(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176549
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】換気システムおよび換気方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20241212BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241212BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20241212BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20241212BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20241212BHJP
F24F 110/40 20180101ALN20241212BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/74
F24F11/64
F24F110:10
F24F110:20
F24F110:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095135
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD02
3L056BD03
3L056BD04
3L056BE01
3L260AB15
3L260BA41
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA15
3L260CB53
3L260CB55
3L260EA07
3L260FA07
3L260FC03
3L260FC06
(57)【要約】
【課題】建物の給排気環境を総合的に考慮し、建物内においてエネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づける換気システムを提供する。
【解決手段】換気システム100は、建物の内部空間から外部空間へ空気を排気する少なくとも1つの排気装置10と、建物の外部空間から内部空間へ空気を給気する複数の給気装置20と、排気装置と給気装置の一方または両方を制御する制御部11と、所定の目標空気質を取得する目標空気質取得部113と、を備える。給気装置のそれぞれは、給気装置を介して給気する空気の給気空気質を検出する給気センサ21と、給気装置を介して給気する空気の量を調整する給気量調整部22と、を備える。制御部11は、給気センサのそれぞれが検出した給気空気質を取得し、取得したそれぞれの給気空気質と目標空気質取得部が取得した目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの給気量調整部を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内部空間から外部空間へ空気を排気する少なくとも1つの排気装置と、
建物の外部空間から内部空間へ空気を給気する複数の給気装置と、
前記排気装置と前記給気装置の一方または両方を制御する制御部と、
所定の目標空気質を取得する目標空気質取得部と、
を備える換気システムであって、
前記給気装置のそれぞれは、
該給気装置を介して給気する空気の給気空気質を検出する給気センサと、
該給気装置を介して給気する空気の量を調整する給気量調整部と、
を備え、
前記制御部は、
前記給気センサのそれぞれが検出した給気空気質を取得し、
取得したそれぞれの給気空気質と前記目標空気質取得部が取得した目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの前記給気量調整部を制御する、
換気システム。
【請求項2】
前記制御部は、全てまたは一部の前記給気センサが検出した給気空気質から算出される所定の値に基づき設定された前記給気装置における給気量の増減に関する条件に従い、それぞれの前記給気量調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
建物の内部空間の空気質を検出する内部空間空気質センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記内部空間空気質センサが検出した内部空間空気質を取得し、
取得した内部空間空気質と、目標空気質と、それぞれの給気空気質とに基づき、それぞれの前記給気量調整部を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記制御部は、目標空気質と内部空間空気質の差の大きさに基づいて行った目標空気質と内部空間空気質の近似乖離判定に従い、それぞれの前記給気量調整部を制御することを特徴とする請求項3に記載の換気システム。
【請求項5】
前記制御部は、
近似乖離判定において目標空気質と内部空間空気質の差が所定の差未満であると判定した場合には、目標空気質と給気空気質の差が小さい方の前記給気装置から給気量が大きくなるようにそれぞれの前記給気量調整部を制御し、
近似乖離判定において目標空気質と内部空間空気質の差が所定の差以上であると判定した場合には、目標空気質と給気空気質の差が大きい方の前記給気装置から給気量が大きくなるようにそれぞれの前記給気量調整部を制御する、
ことを特徴とする請求項4に記載の換気システム。
【請求項6】
建物の内部空間と建物の外部空間との圧力差を検出する圧力差検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記圧力差検出部が所定の負圧状態を検出した場合、給気量を増加させる余地のある前記給気装置において給気量を増加するようにそれぞれの前記給気量調整部を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の換気システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記排気装置の排気量の総和と前記複数の給気装置の給気量の総和が等しくなるように、それぞれの前記給気量調整部を制御することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の換気システム。
【請求項8】
前記排気装置は、排気量を変更可能であり、
前記制御部は、変更される排気量に等しくなるように前記複数の給気装置の給気量の総和を制御することを特徴とする請求項7に記載の換気システム。
【請求項9】
建物の内部空間から外部空間へ空気を排気する少なくとも1つの排気装置と、建物の外部空間から内部空間へ空気を給気する複数の給気装置の一方または両方を制御する換気方法であって、
前記給気装置を介して給気する空気の給気空気質を検出する給気センサのそれぞれが検出した給気空気質を取得し、
取得したそれぞれの給気空気質と所定の目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの前記給気装置を介して給気する空気の量を制御する、
換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気システムおよび換気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅においては、建築基準法より毎時0.5回以上の換気ができる換気設備の設置が義務付けられている。また、調理時においてはレンジフード等の局所換気設備による強制換気より上記以上の量の換気が行われている。この様な換気を行う際に問題になってくる事として、換気に伴い給気装置から取込まれてくる空気の温度が、室温で空調されている空気の温度と著しくかけ離れていると、居室空間等の空気環境が悪化し、生活する上での快適性を損なうといった問題があげられる。また、一度損なわれると再び空調する時に生じる空調のためのエネルギーが必要となるという問題もある。
【0003】
このような問題に対処するため様々な技術が提案されている。たとえば、特許文献1は、部屋の換気を行う際に他の部屋の換気量が過多にならないようにできる建物用換気システムを開示する。この換気システムでは、キッチンに換気扇が設けられ、キッチンならびにキッチンと連通しているリビング等に給気口が複数設けられ、リビングに空気質センサが設けられている。この換気システムは、換気扇の自動運転または手動運転の運転状況や室内の空気質の状態によって給気口のダンパの開度を調整する。具体的には、手動運転(調理換気)ではキッチンの給気口のダンパを開き、各部屋の給気口のダンパを閉じるように制御を行い、自動運転(常時換気)ではキッチンの給気口のダンパを閉じ、各部屋の給気口のダンパを開くように制御する。また、室内空気質の状況に応じて自動運転と各部屋の給気口のダンパの開閉制御を行うように構成している。
【0004】
また、特許文献2は、各室の室内空気の汚染状態に応じた必要十分な換気を最小限の設備で実現する換気システムを開示する。この換気システムでは、住宅内の各室には、外気を室内に給気する給気量が可変の給気ダンパ、室の空気質の汚染状態をそれぞれ検出するセンサ、各室につながる通路の端には、各室からの排気を集中排気する換気扇が設けられている。この換気システムは、センサから転送される情報に基づいて、各室の給気ダンパの開度を調整すると共に、換気扇の排気量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-152152号公報
【特許文献2】特開平07-103526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、室内の空気質の情報や換気装置の作動情報に基づいて給気量を調整することで快適性を維持するとともにエネルギーロスが少なくなるようにしている。ここで、給気装置から給気される空気は、天候、季節、設置場所(南か北か、1階か2階か等)、周辺環境(隣家が近く臭いが入ってくる)に応じて変わってくるので、上記従来技術のように室内の空気質の状況に応じて各部屋の給気量を調整するだけでは快適性を保つには十分でない。たとえば、上記従来技術の場合、夏場に高温多湿となる南側の部屋で汚染を検知した場合、空調負荷がかかるとしても南側の部屋から高温多湿の空気を進んで給気することになる。このため、より快適な空気環境を実現するには、給気装置の数や設置場所、排気装置の数や能力等といった建物の給排気環境を総合的に考慮して換気システムを制御する必要があり、エネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることが可能な解決手段が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情を鑑みて考案されたものであり、建物の給排気環境を総合的に考慮し、建物内においてエネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることを目的とした換気システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、建物の内部空間から外部空間へ空気を排気する少なくとも1つの排気装置と、建物の外部空間から内部空間へ空気を給気する複数の給気装置と、排気装置と給気装置の一方または両方を制御する制御部と、所定の目標空気質を取得する目標空気質取得部と、を備える換気システムであって、給気装置のそれぞれは、給気装置を介して給気する空気の給気空気質を検出する給気センサと、給気装置を介して給気する空気の量を調整する給気量調整部とを備え、制御部は、給気センサのそれぞれが検出した給気空気質を取得し、取得したそれぞれの給気空気質と目標空気質取得部が取得した目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの給気量調整部を制御する換気システムが提供される。
これによれば、給気装置を介して給気する空気の給気空気質と所定の目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの給気装置を介して給気する空気の量を制御することで、建物の給排気環境を総合的に考慮し、建物内においてエネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることができる換気システムを提供することができる。
【0009】
さらに、制御部は、全てまたは一部の給気センサが検出した給気空気質から算出される所定の値に基づき設定された給気装置における給気量の増減に関する条件に従い、それぞれの給気量調整部を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、どの給気装置からの給気量を増加させるかなどの条件に従い、それぞれの給気装置の給気量を制御することで、エネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることができる。
【0010】
さらに、建物の内部空間の空気質を検出する内部空間空気質センサをさらに備え、制御部は、内部空間空気質センサが検出した内部空間空気質を取得し、取得した内部空間空気質と、目標空気質と、それぞれの給気空気質とに基づき、それぞれの給気量調整部を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、給気空気質と目標空気質に加えて内部空間空気質も含めてそれぞれの給気装置の給気量を制御することで、より的確に快適な空気環境に近づけることができる。
【0011】
さらに、制御部は、目標空気質と内部空間空気質の差の大きさに基づいて行った目標空気質と内部空間空気質の近似乖離判定に従い、それぞれの給気量調整部を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、目標空気質と内部空間空気質の差の大きさに基づいて行った目標空気質と内部空間空気質の近似乖離判定に従い、それぞれの給気装置の給気量を制御することで、エネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることができる。
【0012】
さらに、制御部は、近似乖離判定において目標空気質と内部空間空気質の差が所定の差未満であると判定した場合には、目標空気質と給気空気質の差が小さい方の給気装置から給気量が大きくなるようにそれぞれの給気量調整部を制御し、近似乖離判定において目標空気質と内部空間空気質の差が所定の差以上であると判定した場合には、目標空気質と給気空気質の差が大きい方の給気装置から給気量が大きくなるようにそれぞれの給気量調整部を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、目標空気質と内部空間空気質の差が所定の差未満の場合差が小さい方の給気装置から順に給気量が大きくなるように制御し、その差が所定の差以上の場合差が大きい方の給気装置から順に給気量が大きくなるように制御することで、近似の場合には室内の温湿度バランスを乱すことなく目標空気質に近づけることができ、乖離の場合には有利な給気装置からの給気を優先することで目標温湿度に近づきやすくなり、建物の給排気環境を総合的に考慮した、エネルギーロスが少ないより快適な空気環境に近づけることができる。
【0013】
さらに、建物の内部空間と建物の外部空間との圧力差を検出する圧力差検出部をさらに備え、制御部は、圧力差検出部が所定の負圧状態を検出した場合、給気量を増加させる余地のある給気装置において給気量を増加するようにそれぞれの給気量調整部を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、所定の負圧状態の場合、給気量を増加させる余地のある給気装置において給気量を増加するように制御することで、目標空気質に対して有利な給気装置からの給気量を増加させつつ負圧解消も行うことができる。
【0014】
さらに、制御部は、排気装置の排気量の総和と複数の給気装置の給気量の総和が等しくなるように、それぞれの給気量調整部を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、排気量と給気量の総和が等しくなるように、目標空気質とそれぞれの給気空気質の差の大きさに応じてそれぞれの給気装置の給気量を制御することで、必要な排気量を確保しつつ快適な空気環境に近づけることができる。
【0015】
さらに、排気装置は、排気量を変更可能であり、制御部は、変更される排気量に等しくなるように複数の給気装置の給気量の総和を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、変更される排気量に等しくなるように給気量の総和を制御することで、常に適切な給排気バランスを取りながら快適な空気環境に近づけることができる。
【0016】
上記課題を解決するために、建物の内部空間から外部空間へ空気を排気する少なくとも1つの排気装置と、建物の外部空間から内部空間へ空気を給気する複数の給気装置の一方または両方を制御する換気方法であって、給気装置を介して給気する空気の給気空気質を検出する給気センサのそれぞれが検出した給気空気質を取得し、取得したそれぞれの給気空気質と所定の目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの給気装置を介して給気する空気の量を制御する換気方法が提供される。
これによれば、給気装置を介して給気する空気の給気空気質と所定の目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの給気装置を介して給気する空気の量を制御することで、建物の給排気環境を総合的に考慮し、建物内においてエネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることができる換気方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、建物の給排気環境を総合的に考慮し、建物内においてエネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることを目的としたて換気システムおよび換気方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る第一実施例の換気システムを住宅に配置した例を示す住宅平面図。
【
図2】本発明に係る第一実施例の換気システムのブロック構成図。
【
図3】本発明に係る第一実施例の換気システムの機能のフローを示す図。
【
図4】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御を示すフローチャート。
【
図5】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御において、給気装置の開口率の序列を決定する制御を示すフローチャート。
【
図6】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御において使用する不快指数などを説明するための図。
【
図7】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御において、不快指数に基づき給気装置の開口率の序列付けの条件を説明するための図。
【
図8】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御において、近似時条件に基づき給気装置の開口率の序列付けの条件を説明するための図。
【
図9】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御において、乖離時条件に基づき給気装置の開口率の序列付けの条件を説明するための図。
【
図10】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御において、給気装置の開口率を決定する制御を示すフローチャート。
【
図11】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御において、序列付けと開口率を説明するための図。
【
図12】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるレンジフードの制御において、給気装置の開口率と序列の遷移を示す図。
【
図13】本発明に係る第一実施例の換気システムにおけるホームコントローラのユーザインタフェースを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1乃至
図13を参照し、本実施例における換気システム100を説明する。換気システム100は、
図1に示されるような一般的な住宅に設置される排気装置と給気装置を含む。ここで、本図は、便宜上マンションの1住戸を示しているが、一戸建ての住宅であってもよいし、住宅の建物に限定されず、業務用の建物や工場の建物であってもよい。
【0020】
この住戸では、建物HSの内部空間ISから外部空間OSへ空気を排気する排気装置としてキッチンに設置されたレンジフード(RH)と居室の天井に設置された居室換気扇が設けられ、建物HSの外部空間OSから内部空間ISへ空気を給気する給気装置として各部屋に給気口(1~5)が設けられている。給気口1と給気口2は南に面して、給気口3と給気口4は西に面して、給気口5は北に面して設置されている。したがって、日本では建物HSの南側の方に太陽光が当たることにより、北側に比べて相対的に気温が高いため、各給気口からの給気の温度においては、給気口1≒給気口2>給気口3≧給気口4>給気口5の関係が想定できる。
【0021】
なお、本図では、エアコン(空調機器)を示しているが、換気機能(給排気機能)を有するエアコンである場合には排気装置および給気装置の一種とみなされる。本明細書では、エアコン(空調機器)は、換気機能を有さないものとしている。
【0022】
換気システム100は、
図2に示すように、排気装置としてのレンジフード10と、給気口に設けられた給気装置20と、内部空間ISの空気質を検知するセンサとして温湿度センサ30と、内部空間ISと外部空間OSの圧力差を検出する圧力差検出部としての圧力センサ40と、を備える。また、本図では、換気システム100に含まれるものではないが、連携するものとして、1住戸内の空気質関連機器として空調機器AC、居室換気扇VF、空気清浄機AP、およびこれら空気質関連機器全体を制御するホームコントローラHC内のホームコントローラ制御部50を示している。
【0023】
なお、本明細書における内部空間ISとは、典型的には、壁、床、天井、窓などで外部空間OSと仕切られた屋内空間や建物内部の空間を言い、外部空間OSとは内部空間ISを取り囲む空間を言う。内部空間ISは、通常マンションにおける1住戸や業務用建物の1部屋のように換気の制御を行う一つの単位としての空間を言うが、大規模業務用の建物のような場合には、これらの単位をまとめて一つの内部空間ISとして換気制御を行う場合もありうる。なお、内部空間ISと外部空間OSとは一定の境界に仕切られ、両者間の空気の往来がある程度制限された空間であるものの、現実には排気装置と給気装置以外に両者間に空気の往来が一切ないというものではない(たとえば、壁や窓の隙間など)。しかし、本明細書では、これらは換気上無視し得るものとして扱う。
【0024】
また、本明細書において空気質とは、空間における空気の状態を言い、その空気の温度、湿度、構成要素の割合の状態を言う。空気質関連機器とは、このような空気質に作用する機器を言い、当該空間にある空気の温度、湿度、空気と言う混合気体に含まれる構成要素(浮遊粉塵等を含む)の割合に変化をもたらしたり、維持したり、また空気を移動させるために気流を発生させたりする機器を言う。また、空気質を検知する温湿度センサ30は、温度や湿度を検知するだけでなく、さらにCO2や煙などを検知する機能があってもよい。なお、圧力センサ40は、内部空間ISと外部空間OSの圧力差を検出するセンサであれば特に限定されず、気圧を計測するセンサ、差圧を計測するセンサ、負圧を計測するセンサなどであってもよい。
【0025】
レンジフード10は、典型的にはキッチンに設置され、油煙を空気と共に屋外に排気する機能を有する機器である。本明細書におけるレンジフード10は、同時給排気型ではなく排気機能のみを有するものであるが、排気と同時に給気機能を有するものであってもよい。その場合には、この給気機能は、給気装置20の一種として機能し、給気装置20(本実施例では5つ)の給気風量の総和に加え、レンジフード10の給気機能による給気風量も加えたものが、外部空間OSから内部空間ISへの給気風量の総和となる。また、本実施例では、主としてレンジフード10が本発明に係る内部空間ISから外部空間OSへ空気を排気する排気装置として機能することを想定しているが、レンジフード10と居室換気扇VFが同時に排気装置として稼働することも想定している。この場合は、排気装置としての総排気風量は、レンジフード10の排気風量と居室換気扇VFの排気風量の総和となる。
【0026】
レンジフード10は、レンジフード制御部11と、排気ファン12と、その他レンジフードが通常備える公知の構成要素(図示せず)を備える。レンジフード制御部11は、
排気ファン12を駆動して排気風量を制御する排気風量制御部111と、給気装置20等の他の機器と連携するために通信を行うRH通信部116と、RH通信部116を介して給気装置20の給気量を制御する給気量制御部112と、RH通信部116を介してホームコントローラ制御部50から目標空気質を取得する目標空気質取得部113と、給気装置20の給気量を決定するための判定や処理を行う判定処理部114と、温湿度センサ30や圧力センサ40などのセンサから検出した検出値を受け入れる入力部115と、を備え、これらの機能が実装された所謂マイクロプロセッサから構成される。
【0027】
RH通信部116は、内部空間ISに存する比較的近傍の機器と通信を行う公知の近距離無線通信や赤外線通信を行う。同じ機能を有する、給気装置20のAS通信部23、ホームコントローラ制御部50のHC通信部54と通信を行い、制御信号やデータを送受信する。
【0028】
入力部115は、温湿度センサ30や圧力センサ40から検出値を受信するポートであり、これらのセンサと入力部115は有線で接続されている。温湿度センサ30や圧力センサ40が通信機能を備えることを前提とすれば、入力部115が得る情報は、RH通信部116経由で得てもよい。
【0029】
目標空気質取得部113は、ホームコントローラ制御部50の目標空気質設定部52において予め設定された内部空間ISにおいて目標とする空気質(目標空気質)を、HC通信部54とRH通信部116を介してデータとして取得する。目標空気質は、
図13に示すような、ホームコントローラ制御部50の表示部53に表示されたユーザインタフェースにより予め設定される。本図に示す例では、目標空気質は、温度として28℃と設定されている。ホームコントローラ制御部50では、機器制御部51がこの設定に基づき空調機器ACなどの空気質関連機器を冷房のために制御する。なお、目標空気質には、ユーザが設定するものだけでなく、換気システム100に予め設定されているものも含まれる。たとえば、換気システム100が後述する不快指数の65~69(快適)を目標空気質の設定値として予め有しており、この65~69に近い給気装置20から順に序列付けを行うように制御してもよい。
【0030】
排気風量制御部111は、排気ファン12の駆動を制御して排気量を変更可能であり、一般的な強中弱と言った調理の状況に応じて排気量を段階的に変化させることを含め、給気量とのバランスを維持するために細やかな排気量の制御を行うこともできる。なお、排気風量制御部111は、排気ファン12の回転速度に基づく排気量を予め有し、その回転速度を制御することで排気量を制御することもできるし、レンジフード10が排気量の流量計(図示せず)を備え、その流量計からフィードバックされる実際の排気量に基づき回転制御を行うことでより正確な排気風量制御を行ってもよい。逆に、排気風量制御部111は、使用者に設定された排気風量を優先して維持し、給気量制御部112の一方のみを制御することで排気量と給気量がバランスするように制御してもよい。
【0031】
給気量制御部112は、RH通信部116とAS通信部23を介して複数の給気装置20の給気量をそれぞれ制御する。給気装置20は、それぞれ、給気装置20を介して給気する空気の給気空気質を検出する給気センサ21と、給気装置20を介して給気する空気の量を調整する給気ダンパ22と、AS通信部23と、を備える。給気センサ21は、温湿度センサ30と同様の機能を有し、給気装置20を通過する給気の空気質を検出する。給気ダンパ22は、モータを用いてダンパ(またはガラリ)の角度を変更して開口率を制御することより給気量を決定する。給気装置20が給気口に設置されている場合、開口率が100%の場合は給気口の開口面積とほぼ同じ給気量であり、ダンパの閉鎖すなわち開口率0%の場合給気量はゼロとなる。
【0032】
なお、給気ダンパ22は給気装置20を介して給気する空気の量を調整する給気量調整部として機能するが、給気量調整部は、ダンパによる(自然給気による)給気量の調整だけでなく、ファンを設けて強制的に給気を行うものであってもよい。この場合、給気量調整部は、ファンの回転速度を制御することにより給気量を制御する。また、給気ダンパ22の開口率やファンの回転速度により給気量を調整できるが、給気装置20が給気量の流量計(図示せず)を備え、その流量計からフィードバックされる実際の給気量に基づき、開口率や回転制御を行うことでより正確な給気風量制御を行ってもよい。
【0033】
判定処理部114は、給気装置20の給気量を決定するための判定や処理を行う。
図3に示すように、レンジフード制御部11(判定処理部114)は、それぞれの給気装置20の給気センサ21が検出した給気温湿度情報を取得し、その給気温湿度情報と目標空気質取得部113が取得した目標空気質(目標温湿度情報)を比較し、判定や処理を行い、その差の大きさに応じてそれぞれの給気ダンパ22を給気量制御部112がダンパ開口率指令を発することにより制御することを可能にする。
【0034】
判定処理部114は、給気センサ21のそれぞれが検出した給気空気質を取得し、取得したそれぞれの給気空気質と目標空気質取得部113が取得した目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの給気ダンパ22を制御する。これにより、建物HSの給排気環境を総合的に考慮し、建物HS内においてエネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることができる換気システム100を提供することができる。レンジフード制御部11の処理については、詳しく後述する。
【0035】
なお、本実施例では、給気量制御部112、判定処理部114、入力部115がレンジフード制御部11に含まれている例を示すが、これに限定されず、これらの機能は、ホームコントローラ制御部50に含まれていてもよい。逆に、レンジフード制御部11が、ホームコントローラ制御部50に含まれる機能(たとえば目標空気質設定部)を含んでいてもよい。
【0036】
図4乃至
図12を参照して、レンジフード制御部11の処理について説明する。レンジフード制御部11は、S100において、レンジフード10に備えられた入力スイッチ(図示せず)に対する操作やリモコン(図示せず)に対する操作から得られる調理状況に応じた排気ファン12による排気風量(強中弱など)を取得する。レンジフード制御部11は、S102において、RH通信部116を介して各給気装置20の給気センサ21が検出した温湿度などの空気質を取得し、また入力部115は、温湿度センサ30および圧力センサ40が検出した温湿度などの空気質および内部空間と外部空間の圧力差を取得する。レンジフード制御部11(目標空気質取得部113)は、S104において、RH通信部116を介してホームコントローラ制御部50から目標空気質(目標温湿度)を取得する。取得するデータには、目標空気質(目標温湿度)を示すデータと目標空気質(目標温湿度)が設定されていない設定オフを示すデータが含まれ、ここではこれら(目標温湿度か目標温湿度設定オフ)を確認する。次いで、レンジフード制御部11(排気風量制御部111)は、S106において、S100で取得した排気風量で排気ファン12を制御すること設定する。
【0037】
レンジフード制御部11は、S200において、S102で取得した検出値に基づき給気装置20の序列を決定する。
図5に示すように、レンジフード制御部11は、S202において、排気ファン12が作動しているか否かを検査し、作動していなければ以下の処理を行わず終了する。作動している場合には、レンジフード制御部11(判定処理部114)は、S204において、給気センサ21からの給気の温湿度の平均値を算出し、さらにその平均値に基づき不快指数を算出する。
【0038】
たとえば、
図6は、比較的給気温度が高いことが想定される給気口1と給気口2における温度は30℃と31℃、比較的給気温度が低いことが想定される給気口5における温度は27℃、その中間の温度と想定される給気口3と給気口4における温度は29℃と27.5℃であることを示している。また、同様に、それぞれの給気湿度は、給気口1で68%、給気口2で70%、給気口3で67%、給気口4で65%、給気口5で60%である。これらの温度と湿度から得られる平均値は、それぞれ28.9℃と66%である。この平均値から、不快指数を算出すると、77となる。なお、不快指数の求め方は複数あるが、たとえば以下の式で算出される。
不快指数=0.81×気温+0.01×相対湿度(0.99×気温-14.3)+46.3
【0039】
また、
図7に示すように、不快指数により人の体感は、一般的に、不快指数が54~59では寒いと感じ、60~69では普通と感じ、70~98では暑いと感じるとされている。外部空間OSから内部空間ISへ外気を取り入れて給気する場合において、内部空間ISに存する人が寒いと感じる(たとえば冬場)環境であるときには外気の内で比較的高い方の温度や湿度の外気を給気した方が、内部空間ISを人が快適に感じる環境に近づけるためには有利であると言える。
【0040】
逆に、給気する場合において、内部空間ISに存する人が暑いと感じる(たとえば夏場)環境であるときには外気の内で比較的低い方の温度や湿度の外気を給気した方が、内部空間ISを人が快適に感じる環境に近づけるためには有利であると言える。また、給気する場合において、内部空間ISに存する人が暑くも寒くもない(普通)と感じる(たとえば春や秋)環境であるときには外気の内で中間的な温度や湿度の外気を給気した方が、内部空間ISの環境を乱すことを避けることができるため有利であると言える。
【0041】
レンジフード制御部11(判定処理部114)は、S206において、このような考え方に基づいて、建物HSの北側や南側などに存する複数の給気装置20の中からどの給気装置20からどの程度の給気量の外気を給気するのかを序列付けする条件を設定する。すなわち、レンジフード制御部11は、それぞれの給気装置20の給気センサ21が検出した給気空気質から算出される所定の値に基づき設定された給気装置20における給気量の増減に関する序列付けの条件に従って、それぞれの給気ダンパ22の開口率を制御する。
【0042】
なお、所定の値とは、上記例では各給気センサ21の検出値の単純平均値と不快指数であり、他の例としては、検出値の単純平均値の代わりに加重平均や中央値であってもよいし、不快指数の代わりに他の体感や快適性を示す指標(たとえば風速を考慮しない体感温度など)であってもよい。また、建物HSに設けられたすべての給気装置20の給気センサ21が検出した空気質から所定の値を求めることが原則ではあるが、一部の給気装置20の給気センサ21が検出した給気空気質から算出される所定の値であってもよい。
【0043】
たとえば、給気装置20の給気ダンパ22が常に閉鎖されている場合、一部の給気センサ21に故障等が生じていて、その情報を計算に使うと正確に所定の値が求められない場合、全部の平均を取るよりも一部の給気センサ21から情報を取った方が外気状況に近いような建物環境である場合などもあるからである。このように、どの給気装置20からの給気量を増加させるかなどの条件に従い、それぞれの給気装置20の給気量を制御し、有利な外気を優先して給気することで、エネルギーロスが少なくより快適な空気環境に早く近づけることができる。また、所定の値は、給気装置20ごとに不快指数を直接算出するものであってもよい。
【0044】
次いで、レンジフード制御部11は、S208において、S104で取得した目標温湿度が設定されていること確認し、設定がなされていない場合にはS218において上述した序列付けした条件のみに基づいて給気装置20の給気量についての序列を決定する。たとえば、
図6に示した例の場合では、不快指数が77であり、低い温湿度の外気を給気することが目的達成のためには有利であるため、レンジフード制御部11は、給気口5に設置した給気装置20の給気ダンパ22の開口率を最も大きくし、給気口4、給気口3、給気口1、給気口2の順に各給気ダンパ22の開口率を小さくするように制御する。
【0045】
目標温湿度に適切な設定がなされている場合には、レンジフード制御部11(判定処理部114)は、S210において、その目標温湿度と温湿度センサ30が検出した内部空間ISの室内温湿度との差を算出する。また、レンジフード制御部11は、S212において、その目標温湿度と各給気センサ21が検出した給気温湿度の差を算出する。レンジフード制御部11は、S214において、近似乖離判定を行うために目標温湿度と室内温湿度との差が±1℃未満か否かを検査する。レンジフード制御部11は、その差が±1℃未満であった場合S216において、近似時条件に基づき各給気装置20の給気ダンパ22の開口率の序列を決定する。
【0046】
また、レンジフード制御部11は、その差が±1℃未満でなかった場合S220において、乖離時条件に基づき各給気装置20の給気ダンパ22の開口率の序列を決定する。このように、適切に目標温湿度が設定されている場合には、レンジフード制御部11は、室内温湿度と、目標温湿度と、それぞれの給気の温湿度とに基づき、それぞれの給気装置20の給気ダンパ22を制御する。これによれば、より的確に快適な空気環境に近づけることができる。
【0047】
ここで、
図8を参照して、近似時条件に基づいて各給気装置20の給気ダンパ22の開口率の序列付けを行うことについて具体的に説明する。なお、本図における例では、S206において設定した序列付けの条件は夏場を想定した低い方の温湿度の外気を給気した方が有利である場合で説明する。本図上段の表では、目標温湿度は28℃・55%であり、室内温湿度は28.5度・65%であり、目標温湿度と室内温湿度の差は、+0.5℃・+15%である。そうすると、両者の差は±1℃未満なので、近似時の条件で序列付けを行うことになる。近似時の序列付け条件では、本図中段の表に示すように、各給気装置20が給気する給気温湿度と目標温湿度の差が小さい方から順に給気ダンパ22の開口率が大きくなるように序列付けを行い、また、その差が同じ場合は、給気すると有利な方からすなわち温湿度の低い方から順に給気ダンパ22の開口率が大きくなるように序列付けを行う。
【0048】
本図下段の表を参照してより具体的に説明する。本表では、給気口1~給気口5から給気する空気の温度は、それぞれ、30℃、29.5℃、29℃、26.5℃、26℃であり、これらの目標温度との差は、+2℃、+1.5℃、+1℃、-1.5℃、-2℃である。ここで近似時条件に従うと、レンジフード制御部11は、最も差の小さい給気口3の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を最も大きくし、次に差が小さい給気口2と給気口4の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を比較的小さくし、次に差が小さい(すなわちこの中では最も差が大きい)給気口1と給気口5の給気装置20の給気ダンパ22の開口率をさらに小さくするように制御する。
【0049】
なお、給気口2と給気口4、給気口1と給気口5では、目標温度との差が同じだが、同じである場合には、温度の低い方から順に給気ダンパ22の開口率が大きくなるようにということから、レンジフード制御部11(判定処理部114)は、給気口1~給気口5の給気ダンパ22の開口率において、給気口3の給気ダンパ22の開口率が最も大きく、順に、給気口4、給気口2、給気口5、給気口1の開口率が小さくなるようにそれぞれの開口率を制御する。
【0050】
このように、レンジフード制御部11が近似乖離判定において目標空気質と内部空間ISの空気質の差が所定の差(例では±1℃)未満であると判定した場合には、目標空気質と給気空気質の差が小さい方の給気装置20から給気量が大きくなるようにそれぞれの給気ダンパ22の開口率を制御する。なお、本実施例では、目標温湿度と室内温湿度の差が±1℃未満か否かで判定しているが、これに限定されないことは言うまでもない。たとえば、この差が比較的大きくても許容されるような内部空間(工場などの大空間など)である場合である。
【0051】
また、
図9を参照して、乖離時条件に基づいて各給気装置20の給気ダンパ22の開口率の序列付けを行うことについて具体的に説明する。なお、本図における例では、S206において設定した序列付けの条件は冬場を想定した高い方の温湿度の外気を給気した方が有利である場合で説明する。本図上段の表では、目標温湿度は20℃・50%であり、室内温湿度は16度・40%であり、目標温湿度と室内温湿度の差は、-4℃・-10%である。そうすると、両者の差は±1℃以上なので、乖離時の条件で序列付けを行うことになる。乖離時の序列付け条件では、本図中段の表に示すように、各給気装置20が給気する給気温湿度と目標温湿度の差が有利方向の大きい方から順に給気ダンパ22の開口率が大きくなるように序列付けを行う。
【0052】
本図下段の表を参照してより具体的に説明する。本表では、給気口1~給気口5から給気する空気の温度は、それぞれ、22℃、21℃、19℃、15℃、14℃であり、これらの目標温度との差は、+2℃、+1℃、-1℃、-5℃、-6℃である。ここで乖離時条件に従うと、レンジフード制御部11は、有利方向で最も差の大きい給気口1の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を最も大きくし、次に有利方向で差が大きい給気口2、次いで給気口3、次いで給気口4、次いで給気口5の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を順に小さくするように制御する。このように、レンジフード制御部11が近似乖離判定において目標空気質と内部空間ISの空気質の差が所定の差以上であると判定した場合には、目標空気質と給気空気質の差が有利方向の大きい方の給気装置20から給気量が大きくなるようにそれぞれの給気ダンパ22を制御する。
【0053】
このように、目標空気質と内部空間空気質の差が所定の差未満の場合差が小さい方の給気装置20から順に給気量が大きくなるように制御し、その差が所定の差以上の場合有利方向の差が大きい方の給気装置20から順に給気量が大きくなるように制御することで、近似の場合には室内の温湿度バランスを乱すことなく目標空気質に近づけることができ、乖離の場合には有利な給気装置からの給気を優先することで目標温湿度に早く近づきやすくなり、建物HSの給排気環境を総合的に考慮した、エネルギーロスが少ないより快適な空気環境に近づけることができる。
【0054】
また、レンジフード制御部11は、上述したように、目標空気質と内部空間空気質の差の大きさに基づいて行った目標空気質と内部空間空気質の近似乖離判定を行い、その判定に従い、それぞれの給気装置20の給気ダンパ22を制御している。これによれば、内部空間ISの現状の空気質と目標の空気質の差に応じて、適切にそれぞれの給気装置の給気量を制御することで、エネルギーロスが少なくより快適な空気環境に迅速に近づけることができる。
【0055】
レンジフード制御部11は、S200において給気装置20の序列を決定した後、S300において、給気開口率決定処理を行う(
図4)。
図10を参照して、給気開口率決定処理を説明する。レンジフード制御部11は、S302において、排気風量制御部111の制御により稼働している排気ファン12のその時点での排気量情報と、居室換気扇VFのその時点での排気量情報を取得し、両者の排気風量の総和に基づいて、各給気装置20の給気ダンパ22の開口率の合計を設定する。
【0056】
たとえば、
図11の上段の表に示すように、時点No.3では、居室換気扇VFの排気風量が25m
3/h、レンジフード10の排気風量が200m
3/h(「弱」風量相当)であり、総排気風量は225m
3/hとなる。ここで、開口率とは給気ダンパ22が全閉の時には開口率をゼロ、全開の時には開口率を10とする値であり、150φの給気口に設置された給気装置20で給気ダンパ22が全開時における開口面積は0.02m
2であるとすると、この総排気風量に対応する給気装置20の合計の開口率は19となる。
【0057】
開口率の合計は、たとえば以下のように求めることができるが、これに限定されることはなく、適宜算出される。開口率合計(建物の給気口の総開口面積)は建物内部の間取り、換気経路、送風機の性能(風量-静圧特性)、建物隙間面積、建物断熱性能等を考慮して種々に設定可能であるがここでは便宜的に開口率合計を「19」として説明する。開口率合計が「19」の場合、建物の給気口全体として0.038m
2(19×0.002m
2)の総開口面積を有することになる。
図1に示されるような一般的な住宅に対して一般的な換気設備があれば法令が求める必要換気を行うことができる開口面積である。本実施例では、この総開口面積を、5個の給気装置に対して、例えば、開口率5(50%の開口率で大きい開口面積を割り当て)、開口率3(30%の開口率で中程度の開口面積を割り当て)中、開口率1(10%の開口率で小さい開口面積を割り当て)のように、給気バランスの調整ができるように、開口率合計「19」の範囲で各給気装置20の給気ダンパ22に開口率を割り当てることが可能な構成にしている。
【0058】
次いで、レンジフード制御部11は、S304において、S200で決定した各給気装置20の序列情報を取得する。たとえば、
図11の下段の表に示すように、取得した序列は、給気口1の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を最も高くし、次いで、給気口2、給気口3、給気口4、給気口5と順に開口率が低くなるものである。次いで、レンジフード制御部11は、S306において、合計した開口率と取得した序列情報に基づき各給気装置20の給気ダンパ22の開口率を決定する。
【0059】
たとえば、
図11の下段の表に示すように、レンジフード制御部11は、給気口1の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を5、給気口2の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を5、給気口3の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を4、給気口4の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を3、給気口5の給気装置20の給気ダンパ22の開口率を2として、全体として給気量の総和が19になるように、給気バランスを考慮して配分することにより決定する。
【0060】
なお、給気バランスとは、適切な換気経路や給気量のバランスのことである。たとえば、19を配分するにあたり、北側の給気口4と給気口5の開口率をそれぞれ7とし、南側の給気口1と給気口2をそれぞれ0とし、残りを給気口3に分配といったこともできるが、これだ換気経路が北側のみに偏り適切な換気経路が維持されない。このようなことを防止するため、換気システム100は給気バランスを考慮して配分を行う。配分の方法としては、予めバランスが崩れないように序列と開口率が対応付けられたテーブルをもっていてもいいし、給気装置20の流路に流量計を備え、流量に応じて分配してもよい。
【0061】
また、換気システム100は、作動中は、常に排気量の総和と給気量の総和がほぼ等しくなるように制御する。レンジフード制御部11は、排気風量を主として、排気風量の総和に応じて各給気装置20の給気ダンパ22の開口率を制御し、給気風量の総和が排気風量を総和に等しくなるように制御してもよい。このように、排気量と給気量の総和が等しくなるように、目標空気質とそれぞれの給気空気質の差の大きさに応じてそれぞれの給気装置20の給気量を制御することで、必要な排気量を確保しつつ快適な空気環境に近づけることができる。
【0062】
また、レンジフード10はたとえば強中弱のように排気量が変更可能であり、レンジフード制御部11は、変更される排気量に等しくなるように複数の給気装置20の給気ダンパ22の給気量の総和を制御する。たとえば、
図11の上段の表に示すように、時点No.3では、総排気風量は225m
3/hに対応して給気装置20の合計の開口率を19とし、時点No.4では、総排気風量は325m
3/h(レンジフード10の排気風量が300m
3/hは「中」風量相当)に対応して給気装置20の合計の開口率を20とし、時点No.5では、総排気風量は425m
3/h(レンジフード10の排気風量が400m
3/hは「強」風量相当)に対応して給気装置20の合計の開口率を21としている。このように、変更される排気量に等しくなるように給気装置20の給気量の総和を制御することで、換気システム100は、常に適切な給排気バランスを取りながら快適な空気環境に近づけることができる。
【0063】
なお、レンジフード制御部11は、給気風量を主として、給気風量の総和に応じて排気ファン12の排気風量を制御し、排気風量の総和が給気風量の総和に等しくなるように制御してもよい。また、排気風量の総和と給気風量の総和が同時に変化ながら、排気風量の総和と給気風量の総和が等しくなるように制御してもよい。
【0064】
図12を参照して、給気装置20の序列が遷移する例を説明する。なお、本例では、夏場を想定した低い温度の給気が有利であるという序列付けの条件を前提とし、目標温湿度は28℃・55%で一定である。時点No.1では、室内温湿度が33度・68%、目標温湿度との差が+5℃・+13%なので、乖離時の序列付け条件、すなわち各給気装置20が給気する給気温湿度と目標温湿度の差が有利方向の大きい方から順に給気ダンパ22の開口率が大きくなるように序列付けを行う。各給気装置20の給気センサ21は、給気口1では30℃・68%で差が+2℃、給気口2では31℃・70%で差が+3℃、給気口3では29℃・67%で差が+1℃、給気口4では27.5℃・65%で差が-0.5℃、給気口5では27℃・60%で差が-1℃、を検出している。
【0065】
そうすると、各給気口における給気ダンパ22の開口率の序列は、最も有利な給気口5で最も大きい開口率、次いで順に、給気口4、給気口3、給気口1、給気口2につれて開口率が小さくなる。給気装置20の全体の給気量の総和が19である場合、給気バランスを考慮して19を各給気装置20に配分すると、各給気装置20の給気ダンパ22の開口率は、給気口1で3、給気口2で2、給気口3で4、給気口4で5、給気口5で5となる。
【0066】
10分後の時点No.2では、室内温湿度が33度・68%、目標温湿度との差が+5℃・+13%なので、同様に乖離時の序列付け条件での序列付けを行う。各給気装置20の給気センサ21は、給気口1では30℃・68%で差が+2℃、給気口2では31℃・70%で差が+3℃、給気口3では29℃・67%で差が+1℃、給気口4では27℃・60%で差が-1℃、給気口5では27.5℃・65%で差が-0.5℃、を検出している。
【0067】
そうすると、各給気口における給気ダンパ22の開口率の序列は、最も有利な給気口4で最も大きい開口率、次いで順に、給気口5、給気口3、給気口1、給気口2につれて開口率が小さくなる。給気装置20の全体の給気量の総和が19である場合、給気バランスを考慮して19を各給気装置20に配分すると、各給気装置20の給気ダンパ22の開口率は、給気口1で3、給気口2で2、給気口3で4、給気口4で5、給気口5で5となる。
【0068】
さらに10分後の時点No.3では、室内温湿度が29.5度・65%、目標温湿度との差が+1.5℃・+10%なので、同様に乖離時の序列付け条件での序列付けを行うことになるが、前の時点より差が小さくなってきており、低い温度の給気口から優先して給気しているため目標温湿度に近づいてきていることを示している。各給気装置20の給気センサ21は、給気口1では30℃・68%で差が+2℃、給気口2では29.5℃・67%で差が+1.5℃、給気口3では29℃・67%で差が+1℃、給気口4では27.5℃・65%で差が-0.5℃、給気口5では27℃・60%で差が-1℃、を検出している。
【0069】
そうすると、各給気口における給気ダンパ22の開口率の序列は、最も有利な給気口5で最も大きい開口率、次いで順に、給気口4、給気口3、給気口2、給気口1につれて開口率が小さくなる。給気装置20の全体の給気量の総和が19である場合、給気バランスを考慮して19を各給気装置20に配分すると、各給気装置20の給気ダンパ22の開口率は、給気口1で2、給気口2で3、給気口3で4、給気口4で5、給気口5で5となる。
【0070】
さらに10分後の時点No.4では、室内温湿度が28度・65%、目標温湿度との差が±0℃・+10%なので、近似時の序列付け条件、すなわち各給気装置20が給気する給気温湿度と目標温湿度の差が小さい方から順に給気ダンパ22の開口率が大きくなるように序列付けを行い、また、その差が同じ場合は、給気すると有利な方からすなわち温湿度の低い方から順に給気ダンパ22の開口率が大きくなるように序列付けを行う。各給気装置20の給気センサ21は、給気口1では30℃・68%で差が+2℃、給気口2では29.5℃・67%で差が+1.5℃、給気口3では29℃・67%で差が+1℃、給気口4では27.5℃・65%で差が-0.5℃、給気口5では27℃・60%で差が-1℃、を検出している。
【0071】
そうすると、各給気口における給気ダンパ22の開口率の序列は、差が最も小さい給気口4で最も大きい開口率、次いで順に、給気口5、給気口3、給気口2、給気口1につれて開口率が小さくなる。給気装置20の全体の給気量の総和が18である場合、給気バランスを考慮して18を各給気装置20に配分すると、各給気装置20の給気ダンパ22の開口率は、給気口1で2、給気口2で2、給気口3で4、給気口4で5、給気口5で5となる。なお、ここでは給気量の総和を18としたが、換気風量が変化した場合(たとえば居室換気扇VFが風量を落とすなど)を想定した。
【0072】
さらに10分後の時点No.5では、室内温湿度が28.5度・65%、目標温湿度との差が+0.5℃・+10%なので、同様に近似時の序列付け条件での序列付けを行う。なお、圧力センサ40は、以前までは5Paの負圧を検出していたがこの時点では10Paを検出した。各給気装置20の給気センサ21は、給気口1では30℃・68%で差が+2℃、給気口2では29.5℃・67%で差が+1.5℃、給気口3では29℃・67%で差が+1℃、給気口4では26.5℃・65%で差が-1.5℃、給気口5では26℃・60%で差が-2℃、を検出している。
【0073】
そうすると、各給気口における給気ダンパ22の開口率の序列は、差が最も小さい給気口3で最も大きい開口率、次いで順に、給気口4、給気口2、給気口5、給気口1につれて開口率が小さくなる。この時点では負圧が以前より大きくなっているので給気装置20の全体の給気量の総和を増加させて開口率を20とし、増加分を差が最も小さい給気口3に割り当てて給気バランスを考慮して20を各給気装置20に配分すると、各給気装置20の給気ダンパ22の開口率は、給気口1で2、給気口2で4、給気口3で6、給気口4で5、給気口5で5となる。
【0074】
このように、レンジフード制御部11は、圧力センサ40が所定の負圧状態を検出した場合、給気量を増加させる余地のある給気装置20において給気量を増加するようにそれぞれの給気ダンパ22を制御することが好ましい。これによれば、所定の負圧状態の場合、給気量を増加させる余地のある給気装置20において給気量を増加するように制御することで、目標空気質に対して有利な給気装置20からの給気量を増加させつつ負圧解消も行うことができる。また、給気量を増加させる余地のある給気装置20の中で、その時点で最も給気すると有利な給気装置20から給気量を増加させることが好ましい。これによれば、建物内においてエネルギーロスがより少なくなり、快適な空気環境に迅速に近づけることができる
【0075】
なお、所定の負圧状態とは、実際の環境に合わせて適宜設定される。たとえば、最近住宅では常時換気が通常行われているので5Pa程度の負圧状態が常態化していると思われるが、その状態からさらに大きな静圧を有するレンジフード10などを稼働させると負圧が大きくなるため10Pa程度の負圧を検出すると給気量を増加させる余地のある給気装置20において給気量を増加するようにそれぞれの給気ダンパ22を制御するとよい。また、常時換気が行われてない住宅では、5Pa程度の負圧を検出した場合、同様な制御を行ってもよい。
【0076】
本実施例において上述してきたことは、建物HSの内部空間ISから外部空間OSへ空気を排気する少なくとも1つの排気装置と、建物HSの外部空間OSから内部空間ISへ空気を給気する複数の給気装置の一方または両方を制御する換気方法でもある。この換気方法は、給気装置を介して給気する空気の給気空気質を検出する給気センサのそれぞれが検出した給気空気質を取得し、取得したそれぞれの給気空気質と所定の目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの給気装置を介して給気する空気の量を制御する。これによれば、給気装置を介して給気する空気の給気空気質と所定の目標空気質の差の大きさに応じて、それぞれの給気装置を介して給気する空気の量を制御することで、建物の給排気環境を総合的に考慮し、建物内においてエネルギーロスが少なくより快適な空気環境に近づけることができる換気方法を提供することができる。
【0077】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0078】
100 換気システム
10 レンジフード(排気装置)
11 レンジフード制御部
111 排気風量制御部
112 給気量制御部
113 目標空気質取得部
114 判定処理部
115 入力部
116 RH通信部
12 排気ファン
20 給気装置
21 給気センサ
22 給気ダンパ(給気量調整部)
23 AS通信部
30 温湿度センサ(内部空間空気質センサ)
40 圧力センサ(圧力差検出部)
50 ホームコントローラ制御部
51 機器制御部
52 目標空気質設定部
53 表示部
54 HC通信部
HS 建物
IS 内部空間
OS 外部空間
AC 空調機器
VF 居室換気扇
AP 空気清浄機