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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176534
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電解液体生成装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20241212BHJP
   C25B 1/13 20060101ALI20241212BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241212BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20241212BHJP
   C25B 9/63 20210101ALI20241212BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20241212BHJP
【FI】
C25B9/00 Z
C25B1/13
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/60
C25B9/63
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095117
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】今堀 修
(72)【発明者】
【氏名】長田 実
(72)【発明者】
【氏名】堀田 真未
【テーマコード(参考)】
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB16
4D061EB30
4D061EB35
4K021AB15
4K021BA02
4K021CA01
4K021CA08
4K021CA09
4K021DA11
4K021DB11
4K021DB31
4K021DB43
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】電解部における電解液体の生成効率を向上させることが出来る電解液体生成装置を提供する。
【解決手段】電解液体生成装置100は、電解部1と、ハウジング3と、を備える。電解部1は、第1電極13及び第2電極11の間に導電性膜12が挟まれるように配置されており、液体を電解処理する。ハウジング3は、電解部1が内部に配置されている。ハウジング3は、電解部1に供給される液体が流入する流入口と、電解部1で生成される電解液体が流出する流出口と、を有する。ハウジング3の内周面と電解部1との間に、液体及び電解液体の流路61,62が形成されている。電解部1は、空間部を有する。溝部は、空間部は、電解部1を貫通し、液体を第1電極13側から第2電極11側へと流す。空間部は流路61に開口し、導電性膜12の少なくとも一部が流路61に露出している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極の間に導電性膜が挟まれるように配置されており、液体を電解処理する電解部と、
前記電解部が内部に配置されているハウジングと、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極と、前記導電性膜とは、前記導電性膜の積層方向である第1方向において並ぶように配置されており、
前記ハウジングは、
前記電解部に供給される液体が流入する流入口と、
前記電解部で生成される電解液体が流出する流出口と、を有し、
前記ハウジングの内周面と前記電解部との間に、前記液体及び前記電解液体の流路が形成されており、
前記電解部は前記電解部を貫通し、前記液体を前記第1電極側から前記第2電極側へと流す空間部を有し、
前記空間部は前記流路に開口し、前記導電性膜の少なくとも一部が前記流路に露出している、
電解液体生成装置。
【請求項2】
第1電極及び第2電極の間に導電性膜が挟まれるように配置されており、液体を電解処理する電解部と、
前記電解部が内部に配置されているハウジングと、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極と、前記導電性膜とは、前記導電性膜の積層方向である第1方向において並ぶように配置されており、
前記ハウジングは、
前記電解部に供給される液体が流入する流入口と、
前記電解部で生成される電解液体が流出する流出口と、を有し、
前記ハウジングの内周面と前記電解部との間に、前記液体及び前記電解液体の流路が形成されており、
前記流路は、前記ハウジングの内周面と前記第1電極との間に位置する外流路を含み、
前記外流路において、前記液体の流路方向である第2方向を法線方向とする前記流出口側の断面積は、前記第2方向を法線とする前記流入口側の断面積よりも小さい、
電解液体生成装置。
【請求項3】
前記流路は、前記ハウジングの内周面と前記第1電極との間に位置する外流路を含み、前記外流路において、前記液体の流路方向である第2方向を法線方向とする前記流出口側の断面積は、前記第2方向を法線とする前記流入口側の断面積よりも小さい、
請求項1に記載の電解液体生成装置。
【請求項4】
前記第2電極は、前記第1方向に前記第2電極を貫通する貫通孔を有し、
前記導電性膜は、前記第1方向に前記導電性膜を貫通する貫通部を有し、
前記第1方向及び前記流路を前記液体が流れる方向に交差する第3方向において、
前記第2電極の前記貫通孔の幅は、前記第1電極の幅よりも大きく、
前記導電性膜の前記貫通部の幅は、前記第1電極の幅よりも大きく、
前記空間部は、前記第2電極の前記貫通孔と、前記導電性膜の前記貫通部とが前記第1方向に重なる位置を含む、
請求項1又は3に記載の電解液体生成装置。
【請求項5】
前記第3方向において、前記第2電極の前記貫通孔の幅は、前記導電性膜の前記貫通部の幅よりも大きい、
請求項4に記載の電解液体生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電解液体生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解液体生成装置として、オゾン(電解生成物)が水に溶解したオゾン水(電解液体)を生成するオゾン水生成装置が知られている。電解部は、陽極及び陰極の間に介在している導電性膜を有する。そして、電解部を水に浸した状態で陽極及び陰極の間に電位差を生じさせることで、水中にて電気化学反応を起こす電解処理が行われて、オゾン水が生成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-176993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電解液体生成装置では、ハウジングの内周面と陰極との間に液体の流路が存在するため、陰極にスケールが蓄積する場合がある。これにより、オゾンの空間密度に濃淡が生じ、オゾンの溶解効率が低下して電解液体の生成効率が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、電解部における電解液体の生成効率を向上させることが出来る電解液体生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電解液体生成装置は、電解部と、ハウジングと、を備える。前記電解部は、第1電極及び第2電極の間に導電性膜が挟まれるように配置されており、液体を電解処理する。前記ハウジングは、前記電解部が内部に配置されている。前記第1電極及び前記第2電極と、前記導電性膜とは、第1方向において並ぶように配置されている。前記第1方向は、前記導電性膜の積層方向である。前記ハウジングは、前記電解部に供給される液体が流入する流入口と、前記電解部で生成される電解液体が流出する流出口と、を有する。前記ハウジングの内周面と前記電解部との間に、前記液体及び前記電解液体の流路が形成されている。前記電解部は、空間部を有する。前記空間部は、前記電解部を貫通し、前記液体を前記第1電極側から前記第2電極側へと流す。前記空間部は前記流路に開口し、前記導電性膜の少なくとも一部が前記流路に露出している。
【0007】
本開示の他の一態様に係る電解液体生成装置は、電解部と、ハウジングと、を備える。前記電解部は、第1電極及び第2電極の間に導電性膜が挟まれるように配置されており、液体を電解処理する。前記ハウジングは、前記電解部が内部に配置されている。前記第1電極及び前記第2電極と、前記導電性膜とは、第1方向において並ぶように配置されている。前記第1方向は、前記導電性膜の積層方向である。前記ハウジングは、前記電解部に供給される液体が流入する流入口と、前記電解部で生成される電解液体が流出する流出口と、を有する。前記ハウジングの内周面と前記電解部との間に、前記液体及び前記電解液体の流路が形成されている。前記流路は、前記ハウジングの内周面と前記第1電極との間に位置する外流路を含む。前記外流路において、前記液体の流路方向である第2方向を法線方向とする前記流出口側の断面積は、前記第2の方向を法線とする前記流入口側の断面積よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る電解液体生成装置によれば、電解部における電解液体の生成効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る電解液体生成装置の分解斜視図である。
図2図2は、同上の電解液体生成装置の電解部の平面図である。
図3図3は、同上の電解液体生成装置の第3方向を法線方向とする断面図である。
図4図4は、同上の電解液体生成装置において液体の流路を示す概略斜視図である。
図5図5は、同上の電解液体生成装置の第2方向を法線方向とする断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る電解液体生成装置について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、以下に実施する実施形態は、本開示の実施形態の一例に過ぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(実施形態)
(1)概要
まず、実施形態に係る電解液体生成装置100の概要について、図1図5を参照して説明する。
【0012】
実施形態に係る電解液体生成装置100は、液体を電解処理することで電解液体を生成する。本実施形態では一例として、電解液体生成装置100は、上記液体として上水道から供給される水道水を用い、電解液体としてオゾン水を生成するオゾン水生成装置である。オゾン水生成装置である電解液体生成装置100は、水道水を電気分解する電解処理によってオゾン(電解生成物)を発生させ、当該オゾンを水道水に溶解させることで、オゾン水を生成する。オゾン水は、除菌、脱臭、及び有機物分解等に有効であるため、水処理分野、衛生分野、食品分野、及び医学分野等の各分野において広く利用されている。
【0013】
実施形態に係る電解液体生成装置100は、図1及び図2に示すように、電解部1と、弾性体2と、ハウジング3と、給電体44と、を備える。電解部1は、一対の電極である第1電極及び第2電極と、一対の電極の間に挟まれるように配置されている導電性膜12と、を含む。第1電極、導電性膜12、及び第2電極は、各々の厚さ方向に積層されている。実施形態では、第1電極は陽極13であり、第2電極は陰極11である。電解部1は、液体を電解処理する。ハウジング3は、電解部1が内部に配置されている。実施形態に係る電解液体生成装置100では、図2及び図4に示すように、電解部1が、電解部1を貫通する空間部15を備える。ここで、図4では、断面を示すハッチングを省略している。また、図4において、矢印は、水道水(液体)の流れを示す。電解液体生成装置100では、図5に示すように、外流路62から空間部15を通過して陰極11の貫通孔111に水道水が流入する。したがって、電解生成物が電解部1の近傍に留まらずに拡散する。したがって、電解生成物が電解処理によるオゾン生成を阻害しにくくなり、オゾン水生成効率を向上させることが可能となる。
【0014】
(2)詳細
次に、実施形態に係る電解液体生成装置100の詳細について、図1図5を参照して説明する。以下の説明では、後述する電解部1における陰極11、導電性膜12及び陽極13の積層方向を第1方向D1と規定し、後述するハウジング3の長手方向を第2方向D2と規定し、ハウジング3の短手方向(幅方向)を第3方向D3と規定する。ただし、これらの方向は電解液体生成装置100の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の「D1」、「D2」、「D3」を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。
【0015】
実施形態に係る電解液体生成装置100は、図1に示すように、電解部1と、弾性体2と、ハウジング3と、給電体44と、複数(図示例では2つ)のOリング5と、を備える。また、実施形態に係る電解液体生成装置100は、図1に示すように、複数(図示例では2つ)のナット45、複数(図示例では2つ)のばね座金46、及び、複数(図示例では2つ)のワッシャ47を更に備える。
【0016】
(2.1)ハウジング
ハウジング3は、電解部1及び弾性体2が内部に配置されている。ハウジング3は、図1に示すように、ケース31及びカバー32を含む。
【0017】
ケース31は、ケース本体311を含む。ケース本体311は、第1方向D1における一端(図1の上面)が開放された中空の直方体状に形成されている。すなわち、ケース本体311は、収容部3111を有する。また、ケース31の第2方向D2における両端には接続部312及び接続部313が形成されている。接続部312には液体の流入口が形成されており、流入口は収容部3111と連通している。また、接続部313には電解液体の流出口が形成されており、流出口は収容部3111と連通している。すなわち、流入口から流入した液体は、収容部3111で電解処理され、電解液体として流出口から流出する。
【0018】
カバー32は、長方形状の板である。カバー32は、第1方向D1に沿ってケース本体311に接しており、ケース本体311の収容部3111の開口を覆っている。また、カバーのうち、ケース本体311の収容部3111の開口に面している内面には、複数の凸部列が形成されている。
【0019】
また、ケース本体311は、電極ピン41を貫通させるための貫通孔(電極ピン孔)を有する。
【0020】
ケース31及びカバー32は、アクリル等の非導電性の樹脂で形成されている。
【0021】
(2.2)弾性体及び電解部
ケース31の収容部3111には、弾性体2、給電体44、陽極13、導電性膜12、及び陰極11が収納されている。より詳細には、弾性体2、給電体44、陽極13、導電性膜12、及び陰極11は、この順に、第1方向D1に沿って積層されている。
【0022】
弾性体2は、例えば、ゴム等の弾力性を有する材料を用いて、直方体状に形成されている。弾性体2は、直方体状の本体と、複数の突起を含む。複数の突起は、第2方向D2における端部と、第3方向D3における端部と、の各々に形成されている。複数の突起は、給電体44及び陽極13を位置決めする位置決め突起である。弾性体2は、給電体44及び陽極13を、第1方向D1に押さえている。
【0023】
給電体44は、陽極13に電力を供給するための導体である。給電体44は、第2方向D2に長尺な長方形状に形成されている。給電体44は、一方の面(第1面)が弾性体2と接しており、他方の面(第2面)の少なくとも一部が陽極13に接している。給電体44は、例えば、チタン合金で形成されている。
【0024】
陽極13は、液体である水道水を電気分解するための第1電極である。陽極13は、第2方向D2に長尺な長方形状に形成されている。陽極13は、一方の面(第1面)が給電体44と接しており、他方の面(第2面)の少なくとも一部が導電性膜12に接している。陽極13は、例えば、シリコンを用いた矩形板状の導電性基板に導電性ダイヤモンド膜を成膜することで形成されている。
【0025】
導電性膜12は、陽極13と陰極11との間に位置している。導電性膜12は、例えば、プロトン導電型のイオン交換フィルムである。また、導電性膜12は、第3方向D3に延伸する複数のスリット123を有する。導電性膜12は、例えば、くし型である。導電性膜12は、第3方向D3に長手形状である主片121と、第3方向D3を長手方向とする複数の突片122と、を含む。複数のスリット123の各々は、第2方向D2において、第2方向D2に隣接する2つの突片122に挟まれている。複数の突片122は、第2方向D2に沿って等間隔に並んでいる。なお、複数の突片122の各々の延伸方向は、第2方向D2と交差する方向であればよく、必ずしも第3方向D3でなくてもよい。また、導電性膜12の隣接する2つの突片122の間の貫通孔の第3方向D3における幅は、陽極13の第3方向D3における幅よりも大きい。
【0026】
陰極11は、液体である水道水を電気分解するための第2電極である。陰極11は、後述する電極ピン41と電気的に接続されている。陰極11は、第2方向D2に長尺である長方形状であり、第1方向D1に導電性膜12と接している。陰極11は、例えば、チタン合金などの導電性の材料で形成されている。
【0027】
陰極11は、第2方向D2に沿って等間隔に並ぶ複数の貫通孔111を有する。複数の貫通孔111の各々は同じ形状であり、例えば、V字状である。これにより、陰極11と導電性膜12との界面の少なくとも一部が液体(水道水)と接触する。したがって、陽極13の表面で生じるオゾンが、陰極11とカバー32との間の空間(以下、「主流路という」)の液体(水道水)に溶解しやすくなる。また、気体であるオゾンが電解部の内部に留まることによるオゾンの生成効率の低下を低減させることが可能となる。
【0028】
また、陰極11の複数の貫通孔111の第3方向D3における幅は、導電性膜12のスリット123の第3方向D3における幅よりも大きい。したがって、第1方向D1からの平面視において、貫通孔111の内部に、導電性膜12とも陽極13とも重ならない部分を有する。すなわち、電解部1は、電解部1を第1方向D1に貫通する貫通孔を有する。したがって、第1方向D1に沿って液体(水道水)が電解部1を透過できるため、ケース31の収容部3111におけるオゾン水中のオゾン濃度が均一化し、オゾン水の生成効率が向上する。
【0029】
陰極11及び給電体44の各々は、電極ピン41に接続されている。複数の電極ピン41の各々は、第1方向D1に長尺である。すなわち、各電極ピン41の長手方向は、第1方向D1と平行な方向である。各電極ピン41は、第1方向D1における第1端(図1の上端)が給電体44又は陰極11に溶接されている。また、各電極ピン41において、第1方向D1における第2端(図1の下端)を含む所定範囲にネジ山が設けられている。
【0030】
一対の電極ピン41の各々には、Oリング5、ワッシャ47、ばね座金46、及び、ナット45が取り付けられる。
【0031】
(3)詳細構成
(3.1)電解部
電解部1は、陽極13と陰極11とが第1方向D1に対向している。また、導電性膜12は、陽極13と陰極11との間に挟まれている。
【0032】
第3方向D3において、導電性膜12の隣接する2つの突片122の間のスリット123の幅d2は、陽極13の幅d1よりも大きい。ここで、スリット123の幅d2は、第3方向D3における突片122の長さd2と一致する。したがって、第1方向D1からの平面視において、導電性膜12の隣接する2つの突片122の間のスリット123のうち、陽極13と重ならない部分が存在する。
【0033】
また、第3方向D3において、陰極11の複数の貫通孔111の各々の幅d3は、導電性膜12の隣接する2つの突片122の間のスリット123の幅d2よりも大きい。したがって、第1方向D1からの平面視において、陰極11の貫通孔111のうち、導電性膜12と重ならない部分が存在する。また、第3方向D3において、陰極11の複数の貫通孔111の各々の幅d3は、陽極13の幅d1よりも大きい。したがって、第1方向D1からの平面視において、陰極11の貫通孔111のうち、導電性膜12及び陽極13と重ならない部分(以下、貫通孔14という)が存在する。電解部1は、第2方向に間隔を空けて並んでいる複数の貫通孔14を有する。
【0034】
空間部15は、電解部1を第1方向D1に貫通する水道水(液体)の流路である。空間部15は、図2に示すように、陰極11の貫通孔111と、導電性膜12のスリット123と、を含む。ここで、貫通孔14は、少なくとも第3方向D3において、陰極11の貫通孔111及び導電性膜12のスリット123に連通している。また、貫通孔14に直接連通していないスリット123又は貫通孔111も、貫通孔14に連通しているスリット123又は貫通孔111を介して、間接的に貫通孔111に連通している。
【0035】
したがって、空間部15の貫通孔14に流入する水道水(液体)は、第1方向D1に沿って貫通孔14を通過するだけでなく、図4に示すように、導電性膜12のスリット123及び陰極11の貫通孔111にも流れる。また、導電性膜12のスリット123に流入する水道水(液体)も、空間部15を通過し、陰極11の貫通孔111から流出する。すなわち、空間部15に第1方向D1に沿って流入する水道水(液体)は、陽極13よりカバー32側を、第2方向D2及び第3方向D3にも流れる。
【0036】
図3及び図4に示すように、電解部1とカバー32との間には、水道水(液体)が主として第2方向D2に流れる主流路61が形成されている。また、電解部1とケース本体311の内周面との間には、水道水(液体)が主として第2方向D2に流れる外流路62が形成されている。
【0037】
電解部1に電圧を印加すると、陽極13と導電性膜12との界面でオゾンが発生する。オゾンは、陰極11の貫通孔111で主流路61を流れる水道水に溶解し、主流路61にオゾン水(電解液体)が生じる。
【0038】
一方で、陽極13の近傍では、水道水中の水酸化物イオンが電気分解によって消費されるため、プロトン濃度が上昇する。そのため、陽極13の近傍の水酸化物イオン濃度が低下して、オゾンの生成効率が低下する場合がある。
【0039】
また、電解処理によって陽極13近傍のpHが低下するため、陰極11近傍ではpHの上昇が生じる。したがって、水道水に含まれるカルシウム化合物等がスケールとして陰極11に付着しやすくなる。そのため、スケールによって、第1方向D1における陰極11と陽極13との間の距離が拡大する場合がある。したがって、電解部1において電流密度の偏りが生じ、オゾンの生成効率が低下する。また、陰極11と導電性膜12との間、又は、導電性膜12と陽極13との間の各々に隙間が発生すると、隙間にスケールが付着しやすくなるため、第1方向D1における陰極11と陽極13との間の距離が広がった部分では電気抵抗が更に上昇しやすくなる。したがって、オゾンの生成効率が更に低下しやすくなる。
【0040】
一方、実施形態に係る電解液体生成装置100では、水道水(液体)の流路である空間部15が電解部1を第1方向D1に貫通している。したがって、図4に示すように、外流路62を流れる水道水の一部が、空間部15を通過して主流路61に流れ込む。これにより、主流路61において、オゾン水のオゾン及びプロトンが希釈され、オゾン水のオゾン濃度及びプロトン濃度の偏りが小さくなる。また、空間部15では、貫通孔14と陰極11の貫通孔111とが連通しているため、陽極13の近傍にオゾン及びプロトンが留まりにくくなる。したがって、電解液体生成装置100では、オゾン水の生成効率の低下を低減することができる。また、電解液体生成装置100では、空間部15における液体の流れによって陽極13近傍のpHが低い液体を陰極11近傍に流すことができる。したがって、電解液体生成装置100では、陰極11近傍でのpHの上昇を低減させ、陰極11へのスケールの付着を低減させることができる。さらに、空間部15において、複数の貫通孔14は、外流路62を水道水が流れる方向である第2方向D2に沿って並んでいる。したがって、空間部15において、複数の貫通孔14に偏りなく水道水が流れやすいため、流路61においてオゾン水のオゾン濃度及びプロトン濃度の偏りを更に小さくすることができる。したがって、オゾン水の生成効率を向上させることができる。
【0041】
(3.2)ハウジング
ハウジング3の接続部312の流入口から流入する水道水は、電解部1の第2方向D2における上流側の端部で、主流路61と外流路62に分かれる。また、電解部1の下流側では、主流路61と外流路62とを流れるオゾン水は、電解部1の第2方向D2における下流側の端部で、合流して接続部312の流出口から流出する。
【0042】
ここで、図5に示すように、外流路62において、下流側の領域622における断面積S2は、上流側の領域621における断面積S1よりも小さい。ここで、断面積S1及び断面積S2は、第2方向D2を法線方向とする。上流側の領域621は、例えば、第2方向D2において弾性体2よりも流入口側である。また、下流側の領域622は、例えば、第2方向D2において弾性体2よりも流出口側である。すなわち、外流路62は、上流側の断面積より下流側の断面積の方が小さい。この構成により、外流路62の領域621に流れ込んだ水道水が、空間部15を経由して主流路61に流れ込みやすくなる。したがって、電解部1において陰極11の貫通孔111近傍の水の流れが促進され、陽極13の近傍にオゾン及びプロトンが留まりにくくなる。このため、オゾンの生成効率の低下を低減することができる。また、陰極11へのスケールの付着を低減させることができる。
【0043】
(4)効果
実施形態の電解液体生成装置100は、電解部1と、ハウジング3と、を備える。電解部1は、陽極13及び陰極11の間に導電性膜12が挟まれるように配置されており、水道水を電解処理する。ハウジング3は、電解部1が内部に配置されている。陽極13及び陰極11と、導電性膜12とは、第1方向D1において並ぶように、かつ、各々の厚さ方向が第1方向D1に沿うように配置されている。第1方向は、導電性膜12の積層方向である。ハウジング3は、電解部1に供給される水道水が流入する流入口と、電解部1で生成されるオゾン水が流出する流出口と、を有する。ハウジング3の内周面と電解部1との間に、水道水及びオゾン水の流路61,62が形成されている。電解部1は、電解部1を貫通し、液体を陽極13側から陰極11側へと流す空間部15を有する。空間部15に含まれる陰極11の貫通孔111は流路61に開口し、導電性膜12の少なくとも一部が流路61に露出している。
【0044】
したがって、実施形態の電解液体生成装置100では、空間部15を水道水が通過するため、電解部1の近傍にオゾン水が留まらずにオゾンが拡散しやすい。そのため、オゾン水が電解部1の近傍に留まることによるオゾン水の生成効率の低下を低減させることができる。また、オゾン水が電解部1の近傍に留まることによる電解部1へのスケールの付着を低減させることができるため、オゾン水の生成効率が低下しづらい。
【0045】
また、実施形態の電解液体生成装置100では、ハウジング3の内周面と陽極13との間に位置する外流路62が形成されている。外流路62において、第2方向D2を法線方向とする領域622の断面積S2は、第2方向D2を法線方向とする領域621の断面積S1よりも小さい。領域621は領域622より流入口側であり、領域622は領域621より流出口側である。
【0046】
したがって、実施形態の電解液体生成装置100では、領域621から外流路62に流入する水道水が領域622に流れにくいため、外流路62を流れる水道水の一部が空間部15を通過して主流路61に流入しやすい。これにより、電解部1の近傍で水の流れが生じやすくなる。また、外流路62を未反応のまま素通りする水道水の割合を減らすことができるため、電解液体生成装置100が生成するオゾン水のオゾン濃度を向上させることができる。
【0047】
また、実施形態の電解液体生成装置100では、陰極11は、第1方向D1に陰極11を貫通する貫通孔111を有する。導電性膜12は、第1方向D1に導電性膜12を貫通するスリット123を有する。第3方向D3において、陰極11の貫通孔111の幅d3は、陽極13の幅d1よりも大きい。第3方向D3において、導電性膜12のスリット123の幅d2は、陽極13の幅d1よりも大きい。空間部15は、陰極11の貫通孔111と、導電性膜12のスリット123とが第1方向D1に重なる位置を含む。
【0048】
したがって、実施形態の電解液体生成装置100では、第1方向D1からの平面視において、陰極11の貫通孔111と、導電性膜12のスリット123とが重なり、かつ、陽極13が重ならない位置である貫通孔14を空間部15が含む。これにより、空間部15において、陰極11の貫通孔111と貫通孔14とが連通するため、電解部1で生成するオゾン及びプロトンが水道水で希釈されやすい。したがって、オゾン水の生成効率を高めることができる。
【0049】
また、実施形態の電解液体生成装置100では、第3方向D3において、陰極11の貫通孔111の幅d3は、導電性膜12のスリット123の幅d2よりも大きい。これにより、電解部1に貫通孔14が形成されやすくなり、空間部15を通過して電解部1を貫通する水の流れが生じやすい。したがって、オゾン水の生成効率を高めることができる。
【0050】
(変形例)
(1)実施形態に係る電解液体生成装置100では、導電性膜12がくし型である。しかしながら、導電性膜12は、第1方向D1及び第2方向D2に交差する方向に複数のスリット123を有し、電解部1に空間部15が形成される形状であれば、これに限られない。同様に、陰極11の貫通孔111の形状もV字状に限られず、他の形状であってもよい。
【0051】
(2)実施形態に係る電解液体生成装置100では、液体が水道水であり電解液体がオゾン水であるが、液体を電解処理して電解液体を生成することができる限りにおいて、液体と電解液体との組み合わせは、任意の2つの液体の組み合わせであってよい。
【0052】
(態様)
第1の態様に係る電解液体生成装置(100)は、電解部(1)と、ハウジング(3)と、を備える。電解部(1)は、第1電極(13)及び第2電極(11)の間に導電性膜(12)が挟まれるように配置されており、液体を電解処理する。ハウジング(3)は、電解部(1)が内部に配置されている。第1電極(13)及び第2電極(11)と、導電性膜(12)とは、第1方向(D1)において並ぶように配置されている。第1方向(D1)は、導電性膜(12)の積層方向である。ハウジング(3)は、電解部(1)に供給される液体が流入する流入口と、電解部(1)で生成される電解液体が流出する流出口と、を有する。ハウジング(3)の内周面と電解部(1)との間に、液体及び電解液体の流路(61,62)が形成されている。電解部(1)は、電解部(1)を貫通し、液体を第1電極(13)側から第2電極(11)側へと流す空間部(15)を有する。空間部(15)は流路(61,62)に開口し、導電性膜(12)の少なくとも一部が流路(61)に露出している。
【0053】
上記態様に係る電解液体生成装置(100)によれば、空間部(15)を液体が通過するため、電解部(1)の近傍に電解液体が留まりにくい。そのため、電解液体が電解部(1)の近傍に留まることによる電解液体の生成効率の低下を低減させることができる。
【0054】
第2の態様に係る電解液体生成装置(100)は、電解部(1)と、ハウジング(3)と、を備える。電解部(1)は、第1電極(13)及び第2電極(11)の間に導電性膜(12)が挟まれるように配置されており、液体を電解処理する。ハウジング(3)は、電解部(1)が内部に配置されている。第1電極(13)及び第2電極(11)と、導電性膜(12)とは、第1方向(D1)において並ぶように配置されている。第1方向(D1)は、導電性膜(12)の積層方向である。ハウジング(3)は、電解部(1)に供給される液体が流入する流入口と、電解部(1)で生成される電解液体が流出する流出口と、を有する。ハウジング(3)の内周面と電解部(1)との間に、液体及び電解液体の流路(61,62)が形成されている。流路(61,62)は、ハウジング(3)の内周面と第1電極(13)との間に位置する外流路(62)を含む。外流路(62)において、流出口側の断面積(S2)は、流入口側の断面積(S1)よりも小さい。第2方向(D2)は、流路(61,62)を液体が流れる方向である。断面積(S1,S2)は、第2方向(D2)を法線方向とする。
【0055】
上記態様に係る電解液体生成装置(100)によれば、電解部(1)の近傍に電解液体が留まりにくい。また、液体が外流路(62)の流入口側から流出口側に流れにくいため、外流路(62)を流れる液体の一部が流路(61)に流入しやすい。そのため、電解液体が電解部(1)の近傍に留まることによる電解液体の生成効率の低下を低減させることができる。また、電解処理されないまま外流路(62)を通過する液体の割合を減少させることができるため、電解液体生成装置(100)が生成する電解液体の電解生成物の濃度を向上させることができる。
【0056】
第3の態様に係る電解液体生成装置(100)では、第1の態様において、流路(61,62)は、ハウジング(3)の内周面と第1電極(13)との間に位置する外流路(62)を含む。外流路(62)において、流出口側の断面積(S2)は、流入口側の断面積(S1)よりも小さい。第2方向(D2)は、流路(61,62)を液体が流れる方向である。断面積(S1,S2)は、第2方向(D2)を法線方向とする。
【0057】
上記態様に係る電解液体生成装置(100)によれば、液体が外流路(62)の流入口側から流出口側に流れにくいため、外流路(62)を流れる液体の一部が空間部(15)を通過して流路(61)に流入しやすい。したがって、電解部(1)の近傍で液体の流れが生じやすくなる。また、電解処理されないまま外流路(62)を通過する液体の割合を減少させることができるため、電解液体生成装置(100)が生成する電解液体の電解生成物の濃度を向上させることができる。
【0058】
第4の態様に係る電解液体生成装置(100)では、第1又は第3の態様のいずれかにおいて、第2電極(11)は、第1方向(D1)に第2電極(11)を貫通する貫通孔(111)を有する。導電性膜(12)は、第1方向(D1)に導電性膜(12)を貫通する貫通部(123)を有する。第3方向(D3)において、第2電極(11)の貫通孔(111)の幅(d3)は、第1電極(13)の幅(d1)よりも大きい。第3方向(D3)は、第1方向(D1)及び流路(61,62)を液体が流れる方向に交差する。第3方向(D3)において、導電性膜(12)の貫通部(123)の幅(d2)は、第1電極(13)の幅(d1)よりも大きい。空間部(15)は、第2電極(11)の貫通孔(111)と、導電性膜(12)の貫通部(123)とが第1方向(D1)に重なる位置を含む。
【0059】
上記態様に係る電解液体生成装置(100)によれば、第1方向(D1)からの平面視において、第2電極(11)の貫通孔(111)と、導電性膜(12)の貫通部(123)とが重なり、かつ、第1電極(13)が重ならない位置に空間部(15)が形成されている。これにより、第2電極(11)の貫通孔(111)と空間部(15)とが連通するため、電解部(1)近傍の液体の流れが生じやすくなる。したがって、電解液体の生成効率を高めることができる。
【0060】
第5の態様に係る電解液体生成装置(100)では、第4の態様において、第3方向(D3)において、第2電極(11)の貫通孔(111)の幅(d3)は、導電性膜(12)の貫通部(123)の幅(d2)よりも大きい。
【0061】
上記態様に係る電解液体生成装置(100)によれば、電解部(1)に空間部(15)が生じやすいため、電解部(1)近傍の液体の流れが生じやすくなる。したがって、電解液体の生成効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0062】
100 電解液体生成装置
1 電解部
11 陰極(第2電極)
111 貫通孔
12 導電性膜
123 スリット(貫通部)
13 陽極(第1電極)
15 空間部
61 主流路(流路)
62 外流路(流路)
3 ハウジング
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
S1,S2 断面積
d1 第1電極の幅
d2 導電性膜の貫通部の幅
d3 貫通孔の幅
図1
図2
図3
図4
図5