に表される形状や構成は、あくまで無人航空機直下作業防護装置1の一例である。また、前述したように、この図1は本発明に関わる複数の機能を兼ね備えた最上位の仕様となる無人航空機直下作業防護装置1を表した斜視図である。
しかし、以下において順次に説明を行う本装置の各々の仕様、即ち、次に説明を行う最も基本的な仕様から、図1に表される最上位の仕様まで、これらの各仕様に共通する基本構成は、2つの主要な部位の組み合わせとして理解することが可能である。
その主要な部位の一つは、無人航空機の機体や空輸される貨物など、これらの重量物が落下した場合にその直撃から作業員を護るため、作業員の頭上に保持される防護部2である。そして、もう一つの主要な部位は、その防護部2を安定的に作業員の頭上に保持するための支持部3である。
【0012】
図1では、無人航空機直下作業防護装置1の最上方に示され、横向きの状態で保持されている平らな部位が防護部2である。そして、支持部3は、その防護部2を作業員の頭上で安定的に保持するため、所定の間隔を保って平行に並び立ち、防護部2の対向する2辺を支える2つの部位として図示されている。
なお、この図1における防護部2と支持部3との位置関係については、後ほど無人航空機直下作業防護装置1の最上位の仕様について説明を行う際に、その特徴である角度調整機構11の一部をなす支持板12を介して、両者が間接的に接続されている。
しかし、本発明の最も簡潔な仕様においては、その角度調整機構11は不要である。従って、ここで説明をしている基本仕様では、支持板12を介さずに、防護部2と支持部3が直接的に組み合わされる無人航空機直下作業防護装置1になる。
【0013】
更に、このような防護部2と支持部3との組み合わせによる基本構成を備える無人航空機直下作業防護装置1において、防護部2の外縁の一部に凹部を設けて、これを無人航空機から垂下されるロープを導き入れるための導入部4とする。そして、この導入部4は、作業員が無人航空機から垂下されるロープと貨物をその手で把持し、これらの揺動を抑えながら安定した状態にして、自己の近くまで安全に移動させるために利用される。
従って、本発明に係る無人航空機直下作業防護装置1の最も簡潔な仕様については、作業員を落下物から護る防護部2と、この防護部2を作業員の頭上に保持する支持部3とを備え、この防護部2の外縁の一部に一又は複数の凹部を設けて、この凹部が無人航空機から垂下されたロープ等を作業員が自己の近くまで安全に導き入れるための導入部4として機能する無人航空機直下作業防護装置1となる。
【0014】
なお、前述した支持板12の場合と同じく、防護部2と導入部4の位置関係に関しては、上記の説明に対して、図1の表示がこれと一部で異なる状態として表示されている。
便宜上、この図1は、基本的な構成要素のみならず、以下において他仕様の説明を行う際に必要となる付加的な構成要素や緒機構が併せて図示されたものになっている。そのため、左右の支持部3に挟まれて、無人航空機直下作業防護装置1の中央上方となる防護部2近傍の構成も、防護部2のみを図示したものではなく、この図1では、防護部2の下方にこれと平行に配置された部位が組み合わされた仕様として図示している。
しかし、前述の角度調整機構11と同様に、図1の仕様での防護部2近傍の構成に関しても、基本的な仕様の無人航空機直下作業防護装置1においては、必ずしも、このような上下の二重構造とすることを要しない。
【0015】
図1に上下の二重構造として図示され、防護部2の下方でこれと平行に並ぶその部位については、次の仕様の説明で詳しく説明を行うものであるが、防護部2が固定的であるのに対し、その下方の部位は移動式になっている。そして、この部位は、防護部2とともに作業員を防護して、その防護範囲を拡張する機能を有するため、以下の説明では防護拡張部5と称することにする。
このような事情から、無人航空機から作業者側に垂下されるロープを安全に導くための導入部4の位置関係に関しても、図1では、その防護拡張部5の前方、外縁の一部に前向きの突出部を付加して、導入部4となる凹部を設けた仕様になっている。しかし、無人航空機直下作業防護装置1の最も簡素な仕様では、防護拡張部5がそもそも存在しないことから、導入部4となる凹部については、防護部2の外縁に配されることになる。
【0016】
図2は、図1の無人航空機直下作業防護装置1を上空の無人航空機側から見下ろした状態を表している平面図である。
図2の下方が無人航空機直下作業防護装置1の前方であり、図2の上方が無人航空機直下作業防護装置1の後方である。その左右には、支持板12を介して防護部2を保持する支持部3が左右平行に図示されている。
支持部3で挟まれて中央の上方に保持される防護部2の下側は、作業員が通行できるように、その前後が閉塞されずに開放された状態である。
【0017】
図1図2の防護部2と支持部3は、いずれも枠組み構造として形成されている。防護部2の外縁は四角形の枠組みであり、左右の支持部3は上下に2つの四角形を連ねたような枠組み構造になっている。そして、それらの枠組み構造の内側には、粗目の網やフェンスが張り巡らされている。
この網目状の構造により、無人航空機直下作業防護装置1の中においても、作業員は上下左右の良好な視認性を確保できるとともに、無人航空機直下作業防護装置1の軽量化にも寄与している。また、この無人航空機直下作業防護装置1は、主として屋外で多用されることが見込まれ、防護部2と支持部3の表面積に閉める網目の割合を大きく保つことで、横風等の影響を受け流すことができる構造となっている。
【0018】
なお、このような枠組みや網目等とする構成については、所要の強度が充足されるものであれば、必ずしもその素材については限定しない。一般的には軽金属や繊維強化プラスチック等の強靱かつ軽量な素材を使用することが考えられる。
また、図1及び図2の防護部2と支持部3は、いずれも角形であることを基調としているが、それらの構造や形状も図示されたものに限定すべき理由はない。更には、防護部2や支持部3は、必ずしも図1のような枠組み構造や網目構造からなるものにも限定されず、例えば、支持部3を一又は複数の支柱からなるものとしたり、若しくは、透明で頑丈な板状部材にスリットを設けて視認性や軽量性が保たれた防護部2や支持部3にすることなども考えられる。
【0019】
図1及び図2の無人航空機直下作業防護装置1では、作業者はその中において、無人航空機からその直下に垂下されるロープをその手で把持して、凹部となっている導入部4の内側面にそのロープを当接させる。貨物の重量や無人航空機の飛行による慣性、そして、横風等の影響によって激しく揺動することも予想されるロープではあるが、作業員はこの導入部4を利用してロープの揺動を抑制しつつ安定した状態を保ちながら、自己の傍までロープや貨物を導いて、防護部2で頭上を護られた安全な状態で、手早く積み降ろし作業を行うことができる。
なお、このロープ等の揺動の抑制については、作業者の防護のみならず、上空でホバリング状態にある無人航空機の飛行の安定維持と電力消費軽減にも貢献する。
【0020】
基本的仕様である防護拡張部5を有しない無人航空機直下作業防護装置1では、導入部4は防護部2の外縁に配される。そして、作業員は、無人航空機から垂下されるロープを把持し、これに繋がれた貨物を無人航空機直下作業防護装置1の内側寄り、作業員の作業区域の奥側まで素早く安全に導いて、自己の傍で確実に積み降ろし作業を行う。その際に、導入部4は、その内側面にロープを沿わせながら揺動を抑え込み、ロープや貨物を安定させて導くためのガイド部として機能する。
図1のように、複数の突出部を設けて比較的大きな凹部を形成し、その凹部の内側面や角部を有効に用いることで、作業員はロープの揺動を抑制する。導入部4となる凹部の数は1つに限らず、可能な範囲で必要数を配置することができる。
【0021】
図2では、防護拡張部5である四角形の枠組み構造の前方となる外縁の一部に複数の突出部が設けられている。これらは概ね等間隔に並べられているが、図1で前方に突出し、図2の中では図中の下向きに表示されている。この図2では、後述する移動機構6の一部をなす左右のガイドレール7の裏になって図示されていない左右両端の突出部であるが、図1では、防護拡張部5の左右両端に枠組み構造の一部をなしている2つの突出部として、これを確認することができる。
【0022】
防護部2や防護拡張部5の外縁において導入部4となる凹部の配置や数、そして、その形状についても、様々な仕様を採用することが可能である。図2のように、板状や棒状の細長く小さめの突出部を付加して導入部4を形成する他にも、防護部2の外縁自体を曲線状に加工して、その前方や前後2方向等の外縁にV字型やU字型となる凹部を設けて導入部4とし、これを一又は複数、バランス良く配するような仕様についても想定し得る。
そして、そのような凹部をなす導入部4としては、無人航空機直下作業防護装置1の外側から内側に向かうに連れて、その凹部の横幅を漸次的に狭めるものとすることも有用である。これによって、ロープを作業者側に導きながら、その手で把持するロープの横揺れを穏やかに抑えつつ、貨物等の動きを確実に制御することが容易になる。
このような別仕様の導入部4の外形状を図3に例示する。
a、b及びcのいずれも防護部2を上又は下から見た平面図である。
aの防護部2では、その両外縁に導入部4がある。bの防護部2は、二つのなだらかな導入部4を有している。cの防護部2では、やや深めのスリット状の導入部4が外縁の3箇所に設けられている。いずれも安全性を考慮して、その外縁は丸みを帯びるように加工されている。
【0023】
図2では、平たく細長く小さな板状の突出部が防護拡張部5の外縁に付加されることにより、作業員がロープを導入する凹部である導入部4が、A領域・B領域・C領域と3領域に区分されている。この導入部4の各領域でロープが当接される範囲に対し、ゴム製やプラスチック製の緩衝材を付加することも有意義である。
また、前述のように、無人航空機直下作業防護装置1の内寄り、即ち、作業者側に近づくに連れて、A・B・Cの各領域に設ける緩衝材の形状を工夫し、又は、各領域自体の横幅を漸次的に狭めるようにすることで、ロープとの当接が柔らかになり、ロープと貨物の揺動を穏やかに制御し易いものになる。更には、この導入部4にロープの過剰な動きを抑えるためのストッパーとなる部材を設けたり、そのような加工を施しても良い。
そして、導入部4である凹部の数や配置も、防護部2の大きさや強度に適応するものであれば、一又は複数のいずれであっても良いし、例えば、図3のaのように防護部2の対向する前後の2辺、即ち、図2ではその上方の外縁にも下方と同様の導入部4を設けるものとしても良い。また、導入部4の形状も、これまで述べた板状や棒状の突出部によるもの、更には、V字型やU字型の形状、そして、図3に示した形態にのみ限定すべきものでもない。
【0024】
次に、本発明の別仕様となる無人航空機直下作業防護装置1について説明する。
これまで説明してきた最も簡素な仕様の無人航空機直下作業防護装置1は、その外縁の一部が導入部4となる固定式の防護部2と、これを作業者の頭上に保持する支持部3とで構成された仕様である。そして、これとは仕様の一部が異なる無人航空機直下作業防護装置1では、固定式の防護部2と同じく作業員を護る機能を有し、更に、作業員の積み降ろし作業の作業領域を拡大するために、移動式となる防護拡張部5が付加される。
前述したように、図1及び図2で表した仕様の無人航空機直下作業防護装置1には、既にこの移動式の防護拡張部5が図示されている。防護部2の近傍が二重化された構造の中で、防護部2の下にこれと平行に保持されている枠組み構造があり、これが横方向にスライド移動可能な防護拡張部5であった。
【0025】
この第2仕様の無人航空機直下作業防護装置1では、この防護拡張部5について、防護部2と平行な位置関係を保ちながら、移動機構6により横方向にスライド移動させて、積み降ろし作業の作業領域が拡張された状態で、作業員が効率的に作業を行うことが可能な仕様になっている。
そのため、この仕様においては、作業員を落下物から護る防護部2と、この防護部2を作業員の頭上に保持する支持部3とを備え、防護部2の他にも、更に、一又は複数の防護拡張部5とその移動機構6を備える。そして、防護拡張部5を横方向に移動可能として、その防護拡張部5の外縁の一部に一又は複数の凹部を設けて、作業員が無人航空機から垂下されるロープを安全に手繰り寄せることが可能になる無人航空機直下作業防護装置1ということができる。
図4は、防護拡張部5を横方向に移動させる移動機構6の一例を表したものである。この図4は、図1の無人航空機直下作業防護装置1を前方から見た正面図であり、その上部のみを図示したものである。
左右の支持部3等によって最も高い位置に支持されている防護部2があり、その下に防護部2と平行な状態で防護拡張部5が保持されている。図1では、この第2仕様においては必須の機能ではないが、角度調整機構11の一部を成す支持板12を介して、防護部2が支持部3によって保持されており、この図4でも同様である。
【0026】
防護拡張部5は、後に他の仕様に関して説明を行う角度調整機構11の一部となるガイドレール7によって、左右の両端が支えられている。その構成をより具体的に説明すると、ガイドレール7は支持板12によって保持されており、同時に、防護拡張部5に繋がる吊り滑車8がそのガイドレール7に組み込まれている。そのため、作業者は、ガイドレール7に沿って防護拡張部5を自在に移動させることが可能である。この時、所定の位置で防護拡張部5を停止させて固定できるものとし、吊り滑車8は所定の移動範囲を有して常にガイドレール7内に留まるものであるため、防護拡張部5がガイドレール7から外れて作業員側に落下することもない。
なお、図1及び図2とも、防護拡張部5が、防護部2の前方に僅かに移動している状態を図示したものである。
【0027】
本発明の無人航空機直下作業防護装置1は、平坦な積み降ろし現場のみならず、山間部など傾斜がある作業場での活用を想定しつつ開発されたものである。従って、以下に説明する無人航空機直下作業防護装置1の仕様では、このような特殊な使用環境への対応が課題となる。
まず始めに、第3の仕様に係る無人航空機直下作業防護装置1では、支持部3において、高さ調整機構9が付加される。例えば、図1の無人航空機直下作業防護装置1では、支持部3の下方において、その前後左右の四隅には上下に昇降可能な脚部10が配置されており、それぞれの個別の位置で支持部3の高さを上下に調整できる仕様となっている。
【0028】
図5は、支持部3の下方のみを拡大して表した側面図である。
この高さ調整機構9の構造は、最も簡素な仕様であるが、取り扱いが非常に容易であって、構造上の強度も充分に確保できる構造である。作業者は、斜面においても、無人航空機直下作業防護装置1の水平を保ち、安定的に配置できるように、四隅の高さ調整機構9を所定の高さに調整して、支持部3に設けられた貫通孔と、脚部10に等間隔に配置された貫通孔との位置合わせを行って支持部3の高さを調整する。
図5の例では、支持部3と脚部10の双方に設けられた貫通孔に貫通させて用いる固定ピンのような部材を使用する。これにより、作業者は、無人航空機直下作業防護装置1の高さや傾きを自在に変更できるようになっている。そのため、防護部2や防護拡張部5の高さや傾きを適宜に調整しながら、斜面においても安定した状態で積み降ろし作業が実施できるようになる。
【0029】
なお、この高さ調整機構9については、図示した構成のみに限らない。これと異なる仕様にすることも当然に可能であり、例えば、支持部3の一部を屈折させて固定することで、無人航空機直下作業防護装置1の四方の高さを調整できるような仕様にすることも考えられる。
また、支持部3や脚部10の形状や構成についても、図1等に図示したものに限定するものではない。例えば、支持部3が1本又は複数本のポール状の部材からなるものとしても構わない。それらの各々の部材が伸縮可能で、容易に長さを調整して安定的に固定できるものであれば良い。
【0030】
また、本発明の第4の仕様として、防護拡張部5の移動機構6自体を可変的なものとし、防護拡張部5を横方向に移動させるのみではなく、上下の斜め方向にも移動可能とする角度調整機構11を備えた無人航空機直下作業防護装置1とすることが有意義である。
図1に示した無人航空機直下作業防護装置1は、これまで説明してきた諸機能、即ち、移動機構6、高さ調整機構9及び角度調整機構11を備えて、これまで説明を行ってきた各仕様を統合したものになっている。そのため、防護拡張部5は横方向のみならず、上下の斜め方向にも移動可能であり、支持部3の高さが可変的であるため、防護部2と防護拡張部5の高さや角度を斜面の状況に合わせて適宜に変更できる仕様となる。
【0031】
図6は、ガイドレール7の角度を上下に傾斜させることができる角度調整機構11を表した側面図であり、図1の無人航空機直下作業防護装置1の側面図の一部を拡大したものである。
支持部3は、角度調整機構11の一部となる前後の支持板12を介して、防護部2とガイドレール7を保持している。防護拡張部5は、吊り滑車8を介して、ガイドレール7に移動可能な状態で吊り下げられている。
支持部3の左右に同じ角度調整機構11が設けられ、前後に配される支持板12には、これにガイドレール7を取り付ける際に、その上下の位置、即ち、ガイドレール7を取り付ける高さを調整するための貫通孔が設けられ、その前後の取り付け位置を上下させることで、ガイドレール7と防護拡張部5が移動する角度を上下に変更できることになる。
【0032】
また、図1に示した無人航空機直下作業防護装置1を平坦な地表面に置いた場合、その大きさの一例としては、次のようなものになる。
防護部2は、左右の横幅が900mm程度であり、前後の奥行きが1000mm程度である。支持部3は、横幅が防護部2の奥行きと同様に1000mm程度で、高さは1800mm程度である。図1では、防護部2は支持板12によって更に高く保持されるため、その地表面からの高さは1950mm程度になる。
防護拡張部5は、防護部2の下方にあるため、これを移動させない場合、又は、横方向に移動させた場合においても、その地表面からの高さについては、支持部3の高さに近い1800mm程度である。角度調整機構11によって、防護拡張部5を斜め上方に最大範囲で移動させた場合、地表面から防護拡張部5の外縁までの高さは、防護部2の高さと概ね等しく1950mm程度の数値になる。
但し、これらのサイズ、そして、防護拡張部5の角度変化とその外縁の高さの変化も一つの例である。防護拡張部5に関して、より大きな調整効果が得られるように支持板12の長さ等を必要に応じて変更することは可能である。
【0033】
図7に、この角度調整機構11による、ガイドレール7及びこれに沿って移動する防護拡張部5の角度変化の状況を示している。図7の左側が、後方の支持板12の下側にガイドレール7の後方を位置付けて、前方の支持板12の上側にガイドレール7の前方を位置付けて、ガイドレール7の前後の高さを変更した状態である。これにより、防護拡張部5が斜め上方に移動するため、地表面から防護拡張部5まで十分な高さを確保できることになる。
図7の右側は、これと反対に、後方の支持板12の上側にガイドレール7の後方を位置付け、前方の支持板12の下側にガイドレール7の前方を位置付け、その高さを変更した状態である。これにより、防護拡張部5の先端が斜め下方に傾いた態様になっている。
【0034】
以上をまとめると、前述した防護拡張部5の横方向の移動に関しては、水平方向で作業領域を拡張する機能となるのに対し、この防護拡張部5の角度変化については、防護拡張部5の高さを変化させることで、地表面からの距離を確保して、垂直方向で作業領域を拡張する意味がある。そして、この他にも、防護拡張部5の角度を変えることによって作業現場の凹凸にも対応でき、また、上空にある無人航空機の動きを作業員が視認し易くなるように防護拡張部5の角度を適宜に調整できる効果も有している。
【0035】
図1の無人航空機直下作業防護装置1を傾斜地である作業現場に配置した状況を表したものが、図8である。
高さ調整機構9となる支持部3と脚部10の位置関係に関し、前後左右の脚部10をそれぞれ適宜に上げ下げして、斜面においても、無人航空機直下作業防護装置1の全体的なバランスが保たれるように配置されている。この時、脚部10はアンカーボルト等で地表面に固定されることが多い。
【0036】
図8左側の無人航空機直下作業防護装置1では、斜面下側の作業領域で貨物の積み降ろしを行い、斜面の傾斜角に併せるように、防護拡張部5を斜め下方に突出させている。
図8右側では、これとは逆に、斜面上側で貨物の積み降ろしを行い、こちらも傾斜角に合わせて斜め上方に防護拡張部5を突出させている。
また、無人航空機直下作業防護装置1を地表面の凹凸が激しい作業現場で使用した状況を簡素化して図9に示している。このような状況は、図9の左側に樹木があるなどして、無人航空機がその方向からアプローチできない作業環境として想定される。このような場合、防護拡張部5を横又は斜め上方向に移動させたとしても、水平方向での防護範囲を拡張し難い問題点がある。そのため、防護拡張部5を斜め下方に移動させ、これを水平状態に保つことで、水平方向により広い作業領域を確保することが可能になる。
そして、このような無人航空機直下作業防護装置1における配置方法や使用方法の相違については、無人航空機の飛行状況を含めた積み降ろし作業現場の環境や、貨物の形状や重量等を含めて、その場の状況に対する総合的な判断によって適宜に決定される。
【符号の説明】
【0037】
1 無人航空機直下作業防護装置
2 防護部
3 支持部
4 導入部
5 防護拡張部
6 移動機構
7 ガイドレール
8 吊り滑車
9 高さ調整機構
10 脚部
11 角度調整機構
12 支持板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9