(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176477
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20241212BHJP
B60R 1/24 20220101ALI20241212BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/24
B60R11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095031
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 祐生
【テーマコード(参考)】
3D020
5C054
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BE03
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FE28
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】コストを低減しつつ、障害物を正確に検知可能すること。
【解決手段】本開示にかかる車両用制御装置は、車両に設置されたフロントカメラ等の撮像装置から前記車両の周辺監視に用いられる周辺画像を入力する入力部と、前記車両の移動時に、前記車両の移動に伴って前記周辺画像に映る第1の対象物に生じる視差と、前記車両の移動距離と、に基づいて、前記撮像装置に対する前記第1の対象物の相対距離を演算する演算部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された撮像装置から前記車両の周辺画像を入力する入力部と、
前記車両の移動時に、前記車両の移動に伴って前記周辺画像に映る第1の対象物に生じる視差と、前記車両の移動距離と、に基づいて、前記撮像装置に対する前記第1の対象物の相対距離を演算する演算部と、
を備える、車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両の走行対象の路面に対する前記撮像装置の設置高さを記憶する記憶部と、
をさらに備え、
前記演算部は、前記撮像装置に対する前記第1の対象物の相対距離と、前記路面に対する前記撮像装置の設置高さと、に基づいて、前記路面に対する前記第1の対象物の高さを演算する、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記路面に対する前記第1の対象物の高さに基づいて、前記第1の対象物が前記車両と干渉するか否かを判定する判定部と、
をさらに備える、
請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記入力部は、
第1の地点から前記第1の地点と離れた第2の地点までの前記車両の移動距離をさらに取得し、
前記演算部は、
前記第1の地点において撮影された第1の周辺画像に映る前記第1の対象物と、前記第2の地点において撮影された第2の周辺画像に映る前記第1の対象物と、の前記第1及び第2の周辺画像における位置の差分を前記視差として演算し、
前記視差と、前記車両の移動距離に基づいて、前記第2の地点における前記撮像装置に対する前記第1の対象物の前記相対距離を演算する、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記演算部は、
前記路面に表示されるテクスチャを前記第1の対象物とは異なる第2の対象物として、前記撮像装置に対する前記第2の対象物の相対距離を演算することにより、前記路面に対する前記撮像装置の設置高さを特定し、特定した前記路面に対する前記撮像装置の設置高さを前記記憶部に保存する、
請求項2に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設置されたカメラによる撮影画像から車両の周辺を見た周辺監視用の画像を運転者に提示して運転支援を実行することが行われている。またこのような運転支援の他、車両と障害物との干渉を回避するため、超音波を発する障害物センサ、あるいはステレオカメラを搭載することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に障害物センサ、あるいはステレオカメラを設ける場合、コストが増大してしまう。
【0005】
本発明の目的は、コストを低減しつつ、障害物を正確に検知可能な車両用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明にかかる車両用制御装置は、車両に設置された撮像装置から車両の周辺画像を入力する入力部と、車両の移動時に、車両の移動に伴って周辺画像に映る第1の対象物に生じる視差と、車両の移動距離と、に基づいて、撮像装置に対する第1の対象物の相対距離を演算する演算部と、を備える。
【0007】
この構成によれば、障害物センサ、あるいはステレオセンサを別途設けることなく、周辺監視用のカメラのみで車両に対する障害物の相対距離を特定可能となるため、コストを削減しつつ、障害物を正確に検知することができる。
【0008】
また、本発明にかかる車両用制御装置は、車両の走行対象の路面に対する撮像装置の設置高さを記憶する記憶部と、をさらに備え、演算部は、撮像装置に対する第1の対象物の相対距離と、路面に対する撮像装置の設置高さと、に基づいて、路面に対する第1の対象物の高さを演算する。これにより例えば、車両のバンパ等と障害物との相対距離をより詳細に特定することができるため、より正確に障害物を検知することができる。
【0009】
また、本発明にかかる車両用制御装置は、第1の対象物の高さに基づいて、第1の対象物が車両と干渉するか否かを判定する判定部と、をさらに備える。これにより、車両と障害物とが干渉する恐れがある場合には、車両を停止させる等して車両と障害物との干渉を抑制することができる。
【0010】
また、本発明にかかる車両用制御装置によれば、演算部は、路面に表示されるテクスチャを第1の対象物とは異なる第2の対象物として、撮像装置に対する第2の対象物の相対距離を演算することにより、路面に対する前記撮像装置の設置高さを特定し、特定した路面に対する撮像装置の設置高さを記憶部に記憶させる。これにより例えば、車両の積載量の変化、及びサスペンションの経年劣化等による車高の変化が生ずる場合でも、路面に対する撮像装置の設置高さを正確に特定できる。その結果、例えばバンパ等と障害物との相対距離をより正確に特定可能となるため、より正確に障害物を検知することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストを低減しつつ、障害物を正確に検知可能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる車両の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるカメラECUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態の演算部において実行される演算処理について説明する図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるカメラECUによる処理の手順の一例を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、変形例の演算部において実行される演算処理について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図4を参照して、実施形態にかかる車両用制御装置について説明する。
【0014】
(実施形態)
(車両の構成)
図1は、実施形態にかかる車両1の概略構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、実施形態の車両1は、カメラECU11、フロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cb、VSCECU12、ホイールセンサ12A、車内モニタ13、及びスピーカ14を備える。
【0016】
カメラECU11と、フロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cb、及び車内モニタ13とは、例えばHDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)ケーブル等のディスプレイケーブルで接続されている。これにより、例えばフロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cbが撮影した画像をデジタル信号に変換して伝送することができる。
【0017】
また、カメラECU11と、VSCECU12、及びスピーカ14、並びにVSCECU12と、ホイールセンサ12Aとは、例えばCAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークで接続されている。これにより、カメラECU11、VSCECU12、ホイールセンサ12A、及びスピーカ14は、種々の情報を送受信することができる。
【0018】
カメラECU11及びVSCECU12は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0019】
カメラECU11は、車両1に設置されたフロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cbから入力された周辺画像に各種加工を施し、車内モニタ13に適宜出力する。
【0020】
フロントカメラ11Aは、例えば車両1の前部のフロントバンパに設けられ、車両1の前方を撮影する。バックカメラ11Bは、例えば車両1の後部のリヤバンパ付近に設けられ、車両1の後方を撮影する。サイドカメラ11Caは、運転席から見て例えば右側のドアミラーに設けられ、車両1の右側方を撮影する。サイドカメラ11Cbは、運転席から見て例えば左側のドアミラーに設けられ、車両1の左側方を撮影する。
【0021】
フロントカメラ11A、バックカメラ11B、及びサイドカメラ11Ca、11Cbのそれぞれは、撮影した周辺画像をカメラECU11に出力する。これらの周辺画像は、例えば駐車、または出車の際等に、車両1の周辺監視に用いられる。このため、死角を極力減らすことを目的として、これらのフロントカメラ11A、バックカメラ11B、及びサイドカメラ11Ca、11Cbには例えば魚眼レンズ等の広角レンズが用いられる。フロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cbのそれぞれは、撮像装置の一例である。
【0022】
さらに、カメラECU11は、フロントカメラ11A、バックカメラ11B、及びサイドカメラ11Ca、11Cbから入力される周辺画像に基づいて、車両1が接触を回避すべき障害物の存否を検知し、車両1から当該障害物までの相対距離を算出する。
【0023】
また、カメラECU11は、車両1が当該障害物へ干渉する可能性を判断し、判断結果に基づき、干渉を抑制するための各種信号を出力する。具体的には例えば、カメラECU11は、車両1と当該障害物とが干渉すると判断した場合、車内モニタ13、及びスピーカ14等へ、警告表示や警告音を出力させる制御信号を出力する。
【0024】
車内モニタ13は、車両1の車室内のダッシュボード等に設置された、各種情報を表示する液晶ディスプレイ等である。車内モニタ13は、例えば車両1の周辺画像、及びこれらの画像を合成して得られる俯瞰画像等を表示する。運転者は、周辺画像、及び俯瞰画像等を用いて車両1の周辺監視を行う。また例えば、車内モニタ13は、車両1が障害物へ干渉する恐れがあることを示す警告を表示する。
【0025】
スピーカ14は、車両1の車室内に設置された、音及び音声を出力する音響装置である。スピーカ14は、例えば、音及び音声を出力して、運転者に警告音等の各種情報を報知する。
【0026】
このように、カメラECU11は、車両1の周辺監視用の画像を生成するとともに、車両1の付近に存在する障害物との相対距離を特定し、当該障害物との干渉を抑制するための各種信号を出力可能な車両用制御装置として構成されている。
【0027】
VSCECU12は、車両1の制動機構、操舵機構、車両安定制御システム等を制御するための各種処理を実行する。例えば、VSCECU12は、カメラECU11から出力された信号に基づいて制動機構を制御する処理を実行する。また例えば、VSCECU12は、後述するホイールセンサ12Aから取得した車輪速パルスをカウントすることにより車両1の車速を算出する。
【0028】
また例えば、VSCECU12は、後述するホイールセンサ12Aから取得した車輪速パルスをカウントすることにより、車両1の移動距離を算出する。具体的には、VSCECU12は、車輪速パルスに基づき、車両1が移動する際の、時刻t1における車輪の回転角度と、時刻t1から所定期間経過した時刻t2における車輪の回転角度とを取得する。そしてVSCECU12は、時刻t1、t2間におけるこれらの回転角度の差分として車輪の回転量を算出する。そして、VSCECU12は、車輪の回転量、及び車輪の直径に基づき、車両1の移動距離を算出する。
【0029】
なお、VSCECU12は、カメラECU11から車輪の回転角度の取得を指示する所定の信号を受け付けたタイミングでこれら演算を開始する。VSCECU12は、以上のようにして算出した車両1の移動距離、及び車速を、カメラECU11に出力する。
【0030】
ホイールセンサ12Aは、車両1の各車輪付近に設けられ、例えばホール素子などを用いて構成される。ホイールセンサ12Aは、車両1が備える車輪の回転量または単位時間当たりの回転数等から、車輪速パルスを検出結果としてVSCECU12に出力する。
【0031】
なお、
図1に示した車両1の概略構成は一例を示すものであり、
図1に示した構成要素を全て含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。具体的には例えば、カメラECU11の上記機能の一部をVSCECU12が有していてもよく、また、VSCECU12の上記機能の一部をカメラECU11が有してもよい。あるいは、カメラECU11及びVSCECU12が、1つのコンピュータとして一体的に構成されていてもよい。
【0032】
また、カメラECU11が、表示ECU等を介して各種画像を車内モニタ13に出力するよう構成されていてもよい。また、スピーカ14が、例えば車内モニタ13と一体的に構成されている場合等には、表示ECUが車内モニタ13に加えて、スピーカ14を制御可能に構成されていてもよい。この場合、カメラECU11が、表示ECU等を介して報知信号をスピーカ14に出力するよう構成されていてもよい。
【0033】
また、カメラECU11が、各種センサからの信号を他のECUを介して取得してもよい。例えば、ホイールセンサ12Aが、カメラECU11と車載ネットワークで接続されており、VSCECU12に代わり、カメラECU11が車両1の移動距離を算出してもよい。
【0034】
(カメラECU11の機能的なブロック構成)
図2は、実施形態にかかるカメラECU11の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
図2に示すように、カメラECU11は、機能構成として、入力部111と、生成部112と、演算部113と、判定部114と、出力部115と、記憶部116として機能する。これらの機能部は、例えばカメラECU11が備える図示しないCPUが、ROM等に格納されている制御プログラムをRAMに展開して実行することで実現される。
【0036】
入力部111は、フロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cbから、これらにより撮影された車両1の周辺画像の入力を受け付ける。例えば、入力部111は、フロントカメラ11Aより、前方の周辺画像の入力を受け付ける。また例えば、入力部111は、バックカメラ11Bより、後方の周辺画像の入力を受け付ける。
【0037】
入力部111は、VSCECU12から車両1の車速を取得する。また、入力部111は、VSCECU12から、車両1の移動距離を取得する。具体的には、入力部111は、車両1が移動する地点Aから地点Aとは異なる地点Bまでの距離を車両1の移動距離として取得する。
【0038】
生成部112は、フロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cbから入力された周辺画像に基づいて、車内モニタ13に表示するための画像であって、撮影画像から車両の周辺を見た画像である周辺監視用画像を生成する。
【0039】
周辺監視用画像は、例えば駐車または出車の際などに、車両1の周囲に存在する障害物等、車両1の様子を運転者に示すための画像である。周辺監視用画像は、フロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cbのそれぞれが撮影した周辺画像のいずれかにより生成される。周辺監視用画像には、フロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cbのいずれかにより取得された周辺画像、及び俯瞰画像が含まれる。俯瞰画像は、自車アイコンを中心に置く車両1の周囲360°を示す合成画像である。
【0040】
なおこのとき、生成部112は、車両1の状況に応じて、フロントカメラ11A、バックカメラ11B、サイドカメラ11Ca、11Cbから取得したいずれの周辺画像を周辺監視用画像として採用するか決定してよい。即ち、駐車または出車等の車両1の運転支援を行っている最中であれば、生成部112は、これから車両1が採り得る進路側の周辺画像を周辺監視用画像として採用してよい。例えば生成部112は、車両1が前進するときには、フロントカメラ11Aの前方の周辺画像を採用し、車両1が後退するときにはバックカメラ11Bの後方の周辺画像を採用してもよい。
【0041】
生成部112は、VSCECU12から取得した車両1の速度が所定速度未満である場合等に、上記のような周辺監視用画像の生成を行う。生成部112が、このような画像生成処理を開始する車両1の上記所定速度は、例えば5km/hである。生成部112は、車両1の速度が所定速度未満である間、継続して上記周辺監視用画像の生成処理を継続する。
【0042】
演算部113は、入力された周辺画像に基づいて、車両1の近傍に存在する障害物を検出し、当該障害物との相対距離を演算する。
【0043】
ここで、
図3を用いて車両1と障害物との相対距離の演算方法について具体的に説明する。
図3は、実施形態の演算部113において実行される演算処理について説明する図である。
【0044】
図3(a)、(b)は、路面R上を前進する車両1の前方の様子を示す側面図である。
【0045】
図3(a)は、車両1が、ある時刻t1に路面R上の地点Aを通過する状態を示す図である。車両1の進行方向の路面R上には、車両1と干渉の恐れがあり、かつカメラECU11による検出対象となる2つの障害物OJx、OJyが存在していることとする。また、障害物OJxは、障害物OJyよりも路面Rからの高さが高いため、障害物OJxは、障害物OJyよりもフロントカメラ11Aに近接していることとする。地点Aは、第1の地点の一例であり、障害物OJx、OJyのそれぞれは、第1の対象物の一例である。
【0046】
図3(b)は、車両1が、時刻t2に地点Aとは異なる地点Bを通過する状態を示す図である。時刻t2は、時刻t1から所定期間が経過した時刻である。
図3(b)に示す地点Aから地点Bまでの移動距離Dは、入力部111においてVSCECU12から取得される。なお、地点Bは、第2の地点の一例である。
【0047】
図3(c)、(d)は、
図3(a)、(b)に示すそれぞれのタイミングで、フロントカメラ11Aにより撮影される周辺画像IMa、IMbの一例を示している。
【0048】
具体的には、
図3(c)は、車両1が地点Aを通過する際にフロントカメラ11Aにより撮影された周辺画像IMaである。周辺画像IMaには、障害物OJx、OJyが映っている。周辺画像IMaは、第1の周辺画像の一例である。
【0049】
図3(d)は、車両1が、地点Bを通過する際にフロントカメラ11Aにより撮影された周辺画像IMbである。周辺画像IMbにもまた、障害物OJx、OJyが映っている。周辺画像IMbは、第2の周辺画像の一例である。
【0050】
演算部113は、周辺画像IMaを画像認識技術によって解析し、周辺画像IMaから障害物OJx、OJyを検出する。このとき、例えば周辺画像IMa中の輝度が大きく変化する箇所をエッジとして検出するエッジ検出処理等を行うことで、周辺画像IMaから障害物OJx、OJyの特徴を抽出してもよい。またこのとき、周辺画像IMaを白黒画像に変換する2値化処理を行ってもよい。
【0051】
図3(c)、(d)の例では、説明の便宜上、障害物OJx、OJyの特徴点FXa、FYaとして、障害物OJx、OJyの最上部の点がそれぞれ抽出されるものとする。これらの特徴点FXa、FYaは、周辺画像IMa中の障害物OJx、OJyの位置を示しているものとする。
【0052】
演算部113は、上記と同様、画像認識技術等を用いて、周辺画像IMbから障害物OJx、OJyを検出する。これにより、周辺画像IMbにおいても、障害物OJx、OJyそれぞれの特徴点FXb、FYbが抽出される。
【0053】
図3(c)、(d)に示すように、地点Aの周辺画像IMa内における特徴点FXa、FYaのそれぞれの位置と、地点Bの周辺画像IMb内における特徴点FXb、FYbのそれぞれの位置とは異なっている。即ち、地点Aから地点Bまでの車両1の移動により、周辺画像IMa、IMb内の障害物OJx、OJyのそれぞれには視差が生じている。
【0054】
またこのとき、周辺画像IMa内と周辺画像IMb内とで、障害物OJxは、特徴点FXa、FXb間の距離DXabだけ移動して見える。また、周辺画像IMa内と周辺画像IMb内とで、障害物OJyは、特徴点FYa、FYb間の距離DYabだけ移動して見える。このときの、障害物OJyの移動距離である距離DYabは、障害物OJxの移動距離である距離DXabよりも短くなる。
【0055】
このように、フロントカメラ11Aとの距離が比較的長い障害物OJyは、フロントカメラ11Aとの距離が短い障害物OJxよりも短い距離だけ移動して見える。つまり、周辺画像IMa内と周辺画像IMb内とで、フロントカメラ11Aとの距離が長い、即ち路面Rからの高さが低い障害物OJyに生じる視差は、フロントカメラ11Aとの距離が短い、即ち路面Rからの高さが高い障害物OJxに生じる視差よりも小さくなる。このようなカメラと障害物等との距離に応じて生じる視差が異なることを利用して、後述のような障害物OJx、OJyと、フロントカメラ11Aとの相対距離を求めることができる。
【0056】
以下、演算部113が、障害物OJx、OJyのうち、障害物OJxを対象物として、車両1との相対距離を演算する場合について説明を続ける。
【0057】
演算部113は、上記のように、地点Aの周辺画像IMa内に映る障害物OJxの特徴点FXaの位置と、地点Bの周辺画像IMb内に映る障害物OJxの特徴点FXbの位置の差分である距離DXabを視差として算出する。
【0058】
演算部113は、視差としての距離DXabと、車両1の移動距離Dと、に基づき相対距離として、
図3(b)に示す距離αを算出する。さらに演算部113は、周辺画像IMbにおける障害物OJxの映り込み位置と、フロントカメラ11Aの取付け角度(光軸の角度)と、に基づき、相対距離として、
図3(b)に示す距離β、及び距離γを算出する。
【0059】
なお
図3(b)に示すように、距離αは、フロントカメラ11Aから特徴点FXaを示す障害物OJxの最上部までの距離である。また距離βは、フロントカメラ11Aを通る垂直方向の直線と、障害物OJxの最上部を通る水平方向の直線との交点Oからフロントカメラ11Aまでの距離である。距離γは、交点Oから障害物OJxの最上部までの距離である。
【0060】
また演算部113は、路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さHと、算出した距離βに基づき、路面Rに対する障害物OJxの高さhを演算する。このとき、演算部113は、記憶部116を参照して、路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さHを読み出し、上記演算に用いる。
【0061】
判定部114は、路面Rに対する障害物OJxの高さhに基づき、障害物OJxが車両1と干渉するか否かを判定する。具体的には例えば、判定部114は、障害物OJxの高さhに基づき、障害物OJxが、
図3(b)のフロントバンパ11Xの下端の高さgより高い否か、またフロントバンパ11Xの下端と干渉することとなるか否かを判定する。このとき、判定部114は、記憶部116を参照して、車両1の路面Rに対するフロントバンパ11Xの下端の高さgを読み出して、上記判定に用いる。
【0062】
また、判定部114は、算出した距離γが、報知距離以下であるか否かを判定する。これにより、障害物OJxが、車両1から報知距離以内に存在しているか否かが判断される。判定部114が、このような判定処理をする上記報知距離は、例えば6mである。
【0063】
出力部115は、判定部114において、障害物OJxが、例えばフロントバンパ11Xの下端の高さgより高い、またフロントバンパ11Xの下端と干渉すると判定された場合、干渉を抑制するための各種信号を出力する。具体的には例えば、出力部115は、警告信号に含まれる報知信号をスピーカ14等に出力する。これにより、スピーカ14から警告音が発せられ、運転者は、例えば車両1を停止させる等の操作を実行できる。
【0064】
また出力部115は、判定部114において、障害物OJxが、例えばフロントバンパ11Xと干渉すると判定された場合、VSCECU12に、車両1の制動機構の出力を上げるための制御信号を出力してもよい。これにより、VSCECU12による車両1の制動が可能となる。
【0065】
また出力部115は、判定部114において、障害物OJxが、例えばフロントバンパ11Xと干渉すると判定された場合、駆動装置を制御する図示せぬECUに、電子スロットルの開度を絞る等エンジンの出力を下げるための制御信号を出力してもよい。これにより、当該ECUにより車両1の駆動が抑制される。
【0066】
また例えば、出力部115は、判定部114において、障害物OJxが、フロントバンパ11Xと干渉する、かつ、障害物OJxが、報知距離以内に存在している、と判定された場合に、上記の各種信号を出力してもよい。
【0067】
また出力部115は、上記の出力ととともに、生成部112において生成された周辺監視用画像等を車内モニタ13に出力する。これにより、これらの各種画像等が適宜、車内モニタ13に表示される。
【0068】
記憶部116は、車両1に関する各種情報を記憶する。具体的には例えば、記憶部116は、路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さH等を記憶する。また例えば、記憶部116は、フロントバンパ11Xの下端の高さgを記憶する。これらの各種情報は、例えば車両1の設計情報等に基づき、予め記憶部116に記憶されている。また記憶部116は、カメラECU11の各種機能の実現に用いられる制御パラメータ及び制御プログラムを記憶する。
【0069】
(カメラECU11における処理例)
図4は、実施形態にかかるカメラECU11による処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0070】
入力部111は、イグニッションスイッチ等により車両1のエンジンが始動されると(ステップS101)、フロントカメラ11A等が撮影した周辺画像の入力の受け付けを開始する(ステップS102)。
【0071】
生成部112は、車両1の速度が所定速度未満であるか否かを判定する(ステップS103)。車両1の速度が所定速度未満ではなかった場合(ステップS103:No)、生成部112は、車両1の速度が所定速度未満となるまで待機する。車両1の車速が所定速度未満である場合(ステップS103:Yes)、ステップS104の処理に移行する。
【0072】
なおここで生成部112は、例えば車両1が前進している場合、フロントカメラ11Aから入力された周辺画像に基づき前方監視用画像を生成する。出力部115は、生成された前方監視用画像を車内モニタ13に出力する。
【0073】
演算部113は、時刻t1に車両1が通過する地点Aの周辺画像IMaについて画像解析を行い、周辺画像IMaにおける障害物OJxを検出する(ステップS104)。ここで時刻t1は、例えば生成部112により前方監視用画像の生成が開始された後、所定期間が経過した時刻である。またこのとき、演算部113は、VSCECU12に対し、地点Aにおける車輪の回転角度の取得を指示する信号を出力する。
【0074】
次いで、演算部113は、時刻t2に車両1が通過する地点Bの周辺画像IMbについて画像解析を行い、周辺画像IMbにおける障害物OJxを検出する(ステップS105)。時刻t2は、時刻t1から所定期間が経過した時刻である。またこのとき、演算部113は、VSCECU12に対し、地点Bにおける車輪の回転角度の取得を指示する信号を出力する。
【0075】
なお演算部113が、周辺画像IMa、IMbの画像解析を実行するタイミングは上記の時刻t1、t2に限定されない。例えば、車内モニタ13のタッチ操作等による信号が入力されると、演算部113は、周辺画像IMa、IMbについて画像解析を実行してもよい。なおこのとき、入力部111が、タッチ操作等による信号を受け付けてもよい。
【0076】
次いで、演算部113は、地点Aの周辺画像IMa内と、地点Bの周辺画像IMb内と、における障害物OJxの視差を演算する(ステップS106)。
【0077】
次いで、入力部111は、VSCECU12から、地点A、及び地点B間の車両1の移動距離Dを取得する(ステップS107)。
【0078】
次いで、演算部113は、算出した視差、車両1の移動距離D、周辺画像IMbにおける障害物OJxの映り込み位置、及びフロントカメラ11Aの取付け角度(光軸の角度)等に基づき、地点Bにおける車両1のフロントカメラ11Aと、障害物OJxとの相対距離としての距離α、距離β、距離γを演算する(ステップS108)。
【0079】
演算部113は、路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さと、距離βに基づき、路面Rに対する障害物OJxの高さhを演算する(ステップS109)。
【0080】
判定部114は、算出した障害物OJxの高さhに基づき、障害物OJxの高さhが車両1と干渉する高さか否かを判定する(ステップS110)。具体的には例えば、障害物OJxの高さhが、車両1のフロントバンパ11Xの下端の高さg以下、即ち障害物OJxの高さhがフロントバンパ11Xと干渉しない高さであると判定された場合(ステップS110:No)、ステップS103の処理に移行する。また、障害物OJxの高さhが、車両1のフロントバンパ11Xの下端の高さgより高い、即ち障害物OJxの高さhがフロントバンパ11Xと干渉する高さであると判定された場合(ステップS110:Yes)、ステップS111の処理に移行する。
【0081】
出力部115は、車両1と障害物OJxとの干渉を抑制するための信号として例えば、警告信号に含まれる報知信号をスピーカ14等に出力する(ステップS111)。以上により、実施形態のカメラECU11による処理が終了する。
【0082】
(概括)
車両と障害物との干渉を回避するため、超音波を用いた障害物センサを車両に複数搭載することがある。また、車両と障害物との相対距離を特定するため、ステレオカメラを搭載することもある。しかしながら、複数の障害物センサ、あるいはステレオカメラを搭載することで、車両のコストが増大してしまう。また、ステレオカメラは、車両から離れた位置の撮影に用いられることが多く、車両近傍の撮影には必ずしも適していない場合がある。
【0083】
実施形態のカメラECU11によれば、車両1に設置されたフロントカメラ11A等から車両1の周辺画像を取得し、車両1の移動に伴って周辺画像に映る障害物OJx等に生じる視差と、車両1の移動距離と、に基づいて、フロントカメラ11A等と障害物OJxとの相対距離を演算する。このように、従来車両に設置されている周辺監視用のフロントカメラ11A等を用いることで、例えば複数の障害物センサや、ステレオセンサを別途設けることなく、車両1近傍の障害物OJxまでの距離を正確に特定することができる。これにより、車両1のコスト削減も可能となる。
【0084】
実施形態のカメラECU11は、車両1の走行対象の路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さH等を記憶する。カメラECU11は、フロントカメラ11A等に対する障害物OJxの相対距離と、路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さH等と、に基づいて、路面Rに対する障害物OJxの高さhを演算する。これにより、車両1と、障害物OJxと、の高さ方向の距離を正確に特定することができる。
【0085】
実施形態のカメラECU11は、障害物OJxの高さhに基づいて、障害物OJxが車両1と干渉するか否かを判定する。これにより、障害物OJxと車両1とに干渉の恐れがある場合には、車両1を停止させるなどして障害物OJxと車両1との干渉を抑制することができる。
【0086】
(変形例)
図5を参照して、変形例にかかる車両用制御装置について説明する。
【0087】
図5は、変形例の演算部113において実行される演算処理について説明する図である。変形例のカメラECU11においては、路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さH’が、カメラECU11において演算される点が、上述の実施形態とは異なる。なお、変形例において、上記の実施形態と共通する部分については説明を適宜省略する。
【0088】
図5(a)、(b)は、路面R上を前進する車両1の前方の様子を示す側面図である。
【0089】
図5(a)は、車両1が、ある時刻t1に路面R上の地点Aを通過する状態を示す図である。また、
図5(b)は、車両1が、時刻t2に地点Bを通過する状態を示す図である。車両1の進行方向の路面R上には、カメラECU11による検出対象となる対象物としてのテクスチャTが表示されている。テクスチャTは、例えば路面Rに形成された模様であって、カメラECU11によって特定可能なものである。テクスチャTは、第2の対象物の一例である。
【0090】
図5(c)、(d)は、
図5(a)、(b)に示すそれぞれのタイミングで、フロントカメラ11Aにより撮影される周辺画像IMa、IMbの一例を示している。
図5(c)の周辺画像IMa、
図5(d)の周辺画像IMbには、路面R上のテクスチャTが映っている。
【0091】
演算部113は、入力された周辺画像に基づいて、車両1とテクスチャTとの相対距離を演算する。具体的には、
図5(c)、(d)に示すように、演算部113は、地点Aの周辺画像IMa内に映るテクスチャTの特徴点Taの位置と、地点Bの周辺画像IMb内に映るテクスチャTの特徴点Tbの位置の差分である距離DZabを視差として算出する。
【0092】
演算部113は、算出した視差としての距離DZab、車両1の移動距離D、周辺画像IMbにおけるテクスチャTの映り込み位置、及びフロントカメラ11Aの取付け角度(光軸の角度)等に基づき、地点Bにおける車両1のフロントカメラ11Aと、テクスチャTとの相対距離を算出する。
図5(b)に示す交点Oからフロントカメラ11Aまでの距離βは、路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さH’に相当する。
【0093】
また演算部113は、算出したフロントカメラ11Aの設置高さH’に基づき、路面からフロントバンパ11Xの下端の高さg’を算出する。このとき、演算部113は、記憶部116を参照して、フロントバンパ11Xからフロントカメラ11Aまでの距離を読み出し、上記演算に用いる。このようにして、路面Rに対するフロントカメラ11A、及びフロントバンパ11Xの実際の高さを特定することができる。
【0094】
演算部113は、路面Rに対するフロントカメラ11Aの設置高さH’、及び路面Rに対するフロントバンパ11Xの下端の高さg’等の算出結果を、記憶部116に記憶する。
【0095】
なお、演算部113は、上記の演算を、例えばドアロックモータ等を制御するボディECU等から車両1のドアの開閉信号を受信した後、所定期間の経過後に実行する。
【0096】
これにより例えば、車両1の乗員人数の増減や、サスペンションの経時劣化により変化する路面Rに対するフロントカメラ11A、及びフロントバンパ11Xの実際の高さを都度特定できるため、車両1と、車両1と干渉する恐れがある障害物と、の相対距離をより正確に特定することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、上述した実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 車両
11 カメラECU
11A フロントカメラ
11B バックカメラ
11Ca、11Cb サイドカメラ
12 VSCECU
12A ホイールセンサ
13 車内モニタ
14 スピーカ
111 入力部
112 生成部
113 演算部
114 判定部
115 出力部
116 記憶部