(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176551
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095137
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199864
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 良成
(72)【発明者】
【氏名】木下 隆
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730EE72
5H730FD01
5H730FG01
5H730FG22
(57)【要約】
【課題】電源装置を備える事務機器のスリープモード時に、負荷電流が増加してもノイズの抑制や出力電圧の安定を図ること。
【解決手段】交流電源から入力される交流電圧を整流する整流回路と平滑する平滑回路と、平滑された電圧を変圧する変圧回路とを備え、変圧回路により変圧された電圧を直流化して負荷に供給する電源装置であって、平滑回路は第1のコンデンサと、第1のコンデンサに直列に接続されたスイッチ素子と、第1のコンデンサおよびスイッチ素子に並列に接続されて第1のコンデンサに比べ静電容量が小さい第2のコンデンサとを有し、負荷に流れる負荷電流に応じた電流を検出する負荷電流検出回路と、負荷電流検出回路にて検出された検出電流が所定の閾値以上のとき、スイッチ素子をオンし第1のコンデンサを接続する電源装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力される交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路により整流された電圧を平滑する平滑回路と、前記平滑回路により平滑された電圧を変圧する変圧回路とを備え、前記変圧回路により変圧された電圧を直流化して負荷に供給する電源装置であって、
前記平滑回路は、第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサに直列に接続されたスイッチ素子と、前記第1のコンデンサおよび前記スイッチ素子に並列に接続され前記第1のコンデンサに比べ静電容量が小さい第2のコンデンサとを有し、
前記負荷に流れる負荷電流に応じた電流を検出する負荷電流検出回路と、
前記負荷電流検出回路にて検出された検出電流が所定の閾値以上のとき、前記スイッチ素子をオンして前記第1のコンデンサを接続し、前記検出電流が所定の閾値未満であるとき、前記スイッチ素子をオフして前記第1のコンデンサを非接続とする切替回路とをさらに備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記変圧回路は、1次巻線、第1の2次巻線および第2の2次巻線を有するトランスと、前記トランスの1次巻線に直列に接続された主スイッチング素子と、該主スイッチング素子のオンオフを制御するコントロール部とを有し、
前記負荷電流に応じて誘起電圧が変化する前記第2の2次巻線が前記負荷電流検出回路として機能し前記第2の2次巻線の誘起電圧が前記切替回路に出力されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記切替回路は、前記スイッチ素子の制御端子に電気的に直列接続されたツェナーダイオードを有し、前記検出電流が所定の閾値以上のとき、前記ツェナーダイオードが導通して前記スイッチ素子をオン状態にする電圧を前記スイッチ素子の制御端子に印加することを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記切替回路は、前記平滑回路の出力と前記スイッチ素子の制御端子との間に直列に接続された第1の抵抗と第3のコンデンサとを有し、前記交流電圧が投入されたとき、前記第1の抵抗および前記第3のコンデンサを介して前記平滑回路により平滑された電圧が前記スイッチ素子の制御端子に印加されることで前記スイッチ素子が所定時間だけオンすることを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
直列に接続された第4のコンデンサおよびリレーの接点とが前記交流電源と並列に接続され、前記変圧回路の第2の2次巻線が前記リレーの励磁コイルの一端に接続され、前記リレーの励磁コイルの他端が前記スイッチ素子の電流路の一端に接続され、前記スイッチ素子がオンしたとき、前記リレーが励磁され前記リレーの接点がオンして前記第4のコンデンサが前記交流電源と並列に接続されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の電源装置。
【請求項6】
前記負荷電流検出回路は、前記負荷電流に応じた電流を検出するシャント抵抗を有し、
前記切替回路は、前記シャント抵抗の両端に発生する電圧に応じた電圧を前記スイッチ素子の制御端子に印加することで、前記負荷電流に応じて前記スイッチ素子のオンオフを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧を整流平滑した後に変圧した電圧を直流化して負荷に供給する電源装置に関する。特に平滑コンデンサによる電力損失の低減を図りながらノイズを抑制し出力電圧の安定を図ることが可能な電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー型電気製品において、環境ラベリング制度である国際エネルギースタープログラム(エナジースター)に適合させるため、電気製品の消費電力は省電力化が求められている。
この制度のため、各事務機器メーカは、機器の消費電力の指標(評価基準)であるTEC値でしのぎを削っている。
TEC値とは、複合機やプリンタが概念的1週間(稼働とスリープ/オフが繰り返される5日間+スリープ/オフの2日間)に消費する電力量(kWh)である。
【0003】
このTEC値は稼働電力のみならずスリープ時(スリ-プモード動作時)の電力も大きく影響する。昨今、スリープ時の電力は、例えば0.5W以下と少なくなってきている。
しかし、稼働時の電力は事務機器の性能にもよるが200~500Wと大きい。特に、平滑コンデンサに用いるアルミ電解コンデンサ(以下、「電解コンデンサ」という)は、特性上リーク電流が発生し、静電容量が大きいほどリーク電流が大きくなる傾向がある。また、個体ばらつきが大きく、温度依存性がある。そのため、スリープ時に電解コンデンサが接続されると、電解コンデンサの損失による効率悪化を招いている。
【0004】
特許文献1には、この電解コンデンサの損失による効率悪化を改善するための電源装置が記載されている。
特許文献1に記載の電源装置は、
図16に示すように、電解コンデンサおよびその電解コンデンサと直列に接続されたスイッチ素子と、電解コンデンサおよびスイッチ素子と並列に接続され、電解コンデンサと比較して静電容量が小さいフィルムコンデンサ(またはセラミックコンデンサ)を備え、演算部が負荷の動作命令を受けると、スリープ時から稼働時に遷移し、スイッチ素子を導通状態にさせてから負荷の動作を開始することを特徴としている。
【0005】
この発明により、スリープ時に電解コンデンサのリーク電流による損失は、電解コンデンサが非接続とされるため抑制することができる一方、フィルムコンデンサ(またはセラミックコンデンサ)がノイズ対策の手段として機能する。さらに、演算部は負荷の動作停止命令を受けると、負荷の状態が所定の電力を消費する状態から比較的消費の少ない状態に遷移し、スイッチ素子を非導通状態から導通状態に切替えてから所定時間を経過した後に負荷の動作を開始させることで安定した動作を達成可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の電源装置によれば、稼働時(プリント等動作) のノイズ規制、スリープ時のスリープ効率は満足できると考えられる。しかしながら、昨今、スリープ時でもプリント等の指令を素早く判断する機能が求められているが、これに十分に対応することが出来ないおそれがあった。具体的には、電源回路に対しては瞬時ピーク負荷、すなわち、スリープ時でもプリント動作の要求を受け付けると、瞬時に負荷の電流値が増加するため、その対応が要求されているが、特許文献1に記載の電源装置では、瞬時ピーク負荷(またはスリープ時の消費電力が大となるモード)が発生した場合、負荷に流れる電流(以下、単に「負荷電流」という)は急激に増加するが、演算部が負荷の動作命令を受け付けている関係上、その時点で比較的静電容量が大きい電解コンデンサが接続状態にないため、ノイズ、特に端子雑音の規制や出力電圧の安定度を満足できないという問題があった。
【0008】
つまり、稼働時およびスリープ時(低消費電力時)の区分は、機器側のモード(負荷の動作/動作停止命令)によって区分されるが、当該区分により電解コンデンサをスイッチ素子によって接続状態または非接続状態とするのでは、スリープ時に電流値が急激に増加しても電解コンデンサを即座に接続することができない。
その場合、比較的静電容量の小さなフィルムコンデンサ(またはセラミックコンデンサ)だけでは、ノイズを十分に抑制することができない。その結果、トランスの1次巻線に印加された電圧をスイッチングする主スイッチング素子を制御するコントロールICが誤動作したり、トランスによる変圧後に2次側へ供給される電圧に規定以上のリプル電圧が発生したり、機器が誤動作する等の課題があった。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、スリープ時に負荷に流れる電流が増加しても、電力損失の低減を図りながらノイズを抑制し出力電圧の安定を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、交流電源から入力される交流電圧を整流する整流回路と、整流回路により整流された電圧を平滑する平滑回路と、平滑回路により平滑された電圧を変圧する変圧回路とを備え、変圧回路により変圧された電圧を直流化して負荷に供給する電源装置であって、平滑回路は、第1のコンデンサと、第1のコンデンサに直列に接続されたスイッチ素子と、第1のコンデンサおよびスイッチ素子に並列に接続され第1のコンデンサに比べ静電容量が小さい第2のコンデンサとを有し、負荷に流れる負荷電流に応じた電流を検出する負荷電流検出回路と、負荷電流検出回路にて検出された検出電流が所定の閾値以上のとき、スイッチ素子をオンして第1のコンデンサを接続し、検出電流が所定の閾値未満であるとき、スイッチ素子をオフして第1のコンデンサを非接続とする切替回路とをさらに備えたことを特徴とする電源装置である。
【0011】
このような構成によれば、機器側のモード等によることなく、負荷電流検出回路が負荷電流に応じた電流を検出して負荷電流に対応して第1のコンデンサ(第2のコンデンサよりも静電容量が大きな平滑コンデンサ)の接続状態が切替えられるので、負荷電流が小さいとき(スリープ時)には第1のコンデンサが非接続状態とされ電力損失を低減することができる一方で、スリープ時に急に負荷電流が増加しても、負荷電流検出回路が速やかに検出して第1のコンデンサが接続されることで、ノイズを抑制し出力電圧の安定を図ることができる。
【0012】
本発明の変圧回路は、1次巻線、第1の2次巻線および第2の2次巻線を有するトランスと、トランスの1次巻線に直列に接続された主スイッチング素子と、該主スイッチング素子のオンオフを制御するコントロール部とを有し、負荷電流に応じて誘起電圧が変化する第2の2次巻線が負荷電流検出回路として機能し前記第2の2次巻線の誘起電圧が切替回路に出力されることを特徴とする。
このように構成することにより、負荷電流に応じた2次巻線の誘起電圧が切替回路に出力されるので、その誘起電圧値によってコンデンサを接続または非接続とすることができる。
【0013】
また、本発明の切替回路は、スイッチ素子の制御端子に電気的に直列接続されたツェナーダイオードを有し、検出電流が所定の閾値以上のとき、ツェナーダイオードが導通してスイッチ素子をオン状態にする電圧をスイッチ素子の制御端子に印加することを特徴とする。
このように構成することにより、負荷電流の所定の電流値に対応した2次巻線の誘起電圧の電圧値により第1のコンデンサを接続または非接続とすることができる。
【0014】
また、本発明の切替回路は、平滑回路の出力とスイッチ素子の制御端子との間に直列に接続された第1の抵抗と第3のコンデンサとを有し、交流電圧が投入されたとき、第1の抵抗および第3のコンデンサを介して平滑回路により平滑された電圧がスイッチ素子の制御端子に印加されることでスイッチ素子が所定時間だけオンすることを特徴とする。
このように構成することにより、交流電源投入時にも第1のコンデンサを接続することができ、出力電圧の安定を図ることができる。
【0015】
さらに、直列に接続された第4のコンデンサおよびリレーの接点が交流電源と並列に接続され、変圧回路の第2の2次巻線がリレーの励磁コイルの一端に接続され、リレーの励磁コイルの他端がスイッチ素子の電流路の一端に接続され、スイッチ素子がオンしたとき、リレーが励磁されリレーの接点がオンして第4のコンデンサが前記交流電源と並列に接続されることを特徴とする。
このように構成することにより、負荷電流が増加するときには第4のコンデンサが接続されることで交流電源のノイズの抑制ができ、負荷電流の少ないときには、非接続とすることで第4のコンデンサによる損失を抑制することができる。
【0016】
また、電源装置は、負荷電流を検出するシャント抵抗を有し、切替回路は、シャント抵抗の両端に発生する電圧に応じた電圧をスイッチ素子の制御端子に印加することで、負荷電流に応じてスイッチ素子のオンオフを切り替えることを特徴とする。
【0017】
このように構成することにより、負荷電流をシャント抵抗により検出することで、スリープ時でも電流値が増加するときに第1のコンデンサが接続でき、ノイズの低減や出力電圧の安定を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、電力損失の低減を図りながら、スリープ時に負荷に流れる電流が増加しても瞬時にコンデンサを接続させることでノイズの抑制や出力電圧を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る電源装置の回路図である。
【
図4】負荷電流と第2の2次巻線の誘起電圧の関係を示す図である。
【
図5】実施形態に係る電源装置の負荷電流増加時の出力電圧の安定度を示す図である。
【
図6】従来の電源装置の負荷電流増加時の出力電圧の安定度を示す図である。
【
図7】従来の電源装置における変圧回路の回路図である。
【
図8】従来の電源装置における切替回路の回路図である。
【
図9】実施形態に係る電源装置の電源投入時の出力電圧の安定度を説明する図である。
【
図10】従来の電源装置の電源投入時の出力電圧の安定度を説明する図である。
【
図11】実施形態に係る電源装置の電源投入時の出力電圧の安定度を示す波形図である。
【
図12】従来の電源装置の電源投入時の出力電圧の安定度を示す波形図である。
【
図13】本発明の別の実施形態に係る電源装置の回路図である。
【
図14】本発明のさらに別の実施形態に係る電源装置の回路図である。
【
図16】先行技術文献に記載された電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る電源装置について
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電源装置1の回路図である。
図2は
図1に示す変圧回路11の回路図であり、
図3は
図1に示す切替回路12の回路図である。
この電源装置1は、交流電源ACがダイオードブリッジD1(本発明の整流回路に相当)により整流され、コンデンサC1(本発明の第1のコンデンサに相当)およびコンデンサC2(本発明の第2のコンデンサに相当)により平滑される直流電圧を、その直流電圧に対しては操作を加えない切替回路12を介して電圧変換する変圧回路11と、変圧回路11の発生電圧V2がダイオードD4およびコンデンサC5により整流・平滑され、出力電圧VOUTとして負荷に供給される。
コンデンサC1はスイッチ素子Q1と直列に接続され、スイッチ素子Q1のゲート(制御端子)には、切替回路12からゲート電圧VGが供給される。また、変圧回路11から切替回路12に、誘起電圧VN(詳細な回路の説明は後記)が供給される。なお、コンデンサC1、コンデンサC2が本発明の平滑回路に相当する。
【0021】
変圧回路11は、整流・平滑された電圧VSが供給される1次巻線Pならびに2つの2次巻線である第1の2次巻線Sおよび第2の2次巻線Nを有するトランスT1と、1次巻線Pに直列に接続された主スイッチング素子Q2と、該主スイッチング素子Q2を制御するコントロールICの出力が主スイッチング素子Q2のゲートに接続される。
第2の2次巻線Nの誘起電圧は、図示はしていないが整流・平滑されてコントロールICの電源電圧として供給される。また、第2の2次巻線Nの誘起電圧VNが切替回路12に出力される。
【0022】
なお、コントロールICは、周知のスイッチング電源用集積回路であり、図示はしていないが、電源投入時、第2の2次巻線Nの誘起電圧VNが立ち上がるまで、整流電圧が供給され、また2次側の出力電圧VOUTのフィードバック信号により出力電圧VOUTが一定となるように主スイッチング素子Q2を制御する。
なお、コントロールICは、本発明の「コントロール部」に相当する。また、スイッチ素子Q1及び主スイッチング素子Q2は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用しているが、オンオフが可能な他の素子、例えばIGBTなどでもよい。
第1の2次巻線Sの誘起電圧V2は、
図1に示すダイオードD4およびコンデンサC5により整流・平滑されて出力される。なお、負荷電流値は、出力電圧VOUTが負荷に供給されるときの電流値である。
【0023】
図3に示す切替回路12は平滑回路により平滑された電圧(平滑電圧)VSが供給され、そのまま平滑電圧VSとして変圧回路11に供給される。
平滑された電圧VSが印加されるプラス側端子とGND端子間には、抵抗R1(本発明の第1の抵抗に相当)、コンデンサC3(本発明の第3のコンデンサに相当)および抵抗R2が直列接続される。
また、コンデンサC3と抵抗R2の接続点は、抵抗R3の一端と接続され、抵抗R3の他端はツェナーダイオードD2のアノードと接続され、ツェナーダイオードD2のカソードはダイオードD3のカソードと接続される。ダイオードD3のアノードには、第2の2次巻線Nの誘起電圧VNが変圧回路11から供給される。
抵抗R2の一端はコンデンサC3および抵抗R3との接続点であり、ゲート電圧VGがスイッチ素子Q1のゲートに接続される。抵抗R2の他端はGNDに接続される。
【0024】
以上の構成により、切替回路12は、変圧回路11より第2の2次巻線Nの誘起電圧VNが供給され、その電圧値によりスイッチ素子Q1のオンオフが制御される。
変圧回路11より供給される第2の2次巻線Nの誘起電圧VNは、2次巻線Sの負荷電流により、電圧が変化する。
【0025】
図4は負荷電流と第2の2次巻線Nの誘起電圧VNの関係を示す図である。負荷電流が増加するにつれて誘起電圧VNは増加する。なお、
図4に示す負荷電流は3.0Aまでの計測値となっているのは、スリープモードでも瞬時ピーク負荷の最大電流は3.0Aとなることによる。
本実施形態では、トランスT1の第2の2次巻線Nが本発明の「負荷電流検出回路」に相当し、負荷電流に応じた第2の2次巻線の誘起電圧によって負荷電流の大小を検出し、スイッチ素子Q1をオンオフする。すなわち、検出電流は、負荷電流検出回路として機能する第2の2次巻線Nの誘起電圧によって流れる負荷電流に応じた電流である。
【0026】
実施例として1次巻線Pは40T(巻)、第1の2次巻線Sは3T、第2の2次巻線Nは12Tの巻線のトランスT1を使用できる。なお、トランスT1の巻数が異なれば、
図4とは異なる測定値となるが、その場合、巻数の異なったトランスにより誘起電圧が変化してもツェナーダイオードD2の電圧値および抵抗R3等の定数を調整して、スイッチ素子Q1のオンオフ動作の電圧値を調整することができる。
【0027】
また、電源装置1が使用される機器がプリンタであるとすると、表1に示すように5V出力と24V出力の2つの出力で構成されることが多い。
表1は、プリンタに使用される各電圧出力と各ステ-タス時の最大電流値の一例である。各ステ-タスは2つモード(スリ-プモードと非スリ-プモ-ド)に分類できる。また、本発明の電源装置1が使用されるプリンタには5つの動作ステ-タスがあることを想定する。
本実施形態では5V出力と24V出力は区別しないで、2つの出力の電流をまとめて負荷電流として扱う。
【0028】
【表1】
本実施形態では、負荷電流が0.1Aになれば、コンデンサC1が接続される。よって、負荷電流が0.1Aのときに第2の2次巻線Nの誘起電圧によって流れる電流(検出電流)が本発明の「所定の閾値」に相当する。負荷電流が0.1Aであれば、本実施形態では
図4から誘起電圧VNは14Vとなる。負荷電流に対応した誘起電圧の電圧値となる。
【0029】
ここで、「コンデンサを接続する」とは、トランス1次側における整流後の電圧のプラス端子とGND端子間にコンデンサを接続することであり、また交流電源ACに並列にコンデンサを接続することをいう。
また、スリープ通常時とは、最小限の電流が流れている状態で印刷指示等の信号受付が可能な状態、待機時はすぐに印刷動作等が実施できる状態、例えば「印刷開始」のボタンを押せばいつでも印刷が可能な状態、軽負荷時は印刷動作以外の、例えばスキャン機能やデータ転送・保存動作の状態、動作時とはプリンタの印刷動作である。
スリープモードでも印刷の指示等を受け付けて電流が増加する場合(印刷指示受付時)と、非スリ-プモードの待機時、軽負荷時および動作時には、コンデンサC1が接続される。なお、本発明は負荷電流の大小によって、コンデンサC1がオンオフされるので、待機時でも負荷電流が所定の電流値未満となれば、コンデンサC1は非接続となる。
【0030】
これにより、スリープ時でも印刷等の指令信号を素早く処理する機能が搭載され負荷の電流値が増加しても、電源装置1はコンデンサC1が接続されるため、負荷電流が急激に増加しても、ノイズ特に端子雑音の規制や出力安定度を満足させることができる。
【0031】
次に、スリープ時に負荷電流が増加しても、出力電圧が安定することについて
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る電源装置の負荷電流増加時の出力電圧の安定度を示す図であり、
図6は従来の電源装置の安定度を示す図である。各図は、(1)出力電圧(VOUTとグランド間電圧)、(2)負荷電流および(3)VG電圧(スイッチ素子Q1のゲート端子に印加される電圧)を示す。
図6の測定データの測定点は
図5と同じであるが、変圧回路および切替回路は
図7および
図8に示す、変圧回路21および切替回路22の回路となる。
【0032】
図7は従来の電源装置における変圧回路であり、
図8は従来の電源装置における切替回路である。
図7に示す変圧回路21には、
図2に示すような第2の2次巻線Nの誘起電圧VNの出力はない。
図8に示す切替回路22には、平滑された電圧VSが印加されるプラス側端子とGND端子間に、抵抗R11、スイッチS1および抵抗R12が直列に接続されているが、スイッチS1と抵抗12の接続点には
図3に示すような変圧回路21からの誘起電圧VNの接続がない。
スイッチS1と抵抗R12の接続点には、スイッチ素子Q1のゲートに出力されるゲート電圧VGが接続される。スイッチS1は、外部信号によりコンデンサC1を接続するときにオン動作となる。
【0033】
説明は前後するが、
図5は、負荷電流が0.1A未満から3Aに上昇し、負荷電流が所定の閾値以上となったため、切替回路12が動作してコンデンサC1が接続された状態であり、コンデンサC1の接続により出力電圧VOUTが安定していることを示す。一方、
図6は、
図8に示すスイッチS1がオフのままであるためコンデンサC1は非接続の状態であり、出力電圧が安定していないことを示す。
【0034】
また、
図3に示す切替回路12は、負荷電流の大小によってスイッチ素子Q1をオンオフする機能の他に、電源投入時にコンデンサC1を接続して電源立ち上がり時の出力電圧を安定させる機能も備える。平滑された電圧VSが印加されるプラス側端子とGND端子間に挿入された抵抗R1、コンデンサC3および抵抗R2の構成による作用である。
【0035】
図9は、実施形態に係る電源装置の電源投入時の出力電圧の安定度を説明する図である。
図9には、4つの波形が記載され、上から(A)交流電源電圧AC、(B)整流電圧(コンデンサC2両端)、(C)Q1ゲート電圧(電圧VG)、(D)出力電圧VOUTである。一番下は(E)コンデンサC1の接続状態を示す。
【0036】
交流電源電圧が投入される(A)と、整流電圧がすぐに半波整流波形となって出力される(B)。ここで、切替回路12の抵抗R1、コンデンサC3および抵抗R2は平滑された電圧VSのプラス側端子とGND端子間とに直列に接続されている。そのため、コンデンサC3に充電されるまでの初期の所定時間は、抵抗R1と抵抗R2により分圧される抵抗R2の一端(抵抗R2の他端はGNDに接続)の電圧が、スイッチ素子Q1のゲートに印加され(C)、スイッチ素子Q1がオンし、コンデンサC1が接続される(E)。
コンデンサC1が接続されることにより半波整流電圧が平滑され(B)、整流電圧が半波波形のピーク値近くの電圧値で安定する。
【0037】
ほぼ同時に、整流電圧の電源が供給されている変圧回路11のコントロールICの動作が始まり主スイッチング素子Q2のオンオフが開始され、出力電圧が立ち上がる(D)。また、出力電圧が立ち上がるため、Q1ゲート電圧にはトランスT1の第2の2次巻線Nの出力が供給されることから、徐々に増加する(C)。
【0038】
よって、交流電源ACの投入時の初期の所定時間、コンデンサC1が接続されるため、出力電圧は安定して立ち上がる。
なお、本発明の所定時間は、電源投入時からトランスT1の第2の2次巻線Nの出力が供給されるまでの時間に相当する。
これに対し、
図8に示す従来の電源装置の切替回路22の場合、
図10に示すような出力電圧VOUTの立ち上がりとなり、電源立ち上がり時には出力電圧が安定しない。
図10は、従来の電源装置の電源投入時の出力電圧の安定度を説明する図である。
図10に示す各波形は、
図9に示す同じ計測点の波形の図であり、説明は省略するが、
図9との違いは、コンデンサC1が交流電源投入時ではなく、交流電源が投入されてから約2サイクル半後に遅れて接続されることである。
【0039】
この不安定な要因は、
図8に示す切替回路22は、
図3に示す切替回路12のコンデンサC3がなく、スイッチS1が外部信号によりオンオフされるためである。また、トランスT1の2次巻線Nからの誘起電圧VNも印加するように接続されていない。コンデンサC1が接続されるのは、出力電圧が立ち上がって外部信号がオンとなってからである。
【0040】
以上、交流電源の立ち上がり時に出力電圧が安定することについて、
図9および
図10を基に本発明と従来回路の切替回路との違いを比較して説明した。
さらに、
図11および
図12は、実施形態に係る電源装置および従来回路の電源投入時の出力安定度を示す波形図であり、実際の測定例である。各図の3つの波形およびそれらの電源装置1の計測点は、
図5および
図6と同じであるが、さらに(4)交流電源電圧の波形が追加されている。
図11および
図12に示す出力電圧の安定度は、
図9および
図10で説明した図とほぼ同じ結果となっている。
【0041】
電源装置1の切替回路12により、負荷電流の所定の電流値を基にコンデンサC1が接続または非接続とされることで、スリープ時であっても負荷が急増したときに出力電圧が安定すること、また電源立ち上がり時の出力電圧を安定させることができる。
【0042】
図13は、別の実施形態に係る電源装置の回路図である。
図13に示す電源装置100は、
図1に示す電源装置1に、交流電源ACと並列にコンデンサC4(本発明の第4のコンデンサに相当)を接続することにより、そのコンデンサC4を負荷電流によって接続または非接続とする回路を付加したものである。
なお、付加された回路以外は、
図1に示す電源装置1と同じなので、説明は省略する。
【0043】
交流電源ACにコンデンサC4を常時接続するとノイズの抑制には効果があるが、電源装置の負荷がほぼない状態のときにも接続されるため、コンデンサC4による電力損失が発生する。そこで、電源装置100の負荷電流に応じた電流が、所定の閾値未満のときには、コンデンサC4を非接続とすることで、損失を抑制することができる。
【0044】
図1に示す電源装置1から
図13の電源装置100に付加された回路は、変圧回路11の誘起電圧VNからリレーRL1の励磁コイルとダイオードD6を介してスイッチ素子Q1のドレイン(本発明では電流路の一端に相当)に接続される回路である。また、交流電源ACとダイオードブリッジD1の間に、コモンモードチョークコイルL1が挿入されている。
負荷電流に応じた電流が所定の閾値以上になり、スイッチ素子Q1がオンするとリレーRL1もオンする。リレーRL1の接点とコンデンサC4が直列接続のため、リレーRL1がオンすると交流電源ACにコンデンサC4が接続され、交流電源ACに発生するノイズを抑制することができると共に、負荷電流に応じた電流が所定の閾値未満のときは、コンデンサC4は非接続となるため、コンデンサC4の損失を抑制することができる。
【0045】
図14は、さらに別の実施形態に係る電源装置の回路図である。
図13に示す電源装置100とは、負荷電流の検出方法および切替回路32の回路の一部が異なる。
図1および
図13に示す電源装置は、負荷電流によってトランスT1の第2の2次巻線Nの誘起電圧VNが変化し、その電圧値を切替回路12に入力する。一方、
図14に示す電源装置200は、トランスT1の2次側出力に電流検出用の抵抗R4(シャント抵抗)を直列に挿入し、その抵抗に発生する電圧をオペアンプOP1により増幅し、フォトカップラPC1により絶縁してその信号を切替回路32に接続する。
図14に示す実施形態の負荷電流検出回路は、抵抗R4(シャント抵抗)、オペアンプOP1およびフォトカップラPC1により構成され、負荷電流に応じた電流が電圧に変換され、その電圧値によってスイッチ素子Q1をオンオフする。
【0046】
図15は、その切替回路32の回路図である。
図15に示す切替回路32は、
図3に示す切替回路12のツェナーダイオードD2およびダイオードD3に相当する部品がなく、フォトカップラPC1のトランジスタのエミッタに切替回路32の抵抗R23が接続される。
また、平滑された電圧VSが印加されるプラス側端子とGND端子間に、抵抗R21、コンデンサC23および抵抗R22が直列に接続される。これは
図3に示す回路と同じであり、電源投入時には同様の作用を奏する。抵抗R22の一端はコンデンサC23および抵抗R23との接続点であり、その電圧VGが、スイッチ素子Q1の制御端子に出力される。フォトカップラPC1のトランジスタのコレクタは、ダイオードD5を介して変圧回路11の誘起電圧VNの出力部に接続される。
【0047】
抵抗R4を流れる負荷電流に応じた電流が電圧に変換され、その電圧がオペアンプOP1により増幅されてフォトカップラPC1のダイオードに電流が流れる。フォトカップラPC1のトランジスタには、変圧回路の誘起電圧VNに基づく電流がダイオードD5を介して電流が流れる。フォトカップラPC1のトランジスタに電流が流れると、電源装置200のスイッチ素子Q1のゲート電圧VGが上昇し、負荷電流が所定の閾値以上になるとスイッチ素子Q1がオンする。
スイッチ素子Q1がオンすると、コンデンサC1とともにコンデンサC4も接続される。
これにより、端子雑音が抑制され出力電圧が安定する。
【0048】
本発明は、負荷電流の大小によって第1のコンデンサを接続または非接続とするため、電力の損失を抑制しつつ、負荷電流がスリープ時に急激に増加しても、第1のコンデンサを接続して電流増加によるノイズを抑制することができ、出力電圧の安定を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1、100、200・・・電源装置、11、21・・・変圧回路、12、22、32・・・切替回路。