(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176537
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】給水装置及び給水方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/08 20060101AFI20241212BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F04B49/08 311
F04D15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095121
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】富田 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】小堀 智之
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA05
3H020BA04
3H020BA13
3H020CA01
3H020DA02
3H020EA13
3H020EA17
3H145AA02
3H145AA16
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA20
3H145CA03
3H145DA48
3H145EA13
3H145EA50
3H145GA23
(57)【要約】
【課題】給水装置において、機器の故障傾向と思われる事象の中でも、実際に給水圧力に影響を与える事象のみを警報・故障として信号を出力し、監視・管理を容易にする。
【解決手段】吐き出し圧力が許容圧力範囲を超えない場合には異常信号を出力しない。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、
前記ポンプを駆動する電動機と、
前記ポンプの吐き出し圧力を検出する圧力検出部と、
前記電動機の回転数を制御する電力変換装置と、
前記ポンプの制御に用いる所定の値を記憶する記憶部と、
前記ポンプ、前記電動機、前記圧力検出部、前記電力変換装置及び前記記憶部の少なくとも一つの異常を判断する演算部と、
前記演算部で異常があると判断した際に異常信号を出力する信号処理部と、を有する給水装置であって、
前記記憶部は、
少なくとも前記吐き出し圧力に関する許容圧力範囲を記憶しておき、
前記演算部は、
前記電動機を駆動する周波数により前記電動機の回転数を制御し、前記吐き出し圧力が前記許容圧力範囲内で駆動するように制御し、
前記信号処理部は、
前記吐き出し圧力が前記許容圧力範囲を超えない場合には前記異常信号を出力しないことを特徴とする給水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給水装置であって、
前記記憶部は、
前記異常信号の警報ランクを重要度に応じて複数記憶し、
前記信号処理部は、
前記警報ランクの前記重要度に応じて、前記異常信号を出力するか前記異常信号を出力しないかを判断することを特徴とする給水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給水装置であって、
前記演算部は、
前記吐き出し圧力が前回の前記吐き出し圧力に比べて前記許容圧力範囲を超えた程度が変化した場合に、前記警報ランクの前記重要度を変更することを特徴とする給水装置。
【請求項4】
請求項2に記載の給水装置であって、
前記記憶部は、
前記警報ランクとして、前記電動機の温度異常の警報ランク、前記圧力検出部の出力異常の警報ランク及び前記記憶部の状態異常の警報ランクをそれぞれ記憶することを特徴とする給水装置。
【請求項5】
請求項1に記載の給水装置であって、
前記演算部は、
前記吐き出し圧力が前回の前記吐き出し圧力に比べて前記許容圧力範囲を超えた程度が変化した場合に、前記許容圧力範囲を変更することを特徴とする給水装置。
【請求項6】
請求項1に記載の給水装置であって、
前記記憶部は、
前記吐き出し圧力に関する許容時間を記憶し、
前記信号処理部は、
前記吐き出し圧力が前記許容圧力範囲を超えた場合であっても、前記許容圧力範囲を超過した程度に応じて前記許容時間を超えていない場合には前記異常信号を出力しないことを特徴とする給水装置。
【請求項7】
請求項1に記載の給水装置であって、
前記圧力検出部は、
圧力センサで構成されることを特徴とする給水装置。
【請求項8】
ポンプと、
前記ポンプを駆動する電動機と、
前記ポンプの吐き出し圧力を検出する圧力検出部と、
前記電動機の運転及び停止を制御する制御部と、
前記ポンプの制御に用いる所定の値を記憶する記憶部と、
前記ポンプ、前記電動機、前記圧力検出部、制御部及び前記記憶部の少なくとも一つの異常を判断する演算部と、
前記演算部で異常があると判断した際に異常信号を出力するための信号処理部と、を有する給水装置であって、
前記制御部は、
前記ポンプの吐き出し圧力が所定の値を下回ると前記電動機を運転するように制御し、
前記電動機の運転中に前記吐き出し圧力が予め設定された所定の圧力を下回らない場合には前記異常信号を出力しないことを特徴とする給水装置。
【請求項9】
請求項8に記載の給水装置であって、
前記圧力検出部は、
圧力スイッチで構成されることを特徴とする給水装置。
【請求項10】
ポンプと、前記ポンプを駆動する電動機と、前記ポンプの吐き出し圧力を検出する圧力検出部と、前記電動機の回転数を制御する電力変換装置と、前記ポンプの制御に用いる所定の値を記憶する記憶部と、制御部を有する給水装置を用いて給水を行う給水方法であって、
前記記憶部により、
少なくとも前記吐き出し圧力に関する許容圧力範囲を記憶しておき、
前記制御部により、
前記ポンプ、前記電動機、前記圧力検出部、前記電力変換装置及び前記記憶部の少なくとも一つの異常を判断し、前記異常があると判断した際に異常信号を出力し、
前記電動機を駆動する周波数により前記電動機の回転数を制御し、前記吐き出し圧力が前記許容圧力範囲内で駆動するように制御し、
前記吐き出し圧力が前記許容圧力範囲を超えない場合には前記異常信号を出力しないことを特徴とする給水方法。
【請求項11】
請求項10に記載の給水方法であって、
前記記憶部により、
前記異常信号の警報ランクを重要度に応じて複数記憶し、
前記制御部により、
前記警報ランクの前記重要度に応じて、前記異常信号を出力するか前記異常信号を出力しないかを判断することを特徴とする給水方法。
【請求項12】
請求項11に記載の給水方法であって、
前記制御部により、
前記吐き出し圧力が前回の前記吐き出し圧力に比べて前記許容圧力範囲を超えた程度が変化した場合に、前記警報ランクの前記重要度を変更することを特徴とする給水方法。
【請求項13】
請求項11に記載の給水方法であって、
前記記憶部により、
前記警報ランクとして、前記電動機の温度異常の警報ランク、前記圧力検出部の出力異常の警報ランク及び前記記憶部の状態異常の警報ランクをそれぞれ記憶することを特徴とする給水方法。
【請求項14】
請求項10に記載の給水方法であって、
前記制御部により、
前記吐き出し圧力が前回の前記吐き出し圧力に比べて前記許容圧力範囲を超えた程度が変化した場合に、前記許容圧力範囲を変更することを特徴とする給水方法。
【請求項15】
請求項10に記載の給水方法であって、
前記記憶部により、
前記吐き出し圧力に関する許容時間を記憶し、
前記制御部により、
前記吐き出し圧力が前記許容圧力範囲を超えた場合においても、前記許容圧力範囲を超過した程度に応じて前記許容時間を超えていない場合には前記異常信号を出力しないことを特徴とする給水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置及び給水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水装置において断水は避けなければならない事態であり、そのため給水装置を構成する機器の不調や故障に対し、警報・故障信号を発報し、設備管理者や機器サービス管理会社担当者などに知らせ、断水に至る前に対処を行なってきた。これに関連する技術として、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたポンプシステムでは、ポンプの二次側の圧力の変化と、モータの駆動の関係から、漏水を検知することができるとしている。
【0005】
しかしながら、機器の警報・故障信号が必ずしも断水に繋がる事象とは限らず、警報レベルの設定によっては頻繁に警報が発報されることにより、機器の状態を確認する手間を増やすこととなる。
【0006】
さらには、設備監視技術の発展に伴い、遠隔での一元監視・管理が可能となったが、逆に、遠隔で監視している際、各地からの対象の警報・故障信号が届き、1つ1つの確認に時間を要し、重要な警報・故障信号への気付きが遅れる恐れがある。
【0007】
さらには、過剰な警報・故障信号の発報は、利用者や管理者に不安を与える恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、給水装置において、機器の故障傾向と思われる事象の中でも、実際に給水圧力に影響を与える事象のみを警報・故障として信号を出力し、監視・管理を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の給水装置は、ポンプと、前記ポンプを駆動する電動機と、前記ポンプの吐き出し圧力を検出する圧力検出部と、前記電動機の回転数を制御する電力変換装置と、前記ポンプの制御に用いる所定の値を記憶する記憶部と、前記ポンプ、前記電動機、前記圧力検出部、前記電力変換装置及び前記記憶部の少なくとも一つの異常を判断する演算部と、前記演算部で異常があると判断した際に異常信号を出力する信号処理部と、を有する給水装置であって、前記記憶部は、少なくとも前記吐き出し圧力に関する許容圧力範囲を記憶しておき、前記演算部は、前記電動機を駆動する周波数により前記電動機の回転数を制御し、前記吐き出し圧力が前記許容圧力範囲内で駆動するように制御し、前記信号処理部は、
前記吐き出し圧力が前記許容圧力範囲を超えない場合には前記異常信号を出力しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に一態様によれば、給水装置において、機器の故障傾向と思われる事象の中でも、実際に給水圧力に影響を与える事象のみを警報・故障として信号を出力し、監視・管理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1~5における給水装置の構成を示した図である。
【
図2】実施例1~5における制御装置の構成を示した図である。
【
図3A】実施例1~5における記憶部の構成を示した図である。
【
図3B】実施例1~5における記憶部の構成を示した図である。
【
図4】実施例1における制御フローを示す図である。
【
図5】実施例2における制御フローを示す図である。
【
図6】実施例3において許容圧力範囲を2種類以上に分ける場合の制御フローを示す図である。
【
図7】実施例3において警報ランク毎に異なる判定値での判断を行なう処理フローを示す図である。
【
図8】実施例4において警報ランクの変更処理フローを示す図である。
【
図9】実施例4において警報ランクの変更処理フローを示す図である。
【
図10】実施例6における許容圧力範囲の変更処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例0013】
本発明は、ポンプの吐き出し圧力が、予め設定する許容圧力範囲を超えない場合には異常信号を出力しないようにするものである。
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る給水装置の全体構成図である。
【0015】
1号機ポンプ11、2号機ポンプ12は、それぞれ1号機電動機21、2号機電動機22で駆動されている。各々ポンプの吸込み部は、吸込み管35を介して水源側と接続される。水源側、直結方式では、水道本管(図示せず)からの水の供給を受け、受水槽方式では、受水槽(図示せず)からの水の供給を受ける。
【0016】
主に直結方式の場合には、この吸込み管に流入側圧力センサ41を設け、水道本管の圧力を検出する。吸込み管と各々ポンプの間には、給水装置の整備時に、給水装置への水の流れを止めるための流入側仕切弁33を設ける。
【0017】
需要側として吐出し管36が、直送式の場合には、需要側給水管と接続して、例えば、集合住宅等の水栓に給水する。高置水槽式の場合には、この吐出し管と需要側給水管と接続して高置水槽へ給水する。
【0018】
図示していないが、給水圧力の急激な変動を抑えると同時に、自動運転中のポンプ停止間隔を長くすることを目的として、吐出し管に圧力タンクを設けることもある。吐出し管と各々ポンプの間には、給水装置の整備時に、給水装置への水の流れを止めるための吐出側仕切弁34を設ける。
【0019】
さらに、吐出側仕切弁と各々ポンプの間に1号機逆止弁31、2号機逆止弁32を設け、ポンプにより送水した水が、他方のポンプを通して逆流することを防ぐ。この吐出し管に吐出側圧力センサ42を設け、水道本管の圧力を検出する。吐出側圧力センサの検出値を基にポンプの吐出し側圧力を制御(例えば、吐出圧一定制御、推定末端圧一定制御)する。
【0020】
制御装置71は例えば制御盤のような盤形状とする。制御装置の内部構成である1号機インバータ(1号機電動機用の電力変換装置)51、2号機インバータ(2号機電動機用の電力変換装置)52は、それぞれ電源側(図示せず)より電源の供給を受け、出力電圧の周波数を変化させることにより、各々電動機の回転数を変化させ駆動する。信号入力部1は流入側圧力センサで検出した圧力信号を取り込む。同様に信号入力部2は吐出し側圧力センサで検出した圧力信号を取り込む。
【0021】
【0022】
演算部91は、記憶部93に記憶された制御パラメータに従い、操作部92から入力された指示内容に従い、或いは、信号処理部94から入力された信号に応じて、各々電動機の運転方法を決定し、1号機制御部81、2号機制御部82に電動機の運転/停止および回転数変化の指示を行なう。
【0023】
各々制御部は演算部91の指示に従い、各々制御するインバータの出力電圧のON/OFFおよび周波数変化を行なう。演算部91は操作部92あるいは信号処理部94より要求された表示内容、または演算部91で制御状態より決定した表示内容を表示部95に表示する。
【0024】
さらに、電動機、電力変換装置、圧力検出部、記憶部に異常があると判断した際、あるいはこれらの内部構成である各機器への制御や、各機器との通信などに異常を認めた場合に警報信号を出力するよう信号処理部94に指示を出す。その他、演算部91は現在の運転状態に応じた運転信号や負荷電流値、吐出圧力などの状態信号を、信号処理部を介し出力する。
【0025】
本実施例ではインバータ(電力変換装置)と制御部を分けているが、1つの構成機器としても良い。また、演算部と制御部を分けているが、1つの機器構成としても良い。
【0026】
信号処理部94ではアナログ、あるいはデジタルの有線、あるいは無線の信号の入出力を行う。他の制御盤、監視盤や機器からの制御線により入力された信号の処理、あるいは制御線により信号を出力する。または、無線通信により遠隔に設置された通信機器に対し、信号の入出力を行なう。
【0027】
図3Aは、記憶部93の揮発性メモリに都度記憶する制御パラメータである。
図3Bは、記憶部93の不揮発性メモリに記憶された制御パラメータである。
【0028】
記憶部93には各々の制御パラメータを保存する記憶アドレスと、そのアドレスに記憶している設定値(図示せず)がある。アドレス100には吐出側圧力センサで検出した現在の吐出し圧力DPAを都度更新し、記憶する。アドレス102には許容圧力下限の値LLを記憶し、アドレス104には許容圧力上限の値HLを記憶する。
【0029】
図4は、本実施例における制御フローを示す。1つの例として、演算部91が、制御装置71内の各機器との間での通信に異常を認めた場合の制御フローを示す。
【0030】
ステップ200で、演算部が制御装置内の機器との間での通信に異常を認めない場合、ステップ204に進み、異常信号を出力しない。ステップ200にて通信に異常を認めた場合、ステップ201に進み、現在の吐出し圧力DPAが、許容圧力下限LL以上であるかを確認する。
【0031】
DPAがLLに満たない場合にはステップ203に進み、異常信号を出力する。DPAがLL以上である場合、ステップ202に進み、現在の吐出し圧力DPAが、許容圧力上限HL以下であるかを確認する。DPAがHLを超過している場合にはステップ203に進み、異常信号を出力する。DPAがHL未満である場合、ステップ204に進み、異常信号を出力しない。
本発明の実施例2は、異常信号に警報ランクを設定し、吐き出し圧力が許容圧力範囲を超えない場合に異常信号を出力する、あるいは出力しないことを警報ランクに応じて判断するものである。
記憶部93には実施例1と同様にアドレス100~102に予めパラメータを設定する。加えて、アドレス110には、電動機の温度異常の警報ランクを設定する。アドレス111には、制御装置の各機器との間の通信異常の警報ランクを設定する。
アドレス112には圧力センサ(検出部)の出力異常の警報ランクを設定する。本実施例では電動機、制御機器間通信異常、センサ異常としたが、これらの警報をランク付けすることが必須ではなく、また、他の状態を警報として扱い、警報ランクを設定しても良い。
警報ランクは、例えばA、B、Cの3種類を設定し、Aの場合には圧力に関係なく警報を発報するものとし、Bの場合には吐出し側圧力が許容圧力範囲内である場合には警報を発報しないものとし、Cの場合には警報を発報しないものとする。
ステップ300で、演算部が制御装置内の機器との間での通信に異常を認めない場合、ステップ301に進み、異常信号を出力しない。ステップ300にて通信に異常を認めた場合、ステップ302に進み、制御機器間の通信異常の警報ランクがAであるかを確認する。
Aである場合にはステップ303に進み、異常信号を出力する。Aでない場合、ステップ304に進み、制御機器間の通信異常の警報ランクがBであるかを確認する。Bでない場合にはステップ305に進み、異常信号を出力しない。Bである場合、ステップ200に進む。ステップ200以降は実施例1と同様の制御フローであるので説明を割愛する。