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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176515
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】輸送データ計算システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 61/00 20060101AFI20241212BHJP
   B65D 19/38 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B65G61/00 524
B65D19/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095081
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 彰久
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063AA02
3E063BA08
3E063CA05
3E063DA05
3E063EE01
3E063FF20
(57)【要約】
【課題】パレット上に載置された状態で輸送される貨物を保護する上で有利となる汎用性の高い輸送データ計算システムを得る。
【解決手段】本開示に係る輸送データ計算システムは、貨物が載置可能なパレット1に設けられ、加速度、温度および湿度の少なくとも1つを検知するセンサ1aを備える。また、輸送データ計算システムは、パレット1に載置されて輸送される貨物に加わるストレスを、センサ1aの検知データから計算する計算部10を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物が載置可能なパレットに設けられ、加速度、温度および湿度の少なくとも1つを検知するセンサと、
前記パレットに載置されて輸送される前記貨物に加わるストレスを、前記センサの検知データから計算する計算手段と、
を備える輸送データ計算システム。
【請求項2】
前記計算手段は、前記センサの検知データが基準を外れている時間の累計値を前記ストレスとして計算する請求項1に記載の輸送データ計算システム。
【請求項3】
前記センサは、加速度と温度と湿度とのうちの2つ以上の情報を検知可能に構成され、
前記計算手段は、前記センサが検知した前記2つ以上の情報の組み合わせから前記ストレスを計算する請求項1に記載の輸送データ計算システム。
【請求項4】
前記センサは湿度を検知し、
前記計算手段は、前記センサが検知した湿度から前記ストレスを計算する請求項1から請求項3の何れか1項に記載の輸送データ計算システム。
【請求項5】
前記貨物は、段ボールによって梱包されており、
前記計算手段は、段ボールの強度特性に応じて設定された湿度の判定値に応じて前記ストレスを計算する請求項4に記載の輸送データ計算システム。
【請求項6】
前記センサは温度を検知し、
前記計算手段は、前記センサが検知した温度から前記ストレスを計算する請求項1に記載の輸送データ計算システム。
【請求項7】
前記貨物は樹脂材料からなる製品であり、
前記計算手段は、前記センサが検知した温度が判定値以下となっている時間の累計値を前記ストレスとして計算する請求項6に記載の輸送データ計算システム。
【請求項8】
前記計算手段は、複数の前記パレットが段積みされた状態でコンテナに収容された状態で輸送される際に、前記コンテナ内の上下方向の任意の位置における温度を予測可能である請求項6または請求項7に記載の輸送データ計算システム。
【請求項9】
前記センサは加速度を検知し、
前記計算手段は、前記センサが検知した加速度から前記ストレスを計算する請求項1に記載の輸送データ計算システム。
【請求項10】
前記計算手段は、前記センサが検知した加速度が判定値を超えた回数から前記ストレスとして計算する請求項9に記載のデータ計算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、輸送データ計算システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、プラズマ発生装置を備えたことを特徴とするパレットおよび該パレットを用いた食料品の管理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-162480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のパレットは、プラズマ発生装置によりオゾン濃度を調整することを特徴とするものであり、管理対象は食料品のみである。特許文献1に記載の技術は汎用性がなく、例えば、電気製品あるいは包装材等の貨物を保護するためには適用できない。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものである。本開示の目的は、パレット上に載置された状態で輸送される貨物を保護する上で有利となる汎用性の高いシステムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る輸送データ計算システムは、貨物が載置可能なパレットに設けられ、加速度、温度および湿度の少なくとも1つを検知するセンサと、前記パレット上に載置されて輸送される前記貨物に加わるストレスを、前記センサの検知データから計算する計算手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、パレット上に載置された状態で輸送される貨物を保護する上で有利となる汎用性の高い輸送データ計算システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の輸送データ計算システムの機能ブロック図である。
図2】実施の形態1の輸送データ計算システムの全体構成の具体例を示す図である。
図3】実施の形態1のセンサが取り付けられたパレットの構造の例を示す図である。
図4】実施の形態1の輸送データ計算システムによるストレスの計算の第1の例を説明する図である。
図5】段ボールの強度特性を説明する図である。
図6】実施の形態1の輸送データ計算システムによるストレスの計算の第2の例を説明する図である。
図7】実施の形態1の輸送データ計算システムによるストレスの計算の第3の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。各図における同一の符号は、同一の部分または相当する部分を示す。本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本開示には、その趣旨を逸脱しない範囲において、以下の実施の形態によって開示される構成の種々の変形および組み合わせが含まれ得る。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の輸送データ計算システムの機能ブロック図である。図2は、実施の形態1の輸送データ計算システムの全体構成の具体例を示す図である。本実施の形態に係る輸送データ計算システムは、輸送対象となる貨物が載置されるパレット1に設けられたセンサ1aの検知データを利用して、貨物に加わるストレスの計算を行うシステムである。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係る輸送データ計算システムは、センサ1aと、計算部10と、を備える。センサ1aは、貨物が載置可能なパレット1に設けられ、加速度、温度および湿度の少なくとも1つを検知する。計算部10は、パレット1に載置されて輸送される貨物に加わるストレスを、センサ1aの検知データから計算する計算手段である。
【0012】
パレット1および当該パレット1に載置された貨物は、例えば、図2に示すように、輸送車両100によって輸送される。なお、パレット1は、輸送車両100に限らず、例えば、航空機または船舶等によって輸送されてもよい。
【0013】
図3は、実施の形態1のセンサ1aが取り付けられたパレット1の構造の例を示す図である。パレット1は、例えば、木材等の材料から作られる。パレット1は、例えば、複数の桁材を組み合わせて作られる。例えば、パレット1を構成する桁材の一部の内側をくり抜き、くり抜かれた部分にセンサ1aを取り付ける。
【0014】
計算部10の機能は、例えば、図2の例のように、クラウド200に備えられる。図2の例において、センサ1aは、輸送車両100等によってパレット1および貨物が輸送される際に、リアルタイムでデータを検知し、検知データをクラウド200へ送信する。クラウド200は、センサ1aの検知データを保存し、また、検知データの分析を行う。クラウド200の検知データ、すなわちパレット1上に載置されて輸送される貨物に加わるストレスの計算結果は、例えば、ユーザが使用するパソコン等の端末300へ送信される。図2の例において、ユーザは、端末300によって受信した計算結果を確認することができる。
【0015】
以上のように構成された輸送データ計算システムであれば、センサ1aの検知データを用いて、輸送中の貨物に加わるストレスを自動計算できる。本実施の形態の係る輸送データシステムを用いれば、輸送過程における貨物の損傷等を未然に防止でき、また、貨物の品質向上を図ることができる。また、輸送対象となる貨物は、食品に限定されず、多種多様な貨物に対応できる。本実施の形態によれば、パレット1上に載置された状態で輸送される貨物を保護する上で有利となる、汎用性の高い輸送データ計算システムが得られる。
【0016】
一例として、計算部10は、センサ1aの検知データが基準を外れている時間の累計値をストレスとして計算する。例えば、センサ1aが温度を検知する場合には、検知温度が特定の判定値を超えている場合あるいは下回っている時間の累計値をストレスとして計算する。例えば、センサ1aが湿度を検知する場合には、検知湿度が特定の判定値を超えている場合あるいは下回っている時間の累計値をストレスとして計算する。センサ1aが加速度を検知する場合には、検知した加速度が特定の判定値を超えている時間の累計値をストレスとして計算する。検知データの基準は、貨物の使用および輸送環境等に応じて適宜設定され得る。このような手法によれば、多種多様な貨物に対応できる。
【0017】
計算部10は、センサ1aの検知データの積算値を用いてストレスの計算を行っても良い。このような計算方法であれば、例えば、上記の判定値に対する差分の大きさを考慮したストレスを計算することができる。例えば、センサ1aが温度を検知する場合において、判定値の30℃以下が基準内であるとする。このとき、検知温度が35℃である場合と検知温度が60℃である場合とでは、貨物に加わるストレスの大きさは異なると考えられる。湿度あるいは加速度を検知する場合にも同様に考えられる。検知データの積算値を用いてストレスの計算を行うことで、より精度の高い計算結果を得ることができる。
【0018】
センサ1aは、1つのパレット1に複数個設けられていてもよい。複数個のセンサ1aは、同じ種類のデータを検知してもよいし、互いに違う種類のデータを検知してもよい。センサ1aは、加速度と温度と湿度とのうちの2つ以上の情報を検知可能に構成されてもよい。このとき、2つ以上のセンサ機器によって加速度と温度と湿度とのうちの2つ以上を検知可能としてもよいし、単一のセンサ機器によって加速度と温度と湿度とのうちの2つ以上を検知可能としてもよい。
【0019】
センサ1aが2つ以上の情報を検知可能である場合、計算部10は、センサ1aが検知した2つ以上の情報の組み合わせからストレスを計算してもよい。例えば、センサ1aが温度および加速度を検知する場合において、温度については判定値以下が基準内であるとする。このとき、当該判定値以下の温度の環境において基準を超える加速度が加わった場合と当該判定値を超えた温度の環境において基準を超える加速度が加わった場合とでは、貨物に加わるストレスの大きさは異なると考えられる。2つ以上の情報を検知可能である場合、1つの検知データに応じて別の検知データによる計算結果を調整してもよい。あるいは、1つの検知データに応じて、別の検知データに対応する判定値を変更してもよい。一例として、高温環境下と低温環境下とで、加速度の判定値を変更してもよい。2つ以上の情報の組み合わせからストレスを計算することで、より精度の高い計算結果を得ることができる。
【0020】
なお、本実施の形態における計算部10の機能は、クラウド200以外に備えられていてもよい。計算部10の機能は、例えば、端末300に備えられていてもよい。センサ1aの検知データは、クラウド200を介さずに端末300へ送られてもよい。端末300は、センサ1aから受信したデータの分析を行っても良い。あるいは、計算部10の機能は、クラウド200および端末300とは更に別の機器等によって実現されてもよい。
【0021】
また、図1に示すように、輸送データ計算システムは、例えば、報知部20による報知機能を備えていてもよい。報知部20は、計算部10の計算結果に応じた報知を行う。例えば、報知部20は、センサ1aの検知データが基準を外れている時間の累計値が閾値以上となった場合に、警告を行う。警告の内容は、貨物に加わっているストレスが大きすぎることを示す、貨物の輸送環境の改善を促す、等、任意である。警告は、例えば、貨物の輸送中に行ってもよいし、貨物の輸送完了後に次回の輸送時における環境改善を促すように警告をしてもよい。報知部20の機能は、例えば、端末300に備えられていてもよいし、輸送車両100内に設けられた機器等に備えられていてもよいし、スマートフォン等の携帯端末に備えられていてもよい。
【0022】
次に、図面を更に参照して、本実施の形態に係る輸送データ計算システムによるストレスの計算の具体例を説明する。図4は、実施の形態1の輸送データ計算システムによるストレスの計算の第1の例を説明する図である。
【0023】
この第1の例では、センサ1aは、湿度を検知する。計算部10は、センサ1aが検知した湿度からストレスを計算する。図4に示す例では、湿度が判定値を超えている時間の累計値である累計時間a+bをストレスとして計算する。なお、上述したように、検知した湿度の積算値を用いてストレスの計算を行ってもよい。
【0024】
センサ1aが検知した湿度からストレスを計算することは、特に、段ボールが輸送対象である場合に好適である。図5は、段ボールの強度特性を説明する図である。パレット1上の貨物は、段ボールによって梱包された状態で輸送されるケースが多い。段ボールの強度は、図5に示すように、湿度の影響を受ける。段ボールの強度は、ある変曲点、例えば80%の湿度を超えると急激に低下する。そこで、段ボールが輸送対象である場合には、湿度の判定値を強度特性に応じて設定するとよい。例えば、湿度の判定値を、変曲点の一例である80%として設定してもよい。これにより、例えば、段ボールの潰れあるいは胴膨れ等に対して効果的に対応することができる。
【0025】
図6は、実施の形態1の輸送データ計算システムによるストレスの計算の第2の例を説明する図である。この第2の例では、センサ1aは、温度を検知する。計算部10は、センサ1aが検知した温度からストレスを計算する。図6に示す例では、温度が判定値を下回っている時間の累計値である累計時間a+b+cをストレスとして計算する。なお、上述したように、検知した温度の積算値を用いてストレスの計算を行ってもよい。
【0026】
図6に示す第2の例は、特に、樹脂材料からなる製品が貨物である場合に好適である。樹脂材料は、氷点下の低温環境下において劣化するという特性がある。例えば、樹脂材料は、-10℃あるいは-20℃程度の環境下では急速に劣化する。一例として、温度の判定は、0℃から-10℃の範囲で設定される。本例であれば、樹脂材料からなる製品の低温環境下での劣化に対して効果的に対応することができる。
【0027】
図7は、実施の形態1の輸送データ計算システムによるストレスの計算の第3の例を説明する図である。パレット1は、複数個が段積みされた状態でコンテナ400に収容された状態で輸送されることが想定される。図7に示すように、コンテナ400内の温度は、一般的に、床面からの距離に応じて変化し、上下方向にかけて分布する。この特定を利用して、計算部10は、段積みされたパレット1に設けられたセンサ1aの検知温度から、コンテナ400内の上下方向の任意の位置における温度を予測可能とするとよい。
【0028】
この第3の例によれば、パレット1上の温度だけでなく、パレット1上に積載された高い位置にある貨物の周囲温度を予測でき、予測結果に応じてストレスを計算できる。これにより、精度の高いストレスの計算結果が得られる。本例であれば、例えば、コンテナ400の天井面に太陽光が当たってコンテナ400内の上部が高温になる場合など、実際の輸送環境に対してより効果的に対応することができる。
【0029】
この第3の例の変形例として、例えば、左右方向に置かれた複数のパレット1のセンサ1aの検知データを利用して、左右方向の任意の位置における温度を予測してもよい。また、温度に代えて、上下方向あるいは左右方向の任意の位置における湿度を予測してもよい。また、温度分布あるいは湿度分布を予測して外れ値が生じている箇所を検出し、当該箇所において異常が生じていることを報知部20等によって報知してもよい。
【0030】
第3の例においては、センサ1aの位置を把握する必要がある。そこで、例えば、センサ1aが設けられたパレット1の積載方法を事前に人為的に決めてもよし、センサ1aが位置情報等のセンサ1a自身を識別するための情報を送信する機能を有していてもよい。
【0031】
図4から図7では、温度あるいは湿度に応じてストレスを計算する例を示したが、加速度に応じてストレスを計算してもよい。基本的に、貨物に対しては大きな加速度が加わることは好ましくない。加速度に応じたストレス計算であれば、貨物の種類に依らない汎用性の高い対応をすることができる。
【0032】
加速度からストレスを計算する場合には、センサ1aが検知した加速度が判定値を超えた回数からストレスを計算してもよい。この判定値は、例えば、3Gから10Gの範囲で設定される。一定の加速度である場合には、ストレスは比較的小さいと考えられる。一方で、加速度の絶対値が比較的小さいとしても、繰り返しの衝撃あるいは振動等の荷重が貨物に加えられた場合には、ストレスが大きいと考えられる。加速度が判定値を超えた回数からストレスを計算することで、より精度の高い計算結果が得られる。
【0033】
なお、回数に基づくストレスの計算は、湿度および温度に基づいた計算においても適用することができる。センサ1aが検知した湿度が基準を外れた回数あるいは温度が基準を外れた回数からストレスの計算を行ってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 パレット、 1a センサ、 10 計算部、 20 報知部、 100 輸送車両、 200 クラウド、 300 端末、 400 コンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7