(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176493
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ゲート駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20241212BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20241212BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/16 H
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095054
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 杭賢
(72)【発明者】
【氏名】田中 信太朗
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740AA05
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5J055AX25
5J055BX16
5J055CX08
5J055CX20
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX56
5J055EX04
5J055EX07
5J055EY01
5J055EY05
5J055EY12
5J055EY21
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】半導体スイッチング素子のスイッチング動作の高速化および低損失化を図ることができるゲート駆動装置の提供。
【解決手段】ゲート駆動装置600は、ゲート端子Gに接続され、ゲート抵抗R1,R2を有する経路RT1と、経路RT1と並列にゲート端子Gに接続され、ゲート抵抗R3,R4を有する経路RT2と、スイッチング素子101のスイッチング状態を切り替える際のゲート電流が、経路RT1および経路RT2の両方に流れた後に経路RT1のみに流れるように制御する制御信号生成部403,404と、を備える。そして、経路RT2のインダクタンス成分は、経路RT1のインダクタンス成分よりもインダクタンス成分L3,L4だけ大きな値に設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子のゲート端子に電圧を印加するゲート駆動装置であって、
前記ゲート端子に接続され、第1ゲート抵抗を有する第1経路と、
前記第1経路と並列に前記ゲート端子に接続され、第2ゲート抵抗を有する第2経路と、
前記半導体スイッチング素子のスイッチング状態を切り替える際のゲート電流が、前記第1経路および前記第2経路の両方に流れた後に、前記第1経路のみに流れるように制御するアクティブゲート制御部と、を備え、
前記第2経路のインダクタンス成分は前記第1経路のインダクタンス成分よりも大きな値に設定されている、ゲート駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第1経路は、前記ゲート電流の通電方向を制限するダイオードをさらに備える、ゲート駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第2経路の前記インダクタンス成分の少なくとも一部を、インダクタまたはフェライトビーズによって構成する、ゲート駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第2経路における前記インダクタンス成分の少なくとも一部が、前記第2経路の配線長または前記第2経路における部品のリード線長によって設定される、ゲート駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第1経路に設けられて、前記ゲート電流の通電を許可および遮断する第1制御素子と、
前記第2経路に設けられて、前記ゲート電流の通電を許可および遮断する第2制御素子と、を備え、
前記アクティブゲート制御部は、
前記第1経路および前記第2経路の両方に前記ゲート電流を流す際には、前記第1制御素子による通電の許可に先立ってまたは許可と同時に、前記第2制御素子による通電を許可する、ゲート駆動装置。
【請求項6】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第1経路に設けられて、前記ゲート電流の通電を許可および遮断する第1制御素子と、
前記第2経路に設けられて、前記ゲート電流の通電を許可および遮断する第2制御素子と、を備え、
前記アクティブゲート制御部は、
前記第1経路のみに前記ゲート電流を流すように制御する際には、
前記半導体スイッチング素子のスイッチング電流またはスイッチング電圧のサージピークのタイミングよりも前に、前記第2制御素子による通電を遮断する、ゲート駆動装置。
【請求項7】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第1ゲート抵抗を挟んで前記ゲート端子と反対側の前記第1経路上に設けられ、前記ゲート電流の通電を許可および遮断する第1制御素子と、
前記第2経路に設けられて、前記ゲート電流の通電を許可および遮断する第2制御素子と、を備え、
前記第2経路の一端は前記第1ゲート抵抗と前記第1制御素子との間に接続され、かつ、前記第2経路の他端は前記ゲート端子に接続され、
前記アクティブゲート制御部は、前記第1制御素子および前記第2制御素子による前記ゲート電流の通電の許可および遮断を制御する、ゲート駆動装置。
【請求項8】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第2経路は、
前記第2ゲート抵抗の一部を構成する第3ゲート抵抗を有し、前記半導体スイッチング素子のゲート容量を充電するための第1配線と、
前記第2ゲート抵抗の一部を構成する第4ゲート抵抗を有し、前記半導体スイッチング素子のゲート容量を放電するための第2配線と、
一端が前記第1配線および前記第2配線に接続され、他端が前記ゲート端子に接続される第3配線と、を備え、
前記第1配線と前記第3配線とから成る配線のインダクタンス成分、および、前記第2配線と前記第3配線とから成る配線のインダクタンス成分は、それぞれ前記第1経路のインダクタンス成分よりも大きな値に設定されている、ゲート駆動装置。
【請求項9】
請求項1に記載のゲート駆動装置において、
前記第2経路は、
前記半導体スイッチング素子のゲート容量を充電するためのゲートチャージ電源と前記ゲート端子とを接続する配線と、
前記ゲートチャージ電源と前記ゲート端子との間に設けられ、カソードが前記ゲートチャージ電源に接続されアノードが前記ゲート端子に接続されるダイオードと、
を備える、ゲート駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子のゲート駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子は種々の装置に用いられており、例えば、電力変換装置のインバータ回路のスイッチング素子として用いられている。このようなパワー半導体素子においては、スイッチング動作のターンオンおよびターンオフに伴ってスイッチング損失が発生する。そのため、電力変換装置では、小型化や高出力密度化のために、パワー半導体素子の低損失化が重要となる。例えば、スイッチング速度の調整が可能な構成として、ゲート抵抗の切り替えによる多段式ゲート駆動回路が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、スイッチング動作中のゲート電流の減衰が大きいため、高速化による低損失駆動が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によるゲート駆動装置は、半導体スイッチング素子のゲート端子に電圧を印加するゲート駆動装置であって、前記ゲート端子に接続され、第1ゲート抵抗を有する第1経路と、前記第1経路と並列に前記ゲート端子に接続され、第2ゲート抵抗を有する第2経路と、前記半導体スイッチング素子のスイッチング状態を切り替える際のゲート電流が、前記第1経路および前記第2経路の両方に流れた後に、前記第1経路のみに流れるように制御するアクティブゲート制御部と、を備え、前記第2経路のインダクタンス成分は前記第1経路のインダクタンス成分よりも大きな値に設定されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、半導体スイッチング素子のスイッチング動作の高速化および低損失化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、電力変換装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、ゲート駆動装置の回路構成を示す図である。
【
図3】
図3は、ターンオン時における各信号の波形例を示す図である。
【
図4】
図4は、ゲート駆動装置の比較例を示す図である。
【
図5】
図5は、ターンオフ時の各信号の波形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、電力変換装置の一例を示す図である。第1の実施形態では、車両1000に搭載された電力変換装置200を例に説明する。電力変換装置200は、車両1000に搭載された電動モータ300を駆動する。車両1000には蓄電装置100が設けられ、電力変換装置200は蓄電装置100から供給される直流電力を交流電力に変換し、電動モータ300を駆動する。
【0010】
電動モータ300は、例えば、車輪を回転させるための走行用モータである。電動モータ300は、所定のパターンで結線される3相コイルを有する。結線パターンとしては、
図1に示すY字パターンに限られず、デルタパターンのような他の結線パターンでも良い。電力変換装置200から所定の通電パターンを3相コイルに印加することにより、電動モータ300が回転駆動される。
【0011】
蓄電装置100は、正極端子100aおよび負極端子100bを有する。電力変換装置200は、正極バス線201p、負極バス線201n、平滑コンデンサ110および三相スイッチングアーム500(U,V,W)を有する。正極バス線201pは、蓄電装置100の正極端子100aに接続される。負極バス線201nは、蓄電装置100の負極端子100bに接続される。平滑コンデンサ110および三相スイッチングアーム500(U,V,W)の両端は、正極バス線201pと負極バス線201nとに接続される。
【0012】
三相スイッチングアーム500(U,V,W)のそれぞれには、上アームのスイッチング素子101と下アームのスイッチング素子101が設けられている。スイッチング素子101は、例えばパワースイッチング素子であり、例えば、IGBTあるいはMOSFET等が用いられる。各スイッチング素子101は、並列接続された還流ダイオード(または、ボディーダイオード)102を有する。上アームのスイッチング素子101と下アームのスイッチング素子101とは直列に接続されている。上アームのスイッチング素子101と下アームのスイッチング素子101との接続点は、電動モータ300の対応する相のコイルの一端に接続されている。なお、
図1に示す例では、各上下アームに1つのスイッチング素子101が設けられているが、複数のスイッチング素子101を並列使用する構成であっても良い。
【0013】
電力変換装置200は、ゲート駆動装置600を制御する変換制御装置400を備える。変換制御装置400は、ゲート駆動装置600毎に制御指令Pを出力し、各スイッチング素子101を個別に制御する。制御指令Pは所定のパルス幅を有するパルス信号であり、変換制御装置400はスイッチング素子101をPWM制御する。この制御指令Pによって、同一の相のスイッチング素子101は、同時にオンにならない範囲で交互にオン/オフ制御される。その結果、蓄電装置100からの直流電力が交流電力に変換されて電動モータ300が回転駆動される。
【0014】
なお、本実施形態では、
図1に示すようなインバータを構成する電力変換装置200を例に説明するが、本発明は、これに限られず、DC/DCコンバータ、AC/ACコンバータ、AC/DCインバータ等にも適用することができる。
【0015】
図2は、
図1に示したU相の下アームに係るスイッチング素子101と、そのスイッチング素子101に対して設けられたゲート駆動装置600の回路構成を示したものである。なお、図示は省略するが、U相の上アームおよび他の相(V,W相)の上下アームについても同様の構成である。以下の説明では、用いられるスイッチング素子がMOSFETの場合を例に説明する。
【0016】
ゲート駆動装置600の出力部1はスイッチング素子101のゲート端子Gに接続され、基準電位2はスイッチング素子101のソース端子Sと接続される。ゲート駆動装置600の入力部3は、変換制御装置400と接続される。変換制御装置400からゲート駆動装置600に入力された制御指令Pは、MOSFET11,12のゲートに入力されると共に、制御信号生成部403,404にも入力される。ゲート駆動装置600は、スイッチング素子101のゲート端子Gに接続される2つの経路RT1および経路RT2を有する。変換制御装置400、制御信号生成部403,404は、例えば、図示は省略するが、制御回路は内部にCPU、RAM、ROM、通信回路等を有している。また、変換制御装置400および制御信号生成部403,404を、一つの制御装置で構成するようにしても良い。
【0017】
第1の経路RT1は、配線LN1と配線LN2とを備える。配線LN1は、正側電源N1、オン側のMOSFET11、オン側のゲート抵抗R1およびダイオードD1を有する。MOSFET11は、ソースが正側電源N1に接続され、ドレインがゲート抵抗R1の一端に接続される。ゲート抵抗R1の他端はダイオードD1のアノードに接続される。ダイオードD1のカソードはゲート端子Gに接続される。
【0018】
配線LN2は、負側電源N2、オフ側のMOSFET12、オフ側のゲート抵抗R2およびダイオードD2を有する。MOSFET12は、ソースが負側電源N2に接続され、ドレインがゲート抵抗R2の一端に接続される。ゲート抵抗R2の他端はダイオードD2のカソードに接続される。ダイオードD2のアノードはゲート端子Gに接続される。なお、配線LN1上のダイオードD1または配線LN2上のダイオードD2を省略した構成でもよい。この場合、ゲート抵抗R1,R2の一端はゲート端子Gに接続される。
【0019】
一方、第2の経路RT2は、配線LN3と配線LN4とを備える。配線LN3は、正側電源N3、電圧引き上げ用のMOSFET13、ゲート抵抗R3およびインダクタンス成分L3を有する。MOSFET13は、ソースが正側電源N3に接続され、ドレインがゲート抵抗R3の一端に接続される。ゲート抵抗R3の他端は、インダクタンス成分L3を介してゲート端子Gに接続される。
【0020】
配線LN4は、負側電源N4、電圧引き下げ用のMOSFET14、ゲート抵抗R4およびインダクタンス成分L4を有する。MOSFET14は、ソースが負側電源N4に接続され、ドレインがゲート抵抗R4の一端に接続される。ゲート抵抗R4の他端は、インダクタンス成分L4を介してゲート端子Gに接続される。MOSFET13の入力部は制御信号生成部403に接続され、制御信号生成部403から制御信号S3が入力される。MOSFET14の入力部は制御信号生成部404に接続され、制御信号生成部404から制御信号S4が入力される。
【0021】
制御信号生成部403,404は、変換制御装置400から入力される制御指令Pに基づいて制御信号S3,S4を生成する。なお、スイッチング素子101の状態をセンシングし、その状態信号Jを制御信号生成部403,404に入力するような構成としても良い。その場合、制御信号生成部403,404は、制御指令Pと状態信号Jとに基づいて制御信号S3,S4を生成する。
【0022】
本実施形態においては、配線LN3のインダクタンス成分は、配線LN1のインダクタンス成分よりもインダクタンス成分L3だけ大きく設定される。同様に、配線LN4のインダクタンス成分は、配線LN2のインダクタンス成分よりもインダクタンス成分L4だけ大きく設定される。なお、インダクタンス成分L3,L4の設定範囲は、例えば、100nH~2000nH程度に設定される。
【0023】
なお、正側電源N1と正側電源N3とは基本的には同電位に設定されるが、異なる電位であっても良い。例えば、ダイオードD1の順方向電圧を補正するために、正側電源N1の電位を正側電源N3の電位よりもダイオードD1の順方向電圧だけ高くなるように設定しても良い。負側電源N2および負側電源N4の電位設定についても同様であり、同電位でも良いし、負側電源N4の電位を負側電源N2の電位よりもダイオードD2の順方向電圧だけ高くなるように設定しても良い。
【0024】
なお、スイッチング素子としてMOSFET11~14を用いる代わりに、BJT(Bipolar Junction Transistor)を用いても良い。
【0025】
インダクタンス成分L3,L4については配線LN3,LN4上に配置すれば良く、例えば、インダクタをMOSFET13とゲート抵抗R3との間、および、MOSFET14とゲート抵抗R4との間でも良いし、配線LN3,LN4上に分散して配置しても良い。また、配線LN1~LN4の配線長や配線幅により、インダクタンス成分の大きさを調整するようにしても良い。また、ゲート抵抗R3,R4またはMOSFET13,14としてリードタイプのものを使用し、リード線の長さを変えることによりインダクタンス成分の大きさを調整しても良い。
【0026】
インダクタンス成分を調整するその他の方法としては、配線の形状を渦巻状またはジグザグ状にしても良いし、配線の一部が局所的に幅狭に形成されていても良い。さらに、フェライトビーズを実装することで、短いリード線でも所望のインダクタンス成分が得られるので、電源回路を小型化することができる。
【0027】
(ターンオン時の動作説明)
図3は、スイッチング素子101のターンオン時における各信号の波形例を示す図である。波形(A)は、変換制御装置400からの制御指令Pを示す。波形(B)は、制御信号生成部403からの制御信号S3を示す。波形(C)は、スイッチング素子101のゲート電流Igを示す。波形(D)は、スイッチング素子101のゲート電圧Vgsを示す。波形(E)の細い実線および破線はスイッチング素子101のドレイン-ソース間主電圧(以下では、ドレインソース間電圧と呼ぶことにする)Vdsを示し、太い実線および破線はドレイン電流Idsを示す。波形(F)は、スイッチング素子101の損失パワー(=Vds×Ids)の波形を示す。なお、実線は実施形態の場合の波形を示し、破線は従来の場合の波形を示す。
【0028】
ここで、従来の場合とは、例えば
図4の比較例に示すような構成のゲート駆動装置610である。ゲート駆動装置610は、
図2に示すゲート駆動装置600から、第2の経路RT2のインダクタンス成分L3,L4と、第1の経路RT1のダイオードD1,D2を省略したものである。
【0029】
図3の波形(A)に示すように、時刻t0において、スイッチング素子101をゲートオン(ON)する制御指令P(ON)が、変換制御装置400からゲート駆動装置600に入力される。制御指令P(ON)がゲート駆動装置600に入力されると、MOSFET11がオンする。また、入力された制御指令P(ON)に基づいて、MOSFET13をオンする制御信号S3(パルス指令)が、制御信号生成部403からMOSFET13に入力される。MOSFET13はP型のMOSFETなので反転が必要であるが、ここでは反転前のパルス指令を示した。そのため、制御信号S3の波形は、制御指令Pのオンオフに対して、N型のMOSFET14に対する制御信号S4の波形と同様の波形で表されることになる。なお、制御信号S3の立ち上がりは制御指令Pより遅れないように設定するのが良く、好ましくは同期するのが良い。また、制御指令Pより先に立ち上がっても良い。
【0030】
時刻t0において、制御信号S3がONに立ち上がると、波形(C)に示すようにスイッチング素子101のゲート電流Igが上昇し始める。ゲート電流Igは第1および第2の経路RT1,RT2上の各ゲート電流の合計値である。ゲート電流Igの上昇と共に、波形(D)に示すようにゲート電圧Vgsが上昇し始める。第1の実施形態および比較例のいずれにおいても、実線および破線で示すようにゲート電流が第1経路RT1および第2経路RT2上に同時に流れ始める。しかし、第1の実施形態では第2の経路RT2上に追加のインダクタンス成分L3,L4が存在するため、比較例(破線)よりもゲート電流Igの立ち上がりが緩やかであり、それに応じてゲート電圧Vgsの上昇も緩やかである。
【0031】
破線で示す比較例の場合には、本実施形態に比べてゲート電流Igの値が大きいため、ゲート容量の充電スピードが速くなる。そのため、比較例の場合の方が、ゲート電圧Vgsが先にゲート閾値電圧Vthに到達する。比較例の場合には、時刻t1にゲート電圧Vgsがゲート閾値電圧Vthに到達すると、波形(E)の細い破線で示すように、スイッチング素子101のドレインソース間電圧Vdsが減少し始めるとともに、波形(E)の太い破線で示すように、ドレイン電流Idsが上昇し始める。一方、本実施形態では、比較例の場合よりもゲート容量の充電スピードが遅いので、時刻t2(>t1)においてゲート電圧Vgsがゲート閾値電圧Vthに到達する。それとともに、ドレインソース間電圧Vdsが減少し始め、ドレイン電流Idsが上昇し始める。波形(F)に示すように、ドレイン電流Idsが上昇し始めるタイミングから、半導体スイッチング素子の損失が発生する。
【0032】
本実施形態に比べ比較例の場合はゲート電流Igがより大きいため、ゲート電流Igがより早くピーク値を迎える。また、ゲート電流Igは、ゲート電圧Vgsとスイッチング素子101の正側電源との差分をゲート抵抗値で割った値で決定される。比較例の場合、波形(D)に示すように本実施形態に比べてゲート電圧Vgsの上昇がより速いため、ゲート電圧Vgsと正側電源との差分も、より早く小さくなる。そのため、比較例の場合のピーク値到達後のゲート電流Igは、実施形態の場合に比べてより強く減衰されることになる。ドレインソース間電圧Vdsの減少速度およびドレイン電流Idsの上昇速度はゲート電流Igと比例するため、比較例の場合のドレインソース間電圧Vdsおよびドレイン電流Idsの変化スピードは、第1の実施形態の場合よりも遅くなる。
【0033】
ところで、ドレイン電流Idsのサージを抑制するためには、スイッチング素子101のドレイン電流Idsのサージが最大値になる前に、ゲートの充電スピードを高速モードから低速モードへ切り替える必要がある。すなわち、MOSFET13をオン状態からオフ状態へ切り替えて、第2の経路RT2のゲート電流の流れを止めて第1の経路RT1だけにゲート電流を流してゲート電流を減少させることで、充電スピードを低減する。この切り替えのタイミングは、ドレイン電流Idsのサージが生じる前までに済ませなければならない。そのため、ドレイン電流Idsの立ち上がりからドレイン電流Idsが最大となる時刻t3までの期間内に、制御信号S3をオフする必要がある。
【0034】
制御信号S3がオン状態となっている時間のメイン部分は、ゲート電圧Vgsがゲート閾値電圧Vthに到達するまでの充電期間である。比較例では、ゲート電圧Vgsがゲート閾値電圧Vthに到達するまでの期間が短いため、波形(B)に示すように、第1の実施形態の場合よりも早いタイミングで制御信号S3をオフしなければならない。そのため、比較例における制御信号S3は、第1の実施形態の制御信号S3よりも短いパルス幅となっている。すなわち、第1の実施形態では、ゲート閾値電圧までの充電時間が長くなり、従来よりも長いパルスの制御信号S3でゲート駆動速度の切り替えが可能となる。
【0035】
制御信号S3の終了タイミングは、例えば、制御指令Pに基づいて決定される。また、制御信号S3の終了タイミングを、前述したスイッチング素子101の状態信号Jに基づいて決定しても良い。状態信号Jとしては、例えば、ゲート電流Ig、ゲート電圧Vgs、ドレイン電流Ids、ドレイン-ソース間主電圧Vdsのいずれかの変化率の立ち上がり、または、ドレインソース間電圧Vds、ドレイン電流Idsの変化率の立ち下りなどがある。
【0036】
波形(C)の破線で示すように、比較例の場合には、ゲート電流Igが高速で立ち上がってすぐに減衰する。一方、第1の実施形態ではインダクタンス成分L3,L4を設けたので、実線で示すようにスイッチング中のゲート電流Igの減衰を弱めることができる。その結果、スイッチング速度を向上させることができる。波形(F)に示す損失パワーは、ドレインソース間電圧Vdsとドレイン電流Idsとの積で表される。第1の実施形態ではスイッチング速度向上により損失の発生する期間が短くなるため、損失パワーの時間積分値である損失量が破線で示す比較例の場合よりも小さくなる。すなわち、ターンオンにおける損失を低減することができる。
【0037】
(ターンオフ時の動作説明)
図5は、スイッチング素子101のターンオフ時の各信号の波形例を示す図である。波形(A)は、変換制御装置400からの制御指令Pを示す。波形(B)は、制御信号生成部404からの制御信号S4を示す。波形(C)は、スイッチング素子101のゲート電流Igを示す。波形(D)は、スイッチング素子101のゲート電圧Vgsを示す。波形(E)の細い実線および破線はスイッチング素子101のドレインソース間電圧Vdsを示し、太い実線および破線はドレイン電流Idsを示す。波形(F)は、スイッチング素子101の損失パワー(=Vds×Ids)の波形を示す。なお、
図5においても、実線は実施形態(
図2)の場合の波形を示し、破線は比較例(
図4)の場合の波形を示す。
【0038】
波形(A)に示すように、時刻t0において、スイッチング素子101をゲートオフ(OFF)する制御指令P(OFF)が、変換制御装置400からゲート駆動装置600に入力される。制御指令P(OFF)がゲート駆動装置600に入力されると、MOSFET12がオンする。また、入力された制御指令P(OFF)に基づいて、MOSFET14をオンする制御信号S4(パルス指令)が、制御信号生成部404からMOSFET14に入力される。なお、制御信号S4の立ち上がりは制御指令Pの立ち下がりより遅れないように設定するのが良く、好ましくは同期するのが良い。また、制御指令Pの立ち下がりより先に立ち上がっても良い。
【0039】
時刻t0において、制御信号S4がONに立ち上がると、波形(C)に示すようにスイッチング素子101のゲート容量を放電するゲート電流Igが流れ始める。ゲート電流Igは第1および第2の経路RT1,RT2上の各ゲート電流の合計値である。ゲート電流Igが流れ始めるとともに、ゲート電圧Vgsが減少し始める。第1の実施形態および比較例のいずれにおいても、実線および破線で示すようにゲート電流が第1および第2の経路RT1,RT2上に同時に流れ始める。しかし、第1の実施形態では第2の経路RT2上に追加のインダクタンス成分L3,L4が存在するため、比較例(破線)よりも放電におけるゲート電流Igの値の増加が緩やかであり、それに応じてゲート電圧Vgsの減少も緩やかである。
【0040】
波形(C)に示すように、破線で示す比較例の場合には、本実施形態に比べてゲート電流(放電電流)Igの値が大きいため、ゲート容量の放電スピードが速くなる。そのため、波形(D)に示すように、比較例の場合のゲート電圧Vgsが先にゲートのミラープラトー(Miller Plateau)に到達する。破線で示す比較例のゲート電圧Vgsが時刻t1においてゲートのミラープラトーに到達すると、波形(E)の細い破線で示すように、ドレインソース間電圧Vdsが上昇し始める。
【0041】
一方、ゲート容量の放電スピードが遅い本実施形態では、ゲート電圧Vgsは時刻t2(>t1)においてゲートのミラープラトーに到達する。その結果、時刻t2においてドレインソース間電圧Vdsが上昇し始め、波形(F)に示すように、このタイミングからスイッチング素子101の損失が発生することになる。
【0042】
比較例ではゲート電流Igが本実施形態よりも大きいため、波形(C)に示すように、ゲート電流Igが放電側でピークとなる時期が本実施形態よりも早い。また、ゲート電流Igは、ゲート電圧Vgsとスイッチング素子101の負側電源との差分をゲート抵抗値で割った値で決定される。比較例の場合、波形(D)に示すように本実施形態に比べてゲート電圧Vgsの減少がより速いため、ゲート電圧Vgsと負側電源との差分も、より早く小さくなる。そのため、比較例の場合のピーク値到達後のゲート電流Igは、実施形態の場合に比べてより強く減衰されることになる。ドレインソース間電圧Vdsの上昇速度はゲート電流Igの大きさに比例するため、比較例の場合のドレインソース間電圧Vdsの上昇スピードは、本実施形態の場合よりも遅くなる。
【0043】
ところで、スイッチング素子101のドレインソース間電圧Vdsのサージが最大値となる前に、ゲートの放電スピードを高速モードから低速モードへ切り替える必要がある。具体的には、MOSFET14をオン状態からオフ状態へ切り替えることで、第2経路RT2のゲート電流の流れを止め、第1の経路RT1のみにゲート電流を流すことによってゲート電流を減少させる。それによって、放電スピードを低減することができる。
【0044】
高速モードから低速モードへ切り替えるタイミングは、ドレインソース間電圧Vdsのサージが来る前までに済ませなければならない。すなわち、ドレインソース間電圧Vdsの立ち上がりからドレインソース間電圧Vdsが最大となる時刻t3までの期間内に制御信号S4をオフする必要がある。制御信号S4がオフするまでの時間のメイン部分は、ゲート電圧Vgsがミラープラトーに到達までの放電期間である。
【0045】
波形(D)に示すように、ゲート電圧Vgsがミラープラトーに到達までの放電期間は、第1の実施形態の場合に比べて比較例の場合の方が短い。そのため、比較例の場合には、第1の実施形態の場合より早いタイミングで制御信号S4をオフしなければならない。これにより、比較例の制御信号S4(破線)のパルス幅は、第1の実施形態の場合の制御信号S4(実線)よりも短いパルス幅となっている。すなわち、制御信号S3の場合と同様に、第1の実施形態では比較例よりも長いパルス幅での制御が可能となり、設計が容易となる。
【0046】
制御信号S4の終了タイミングは、例えば、制御指令Pに基づいて決定される。また、制御信号S3の終了タイミングを、前述したスイッチング素子101の状態信号Jに基づいて決定しても良い。状態信号Jとしては、例えば、ゲート電流Ig、ゲート電圧Vgs、ドレイン電流Ids、ドレイン-ソース間主電圧Vdsのいずれかの変化率の立ち下がり、または、ドレインソース間電圧Vds、ドレイン電流Idsの変化率の立ち上がりなどがある。
【0047】
このように、ターンオフの場合においても、波形(C)の破線で示すように、比較例の場合には、ゲート電流Igが高速で立ち上がってすぐに減衰する。一方、第1の実施形態ではインダクタンス成分L3,L4を設けたので、実線で示すようにスイッチング中のゲート電流Igの減衰を弱めることができる。その結果、スイッチング速度を向上させることができる。波形(F)の損失パワー(=Vds×Ids)を見ると、第1の実施形態ではスイッチング速度向上により損失の発生する期間が短くなるため、損失パワーの時間積分値である損失量が破線で示す比較例の場合よりも小さくなる。すなわち、ターンオフにおける損失を低減することができる。
【0048】
上述したように、ターンオン時には、
図2の正側電源N1および正側電源N3から第1の経路RT1の配線LN1および第2の経路RT2の配線LN3を通って、スイッチング素子101のゲートに電流が流れる。その際に、インダクタンス成分L3のゲート端子側の電位がゲート抵抗R1のダイオード側の電位よりも高くなる可能性がある。その場合、スイッチング素子101のゲートに流れるべき電流の一部が、第1の経路RT1のゲート抵抗方向へ流れる可能性がある。そのため、ゲート抵抗R1のゲート端子側にダイオードD1を設けて、そのような逆流を防止するようにしている。また、ターンオフ時においては、ゲート端子側の電位がゲート抵抗R2のダイオード側の電位よりも低くなる可能性があり、ダイオードD2はそのときの逆流を防止するために設けたものである。
【0049】
このように、ゲート電流の通電方向を制限するダイオードD1,D2を設けて第1の経路RT1への逆流を防止することで、逆流による第1の経路RT1上の損失を低減し、ゲート基板の発熱を抑えることができる。また、スイッチング素子101のゲート容量の充放電を効率よく行うことができ、ゲートの充放電スピードを高く保つことができる。
【0050】
(変形例1)
図6は、上述した第1の実施形態の変形例1を示す図である。変形例1では、第1の実施形態の
図2に示したインダクタンス成分L3,L4を、インダクタンス成分Lbにより共通化したものである。配線LN3および配線LN4は、インダクタンス成分Lbを有する配線LNbを介してゲート端子Gに接続される。また、配線LN1および配線LN2は、配線LNaを介してゲート端子Gに接続される。
【0051】
インダクタンス成分Lbを有する配線LNbを用いることで、共通のインダクタンス成分Lbが配線LN3およびLN4にそれぞれ付加されることになる。インダクタンス成分Lbの大きさは、配線LN3と配線LNbとの合計のインダクタンス成分、および、配線LN4と配線LNbとの合計のインダクタンス成分のいずれもが、第1の経路RT1のインダクタンス成分よりも大きくなるように設定される。
【0052】
図6に示すようなインダクタンス成分Lbを有する配線LNbを用いることで、部品(インダクタ)の数の低減や回路の簡素化を図ることができる。ターンオン時およびターンオフ時のMOSFET13,14のオンオフ動作は、上述した第1の実施形態と同一であり説明を省略する。変形例1の構成においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
(変形例2)
図7は、上述した第1の実施形態の変形例2を説明する図である。変形例2のゲート駆動装置600では、
図7に示すように、
図2の構成に対して、正側電源N3とゲート端子Gとの間にダイオードD3をさらに設けた。ターンオン時およびターンオフ時の動作については、上述した第1の実施形態と同様である。変形例2の構成においては、ゲート端子Gの電位が正側電源N3より高くなる場合に、スイッチング素子101のゲートにおける余剰電荷が正側電源N3に戻る。これにより、ゲートのオーバーチャージを防ぐことができる。
【0054】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態を示す図である。上述した
図2では、スイッチング素子であるMOSFET13のソースは正側電源N3に接続されていたが、
図8では、MOSFET13のソースはMOSFET11のドレインに接続される。同様に、MOSFET14のソースは、MOSFET12のドレインに接続される。
図8では、配線LN3,LN4上に設けられるMOSFET13,14をスイッチとしてそれぞれ示した。これらのスイッチには、MOSFETの代わりにBJT(Bipolar Junction Transistor)を用いても良い。なお、
図8では、第1および第2の経路を示す符号RT1,RT2の記載は省略した。
【0055】
第2の実施形態では、第2の経路の配線LN3を流れる電流(ゲート電流)は、MOSFET11,13の両方で制御され、配線LN4を流れる電流はMOSFET12,14の両方で制御されることになる。すなわち、MOSFET11,13の両方がオンのときのみ配線LN3に電流が流れる。配線LN4の場合には、MOSFET12,14の両方がオンのときのみ電流が流れる。
【0056】
第2の実施形態の場合には、MOSFET11よりも先にまたは同時にMOSFET13を同時にオンすれば、配線LN1および配線LN3に、自動的に同時にゲート電流の通電を開始することができる。配線LN2,LN4に関しても同様である。そのため、MOSFET13,14のオンタイミングをMOSFET11,12のオンタイミングよりも早く設定することで、MOSFET13,14の制御信号S3,S4のパルス幅を長くすることができる。これにより、ゲート駆動装置600の制御性の向上を図ることができるとともに、反応の遅い制御素子を第2の経路上の配線LN3,LN4に実装することが可能となる。
【0057】
以上説明した本発明の実施形態および変形例によれば、以下の作用効果を奏する。
【0058】
(1)
図1,2等に示したように、スイッチング素子101のゲート端子Gに電圧を印加するゲート駆動装置600は、ゲート端子Gに接続され、ゲート抵抗R1,R2を有する第1の経路RT1と、第1の経路RT1と並列にゲート端子Gに接続され、ゲート抵抗R3,R4を有する第2の経路RT2と、スイッチング素子101のスイッチング状態を切り替える際のゲート電流が、経路RT1および経路RT2の両方に流れた後に、経路RT1のみに流れるように制御する制御信号生成部403,404(アクティブゲート制御部)と、を備える。そして、経路RT2のインダクタンス成分は経路RT1のインダクタンス成分よりも大きな値に設定されている。例えば、
図2に示すように、経路RT2のインダクタンス成分は、インダクタンス成分L3,L4だけ経路RT1よりも大きく設定されている。
【0059】
上述のように経路RT2のインダクタンス成分を経路RT1よりも大きく設定することで、スイッチング中のゲート電流の減衰を弱めることができる。その結果、スイッチング速度の向上を図ることができ、スイッチング時の損失を低減することができる。また、スイッチング素子101が内蔵抵抗の大きいパワー素子であった場合も、高速駆動することができる。なお、
図2に示す例では、第2の経路RT2に充電用の配線LN3と放電用の配線LN4とを設けたが、いずれか一方を設けるような構成でも良い。
【0060】
(2)上記(1)において、
図2等に示すように、経路RT1は、ゲート電流の通電方向を制限するダイオードD1,D2をさらに備える。ゲート電流の逆流による経路RT1における損失を防止することができ、ゲート基板の発熱を抑えることができる。また、経路RT2を流れる電流をゲート容量の充放電に効率的に利用することができ、ゲート充放電スピードの向上を図ることができる。
【0061】
(3)上記(1)において、経路RT2のインダクタンス成分の少なくとも一部を、インダクタまたはフェライトビーズによって構成しても良い。インダクタを利用してインダクタンス成分L3,L4を調整することにより、インダクタンス成分L3,L4の正確な調整を容易に行うことができる。また、フェライトビーズを配線上に実装してインダクタンス成分L3,L4を調整することで、短い配線でも所望のインダクタンス成分が得られ、電源回路の小型化を図ることができる。
【0062】
(4)上記(1)において、経路RT2におけるインダクタンス成分L3,L4の少なくとも一部が、経路RT2の配線長または経路RT2における部品のリード線長によって設定されるようにしても良い。これにより、基板上のレイアウト設計が容易になる。
【0063】
(5)上記(1)において、
図2,3等に示すように、経路RT1に設けられて、ゲート電流の通電を許可および遮断するMOSFET11,12(第1制御素子)と、経路RT2に設けられて、ゲート電流の通電を許可および遮断するMOSFET13,14(第2制御素子)と、を備え、制御信号生成部403,404(アクティブゲート制御部)は、経路RT1および経路RT2の両方にゲート電流を流す際には、MOSFET11,12による通電の許可に先立ってまたは許可と同時に、MOSFET13,14による通電を許可する。
【0064】
上記のように、MOSFET11,12による通電の許可と同時にMOSFET13,14による通電を許可することで、経路RT1によるゲート容量の充放電を、経路RT2による充放電と同時に開始することができる。また、MOSFET13,14による通電をMOSFET11,12による通電に先立って開始することで、MOSFET13,14の制御に必要なパルス幅をより長くすることができ、ゲート駆動装置600の制御性向上を図ることができる。それにより、反応の遅い制御素子を経路RT2上に実装することが可能となる。
【0065】
(6)上記(1)において、
図2,3,5等に示すように、経路RT1に設けられて、ゲート電流の通電を許可および遮断するMOSFET11,12(第1制御素子)と、経路RT2に設けられて、ゲート電流の通電を許可および遮断するMOSFET13,14(第2制御素子)と、を備え、制御信号生成部403,404(アクティブゲート制御部)は、経路RT1のみにゲート電流を流すように制御する際には、スイッチング素子101のスイッチング電流(ドレイン電流Ids)またはスイッチング電圧(ドレインソース間電圧Vds)のサージピークのタイミングよりも前に、MOSFET13,14による通電を遮断する。
【0066】
ドレイン電流Idsまたはドレインソース間電圧Vdsのサージピークタイミングよりも前にMOSFET13,14による通電を遮断することで、スイッチング素子101のゲートに流れるゲート電流が減る。それにより、スイッチングスピードが低減され、ドレイン電流Idsまたはドレインソース間電圧Vdsのサージを抑え込むことができる。
【0067】
(7)上記(1)において、
図8等に示すように、ゲート抵抗R1,R2を挟んでゲート端子Gと反対側の経路RT1上に設けられ、ゲート電流の通電を許可および遮断するMOSFET11,12(第1制御素子)と、経路RT2(配線LN3,LN4)に設けられて、ゲート電流の通電を許可および遮断するMOSFET13,14(第2制御素子)と、を備え、経路RT2(配線LN3,LN4)の一端はゲート抵抗R1,R2とMOSFET11,12との間に接続され、かつ、経路RT2の他端はゲート端子Gに接続され、変換制御装置400および制御信号生成部403,404(アクティブゲート制御部)は、MOSFET11~14によるゲート電流の通電の許可および遮断を制御する。
【0068】
上記構成においては、MOSFET11,12の通電を許可する前にMOSFET13,14を通電許可状態にしておくことで、経路RT1,RT2による充放電開始タイミングを容易に同時とすることができる。また、MOSFET13,14のオンタイミングをMOSFET11,12によるオンタイミングよりも先に開始することで、MOSFET13,14の制御に必要なパルス幅をより長くすることができ、ゲート駆動装置600の制御性向上を図ることができる。それにより、反応の遅い制御素子を経路RT2上に実装することが可能となる。
【0069】
(8)上記(1)において、
図6等に示すように、経路RT2は、ゲート抵抗R3を有し、スイッチング素子101のゲート容量を充電するための配線LN3と、ゲート抵抗R4を有し、スイッチング素子101のゲート容量を放電するための配線LN4と、一端が配線LN3および配線LN4に接続され、他端がゲート端子Gに接続される配線LNbと、を備え、配線LN3と配線LNbとから成る配線のインダクタンス成分、および、配線LN4と配線LNbとから成る配線のインダクタンス成分は、それぞれ経路RT1のインダクタンス成分よりも大きな値に設定されている。
【0070】
図6に示すようなインダクタンス成分Lbを有する配線LNbを用いることで、第2経路のインダクタンス成分が共通化され、部品(インダクタ)の数の低減や回路の簡素化を図ることができる。
【0071】
(9)上記(1)において、
図7等に示すように、経路RT2は、スイッチング素子101のゲート容量を充電するための正側電源N3(ゲートチャージ電源)とゲート端子Gとを接続する配線LN3と、正側電源N3とゲート端子Gとの間に設けられ、カソードが正側電源N3に接続されアノードがゲート端子Gに接続されるダイオードD3と、を備える。ゲート端子Gの電圧が正側電源N3の電圧より高くなる場合、余分なゲート電荷を正側電源N3に帰還できる。これにより、ゲートのオーバーチャージを防止することができる。
【0072】
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
11~14…MOSFET、100…蓄電装置、101…スイッチング素子、102…還流ダイオード、200…電力変換装置、300…電動モータ、400…変換制御装置、403,404…制御信号生成部、500…三相スイッチングアーム、600,610…ゲート駆動装置、1000…車両、D1,D2,D3…ダイオード、J…状態信号、L3,L4,Lb…インダクタンス成分、LN1~LN4,LNb…配線、N1,N3…正側電源、N2,N4…負側電源、P…制御指令、R1~R4…ゲート抵抗、RT1,RT2…経路、S3,S4…制御信号