IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回生制御方法および鞍乗車両 図1
  • 特開-回生制御方法および鞍乗車両 図2
  • 特開-回生制御方法および鞍乗車両 図3
  • 特開-回生制御方法および鞍乗車両 図4
  • 特開-回生制御方法および鞍乗車両 図5
  • 特開-回生制御方法および鞍乗車両 図6
  • 特開-回生制御方法および鞍乗車両 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176496
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】回生制御方法および鞍乗車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/14 20060101AFI20241212BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60L7/14
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095057
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】腹岡 塁
(72)【発明者】
【氏名】近藤 慶尚
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB03
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CB02
5H125EE08
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】回生制御が実行される際にユーザが感じる制動フィーリングを、ユーザが意図するフィーリングに近づける。
【解決手段】一態様に係る車両の回生制御方法は、駆動源として電気モータを備える車両の処理回路において実行される回生制御方法であって、電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定すること、回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度を取得すること、および、アクセル操作量の減少度に基づいて、電気モータに要求する回生トルクである要求回生トルクを決定すること、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源として電気モータを備える車両の処理回路において実行される回生制御方法であって、
前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定すること、
前記回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度を取得すること、および、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定すること、を含む、車両の回生制御方法。
【請求項2】
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、前記回生制御の開始時から所定期間の間行う、請求項1に記載の車両の回生制御方法。
【請求項3】
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、前記アクセル操作量の前記減少度が大きいほど、前記要求回生トルクを大きくすることを含む、請求項1または2に記載の車両の回生制御方法。
【請求項4】
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、前記回生制御の開始時から所定の条件が満たされる時点まで、時間経過に伴って前記要求回生トルクを増加させることを含む、請求項1または2に記載の車両の回生制御方法。
【請求項5】
前記要求回生トルクを増加させることは、前記アクセル操作量の前記減少度が大きいほど、前記要求回生トルクの単位時間当たりの増加量を大きくすることを含む、請求項4に記載の車両の回生制御方法。
【請求項6】
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、時間経過に伴って前記要求回生トルクを増加させること、
前記要求回生トルクが所定の上限値に到達した場合、前記要求回生トルクを前記上限値に維持すること、
所定の回生低減条件が満たされるか否か判定すること、および、
前記回生低減条件が満たされると判定した場合、前記要求回生トルクを減少させること、を含む、請求項1または2に記載の車両の回生制御方法。
【請求項7】
前記上限値は、前記電気モータの回転数に応じて変化する、請求項6に記載の車両の回生制御方法。
【請求項8】
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、時間経過に伴って前記要求回生トルクを変化させること、
所定の回生低減条件が満たされるか否か判定すること、および、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて前記要求回生トルクを変化させた後または変化させている途中に、前記回生低減条件が満たされると判定した場合、時間経過に伴って前記回生トルクを減少させること、を含む、請求項1または2に記載の車両の回生制御方法。
【請求項9】
駆動源として電気モータを備える車両の処理回路において実行される回生制御方法であって、
前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定すること、および、
前記開始条件が満たされたと判定された後に、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定すること、を含み、
前記回生制御の開始時から所定期間の間に決定される前記要求回生トルクの絶対値は、前記所定期間が経過した後に決定される前記要求回生トルクの絶対値より大きい、車両の回生制御方法。
【請求項10】
ユーザに操作されるアクセル操作子と、
駆動輪と、
前記駆動輪を駆動する駆動源としての電気モータと、
前記駆動輪を制動する前記電気モータの回生トルクを制御する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、
前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定し、
前記回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度を取得し、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定するように構成されている、鞍乗車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回生制御方法および鞍乗車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ回転数とアクセル信号とから減速状態を判定し、減速状態に応じて回生制動する電動車両の回生制動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-64304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車両における回生制御が実行される際にユーザが感じる制動フィーリングを、ユーザが意図するフィーリングに近づけたいという要望がある。
【0005】
そこで、本開示の一態様は、回生制御が実行される際にユーザが感じる制動フィーリングを、ユーザが意図するフィーリングに近づけることができる回生制御方法および鞍乗車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両の回生制御方法は、駆動源として電気モータを備える車両の処理回路において実行される回生制御方法であって、前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定すること、前記回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度を取得すること、および、前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定すること、を含む。
【0007】
本開示の別の態様に係る車両の回生制御方法は、駆動源として電気モータを備える車両の処理回路において実行される回生制御方法であって、前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定すること、および、前記開始条件が満たされたと判定された後に、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定すること、を含み、前記回生制御の開始時から所定期間の間に決定される前記要求回生トルクの絶対値は、前記所定期間が経過した後に決定される前記要求回生トルクの絶対値より大きい。
【0008】
本開示の一態様に係る鞍乗車両は、ユーザに操作されるアクセル操作子と、駆動輪と、前記駆動輪を駆動する駆動源としての電気モータと、前記駆動輪を制動する前記電気モータの回生トルクを制御する処理回路と、を備え、前記処理回路は、前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定し、前記回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度を取得し、前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回生制御が実行される際にユーザが感じる制動フィーリングを、ユーザが意図するフィーリングに近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態に係る車両の概略図である。
図2図1の車両の電気的構成を示すブロック図である。
図3】通常トルクマップおよび強回生トルクマップを例として示すグラフである。
図4】コントローラによる車両の走行制御の流れを示すフローチャートである。
図5】回生制御の流れを示すフローチャートである。
図6】減少度の算出方法の一例を説明するためのグラフである。
図7】係数の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
【0012】
(車両の構成)
図1は、一実施の形態に係る車両1の概略図である。本実施形態において、車両1は、鞍乗型の電動二輪車である。車両1は、車体2とバッテリパック3とを備える。バッテリパック3は、車体2対して着脱可能である。車体2は、従動輪である前輪4と、駆動輪である後輪5とにより支持されている。車体2には、走行駆動源である電気モータ6が支持されている。電気モータ6は、駆動輪である後輪5に伝達される走行駆動力を発生させる。電気モータ6により発生された駆動トルクは、動力伝達機構7を介して後輪5に伝達される。電気モータ6は、正逆回転可能である。電気モータ6は、走行駆動源として機能する。また、電気モータ6には、電気モータ6の出力軸の回転数を検出する回転数センサ22(図2を参照)が配置されている。電気モータ6は、車両1の減速時などには、駆動輪から伝達される動力により発電する発電機としても機能する。動力伝達機構7には、電気モータ6の回転を減速する減速機7aや、減速機7aから出力された回転動力を後輪5の車軸に伝達する機構7b(例えば、チェーン伝動機構やベルト伝動機構など)が含まれる。
【0013】
車体2は、車体フレームを有し、車体フレームは、ヘッドパイプ11と、ヘッドパイプ11から後方に延びた左右一対のメインフレーム12とを有する。ヘッドパイプ11は、ステアリングシャフト13を回転自在に支持する。ステアリングシャフト13には、略上下方向に延びるフロントフォーク14が接続されており、フロントフォーク14の下端部にて前輪4が回転自在に支持されている。ステアリングシャフト13の上端部には、左右へ延びるバー型のハンドル15が接続されている。ハンドル15には、電気モータ6により発生される駆動トルクを調整するためのアクセル操作子15aが配置されている。本実施形態では、アクセル操作子15aは、ハンドル15の右グリップであるアクセルグリップである。
【0014】
アクセル操作子15aが基準位置から所定の第1移動方向に回動操作されると、その操作量(以下、アクセル操作量)がアクセルセンサ21(図2を参照)で検出される。アクセルセンサ21は、一例としてグリップの回動量を検出する位置センサによって実現される。たとえばアクセルセンサ21は、ホールICを用いた磁界検出センサにより実現されてもよい。アクセル操作子15aは、運転者であるユーザの操作が与えられていない状態では基準位置に復帰するように付勢力が与えられる。本実施例では、所定の第1移動方向は、車体の右側面視から見て時計と反対まわりに設定される。基準位置に対して、第1移動方向の移動量が大きくなるほど、言い換えれば加速操作量が大きくなるほど、電気モータ6の出力は大きくなる。
【0015】
ハンドル15の前側には、メータ装置8が配置されている。メータ装置8は、走行速度、モータ回転数およびバッテリ残量などを表示する。メータ装置8は、ブラケット16を介してヘッドパイプ11に支持されている。
【0016】
バッテリパック3は、バッテリケース17に収容されている。バッテリケース17は、左右方向における一対のメインフレーム12の間に配置されており、一対のメインフレーム12に対し固定されている。バッテリパック3は、充放電可能なバッテリ3aやバッテリ管理ユニットなどを有する。バッテリケース17に収容された状態のバッテリパック3のバッテリ3aやバッテリ管理ユニットなどは、車体2側の電子機器に電気的に接続される。
【0017】
(電気的構成)
図2は、図1の車両1の電気的構成を示すブロック図である。車両1の車体2には、コントローラ31およびインバータ32が固定されている。コントローラ31は、ハードウェア面においては、プロセッサ、メモリおよびI/Oインターフェースなどを有する。前記メモリは、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリなどのストレージ、およびRAMであるメインメモリを含む。前記ストレージには、電気モータ6に制御指令を出すためのプログラムが保存されている。コントローラ31が有する前記プロセッサおよび前記メモリなどは、処理回路の一例である。
【0018】
コントローラ31は、アクセルセンサ21により検出されるアクセル操作量を受信する。本明細書において、アクセル操作量は、アクセル開度とも称し得る。また、コントローラ31は、回転数センサ22により検出されるモータ回転数を受信する。コントローラ31およびインバータ32は、互いにCAN(Controller Area Network)30により通信可能に接続されている。また、バッテリ3aが、インバータ32を介して電気モータ6に接続されている。
【0019】
コントローラ31は、車両1の走行時、受信したアクセル操作量およびモータ回転数に基づいて、力行制御を実行したり回生制御を実行したりする。力行制御では、電気モータ6に、車両1を走行させるための駆動トルクを発生させることを要求する。より詳しくは、力行制御では、コントローラ31は、電気モータ6に所定の正方向のトルクである駆動トルクを発生させるための制御指令を生成し、インバータ32に出力する。なお、電気モータ6の正方向とは、車両1を前方へ加速させる駆動トルクを発生させる電気モータ6の回転方向である。インバータ32は、コントローラ31に制御されて、バッテリ3aから放電された直流電力を交流電力に変換して電気モータ6に供給する。
【0020】
回生制御では、コントローラ31は、電気モータ6に回生トルクを発生させることを要求する。より詳しくは、回生制御では、コントローラ31は、回生制御指令を生成し、インバータ32に出力する。インバータは、回生制御指令を受けると、車両1を制動するために電気モータ6に前記正方向と逆の負方向のトルクである回生トルクを発生させる。また、インバータ32は、電気モータ6が発電機として生成した交流電力を直流電力に変換してバッテリ3aに供給して充電する。
【0021】
コントローラ31は、機能面においては、通常トルク取得部41、強回生トルク取得部42、強回生選択部43およびトルク決定部44などを有する。通常トルク取得部41、強回生トルク取得部42、強回生選択部43およびトルク決定部44は、前記ストレージから前記メインメモリに読み出した前記プログラムを前記プロセッサが演算処理することで実現される。通常トルク取得部41、強回生トルク取得部42、強回生選択部43およびトルク決定部44により、力行制御と回生制御とを切り替える車両1の走行制御が実行される。
【0022】
通常トルク取得部41は、通常トルクマップを用いて、アクセル操作量およびモータ回転数に対応するトルクを取得する。強回生トルク取得部42は、強回生トルクマップを用いて、アクセル操作量およびモータ回転数に対応するトルクを取得する。通常トルク取得部41により通常トルクマップを用いて取得されるトルクを、通常トルクT1と称する。また強回生トルク取得部42により強回生トルクマップを用いて取得されるトルクを、強回生トルクT2と称する。コントローラ31のメモリには、通常トルクマップと強回生トルクマップとが記憶されている。通常トルクマップおよび強回生トルクマップの双方は、アクセル操作量よびモータ回転数と、トルクとの対応関係を示す。
【0023】
通常トルクマップは、第1のトルクマップと称してもよい。強回生トルクマップは、第2のトルクマップと称してもよい。強回生トルクマップは、モータ回転数や、アクセル操作量が同じ条件であっても、通常トルクマップで得られる回生トルクに比べて、大きい回生トルクとなるように設定される。マップの詳細については、後述する。通常トルク取得部41および強回生トルク取得部42は、それぞれのマップから取得したトルク情報を、トルク決定部44に出力する。
【0024】
通常トルク取得部41は、強回生選択部43に取得したトルク情報を出力する。回生選択部43は、通常トルク取得部41から与えられるトルク情報に基づいて、強回生トルクを選択するか否かの選択指令を出力する。本実施例では、回生選択部43は、通常トルク取得部41から与えられるトルク情報が、回生トルクに切り替わってから所定期間の間は、強回生トルク取得部43からの回生トルク情報に基づいて要求トルクを選択する選択指令をトルク決定部44に与える。言い換えると、強回生選択部43は、予め定められる選択条件に基づいて、強回生トルク取得部43から出力される強回生トルク情報を用いるかどうかを示す選択指令を出力する。
【0025】
トルク決定部44は、電気モータ6に要求する要求トルクTrを決定する。力行制御時、要求トルクTrは正の値であり、回生制御時、要求トルクTrは負の値である。以下の説明において、力行制御時の要求トルクTrは、要求駆動トルクTrとも称され、回生制御時の要求トルクTrは、要求回生トルクTrとも称される。具体的には、トルク決定部44は、通常トルク取得部41と強回生トルク取得部42からそれぞれ与えられるトルク情報と、強回生選択部43から与えられる選択指令とに基づいて、要求トルクTrをインバータ30に出力する。さらに具体的には、トルク決定部44は、回生開始前のアクセル操作量の時間変化(後述の減少度)に基づいて、回生トルクが異なるように決定される。
【0026】
トルク決定部44は、通常トルク取得部41により取得される通常トルクT1を用いて、要求駆動トルクTrを決定する。また、トルク決定部44は、通常トルク取得部41により取得される通常トルクT1および強回生トルク取得部42により取得される強回生トルクT2の双方を用いて、要求回生トルクTrを決定する。要求トルクTrの決定方法について、詳細は後述する。トルク決定部44は、決定した要求トルクTrを電気モータ6に発生させるための制御指令をインバータ32に出力する。
【0027】
通常トルクマップおよび強回生トルクマップについて、図3を参照して説明する。図3には、2つの通常トルクマップM1a,M1bと1つの強回生トルクマップM2とが例示されている。図3に示す各トルクマップは、アクセル操作量毎にモータ回転数とトルクとの対応関係を示すグラフとして示されており、横軸がモータ回転数を示し、縦軸がトルクを示す。
【0028】
図3に実線で示された通常トルクマップM1aは、アクセル操作量が50%であるときのモータ回転数と通常トルクT1との対応関係を示す。図3に一点鎖線で示された通常トルクマップM1bは、アクセル操作量が0%であるときのモータ回転数と通常トルクT1との対応関係を示す。図3に破線で示された強回生トルクマップM2は、アクセル操作量が0%であるときのモータ回転数と強回生トルクT2との対応関係を示す。各トルクマップにおいて、正の値のトルクは、駆動輪を駆動する駆動トルクを示し、負の値のトルクは、駆動輪を制動する回生トルクを示している。負の値の通常トルクT1は、通常回生トルクT1とも称し得る。
【0029】
通常トルクマップは、アクセル操作量が大きくなるほど、正方向のトルクが大きくなるように設定される。例えば図3では、アクセル操作量が50%である通常トルクマップM1aを示しているが、アクセル操作量が50%より大きい通常トルクマップは、図3においてグラフM1aより上の領域に位置し、アクセル操作量が50%より小さい通常トルクマップは、図3においてグラフM1aより下の領域に位置する。
【0030】
また、通常トルクマップでは、モータ回転数が大きくなるほど、同じアクセル操作量であっても正のトルク(駆動トルク)が小さくなるように設定される(図3の通常トルクマップM1a参照)。また通常トルクマップは、アクセル操作量がゼロの場合には、モータ回転数が予め定められる徐行速度A以上であると、回生トルクが生じるように設定される。また通常トルクマップでは、アクセル操作量がゼロの場合に、モータ回転数に応じて回生量が異なるように設定される。たとえば、モータ回転数が、予め定められる回生量最大速度Bで最大となり、その最大速度Bからずれるほど回生量が小さくなるように設定される(図3の通常トルクマップM1b参照)。
【0031】
通常トルクマップは、隣接するトルク回転数毎のデータに基づいて、トルクを補間している。図3では、2つの通常トルクマップM1a,M1bを示したが、実際には、複数のアクセル操作量の値(例えば複数のアクセル操作量が0%,10%,20%,…,100%など)にそれぞれ対応する複数の通常トルクマップがメモリに予め記憶されている。例えばアクセル操作量が2%である場合、アクセル操作量が0%の通常トルクマップで得るトルクとアクセル操作量が10%の通常トルクマップで得るトルクとに対して線形補間することで、アクセル操作量が2%のトルクが得られる。したがって、本実施例の通常トルクマップでは、アクセル操作量がゼロを超えた値であった場合でも、当該アクセル操作量が例えば5%以下など微量の値である場合には、回生量最大速度付近のモータ回転数に対応するトルクが、負の値、すなわち回生トルクとなるように設定される。このように、アクセル操作量が0%であるとき以外の通常トルクマップでも、モータ回転数の全領域または一部の領域では通常トルクT1が負の値をとり得る。
【0032】
強回生トルクマップでは、アクセル操作量がゼロの場合には、モータ回転数の条件が同じであれば、通所トルクマップよりも大きい回生トルクに設定される。例えばアクセル操作量が0%である通常トルクマップM1bと強回生トルクマップM2との比較からも分かるように、同じアクセル操作量で、且つ同じモータ回転数に対応する通常回生トルクT1と強回生トルクT2とを比較すると、強回生トルクT2の絶対値は、通常回生トルクT1の絶対値未満である。すなわち、強回生トルクマップは、通常トルクマップよりも強い回生制動力を得るためのトルクマップである。たとえば強回生トルクマップでは、モータ回転数がゼロを超えると回生トルクを生じるように設定されてもよい。また強回生トルクマップでは、モータ回転数が、通常トルクマップに設定される回生量最大速度Bよりも大きい速度Cで回生量が最大となり、その最大速度Cからずれるほど回生量が小さくなるように設定される(図3の強回生トルクマップM2参照)。このように強回生トルクマップは、通常トルクマップの回生トルクよりも大きい回生トルクを生じさせるように設定される。
【0033】
また、図3では、アクセル操作量が0%であるときのモータ回転数と強回生トルクT2との対応関係を示す強回生トルクマップM2を示したが、複数のアクセル操作量の値にそれぞれ対応する複数の強回生トルクマップがメモリに予め記憶されていてもよい。ただし、強回生トルクマップは、回生制御が実行されるときに使用されるマップであるため、回生制御が実行され得るアクセル操作量に対応したマップだけが用意される。例えば、アクセル操作量が5%以下の通常トルクマップが負の値のトルクを含む場合には、アクセル操作量が5%以下の複数の強回生トルクマップが用意され得る。例えばアクセル操作量が所定の正の微小値の強回生トルクマップとして、いずれのモータ回転数であってもトルクがゼロであるというトルクマップを用意してもよい。この場合、0%から微小値までの間のアクセル操作量に対応するトルクを、アクセル操作量が0%の強回生トルクマップで得るトルクとアクセル操作量が微小値の通常トルクマップで得るトルクとに対して線形補間することで得てもよい。
【0034】
(走行制御)
次に、図4および5を参照して、コントローラ31による車両1の走行制御を説明する。コントローラ31による車両1の走行制御は、当該コントローラ31のメモリに記憶されたプログラムを、当該コントローラ31が読み出して実行することにより行なわれる。コントローラ31は、取得するアクセル操作量およびモータ回転数に応じて、電気モータ6の力行制御と回生制御とを切り替える。
【0035】
具体的には、走行制御では、コントローラ31は、アクセルセンサ21からアクセル操作量を受信し、回転数センサ22からモータ回転数を受信する(ステップS1)。
【0036】
コントローラ31、より詳しくは通常トルク取得部41は、通常トルクマップを用いて、アクセル操作量およびモータ回転数に対応する通常トルクT1を取得する(ステップS2)。
【0037】
コントローラ31、より詳しくは強回生選択部43は、予め定める回生開始条件が満たされたか否かを判定する(ステップS3)。本実施形態において、回生開始条件は、ステップS2で取得した通常トルクT1が正の値から負の値になったという条件に設定されている。
【0038】
回生開始条件が満たされていないと判定した場合(ステップS3:No)、コントローラ31、より詳しくはトルク決定部44は、要求トルクTr(つまり要求駆動トルクTr)を、ステップS2で取得した通常トルクT1に決定し(すなわちTr=T1とし)、制御指令をインバータ32に出力する(ステップS4)。ステップS4の後、ステップS1に戻る。こうして、ステップS3において回生開始条件が満たされていないと判定される場合には、ステップS1、S2、S4が繰り返され、バッテリ3aからの電力により電気モータ6にて走行駆動力を発生させる力行制御を実行される。
【0039】
回生開始条件が満たされたと判定した場合(ステップS3:Yes)、コントローラ31は、走行制御を、力行制御から、図5に示す回生制御に切り替える。
【0040】
(回生制御の概要)
本実施形態の回生制御方法に至った経緯や回生制御方法の概要について説明する。まず内燃機関を走行駆動源とするエンジン車の回生制御との比較の観点から説明する。例えばエンジン車を運転するユーザが、アクセル操作量を比較的大きな値から急激に低下させ0%にする急閉操作を行うと、強いエンジンブレーキがかかり、ユーザは、急閉操作を行った直後、強い減速感やショック感を得る。ユーザが、アクセル操作量を比較的小さな値から0%にする操作行う場合や、アクセル操作量を比較的大きな値からゆっくり低下させる操作を行う場合には、それほど強い減速感やショック感を得ることはない。エンジン車の運転に慣れたユーザが電動車を運転する場合に、減速時の制動フィーリングが、前述のようなエンジン車の減速時の制動フィーリングとかけ離れていると、ユーザに違和感が生まれ得る。
【0041】
また、ユーザがアクセル操作量を比較的大きな値から急激に低下させ0%にする急閉操作を行っている場合、ユーザが、車両を比較的速く減速させることを望んでいる可能性が高い。また、ユーザがアクセル操作量を比較的大きな値からゆっくり低下させる操作を行っている場合、ユーザが車両の急な減速を望んでいない可能性が高い。電動車両において、ユーザの意図に沿う制動力を発生させることが望ましい。
【0042】
また、例えば鞍乗車両が走行時にカーブに差し掛かる場合、カーブに差し掛かる手前で、ユーザは、鞍乗車両を減速させて、鞍乗車両を操舵する。減速時に大きな制動力がかかる場合、後輪と比べて前輪にかかる荷重が大きくなる。これは、鞍乗車両の操舵のしやすさを向上させることにつながり得る。鞍乗電動車両の操舵のしやすさを向上させる観点からも、ユーザが急閉操作を行う際の強い制動力が発生させることは、望ましい。
【0043】
これらの少なくとも1つの望ましいフィーリングを実現すべく、本実施形態の電動車両1では、回生制御の開始時から所定期間の間に決定される要求回生トルクTrの絶対値を、前記所定期間が経過した後に決定される要求回生トルクTrの絶対値より大きくなるように設定している。
【0044】
より詳しくは、コントローラ31は、回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度dを取得する。減少度dは、車両1を減速させる際のユーザによるアクセル操作子15aに対する操作のスピードおよび操作量の変化の大きさを判定するための指標である。言い換えれば、減少度dは、回生制御の開始時までの期間において、どのようにアクセル操作量が減少したかを示す。また、言い換えれば、減少度dは、ユーザが意図する減速の程度を判定するための指標である。また、言い換えれば、減少度dは、アクセル操作子15aを基準位置に戻すアクセル操作の単位時間あたりの時間変化、または、減速操作の単位時間あたりの時間変化としてもよい。
【0045】
コントローラ31は、アクセル操作量の減少度dに基づいて、要求回生トルクTrを決定する。具体的には、減少度dが大きい場合には、減少度dが小さい場合に比べて要求回生トルクTrを大きくする。本実施例では、コントローラ31は、アクセル操作量の減少度dに応じて時間経過に伴って要求回生トルクTrを増加させる。減少度dが大きいほど単位時間あたりに増加する要求回生トルクTrを大きくする。要求回生トルクTrが所定の上限値に到達した場合、要求回生トルクTrを上限値に維持する。本実施形態において、所定の上限値は、後述するように、強回生トルクマップM2を参照して得られる強回生トルクT2に対応する。すなわち、本実施形態において、上限値は、アクセル操作量および電気モータ6の回転数の変化に伴って変化し得る(図3の破線のグラフも参照)。
【0046】
コントローラ31は、要求回生トルクTrを上限値に維持する間、または、アクセル操作量の減少度dに基づいて要求回生トルクTrを増加させている途中に、所定の回生低減条件が満たされるか否か判定する。本実施形態において、回生低減条件は、後述の回生時間tが設定時間tsに到達したという条件に対応する。
【0047】
コントローラ31は、回生低減条件が満たされると判定した場合、時間経過に伴って要求回生トルクTrを減少させる。コントローラ31は、要求回生トルクTrが所定の下限値に到達した場合、要求回生トルクTrを下限値に維持する。本実施形態において、所定の下限値は、後述するように通常トルクマップM1bを参照して得られる通常回生トルクT1に対応する。すなわち、本実施形態において、下限値は、アクセル操作量および電気モータ6の回転数の変化に伴って変化し得る(図3の一点鎖線のグラフも参照)。
【0048】
(回生制御の詳細)
図5は、回生制御の流れを示すフローチャートである。まずコントローラ31は、回生制御の開始時点からの経過時間、つまり回生開始条件が満たされた時点からの経過時間tをカウントする(ステップS11)。以下の説明において、回生開始条件が満たされた時点からの経過時間tを、回生時間tと称する。
【0049】
コントローラ31、より詳しくはトルク決定部44は、回生制御の開始時以前、つまり回生開始条件が満たされた時点以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度dを算出する(ステップS12)。アクセル操作量の減少度dは、回生制御の開始時から所定期間の間の要求回生トルクTrの決定に用いられる。所定期間は、回生制御の開始時から後述の係数kが0に到達するまでの期間である。
【0050】
図6は、減少度dの算出方法の一例を説明するためのグラフである。図6に実線で示すグラフは、アクセルセンサ21から受信するアクセル操作量の時系列データを示すグラフであり、横軸が時間軸であり、縦軸がアクセル操作量であるアクセル操作量を示す。また、図6の破線は、アクセルセンサ21から受信するアクセル操作量の時系列データに対してローパスフィルタ処理を施したものである。アクセルセンサ21から受信するアクセル操作量の時系列データを、「フィルタ処理前データ」と称し、アクセルセンサ21から受信するアクセル操作量の時系列データに対してローパスフィルタ処理を施すことにより得られるデータを、「フィルタ処理後データ」と称する。
【0051】
フィルタ処理後データは、ローパスフィルタ処理が施されているためフィルタ処理前データよりも遅れて変化している。本実施形態では、コントローラ31は、回生制御開始時のフィルタ処理後データの値から、回生制御開始時のフィルタ処理前データの値を減算して得られるアクセル操作量の差分を、減少度dとしている。
【0052】
ただし、減少度dは、同じ時間におけるフィルタ処理後データの値とフィルタ処理前データの値の差分でなくてもよい。例えば、減少度dは、回生制御開始時より所定時間だけ(例えばコントローラ31の制御周期だけ)前のフィルタ処理後データの値から、回生制御開始時のフィルタ処理前データの値を減算することにより得られるアクセル操作量の差分としてもよい。
【0053】
図5に戻って、コントローラ31、より詳しくはトルク決定部44は、係数kを0に初期化する(ステップS13)。係数kは、0以上且つ1以下の値をとり得る。後述するように、本実施形態の回生制御において、係数kは、時間経過に伴って0以上且つ1以下の間で変動し、この係数kを用いて電気モータ6に要求する要求回生トルクTrが算出される。
【0054】
コントローラ31、より詳しくは通常トルク取得部41は、通常トルクマップを用いて、アクセル操作量およびモータ回転数に対応する通常トルクT1を取得する(ステップS14)。また、コントローラ31、より詳しくは強回生トルク取得部42は、強回生トルクマップを用いて、アクセル操作量およびモータ回転数に対応する強回生トルクT2を取得する(ステップS15)。
【0055】
コントローラ31、より詳しくは強回生選択部43は、回生時間tが設定時間ts未満であるか否かを判定する(ステップS16)。回生時間tが設定時間ts未満であると判定した場合(ステップS16:Yes)、コントローラ31は、係数kが1に到達したか否かを判定する(ステップS17)。係数kが1に到達していない場合(ステップS17:No)、コントローラ31は、ステップS12で取得した減少度dに応じた変化率で、係数kを増加させ(ステップS18)、ステップS21に移行する。
【0056】
コントローラ31のメモリには、減少度dと、係数kの変化率との対応関係を示す対応関係情報が予め記憶されている。係数kの変化率は、単位時間当たりの係数kの増加量である。コントローラ31は、メモリに記憶された対応関係情報を参照して、取得した減少度dに対応する変化率を取得し、取得した変化率で係数kを増加させる。減少度dと、係数kの変化率とは、減少度dが大きいほど、係数kの変化率(時間増加率)が大きくなるという関係にある。
【0057】
回生時間tが設定時間ts未満にある場合の減少度dと係数kの変化率との対応関係を示す対応関係情報は、係数kの変化率が、減少度dと予め定められた正の値α1とを乗算したものであるという関係を示す情報でもよい。つまり、単位時間当たりに、係数kは、α1×dの値だけ増加してもよい。この場合、係数kは、予め定められた正の値α1と、減少度dと、回生時間tとを乗算することにより算出されてもよく、つまり、下記演算式(1)で算出されてもよい。
k=α1・d・t ・・・(1)
【0058】
ステップS17において係数kが1に到達している場合(ステップS17:Yes)、コントローラ31は、係数kを変化させず、1に維持し、ステップS21に移行する。
【0059】
ステップS16で、回生時間tが設定時間ts未満でないと判定した場合(ステップS16:No)、コントローラ31は、係数kが0に到達したか否かを判定する(ステップS19)。係数kが0に到達していない場合(ステップS19:No)、コントローラ31は、係数kを低減させ(ステップS20)、ステップS21に移行する。
【0060】
ステップS20において、係数kは、減少度dに基づき時間経過に伴って低減してもよい。この場合、回生時間tが設定時間tsを超えている場合の減少度dと係数kの変化率との対応関係を示す対応関係情報も、コントローラ31のメモリに予め記憶されていてもよい。係数kの変化率が、減少度dと予め定められた負の値(-α2)とを乗算したものであるという関係を示す情報でもよい。つまり、単位時間当たりに、係数kは、α2×dの値だけ減少してもよい。この場合、係数kは、予め定められた負の値(-α2)と、減少度dと、設定時間tsからの経過時間(t-ts)とを乗算することにより算出されてもよく、つまり、下記演算式(2)で算出されてもよい。
k=-α2・d・(t-ts) ・・・(2)
【0061】
ステップS19において係数kが0に到達している場合(ステップS19:Yes)、コントローラ31は、係数kを変化させず、0に維持し、ステップS21に移行する。
【0062】
コントローラ31、より詳しくはトルク決定部44は、ステップS16,S17,S18,S19,S20を経て得られる係数kと、ステップS14で取得した通常トルクT1と、ステップS15で取得した強回生トルクT2とを用いて、要求トルクTrを下記の式(3)で算出し、制御指令をインバータ32に出力する(ステップS21)。
Tr=(1-k)・T1+k・T2 ・・・(3)
【0063】
すなわち、強回生トルクT2に係数kを乗算した値に、通常回生トルクT1に係数(1-k)を乗算した値を加算した値を、要求回生トルクTrとする。このように、要求トルクTrが、通常トルクT1と強回生トルクT2とを用いて算出される。また、上記の式(3)は、係数kが大きいほど、要求トルクTrに対して強回生トルクT2が占める比率が大きくなることを示している。言い換えれば、上記の式(3)は、係数kが大きいほど、要求回生トルクTrの大きさ(つまり絶対値)が大きくなることを示している。
【0064】
コントローラ31、より詳しくはトルク決定部44は、アクセルセンサ21からアクセル操作量を受信し、回転数センサ22からモータ回転数を受信する(ステップS22)。コントローラ31は、回生終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS23)。回生終了条件は、通常トルクT1が正の値になったという条件に設定されていてもよいし、アクセル操作量が所定の値(例えばアクセル操作量5%)を超えているという条件であってもよい。回生終了条件は、そのほかの条件でもよい。たとえばブレーキ操作やクラッチ操作などのユーザ操作であってもよい。
【0065】
回生終了条件が満たされていないと判定した場合(ステップS23:No)、ステップS14に戻る。こうして、ステップS23において回生終了条件が満たされていないと判定される場合には、ステップS14からステップS23に至るステップが繰り返されて、要求回生トルクTrに対応する回生トルクを電気モータ6に発生させる。
【0066】
回生終了条件が満たされたと判定した場合(ステップS23:Yes)、コントローラ31は、走行制御を、回生制御から力行制御に切り替える。
【0067】
(減少度dに応じた係数kの変化)
図7に、係数kの時間の経過に伴う変化の例を示す。図7では、横軸が、回生開始条件が満たされた時点からの経過時間である回生時間tを示し、縦軸が係数kを示す。図7には、比較的大きい減少度dが取得された場合の係数kの変化の一例が実線で示されており、比較的小さい減少度dが取得された場合の係数kの変化の一例が破線で示されている。
【0068】
まず減少度dが比較的大きい場合係数kの変化から説明する。図7の実線のグラフのように、回生開始条件が満たされると、係数kは、回生時間t=0の時点から時間の経過に伴い、減少度dに応じた変化率で増加する(図5のステップS18参照)。前述の通り、変化率は、コントローラ31のメモリに記憶された、減少度dと係数kの変化率との対応関係を示す対応関係情報から得られる。減少度dに応じた変化率は、図7において、回生時間t=0の時点から回生時間t=t1の時点までの実線のグラフの傾きに対応する。
【0069】
図7の実線のグラフのように、回生時間t=t1の時点で、係数kが1に到達すると、回生時間tが設定時間tsに至るまで、係数kは1に維持される(図5のステップS17参照)。係数kが1に維持されている間は、上記式(3)から、要求トルクTrは、強回生トルクT2となる。
【0070】
図7の実線のグラフのように、回生時間tが設定時間tsに至ると、係数kは、時間の経過に伴い一定の変化率で低減する(図5のステップS20参照)。本実施形態では、予め強回生終了時間t2が設定されている。強回生終了時間t2は、固定値である。係数kは、強回生終了時間t2に0に到達するように、時間の経過に伴い一定の変化率で低減する。係数kが0に到達した時点以降、要求トルクTrは、通常回生トルクT1となる。
【0071】
次に減少度dが比較的小さい場合の係数kの変化について説明する。減少度dが比較的小さい場合にも、係数kは、図7の破線のグラフのように回生時間t=0の時点から時間の経過に伴い、減少度dに応じた変化率で増加するが、回生時間t=0の時点から回生時間t=t1の時点までの期間において、破線のグラフの傾きは、実線のグラフの傾きより小さい。減少度dと係数kの変化率との対応関係を示す対応関係情報において、減少度dが大きいほど、係数kの変化率が大きいためである。
【0072】
また、図7の破線のグラフでは、係数kが1に到達することなく、回生時間tが設定時間tsに至る。回生時間tが設定時間tsに至ると、係数kは、回生時間tが強回生終了時間t2となるときに0に到達するように、時間の経過に伴い一定の変化率で低減する。係数kが0に到達した時点以降、要求トルクTrは、通常回生トルクT1となる。
【0073】
(作用効果)
以上に説明したように、本実施形態によれば、コントローラ31が、回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度dを取得して、アクセル操作量の減少度dに基づいて、電気モータ6に要求する回生トルクである要求回生トルクTrを決定する。このため、ユーザによるアクセル操作に応じて、回生トルクを異ならせる。回生制御が実行される際にユーザ操作に対応した制動力を発生させることができるため、ユーザが感じる制動フィーリングを、ユーザが意図するフィーリングに近づけることができる。
【0074】
また、本実施形態では、少なくとも回生制御開始時からの所定期間は、強回生トルクマップが使用される。少なくとも回生制御開始時からの所定期間は、アクセル操作量の減少度dに基づき要求回生トルクTrが決定される。このため、回生制御開始直後の制動フィーリングをユーザの意図するフィーリングに近づけることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記の通り、メモリに記憶された対応関係情報では、減少度dが大きいほど、係数kの時間増加率が大きくなるように設定されている。また、係数kが大きいほど、要求回生トルクTrの絶対値が大きくなる上記式(3)を用いて、要求回生トルクTrは決定される。すなわち、アクセル操作量の減少度dが大きいほど、要求回生トルクTrを大きくする。このため、回生制御が実行される際にユーザが感じる制動フィーリングを、エンジン車におけるエンジンブレーキが作動したときの制動フィーリングに近づけることができる。これにより、エンジン車の運転に慣れたユーザの違和感を防ぎやすい。
【0076】
また、本実施形態では、回生制御の開始時から、係数kが1に到達したという条件が満たされる時点まで、ステップS18で係数kが増加する。これにより、回生制御の開始時から所定の条件が満たされる時点まで、時間経過に伴って要求回生トルクTrを増加させるため、回生トルクを急変化させる場合と比べて車体に生じるショックを低減できる。
【0077】
また、本実施形態では、アクセル操作量の減少度dが大きいほど、係数kの変化率が大きくなる。これにより、アクセル操作量の減少度dが大きいほど要求回生トルクTrの単位時間当たりの増加量を大きくするため、制動フィーリングを、エンジン車におけるエンジンブレーキが作動したときの制動フィーリングに近づけることができ、エンジン車の運転に慣れたユーザの違和感を防ぎやすい。
【0078】
また、本実施形態では、係数kが1に到達している場合、係数kが1に維持される。つまり、要求回生トルクTrが上限値である強回生トルクT2に維持される。このように、回生トルクの上限値が設定されているため、回生トルクによる制動力が過剰となるのを抑制できる。また、上限値は、電気モータ6の回転数に応じて変化するため、電気モータ6の回生トルクを回転数に適した範囲に制限できる。
【0079】
また、本実施形態では、回生時間tが設定時間tsに到達した後、つまり、回生低減条件が満たされると判定された後に回生トルクが時間経過に伴って減少するため、回生トルクを急激に減少させる場合と比べて車体に生じるショックを低減できる。
【0080】
また、本実施形態では、回生制御の開始時から所定期間の間に決定される要求回生トルクTrの絶対値は、所定期間が経過した後に決定される要求回生トルクTrの絶対値より大きい。このため、回生制御の開始時から所定期間までは比較的大きい回生トルクを与えることができ、ユーザの減速意図に沿った制動フィーリングを生じさせることができる。
【0081】
また、本実施形態では、アクセル操作量の減少度が大きいほど、時間経過に伴って大きくなるよう係数k(ただし、0≦k≦1)を決定し、前記強回生トルクに係数kを乗算した値に、前記通常回生トルクに係数(1-k)を乗算した値を加算することにより、前記回生トルクを決定する。このため、シンプルな制御ロジックで、アクセル操作量の減少度が大きいほど回生トルクを大きくすることができる。
【0082】
<その他の実施形態>
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0083】
例えば上記実施形態で説明された車両は、走行駆動源を1つ備える電動車両であったが、車両はこれに限定されない。例えば、車両は、電気モータと内燃エンジンの2つの走行駆動源を備えるハイブリッド車両でもよい。すなわち、本開示の回生制御方法は、ハイブリッド車両でも適用可能である。ハイブリッド車両では、モータ駆動による走行中において、上述する回生制御を実行してもよい。また、鞍乗車両は、二輪車でなくてもよく、三輪車でもよい。また、車両は、鞍乗車両でなくてもよく、例えば四輪車でもよい。車両は、変速比を切り替える変速機を備えてもよい。本開示の回生制御方法は、車両全般に適用可能である。また、本開示の回生制御方法は、四輪車両に比べて比較的重量が軽くて、回生制御によるフィーリングへの影響が大きい鞍乗車両に好適に適用できる。
【0084】
上記実施形態では、回生開始条件は、アクセル操作量とモータ回転数と、通常トルクマップとを用いて判定される条件であるが、回生開始条件は、これに限られない。例えば、回生開始条件は、アクセル操作量がゼロである、または、所定の値(例えばアクセル操作量5%)以下であるという条件であってもよい。上記実施形態では、回生制御の開始条件が、アクセル操作量に基づいて判定されたが、アクセル操作量以外の他の条件に基づいて回生制御の開始条件が判定されてもよい。たとえば回生制御開始条件は、ブレーキ操作子に対するブレーキ操作がなされたという条件を含んでもよい。
【0085】
また、車両がユーザの変速操作により変速比を切り替える変速機を備える場合、回生制御の開始条件は、ユーザの変速操作が所定の操作であるという条件を含んでもよい。このようにユーザの操作に基づいて、回生制御の開始が判定されてもよい。またアクセル操作量と、ブレーキ操作量や変速操作量などの複数のユーザ操作に基づいて、回生制御の開始条件が判定されてもよい。また車速、モータ回転数、変速比などの車両状態に基づいて、回生開始条件が補正されるまたは変更されてもよい。たとえば、車速またはモータ回転数が高いほど回生制御開始が早まるように、回生開始条件が設定されてもよい。バッテリの状態に応じて回生制御の要否を判断してもよい。回生開始条件は、例えばバッテリの充電率(SOC:state of charge)が大きい場合や、電線の温度が過剰である場合など、バッテリや回路に損傷が生じると判断される場合には回生制御の開始が阻止されるよう、設定されてもよい。
【0086】
上記実施形態では、回生低減条件は、回生時間tが設定時間tsに到達したという条件であったが、回生低減条件はこれに限られない。例えば、回生低減条件は、回生時間tが設定時間tsに到達するという条件と、係数kが1に到達したという条件のいずれかが満たされるという条件であってもよい。また車速やモータ回転数に応じて、回生低減条件を設定してもよい。
【0087】
上記実施形態では、回生制御開始時からの所定期間である強回生終了時間t2の間、強回生トルクマップが使用された。強回生終了時間t2は、予め設定された固定値であったが、所定期間はこれに限定されない。強回生終了時間t2は、変動値であってもよい。例えば、強回生終了時間t2は、減少度dが大きいほど大きくなるように設定されてもよい。あるいは、強回生終了時間t2は、回生時間tが設定時間tsに到達した時点における係数kの大きさが大きいほど大きくなるように設定されてもよい。回生時間tが設定時間tsに到達した時点以降の時間経過に伴う係数kの変化率が固定値であってもよく、これにより、強回生終了時間t2が、回生時間tが設定時間tsに到達した時点における係数kの大きさに依存してもよい。
【0088】
上記実施形態では、強回生トルクマップと通常トルクマップの2つのトルクマップを使用し、減少度dが大きいほど、要求トルクTrに対して強回生トルクT2が占める比率である係数kを時間経過に伴って大きくすることで、減少度dが大きいほど、要求回生トルクを大きくした。減少度dが大きいほど大きくする要求回生トルクの決定方法は、これに限られない。
【0089】
例えば、上記実施形態では、回生制御開始時から所定期間、強回生トルクマップと通常トルクマップの双方を用いたが、通常トルクマップのみを使用してもよい。この場合、通常回生トルクは、通常トルクマップにより取得し、回生制御開始時から所定期間の間は、通常トルクマップで得られる通常回生トルクに対して、減少度dの大きさに応じた追加トルクを加算して得られる値を、要求回生トルクとしてもよい。あるいは、通常トルクマップで得られる通常回生トルクに対して、減少度dの大きさに応じた値(ただし1以上の値)を乗算して得られる値を、要求回生トルクとしてもよい。
【0090】
例えば、上記実施形態では、回生制御開始時から所定期間、強回生トルクマップと通常トルクマップの双方を用いたが、強回生トルクマップのみを使用してもよく、この場合、強回生トルクマップを参照して得られる値を、要求回生トルクとしてもよい。
【0091】
例えば上記実施形態では、強回生トルクマップと通常トルクマップの2つのトルクマップを使用して、2種類の回生トルク(すなわち、通常回生トルクと強回生トルク)とを取得したが、通常回生トルクと強回生トルクは、トルクマップ以外の方法で取得されてもよい。通常回生トルクと強回生トルクは、それぞれ、係数が異なるなど、互いに異なる演算式により算出されてもよい。
【0092】
上記実施形態では、通常トルクマップおよび強回生トルクマップは、アクセル操作量およびモータ回転数と、トルクとの対応関係を示していたが、通常トルクマップおよび強回生トルクマップはこれに限られない。通常トルクマップおよび強回生トルクマップは、通常トルクマップおよび強回生トルクマップのいずれか一方のみまたは双方が、アクセル操作量およびモータ回転数のいずれか一方のみと、トルクとの対応関係を示していてもよい。
【0093】
上記実施形態では、要求回生トルクTrが所定の上限値を超えないよう維持され、この上限値は、強回生トルクマップM2を参照して得られる強回生トルクT2に対応していたが、上限値は、これに限られない。上限値は、アクセル操作量やモータ回転数に応じて変化しなくてもよい。例えば上限値は、予め設定された固定値でもよい。
【0094】
上記実施形態の回生制御では、回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度を取得することが、取得する前記アクセル操作量に対してローパスフィルタ処理を施すこと、および、ローパスフィルタ処理後の前記アクセル操作量から、取得する前記アクセル操作量を減算することにより、前記アクセル操作量の減少度を算出すること、を含んでいた。しかし、減少度の取得方法はこれに限られない。上記実施形態では、減少度dは、図6を用いて説明されたように、回生制御開始時のフィルタ処理後データの値から、回生制御開始時のフィルタ処理前データの値を減算して得られるアクセル操作量の差分としたが、減少度は、アクセル操作量の時間変化率に相関のある値であればよく、これ以外のアクセル操作量の減少度合いを示す指標を用いてもよい。
【0095】
例えば、アクセル操作量の減少度は、回生制御開始時のアクセル操作量と、回生制御開始時より所定時間だけ前に取得したアクセル操作量との差により演算してもよい。ただし、この場合、所定時間が比較的小さい値に設定された場合、回生制御開始時点の直前のユーザの操作しか、アクセル操作量の減少度に反映されない。このため、例えば、アクセル操作量が全開(100%)である状態からアクセル操作量を急閉する操作がなされた場合と、アクセル操作量が20%である状態からアクセル操作量を急閉する操作がなされた場合とで、算出される減少度に違いが出にくくなる。他方、所定時間が比較的大きい値に設定された場合、所定時間の間に行われたユーザの操作が、アクセル操作量の減少度に反映されない。例えば、回生制御開始時より所定時間だけ前の時点からアクセル操作量をゆっくり低減する操作を行った場合と、回生制御開始時より所定時間だけ前の時点からアクセル操作量を一旦増加させ、その後、アクセル操作量を減少させる操作を行った場合とで、算出される減少度に違いが出にくくなる。このため、アクセル操作量の減少度は、ローパスフィルタ処理後の前記アクセル操作量から、取得する前記アクセル操作量を減算することにより、前記アクセル操作量の減少度を算出することは、ユーザの操作が、取得するアクセル操作量の減少度に反映されやすくする観点から好ましい。
【0096】
上記実施形態では、係数kを徐々に変化させる場合に、図7に示すように、単位時間当たりに一定の量だけ増加するよう線形に変化させたが、係数kを、非線形に変化させたり、階段状に変化させたりしてもよい。また、係数kを徐々に変化させるテーリングではなく、係数kを瞬時に変化させてもよい。
【0097】
上記実施形態では、要求トルクTrを式(3)で算出したが、要求トルクTrの演算式も一例にすぎない。要求トルクTrが他の方法で決定されてもよい。この場合でも、アクセル操作量の減少度が大きいほど、回生開始の初期段階での回生トルクを大きくすることが好ましい。また本実施例では、アクセル操作量の減少度が大きいほど、回生開始から時間経過に伴って回生トルクが増加する回生トルクの増加量(回生トルクの時間変化率)を大きくしたが、これに限らない。たとえば、アクセル操作量の減少度が大きい方が、回生トルクの最大値が大きければよく、アクセル操作量の減少度に拘らずに回生トルクの時間変化率が同じであってもよい。たとえば、要求回生トルクは、回生開始時にから徐々に増加するのではなく、回生開始時に最大回生トルクとなるよう決定されてもよい。この場合でも、アクセル操作量の減少度が大きいほど、最大回生トルクが大きくなるよう決定されることが好ましい。
【0098】
上記実施形態では、強回生トルクは、モータ回転数とアクセル操作量とに基づいて設定されたが、これに限らずに、強回生トルクは、通常トルクマップの回生量に対して大きい回生量を発生させる値であればよい。なお、モータ回転数やアクセル操作量に基づいて、通常トルクマップで得られる回生トルクとは異なった値の強回生トルクが設定されていることで、状況に応じて異なる回生トルクを得やすく、ユーザの好む制動フィーリングに近づけやすくすることができる。
【0099】
上記実施形態では、バッテリは着脱式であったが、バッテリは着脱式でなくてもよい。電気モータは、前後輪の間に配置されていなくてもよい。例えば電気モータは、インホイールモータであってもよい。電気モータは、後輪を軸支するスイングアームに配置されてもよい。上記実施形態では、電気モータは、交流モータを例示したが、直流モータであってもよい。車両は、駆動用のモータと、制動用のモータとを別々に備えてもよい。電気モータやバッテリを支持する車体フレームについて、適宜変更可能である。
【0100】
メータ装置8は、回生制御が実行されている回生制御状態であることを示す情報を表示してもよい。この場合、コントローラ31は、回生制御状態であることを表示するための指令をメータ装置8に送る。また、メータ装置8は、回生制御状態であることを表示する場合に、回生制動が強い状態と弱い状態とで表示態様を異ならせてもよい。この場合、コントローラ31は、回生制動が強い状態であるか弱い状態であるかを示す情報をメータ装置8に送る。
【0101】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの任意の組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0102】
本明細書で開示する方法を実行するため命令を含むプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、ハードディスクドライブなどの磁気ディスク、CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスクなどの光ディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【0103】
[開示態様]
以下の態様のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0104】
[態様1]
駆動源として電気モータを備える車両の処理回路において実行される回生制御方法であって、
前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定すること、
前記回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度を取得すること、および、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定すること、を含む、車両の回生制御方法。
【0105】
前記方法によれば、ユーザによるアクセル操作に応じて、回生トルクを異ならせる。回生制御が実行される際にユーザ操作に対応した制動力を発生させることができるため、ユーザが感じる制動フィーリングを、ユーザが意図するフィーリングに近づけることができる。
【0106】
[態様2]
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、前記回生制御の開始時から所定期間の間行う、態様1に記載の車両の回生制御方法。
【0107】
前記方法によれば、少なくとも回生制御開始時からの所定期間は、アクセル操作量の前記減少度に基づき要求回生トルクが決定されるため、回生制御開始直後の制動フィーリングをユーザの意図するフィーリングに近づけることができる。
【0108】
[態様3]
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、前記アクセル操作量の前記減少度が大きいほど、前記要求回生トルクを大きくすることを含む、態様1または2に記載の車両の回生制御方法。
【0109】
前記方法によれば、アクセル操作量の減少度が大きいほど回生トルクが大きくなるため、回生制御が実行される際にユーザが感じる制動フィーリングを、エンジン車におけるエンジンブレーキが作動したときの制動フィーリングに近づけることができる。これにより、エンジン車の運転に慣れたユーザの違和感を防ぎやすい。
【0110】
[態様4]
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、前記回生制御の開始時から所定の条件が満たされる時点まで、時間経過に伴って前記要求回生トルクを増加させることを含む、態様1乃至3のいずれかに記載の車両の回生制御方法。
【0111】
前記方法によれば、電気モータで発生する回生トルクが時間経過に伴って増加するため、回生トルクを急変化させる場合と比べて車体に生じるショックを低減できる。
【0112】
[態様5]
前記要求回生トルクを増加させることは、前記アクセル操作量の前記減少度が大きいほど、前記要求回生トルクの単位時間当たりの増加量を大きくすることを含む、態様4に記載の車両の回生制御方法。
【0113】
前記方法によれば、アクセル操作量の減少度が大きいほど要求回生トルクの単位時間当たりの増加量を大きくするため、制動フィーリングを、エンジン車におけるエンジンブレーキが作動したときの制動フィーリングに近づけることができ、エンジン車の運転に慣れたユーザの違和感を防ぎやすい。
【0114】
[態様6]
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、時間経過に伴って前記要求回生トルクを増加させること、
前記要求回生トルクが所定の上限値に到達した場合、前記要求回生トルクを前記上限値に維持すること、
所定の回生低減条件が満たされるか否か判定すること、および、
前記回生低減条件が満たされると判定した場合、前記要求回生トルクを減少させること、を含む、態様1乃至5のいずれかに記載の車両の回生制御方法。
【0115】
前記方法によれば、回生トルクの上限値が設定されているため、回生トルクによる制動力が過剰となるのを抑制できる。
【0116】
[態様7]
前記上限値は、前記電気モータの回転数に応じて変化する、態様6に記載の車両の回生制御方法。
【0117】
前記方法によれば、回生トルクの上限値をモータ回転数に応じて変化させるため、電気モータの回生トルクを回転数に適した範囲に制限できる。
【0118】
[態様8]
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記要求回生トルクを決定することは、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、時間経過に伴って前記要求回生トルクを変化させること、
所定の回生低減条件が満たされるか否か判定すること、および、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて前記要求回生トルクを変化させた後または変化させている途中に、前記回生低減条件が満たされると判定した場合、時間経過に伴って前記回生トルクを減少させること、を含む、態様1乃至3のいずれかに記載の車両の回生制御方法。
【0119】
前記方法によれば、回生低減条件が満たされると判定された後に回生トルクが時間経過に伴って減少するため、回生トルクを急激に減少させる場合と比べて車体に生じるショックを低減できる。
【0120】
[態様9]
駆動源として電気モータを備える車両の処理回路において実行される回生制御方法であって、
前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定すること、および、
前記開始条件が満たされたと判定された後に、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定すること、を含み、
前記回生制御の開始時から所定期間の間に決定される前記要求回生トルクの絶対値は、前記所定期間が経過した後に決定される前記要求回生トルクの絶対値より大きい、車両の回生制御方法。
【0121】
前記方法によれば、回生制御の開始時から所定期間までは比較的大きい回生トルクを与えることができ、ユーザの減速意図に沿った制動フィーリングを生じさせることができる。
【0122】
[態様10]
ユーザに操作されるアクセル操作子と、
駆動輪と、
前記駆動輪を駆動する駆動源としての電気モータと、
前記駆動輪を制動する前記電気モータの回生トルクを制御する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、
前記電気モータに回生トルクを発生させることを要求する回生制御の開始条件が満たされたか否かを判定し、
前記回生制御の開始時以前の時間経過に伴うアクセル操作量の減少度を取得し、
前記アクセル操作量の前記減少度に基づいて、前記電気モータに要求する前記回生トルクである要求回生トルクを決定するように構成されている、鞍乗車両。
【符号の説明】
【0123】
1 :車両
2 :車体
3a :バッテリ
6 :電気モータ
21 :アクセルセンサ
22 :回転数センサ
31 :コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7