(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176520
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】モータ駆動制御システム、モータ駆動制御装置、ファンシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20241212BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02P5/46 K
F04D27/00 101R
F04D27/00 101Y
F04D27/00 D
F04D27/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095090
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
(72)【発明者】
【氏名】田端 剛
(72)【発明者】
【氏名】菊池 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
【テーマコード(参考)】
3H021
5H572
【Fターム(参考)】
3H021AA04
3H021AA05
3H021BA05
3H021BA13
3H021BA15
3H021CA04
3H021DA04
3H021DA21
3H021EA05
3H021EA12
3H021EA14
5H572AA10
5H572DD09
5H572EE04
5H572GG02
5H572HB09
5H572HC07
5H572JJ03
5H572JJ13
5H572JJ16
5H572JJ17
5H572JJ18
5H572KK05
5H572LL32
(57)【要約】
【課題】二重反転式の送風機において風量を増加することなく最大静圧を上昇する。
【解決手段】モータ駆動制御システム110は、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2のそれぞれに対応して設けられた第1のモータ駆動制御装置111及び第2のモータ駆動制御装置112を備え、それぞれ、対応する第1のモータ及び第2のモータのそれぞれの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御部3_1,3_2と、駆動制御信号に基づいて対応する第1のモータ及び第2のモータのそれぞれを駆動するモータ駆動回路2_1,2_2と、を有し、駆動制御部3_1は、第2のモータ駆動制御装置から取得した第2の駆動制御信号に基づいて、第2のモータの負荷の判定を実行する負荷判定部39を有し、第1の駆動制御部は、負荷判定部の判定に応じて第1のモータの回転数を変更する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモータ及び第2のモータのそれぞれに対応して設けられた第1のモータ駆動制御装置及び第2のモータ駆動制御装置を備えたモータ駆動制御システムであって、
前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置は、それぞれ、
対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御部と、
前記駆動制御信号に基づいて対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれを駆動するモータ駆動回路と、を有し、
前記第1のモータ駆動制御装置における前記駆動制御部である第1の駆動制御部は、
前記第2のモータ駆動制御装置から取得した前記駆動制御信号である第2の駆動制御信号に基づいて、前記第2のモータの負荷の判定を実行する負荷判定部を有し、
前記第1の駆動制御部は、前記負荷判定部の判定に応じて前記第1のモータの回転数を変更する、
モータ駆動制御システム。
【請求項2】
前記負荷判定部は、
前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の値と前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の閾値とに基づいて、前記第1のモータの回転数を変更するか否かを判定する、
請求項1に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項3】
前記負荷判定部は、
前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の値が、前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の閾値を超えた場合に、前記第1のモータの回転数を上昇させ、
前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の値が、前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の閾値を超えない場合に、前記第1のモータの回転数を下降させる、
請求項2に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項4】
前記負荷判定部は、
前記第1の駆動制御部で生成された前記駆動制御信号である第1の駆動制御信号と前記第2の駆動制御信号に基づいて、前記第2のモータの負荷の判定を実行する、
請求項1に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項5】
前記負荷判定部は、前記第2のモータ駆動制御装置における前記駆動制御部である第2の駆動制御部から、前記駆動制御信号を取得する、
請求項1に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項6】
前記負荷判定部は、前記第2のモータ駆動制御装置における前記モータ駆動回路である第2のモータ駆動回路から、前記駆動制御信号を取得する、
請求項1に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項7】
複数のモータを備えたモータ駆動制御システムにおいて、複数の前記モータのそれぞれに対応して設けられたモータ駆動制御装置であって、
前記モータ駆動制御装置は、
前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御部と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、
前記モータ駆動制御システムにおいて他のモータの駆動を制御する他のモータ駆動制御装置と通信する通信部と、を有し、
前記駆動制御部は、
前記他のモータ駆動制御装置から取得した前記他のモータの駆動制御信号に基づいて、前記他のモータの負荷の判定を実行する負荷判定部を有し、
前記駆動制御部は、前記負荷判定部の判定に応じて前記モータの回転数を変更する、
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ駆動制御システムと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータそれぞれに取り付けられていて前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転力によって回転可能に構成されたインペラと、を備える
ファンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御システム、モータ駆動制御装置、ファンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータによって駆動される複数のインペラの回転軸中心が軸流方向に揃うようにして配置されていて、互いに異なる方向にそれぞれのインペラを回転させる、いわゆる二重反転式の軸流送風機を備えるファンシステムが知られている。このような二重反転方式の送風機においてモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置において、送風機の風量や静圧を制御するためにモータの回転数を変更する技術が知られている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010―272704号公報
【特許文献2】特許第5821565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の二重反転式の送風機において、モータの回転速度は、所望の静圧・風量特性曲線(PQ曲線)を満たすように変化させる。つまり、従来の二重反転式の送風機のモータを制御するモータ駆動制御装置では、送風機の最大静圧を上昇させる場合にモータの最高回転数を上昇させるため、その影響で最大風量も同時に増加してしまっていた。従来の二重反転式の送風機のモータを制御するモータ駆動制御装置では、特に、送風機の最大風量を示す時の条件である障害物の無い状態(フリーエアー時)に風量が上昇することが、モータの消費電流の増加に繋がっていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、二重反転式の送風機において風量を増加することなく最大静圧を上昇することができるモータ駆動制御システム、モータ駆動制御装置、ファンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータ駆動制御システムは、第1のモータ及び第2のモータのそれぞれに対応して設けられた第1のモータ駆動制御装置及び第2のモータ駆動制御装置を備えたモータ駆動制御システムであって、前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置は、それぞれ、対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御部と、前記駆動制御信号に基づいて対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれを駆動するモータ駆動回路と、を有し、前記第1のモータ駆動制御装置における前記駆動制御部である第1の駆動制御部は、前記第2のモータ駆動制御装置から取得した前記駆動制御信号である第2の駆動制御信号に基づいて、前記第2のモータの負荷の判定を実行する負荷判定部を有し、前記第1の駆動制御部は、前記負荷判定部の判定に応じて前記第1のモータの回転数を変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るモータ駆動制御システムによれば、二重反転式の送風機において風量を増加することなく最大静圧を上昇することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るモータ駆動制御システムの概要を説明する図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステムの具体的な構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るファンシステムにおける第1送風機及び第2送風機を示す斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態に係るファンシステムを複数用いて構成された送風システムの一例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る第1のモータ駆動制御装置の第1の駆動制御部が行う処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステム、及び、比較例のファンシステムのP-Q(静圧・風量特性)曲線を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステムの具体的な構成の変形例を示す図である。
【
図8】第2の実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステムの具体的な構成の一例を示す図である。
【
図9】第2の実施の形態に係る第1のモータ駆動制御装置の第1の駆動制御部が行う処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。また、以下の実施の形態の概要は、他の実施の形態の概要といかなる組み合わせをすることが可能である。
【0010】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御システム(110)は、第1のモータ(21_1)及び第2のモータ(21_2)のそれぞれに対応して設けられた第1のモータ駆動制御装置(111)及び第2のモータ駆動制御装置(112)を備えたモータ駆動制御システムであって、前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置は、それぞれ、対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれの駆動を制御するための駆動制御信号(Sd_1,Sd_2)を生成する駆動制御部(3_1,3_2)と、前記駆動制御信号に基づいて対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれを駆動するモータ駆動回路(2_1,2_2)と、を有し、前記第1のモータ駆動制御装置における前記駆動制御部である第1の駆動制御部(3_1)は、前記第2のモータ駆動制御装置(112)から取得した前記駆動制御信号である第2の駆動制御信号(Sd_2、S3_2)に基づいて、前記第2のモータの負荷の判定を実行する負荷判定部(39)を有し、前記第1の駆動制御部は、前記負荷判定部の判定に応じて前記第1のモータの回転数を変更する。
【0011】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御システムにおいて、前記負荷判定部は、前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の値(S3_2,S4_2)と前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の閾値とに基づいて、前記第1のモータの回転数を変更するか否かを判定してもよい。
【0012】
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御システムにおいて、前記負荷判定部は、前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の値が、前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の閾値を超えた場合に、前記第1のモータの回転数を上昇させ、前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の値が、前記第2の駆動制御信号に含まれるデューティ比の閾値を超えない場合に、前記第1のモータの回転数を下降させてもよい。
【0013】
〔4〕上記[1]から〔3〕に記載のモータ駆動制御システムにおいて、前記負荷判定部は、前記第1の駆動制御部で生成された前記駆動制御信号である第1の駆動制御信号(Sd_1、S3_2)と前記第2の駆動制御信号に基づいて、前記第2のモータの負荷の判定を実行してもよい。
【0014】
〔5〕上記[1]から〔4〕に記載のモータ駆動制御システムにおいて、前記負荷判定部は、前記第2のモータ駆動制御装置における前記駆動制御部である第2の駆動制御部(3_2)から、前記駆動制御信号(S3_2)を取得してもよい。
【0015】
〔6〕上記[1]から〔4〕に記載のモータ駆動制御システムにおいて、前記負荷判定部は、前記第2のモータ駆動制御装置における前記モータ駆動回路である第2のモータ駆動回路(2_2)から、前記駆動制御信号(Sd_2)を取得してもよい。
【0016】
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(111)は、複数のモータ(21_1,21_2)を備えたモータ駆動制御システム(110)において、前記複数のモータのそれぞれに対応して設けられたモータ駆動制御装置であって、前記モータ駆動制御装置は、前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号(Sd_1)を生成する駆動制御部(3_1)と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路(2_1)と、前記モータ駆動制御システムにおける他のモータ駆動制御装置(112)と通信する通信部(35_1)と、を有し、前記駆動制御部は、前記他のモータ駆動制御装置から取得した前記他のモータの駆動制御信号(Sd_2)に基づいて、前記他のモータの負荷の判定を実行する負荷判定部(39)、を有し、前記駆動制御部は、前記負荷判定部の判定に応じて前記モータの回転数を変更する。
【0017】
〔8〕上記〔1〕から〔6〕に記載のモータ駆動制御システムと、第1のモータ(21_1)及び第2のモータ(21_2)と、前記第1のモータ及び前記第2のモータそれぞれに取り付けられていて前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転力によって回転可能に構成されたインペラ(62_1,62_2)と、を備えるファンシステム(1)として構成してもよい。
【0018】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0019】
≪第1の実施の形態≫
まず、本実施の形態の具体的な構成を説明する前に、モータ駆動制御システムの概要について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施の形態に係るモータ駆動制御システムの概要を説明する図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態では、2つのファンを2つのモータにより駆動するためのモータ駆動制御システム110を例に挙げて説明する。本実施の形態のモータ駆動制御システム110は、モータ駆動回路2_1及び第1の駆動制御部3_1を有する第1のモータ駆動制御装置111と、モータ駆動回路2_2及び第2の駆動制御部3_2を有する第2のモータ駆動制御装置112と、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とを互いに通信を行うために接続する通信線45とを備えている。
【0022】
モータ駆動制御システム110は、第1のモータ駆動制御装置111を構成する集積回路装置(IC)と第2のモータ駆動制御装置112を構成する集積回路装置(IC)との2つの集積回路装置(IC)によって構成されている。
【0023】
図2は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステム1の具体的な構成の一例を示す図である。
図3は、本実施の形態に係るファンシステム1における第1送風機11及び第2送風機12を示す斜視図である。
【0024】
図2及び
図3に示されるように、ファンシステム1は、上述したモータ駆動制御システム110を搭載しており、インペラ62_1,62_2(第1のインペラ62_1,第2のインペラ62_2)及びこれを回転させるモータ21_1,21_2(第1のモータ21_1,第2のモータ21_2)をそれぞれ有する2つの送風機11、12(第1送風機11、第2送風機12)を備える送風装置として構成されている。本実施の形態において、ファンシステム1は、アウトレット側(排気側)の第1送風機11と、インレット側(吸気側)の第2送風機12とを有している。
【0025】
第1送風機11と第2送風機12とは、それぞれ、互いのインペラ62_1,62_2の回転軸中心が軸流方向に揃うようにして配置されている軸流ファンである。第1送風機11と第2送風機12とは、互いに異なる方向にそれぞれのインペラ62_1,62_2を回転させる。換言すると、軸方向に見て、第1送風機11のインペラ62_1の回転方向は、第2送風機12のインペラ62_2の回転方向とは逆の方向である。すなわち、ファンシステム1は、いわゆる二重反転式の送風機である。本実施の形態において、ファンシステム1は、例えば、電子計算機やOA機器などの電子機器の内部で発生する熱を風力によって外部へ排出することにより電子機器の内部を冷却するファンモータである。
【0026】
第1送風機11は、第1送風機11の第1のインペラ62_1を回転させる第1のモータ21_1と、第1のモータ21_1を駆動する第1のモータ駆動制御装置111とを有して構成されている。第1のモータ21_1のロータの回転軸に、第1のインペラ62_1が取り付けられている。
【0027】
第2送風機12は、第2送風機12の第2のインペラ62_2を回転させる第2のモータ21_2と、第2のモータ21_2を駆動する第2のモータ駆動制御装置112とを有して構成されている。第2のモータ21_2のロータの回転軸に、第2のインペラ62_2が取り付けられている。
【0028】
図4は、本実施の形態に係るファンシステム1を複数用いて構成された送風システム801の一例を示す図である。
【0029】
図4に示されるように、ファンシステム1は、複数台まとめて用いることができる。例えば、送風システム801は、1つの制御装置800と、4つのファンシステム1(ファンシステム1A,1B,1C,1D)とを有している。ファンシステム1は、それぞれ、制御装置800に接続されている。ファンシステム1それぞれの第1送風機11及び第2送風機12は、制御装置800から入力される速度指令信号Scに基づいて、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2を駆動させる。
【0030】
送風システム801は、例えば、冷却対象である電子計算機などの電子機器900に対して、それぞれのファンシステム1から風を送風する。電子機器900は、電源装置や、CPUや、メモリや、記憶装置や、周辺装置などで構成されている。電子機器900は、送風システム801を構成するファンシステム1から電子機器900の内部に送られる風により、冷却され、正常に動作する状態を維持することができる。
図2から
図4に示すように、本実施の形態において、ファンシステム1は、例えば、電子計算機やOA機器などの電子機器の内部で発生する熱を風力によって外部へ排出することにより電子機器の内部を冷却するファンモータである。
【0031】
以下、第1のインペラ62_1と第2のインペラ62_2とを区別せず、インペラ62_1,62_2と表記することがある。第1のモータ21_1と第2のモータ21_2とを区別せず、モータ21_1,21_2と表記することがある。また、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とを区別せず、モータ駆動制御装置111,112と表記することがある。
【0032】
本実施の形態において、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2は、例えば3相のブラシレスモータである。各モータ駆動制御装置111,112は、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2のコイルに周期的に駆動電流を流すことで、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2を回転させる。
【0033】
第1送風機11に用いられる第1のモータ駆動制御装置111と第2送風機12に用いられる第2のモータ駆動制御装置112とは、互いに通信を行うために通信線45により接続されている。第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112と通信線45とは、モータ駆動制御システム110として形成されている。
【0034】
ファンシステム1は、外部装置の一例である制御装置800に接続されている。本実施の形態において、制御装置800は、各送風機11,12に、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2の回転速度(回転数)に対応する速度指令信号Scを出力する。速度指令信号Scは、各モータ駆動制御装置111、112に入力される。各モータ駆動制御装置111,112は、速度指令信号Scに対応する回転数で第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2を駆動することができる。なお、各モータ駆動制御装置111,112は、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2に対応する回転数信号S(例えば、FG信号など)を制御装置800に出力する。制御装置800は、回転数信号Sに基づいて、各送風機11,12の駆動状態を検知し、それに応じて、出力する速度指令信号Scの制御などを行うことができる。
【0035】
第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112は、第1のモータ駆動制御装置111のみに負荷判定部39を設けていること以外は、同一のハードウエア構成を有している。本実施の形態において、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112は、後述のように負荷判定部39や互いに通信を行う部分の具体的な動作などを除いて、ほぼ同一の動作を行う。以下では、第1のモータ駆動制御装置111の構成と第2のモータ駆動制御装置112とに共通する構成要素については、代表して第1のモータ駆動制御装置111に基づいて説明し、異なる部分についてはそれぞれ説明する。
【0036】
各モータ駆動制御装置111,112は、モータ駆動回路2_1,2_2と、駆動制御部3_1,3_2と、を有している。なお、
図2に示されているモータ駆動制御装置111,112の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置111,112は、
図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0037】
本実施の形態において、各モータ駆動制御装置111,112は、それぞれ、駆動制御部3_1,3_2及びモータ駆動回路2_1,2_2がパッケージ化された個別の集積回路装置(IC)である。なお、個別の集積回路装置(IC)として構成された各モータ駆動制御装置111,112が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒に各モータ駆動制御装置111,112がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。また、駆動制御部3_1,3_2とモータ駆動回路2_1,2_2が異なる集積回路装置としてパッケージ化されていてもよい。
【0038】
モータ駆動回路2_1,2_2は、それぞれ、第1の駆動制御部3_1と第2の駆動制御部3_2とにより生成された駆動制御信号Sd_1,Sd_2に基づいて、駆動対象のモータ21_1,21_2を駆動する。
【0039】
モータ駆動回路2_1,2_2は、インバータ回路及びプリドライブ回路を有する。モータ駆動回路2_1,2_2は、駆動制御部3_1,3_2から出力された駆動制御信号Sd_1,Sd_2に基づいて、モータ21_1,21_2に駆動信号を出力し、モータ21_1,21_2を駆動させる。
【0040】
プリドライブ回路は、駆動制御部3_1,3_2による制御に基づいて、インバータ回路を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路に出力する。インバータ回路は、プリドライブ回路から出力された出力信号に基づいてモータ21_1,21_2に駆動信号を出力し、モータ21_1,21_2が備えるコイルに通電する。
【0041】
駆動制御部3_1,3_2には、制御装置800から出力された速度指令信号Sc_1,Sc_2が入力される。また、駆動制御部3_1,3_2は、制御装置800に回転数信号S_1,S_2を出力する。
【0042】
速度指令信号Sc_1,Sc_2は、モータ21_1,21_2の回転速度に関する信号である。例えば、速度指令信号Sc_1,Sc_2は、モータ21_1,21_2の目標回転速度に対応するPWM(パルス幅変調)信号である。換言すると、速度指令信号Sc_1,Sc_2は、モータ21_1,21_2の回転速度の目標値に対応する速度指令情報である。なお、速度指令信号Sc_1,Sc_2として、クロック信号が入力されてもよい。
【0043】
また、本実施の形態において、駆動制御部3_1,3_2には、モータ21_1,21_2から、3つのホール信号(位置検出信号)Hu,Hv,Hwが入力される。ホール信号Hu,Hv,Hwは、例えば、モータ21_1,21_2に配置された3つのホール(HALL)素子25u,25v,25wの出力信号である。ホール信号Hu,Hv,Hwは、モータ21_1のロータの回転に対応する信号である。駆動制御部3_1,3_2は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ21_1,21_2の回転状態を検出し、モータ21_1,21_2の駆動を制御する。すなわち、駆動制御部3_1,3_2は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ21_1,21_2のロータの回転位置を検出し、モータ21_1,21_2の駆動を制御する。また、駆動制御部3_1,3_2は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ21_1,21_2のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を得て、モータ21_1,21_2の駆動を制御することができる。
【0044】
ホール信号Hu,Hv,Hwを出力する3つのホール素子25_1,25_2(
図2においては、簡略化のため、モータ21_1,21_2について1つのホール素子25_1,25_2が示されている)は、例えば、互いに略等間隔(隣り合うものと120度の間隔で)でモータ21_1,21_2の回転子の回りに配置されている。3つのホール素子25は、それぞれ、モータ21_1,21_2のロータの磁極を検出し、ホール信号Hu,Hv,Hwを出力する。
【0045】
なお、駆動制御部3_1,3_2には、このようなホール信号Hu,Hv,Hwに加えて、又はホール信号Hu,Hv,Hwに代えて、モータ21_1,21_2の回転状態に関する他の情報が入力されるように構成されていてもよい。例えば、モータ21_1,21_2の回転子の回転に対応するFG信号として、回転子の側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)が入力されるようにしてもよい。また、モータ21_1,21_2の各相(U、V、W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路の検出結果に基づいてモータ21_1,21_2の回転状態が検知されるように構成されていてもよい。エンコーダやレゾルバなどを設け、それによりモータ21_1,21_2の回転速度等の情報が検出されるようにしてもよい。
【0046】
駆動制御部3_1,3_2は、入力される信号に基づいて、モータ21_1,21_2を駆動させるための駆動制御信号Sd_1,Sd_2を出力する。具体的には、駆動制御部3_1,3_2は、速度指令信号Sc_1,Sc_2及びホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、駆動制御信号Sd_1,Sd_2をモータ駆動回路2_1,2_2に出力する。
【0047】
駆動制御部3_1,3_2は、モータ21_1,21_2を駆動させるための駆動制御信号Sd_1,Sd_2をモータ駆動回路2_1,2_2に出力し、モータ21_1,21_2の回転制御を行う。モータ駆動回路2_1,2_2は、駆動制御信号Sd_1,Sd_2に基づいて、モータ21_1,21_2に駆動信号を出力してモータ21_1,21_2を駆動させる。
【0048】
以上説明したモータ21_1の駆動を制御する駆動制御信号Sd_1を生成する処理を実現するために、第1の駆動制御部としての駆動制御部3_1は、モータ駆動制御処理部30_1と、通信部35_1と、負荷判定部39とを機能部として有している。駆動制御部3_1は、これらの機能部により、モータ駆動制御機能や負荷判定機能を実現している。また、以上説明したモータ21_2の駆動を制御する駆動制御信号Sd_2を生成する処理を実現するために、第2の駆動制御部としての駆動制御部3_2は、モータ駆動制御処理部30_2と、通信部35_2とを機能部として有している。駆動制御部3_2は、これらの機能部により、モータ駆動制御機能を実現している。このように、駆動制御部3_1と駆動制御部3_2とは、駆動制御部3_1にのみ負荷判定部39が設けられている以外は、ほぼ同じ構成を有している。
【0049】
これらの駆動制御部3_1,3_2における機能部は、例えば、プログラム処理装置によって実現されている。例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、及び入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)において、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいてA/D変換回路や入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、上述した機能ブロックが実現されている。
【0050】
モータ駆動制御処理部30_1,30_2は、それぞれ、モータを駆動制御するための駆動制御信号Sd_1,Sd_2を生成するモータの駆動制御処理を実行する処理部である。モータ駆動制御処理部30_1,30_2は、それぞれ、例えば、外部装置からの駆動命令に基づいて、モータ駆動回路2_1,2_2に対してそれぞれ駆動制御信号Sd_1,Sd_2を生成する、モータの駆動制御処理を実行する。
【0051】
モータ駆動制御処理部30_1,30_2は、回転数算出部31_1,31_2と、速度指令解析部32_1,32_2と、PWM指令部33_1,33_2と、PWM信号生成部34_1,34_2とを機能部として有している。
【0052】
回転数算出部31_1,31_2には、3つのホール素子25_1,25_2から出力されたホール信号Hu,Hv,Hwが入力される。回転数算出部31_1,31_2は、入力されたホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、各相とモータ21_1,21_2のロータとの位置関係を示す位置信号を出力する。また、回転数算出部31_1,31_2は、ホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、位置信号の周期に対応する実回転数情報を生成して出力する。すなわち、回転数算出部31_1,31_2は、モータ21_1,21_2のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を出力する。
図2においては、位置信号と実回転数情報とを合わせて、実回転信号S2_1,S2_2が示されている。実回転信号S2_1,S2_2は、PWM指令部33_1,33_2に出力される。
【0053】
回転数算出部31_1,31_2は、生成した実回転数情報を回転数信号S_1,S_2として制御装置800に出力することができる。
【0054】
速度指令解析部32_1,32_2には、速度指令信号Sc_1,Sc_2が入力される。速度指令解析部32_1,32_2は、速度指令信号Sc_1,Sc_2に基づいて、モータ21_1,21_2の目標回転数を示す目標回転数信号S1_1,S1_2を出力する。目標回転数信号S1_1,S1_2は、速度指令信号Sc_1,Sc_2に対応するデューティ比を示すPWM信号である。目標回転数信号S1_1,S1_2は、PWM指令部33_1,33_2に出力される。
【0055】
PWM指令部33_1,33_2には、回転数算出部31_1,31_2から出力された実回転信号S2_1,S2_2と、速度指令解析部32_1,32_2から出力された目標回転数信号S1_1,S1_2とが入力される。PWM指令部33_1,33_2は、実回転信号S2_1,S2_2と目標回転数信号S1_1,S1_2とに基づいて、実回転信号S2_1,S2_2が目標回転数信号S1_1,S1_2に一致するように、いわゆるフィードバック制御処理により調整したPWM設定指示信号S3_1,S3_2を生成して出力する。PWM設定指示信号S3_1,S3_2は、PWM信号生成部34_1,34_2に出力される。PWM設定指示信号S3_1,S3_2は、駆動制御信号Sd_1,Sd_2を出力するためのデューティ比を示す信号である。
【0056】
また、PWM指令部33_1には、後述のように通信処理部37_1から出力された調整信号S9_1が入力される。PWM指令部33_1は、通信処理部37_1から調整信号S9_1が入力されると、入力された調整信号S9_1の内容に応じてPWM設定指示信号S3_1のデューティ比を調整して出力する。
【0057】
PWM信号生成部34_1,34_2には、PWM設定指示信号S3_1,S3_2が入力される。PWM信号生成部34_1,34_2は、PWM設定指示信号S3_1,S3_2に基づいて、モータ駆動回路2_1,2_2を駆動させるためのPWM信号S4_1,S4_2を生成する。PWM信号S4_1,S4_2は、例えば、デューティ比がPWM設定指示信号S3_1,S3_2と同一となる信号である。換言すると、PWM信号S4_1,S4_2は、PWM設定指示信号S3_1,S3_2に対応するデューティ比を有する信号である。
【0058】
PWM信号生成部34_1,34_2から出力されたPWM信号S4_1,S4_2は、駆動制御信号Sd_1,Sd_2として駆動制御部3_1,3_2からモータ駆動回路2_1,2_2に出力される。これにより、モータ駆動回路2_1,2_2からモータ21_1,21_2に駆動信号が出力され、モータ21_1,21_2が駆動される。
【0059】
負荷判定部39が設けられていない第2のモータ駆動制御装置112のPWM指令部33_2が生成したPWM設定指示信号S3_2は、通信部35_2に出力される。通信部35_2に出力されたPWM設定指示信号S3_2は、通信部35_1,35_2により、通信線45を介して、第1のモータ駆動制御装置111の負荷判定部39に送られる。
【0060】
上述したように、負荷判定部39は、第1のモータ駆動制御装置111の駆動制御部3_1にのみ設けられている構成である。負荷判定部39は、少なくとも第2のモータ駆動制御装置112の駆動制御信号Sd_2、具体的には、PWM指令部33_2が出力するデューティ比を示す信号であるPWM設定指示信号S3_2に基づいて、モータ21_2の負荷の判定を実行する。負荷判定部39は、モータ21_2の負荷に応じて、モータ21_1の回転数を変更するか否かを判定する。
【0061】
負荷判定部39による、第2のモータ21_2の負荷を判定する処理は、例えば以下のように行われる。負荷判定部39は、PWM設定指示信号S3_2のデューティ比とこのデューティ比の所定の閾値とに基づいて、第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を超えているか否か、すなわち、第2のモータ21_2に所定の負荷が加わっているか否かを判定する。PWM設定指示信号S3_2のデューティ比の閾値は、第1のモータ駆動制御装置111の駆動制御部3_1が有するデータテーブルに格納されている。
【0062】
具体的には、負荷判定部39は、PWM設定指示信号S3_2が示すデューティ比が、デューティ比の閾値を超える場合に、モータ21_2に所定の負荷がかかっていると判定する。この場合に、負荷判定部39は、PWM指令部33_1から出力されるPWM設定指示信号S3_1のデューティ比を変更してモータ21_1の回転数を上昇させるための調整信号S9_1を、通信処理部37_1を介してPWM指令部33_1に出力する。PWM指令部33_1は、調整信号S9_1によりPWM設定指示信号S3_1に含まれるデューティ比を変更する(上げる)ことができる。このため、ファンシステム1では、モータ21_1の回転数を上昇させてファンシステム1から出力される静圧を上昇させることができる。
【0063】
一方、負荷判定部39は、PWM設定指示信号S3_2が示すデューティ比が、デューティ比の閾値を超えない場合に、モータ21_2の負荷が低下したと判定する。この場合に、負荷判定部39は、PWM指令部33_1から出力されるPWM設定指示信号S3_1のデューティ比を変更してモータ21_1の回転数を下降させるための調整信号S9_1を、通信処理部37_1を介してPWM指令部33_1に出力する。PWM指令部33_1は、調整信号S9_1によりPWM設定指示信号S3_1に含まれるデューティ比を変更する(下げる)ことができる。このため、ファンシステム1では、モータ21_1の回転数を下降させてファンシステム1から出力される静圧を下降させることができる。
【0064】
通信部35_1,35_2は、通信線45を介して通信を行う処理部である。通信部35_1,35_2は、送受信部36_1,36_2と、通信処理部37_1,37_2とを機能部として有している。
【0065】
送受信部36_1,36_2は、通信を行うインターフェースである。第1のモータ駆動制御装置111の送受信部36_1は、第2のモータ駆動制御装置112の送受信部36_2と、通信線45を介して接続されている。通信線45は、1本でも複数本であってもよく、通信は、シリアル通信であってもパラレル通信であってもよい。第1のモータ駆動制御装置111の送受信部36_1は、第2のモータ駆動制御装置112の送受信部36_2、及び、上位装置の一例である制御装置800と通信を行うことができる。第1のモータ駆動制御装置111における通信に関する制御は、通信処理部37_1によって行われ、第2のモータ駆動制御装置112における通信に関する制御は、通信処理部37_2によって行われる。
【0066】
通信処理部37_1,37_2は、送受信部36_1,36_2の動作を制御し、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112との間の通信を制御する。すなわち、第1のモータ駆動制御装置111の通信処理部37_1は、第1のモータ駆動制御装置111の送受信部36_1を制御し、第2のモータ駆動制御装置112との通信を行う。第2のモータ駆動制御装置112の通信処理部37_2は、第2のモータ駆動制御装置112の送受信部36_2を制御し、第1のモータ駆動制御装置111との通信を行う。
【0067】
通信処理部37_1,37_2は、例えば、PWM指令部33_2が出力したPWM設定指示信号S3_2を、第1のモータ駆動制御装置111の送受信部36_1に送信する処理を仲介する。通信処理部37_1は、具体的には、第2のモータ駆動制御装置112に対してPWM設定指示信号S3_2取得の要求を送り、通信処理部37_2において取得したPWM設定指示信号S3_2を取得する。
【0068】
第1のモータ駆動制御装置111の通信処理部37_1は、送受信部36_1を介して負荷判定部39が負荷判定結果に基づいて生成して出力した調整信号S9_1を、PWM指令部33_1に出力する。
【0069】
本実施の形態において、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とは、第1のモータ駆動制御装置111をマスター、第2のモータ駆動制御装置112をスレーブとして、互いの通信を行うように構成されていてもよい。例えば、第1のモータ駆動制御装置111の通信処理部37_1は、送受信部36_1を介して、第2のモータ駆動制御装置112のPWM指令部33_2に対するPWM設定指示信号S3_2の問い合わせを第2のモータ駆動制御装置112に対して行う。第2のモータ駆動制御装置112の通信処理部37_2は、送受信部36_2を介して第1のモータ駆動制御装置111からの問い合わせを受信すると、問い合わせへのレスポンスとして、第2のモータ駆動制御装置112の状態、すなわち第2のモータ21_2の駆動状態に関するメッセージとしてのPWM設定指示信号S3_2を、送受信部36_2を介して第1のモータ駆動制御装置111に対して送信する。その他、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とは、例えば第1のモータ駆動制御装置111から第2のモータ駆動制御装置112に対して所定の指示コマンドを送信し、第2のモータ駆動制御装置112から第1のモータ駆動制御装置111に対して指示コマンドに対する応答を送信するというようにして、互いに通信を行うことができる。
【0070】
[モータ駆動制御システムの動作]
次に、以上説明した構成を備えるモータ駆動制御システム110の動作を、フローチャートに基づいて説明する。
【0071】
図5は、第1の実施の形態に係る第1のモータ駆動制御装置111の第1の駆動制御部3_1が行う処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0072】
モータ駆動制御システム110において、第1のモータ駆動制御装置111の第1の駆動制御部3_1における負荷判定部39は、通信部35_1,35_2を介して、第2のモータ駆動制御装置112の第2の駆動制御部3_2におけるPWM指令部33_2から、第2のモータ21_2のデューティ比としてPWM設定指示信号S3_2を取得する(ステップS101)。
【0073】
負荷判定部39は、PWM指令部33_2から取得したPWM設定指示信号S3_2のデューティ比と、デューティ比の所定の閾値とを比較して、第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS102)。第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を超えていない場合に(S102:NO)、負荷判定部39は、S101及びS102の処理を繰り返す。
【0074】
第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を超えている場合に(S102:YES)、負荷判定部39は、調整信号S9_1を、通信処理部37_1を介してPWM指令部33_1に出力する。PWM指令部33_1は、調整信号S9_1に応じて、PWM設定指示信号S3_1のデューティ比を変更してモータ21_1の回転数を上昇させる(ステップS103)。
【0075】
負荷判定部39は、通信部35_1,35_2を介して、第2のモータ駆動制御装置112の第2の駆動制御部3_2におけるPWM指令部33_2から、回転数を変更した後の第2のモータ21_2のデューティ比としてPWM設定指示信号S3_2を取得する(ステップS104)。
【0076】
負荷判定部39は、PWM指令部33_2から取得したPWM設定指示信号S3_2のデューティ比と、デューティ比の所定の閾値とを比較して、第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を下回っているか否かを判定する(ステップS105)。第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を下回っていない場合に(S105:NO)、負荷判定部39は、S104及びS105の処理を繰り返す。
【0077】
一方、第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を下回っている場合に(S105:YES)、負荷判定部39は、第1のモータ21_1の回転数を下降させるための調整信号S9_1を、通信処理部37_1を介してPWM指令部33_1に出力する。PWM指令部33_1は、調整信号S9_1に応じて、PWM設定指示信号S3_1のデューティ比を変更してモータ21_1の回転数を下降させる(ステップS106)。回転数を変更した後、負荷判定部39は、S101の処理に戻る。
【0078】
以上説明したように、ファンシステム1における第1のモータ駆動制御装置111の第1の駆動制御部3_1により実現される負荷判定部39は、PWM指令部33_2から取得したPWM設定指示信号S3_2のデューティ比と、デューティ比の所定の閾値とを比較して、PWM設定指示信号S3_1を閾値に従って変化させる。ファンシステム1において、インレット側の第2のモータ21_2の負荷を示すデューティ比に基づいてアウトレット側の第1のモータ21_1の回転数を上昇または下降させることで、第1のモータ駆動制御装置111によれば、モータ21_1の回転数を問わず風量を変化させることなく最大静圧を変化、すなわち上昇または下降することができる。
【0079】
図6は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステム1、及び、比較例のファンシステムのP-Q(静圧・風量特性)曲線を示す図である。
図6において、縦軸に静圧P[Pa]、横軸に風量Q[m
3/min]を示す。
【0080】
図6において、実線で示す曲線が、ファンシステム1によるP-Q曲線である。
図6において、二点鎖線で示す曲線が第1の比較例のファンシステムによるP-Q曲線である。
図6において、一点鎖線で示す曲線が第2の比較例のファンシステムによるP-Q曲線である。第1及び第2の比較例のファンシステムは、第1のモータ駆動制御装置111における第1の駆動制御部3_1に、負荷判定部39を有しない点が、ファンシステム1と相違する。第1の比較例のファンシステムのP-Q曲線は、インレット側の送風機が18000rpm、アウトレット側の送風機が13000rpmで、それぞれ回転した場合の線図である。第2の比較例のファンシステムのP-Q曲線は、インレット側の送風機が18000rpm、アウトレット側の送風機が16000rpmで、それぞれ回転した場合の線図である。
【0081】
図6に示すように、第1及び第2の比較例のファンシステムと比較して、ファンシステム1によれば、最大風量Qを増加させることなく最大静圧Pを大きくするP-Q曲線の特性を得ることができる。また、ファンシステム1によれば、最大風量Qを増加させずに最大静圧Pを大きくすることができるため、モータの駆動電流を低減することができる。
【0082】
図7は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステム10の具体的な構成の変形例を示す図である。
図7に示すファンシステム10において、下記の構成が先に説明したファンシステム1と異なる。
【0083】
すなわち、ファンシステム1では、第2のモータ21_2の負荷を判定する負荷判定部39は、第2のモータ21_2のデューティ比を示す信号として、PWM指令部33_2が出力したPWM設定指示信号S3_2を、通信部35_2と通信部35_1とを介して取得していた。
【0084】
一方、ファンシステム10では、負荷判定部39は、第2のモータ21_2のデューティ比を示す信号として、モータ駆動回路2_2が出力した駆動制御信号Sd_2を、通信部35_2と通信部35_1とを介して取得する。上述したように、駆動制御信号Sd_2は、駆動制御部3_2からモータ駆動回路2_2に出力される信号である。駆動制御信号Sd_2は、PWM信号生成部34_2から出力されたPWM信号S4_2であり、PWM設定指示信号S3_2に対応するデューティ比を有する信号である。このため、ファンシステム10における負荷判定部39は、第2のモータ21_2の負荷を判定するために、駆動制御信号Sd_2を取得しても、先に説明したファンシステム1の負荷判定部39と同様の処理を行うことができる。
【0085】
≪第2の実施の形態≫
次に、本発明の第2の実施の形態に係るモータ駆動制御システムについて、先に説明した第1の実施の形態に係るモータ駆動制御システムとの相違点を中心に説明する。
【0086】
図8は、第2の実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステム20の具体的な構成の一例を示す図である。
図8に示すファンシステム20において、下記の構成が先に説明したファンシステム1,10と異なる。
【0087】
すなわち、ファンシステム1,10では、負荷判定部39は、第2のモータ21_2のデューティ比を示す信号として、PWM指令部33_2が出力したPWM設定指示信号S3_2またはモータ駆動回路2_2が出力した駆動制御信号Sd_2を、通信部35_2と通信部35_1とを介して取得して、第2のモータ21_2の負荷を判定していた。
【0088】
一方、ファンシステム20では、負荷判定部39は、第2のモータ21_2のデューティ比を示す信号に加えて、第1のモータ21_1のデューティ比を示す信号として、PWM指令部33_1が出力したPWM設定指示信号S3_1を取得して、第1のモータ21_1の負荷と第2のモータ21_2の負荷とを判定して、モータ21_1,21_2の負荷に応じて、モータ21_1の回転数を変更するか否かを判定する。
【0089】
図9は、第2の実施の形態に係る第1のモータ駆動制御装置の第1の駆動制御部が行う処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0090】
モータ駆動制御システム110において、第1のモータ駆動制御装置111の第1の駆動制御部3_1における負荷判定部39は、通信部35_1,35_2を介して、第2のモータ駆動制御装置112の第2の駆動制御部3_2におけるPWM指令部33_2から、第2のモータ21_2のデューティ比としてPWM設定指示信号S3_2を取得する(ステップS201)。
【0091】
負荷判定部39は、PWM指令部33_2から取得したPWM設定指示信号S3_2のデューティ比と、デューティ比の所定の閾値とを比較して、第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS202)。第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を超えていない場合に(S202:NO)、負荷判定部39は、S201及びS202の処理を繰り返す。
【0092】
第2のモータ21_2のデューティ比が閾値を超えている場合に(S202:YES)、負荷判定部39は、調整信号S9_1を、通信処理部37_1を介してPWM指令部33_1に出力する。PWM指令部33_1は、調整信号S9_1に応じて、PWM設定指示信号S3_1のデューティ比を変更してモータ21_1の回転数を上昇させる(ステップS203)。
【0093】
負荷判定部39は、通信部35_1を介して、第1の駆動制御部3_1におけるPWM指令部33_1から、第1のモータ21_1のデューティ比としてPWM設定指示信号S3_1を取得する(ステップS204)。
【0094】
負荷判定部39は、PWM指令部33_1から取得したPWM設定指示信号S3_1のデューティ比と、デューティ比の所定の閾値とを比較して、第1のモータ21_1のデューティ比が閾値を下回っているか否かを判定する(ステップS205)。第1のモータ21_1のデューティ比が閾値を下回っていない場合に(S205:NO)、負荷判定部39は、S204及びS205の処理を繰り返す。
【0095】
第1のモータ21_1のデューティ比が閾値を下回っている場合に(S205:YES)、負荷判定部39は、第1のモータ21_1の回転数を下降させるための調整信号S9_1を、通信処理部37_1を介してPWM指令部33_1に出力する。PWM指令部33_1は、調整信号S9_1に応じて、PWM設定指示信号S3_1のデューティ比を変更してモータ21_1の回転数を下降させる(ステップS206)。回転数を変更した後、負荷判定部39は、S201の処理に戻る。
【0096】
以上説明したように、ファンシステム20における第1のモータ駆動制御装置111の第1の駆動制御部3_1により実現される負荷判定部39は、PWM指令部33_2から取得したPWM設定指示信号S3_2のデューティ比と、デューティ比の所定の閾値とを比較して、PWM設定指示信号S3_1を閾値に従って変化させる。ファンシステム20において、インレット側の第2のモータ21_2の負荷を示すデューティ比に基づいてアウトレット側の第1のモータ21_1の回転数を上昇または下降させる。また、PWM指令部33_1から取得したPWM設定指示信号S3_1のデューティ比と、デューティ比の所定の閾値とを比較して、PWM設定指示信号S3_1を閾値に従って変化させる。このようにすることで、第1のモータ駆動制御装置111によれば、インレット側のモータ21_2の負荷に加えてアウトレット側のモータ21_1の負荷を判定して、モータ21_1の回転数を問わず風量を変化させることなく最大静圧を変化、すなわち上昇または下降することができる。第2の実施の形態に係るファンシステム20によれば、先に説明したファンシステム1と同様に、第1及び第2の比較例のファンシステムと比較して(
図6参照)、最大風量Qを増加させることなく最大静圧Pを大きくするP-Q曲線の特性を得ることができる。また、ファンシステム20によれば、ファンシステム1と同様に、最大風量Qを増加させずに最大静圧Pを大きくすることができるため、モータの駆動電流を低減することができる。
【0097】
《実施の形態の拡張》
モータ駆動制御システムやモータ駆動制御システムを搭載したファンシステムの回路構成は、上述の実施の形態に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。上記の実施の形態の特徴点が部分的に組み合わされて送風機やそのモータ駆動制御装置が構成されていてもよい。上記の実施の形態において、いくつかの構成要素が設けられていなくてもよく、あるいは、いくつかの構成要素が他の態様で構成されていてもよい。
【0098】
送風システム801は、
図4に示すものに限定されず、4つ以上のファンシステム1を有するものであってもよい。モータ駆動制御システムを適用したファンシステムは、各送風機に対応したモータ駆動制御装置を備えたものを用いることができる。例えば、
図4に示す送風システム801は、4つのファンシステム1A,1B,1C,1Dを有しているので、モータ駆動制御システム110は、4つのファンシステム1A,1B,1C,1Dそれぞれに設けられている。
【0099】
以上の実施の形態では、第1送風機のみが第2送風機との通信結果に基づいて第1のモータの駆動を制御し、第2送風機は第1送風機との通信結果にかかわらずに第2のモータの駆動を制御する例を示したが、第2送風機のみが第1送風機との通信結果に基づいて第2のモータの駆動を制御し、第1送風機は第2送風機との通信結果にかかわらずに第1のモータの駆動を制御ようにしてもよい。
【0100】
第1のモータ駆動制御装置から第2送風機への問い合わせは、必ずしも定期的に行われるものに限られず、例えば不定期に行われるようにしてもてもよい。例えば、あるときには第1の間隔(例えば、100ミリ秒)をあけて次の問い合わせが行われ、その後の問い合わせが行われるまでの間隔が、第2の間隔(例えば、200ミリ秒)、第3の間隔(例えば、300ミリ秒)と変化するというように、問い合わせの間隔が変わることがあってもよい。
【0101】
第1送風機と第2送風機との通信方式や通信プロトコルは、上述の実施の形態の内容に限定されない。第1送風機と第2送風機とのいずれが通信におけるマスターとなってもよい。第1送風機と第2送風機とが、互いに無線通信を行うように構成されていてもよい。この場合、通信線が設けられていなくてもよい。
【0102】
第1送風機と第2送風機は、通信部35を設けなくてもよい。例えば、第1送風機のモータ駆動制御装置111の負荷判定部39は、第2送風機のモータ駆動制御装置112のモータ駆動回路2_2が出力した駆動制御信号Sd_2を有線で入力するように構成されていてもよい。
【0103】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限られず、他の相数のモータや、他の種類のモータであってもよい。ホール素子の数は、特に限定されない。ホール素子とは異なる検出器を用いて、モータの位置検出信号が得られるようにしてもよい。例えば、ホールIC等を用いてもよい。また、モータは、ホール素子やホールIC等の位置検出器を用いない、センサレス方式により駆動されるようにしてもよい。
【0104】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0105】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御回路部は、マイコンに限定されない。制御回路部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【0106】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1,1A,1B,1C,1D,10,20…ファンシステム、2_1…第1のモータ駆動回路(モータ駆動回路)、2_2…第2のモータ駆動回路(モータ駆動回路)、3_1…第1の駆動制御部(駆動制御部)、3_2…第2の駆動制御部(駆動制御部)、11…第1送風機(送風機)、12…第2送風機(送風機)、21_1…第1のモータ(モータ)、21_2…第2のモータ(モータ)、25,25_1,25_2…ホール素子、30_1…,30_2…モータ駆動制御処理部、31_1,31_2…回転数算出部、32_1,32_2…速度指令解析部、33_1,33_2…PWM指令部、34_1,34_2…PWM信号生成部、35_1,35_2…通信部、36_1,36_2…送受信部、37_1,37_2…通信処理部、39…負荷判定部、45…通信線、62_1…第1のインペラ(インペラ)、62_2…第2のインペラ(インペラ)、110…モータ駆動制御システム、111…第1のモータ駆動制御装置(モータ駆動制御装置)、112…第2のモータ駆動制御装置(モータ駆動制御装置)、800…制御装置、801…送風システム、900…電子機器