(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176510
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】金融商品の価格変動を分析する分析システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20241212BHJP
【FI】
G06Q40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095075
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】523219781
【氏名又は名称】フィンファイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 英志
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB52
5L055BB52
(57)【要約】
【課題】金融商品の価格変動について、的確な支援情報をより容易に提供できる分析システムおよびプログラムを提供する。
【解決手段】金融商品の価格変動を分析する分析システムは、前記金融商品の日毎の価格を取得し、前記日毎の価格に基づき、異なる複数の値上がり率のそれぞれについて、前記金融商品が当該値上がり率だけ値上がりするまでの所要日数を計算し、各前記値上がり率について、前記所要日数に基づき、所定の利回り基準期間内の利回りを計算し、各前記値上がり率について前記利回りを関連付ける利回り情報を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融商品の価格変動を分析する分析システムであって、
前記分析システムは、
前記金融商品の日毎の価格を取得し、
前記日毎の価格に基づき、異なる複数の値上がり率のそれぞれについて、前記金融商品が当該値上がり率だけ値上がりするまでの所要日数を計算し、
各前記値上がり率について、前記所要日数に基づき、所定の利回り基準期間内の利回りを計算し、
各前記値上がり率について前記利回りを関連付ける利回り情報を出力する、
分析システム。
【請求項2】
前記利回り情報は、一方の軸が値上がり率を表し、他方の軸が利回りを表すグラフによって表される、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記利回り基準期間は1年間であり、
前記日毎の価格は、2年間以上の日毎の価格を含み、
前記分析システムは、
年毎に前記利回り情報を計算し、
全年の前記利回り情報を平均した平均利回り情報を出力する、
請求項1に記載の分析システム。
【請求項4】
前記金融商品は株式であり、前記日毎の価格は始値である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項5】
コンピュータを請求項1~4のいずれか一項に記載の分析システムとして動作させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融商品の価格変動を分析する分析システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融商品の取引では、過去の価格変動を考慮して投資戦略を策定することが重要である。このため、価格変動に基づいて取引の支援を行う様々なシステムが公知となっている。例として特許文献1には、過去の株価の増減データに基づき、ニューラルネットワークを用いて助言を生成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、的確な支援情報を提供することが困難であるという課題があった。たとえば特許文献1ではニューラルネットワークを用いた機械学習を行っているが、適切な機械学習を行うためには、ニューラルネットワークを適切に設計し、かつ適切な教師データを大量に準備する必要があり、一般的にこれは非常に困難である。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、的確な支援情報をより容易に提供できる分析システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る分析システムの一例は、
金融商品の価格変動を分析する分析システムであって、
前記分析システムは、
前記金融商品の日毎の価格を取得し、
前記日毎の価格に基づき、異なる複数の値上がり率のそれぞれについて、前記金融商品が当該値上がり率だけ値上がりするまでの所要日数を計算し、
各前記値上がり率について、前記所要日数に基づき、所定の利回り基準期間内の利回りを計算し、
各前記値上がり率について前記利回りを関連付ける利回り情報を出力する。
【0007】
また、本発明に係るプログラムの一例は、コンピュータを上述の分析システムとして動作させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る分析システムおよびプログラムは、金融商品の価格変動の分析により、的確な利回り情報をより容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る分析システムの構成例。
【
図2】
図1の分析システムが扱う価格データの形式例。
【
図3】
図1の分析システムの処理の流れを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
図1に、本発明の実施形態1に係る分析システム10の構成例を示す。分析システム10は、金融商品の価格変動を分析する分析システムである。
【0011】
分析システム10は1以上のコンピュータを用いて構成される。すなわち、分析システム10は公知のコンピュータとしてのハードウェア構成を有し、たとえば演算手段11および記憶手段12を備える。演算手段11はたとえばプロセッサを含み、記憶手段12はたとえば半導体メモリ装置および磁気ディスク装置等の記憶媒体を含む。
【0012】
また、コンピュータは入出力手段を備えてもよい。入出力手段は、たとえば、キーボードおよびマウス等の入力装置と、ディスプレイおよびプリンタ等の出力装置と、ネットワークインタフェース等の通信装置とを含む。
【0013】
記憶手段はプログラムを記憶してもよい。プロセッサがこのプログラムを実行することにより、コンピュータは本実施形態において説明される機能を実行してもよい。すなわち、このプログラムは、コンピュータを分析システム10として動作させるものである。
【0014】
図2に、分析システム10が扱う価格データの形式例を示す。
図2の価格データ20は、金融商品の日毎の価格を含む。
図2の例および以下の説明では、金融商品の例として特定銘柄の株式を扱い、とくに株価として日毎の始値を扱う。
【0015】
ただし、価格データは株式以外の金融商品の価格を表すものであってもよく、複数の金融商品の集合に係る価格(たとえばTOPIX、日経平均株価、等)を表すものであってもよい。また、日毎の価格は、始値としておくと取引市場の終業時刻から翌日始業時刻までのニュース等が反映された価格となり好適であるが、始値に限らず、たとえば終値、高値、安値、等であってもよい。
【0016】
価格データ20は、期間内のすべての日の価格を含む必要はなく、たとえば取引市場の休業日のデータは省略してもよい。
【0017】
図3は、分析システム10の処理の流れを表すフローチャートである。以下、
図3を用いて分析システム10の動作を説明する。
【0018】
図3の処理において、まず分析システム10は、株式の日毎の始値を取得する(ステップS1)。たとえば価格データ20の入力を受け付ける。価格データ20は、予め記憶手段12に格納されていてもよいし、可搬型記憶装置または通信ネットワークを介して分析システム10に入力されてもよい。
【0019】
次に、分析システム10は、値上がり率についてのループ処理を実行する。ループ処理において、まず分析システム10は、そのループにおける値上がり率を決定する(ステップS2)。たとえば、初期値を1%とし、最終値を100%とし、増分を1%とする。すなわち、最初のループでは1%、2回目のループでは2%、3回目のループでは3%、となる。ループの初期値、最終値および増分は、適宜設計可能である。
【0020】
次に、分析システム10は、ループ中の値上がり率について、価格データ20に基づき、株式が当該値上がり率だけ値上がりするまでの所要日数を計算する(ステップS3)。
【0021】
例として、2回目のループ(値上がり率2%)について具体的に説明する。
図2の例では、最初の日(2016年1月4日)の株価が23,456円となっている。値上がり率が2%であるので、株価が23,456円×1.02≒23,925円以上となる最初の日を特定し、2016年1月4日を起点としてその日までの所要日数を計算する。
【0022】
次に、第2日(2016年1月5日)では株価が23,567円であるので、株価が23,567円×1.02≒24,038円以上となる最初の日を特定し、2016年1月5日を起点としてその日までの所要日数を計算する。
【0023】
同様にして、価格データ20に含まれるすべての日(最後の日を除く)について、その日を起点とした所要日数を計算する。そして、各日を起点とした所要日数の平均値を計算する。この平均値を、その値上がり率に対応する所要日数とすることができる。平均値は、たとえば相乗平均によって算出されるが、相加平均、調和平均、対数平均、等によって算出されてもよい。
【0024】
なお、価格データ20内で、いずれかの日について、その日を起点としてループ中の値上がり率に対応する値上がりが発生していない場合には、その日を起点とした所要日数は計算されず、したがってステップS3における平均値の計算からは除外される。
【0025】
また、価格データ20内で、どの日を起点としてもループ中の値上がり率に対応する値上がりが発生していない場合には、以降、その値上がり率に関する処理は省略してもよい。または、その値上がり率に対応する所要日数を無限大とし、利回りなし(利回り0%)として扱ってもよい。
【0026】
上記は、値上がり率に対応する所要日数を計算する手法の一例であるが、具体的な計算手法はこれに限らず、当業者が適宜設計または変形することができる。
【0027】
次に、分析システム10は、ループ中の値上がり率について、ステップS3で求まった所要日数に基づき、所定の利回り基準期間内の利回りを計算する(ステップS4)。本実施形態では、この利回り基準期間は1年間とするが、利回り基準期間は、2日以上かつ価格データ20の全期間以下の期間であれば任意に設計可能である。
【0028】
たとえば、値上がり率が2%である場合に所要日数が50日であったとする。株式を購入した後、そのまま1年間持ち続けたとすると、2%の値上がりが365/50=7.3回だけ発生する計算となるので、1年後の価格は1.027.3≒1.156[倍]となり、利回りはおおよそ(1-1.156)×100=15.6[%]となる。
【0029】
ステップS4の後、分析システム10は値上がり率を次の値に変更し、値上がり率の最終値(たとえば100%)についてループが終了するまでループを繰り返し実行する(ステップS5)。
【0030】
以上のループ処理をまとめると、分析システム10は、価格データ20に基づき、異なる複数の値上がり率のそれぞれについて、株式が当該値上がり率だけ値上がりするまでの所要日数を計算し(上記ステップS3)、各値上がり率について、所要日数に基づき、1年間の利回りを計算する(上記ステップS4)。
【0031】
ループ処理が終了した後、分析システム10は、各値上がり率について利回りを関連付ける利回り情報を出力する(ステップS6)。
【0032】
図4に、利回り情報の具体例を示す。
図4の例では、利回り情報31は、一方の軸(横軸)が値上がり率を表し、他方の軸(縦軸)が利回り(すなわち割合の大きさ)を表すグラフによって表されるが、表現形式はこれに限らない。分析システムは、このような利回り情報を出力する。出力の態様は任意に設計可能であり、たとえば表示装置によって表示してもよく、印刷装置によって印刷してもよく、通信ネットワークを介して送信してもよく、記憶媒体に格納してもよい。
【0033】
このようにして、分析システム10は、株価変動の分析により、的確な利回り情報を提供する。分析システム10のユーザは、この利回り情報を参考にして投資戦略を策定することができる。
【0034】
たとえば、
図4の例では、1年間の利回りを最大化する最適値上がり率Pを特定することができる。すなわち、ユーザは、当該銘柄の株式を購入した後、Pだけ値上がりするまで待ち、Pだけ値上がりした時点でこれを売却することにより、最も効率的に利益を得ることができる。Pより小さい値上がり率では、十分な値上がりを得ることができず投資効率が低下し、Pより大きい値上がり率では、値上がりに時間がかかりすぎて投資効率が低下すると考えられる。
【0035】
分析システム10は、利回り情報を出力するとともに、利回りを最大化する値上がり率を表す情報(たとえばPの値と、その位置を示すグラフ中の破線)を出力してもよい。
【0036】
図4の例では利回り情報はただ1通りであり、すなわち単一の利回り基準期間(たとえば2016年の1年間)に基づいて算出されるもののみである。価格データが複数の利回り基準期間の情報を含む場合(たとえば2年間以上の価格データを含む場合。
図2の価格データ20は7年間のデータを含む)、分析システム10は、利回り基準期間毎に(すなわち年毎に)利回り情報を計算して出力することができる。
【0037】
図5に、このような場合の利回り情報の具体例を示す。分析システム10は、利回り情報として、2016年~2022年までの7つの年のうち、利回りが最小である年(この例では2018年)に対応する最小利回り情報41と、利回りが最大である年(この例では2022年)に対応する最大利回り情報43とを出力する。また、分析システム10は、全年の利回り情報を平均した値を示す平均利回り情報42を出力してもよい。
【0038】
なお、各年の利回りの大きさは、たとえば利回りを値上がり率について積分したもの(グラフの面積に相当)を用いて評価することができるが、他の算出方法を用いてもよい。
【0039】
このような出力によれば、ユーザはより柔軟に投資戦略を策定することができる。たとえば、悲観的な株価予測に基づいて投資を行う場合には、最小利回り情報41を参考にすることができ、平均的な株価予測に基づいて投資を行う場合には、平均利回り情報42を参考にすることができ、楽観的な株価予測に基づいて投資を行う場合には、最大利回り情報43を参考にすることができる。
【0040】
ここで、利回りを最大化する値上がり率は、一般的には、最小利回り情報41、平均利回り情報42、および最大利回り情報43でそれぞれ異なる値となる。
図5の例では、最小利回り情報41において利回りを最大化する値上がり率は最適値上がり率P1であり、平均利回り情報42において利回りを最大化する値上がり率は最適値上がり率P2であり、最大利回り情報43において利回りを最大化する値上がり率は最適値上がり率P3である。
【0041】
分析システム10は、各利回り情報を出力するとともに、各利回りを最大化する値上がり率を表す情報(たとえばP1、P2およびP3の値、および/または、P1、P2およびP3それぞれの位置を示すグラフ中の破線)を出力してもよい。
【0042】
このように様々な条件でそれぞれ最適な値上がり率が出力されるので、ユーザはさらにこれらを参考にすることができる。たとえば、悲観的な株価予測に基づいて利益を最大化したい場合には、当該銘柄の株式を購入した後、P1だけ値上がりするまで待ってこれを売却すればよい。同様に、平均的な株価予測に基づいて利益を最大化したい場合には、P2だけ値上がりするまで待てばよく、楽観的な株価予測に基づいて利益を最大化したい場合には、P3だけ値上がりするまで待てばよい。
【0043】
なお、
図5の例では、利回りが最小となる年および最大となる年の利回り情報のみが出力されており、他の年の利回り情報は出力されていないが、分析システム10は他の年の利回り情報(たとえば全年のもの)を出力してもよい。さらに、利回り情報について平均値以外の統計的値を出力してもよい。
【0044】
上述の実施形態1では、単一の金融商品(単一の銘柄の株式)の価格のみを扱うが、複数の金融商品を扱うとより好適である。その場合には、分析システム10は、金融商品ごとに価格データを取得し、金融商品ごとに利回り情報を出力してもよい。このようにすると、ユーザは複数の銘柄についてそれぞれ最適値上がり率を知ることができ、銘柄ごとに最適化された投資戦略を策定することができる。
【0045】
当業者は、上述の実施形態1において、本発明の範囲内で、構成要素を任意に追加、変更または削除することができる。たとえば分析システム10は、通信ネットワークを介して接続された複数のコンピュータによって構成することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…分析システム
11…演算手段
12…記憶手段
20…価格データ(日毎の価格)
31…利回り情報
41…最小利回り情報
42…平均利回り情報
43…最大利回り情報
P,P1,P2,P3…最適値上がり率