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特開2024-176518観測計画立案支援装置、方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176518
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】観測計画立案支援装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/20 20060101AFI20241212BHJP
   G01C 13/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01C21/20
G01C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095088
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝磨
(72)【発明者】
【氏名】山口 悟史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 春機
(72)【発明者】
【氏名】秋里 恭太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】松井 凌
(72)【発明者】
【氏名】長澤 修宏
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA14
2F129DD20
2F129DD21
2F129EE02
2F129EE52
2F129HH04
2F129HH12
2F129HH25
(57)【要約】
【課題】観測点において複数の深さで観測値が取得可能な場合に観測点を高速に最適化することが可能な技術を提供する。
【解決手段】対象領域の水平面上に観測点を設け、前記観測点において複数の深さで対象項目の値を取得する観測計画の立案を支援する観測計画立案支援装置は、メモリと、プロセッサと、を有し、前記メモリは、二次元位置と深さとで示される格子点での対象項目の各時刻における項目値を表す時系列データを記憶し、前記プロセッサは、前記時系列データから、二次元位置および深さで表される空間のモードである空間モードを取得し、前記空間モードを基に、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとり前記空間モードの要素値を並べた変形空間モード行列を構築し、所定の最適化手法によって前記変形空間モード行列から所定行数の行を選択し、選択された該行によって示される二次元位置を観測点として決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域の水平面上に観測点を設け、前記観測点において複数の深さで対象項目の値を取得する観測計画の立案を支援する観測計画立案支援装置であって、
メモリと、プロセッサと、を有し、
前記メモリは、二次元位置と深さとで示される格子点での対象項目の各時刻における項目値を表す時系列データを記憶し、
前記プロセッサは、
前記時系列データから、二次元位置および深さで表される空間のモードである空間モードを取得し、
前記空間モードを基に、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとり前記空間モードの要素値を並べた変形空間モード行列を構築し、
所定の最適化手法によって前記変形空間モード行列から所定行数の行を選択し、選択された該行によって示される二次元位置を観測点として決定する、
観測計画立案支援装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記変形空間モード行列から、行ベクトルのノルムが大きい順に前記所定行数の行を選択し、前記観測点とする、
請求項1に記載の観測計画立案支援装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記時系列データを、前記二次元位置および前記深さを行方向にとり前記時刻を列方向にとった時系列データ行列と見なして、前記時系列データ行列を特異値分解によって前記空間モードの行列と特異値行列と時間のモードの行列とに分解することにより、前記空間モードを取得する、
請求項1に記載の観測計画立案支援装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
二次元位置および深さを行方向にとり時間を列方向にとって前記空間モードを表した空間モード行列の所定列数の列を抽出することにより低次元空間モード行列を構築し、
前記低次元空間モード行列を、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとるように変形することにより、前記変形空間モード行列を構築する、
請求項1に記載の観測計画立案支援装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
観測点の個数が異なる複数の集合について、当該集合に含まれる観測点での項目値を基に前記対象領域の各格子点の項目値を近似して求めた場合の近似誤差と、当該集合に含まれる観測点での観測に要するコストとを算出し、
前記集合内の観測点またはその個数と、前記近似誤差と、前記コストとの関係を表す関係情報を視認可能に表示する、
請求項1に記載の観測計画立案支援装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記所定行数の行を選択することにより決定した観測点の集合によって、前記観測点での観測に要するコストを算出し、
前記観測点の集合から、削除したときの前記近似誤差の絶対値の変化が最も少ない観測点を削除して前記コストを算出することを繰り返し、
前記コストの算出の繰り返しによって得られた情報を基に前記関係情報を生成する、
請求項5に記載の観測計画立案支援装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記集合に入れる観測点の個数を変化させて、前記コストに対する前記近似誤差をプロットしたグラフを表示する、
請求項5に記載の観測計画立案支援装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、更に、
前記集合に含まれる観測点を移動体によって移動距離が最短になる順に辿る経路を地図上に表示する、
請求項5に記載の観測計画立案支援装置。
【請求項9】
対象領域の水平面上に観測点を設け、前記観測点において複数の深さで対象項目の値を取得する観測計画の立案を支援する観測計画立案支援方法であって、
コンピュータが、
二次元位置と深さとで示される格子点での対象項目の各時刻における項目値を表す時系列データをメモリに記録し、
前記時系列データから、二次元位置および深さで表される空間のモードである空間モードを取得し、
前記空間モードを基に、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとり前記空間モードの要素値を並べた変形空間モード行列を構築し、
所定の最適化手法によって前記変形空間モード行列から所定行数の行を選択し、選択された該行によって示される二次元位置を観測点として決定する、
ことを実行する観測計画立案支援方法。
【請求項10】
対象領域の水平面上に観測点を設け、前記観測点において複数の深さで対象項目の値を取得する観測計画の立案を支援する観測計画立案支援プログラムであって、
コンピュータに、
二次元位置と深さとで示される格子点での対象項目の各時刻における項目値を表す時系列データをメモリに記録し、
前記時系列データから、二次元位置および深さで表される空間のモードである空間モードを取得し、
前記空間モードを基に、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとり前記空間モードの要素値を並べた変形空間モード行列を構築し、
所定の最適化手法によって前記変形空間モード行列から所定行数の行を選択し、選択された該行によって示される二次元位置を観測点として決定する、
ことを実行させるための観測計画立案支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体が観測点にてデータを取得するための観測計画の立案を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各海域の環境の変化を予測するために、各時点における各位置の環境のデータが観測される。観測および予測する環境の項目として、例えば海水温、塩分濃度などがある。海上や海中には陸上のように計測設備を固定的に設置できないため、定点観測位置を設定することが容易でない。そのため、観測船によって観測点に出向き所望の項目の観測を行うのが通常である。その場合、観測点の数を増やせば環境の予測精度は向上するが、その一方で観測に要するコストが増大する。そのため、できるだけ少ない数で、各海域の環境を高い精度で予測しうるデータを取得できるように観測点を特定し、効率の良い観測計画を立案することが求められる。
【0003】
特許文献1には、対象海域を航行している船舶によって測定された気象、海洋環境、海流等の測定データを用いて最適な航路を算出する技術が開示されている。特許文献1の手法では、測定データは数値解析による予報データに同化され、気象、海洋環境、海流の予測を高精度化する。これにより、航海時間、燃料消費量、船体運動を考慮した最適な航路を算出することが可能とされている。
【0004】
また、非特許文献1には、海面の水温時系列データを用いて、観測価値が高い位置を算出する手法について述べられている。本手法は、海面の水温の時系列データに対して固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition,以下POD)を適用し、得られた空間PODモードを並べたセンサ候補行列に対しQR分解を適用することで、最適な観測点を特定する。この手法により、PODモードによる低次元モデルを用いた温度場の再構築の観点から最適な観測点の位置が得られるとされている。
【0005】
さらに、非特許文献2には、観測点において複数の物理量が計測可能な場合すなわちベクトル観測が可能な場合における観測点最適化手法が述べられている。この手法により、複数の物理量が計測可能な場合に最適な観測点の位置を特定することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-13145号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Manohar, K., Brunton, B. W., Kutz, J. N., & Brunton, S. L. (2018). Data-driven sparse sensor placement for reconstruction: Demonstrating the benefits of exploiting known patterns. IEEE Control Systems Magazine, 38(3), 63-86.
【非特許文献2】Saito, Y., Nonomura, T., Nankai, K., Yamada, K., Asai, K., Sasaki, Y., & Tsubakino, D. (2020). Data-driven vector-measurement-sensor selection based on greedy algorithm. IEEE Sensors Letters, 4(7), 1-4.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の手法によれば、対象海域内で得られる測定データを活用して、航海時間、燃料消費量、船体運動等を考慮した、最適な航路を決定することができる。しかしながら、本手法は、海洋環境の予測精度の観点で測点位置の良し悪しを評価するものでは無いため、海洋環境の予測精度を高めることにはならない。
【0009】
また、上記非特許文献1に記載の手法は、海面における海水温データの観測においてその有効性が示されている。しかしながら、海面での海水温を観測するだけでなく、ひとつの観測点で深さ方向の水温の分布を観測する場合がある。例えば、expandable bathythermograph(以下XBTとする)は、航走中の観測船から投下され自由落下しながら約300m深度までの海水温を連続的に記録する装置である。このように深さ方向の各位置でデータを観測する場合に有効な手法が求められる。しかし、非特許文献1の手法は、海面における海水温データの観測においては有効であるが、深さ方向の水温分布が観測される場合に有効な観測点最適化手法とは言えない。
【0010】
また、上記非特許文献2に記載の手法は、非特許文献1の手法と同様に空間PODモードを用いるが、複数の物理量分布から求められる空間PODモードを用いるため、QR分解のような高速な手法が適用できず、特定の座標に相当するセンサ候補行列の行ベクトルノルムを個別に評価する必要があり、迅速な意思決定が求められる状況下では実用性に乏しい場合がある。
【0011】
本開示に含まれるひとつの目的は、観測点において複数の深さで観測値が取得可能な場合に観測点を高速に最適化することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係る観測計画立案支援装置は、対象領域の水平面上に観測点を設け、前記観測点において複数の深さで対象項目の値を取得する観測計画の立案を支援する観測計画立案支援装置であって、メモリと、プロセッサと、を有し、前記メモリは、二次元位置と深さとで示される格子点での対象項目の各時刻における項目値を表す時系列データを記憶し、前記プロセッサは、前記時系列データから、二次元位置および深さで表される空間のモードである空間モードを取得し、前記空間モードを基に、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとり前記空間モードの要素値を並べた変形空間モード行列を構築し、所定の最適化手法によって前記変形空間モード行列から所定行数の行を選択し、選択された該行によって示される二次元位置を観測点として決定する。
【0013】
本開示の一態様に係る観測計画立案支援方法は、対象領域の水平面上に観測点を設け、前記観測点において複数の深さで対象項目の値を取得する観測計画の立案を支援する観測計画立案支援方法であって、二次元位置と深さとで示される格子点での対象項目の各時刻における項目値を表す時系列データをメモリに記録し、前記時系列データから、二次元位置および深さで表される空間のモードである空間モードを取得し、前記空間モードを基に、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとり前記空間モードの要素値を並べた変形空間モード行列を構築し、所定の最適化手法によって前記変形空間モード行列から所定行数の行を選択し、選択された該行によって示される二次元位置を観測点として決定することをコンピュータが実行する。
【0014】
本開示の一態様に係る観測計画立案支援プログラムは、対象領域の水平面上に観測点を設け、前記観測点において複数の深さで対象項目の値を取得する観測計画の立案を支援する観測計画立案支援プログラムであって、コンピュータに、二次元位置と深さとで示される格子点での対象項目の各時刻における項目値を表す時系列データをメモリに記録し、前記時系列データから、二次元位置および深さで表される空間のモードである空間モードを取得し、前記空間モードを基に、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとり前記空間モードの要素値を並べた変形空間モード行列を構築し、所定の最適化手法によって前記変形空間モード行列から所定行数の行を選択し、選択された該行によって示される二次元位置を観測点として決定する、ことを実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、観測点において複数の深さで観測値が取得可能な場合に観測点を高速に最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係る観測計画立案支援装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る観測点最適化処理の一例を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る数式1を示す。
図4】実施の形態1に係る数式2を示す。
図5】実施の形態1に係る数式3を示す。
図6】実施の形態1に係る数式4を示す。
図7】実施の形態1に係る数式5を示す。
図8】実施の形態1に係る表形式データの一例を示す。
図9】実施の形態1に係る観測点位置最適化結果の表示例を示す図である。
図10】実施の形態2に係る観測点最適化処理の一例を示すフローチャートである。
図11】実施の形態2に係る観測点削減処理の一例を示すフローチャートである。
図12】実施の形態2に係る数式6を示す。
図13】実施の形態2に係る数式7を示す。
図14】実施の形態2に係る数式8を示す。
図15】実施の形態2に係る数式9を示す。
図16】実施の形態2に係るトレードオフ可視化の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る観測計画立案支援装置1の構成例を示すブロック図である。
【0018】
本実施の形態に係る観測計画立案支援装置1は、対象領域の水平面上に観測点を設け、観測点において複数の深さで対象項目の値を取得する観測計画の立案を支援する。観測計画立案支援装置1は、制御装置100、入出力部110、及び、ストレージ装置120を含んで構成される。制御装置100には、入出力部110及びストレージ装置120が通信可能に接続される。
【0019】
制御装置100は、計算機装置(例えばPC(Personal Computer))であり、メモリ101及びプロセッサ102を備える。メモリ101は、揮発性記憶媒体及び/又は不揮発性記憶媒体によって構成されてよい。プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)であってよい。メモリ101には、観測計画立案支援プログラム103が記憶されてよい。プロセッサ102が、メモリ101から観測計画立案支援プログラム103を読み出して実行することにより、本実施の形態で説明する海洋の計画立案支援に関する機能が実現される。
【0020】
入出力部110は、キーボード111、マウス112、及び、ディスプレイ113等を含む。キーボード111及びマウス112は、入力装置の一例である。ディスプレイ113は、出力装置の一例である。
【0021】
ユーザは、入力装置の一例であるキーボード111及びマウス112を通じて命令を入力できる。ユーザは、出力装置の一例であるディスプレイ113から、制御装置100による処理結果を視覚的に把握することができる。
【0022】
ストレージ装置120は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)から構成される不揮発性記憶媒体である。ストレージ装置120には、海洋解析データ121、地図データ122、及び、観測点データ123等が格納される。ストレージ装置120に格納されるデータは、必要に応じてメモリ101に読み出され、プロセッサ102から使用されてよい。
【0023】
海洋解析データ121は、海洋の状態について、海洋シミュレーションを用いて求めた2次元または3次元の時系列データである。海洋シミュレーションは、緯度、経度、深さの3軸で表現された空間に格子点を配置し、海面高度、水温、塩分濃度、流速等の物理量の時間変化を数値解析によって求めるものである。海洋解析データ121は、各変数の格子点における値を有する。海洋解析データ121は、海洋研究機関等で作成され、公開されているものであってもよい。海洋解析データ121は、時系列データと読み替えられてもよい。すなわち、時系列データは、二次元位置(緯度、経度)と深さとで表される格子点での対象項目(例えば海面高度、水温、塩分濃度、流速等)の各時刻における項目値を表す。
【0024】
地図データ122は、海洋に関する地図を示すデータである。地図データ122は、公開されているものであってもよい。
【0025】
観測点データ123は、観測点に対応する格子点の位置(以下、格子位置という)と、実際の緯度経度との対応関係を示すデータである。なお、観測点データ123の詳細については後述する(図8参照)。
【0026】
図2は、実施の形態1に係る観測点最適化処理の一例を示すフローチャートである。次に、図2を参照して、観測計画立案支援装置1が、最適な位置及び数の観測点を決定及び提示する処理について説明する。
【0027】
プロセッサ102は、ストレージ装置120から海洋解析データ121を取得し、メモリ101に展開する(ステップ201)。なお、この処理は、入出力部110を通じたユーザからの指示により実行されてよい。また、プロセッサ102は、ユーザからの指示に基づき、海洋解析データ121に含まれる緯度、経度、深さ(水深)、時間範囲、物理量のいずれを取得するかを判断してもよい。また、本実施の形態では、海域の環境変化の分析を対象とし、海洋解析データ121を用いて観測点最適化処理を行う例を説明するが、気象変化を対象とし、海洋解析データ121に代えて大気気象解析データ等を用いて観測点最適化処理を行うことも可能である。
【0028】
プロセッサ102は、ステップ201で取得した海洋解析データ121に対して特異値分解(SVD)を行ってモード分解し、低次元モデルを構築する(ステップ202)。次に、当該ステップ202の処理について詳細に説明する。
【0029】
まず、プロセッサ102は、図3に示す数式1に従って、取得した海洋解析データ121を変形し、データ行列Xを構成する。ここで、緯度の要素数をnlat、経度の要素数をnlon、深さの要素数をndepth、時間範囲の要素数をntimeとする。
【0030】
数式1に示すように、海洋解析データ121の特定の時刻に対応する複数のデータを1次元に並べ、状態ベクトルとする。すなわち、特定の時刻に対応する状態ベクトルは、データ行列Xの1列に対応する。したがって、数式1に示すように、データ行列Xの列数は、時間範囲の要素数ntimeとなり、データ行列Xの1列は、その列の時刻に対応する状態ベクトルとなる。
【0031】
物理量(対象項目)が1種類、例えば温度のみの場合は、状態ベクトルの長さは(ndepth×nlat×nlon)となる。低次元モデル化の対象となる物理量が複数ある場合は、数式1の並べ方に従って、状態ベクトルを行方向に延長すればよい(つまり行数を増やせばよい)。なお、本実施の形態では物理量が1種類の場合を説明するが、例えば物理量が2種類の場合、状態ベクトルの長さ(要素数)を、(2×ndepth×nlat×nlon)とすればよい。
【0032】
最終的なデータ行列Xをn行m列とする。つまり、nは状態ベクトルの要素数であり、mは時間範囲の要素数ntimeである。
【0033】
次に、プロセッサ102は、図4に示す数式2のように、データ行列Xに特異値分解(SVD)を作用させ、空間PODモードUと、特異値行列Σと、時間PODモードVとに分解する。PODは、Proper Orthogonal Decomposition(固有値直交分解)の略である。なお、PODは主成分分析の一例である。
【0034】
ここで、データ行列Xがr個の空間PODモードで十分近似可能とすると、図5に示す数式3のように、データ行列Xを低次元化近似できる。数式3における行列の右下の添字a:bは、行列のa列目からb列目までを抽出することを意味する。
【0035】
最後に、図4に示す数式4と図5に示す数式5とに従って、低次元化された空間PODモードU1:rを変形する。ここで、低次元化された空間PODモードU1:rはn行r列である。また、ある次数sの空間PODモードU、すなわちU1:rのs列目を取り出したベクトルには、状態ベクトルの並び、すなわち(ndepth×nlat×nlon)の並びに対応したモードの値が格納されている。
【0036】
上述によれば、プロセッサ102は、時系列データを、二次元位置および深さを行方向にとり時刻を列方向にとった時系列データ行列(例えば行列データX)と見なして、図4に示す数式2のように、時系列データ行列を特異値分解(SVD)によって空間モードの行列と特異値行列と時間のモードの行列とに分解することにより、空間モード(例えば行列U1:r)を取得している。このように、特異値分解(SVD)によって空間モードを取得することができる。
【0037】
次に、プロセッサ102は、図6に示す数式4の低次元化された空間PODモードU1:rを、図7に示す数式5のUmodのように変形する。すなわち、U1:rは行方向に深さ方向の空間PODモードが格納されているが、Umodを構成するにあたり、深さ方向の空間PODモードを列方向に並べる。したがって、Umodは(nlat×nlon)行及び(r×ndepth)列の行列となる。Umodは低次元モデルの一例であり、本実施の形態ではセンサ候補行列と呼ぶ。このように並び替えることによって、ある緯度経度の座標における空間PODモードが、深さ方向も考慮した上で1行に並ぶことになり、QR分解を一例とする高速な観測点最適化手法が適用可能となる。
【0038】
図4に示す数式2によって空間PODモードを求める際、モード数はデータ行列Xの時間方向データ数、すなわちm個となる。図5に示す数式3によって低次元化モデルを構築する際、プロセッサ102は、r個のモードで打ち切ってよい。しかし、計算機リソースが十分な場合、この打ち切りを行わず、プロセッサ102は、m個の空間PODモードを用いてその後の処理を行い、変形後のセンサ候補行列Umodを作成してもよい。
【0039】
上述によれば、プロセッサ102は、時系列データ(例えば海洋解析データ121)から、二次元位置および深さで表される空間のモードである空間モード(例えばU1:r)を取得している。そして、プロセッサ102は、空間モードを基に、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとり空間モードの要素値を並べた変形空間モード行列(例えば行列Umod)を構築している。
【0040】
また、上述によれば、プロセッサ102は、二次元位置および深さを行方向にとり時間を列方向にとって空間モードを表した空間モード行列(例えば低次元化する前の行列Uの)の所定列数の列を抽出することにより低次元空間モード行列(例えば低次元化した行列U1:r)を構築している。そして、プロセッサ102は、低次元空間モード行列を、二次元位置を行方向にとり時刻および深さを列方向にとるように変形することにより、変形空間モード行列(例えば行列Umod)を構築している。このように、空間モードを低次元化することにより、最適化手法による観測点の決定を高速化することができる。
【0041】
図2の説明に戻る。
【0042】
プロセッサ102は、観測点最適化を行うための条件(以下、最適化条件という)を設定する(ステップ203)。最適化条件は、ユーザが入出力部110を通じて設定してもよい。最適化条件として、例えば、観測点数、及び、最適化対象領域等が設定される。観測点数として、観測点の数が設定される。最適化対象領域として、観測点最適化を行う緯度、経度、深さ等の範囲が設定される。
【0043】
プロセッサ102は、観測点位置最適化処理として、図7に示す数式5のセンサ候補行列Umodに対して、例えばQR分解による観測点最適化手法を適用し、観測点位置を決定する(ステップ204)。観測点位置は、複数の観測点のうち海洋の状態を観測するために最適な観測点の位置を示す。
【0044】
QR分解による観測点最適化手法は、センサ候補行列Umodの行ベクトルのノルムが大きい順に観測点を決める手法である。観測点最適化手法は、QR分解に限られない。例えば、観測点数が低次元モード数以下の場合にはQR分解と等価となるが、観測点数が低次元モード数より大きい場合でも最適な観測点を決定可能な行列式ベースの貪欲法や、観測ノイズの相関を考慮した行列式ベースの貪欲法等が適用されてもよい。
【0045】
行ベクトルは、緯度と経度で示される2次元マップ上での座標に対応付けられる。図6に示す数式4のように、緯度、経度の順にループを回して状態ベクトル化した場合、図7に示す数式5における行ベクトルの行位置iを用いて、緯度方向の格子位置lonは、i%nlon(%は剰余演算を示す)で、経度方向の格子位置latは、i//nlon(//は整数商を示す)で求めることができる。
【0046】
また、プロセッサ102は、ステップ204の観測点位置最適化処理として、ステップ203にて設定された最適化条件の観測点数分だけ観測点を求め、それぞれの観測点を緯度方向・経度方向の格子位置に変換する。そして、プロセッサ102は、観測点の格子位置での実際の緯度・経度情報を関連付けて、図8に示す表形式データ301を作成し、ストレージ装置120に観測点データ123として格納する。
【0047】
図8に示すように、表形式データ301は、データ項目として、ID、緯度方向要素位置、経度方向要素位置、経度、緯度を有する。IDは、観測点位置の識別情報である。緯度方向要素位置は、IDに対応する観測点位置の緯度方向の格子位置を示す。経度方向要素位置は、IDに対応する観測点位置の経度方向の格子位置を示す。緯度は、IDに対応する観測点位置の実際の緯度(つまり緯度方向要素位置に対応する実際の緯度)を示す。経度は、IDに対応する観測点位置の実際の経度(つまり経度方向要素位置に対応する実際の経度)を示す。
【0048】
上述によれば、プロセッサ102は、所定の最適化手法によって変形空間モード行列(例えば行列Umod)から所定行数(例えばr)の行を選択し、選択された該行によって示される二次元位置を観測点として決定している。このように、時系列データから空間モードを取得し、深さ方向を列方向に並べた空間モード行列を構築し、その空間モード行列から行を選択することにより観測点を決定することにより、観測点において複数の深さで観測値が取得可能な場合に高速な手法で観測点を最適化することができる。
【0049】
また、上述によれば、プロセッサ102は、変形空間モード行列から、行ベクトルのノルムが大きい順に所定行数(例えばr)の行を選択し、観測点としている。このように、行ベクトルのノルムの大きい順に行を選択して観測点とすることにより、観測点を高速に決定することができる。
【0050】
プロセッサ102は、観測点位置可視化処理として、入出力部110のディスプレイ113に観測点位置最適化結果を表示する(ステップ205)。
【0051】
図9は、実施の形態1に係る観測点位置最適化結果の表示例を示す図である。
【0052】
観測点位置最適化結果を表示するGUI401は、地図データ、観測点位置最適化結果、及び地図データの表示範囲、深さ等の設定項目等を表示する。例えば、GUI401は、地図表示領域402、表示範囲設定領域403、観測点位置表示領域404、及び、観測点位置405を含む。
【0053】
地図表示領域402には、ストレージ装置120に格納された地図データ122の少なくとも一部が表示される。地図表示領域402に表示する地図データの範囲は、地図表示領域402の地図上をマウス112によりドラッグして調整されてもよいし、表示範囲設定領域403に値を入力して調整されてもよい。
【0054】
観測点位置表示領域404には、ステップ204の観測点位置最適化処理にて算出した観測点位置に対応する表形式データ301(図8参照)が表示される。
【0055】
観測点位置405は、地図表示領域402に表示された地図データに重ね合わせて表示される。
【0056】
地図表示領域402に表示された地図データには、観測点位置405に加えて、海洋解析データ121の物理量分布、及び、当該物理量分布を統計処理した結果等が表示されてもよい。また、図9では、可視化対象となる深さを指定した上で、2次元の地図データを用いて可視化する例を示しているが、観測点位置、及び、地図データは、3次元で可視化されてもよい。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態2では、観測コストと海洋解析データ121の近似誤差のトレードオフを可視化し、観測計画立案を支援する観測計画立案支援装置1について説明する。
【0058】
図10は、実施の形態2に係る観測点最適化処理の一例を示すフローチャートである。次に、図10を参照して、観測計画立案支援装置1が、観測コストと海洋解析データ121の近似誤差とのトレードオフを算出及び提示する処理について説明する。
【0059】
プロセッサ102は、図2に示したステップ201、202、203、204と同様の処理を行う。この処理については実施の形態1にて説明済みであるので、ここでは説明を省略する。
【0060】
次に、プロセッサ102は、観測点削減処理として、観測コストを低減すべく、ステップ204の観測点位置最適化処理で決定した観測点位置の候補から、削減した際の予測誤差への寄与が小さい(つまり予測誤差が大きくなりにくい)観測点位置を特定し、そのと肯定した観測点位置を観測点位置の候補から除去する(ステップ501)。
【0061】
次に、このステップ501の観測点削減処理について図11を参照して、詳細に説明する。図11は、実施の形態2に係る観測点削減処理の一例を示すフローチャートである。
【0062】
プロセッサ102は、観測点削減の対象となる観測点集合Sを初期化する(ステップ601)。初期集合として、例えばステップ204の観測点位置最適化処理で求めた観測点位置を用いる。ただし、観測点位置最適化処理で求めた観測点位置に対して、ユーザが手動で追加又は削減したものを初期集合としてもよい。
【0063】
プロセッサ102は、観測点集合Sの近似誤差E、観測コスト、及び、観測経路を計算する(ステップ602)。近似誤差Eは、ステップ202で構築した低次元モデルを用い、低次元モデル作成の基となった海洋解析データ121を近似した際の誤差とする。
【0064】
近似には、図5に示す数式3を変形した図12に示す数式6を用いる。図12におけるXhat(X^)は、データ行列、すなわち海洋の状態を表現する状態ベクトルの近似結果である。図12における行列U1:rは、低次元化された空間PODモードを並べた行列であり、zは係数ベクトルである。したがって、図12に示す数式6は、空間PODモードの線形結合により、海洋の状態のデータを近似する式である。行列U1:rの空間PODモードが既知であるとすれば、zを適切に求めることにより、データ行列Xを近似することができる。
【0065】
係数ベクトルzを求めるために、観測点位置最適化処理で得られた観測点位置において、元の海洋解析データ121を観測すると仮定すると、それらの関係は図13に示す数式7によって表現される。ここで、yは観測点位置最適化処理で得られた観測点位置における、海洋解析データ121を並べた観測ベクトル、Hは観測点位置を示す観測行列(観測点位置において1となり、それ以外では0となる行列)である。zの近似解zhat(z^)は、行列Cが行フルランクもしくは列フルランクと仮定して、図14に示す数式8により計算できる。ここで、pは観測点数、rは低次元化モデルの空間PODモード数であり、Cは観測行列Hと空間PODモードU1:rの積である。これらの関係より、観測行列Hが決まれば、係数ベクトルzの近似解が求められ、それを基いて元の海洋データ行列Xを近似した行列Xhat(X^)が求められる。
【0066】
したがって、元の海洋データ行列Xと近似行列Xhat(X^)との誤差(近似誤差)を評価することができる。例えば、プロセッサ102は、図15に示す数式9を用いて誤差を算出する。ここで、eは近似誤差、||はフロベニウスノルムを示す。
【0067】
また、観測コストは、例えば、時間、移動距離、燃料費、又は、観測用機材費用等のコストに基づいて計算されてもよいし、それらを組み合わせて計算されてもよい。本実施の形態では、一例として、観測コストを移動距離として説明する。1隻の観測船で得られた全観測点を巡る際の最短移動距離を観測コストとすると、その最短移動距離は最短ハミルトン路問題を動的計画法等で解くことで求められる。また、航路の始点及び終点を観測点として加えることで、より実用的な観測経路及び観測コストを算出することができる。
【0068】
プロセッサ102は、ステップ602で計算した観測点集合Sの近似誤差E、観測コストを保存する(ステップ603)。
【0069】
プロセッサ102は、一時的な観測点集合Sに含まれる観測点にIDを付与する(ステップ604)。IDは1から始まり、観測点集合Sに含まれる観測点数を最大値とした、整数の連番とする。また、ID=iの観測点をp[i]とする。
【0070】
プロセッサ102は、観測点削減のための内部カウンタiを1に初期化する(ステップ605)。
【0071】
プロセッサ102は、一時的な観測点集合S’にSの内容をコピーする(ステップ606)。
【0072】
プロセッサ102は、一時的な観測点集合S’からp[i]を除去する(ステップ607)。
【0073】
プロセッサ102は、一時的な観測点集合S’に含まれる観測点で観測を行ったと仮定し、図12に示す数式6から、図15に示す数式9を用いて近似誤差e[i]を求める(ステップ608)。
【0074】
プロセッサ102は、内部カウンタiをインクリメントする(ステップ609)。
【0075】
プロセッサ102は、内部カウンタiが一時的な観測点集合S’の観測点数を超えたかどうかを判定する(ステップ610)。
【0076】
プロセッサ102は、内部カウンタiが一時的な観測点集合S’の観測点数を超えたと判定した場合(ステップ610:YES)、処理をステップ611に進める。プロセッサ102は、内部カウンタiが一時的な観測点集合S’の観測点数を超えていないと判定した場合(ステップ610:NO)、処理をステップ606に戻し、観測点の削減と、その際の近似誤差の評価を繰り返す。
【0077】
ステップ604からステップ609までの処理により、観測点集合Sから観測点を1点ずつ削減した場合の近似誤差e[i]が求められる。
【0078】
プロセッサ102は、観測点集合Sの近似誤差Eから、観測点を1点ずつ削減した場合の近似誤差e[i]の差の絶対値が最小となるiをi’と設定する(ステップ611)。
【0079】
プロセッサ102は、観測点集合Sからp[i’]を除去する(ステップ612)。
【0080】
ステップ611とステップ612の処理により、元の観測点集合Sから、近似誤差を可能な限り増大させないように、観測点を1点ずつ削減することができる。
【0081】
プロセッサ102は、観測点集合Sが空集合かどうかを判定する(ステップ613)。プロセッサ102は、観測点集合Sが空集合であると判定した場合(ステップ613:YES)、図10に示すステップ501の観測点削減処理を完了する。プロセッサ102は、観測点集合Sが空集合でないと判定した場合(ステップ613:NO)、処理をステップ602に戻す。
【0082】
上述によれば、プロセッサ102は、観測点の個数が異なる複数の集合について、当該集合に含まれる観測点での項目値を基に対象領域の各格子点の項目値を近似して求めた場合の近似誤差と、当該集合に含まれる観測点での観測に要するコスト(例えば観測コスト)とを算出している。これにより、近似誤差とコスト(観測コスト)とを算出することができる。
【0083】
また、上述によれば、プロセッサ102は、所定行数の行を選択することにより決定した観測点の集合によって、観測点での観測に要するコスト(例えば観測コスト)を算出し、観測点の集合から、削除したときの近似誤差の絶対値の変化が最も少ない観測点を削除してコストを算出することを繰り返している。これにより、削除したときの近似誤差の絶対値の変化が最も少ない観測点を削除してコスト(観測コスト)を算出することができる。
【0084】
図10の説明に戻る。
【0085】
プロセッサ102は、トレードオフ可視化として、ステップ501の観測点削減で評価した観測点集合、近似誤差、観測コスト、観測経路の情報を入出力部110のディスプレイ113に表示し、観測計画立案支援を行う(ステップ502)。
【0086】
図16は、実施の形態2に係るトレードオフ可視化の表示例を示す図である。
【0087】
プロセッサ102は、図16に示す近似誤差及び観測コストに関するトレードオフ可視化のGUI701を表示する。GUI701は、地図データ、観測点位置最適化結果、観測経路、及び、近似誤差と観測コストとのトレードオフ散布図等を表示する。例えば、GUI701は、地図及び観測経路表示領域702、観測点位置703、観測経路704、観測経路候補表示領域705、トレードオフ可視化領域706を含む。
【0088】
地図及び観測経路表示領域702には、ストレージ装置120に格納された地図データ122に重ね合わせて、観測点位置703と、その観測コストが最小となる観測経路704とが表示される。観測コストの評価時に、航路の始点及び終点を設定した場合、地図及び観測経路表示領域702には、その航路の始点及び終点も合わせて表示されてよい。
地図及び観測経路表示領域702に表示する地図データの範囲は、地図及び観測経路表示領域702の地図上をマウス112によりドラッグして調整されてもよいし、図9に示すような表示範囲設定領域403(図12では図示しない)に値を入力して調整されてもよい。
【0089】
上述によれば、プロセッサ102は、集合に含まれる観測点を移動体(例えば観測船)によって移動距離が最短になる順に辿る経路(例えば観測経路704)を地図上(例えば地図データ122)に表示している。これにより、ユーザは、地図上における、移動距離が最短になる順にたどる経路を視覚的に認識できる。
【0090】
観測経路候補表示領域705には、観測船が巡回する順に、観測点位置703の座標等を表示する。観測経路候補表示領域705には、観測点位置703に加えて、航路の始点及び終点等の座標が表示されてもよい。
【0091】
トレードオフ可視化領域706には、ステップ501の観測点削減で評価した観測点集合毎の近似誤差及び観測コストが、図16に例示する散布図の形式で表示される。散布図の各プロットは、異なる観測点集合に対応する。ユーザがマウス112を用いてトレードオフ可視化領域706のプロットをピックすると、そのプロットの観測点集合に対応する観測点位置703及び観測経路704が、地図及び観測経路表示領域702に表示されるとともに、観測経路候補表示領域705の表示内容も連動して更新される。
【0092】
上述によれば、プロセッサ102は、集合に入れる観測点の個数を変化させて、コストに対する近似誤差をプロットしたグラフ(例えばトレードオフ可視化領域706に表示される散布図)を表示する。これにより、コストと近似誤差とのトレードオフ関係がグラフとして可視化される。
【0093】
実施の形態2に係る観測計画立案支援装置1を用いることで、近似誤差、すなわち観測効果と観測コストのトレードオフを考慮した観測計画を立てることが可能となる。
【0094】
上述によれば、プロセッサ102は、集合内の観測点またはその個数と、近似誤差と、コストとの関係を表す関係情報を、GUI701として視認可能に表示している。これにより、観測点の削除によって近似誤差とコストがどのように変化するかを視認でき、観測計画の立案が容易になる。
【符号の説明】
【0095】
1…観測計画立案支援装置、100…制御装置、101…メモリ、102…プロセッサ、103…観測計画立案支援プログラム、110…入出力部、111…キーボード、112…マウス、113…ディスプレイ、120…ストレージ装置、121…海洋解析データ、122…地図データ、123…観測点データ、401…GUI、402…地図表示領域、403…表示範囲設定領域、404…観測点位置表示領域、405…観測点位置、701…GUI、702…地図及び観測経路表示領域、703…観測点位置、704…観測経路、705…観測経路候補表示領域、706…コストトレードオフ可視化領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16