(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176522
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】揚水またはサイフォン排水を行うポンプ装置
(51)【国際特許分類】
E03B 5/00 20060101AFI20241212BHJP
E03B 7/07 20060101ALI20241212BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20241212BHJP
F04B 23/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E03B5/00 B
E03B5/00 Z
E03B7/07
F04B9/14 Z
F04B23/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095101
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000118970
【氏名又は名称】井上 虎男
(72)【発明者】
【氏名】井上 虎男
(72)【発明者】
【氏名】井上 晃一
【テーマコード(参考)】
3H071
3H075
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071BB05
3H071CC34
3H071CC36
3H071CC37
3H071DD14
3H071DD36
3H071DD72
3H071EE07
3H075AA06
3H075BB04
3H075BB14
3H075CC33
3H075CC35
3H075CC36
3H075DA09
3H075DA12
3H075DB13
3H075DB38
(57)【要約】
【課題】 小口径の実用的な揚水やサイフォン排水が行えるポンプ装置を提供する。
【解決手段】 揚水を行う吸水管11の下方端を吸水域水中に没入させ、該吸水管11の上方端に接続連通した送水管13を上方に延伸して揚水を行い、或いは、該吸水域水位bよりも低い水域外にサイフォン排水する送水管13の配設を行い、吸水域水中に没入させた吸水管11を上下方向に加震して、該吸水管11の管内容積の変化や、該吸水管11内水の慣性力で該吸水管11内を排気して高所への揚水、或いは、サイフォン排水を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚水やサイフォン排水を行うポンプ装置において、吸水管の下方端を吸水域水中に没入させ、該吸水管の上方端に接続して延伸する送水管を、山越え配管の様に中高の配設管とする場合には該配設管の頭頂付近に排気弁を設け、吸水域水中に没入させた吸水管を上下方向に加震して、揚水又はサイフォン排水を行うポンプ装置。
【請求項2】
吸水管の途中に継手を設けて該吸水管の下方端部の一定長さを交換可能にした請求項1の揚水又はサイフォン排水を行うポンプ装置。
【請求項3】
吸水管の上下方向の加震を梃子やクランク機構、エアーシリンダー等の駆動手段を用いて手動又は動力で駆動するようにした請求項1及び請求項2のいずれかの揚水又はサイフォン排水を行う装置。
【請求項4】
送水管の吐出端を他の非自級式遠心ポンプの吸水口に接続連通して、該非自吸式遠心ポンプの呼び水を行い揚水運転を可能にする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかの揚水を行うポンプ装置。
【請求項5】
送水管の吐出端を外部の水エジェクターに接続連通して稼働させ、真空発生源を得るようにした請求項1、請求項2、請求項3のいずれかのサイフォン排水を行うポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油ストーブの給油に使用する灯油ポンプに代表されるようなサイフォンポンプを灌漑用取水や工業用水槽の排水に使用しやすくするために、小口径サイズの低揚程ポンプやサイフォン排水するポンプを提供すると共に、大口径サイズのサイフォン排水の始動を容易にするための落差を利用した水エジェクターを駆動して抽気を行い、完全無動力での大口径サイズのサイフォン排水や取水を始動しやすくした装置を提供するものでもある。
【背景技術】
【0002】
サイフォン排水を開始するためには中高に配設されたサイフォン配管又はサイフォンホース内を満水に近い状態に呼び水する必要があり、小径ホースの場合では、あらかじめ満水にしたホースを使用することや、人力で注水呼び水することも比較的簡単に行えるけれども、管端を手指で封止でき難い口径では、手動での呼び水操作が困難になり機械的回転ポンプや真空ポンプが必要になり、サイフォン排水は敬遠されやすい状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録 第3136087号
【特許文献2】特開 2010-048100
【特許文献3】特開 2007-177752
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
口径サイズが15A以下程度までの簡易な手動式サイフォンポンプは、市場で容易に入手できるけれども、工場や施設における水液の移し替え等で使用される20A以上の口径では、回転機械的な手動ポンプとなるためにサイフォン排水が可能な状況においても、電動式、或いは、エンジンポンプが選ばれ連続運転で使用されてしまい、省エネよりも便利さが選ばれる結果になる。
又、水処理や下水道施設での大口径サイズでのサイフォン排水による除泥、排泥においては回転機械的真空ポンプが使用されるが、悪水による腐食と稼働時の吸気音が経年劣化とともに問題となることが多く、これ等の問題を解消できる揚水ポンプやサイフォン排水開始手段が必要な状況にある。
【0005】
少水量小揚程での手動揚水ポンプや大水量長時間稼働のサイフォン排水の使用は、使用条件的には非常に制限されるものではあるが、省エネルギー効果、経済効果が大きく、積極的な使用が推進されるべき時代背景が有る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明ポンプの揚水作用は、一定長さの吸水管の下方端を開口状態のまま吸水域水中に没入させ、該吸水管の上方端を閉止して排気弁を備えて、該吸水管を上下に加震揺動すると、上方向への加震時に急激には追従できない管内下方水の慣性抵抗のために、該管内空隙容積の増大分以上の管内負圧を生じ、下方外部水が吸入され管内水が上昇することと、下方向加震による空隙の縮小との相乗効果により管内空気が排気弁より排出され、次の時点では、該管内は負圧を生じて下方水を吸入する揚水作用が生じることを繰り返すことにより揚水が行える。
該吸水管内が満水した後の加震では、全管内水が慣性力を受け排気弁より吐水し、加震を続行して揚水を継続することもできる。
【0007】
又、前述した吸水管の上方端を開放したままの状態で下方端にフートバルブ(又は逆止弁)を設けて、該吸水管の下方端を吸水域水中に没入させた状態で加震した場合においては、バルブ上の管内水はバルブで保持された状態で上方向に加震され慣性を得て上方に跳ね上げられる形でフートバルブ下方外部水を吸入し、下方向の加震による慣性はフートバルブに受け止められて消失する状態で揚水を行うことができ、下方端に設けたフートバルブを逆止弁に替え、吸水管のどの高さ位置に設けても同様に揚水作用を生じて揚水ができる。
【0008】
実用する本発明ポンプの一般的な揚水やサイフォン排水を行うポンプにおいては、吸水管の下方端にフートバルブを備えて、該吸水管の上方端を、上下動を可能にする可撓管等を介在させて送水管に接続連通する。
サイフォン排水を行う場合においては、該送水管の吐出端を吸水域水位よりも低い吸水域外の所定位置まで延伸したサイフォン配管にして、該サイフォン配管の頭頂付近には排気弁を設けて、吸水域水中に没入させた吸水管を上下方向に加震して揚水し、十分な揚水状態においては自然にサイフォン排水が開始され、加震を止めてサイフォン排水を続行させる。
サイフォン排水を行わずに、更に上方に揚水を行う場合においては、該送水管を高所の所定位置まで延伸して、吸水管を加震して揚水する。
吸水管上辺に、排気弁と排気弁に連接するバルブを設けたものにあっては該バルブを閉止して加震を続行して高所への揚水を行う。
【0009】
固形物混入液や汚泥水等を取り扱う場合の揚水やサイフォン排水を行うポンプにおいては、排気弁以外のフートバルブや逆止弁を吸水管及び送水管に用いることなく、前述ポンプと同様に、上下動を可能にした可撓管等を介在させて吸水管上方端を送水管に接続連通する。
サイフォン排水を行う場合においては、該送水管吐出端を吸水域水位よりも低い吸水域外の所定位置まで延伸したサイフォン配管にして、該配管の吐出端は封水を行い、吸水管を上下に加震して揚水を行うことにより自然にサイフォン排水に移行し、固形物混入水が支障なく通過できる配管サイフォン排水を続行する。
【0010】
サイフォン排水を行わずに、吸水管上方端より更に上方に揚水を行う場合においては、接続した送水管を高所の所定位置まで延伸して吐出端には逆止弁を設けて、加震を続行して揚水を行う。
この場合における吐出端に設けた逆止弁は、揚水のために吸水管を加震する振幅と配管長さ、即ち、吸水域水面から吐出端の逆止弁までの長さの比率が大きい程、排気効果が悪く揚水までの時間が長くなるために、該逆止弁は吸水管近くに設ける事が望ましいけれども、混入固形物によるトラブルを生じやすい該逆止弁は、処置の行いやすい吐出端に設ける。
排気弁に連設して設けた閉止バルブは、開放して始動時加震を行うけれども吸水管の排気が終了した後は吐水するので、該バルブを閉止して揚水加震を続行して上方への揚水を行う。
【0011】
尚、吸水管は、鋼製管やVP管、アルミ製管等の管材が使用でき、上下動に対応する可撓管部は、回転継手の組合せや吸水管自体の伸縮管化等によっても代替でき、全長に一体の樹脂製サクションホースを使用し、必要に応じて添え木等を行い前記するサイフォン排水や揚水を行うように構成することもできる。
【0012】
吸水管の上下方向の揚水加震については、直接人力で行える範囲には限度があるけれども、梃子の原理を用いた井戸用ポンプのように上下に駆動することや、クランク機構を用いて機械的な上下駆動を手動や電動で行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸水端をフートバルブなしに直接開放して加震を行い、サイフォン排水を行う第1実施例ポンプにあっては、サイフォン配管内に全くバルブ等の障害物がないために、スラリー液や固形物混入液をサイフォン排水する用途、揚砂、揚泥、スラッジ除去等では、回転ポンプのようなインペラー等の摩耗部品がなく、又、上方に揚送する場合に於いても、この種用途のダイヤフラムポンプと比較すると損耗の激しい弁数は1/2個となる。
【0014】
加震する吸水管の吸水端にフートバルブを備える第2実施例のサイフォン排水を行う場合においては、排気加震が終了した時点で自動的にサイフォン排水に移行する便利さがある。
又、吸水管より高所へ揚水する場合においては、排気弁や途中逆止弁等を設ける必要もなく、シンプルな揚水ポンプにできる。
【0015】
本発明ポンプを非自吸式遠心ポンプと組合せて使用する場合のかんがい用や工事排水用途の自吸式ポンプにおいては、自吸式ポンプと非自吸式遠心ポンプの構造的な要因に基づく運転効率の差と運転時間の長さからエネルギー消費量を大きく低減させる省エネルギー効果や経済効果が大きい。
【0016】
又、本発明ポンプでサイフォン取水した落差水を利用して水エジェクターの駆動を行い、大口径サイフォン排水を完全無動力化できることは、ダム堆砂の除去や体積防止、溜池からのかんがい用水の取水、溜池や山岳僻地で発生しやすい自然ダムの災害防止排水に於いて、最小の搬送重量と時間、最大の経済性で貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】(イ)図は逆止弁17及び排気弁16の断面構造、(ロ)図は吸水口に装着した底吸いホース14を示す。
【
図4】(ハ)図は第2実施例装置の一部を変更した吸水管部の部分姿図、(ニ)図はフートバルブの断面構造。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明ポンプの実施形態を
図1~
図4に基づいて説明する。
【実施例0019】
図1に図示する第1実施例は、吸水管11の吸水口aを直接開口させた実施例であり、吸水管11上方端を水平に屈曲させ排気弁16とバルブ18を連接して取り付けたVP管等の配管材で製作するものであり、水平に屈曲した吸水管11の後流には、吸水管16の上下動を可能にする可撓材部12を設けた後、所定方向に向けた送水管を配設した配管とする。
【0020】
以降の説明では、吸水管16以降の配管を実用上多用する樹脂製サクションホースで構成したものとして、単に「ホース13」と称呼して説明する。
【0021】
図1の右半に図示するホース13の各吐出端は、用途目的に応じた異なる形態となる。ホース端13Aは、吸水域水槽31の水位bよりも低い位置においてU字状に屈曲させ、ホース13内に滞留水域を設けて封水を行う。
ホース端13Bは、ゴム栓35を用いて密栓する形態であるが、開閉バルブとすることもできる。
ホース端13Cは、外部水槽32内水中に挿入してホース13端を封水する。
ホース端13Dは、排気弁16よりも高位に揚水する場合の配管形態であり、ホース端に逆止弁17を設けて吐出させることで、排気弁16上に連設したバルブ18を閉止して漏出させることなく上方へ揚水することができる。
上方への揚水では、排気弁16,及び、バルブ18を不使用とすることもできる。
【0022】
ホース端13Eは、他の非自吸式遠心ポンプ等の吸込口に接続連通して呼び水を行い、該自吸式遠心ポンプの呼び水始動を可能にする。
ホース端13Fは、他の大口径サイフォン排水装置の呼び水を行うための水エジェクターを備えた、本人出願の特願2020-194072のサイフォンユニットの駆動水を供給するものである。
【0023】
図2(イ)に図示する球体弁構造の逆止弁は、
図1の排気弁16及び逆止弁17の内部構造を図示するものであるが、他の形式構造の逆止弁を使用することもできる。
【0024】
図2(ロ)に図示する吸水管11の下方端に接続延長する形の底吸いホース14は、水槽等で使用する際に吸水管11の下方端aと水槽31の底の間に隙間を設けて安全に使用したいことと、吸水できない加震幅高さ分の吸水を行うために可撓性のゴムホースを接続して延長し、底部水の吸水を可能にすると共に、水槽31の底に体積する沈殿物を吸入除去しやすくするものである。
【0025】
以上のような第1実施例ポンプの操作は、各ホース端がそれぞれの手段で閉止された状態にして、バルブ18を設けた場合においては該バルブを開放して吸水管を上下方向に加震揺動させて揚水を行い、排気弁16又はバルブ18からの揚水の噴出や、サイフォン排水の開始で、バルブ18を閉止して揚水やサイフォン排水を確実に継続する。
上方への揚水を行う吐出端13Dにおいては第1実施例の逆止弁17に相当するバルブの配設は必要ないのであるが、配設して支障するものではなく、加震を継続することにより揚水できる。
ホース端13Cの場合では、該ホース端を一旦ホース端13Aの状態にしてサイフォン排水を開始させた後、所定位置に移動させサイフォン排水を行う方が円滑な始動ができる。
以上のように第1実施例と第2実施例は、揚水すること、サイフォン排水することにおいてはほとんど同一と言えるものではあるが、用途においては固形物揚送に適した第1実施例ポンプと固形物混入液に弱い第2実施例ポンプである。
又、揚水の原理においても少しの違いがあり、第1実施例では配管内が負圧下で揚水を行うけれども、第2実施例では大気圧以上で排気して揚水する形となるけれども、フートバルブ25を逆止弁に替え、吸水管及び送水管のいずれかの位置に配設した場合においては、該逆止弁下方は負圧下で揚水稼働を行い、第1実施例の吐出端13Dに逆止弁17を設けたものと同一の構成にもなる。
両実施例の違いはフートバルブの有無だけであり、実用するポンプにおいては、製造する立場からも使用する立場からも兼用できるポンプとすることが好都合であり兼用できるポンプとする。
実際製造するポンプにおいては、固形物混入液を取扱う吸水端の腐食性、摩耗性、水槽に深さに合わせた長さとすること、材質を変更しやすくすること等も配慮して吸水管21及び吸水管11の下方端の一定長さを交換可能にして実用性を図ったポンプとする。