(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176501
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】半導体素子の研磨方法及び半導体素子の観察方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241212BHJP
H01S 5/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/304 621B
H01L21/304 631
H01S5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095064
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 晃一
(72)【発明者】
【氏名】野中 安代
【テーマコード(参考)】
5F057
5F173
【Fターム(参考)】
5F057AA02
5F057BA30
5F057BB40
5F057BC01
5F057CA40
5F057DA14
5F057EC29
5F057GB03
5F057GB13
5F173ZM03
5F173ZQ05
(57)【要約】
【課題】本開示は半導体素子の研磨方法に関し、半導体素子の厚み制御が可能な半導体素子の研磨方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は支持体にはんだにより実装された半導体素子3の研磨方法であって、埋込樹脂5によって、支持体および半導体素子3を封止する工程と、支持体の側面が埋込樹脂5から露出するように、埋込樹脂5を研磨する工程と、埋込樹脂5および半導体素子3を上面から研磨する研磨工程と、研磨された埋込樹脂5の側面を観察し、支持体の上面に存在する埋込樹脂5の厚みを測定する測定工程とを含む。本開示においては、埋込樹脂5の厚みが所定の厚みTとなるまで、研磨工程および測定工程を繰り返す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
埋込樹脂によって、前記支持体および前記半導体素子を封止する工程と、
前記支持体の側面が前記埋込樹脂から露出するように、前記埋込樹脂を研磨する工程と、
前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する研磨工程と、
研磨された前記埋込樹脂の側面を観察し、前記支持体の上面に存在する前記埋込樹脂の厚みを測定する測定工程と、
を含み、
前記埋込樹脂の前記厚みが所定の厚みとなるまで、前記研磨工程および前記測定工程を繰り返す、半導体素子の研磨方法。
【請求項2】
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
所定の厚みを有する構造物を、前記支持体の上面に実装する工程と、
前記構造物、前記支持体、および前記半導体素子を埋込樹脂で封止する工程と、
前記構造物の上面が露出するまで前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する工程と、
を含む、半導体素子の研磨方法。
【請求項3】
前記構造物の側面が前記埋込樹脂から露出するように、前記埋込樹脂を研磨する工程と、
露出した前記構造物の側面を観察する観察工程と、
をさらに含み、
前記構造物の上面が露出したことは、前記観察工程により確認される、請求項2に記載の半導体素子の研磨方法。
【請求項4】
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
埋込樹脂によって、前記支持体および前記半導体素子を封止する工程と、
前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する研磨工程と、
前記半導体素子の研磨面から、前記半導体素子のはんだ接合面に到達する穴を形成する工程と、
前記穴の深さを測定する測定工程と、
を含み、
前記穴の前記深さが所定の深さとなるまで、前記研磨工程および前記測定工程を繰り返す、半導体素子の研磨方法。
【請求項5】
前記構造物は、前記支持体の上面に接合されたワイヤボールの平坦部である、請求項2または3に記載の半導体素子の研磨方法。
【請求項6】
前記半導体素子の観察方法であって、
請求項1から4いずれか1項に記載の半導体素子の研磨方法を実施する工程と、
前記半導体素子の活性層を観察する工程と、
を含み、
前記所定の厚みまたは前記所定の深さは、前記活性層の観察方法の種類により決定される、半導体素子の観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子の研磨方法及び半導体素子の観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持体に載置された半導体素子に対してエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence;以下、ELと称する)を観察する技術が開示されている。これにより、半導体素子が破損されることなく、半導体素子の観察を実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の方法において、半導体素子の活性層を断面観察するには、はんだにより支持体に実装された半導体素子を取り外して実施する必要がある。しかし、取り付け時より高温ではんだを融解させる必要があるため、加熱により半導体素子が劣化する可能性がある。また、半導体素子をピンセットで掴み取る際に破損させる恐れがある。
【0005】
はんだにより支持体に実装された半導体素子の活性層を断面観察するには、半導体素子を上面から研磨し、所望の観察箇所の付近を露出させたうえで、観察を実施することが有効である。しかしながら、従来は、研磨において半導体素子の厚みを制御することが困難であった。
【0006】
本開示は上述の問題を解決するため、半導体素子の厚み制御が可能な半導体素子の研磨方法を提供することを第一の目的とする。
【0007】
また、本開示は、はんだにより支持体に実装された半導体素子に対しても適用できる半導体素子の観察方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第一の態様は、
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
埋込樹脂によって、前記支持体および前記半導体素子を封止する工程と、
前記支持体の側面が前記埋込樹脂から露出するように、前記埋込樹脂を研磨する工程と、
前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する研磨工程と、
研磨された前記埋込樹脂の側面を観察し、前記支持体の上面に存在する前記埋込樹脂の厚みを測定する測定工程と、
を含み、
前記埋込樹脂の前記厚みが所定の厚みとなるまで、前記研磨工程および前記測定工程を繰り返すことが好ましい。
【0009】
また、第二の態様は、
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
所定の厚みを有する構造物を、前記支持体の上面に実装する工程と、
前記構造物、前記支持体、および前記半導体素子を埋込樹脂で封止する工程と、
前記構造物の上面が露出するまで前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する工程と、
を含むことが好ましい。
【0010】
また、第三の態様は、
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
埋込樹脂によって、前記支持体および前記半導体素子を封止する工程と、
前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する研磨工程と、
前記半導体素子の研磨面から、前記半導体素子のはんだ接合面に到達する穴を形成する工程と、
前記穴の深さを測定する測定工程と、
を含み、
前記穴の前記深さが所定の深さとなるまで、前記研磨工程および前記測定工程を繰り返すことが好ましい。
【0011】
また、第四の態様は、
前記半導体素子の観察方法であって、
請求項1から4いずれか1項に記載の半導体素子の研磨方法を実施する工程と、
前記半導体素子の活性層を観察する工程と、
を含み、
前記所定の厚みまたは前記所定の深さは、前記活性層の観察方法の種類により決定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の第一から第四の態様によれば、半導体素子の厚み制御が可能な半導体素子の研磨方法、およびはんだにより支持体に実装された半導体素子に対しても適用できる半導体素子の観察方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の研磨および観察対象である半導体素子を有する半導体装置の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体素子の研磨方法を示す図である。
【
図3】
図2で説明した工程の完了後における半導体素子を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る半導体素子のEL観察方法を示す図である。
【
図5】実施の形態2に係る半導体素子の研磨方法を示す図である。
【
図6】
図5で説明した工程の完了後における半導体素子を示す図である。
【
図7】実施の形態3に係る半導体素子の研磨方法を示す図である。
【
図8】
図7で説明した工程の完了後における半導体素子を示す図である。
【
図9】側面研磨工程および研磨工程完了後における半導体素子を示す図である。
【
図10】実施の形態4に係る、半導体素子の研磨方法を示す図である。
【
図11】
図10で説明した工程の完了後における半導体素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施の形態に係る半導体素子の研磨方法及び半導体素子の観察方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0015】
実施の形態1
図1は、本開示の研磨および観察対象である半導体素子3を有する半導体装置100の構成を示す図である。半導体装置100は、ブロック1と、支持体としてのサブマウント2と、半導体素子3を備える。
【0016】
サブマウント2は、上面に配線12と配線9を備える取り付け台である。配線12に半導体素子3の表面31側がはんだ11により実装される。すなわち、半導体素子3は上下が反転した状態でサブマウント2に実装される。サブマウント2の材料としては、電気的絶縁物、一般的にはAlN、Al2O3等のセラミック板が用いられる。
【0017】
サブマウント2の裏面にはブロック1が接合されている。ブロック1の材料はAg、Cu、Fe、Al等の金属またはその合金、さらには金属が被覆されたセラミックまたは樹脂等の絶縁体等、熱伝導性に優れた材料が用いられる。
【0018】
半導体素子3は、InP、GaAs、GaN、InGaAs、Ge、Si等の材料から構成される。半導体素子3は、例えば電気信号を光信号に変換するLD(Laser Diode)、またはその逆変換を行うPD(Photo Diode)等である。半導体素子3は、半導体素子3の表面31側に形成された活性層4を備える。活性層4は、例えば、光入射によりキャリアが発生する材料からなる光吸収層等である。半導体素子3の厚みは、例えば80μmであり、活性層4は、半導体素子3の表面31から5μm以下の位置に形成されるが、数値は一例であり、これに限らない。
【0019】
半導体素子3の表面31には、表面電極10が形成されている。表面電極10は、はんだ11によりサブマウント2に電気的、機械的に接合されている。半導体素子3の裏面32には、裏面電極6が形成されている。裏面電極6の厚みは5μm程度であるが、数値は一例であり、これに限らない。裏面電極6には、ワイヤ7の一端が接続されている。ワイヤ7の他端のワイヤボール8は配線9にボンディングされている。
【0020】
なお、表面電極10、はんだ11、配線12の厚みは薄く、これらをすべて合わせても5μm程度である。しかしながら、これらの数値は一例であり、半導体素子3の厚みに対して十分薄ければよい。
【0021】
以上説明したように、本開示において、研磨および観察対象である半導体素子3は上下が反転した状態ではんだ11によりサブマウント2に実装されている。
【0022】
以下では、
図2から
図4を用いて、半導体素子3を裏面電極6側から研磨し、半導体素子3を観察する方法を説明する。
【0023】
図2は、実施の形態1に係る半導体素子3の研磨方法を示す図である。
【0024】
まず、硬化性の埋込樹脂5によって、半導体装置100を封止する。具体的には、液体の樹脂に硬化剤を混ぜて硬化させる。この際に、半導体装置100の構成要素のうち、少なくともサブマウント2、および半導体素子3を封止する。これにより、ハンドリングが容易になる。さらには、後述する研磨工程において半導体素子3を保護することができる。
【0025】
次に、サブマウント2の側面が埋込樹脂5から露出するように、埋込樹脂5を研磨する。研磨の種類は、SiCまたは金属等の砥石研磨、バフ研磨、またはダイヤモンド砥粒を使用した鏡面研磨等であるが、これらに限定されない。なお、
図2において、ラインL1は側面研磨により形成される研磨面の位置を表している。
【0026】
次に、埋込樹脂5および半導体素子3を上面から研磨する研磨工程を行う。さらに、側面研磨で形成された研磨面をSEM等で観察し、該研磨面においてサブマウント2の上面に存在する埋込樹脂5の厚みtを測定する測定工程を行う。さらに、測定工程において測定される埋込樹脂5の厚みtが所定の厚みTとなるまで研磨工程および測定工程を繰り返す。
図2のラインL2は、研磨工程および測定工程を繰り返すことにより形成される、研磨面の位置である。
【0027】
図3は、
図2で説明した工程の完了後における半導体素子3を示す図である。サブマウント2の上面に存在する埋込樹脂5の厚みtが、所定の厚みTになるまで半導体素子3を研磨することにより、半導体素子3に対しても、研磨面からサブマウント2の上面までの距離が一定となるように制御することができる。
【0028】
上述したように、半導体素子3とサブマウント2の間には、表面電極10、はんだ11、および配線12が含まれているが、これらは薄く、3層あわせた厚みa(以下、電極配線厚みaと称する)はせいぜい5μm程度である。電極配線厚みaが十分小さいとみなせる場合はこれを無視してもよいが、厳密に半導体素子3の厚みを制御する場合は、測定工程において、埋込樹脂5の厚みtから、電極配線厚みaを差し引いた厚みを、半導体素子3の厚みとする。この関係を利用することで、半導体素子3に対して、所望の厚みを残すように研磨することが可能となる。
【0029】
一般に、埋込樹脂5に埋まった半導体素子3の厚みを直接測定し、数μmの精度で決定することは困難であるとされる。これに対し、本開示では、研磨された半導体素子3と同等の厚みを有するサブマウント2上の埋込樹脂5を観察し、該埋込樹脂5の厚みtを基準に研磨を実行することで、半導体素子3の厚みを制御できる。
【0030】
ここで、所定の厚みTは、観察対象の位置と観察方法に応じて決定される。例えば、観察方法がEL観察である場合は、裏面電極6が研磨により除去できればよいため、本開示における所定の厚みTは70μmから80μm程度である。
【0031】
一方、観察対象が活性層4であり、FIB-STEM等の断面観察を行う場合は、ラインL2が示す研磨面から活性層4まで到達する穴をFIBで加工する必要がある。その際、無理なくFIB加工できる厚みが、所定の厚みTの条件となる。さらに上面研磨工程によって活性層4を破損することないような厚みであることも必須である。以上の観点から、本開示における所定の厚みTは、例えば10μmから20μm程度である。
【0032】
このように、本実施形態においては、厚み制御が可能な半導体素子3の研磨方法を提供することができる。
【0033】
図4は、実施の形態1に係る、半導体素子3のEL観察方法を示す図である。まず、上述の研磨工程により半導体素子3の裏面電極6が除去された状態で、ラインL2が示す研磨面に正極とグラウンドのプローブ13を接続する。さらに、プローブ13を用いて、電界を印加する。これにより、活性層4に対して発光14を発生させることができ、EL観察を行うことができる。
【0034】
なお、ここではEL観察を例にしたが、観察手段はEL観察に限定されない。例えば、FIB-SEM(Focused Ion Beam-Scanning Electron Microscope)、FIB-STEM(Focused Ion Beam-Scanning Transmission Electron Microscope)などの断面観察でもよく、複数の観察手段を組み合わせてもよい。
【0035】
例えば、EL観察を実施し活性層4の劣化箇所を特定した後、半導体素子3の研磨工程と測定工程をさらに実行し、該劣化箇所のFIB-STEM観察を実施してもよい。このように本開示では複数の観察手段のそれぞれに応じた所定の厚みTを設定し、研磨工程を都度実施することで、複数の観察手段を実施することが可能となる。結果として、半導体素子3のより詳しい解析が可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、はんだによりサブマウント2に実装された半導体デバイスに対しても適用できる半導体素子3の観察方法を提供することができる。
【0037】
ここで、サブマウント2に実装された半導体素子3の活性層4を観察するには、本開示のように半導体素子3を裏面32側から研磨する方法の他に、半導体素子3をサブマウント2から取り外す方法もあり得る。しかしながら、はんだ11により実装された半導体素子3を取り外すには、取り付け時より高温ではんだ11を融解させるため、加熱により半導体素子3が劣化する可能性がある。また、半導体素子3をピンセットで掴み取る際に破損させる恐れがある。一方、本実施の形態ではこれらのリスクを避けることが出来る。
【0038】
実施の形態2
図5は、本開示の実施の形態2に係る、半導体素子3の研磨方法を示す図である。本実施形態においては、まず、所定の厚みTを有する構造物200を、半導体装置100のサブマウント2の上面に実装する工程を行う。構造物200は、例えば金属箔またはガラス板などであり、はんだ付け等でサブマウント2に実装される。なお、構造物200の実装箇所は、サブマウント2の上面であり、かつ後述する研磨工程によって構造物200の上面を露出させることで、半導体素子3に対しても、厚みの制御ができる箇所であればどこに実装されてもよい。
【0039】
さらに、構造物200と半導体装置100を埋込樹脂5で封止する。この際に、構造物200と、半導体装置100の構成要素のうち少なくともサブマウント2、および半導体素子3を封止する。
【0040】
さらに、構造物200の上面が露出するまで埋込樹脂5および半導体素子3を上面から研磨する。
図5のラインL1は研磨工程により形成される研磨面の位置を表している。
【0041】
図6は、
図5で説明した工程の完了後における半導体素子3を示す図である。所定の厚みTを有する構造物200の上面が露出するまで半導体素子3を研磨することにより、半導体素子3に対しても、研磨面からサブマウント2の上面までの距離が一定となるように制御することができる。なお、実施の形態1で説明したように、所定の厚みTから、電極配線厚みaを差し引いた厚みが、半導体素子3の厚みであることに留意されたい。
【0042】
また、本実施形態においては、厚みの指標となる構造物200をあらかじめサブマウント2の上面に配置することで、実施の形態1で説明した側面研磨工程が不要となる。
【0043】
なお、半導体素子3の観察方法については実施の形態1と同様であるので説明は省略する。このことは、以下の全ての実施の形態においても共通である。
【0044】
〈変形例1〉
なお、研磨工程の実施前に、構造物200の側面が埋込樹脂5から露出するように、埋込樹脂5を研磨する側面研磨工程を行ってもよい。研磨工程は、側面研磨工程で形成された研磨面をSEM等で観察しながら行う。SEM等で構造物200を観察することにより、上面から目視で構造物200を観察するのに比べて、構造物200の上面が露出したことを明瞭に確認でき、埋込樹脂5を過不足なく研磨することができる。また、金属製の構造物200を使用することで、実施の形態1のように埋込樹脂5を観察する方法にくらべて、観察対象の剥離およびチャージアップのリスクを軽減することができる。
【0045】
実施の形態3
図7は、本開示の実施の形態3に係る、半導体素子3の研磨方法を示す図である。本実施形態においては、まず、半導体装置100のワイヤボール8において、所定の厚みTを有する平坦部300を形成し、サブマウント2の上面に配線9を介して接合する。該工程は半導体装置100の製造工程において実施することができる。なお、所定の厚みTの平坦部300は、キャピラリ法により形成可能であるが、方法は限定されない。ワイヤボール8の平坦部300の厚みTは15μmから20μmの精度である。
【0046】
なお、配線9の厚みは1μm程度であり、平坦部300の厚みTに対して十分小さいとみなすことができる。
【0047】
さらに、半導体装置100を埋込樹脂5で封止する。この際に、半導体装置100の構成要素のうち、少なくともワイヤボール8、サブマウント2、および半導体素子3を封止する。さらに、平坦部300の上面が露出するまで埋込樹脂5および半導体素子3を上面から研磨する。
図7のラインL1は、研磨工程により形成される研磨面の位置である。
【0048】
図8は、
図7で説明した工程の完了後における半導体素子3を示す図である。所定の厚みTを有する平坦部300の上面が露出するまで半導体素子3を研磨することにより、実施の形態2と同様に、半導体素子3に対しても、研磨面からサブマウント2の上面までの距離が一定となるように制御することができる。また、本実施形態の平坦部300は、半導体装置100の製造工程において形成されるものであるから、実施の形態2のように、構造物200を別途形成する必要が無くなる。
【0049】
〈変形例2〉
なお、変形例1と同様に、研磨工程の実施前に、平坦部300の側面が埋込樹脂5から露出するように、埋込樹脂5を研磨する側面研磨工程を行ってもよい。さらに、研磨工程は、側面研磨工程で形成された研磨面をSEM等で観察しながら行う。これにより、変形例1と同様の効果を得ることができる。
図7のラインL2は、側面研磨工程により形成される研磨面の位置である。また、
図9は、側面研磨工程および研磨工程完了後における半導体素子3を示す図である。
【0050】
実施の形態4
図10は、本開示の実施の形態4に係る、半導体素子3の研磨方法を示す図である。本実施形態においては、まず、硬化性の埋込樹脂5によって、半導体装置100を封止する。この際に、半導体装置100の構成要素のうち、少なくともサブマウント2、および半導体素子3を封止する。次に、埋込樹脂5および半導体素子3を上面から研磨する研磨工程を行う。
【0051】
さらに、研磨工程で形成された半導体素子3の研磨面から、表面31に到達する穴400を斜めの角度からFIB等により形成する。なおFIBの角度は例えば54°であるが、数値は一例でありこれに限定されない。穴400の断面形状は三角形になり、穴400の側面において半導体素子3の垂直な断面が露出する。さらに、形成された穴400の側面をSEM等で観察し、穴400の深さdを測定する測定工程を行う。さらに測定工程において測定される穴400の深さdが所定の深さDとなるまで、研磨工程および測定工程を繰り返す。
図10のラインL1は、研磨工程および測定工程を繰り返すことにより形成された、研磨面である。
【0052】
なお、研磨工程で研磨された半導体素子3の厚みが大きすぎるため、半導体素子3の研磨面から表面31に到達する穴400を形成できない場合は、研磨工程を再び行えばよい。
【0053】
図11は、
図10で説明した工程の完了後における半導体素子3を示す図である。測定工程において測定される穴400の深さdは、半導体素子3の厚みに一致する。したがって、穴400の深さdが所定の深さDとなるまで半導体素子3を研磨することにより、半導体素子3の厚みを制御することができる。
【0054】
〈変形例〉
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。
【0055】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
埋込樹脂によって、前記支持体および前記半導体素子を封止する工程と、
前記支持体の側面が前記埋込樹脂から露出するように、前記埋込樹脂を研磨する工程と、
前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する研磨工程と、
研磨された前記埋込樹脂の側面を観察し、前記支持体の上面に存在する前記埋込樹脂の厚みを測定する測定工程と、
を含み、
前記埋込樹脂の前記厚みが所定の厚みとなるまで、前記研磨工程および前記測定工程を繰り返す、半導体素子の研磨方法。
(付記2)
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
所定の厚みを有する構造物を、前記支持体の上面に実装する工程と、
前記構造物、前記支持体、および前記半導体素子を埋込樹脂で封止する工程と、
前記構造物の上面が露出するまで前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する工程と、
を含む、半導体素子の研磨方法。
(付記3)
前記構造物の側面が前記埋込樹脂から露出するように、前記埋込樹脂を研磨する工程と、
露出した前記構造物の側面を観察する観察工程と、
をさらに含み、
前記構造物の上面が露出したことは、前記観察工程により確認される、付記2に記載の半導体素子の研磨方法。
(付記4)
支持体にはんだにより実装された半導体素子の研磨方法であって、
埋込樹脂によって、前記支持体および前記半導体素子を封止する工程と、
前記埋込樹脂および前記半導体素子を上面から研磨する研磨工程と、
前記半導体素子の研磨面から、前記半導体素子のはんだ接合面に到達する穴を形成する工程と、
前記穴の深さを測定する測定工程と、
を含み、
前記穴の前記深さが所定の深さとなるまで、前記研磨工程および前記測定工程を繰り返す、半導体素子の研磨方法。
(付記5)
前記構造物は、前記支持体の上面に接合されたワイヤボールの平坦部である、付記2または3に記載の半導体素子の研磨方法。
(付記6)
前記半導体素子の観察方法であって、
付記1から5いずれかに記載の半導体素子の研磨方法を実施する工程と、
前記半導体素子の活性層を観察する工程と、
を含み、
前記所定の厚みまたは前記所定の深さは、前記活性層の観察方法の種類により決定される、半導体素子の観察方法。
【符号の説明】
【0056】
1 ブロック、2 サブマウント、3 半導体素子、4 活性層、5 埋込樹脂、6 裏面電極、7 ワイヤ、8 ワイヤボール、9 配線、10 表面電極、11 はんだ、12 配線、13 プローブ、14 発光、31 表面、32 裏面、200 構造物、100 半導体装置、300 平坦部、400 穴