(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176544
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】消防訓練システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241212BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095129
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】502266205
【氏名又は名称】大和ライフネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】畠中 一江
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】消防訓練の参加率を向上できる消防訓練システムを提供する。
【解決手段】消防訓練システム1は、マンションMの居住者M2に消防訓練を実施する消防訓練システムであって、ネットワーク10を介して、居住者M2が有する居住者端末30と接続可能に構成されるメインサーバ40を具備し、メインサーバ40は、居住者M2に関する居住者M2データ及び消防訓練のシミュレーション映像に関するデータを有し、居住者端末30を介して居住者M2を認証した場合、シミュレーション映像を居住者端末30に配信可能に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の居住者に消防訓練を実施する消防訓練システムであって、
ネットワークを介して、前記居住者が有する居住者端末と接続可能に構成される制御装置を具備し、
前記制御装置は、
前記居住者に関する居住者データ及び前記消防訓練のシミュレーション映像に関するデータを有し、
前記居住者端末を介して前記居住者を認証した場合、前記シミュレーション映像を前記居住者端末に配信可能に構成される、
消防訓練システム。
【請求項2】
前記シミュレーション映像には、
前記集合住宅が再現された仮想空間内における主観映像が含まれ、
前記主観映像では、
前記居住者端末の姿勢の変更に応じて前記仮想空間内における視点が変更される、
請求項1に記載の消防訓練システム。
【請求項3】
前記シミュレーション映像は、
消防に関するストーリーが進行するストーリー性を有すると共に、前記ストーリーの進行状況に応じて前記消防に関する質問を表示する、
請求項1に記載の消防訓練システム。
【請求項4】
前記シミュレーション映像は、
前記ストーリーとして、避難経路による避難の様子を表示するものであって、
前記集合住宅のベランダにおいて仕切り板を蹴破る様子を複数視点から表示する、
請求項3に記載の消防訓練システム。
【請求項5】
前記シミュレーション映像は、
前記ストーリーとして、避難経路による避難の様子を表示するものであって、
前記集合住宅が再現された仮想空間内における主観映像が含まれ、
前記主観映像は、
前記集合住宅のベランダにおいて避難ハッチを降りる様子を表示する、
請求項3に記載の消防訓練システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記居住者端末を介して前記居住者を認証した認証結果に基づいて、前記集合住宅の防災訓練の参加状況を集計可能に構成される、
請求項1に記載の消防訓練システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防訓練を実施する消防訓練システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばマンション等の集合住宅では、居住者向けの消防訓練が行われる。消防訓練に参加した居住者は、例えば特許文献1に記載の消火栓等を用いて、実際に火災が発生した場面で実施すべき行動の訓練を行う。
【0003】
ここで、一般的に比較的大規模のマンションでは、消防計画を作成すると共に消防署等の所定の機関にこれを提出し、当該消防計画に基づく消防訓練を、定期的に行うことが求められる。このため、居住者は定期的に所定の訓練場所に集合する必要があるが、スケジュールが拘束されるのを嫌がる居住者も多く、消防訓練の参加率の低下が問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、消防訓練の参加率を向上できる消防訓練システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、集合住宅の居住者に消防訓練を実施する消防訓練システムであって、ネットワークを介して、前記居住者が有する居住者端末と接続可能に構成される制御装置を具備し、前記制御装置は、前記居住者に関する居住者データ及び前記消防訓練のシミュレーション映像に関するデータを有し、前記居住者端末を介して前記居住者を認証した場合、前記シミュレーション映像を前記居住者端末に配信可能に構成されるものである。
【0008】
請求項2においては、前記シミュレーション映像には、前記集合住宅が再現された仮想空間内における主観映像が含まれ、前記主観映像では、前記居住者端末の姿勢の変更に応じて前記仮想空間内における視点が変更されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記シミュレーション映像は、消防に関するストーリーが進行するストーリー性を有すると共に、前記ストーリーの進行状況に応じて前記消防に関する質問を表示するものである。
【0010】
請求項4においては、前記シミュレーション映像は、前記ストーリーとして、避難経路による避難の様子を表示するものであって、前記集合住宅のベランダにおいて仕切り板を蹴破る様子を複数視点から表示するものである。
【0011】
請求項5においては、前記シミュレーション映像は、前記ストーリーとして、避難経路による避難の様子を表示するものであって、前記集合住宅が再現された仮想空間内における主観映像が含まれ、前記主観映像は、前記集合住宅のベランダにおいて避難ハッチを降りる様子を表示するものである。
【0012】
請求項6においては、前記制御装置は、前記居住者端末を介して前記居住者を認証した認証結果に基づいて、前記集合住宅の防災訓練の参加状況を集計可能に構成されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明においては、消防訓練の参加率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る消防訓練システムの構成を示したブロック図。
【
図3】消防訓練の実施の流れを示したフローチャート。
【
図4】(a)映像コンテンツのうち、消火訓練の消火器編(基礎)の一場面を示した図。(b)同じく、
図4(a)の続きを示した図。(c)同じく、
図4(b)の続きを示した図。
【
図5】(a)同じく、
図4(c)の続きを示した図。(b)同じく、
図5(a)の続きを示した図。(c)同じく、
図5(b)の続きを示した図。
【
図6】(a)映像コンテンツのうち、避難訓練のベランダ編の一場面を示した図。(b)同じく、
図6(a)の続きを示した図。(c)同じく、
図6(b)の続きを示した図。
【
図7】(a)映像コンテンツのうち、避難訓練のベランダ編の
図6(a)と異なる一場面を示した図。(b)同じく、
図7(a)の続きを示した図。(c)同じく、
図7(b)の続きを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、
図1及び
図2を用いて、本発明の一実施形態に係る消防訓練システム1について説明する。
【0017】
本実施形態に係る消防訓練システム1は、集合住宅の居住者に、オンラインで消防訓練を実施するものである。本実施形態においては、前記集合住宅の居住者として、管理組合M1が設けられたマンションMにおける複数の居住者M2を想定している。消防訓練システム1は、例えばマンション事業を展開する事業者Bにより管理される。マンションM(管理組合M1)は、事業者Bと契約することにより、金銭等の支払いの対価として消防訓練システム1を使用する。
【0018】
ここで、一般的に比較的大規模のマンションでは、消防計画を作成すると共に消防署等の所定の機関にこれを提出し、当該消防計画に基づく消防訓練を、定期的に行うことが求められる。そのため、居住者は定期的に所定の訓練場所に集合する必要があるが、スケジュールが拘束されるのを嫌がる居住者も多く、消防訓練の参加率の低下が問題となっている。
【0019】
これに対して、本実施形態に係る消防訓練システム1は、上述の如くマンションMの居住者M2にオンラインで消防訓練を実施する。具体的には、消防訓練システム1では、マンションで火災が発生した場面において居住者M2が実施すべき行動をシミュレーションした映像(シミュレーション映像)を、後述のネットワーク10を介して居住者M2の居住者端末30に表示し、当該居住者M2の視聴をもって消防訓練の参加とすることができる。
【0020】
これによれば、居住者M2は、自身の端末(後述の居住者端末30)を用いて、任意のタイミングかつ任意の場所で消防訓練に参加できるために参加が容易となり、マンションMにおける消防訓練の参加率の向上を図ることができる。なお以下では、消防訓練に関する仮想現実(VR)映像を「消防訓練映像」と称する。
【0021】
消防訓練システム1は、ネットワーク10、組合端末20、居住者端末30及びメインサーバ40を具備する。なお
図1では説明の便宜上1つの居住者端末30が示されるが、実際には複数(例えばマンションMにおいて消防訓練の参加に用いられる数量)の居住者端末30が消防訓練システム1に含まれる。
【0022】
ネットワーク10は、消防訓練システム1を構成する各種機器(後述するメインサーバ40等)が任意に接続されるものである。本実施形態では、ネットワーク10として、インターネットが採用される。
【0023】
組合端末20は、マンションMの管理組合M1が使用する端末である。組合端末20は、マンションMの所定の場所(例えば、管理組合M1の管理室)に設置される。本実施形態では、組合端末20として、据え置き型のパソコンが採用される。なお組合端末20としてはこれに限定されず、スマートフォンやタブレット等の携帯型の端末を採用できる。組合端末20は、ネットワーク10に接続可能に構成される。組合端末20は、組合タッチパネル22、組合記憶部23及び組合制御部24を具備する。
【0024】
組合記憶部23は、所定のプログラムやデータ等が記憶されるものである。組合記憶部23は、HDD、RAM、ROM等により構成される。
【0025】
組合制御部24は、組合記憶部23に記憶されたプログラム等により、各種の処理を実行するものである。組合制御部24は、CPU等により構成される。
【0026】
組合タッチパネル22は、各種情報の入力及び表示(出力)が可能なものである。管理組合M1の組合員は、例えば組合タッチパネル22への入力により、組合端末20を操作することができる。また管理組合M1の組合員は、例えば組合タッチパネル22の表示により、所定の情報を取得することができる。
【0027】
居住者端末30は、マンションMの居住者M2が使用する端末である。居住者端末30は、例えば居住者M2に所有され、当該居住者M2に携行される。本実施形態では、居住者端末30として、スマートフォンやタブレット等の携帯型の端末が採用される。また居住者端末30としてはこれに限定されず、据え置き型の端末を採用できる。居住者端末30は、ネットワーク10に接続可能に構成される。居住者端末30は、居住者カメラ部31、居住者タッチパネル32、居住者記憶部33及び居住者制御部34を具備する。
【0028】
居住者カメラ部31は、所定のレンズ部(不図示)を有し、画像(映像)を取得可能なものである。居住者カメラ部31は、例えばQRコード(登録商標、以下同じ)の画像を取得できる。
【0029】
居住者タッチパネル32は、各種情報の入力及び表示(出力)が可能なものである。居住者タッチパネル32の表示には、後述のメインサーバ40から配信されるシミュレーション映像が含まれる。居住者M2は、例えば居住者タッチパネル32への入力により、居住者端末30を操作することができる。また管理組合M1の組合員は、例えば居住者タッチパネル32の表示により、所定の情報を取得できる。
【0030】
居住者記憶部33は、所定のプログラムやデータ等が記憶されるものである。居住者記憶部33は、HDD、RAM、ROM等により構成される。
【0031】
居住者制御部34は、居住者記憶部33に記憶されたプログラム等により、各種の処理を実行するものである。居住者制御部34は、CPU等により構成される。
【0032】
居住者制御部34は、居住者カメラ部31により取得されたQRコードの画像に基づいて所定の処理を実行することができる。例えば居住者制御部34は、前記所定の処理として、後述するメインサーバ40に対して、シミュレーション映像の配信のためのアクセス要求を行い、ログイン画面を居住者タッチパネル32に表示させることができる。こうして、ログイン画面が表示されると、居住者M2は、居住者タッチパネル32により所定のログイン情報(本実施形態では、居住者M2の部屋番号)を入力できる。
【0033】
また居住者制御部34は、上述の如き居住者M2の部屋番号の入力により、メインサーバ40に認証されると、当該メインサーバ40の動画配信機能を利用することができる。具体的には、居住者制御部34は、複数種類のシミュレーション映像のうち、希望するシミュレーション映像の要求をメインサーバ40に行うことができる。そして、居住者制御部34は、要求に応じた消防訓練映像データ47をメインサーバ40から受信すると、希望するシミュレーション映像を居住者タッチパネル32に表示させることができる。
【0034】
また居住者制御部34は、自身に内蔵される所定のセンサ部の検知結果に基づいて、居住者端末30の姿勢(鉛直方向及び水平方向を基準とした傾き)を判定することができる。こうして、居住者制御部34は、居住者端末30の姿勢の変更に応じて、居住者タッチパネル32に表示されるシミュレーション映像の見え方(具体的には、後述するVR空間内における視点)を変更できる。
【0035】
メインサーバ40は、消防訓練システム1の主たるコンピュータである。メインサーバ40は、事業者Bに管理される。メインサーバ40は、事業者Bの事務所等の任意の場所に設置される。メインサーバ40は、ネットワーク10に接続可能に構成される。メインサーバ40は、後述するように、ネットワーク10を介して所定の端末に動画を配信可能な機能(動画配信機能)を有する。メインサーバ40は、メイン記憶部43及びメイン制御部44を有する。
【0036】
メイン記憶部43は、所定のプログラムやデータ等が記憶されるものである。メイン記憶部43は、HDD、RAM、ROM等により構成される。前記所定のプログラムには、消防訓練システム1を稼動させるための種々のプログラムが含まれる。また前記所定のデータには、居住者データ46及び消防訓練映像データ47が含まれる。
【0037】
居住者データ46とは、消防訓練システム1を用いた消防訓練に参加する居住者M2に関するデータである。本実施形態において、居住者データ46には、マンションMにおいて消防訓練に参加する予定の居住者M2の氏名や部屋番号等に関するデータが含まれる。居住者データ46は、例えばマンションMの管理組合M1(組合端末20)からメインサーバ40へと送信され、メイン記憶部43に取得される。また居住者データ46は、送信されるのではなく、例えばUSBメモリ等の、メイン制御部44により読み取り可能な記録媒体から取得されてもよい。
【0038】
消防訓練映像データ47は、シミュレーション映像に関するデータである。ここで、シミュレーション映像とは、上述の如くマンションで火災が発生した場面において居住者M2が実施すべき行動をシミュレーションした映像である。シミュレーション映像には、マンションが再現された仮想(VR)空間内における主観的なVR映像が含まれる。具体的には、シミュレーション映像では、マンションの居室やベランタ等がVR空間として映し出されると共に、当該VR空間内で消防に関するストーリーが進行するような映像が表示される。また本実施形態に係るシミュレーション映像には、左右方向360度、上下方向360度の視野分の画像範囲(有効画像範囲)を有するVR映像が含まれる。またシミュレーション映像には、客観的なVR映像も含まれる。
【0039】
消防訓練映像データ47は、事業者Bにより事前に作成される。本実施形態では、シミュレーション映像は、居住者M2が居住するマンションMとは異なるマンション(概ね同規模の一般的なマンション)を舞台として撮影される。これにより、消防訓練映像データ47をマンションMとは異なる他のマンションの消防訓練でも使用することができ、汎用性の向上を図ることができる。またシミュレーション映像は、居住者M2が居住するマンションMを舞台として撮影されてもよい。これにより、居住者M2に対する消防訓練の効果を効果的に向上できる。
【0040】
ここで、
図2に示すように、消防訓練には、3種類の訓練(消火訓練、避難訓練、通報訓練)が含まれる。そこで、本実施形態においては、3種類の訓練に対応するように3種類に区分されたシミュレーション映像(映像コンテンツ)が準備される。また3種類の訓練のうち、消火訓練及び避難訓練に関しては、さらに細分化されたシミュレーション映像(映像コンテンツ)が準備される。このように、本実施形態では、複数種類のシミュレーション映像(消防訓練映像データ47)が設けられる。
【0041】
より詳細には、3種類の訓練のうち、消火訓練においては、さらに細分化された4種類のシミュレーション映像が準備される。具体的には、消火訓練における4種類のシミュレーション映像として、(1)消火編(基礎)、(2)消火器編、(3)屋内消火栓編、(4)移動式粉末消火設備編が準備される。
【0042】
また3種類の訓練のうち、避難訓練においては、さらに細分化された3種類のシミュレーション映像が準備される。具体的には、避難訓練における3種類のシミュレーション映像として、(1)避難編(基礎)、(2)ベランダ編、(3)防火戸編が準備される。
【0043】
また3種類の訓練のうち、通報訓練においては、1種類のシミュレーション映像が準備される。具体的には、通報訓練における1種類のシミュレーション映像として、(1)通報編(基礎)が準備される。
【0044】
メイン制御部44は、メイン記憶部43に記憶されたプログラム等により、各種の処理を実行するものである。組合制御部24は、CPU等により構成される。
【0045】
例えばメイン制御部44は、居住者端末30を介して居住者M2を認証できる。具体的には、メイン制御部44は、居住者端末30からシミュレーション映像の配信のためのアクセス要求があった場合、ログイン画面を前記アクセス要求があった居住者端末30の居住者タッチパネル32に表示させる。そして、居住者端末30において居住者M2の部屋番号が入力されると、メイン制御部44は、入力された部屋番号とメイン記憶部43に記憶された居住者データ46と照合し、一致するものがあった場合、当該居住者端末30(ひいては、当該居住者端末30を所有する居住者M2)を認証する。メイン制御部44は、居住者M2の認証を行うと、居住者端末30に対して動画配信機能の利用を許可する。またメイン制御部44は、認証結果に基づいて防災訓練への居住者M2の参加状況を取得できる。
【0046】
またメイン制御部44は、ネットワーク10を介して所定の端末に動画を配信可能な機能(動画配信機能)を実行できる。メイン制御部44は、動画配信機能の利用を許可した(ログインした)居住者端末30からの要求に応じて、メイン記憶部43に記憶される複数種類の消防訓練映像データ47のうち所定の消防訓練映像データ47を、ログインした居住者端末30にネットワーク10を介して視聴可能な形式で配信する(ストリーミング配信を行う)。なおメイン制御部44は、上述の如く配信形式に限定されず、種々の配信形式を採用できる。
【0047】
またメイン制御部44は、消防訓練映像データ47の配信が終了した場合、今回の消防訓練に関するアンケートを、居住者端末30の居住者タッチパネル32に表示させる。そして、居住者端末30においてアンケートに対する回答が入力されると、メイン制御部44は、入力された回答を取得し、他の回答とあわせて取り纏めることができる。
【0048】
以下では、
図3に示すフローチャートを用いて、上述の如く構成された消防訓練システム1を用いた消防訓練の実施の流れについて説明する。
【0049】
マンションM(管理組合M1)が事業者Bと契約すると、それ以降、主として事業者BがマンションMの消防訓練の企画・準備・実施等を行う。
【0050】
まずステップS10に示すように、事業者Bは、消防訓練の企画を行う。具体的には、事業者Bは、管理組合M1との相談のうえ、実施する消防訓練(消火訓練、避難訓練、通報訓練のうち1つ又は複数の訓練)を選択すると共に、選択した訓練を実施する期間(消防訓練の開催期間)を決定する。
【0051】
次にステップS11に示すように、事業者Bは、消防訓練の準備を行う。具体的には、事業者Bは、メインサーバ40を用いて、企画された消防訓練に関する情報(消防訓練情報)を、消防署等の所定の機関へ連絡する。また事業者Bは、マンションMの避難経路や館内縫成の確認を行う。
【0052】
次にステップS12に示すように、事業者Bは、消防訓練情報の広報を行う。具体的には、事業者Bは、動画配信機能を利用した消防訓練が開催されることや、動画配信機能を利用するためQRコード、消防訓練の開催期間、消防訓練の参加のために準備するもの(居住者端末30)、居住者端末30を用いて消防訓練に参加するための手順等が記載された広報文(印刷物)を作成し、マンションM内に掲示すると共に、居住者M2のポストへ投函する。なお事業者Bは、メインサーバ40を用いて、印刷物ではなく居住者端末30への電子メール等により広報を行ってもよい。
【0053】
次にステップS13に示すように、事業者Bは、消防訓練の実施を行う。具体的には、事業者Bは、消防訓練の開催期間内において、メインサーバ40の動画配信機能を居住者端末30により利用可能とする。こうして、居住者M2は、居住者端末30に表示されるシミュレーション映像を視聴することにより、消防訓練に参加できる。なお事業者Bは、消防訓練の開催期間内において、消防訓練に未参加の居住者M2に対して居住者端末30に所定のメッセージを通知し、消防訓練への参加を促すこともできる。
【0054】
次にステップS14に示すように、事業者Bは、消防訓練の振り返りを行う。具体的には、事業者Bは、消防訓練の開催期間が経過した後、防災訓練への居住者M2の参加状況及びメインサーバ40により取り纏められたアンケートの回答を、マンションMの管理組合M1に提出する。なお管理組合M1への提出は、印刷物を用いてもよく、またメインサーバ40を用いて、組合端末20への電子メール等を用いてもよい。
【0055】
次にステップS15に示すように、事業者Bは、消防訓練の結果集積を行う。具体的には、事業者Bは、今回の消防訓練に関する情報(消防訓練情報や、取り纏められたアンケートの回答等)をメインサーバ40のメイン記憶部43に記憶させる。こうして、記憶された情報は、次回の消防訓練の開催のための資料とすることができる。
【0056】
ここで、上述の如くシミュレーション映像では、VR空間内で消防に関するストーリーが進行するような映像が表示される。以下では、
図4及び
図5を用いて、複数種類のシミュレーション映像のうち消火訓練の消火器編(基礎)を例にあげて、シミュレーション映像の内容について説明する。
【0057】
図4(a)に示すように、シミュレーション映像が開始されると、まず当該シミュレーション映像を視聴する目的を示すメッセージが表示される。なお消火器編(基礎)においては、「マンションで火災が発生した際の初期消火方法について学びます」と表示される。またシミュレーション映像として、VR映像が用いられるため、居住者M2に居住者端末30の姿勢の変更を促すようなメッセージが表示される。
【0058】
また
図4(b)に示すように、消火器編(基礎)においては、マンションのキッチンがVR空間として映し出される。ここで、VR映像として、主観的なVR映像が用いられるため、居住者端末30の姿勢の変更に応じたVR空間内における視点の変更と合わせて、あたかもVR空間内のキッチンで調理している感覚(疑似的な体験)を、視聴している居住者M2に与えることができる。
【0059】
また
図4(c)に示すように、シミュレーション映像が進行すると、キッチンから目を離した隙に、鍋から煙が発生している様子が表示される。このように、シミュレーション映像は、視聴時間の経過と共に消防に関するストーリーが進行するストーリー性を有している。そして、
図5(a)に示すように、鍋から煙が発生している状況に関して、対応すべき行動に関する質問が表示される。
【0060】
そして、
図5(b)に示すように、質問が表示されてから所定の時間が経過すると、当該質問に対する回答(注意事項)が表示される。なお詳細な説明は省略するが、ストーリーの進行に応じて、異なる質問とその回答が所定の回数(例えば6回)繰り返される。こうして、全ての質問とその回答が表示されると、
図5(c)に示すように、今回のシミュレーション映像(消火器編(基礎))において、習得すべき重要な事項(ポイント)が表示される。
【0061】
こうして、ポイントが表示されると、シミュレーション映像が終了する。これにより、当該シミュレーション映像を視聴している居住者M2への消防訓練(本実施形態では、消火器編(基礎)の訓練)が終了する。なお、当該シミュレーション映像は、配信期間内であれば、居住者M2は繰り返し視聴できる。
【0062】
このような構成によれば、炎や煙をVR空間内で見ることができ、緊迫した臨場感があるため、集合型の消防訓練では体験できないような内容を手軽に体験できる。
【0063】
また本実施形態では、集合型の消防訓練では体験できないような内容として、
図6に示すように、シミュレーション映像に、避難経路による避難の様子を表示すると共に、マンションのベランダにおいて仕切り板51を蹴破る様子を複数視点から表示することができる。
【0064】
ここで、
図6は、複数種類のシミュレーション映像のうち、避難訓練のベランダ編の一場面を示している。
図6(a)に示すように、シミュレーション映像では、居住者がベランダを避難する様子が表示される。ここで、ベランダでは、隣接する部屋のベランダとの境界を隔てる仕切り板51が設けられる。そのため、ベランダを避難する場合に、仕切り板51を除去する必要がある。
【0065】
そこで、
図6(b)に示すように、シミュレーション映像では、居住者が仕切り板51を除去するために、蹴り付ける様子が、居住者側からの視点で表示される。またシミュレーション映像では、仕切り板51に孔が開く様子が、居住者側からの視点で表示される。こうして、仕切り板51に孔が開けられると、居住者は、前記孔を通って隣接する部屋側へ避難できる。また
図6(c)では、仕切り板51に孔が開く様子が、仕切り板51を介して居住者の反対側からの視点で表示される。
【0066】
このような構成によれば、集合型の消防訓練では体験できないような内容を手軽に体験できると共に、通常見ることができない(仕切り板51を介して居住者の反対側からの)視点で仕切り板51が蹴破られる様子を見ることができる。
【0067】
また本実施形態では、集合型の消防訓練では体験できないような内容として、
図7に示すように、シミュレーション映像に、避難経路による避難の様子を表示すると共に、マンションのベランダにおいて避難ハッチ52を降りる様子を主観的なVR映像により表示することができる。
【0068】
ここで、
図7は、
図6と同様に、複数種類のシミュレーション映像のうち、避難訓練のベランダ編の一場面を示している。
図7(a)に示すように、シミュレーション映像では、居住者がベランダを避難する様子が、主観的なVR映像により表示される。ここで、ベランダでは、下の階へ避難する場合に使用される避難ハッチ52が設けられる。
【0069】
そこで、
図7(b)に示すように、シミュレーション映像では、居住者が避難ハッチ52を使用するため、蓋カバーをあける様子が表示される。また
図7(c)に示すように、蓋カバーがあけられた後、避難はしごがおろされて、居住者が避難はしごを使用して下の階へと移動する様子が、主観的なVR映像により表示される。
【0070】
このような構成によれば、例えば避難はしごを使用した下の階へ移動する場合の、当該避難はしごが揺れる様子等、集合型の消防訓練では体験できないような内容を手軽に体験できる。
【0071】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る消防訓練システム1は、
マンションM(集合住宅)の居住者M2に消防訓練を実施する消防訓練システムであって、
ネットワーク10を介して、前記居住者M2が有する居住者端末30と接続可能に構成されるメインサーバ40(制御装置)を具備し、
前記メインサーバ40(制御装置)は、
前記居住者M2に関する居住者M2データ及び前記消防訓練のシミュレーション映像に関するデータを有し、
前記居住者端末30を介して前記居住者M2を認証した場合、前記シミュレーション映像を前記居住者端末30に配信可能に構成されるものである。
【0072】
このような構成により、消防訓練の参加率を向上できる。
具体的には、居住者M2は、自身の端末(後述の居住者端末30)を用いて、任意のタイミングかつ任意の場所で消防訓練に参加できるために参加が容易となり、マンションMにおける消防訓練の参加率の向上を図ることができる。
【0073】
また、消防訓練システム1において、
前記シミュレーション映像には、
前記マンションM(集合住宅)が再現された仮想空間内における主観的なVR映像(主観映像)が含まれ、
前記主観的なVR映像(主観映像)では、
前記居住者端末30の姿勢の変更に応じて前記仮想空間内における視点が変更されるものである。
【0074】
このような構成により、主観的なVR映像が用いられると共に、居住者端末30の姿勢の変更に応じてVR空間内における視点を変更できるため、あたかも居住者M2がVR空間内にいる感覚(疑似的な体験)を効果的に体験させることができる。
【0075】
また、消防訓練システム1において、
前記シミュレーション映像は、
消防に関するストーリーが進行するストーリー性を有すると共に、前記ストーリーの進行状況に応じて前記消防に関する質問を表示するものである。
【0076】
このような構成により、視聴する居住者M2の興味を引き易くでき、消防訓練において重要な事項を習得し易くできる。
【0077】
また、消防訓練システム1において、
前記シミュレーション映像は、
前記ストーリーとして、避難経路による避難の様子を表示するものであって、
前記マンションM(集合住宅)のベランダにおいて仕切り板51を蹴破る様子を複数視点から表示するものである。
【0078】
このような構成により、集合型の消防訓練では体験できないような内容を手軽に体験できる。
【0079】
また、消防訓練システム1において、
前記シミュレーション映像は、
前記ストーリーとして、避難経路による避難の様子を表示するものであって、
前記マンションM(集合住宅)が再現された仮想空間内における主観映像が含まれ、
前記主観映像は、
前記マンションM(集合住宅)のベランダにおいて避難ハッチ52を降りる様子を表示するものである。
【0080】
このような構成により、集合型の消防訓練では体験できないような内容を手軽に体験できる。
【0081】
また、消防訓練システム1において、
前記メインサーバ40(制御装置)は、
前記居住者端末30を介して前記居住者M2を認証した認証結果に基づいて、前記マンションM(集合住宅)の防災訓練の参加状況を集計可能に構成されるものである。
【0082】
このような構成により、防災訓練の参加状況を容易に取得できる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、本実施形態では、消防訓練システム1は、集合住宅としてマンションの消防訓練を行うものとしたが、マンションに限定するものではない。
【0085】
また本実施形態では、メインサーバ40が動画配信機能を有するものとしたが、これに限定されない。すなわち、メインサーバ40とは異なるサーバが動画配信機能を有するものでもよい。また、前記異なるサーバは、事業者Bとは異なる事業者により管理されるものでもよい。その場合、本実施形態に係る制御装置は、メインサーバ40だけでなく、他の異なるサーバを含むこととなる。また本実施形態では、メインサーバ40は事業者Bに管理されるものとしたが、これに限定されない。すなわち、メインサーバ40は、事業者Bとは異なる事業者により管理されるものでもよい。このように、本実施形態における消防訓練システム1の各構成要素は、管理される主体が特に限定されない。
【0086】
またシミュレーション映像は、VR映像に限定されるものではない。すなわち、シミュレーション映像としては、立体的に見えなくとも、また360度の視野分の画像範囲(有効画像範囲)を有しなくともよい。
【符号の説明】
【0087】
1 消防訓練システム
10 ネットワーク
30 居住者端末
M マンション
M2 居住者