(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176539
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】生体検知システム
(51)【国際特許分類】
G06V 40/40 20220101AFI20241212BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20241212BHJP
【FI】
G06V40/40
G06T7/20 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095123
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加賀 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健太
(72)【発明者】
【氏名】中村 渉
【テーマコード(参考)】
5B043
5L096
【Fターム(参考)】
5B043AA09
5B043AA10
5B043GA02
5L096CA04
5L096DA04
5L096FA09
5L096FA67
(57)【要約】
【課題】迅速に生体検知を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】クライアント100は、カメラ画像を時系列に取得する画像取得部1020と、取得したカメラ画像から手の姿勢を推定する姿勢推定部1050と、推定された姿勢から手の特定の動作を検出したときは、手が生体であると判定する生体検知部1060とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め登録された生体情報を用いて本人認証を行う生体認証システムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得部と、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知部とを備える生体認証システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生体認証システムにおいて、
前記特定の動作は、指でボタンを押下する動作である生体認証システム。
【請求項3】
請求項1に記載の生体認証システムにおいて、
前記特定の動作は、掌を回転させる動作である生体認証システム。
【請求項4】
請求項1に記載の生体認証システムにおいて、
前記特定の動作は、指で摘まむ動作である生体認証システム。
【請求項5】
請求項1に記載の生体認証システムにおいて、
前記取得した画像から生体を検出する生体検出部と、
前記検出された生体から生体特徴を抽出する生体特徴抽出部と、
前記生体検知部が前記手が生体であると判定したときは、前記抽出された生体特徴を登録する登録部とを備える生体認証システム。
【請求項6】
請求項5に記載の生体認証システムにおいて、
前記生体検知部が前記手が生体であると判定したときは、前記生体特徴抽出部が抽出した生体特徴と、前記登録部に登録された生体特徴と、を照合することにより前記本人認証を行う生体認証部を備える生体認証システム。
【請求項7】
請求項1に記載の生体認証システムにおいて、
前記取得した画像の上に前記特定の動作の検出状況を重ねて表示する画像出力部を備える生体認証システム。
【請求項8】
請求項1に記載の生体認証システムにおいて、
前記取得した画像から前記手の特徴点を抽出する特徴点抽出部を備え、
前記姿勢推定部は、前記抽出された特徴点から前記手の姿勢を推定する生体認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人の身体的・行動的特徴に基づき、利用者があらかじめ登録した本人であることを確認する生体認証は、パスワードの暗記やICカードのような持ち物の携帯が不要であるため利便性が高く、確実な本人確認手段として注目されている。生体認証では、指紋、顔、虹彩、静脈、掌紋などの身体的・行動的特徴から特徴量を抽出し、それを登録時の特徴量を比較することで本人であるか否かを判定する。
【0003】
この生体認証の脆弱性の一つに、人工物を用いたなりすましがある。例えば,本人の指紋、顔、虹彩、静脈、掌紋等の生体情報を第三者が入手し、その生体情報を使って本人の生体情報を含む人工物を作成し、それを生体認証システムに提示することで、第三者が不正に認証に成功するリスクがある。
【0004】
特に、汎用カメラを使って生体情報を取得して認証する生体認証システムでは、生体画像を印刷した紙や、生体画像を表示したタブレット等を生体認証システムに提示することで、容易になりすましを行うことが可能となる。そのため、生体認証システムにおいて、提示されたものが人工物でない生きた人体の一部であることを検知する生体検知技術を併用することが必須となる。
【0005】
この生体検知を実現するアプローチは、以下の4つに大別される。
【0006】
一つ目はセンサベースの検知である。この手法は、一般的な汎用カメラとは別のセンサを使って対象の電気的特性や3D形状などをセンシングし、それが生体であることを検知するものである。この手法は確実性が高いものの、専用のセンサが必要になるため、コストが高くなる上、既存のデバイスへ導入するのは困難である。
【0007】
二つ目は学習ベースの検知である。この手法は、画像として得られた顔、静脈、掌紋等を機械学習で学習し、生体と人工物に分類することで検知するものである。この手法は生体画像と様々なパターンの人工物画像を学習データとして大量に準備して、それらを識別できる識別器を学習する。機械学習を用いた手法では、学習データと識別対象のデータの間に差分があると性能が低下するため、学習データを収集した条件(人工物の種類、照明やホワイトバランスなどの環境条件、カメラ等のセンサ)と生体検知時の条件が異なると、精度が低下する。
【0008】
三つ目は生体反応の検知である。この手法は、まばたき、呼吸、脈動などの生体反応を取得し、それを使って生体検知を行うものである。これらの生体反応は微細な特徴であるため、確実に捉えるためには、動画のフレームレート、解像度、カメラ光学性能等が十分に高い必要があり、いずれかの性能が低い条件で検知を試みると生体であっても人工物と誤検知する可能性がある。このため、カメラやそれを処理するハードウェアに高い制約を課す必要があり、任意の汎用カメラデバイスで利用可能な形にするのは困難となる。
【0009】
四つ目はチャレンジレスポンス型の検知である。この手法は、例えばネットワークを介して確実な身分確認を行うeKYC(electronic Know Your Customer)において良く使われるものであり、目を瞑る、顔の向きを変える、ウィンクする、といった特定の動作をとることを要求してその動作を検出する。ただし、動作の認識・実施・検出に時間が掛かるものが多く、認証時に瞬時に検出可能な手法は知られていない。
【0010】
特許文献1は、汎用カメラを使った専用センサに依存しない生体検知に関するものであり、生体の動き、歪み、形状変化、特徴情報、3次元状態がそれぞれ生体情報の範囲内であるか否かを判定することで、生体検知を行っている。これは、4つ目のアプローチの一つと捉えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の技術では、生体に「手を握った状態にし、5秒後に、その手の親指と小指とを立てて下さい」等の複雑かつランダムな動作を要求し、その際の指の移動速度や背景の色情報等を使って生体検知を行うため、迅速に検知を行うことが困難である。
【0013】
また、特許文献1に記載の技術は、生体の動き、歪み、形状変化、特徴情報、3次元状態等に対してそれぞれ閾値を設定して検知を行うルールベースの手法であるため、誤検知率と未検知率の双方を十分に低くするのは困難であると考えられる。
【0014】
そこで、本発明は、迅速に生体検知を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の生体検知システムの一つは、生体認証システムにおいて、画像を時系列に取得する画像取得部と、取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定部と、推定された姿勢から手の特定の動作を検出したときは、手が生体であると判定する生体検知部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、迅速に生体検知を行うことができる。
【0017】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例のクライアントの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施例のクライアントのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施例のクライアントで実行される生体検知を含む生体登録処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】特徴点取得部により抽出される手の特徴点の一例を示す図である。
【
図5】画像出力部により描画される掌を回転させる動作の検出状況の一例を示す図である。
【
図6】画像出力部により描画される指で摘まむ動作の検出状況の一例を示す図である。
【
図7】画像出力部により描画される指でボタンを押下する動作の検出状況の一例を示す図である。
【
図8】本実施例のクライアントで実行される生体検知を含む生体認証処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【0020】
本実施例は、クライアントでカメラ画像を取得し、カメラ画像から手の姿勢を推定し、手の姿勢から特定の動作を検出し、検出に成功したときに生体登録及び生体認証を行う生体認証システムである。
【0021】
図1は、本実施例のクライアントの構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図1において、クライアント1000は、ユーザID入力部1010、画像取得部1020、特徴点取得部1030、画像出力部1040、姿勢推定部1050、生体検知部1060、生体検出部1070、生体特徴抽出部1071、テンプレート生成部1072、生体認証部1073、及びテンプレート格納部1090を備える。以降で各部について説明する。
【0023】
ユーザID入力部1010は、キーボード、カードリーダ、クライアント1000上のメモリ等を介してユーザに付与されたIDの入力を取得する。画像取得部1020は、クライアント1000に接続されたカメラからカメラ画像を取得する。特徴点取得部1030は、画像取得部1020で取得したカメラ画像から、手の特徴点を抽出する。
【0024】
姿勢推定部1050は、特徴点取得部1030で抽出した手の特徴点の座標に基づいて、手の姿勢を推定する。生体検知部1060は、姿勢推定部1050が推定した手の姿勢に基づいて、生体検知を行う。この生体検知は、手の姿勢から特定の動作を検出したときは、カメラ画像の手が生体であると判定する。
【0025】
画像出力部1040は、生体検知の結果をカメラ画像上に描画してそれをディスプレイなどの出力装置へ出力する。
【0026】
生体検出部1070は、カメラ画像から生体検出を行う。この生体検出は、カメラ画像において生体の位置を特定する処理であり、例えば顔認証であれば顔の領域の位置を検出し、指静脈認証であれば指の領域の位置を検出し、掌紋認証であれば掌の領域の位置を検出する。
【0027】
生体特徴抽出部1071は、生体検出部1070で検出された生体に対して、生体特徴抽出を行う。この生体特徴抽出は、顔認証であれば、顔の画像を切り出して機械学習モデルへ入力することで特徴量を得る。指静脈認証であれば、指の画像の画像を切り出して血管パターンを強調した静脈パターンを取得する。掌紋認証であれば、掌の画像を切り出して掌紋パターンを取得する。
【0028】
テンプレート生成部1072は、生体特徴抽出部1071で抽出された生体特徴に基づき、登録用のテンプレートを生成する。テンプレート格納部1090は、テンプレート生成部1072で生成されたテンプレートを格納する。
【0029】
生体認証部1073は、生体特徴抽出部1071で抽出された生体特徴と、テンプレート生成部1072に登録されたテンプレートとを照合することにより、生体認証を行う。
【0030】
次に、
図2を参照して、クライアント1000のハードウェア構成を説明する。
【0031】
図2は、本実施例のクライアント1000のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0032】
図2において、クライアント1000は、CPU(Central Processing Unit)8010、主記憶装置8020、補助記憶装置8030、入力装置8040、出力装置8050、及び通信装置8060を備える。
【0033】
CPU8010は、中央処理部であり、主記憶装置6020が保持しているプログラムを実行することで、必要な機能を実装する。プログラムは、
図1に示した、ユーザID入力部1010、画像取得部1020、特徴点取得部1030、画像出力部1040、姿勢推定部1050、生体検知部1060、生体検出部1070、生体特徴抽出部1071、テンプレート生成部1072、及び生体認証部1073を実現するプログラムを含む。
【0034】
主記憶装置6020は、CPU8010が処理を実行する際に利用する主記憶装置であり、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子で構成される。補助記憶装置8030は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などに代表される記憶装置であり、テンプレート格納部1090に相当する。各部が格納するデータは、補助記憶装置8030上のデータとして蓄積される。
【0035】
入力装置8040は、ユーザID入力部1010、画像取得部1020、において、情報を読み込むために使用され、キーボード、生体センサ、タッチパネル、スマートデバイス、スキャナ、またはカメラ等で構成される。出力装置8050は、画像出力部1040において情報を出力するために使用され、ディスプレイ等で構成される。通信装置8060は、クライアント1000が外部装置との通信を行うために用いられる。
【0036】
以上の構成より、本実施例では、カメラ画像から推定した手の動作に基づき、手が人工物でないことを確認した上で、生体登録や生体認証を行う。
【0037】
次に、クライアント1000を使って生体登録を行う手順を
図3を参照して説明する。
【0038】
図3は、本実施例のクライアント1000で実行される生体検知を含む生体登録処理の一例を示すフローチャートである。
【0039】
まず、クライアント1000におけるユーザID入力部1010により、ユーザにより入力されたユーザIDを取得する(ステップS2010)。ユーザIDは、典型的には任意の長さの文字列で表される。
【0040】
次に、カメラを起動し(ステップS2020)、画像取得部1020を使ってユーザの手を含むカメラ画像を時系列に取得する(ステップS2030)。画像取得部1020は、クライアント1000に搭載されている汎用カメラであり、そのカメラを使って画像を取得する。取得したカメラ画像は、画像出力部1040によりクライアント1000のディスプレイなどの出力装置8050に表示される。
【0041】
次に、ステップS2030で取得したカメラ画像から、特徴点取得部1030を使ってユーザの手の特徴点を抽出する(ステップS2040)。手の特徴点の一例を
図4に示す。
【0042】
図4は、特徴点取得部1030により抽出される手の特徴点の一例を示す図である。
【0043】
図4に示すように、カメラ画像において、指の先端、関節、掌下端等の位置に特徴点4010を設定して、その位置を推定することで、手の位置及び手の姿勢を推定することが可能となる。
【0044】
図3に戻り、ステップS2040で得られた手の特徴点の座標に基づき、手の追跡処理を行い、追跡が成功したか否かを判定する(ステップS2050)。この追跡処理では、前のフレーム内の手の座標と現在のフレーム内の手の座標とを比較し、座標が十分近いときには同一の手とみなして追跡成功とし、座標が一定値以上離れている場合には異なる手とみなして追跡失敗とする。この判定に用いる座標としては、手全体を含む矩形領域の座標や各特徴点の座標を使うことができる。
【0045】
ステップS2050で追跡に失敗した場合は、生体検知結果を初期状態である「検知中」に初期化して、ステップS2030へ戻る(ステップS2061)。
【0046】
一方、ステップS2050で追跡に成功した場合は、生体検知結果が「検知中」であるか「検知成功」であるかにより、処理を分岐する(ステップS2060)。
【0047】
ステップS2060で生体検知結果が「検知中」であれば、ステップS2040で抽出した手の特徴点の座標に基づいて、手の姿勢を推定する(ステップS2070)。
【0048】
推定する手の姿勢は、検出対象の手の特定の動作に依存する。手の特定の動作としては、掌を回転させる動作、指で摘まむ動作、指でボタンを押下する動作、を含む任意の動作が挙げられるが、これらに限定されない。なお、検出対象の手の特定の動作は、毎回同一の動作でも良いし、生体検知を行う度にランダムに変更しても良い。
【0049】
掌を回転させる動作は、掌を横方向に回転させて裏返すものであり、紙に印刷した画像やディスプレイに表示した画像は裏返すことができないため、この検知に成功することができない。この動作の場合、推定する必要がある手の姿勢は、カメラに対する掌の回転角度となる。この回転角度は、手の特徴点が3次元座標で表されている場合、カメラと手を結ぶ直線に対して手が何度傾いているかを求めることで得られる。また、直接手の回転角度を推定する方法以外に、回転すると掌が縦長に変形することを利用して、掌を構成する特徴点の2次元座標から求められる確度や、掌を含む矩形領域の縦横比から間接的に回転角度を推定する方法も採ることができる。
【0050】
指で摘まむ動作は、カメラで撮影した画像上の任意の位置に摘まむ対象の物体を配置し、その上で物体を指で摘まむ動作を行うものであり、紙に印刷した画像やディスプレイに表示した画像は摘まむような立体的な動きができないため、この検知に成功することができない。この動作の場合は、推定する必要がある手の姿勢は、指先の座標と摘まむ指間の距離となる。親指と人差し指で摘まむ場合は、親指の先端の座標と人差し指の先端の座標及びそれらの距離を特徴点座標から算出する。
【0051】
指でボタンを押下する動作は、カメラで撮影した画像上の任意の位置に押下対象のボタンを配置し、その上でボタンを押下する動作を行うものであり、紙に印刷した画像やディスプレイに表示した画像で検知に成功することは困難となる。人工物をカメラに近づけることで検知に成功する可能性はあるが、その場合は人工物に含まれる手以外の背景領域も同じ動きをすることになるため、手の領域と背景の領域のフレーム間の動きを分析し、背景の動きが手と連動していないことをもって検知することもできる。この動作の場合、推定する必要がある手の姿勢は、押下する指(例えば、人差し指)の先端の特徴点の奥行き方向の座標や、カメラに対する指の角度となる。なお、指の座標や角度に代わり、一定時間ボタンの座標の上に指を置いたことをもって押下と判定することもできる。これらは指の特徴点座標から求めることができる。
【0052】
ステップS2070で推定した手の姿勢に基づき、手の特定の動作を検出したときは生体検知結果を「検知成功」に更新し、手の特定の動作を検出できないときは、「検知中」のままとする(ステップS2072)。
【0053】
例えば、手の特定の動作が掌を回転させる動作である場合には、掌が所定の角度回転し切った場合に生体検知成功とし、生体検知結果に「検知成功」を代入する。このとき、掌をカメラに向けた状態から回転させ、一度手の甲をカメラに向けて、再度回転させて掌をカメラに向ける動作を要求すると、生体検知が成功した時点で掌がカメラ側を向いており、その後行われる指静脈認証や掌紋認証にとって最適な姿勢へ誘導することができる。よって、本方式は単に生体検知を行うのみならず、その後の生体認証の高速化、高精度化にも寄与する可能性がある。
【0054】
また、手の特定の動作が指で摘まむ動作である場合には、摘まむ対象の物体の上で2つの指の先端間の距離が一定未満になった場合に生体検知成功とし、生体検知結果に「検知成功」を代入する。
【0055】
また、手の特定の動作が指でボタンを押下する動作である場合には、押下対象の物体(例えばボタン)の上で指先端の座標や指の角度が一定以上になった場合に生体検知成功とし、生体検知結果に「検知成功」を代入する。
【0056】
以上の条件を満たさない場合には、生体検知が完了していないと判定し、精緻検知結果は「検知中」のままとする。
【0057】
ステップS2070で推定された手の姿勢、及びステップS2072の手の特定の動作の検出状況を、画像出力部1040によりクライアント1000のディスプレイなどの出力装置8050に表示されるカメラ画像に重ねて描画する(ステップS2090)。
【0058】
ここで、ステップS2090で描画される検出状況について
図5~
図7を参照して説明する。
【0059】
図5は、画像出力部1040により描画される掌を回転させる動作の検出状況の一例を示す図である。
【0060】
図5の例では、カメラ画像において、手の回転方向を複数の部分に分割された矢印5010で示しており、手の回転量に応じて矢印の一部の色が変わる。これにより、手の回転方向及び現状の回転量をユーザにフィードバックすることが可能となる。
【0061】
図6は、画像出力部1040により描画される指で摘まむ動作の検出状況の一例を示す図である。
【0062】
図6の例では、指で摘まんで操作するトグルスイッチ6010をカメラ画像上のランダムな場所に表示し、ユーザがトグルスイッチ6010の上で摘まむ動作を行って、生体検知に成功した場合、トグルスイッチ6010の位置が変わりONの状態になったことを示す画像を表示することで、トグルスイッチ6010が摘ままれたことをユーザにフィードバックすることが可能となる。
【0063】
図7は、画像出力部1040により描画される指でボタンを押下する動作の検出状況の一例を示す図である。
【0064】
図7の例では、仮想的なボタン7010をカメラ画像上のランダムな場所へ表示し、ユーザが指でボタン7010を押下する動作を行って、生体検知に成功した場合、ボタン7010を押下後のものに変えることで、ボタン7010が押されたことをユーザへフィードバックすることが可能となる。
【0065】
ステップS2090で結果画像を描画した後、タイムアウトしたか否かを判定する(ステップS2092)。ステップS2092で、処理開始から一定以上の時間が経過してタイムアウトしたときは、登録失敗として処理を終了する。ステップS2092で、まだ経過時間が一定未満でありタイムアウトしていない場合には、ステップS2030に戻り、処理を継続する。
【0066】
一方、ステップS2060で、生体検知結果が「検知成功」であれば、生体検知処理を完了とし生体登録処理に入る。まず、カメラ画像から生体検出を行う(ステップS2080)。この生体検出は、カメラ画像において生体の位置を特定する処理であり、例えば顔認証であれば顔の領域の位置を検出し、指静脈認証であれば指の領域の位置を検出し、掌紋認証であれば掌の領域の位置を検出する。
【0067】
次に、ステップS2080で検出された生体に対して、生体特徴抽出を行う(ステップS2082)。この生体特徴抽出は、顔認証であれば、顔の画像を切り出して機械学習モデルへ入力することで特徴量を得る。指静脈認証であれば、指の画像の画像を切り出して血管パターンを強調した静脈パターンを取得する。掌紋認証であれば、掌の画像を切り出して掌紋パターンを取得する。
【0068】
ステップS2082で抽出された生体特徴に基づき、登録用のテンプレートを生成し(ステップS2084)、ステップS2080、ステップS2082、ステップS2084の全ての処理に成功して登録用のテンプレートの生成に成功したか否かを判定する(ステップS2086)。
【0069】
ステップS2086で、テンプレートの生成に失敗したと判定されたときは、ステップS2090へ進み、再度テンプレート生成を試みる。
【0070】
一方、ステップS2086で、テンプレートの生成に成功したと判定された場合は、生成したテンプレートをステップS2010で入力したユーザIDと紐づけてテンプレート格納部1090に登録し(ステップS2088)、生体登録成功として処理を完了する。
【0071】
図3の生体登録処理によれば、生体検知を行い人工物でないことを確認した上で、生体登録を実施し、テンプレートをテンプレート格納部1090に登録する。これにより、生体認証システムの初期登録が完了し、以後生体認証が利用できるようになる。
【0072】
次に、クライアント1000を使って生体認証を行う手順を
図8を参照して説明する。
【0073】
図8は、本実施例のクライアント1000で実行される生体検知を含む生体認証処理の一例を示すフローチャートである。
図8において、
図3と同一の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
図8において、ステップS2010でユーザIDを取得した後、テンプレート格納部1090に登録されたテンプレートを取得する(ステップS3012)。テンプレートは、ステップS2088にてテンプレート格納部1090にユーザIDと紐づけて格納されているため、ユーザIDをキーとしてテンプレートを取得することができる。なお、ユーザを指定して認証を行う1:1認証ではステップS2010とステップS3012が必要となるが、ユーザを指定せずにユーザが誰かを特定する1:N認証ではステップS2010とステップS3012は不要となる。
【0075】
カメラ画像を取得してから、生体検知までの手順(ステップS2030、ステップS2040、ステップS2050、ステップS2060、ステップS2061、ステップS2070、ステップS2072、ステップS2090、ステップS2092)は、
図3の生体登録処理と同様である。ただし、登録時のみ生体検知を行い、認証時には生体検知を行わない場合には、ステップS2030~ステップS2092の手順を全て行わず、カメラ起動ステップS2020の後生体検出ステップS2080に進むこともできる。
【0076】
生体検出ステップS2080、生体特徴抽出ステップS2082は生体登録と同じ処理である。
【0077】
次に、ステップS2082で抽出された生体特徴と、ステップS2010で入力されたユーザIDと紐づけられてテンプレート生成部1072に登録されたテンプレートとを照合することにより、生体認証を行う(ステップS3084)。
【0078】
次に、ステップS2082で抽出された生体特徴と、ステップS2010で入力されたユーザIDと紐づけられてテンプレート生成部1072に登録されたテンプレートとが一致し、生体認証に成功したか否かを判別する(ステップS3086)。
【0079】
ステップS3086で、生体認証が成功したときは、認証成功として処理を終了する。一方、ステップS3086で、生体認証に失敗したときは、ステップS2090へ進み処理を継続する。
【0080】
図8の生体登録処理によれば、生体検知を行い人工物でないことを確認した上で、生体認証を行うことができる。
【0081】
なお、顔認証など他の部位を使った生体認証の場合、手以外の部位の検出及び追跡を行うこともできる。
【0082】
さらに、手とは別の部位を認証に使うシステムにおいて人工物によるなりすましを行う場合、手と別の部位を同時に人工物とする攻撃と、認証に用いる部位のみを人工物とする攻撃が考えられる。
【0083】
前者では、手と別の部位を人工物として同時に提示して特定の動作を行う必要がある。これは、別の部位単体を人工物として提示する攻撃と比較すると大きく難易度が上がる。例えば、Deep fake技術で手と顔を同時に人工的に生成して特定の動作をリアルタイムに行う必要があるため、技術的難易度が高い。
【0084】
一方後者では、別の部位のみを人工物として手は人間のものを使うため、技術的難易度は前者に比べて低いが、手と人工物を適切に提示する必要があるため生体検知を突破して認証に成功するのは難しい。
【0085】
また、手と別の部位が同一の生体であることを、動きの同期や脈動周期の一致などを観測することで検知することで、さらに確実な生体検知を行うことができる。
【0086】
本実施例によれば、カメラ画像から手の特徴点を抽出し、手の特徴点から手の姿勢を推定し、手の姿勢から手の特定の動作を検出することにより手が生体であると判定するので、迅速に生体検知を行うことができる。
【0087】
また、本実施例によれば、カメラ画像の取得には一般的な汎用カメラを使用することができるので、専用のセンサや高性能のカメラなどを用意する必要がなくコストを低減することができると共に、本実施例を既存のデバイスに導入することができる。
【0088】
また、本実施例によれば、検出対象の手の特定の動作は大きいため、フレームレートや解像度に影響を受けにくく、安定して生体検知を行うことができる。
【0089】
また、本実施例によれば、生体検知に機械学習を使用しないので、環境条件の変化やカメラの変更に影響を受けにくく、未知の人工物にも対応することができる。
【0090】
また、本実施例によれば、手の動作のみを検出して生体検知を行うので、顔を映すことなく生体検知を行うことができる。
【0091】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め登録された生体情報を用いて本人認証を行う生体認証システムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得部と、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知部とを備え、
前記特定の動作は、指でボタンを押下する動作である生体認証システム。
【請求項2】
予め登録された生体情報を用いて本人認証を行う生体認証システムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得部と、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知部とを備え、
前記特定の動作は、掌を回転させる動作である生体認証システム。
【請求項3】
予め登録された生体情報を用いて本人認証を行う生体認証システムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得部と、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知部とを備え、
前記特定の動作は、指で摘まむ動作である生体認証システム。
【請求項4】
予め登録された生体情報を用いて本人認証を行う生体認証システムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得部と、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知部と、
前記取得した画像から生体を検出する生体検出部と、
前記検出された生体から生体特徴を抽出する生体特徴抽出部と、
前記生体検知部が前記手が生体であると判定したときは、前記抽出された生体特徴を登録する登録部とを備える生体認証システム。
【請求項5】
請求項4に記載の生体認証システムにおいて、
前記生体検知部が前記手が生体であると判定したときは、前記生体特徴抽出部が抽出した生体特徴と、前記登録部に登録された生体特徴と、を照合することにより前記本人認証を行う生体認証部を備える生体認証システム。
【請求項6】
予め登録された生体情報を用いて本人認証を行う生体認証システムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得部と、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知部と、
前記取得した画像の上に前記特定の動作の検出状況を重ねて表示する画像出力部と、を備える生体認証システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の生体認証システムにおいて、
前記取得した画像から前記手の特徴点を抽出する特徴点抽出部を備え、
前記姿勢推定部は、前記抽出された特徴点から前記手の姿勢を推定する生体認証システ
ム。
【請求項8】
予め登録された生体情報を用いて本人認証をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得ステップと、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定ステップと、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知ステップとをコンピュータに実行させ、
前記特定の動作は、指でボタンを押下する動作であるプログラム。
【請求項9】
予め登録された生体情報を用いて本人認証をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得ステップと、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定ステップと、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知ステップとをコンピュータに実行させ、
前記特定の動作は、掌を回転させる動作であるプログラム。
【請求項10】
予め登録された生体情報を用いて本人認証をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得ステップと、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定ステップと、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知ステップとをコンピュータに実行させ、
前記特定の動作は、指で摘まむ動作であるプログラム。
【請求項11】
予め登録された生体情報を用いて本人認証をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得ステップと、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定ステップと、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知ステップと、
前記取得した画像から生体を検出する生体検出ステップと、
前記検出された生体から生体特徴を抽出する生体特徴抽出ステップと、
前記生体検知ステップで前記手が生体であると判定したときは、前記抽出された生体特徴を登録する登録ステップとをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムにおいて、
前記生体検知ステップで前記手が生体であると判定したときは、前記生体特徴抽出ステップで抽出した生体特徴と、前記登録ステップで登録された生体特徴と、を照合することにより前記本人認証を行う生体認証ステップをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
予め登録された生体情報を用いて本人認証をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
画像を時系列に取得する画像取得ステップと、
前記取得した画像から手の姿勢を推定する姿勢推定ステップと、
前記推定された姿勢から前記手の特定の動作を検出したときは、前記手が生体であると判定する生体検知ステップと、
前記取得した画像の上に前記特定の動作の検出状況を重ねて表示する画像出力ステップと、をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか1項に記載のプログラムにおいて、
前記取得した画像から前記手の特徴点を抽出する特徴点抽出ステップをコンピュータに実行させ、
前記姿勢推定ステップにおいて、前記抽出された特徴点から前記手の姿勢を推定するプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
CPU8010は、中央処理部であり、
主記憶装置8020が保持しているプログラムを実行することで、必要な機能を実装する。プログラムは、
図1に示した、ユーザID入力部1010、画像取得部1020、特徴点取得部1030、画像出力部1040、姿勢推定部1050、生体検知部1060、生体検出部1070、生体特徴抽出部1071、テンプレート生成部1072、及び生体認証部1073を実現するプログラムを含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
主記憶装置8020は、CPU8010が処理を実行する際に利用する主記憶装置であり、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子で構成される。補助記憶装置8030は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などに代表される記憶装置であり、テンプレート格納部1090に相当する。各部が格納するデータは、補助記憶装置8030上のデータとして蓄積される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
以上の条件を満たさない場合には、生体検知が完了していないと判定し、生体検知結果は「検知中」のままとする。