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  • 特開-電極シートの圧延装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176559
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電極シートの圧延装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20241212BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241212BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20241212BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20241212BHJP
   B21B 1/40 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/139
H01G11/86
H01G13/00 381
B21B1/40
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095148
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】山崎 俊
(72)【発明者】
【氏名】三藤 正博
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 哲正
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 健吾
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 祥恵
【テーマコード(参考)】
4E002
5E078
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
4E002AD13
4E002BB09
4E002CA08
5E078AA15
5E078AB01
5E078BB24
5E078BB30
5E082AB10
5E082LL40
5E082MM22
5H050AA19
5H050BA14
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB08
5H050GA03
5H050GA29
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】圧延ロールのDLC被膜が剥離してもコンタミが発生しにくい電極シートの圧延装置
【解決手段】圧延装置は、蓄電デバイスの電極シートが搬送される搬送経路に配置された圧延装置であって、一対の圧延ロール31を備えている。一対の圧延ロール31は、それぞれ、基材32と、基材32の外周面のうち電極シートを圧延する圧延領域に少なくとも形成された下地層33と、下地層33の外周面上に形成されたダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜34と、を有している。下地層33は、基材32よりも硬い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極シートが搬送される搬送経路に配置された圧延装置であって、
一対の圧延ロールを備えており、
前記一対の圧延ロールは、それぞれ、
基材と、
前記基材の外周面のうち前記電極シートを圧延する圧延領域に少なくとも形成された下地層と、
前記下地層の外周面上に形成されたダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜と、を有し、
前記下地層は、前記基材よりも硬い、
電極シートの圧延装置。
【請求項2】
前記下地層は、超硬合金によって形成されている、
請求項1に記載の電極シートの圧延装置。
【請求項3】
前記下地層の平均厚みは、前記DLC被膜の平均厚みよりも厚い、
請求項1に記載の電極シートの圧延装置。
【請求項4】
前記下地層の平均厚みは50μm以上である、
請求項1に記載の電極シートの圧延装置。
【請求項5】
前記下地層は、溶射被膜によって構成されている、
請求項1に記載の電極シートの圧延装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極シートの圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、帯状金属箔に活物質スラリー層とセラミックスラリー層とを塗工した電極材料を厚み方向にプレスする工程を含む電極材料の製造方法が開示されている。セラミックスラリー層には、セラミック粒子が含まれている。特許文献1に記載の方法では、電極材料を搬送しながら、ロール本体の外周面をダイヤモンドライクカーボン(DLC)の耐摩耗層で覆ったプレスロールによってプレスする。特許文献1によれば、耐摩耗層によりロール本体とセラミック粒子との直接の摺接がなくなり、ロール本体の摩耗が抑制される、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-190681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、蓄電デバイスの電極シートを圧延する圧延ロールの表面に硬度の高いDLC被膜を形成することにより、圧延ロールの耐摩耗性を向上させることができる。しかし、DLC被膜は靭性が弱く、圧延ロールの基材から剥離する場合がある。DLC被膜が剥離すると、基材が急速に摩耗する。基材が急速に摩耗すると、摩耗によって発生した基材の微粒子がコンタミとなり、電極シートの品質に影響を与えるおそれがある。
【0005】
そこで、ここでは、圧延ロールのDLC被膜が剥離してもコンタミが発生しにくい電極シートの圧延装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される電極シートの圧延装置は、蓄電デバイスの電極シートが搬送される搬送経路に配置された圧延装置であって、一対の圧延ロールを備えている。前記一対の圧延ロールは、それぞれ、基材と、前記基材の外周面のうち前記電極シートを圧延する圧延領域に少なくとも形成された下地層と、前記下地層の外周面上に形成されたダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜と、を有している。前記下地層は、前記基材よりも硬い。
【0007】
上記電極シートの圧延装置によれば、基材とDLC被膜との間に、基材よりも硬い下地層が存在する。圧延ロールのDLC被膜が剥離しても、下地層により、基材は電極シートに触れない。そのため、基材の摩耗が防止される。また、下地層は基材よりも硬く、摩耗しにくい。その結果、コンタミを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電極シートの圧延装置の模式的な側面図である。
図2】電極シートの圧延装置の模式的な平面図である。
図3】圧延ロールの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、蓄電デバイスの電極シートの圧延装置の一実施形態を説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、各図は、模式図であり、必ずしも実際の実施品が忠実に反映されたものではない。
【0010】
[圧延装置の構成]
図1は、一実施形態に係る電極シートの圧延装置10の模式的な側面図である。図2は、電極シートの圧延装置10の模式的な平面図である。圧延装置10は、ここでは、リチウムイオン二次電池の電極シート1を圧延するものである。ただし、電極シート1は、リチウムイオン二次電池の電極シートには限定されず、公知の各種蓄電デバイスの電極シートであってもよい。蓄電デバイスとは、電気エネルギーを取り出し可能なデバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する。
【0011】
電極シート1は、帯状の電極箔2と、電極箔2に形成された活物質層3と、を備えている。正極シートは、予め定められた幅および厚さの帯状の電極箔2(例えば、アルミニウム箔)の表面に、正極活物質を含む正極活物質層3が形成された部材である。正極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、リチウム遷移金属複合材料のように、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸収しうる材料である。負極シートは、予め定められた幅および厚さの帯状の電極箔2(例えば、銅箔)の表面に、負極活物質を含む負極活物質層3が形成された部材である。負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、天然黒鉛のように、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時に吸蔵したリチウムイオンを放電時に放出しうる材料である。正極活物質および負極活物質は、上記した材料以外にも種々提案されており、特に限定されない。
【0012】
正極シートは、活物質層3を保護し、電解液との反応を防ぐ保護層4をさらに備えている。保護層4は、ここでは、金属酸化物(セラミック)の不動態を含む層である。保護層4は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)を含んでいる。ただし、保護層4は、上記した材料以外にも種々提案されており、特に限定されない。保護層4は、正極の活物質層3の上層に重ねて形成されている。図1および図2では、電極シート1として、保護層4を備えた正極シートを図示する。また、以下では、特に断らない限り、電極シート1は保護層4を有するものとして説明を行う。
【0013】
活物質層3の原料は、スラリー状にされ、電極箔2に塗工される。活物質層3の原料は、電極箔2の片面に塗工されてもよく、両面に塗工されてもよい。正極シートの場合、保護層4の材料は、スラリー状にされ、活物質層3に重ねて塗工される。電極シート1には、活物質層3および保護層4が塗工された部分と、活物質層3も保護層4も形成されていない未塗工部とが形成される。塗工されたスラリー状の活物質層3および保護層4の原料は、乾燥工程で乾燥される。圧延装置10は、その後、電極シート1を長手方向に搬送しながら連続的にプレスし、活物質層3および保護層4の厚さを所定の範囲内の厚さに調整するとともに、活物質層3内の活物質を高密度化する。
【0014】
図1に示すように、圧延装置10は、蓄電デバイスの電極シート1が搬送される搬送経路に配置されている。図1に示すように、圧延装置10自体も、電極シート1を搬送する機構を備えていてもよい。本実施形態では、圧延装置10は、巻出装置20と、プレス装置30と、巻取装置40と、を備えている。活物質層3および保護層4を乾燥させた後の電極シート1は、ロールで巻出装置20に供給される。巻取装置40は、巻出装置20から繰り出され、プレス装置30によって圧延された電極シート1を巻き取る。ただし、圧延装置10は、他の搬送装置による電極シート1の搬送経路に設けられていてもよい。
【0015】
圧延装置10(詳しくは、プレス装置30)は、一対の圧延ロール31Uおよび31Dを備えている。上側の圧延ロール31Uと下側の圧延ロール31Dとは、電極シート1の搬送経路を挟んで上下に向かい合っている。上側の圧延ロール31Uは、電極シート1を圧延する際、図示しない駆動装置によって下降され、下側の圧延ロール31Dとともに電極シート1をプレスする。圧延後の活物質層3および保護層4の厚さは、膜厚センサ35により測定される。上側の圧延ロール31Uの上下方向の位置またはプレス圧は、膜厚センサ35によって測定された活物質層3および保護層4の厚さを受けてフィードバック制御される。なお、以下では、上側の圧延ロール31Uと下側の圧延ロール31Dとを区別しない場合、符号31を使用し、圧延ロール31、一対の圧延ロール31等と呼ぶことがある。
【0016】
圧延装置10のプレス力は特に限定されないが、線圧40000N/cmに達する場合もあり得る。圧延ロール31Uおよび31Dの電極シート1の幅方向の長さは、100cmに達する場合もあり得る。圧延時の電極シート1の搬送速度も特に限定されないが、100m/分に達する場合もあり得る。圧延装置10の線圧が高く、電極シート1の搬送速度が速く、かつ、保護層4が硬いことにより、一対の圧延ロール31Uおよび31Dには大きな摩擦力が加わる。保護層4のセラミック部分のビッカース硬さは、例えば、1400~1800HVである。また、電極シート1の搬送速度が速いことにより、時間当たりの圧延ロール31の摩耗量も大きくなる。
【0017】
図3は、圧延ロール31の模式的な断面図である。図3に示すように、圧延ロール31は、基材32と、下地層33と、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜34と、を有している。基材32は、円筒形に形成された圧延ロール31の基体である。基材32は、例えば、高炭素軸受鋼鋼材(SUJ材)、好ましくは、例えば、汎用性の高いSUJ2によって形成されている。ただし、基材32の材質は、SUJ材に限定されない。基材32は、例えば、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼等からなっていてもよい。基材32の材料としては、圧延ロール31のプレス圧に耐える強度を有し、かつ、入手性、加工性、コスト等が優れる材料が好ましい。基材32の硬度は、本実施形態では、それほど高い必要はない。基材32として好ましい材料のビッカース硬さは、例えば、600HV以上900HV以下である。
【0018】
下地層33は、基材32よりも硬い層であり、基材32の表面に形成されている。下地層33は、基材32の外周面のうち電極シート1を圧延する圧延領域32a(図2参照)に少なくとも形成されている。図2に示すように、圧延領域32aは、圧延時に電極シート1に接する領域である。電極シート1の幅方向に関する圧延領域32aの幅は、電極シート1の幅と等しい。下地層33は、基材32の外周面のうち、圧延領域32aを含み、圧延領域32aよりも広い部分に形成されていてもよい。例えば、下地層33は、基材32の外周面の全体に形成されていてもよい。
【0019】
本実施形態では、下地層33は、超硬合金によって形成されている。さらに詳しくは、下地層33は、超硬合金の溶射被膜によって形成されている。超硬合金は、タングステンカーバイドをコバルト、ニッケル等の金属で焼結した材料である。超硬合金において、タングステンカーバイドの微粒を結合する金属は、コバルト、ニッケルには限定されない。溶射被膜は、溶融状態または溶融に近い状態にした材料を基材に吹き付けて形成する被膜である。超硬金属の溶射被膜は、例えば、高速フレーム溶射法によって形成される。ただし、下地層33は、超硬合金以外の材料、例えば、金属酸化物(セラミック)と金属とを含む材料(いわゆるサーメット)の溶射被膜であってもよい。または、下地層33は、溶射以外の方法によって形成されていてもよい。例えば、下地層33は、硬質クロムメッキによって形成されていてもよい。
【0020】
下地層33は、少なくとも基材32よりも硬い材料によって形成される。下地層33のビッカース硬さは、好ましくは、900HV以上である。下地層33のビッカース硬さは、1200HV以上あると、さらに好ましい。超硬金属のビッカース硬さは、1100HV~1500HV程度である。硬質クロムメッキのビッカース硬さは、750HV~1000HV程度である。
【0021】
下地層33は、好ましくは、厚く形成される。下地層33を厚く形成するための工法としては、溶射が適している。下地層33は、好適には、平均厚み50μm以上となるように形成される。さらに好ましくは、下地層33は、平均厚み100μm以上となるように形成される。
【0022】
図3に示すように、DLC被膜34は、下地層33の外周面上に形成されている。DLC被膜34は、ダイヤモンドおよび黒鉛の両方の炭素結合構造を有する炭素被膜である。DLC被膜34は、例えば、炭酸水素ガスをプラズマ化して蒸着するプラズマCVD(化学気相成長)法や、黒鉛を原料とするスパッタリングによって形成される。DLC被膜34のビッカース硬さは、例えば、1600HV以上2500HV以下である。DLC被膜34のビッカース硬さは、下地層33のビッカース硬さよりも大きい。DLC被膜34の平均厚みは、例えば、2~3μmである。DLC被膜34の実現可能な厚みは、数μm以下である。下地層33の平均厚みは、DLC被膜34の平均厚みよりも厚い。下地層33の平均厚みは、好ましくは、DLC被膜34の平均厚みの10倍以上である。
【0023】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係る電極シート1の圧延装置10によって奏することのできる作用効果について説明する。
【0024】
本実施形態に係る電極シート1の圧延装置10は、蓄電デバイスの電極シート1が搬送される搬送経路に配置された圧延装置であって、一対の圧延ロール31を備えている。一対の圧延ロール31は、それぞれ、基材32と、基材32の外周面のうち電極シート1を圧延する圧延領域32aに少なくとも形成された下地層33と、下地層33の外周面上に形成されたDLC被膜34と、を有している。下地層33は、基材32よりも硬い。
【0025】
DLC被膜34は靭性が弱く、基材32から剥離する場合がある。例えば、圧延ロール31が異物を噛み込んだりすると、DLC被膜34は剥離しやすい。従来、蓄電デバイスの電極シート1を圧延する圧延ロールは、基材の外周面にDLC被膜が形成されていた。そのため、従来の圧延ロールでは、DLC被膜が剥離すると基材が急速に摩耗した。電極シート1、特に保護層4は非常に硬く、さらに、プレス圧が大きく、電極シート1の搬送速度が速いため、基材は急速に摩耗する。基材が急速に摩耗すると、摩耗によって発生した基材の微粒子がコンタミとなり、電極シート1の品質に影響を与えるおそれがある。
【0026】
それに対し、本実施形態に係る圧延装置10では、基材32とDLC被膜34との間に、基材32よりも硬い下地層33が存在する。圧延ロール31のDLC被膜34が剥離しても、下地層33により、基材32は電極シート1に触れない。そのため、基材32の摩耗は防止される。また、下地層33は基材32よりも硬く、摩耗しにくい。その結果、コンタミを抑制することができる。
【0027】
また、従来の圧延ロールでは、DLC被膜が長時間の使用により摩耗し、一部または全部がなくなった場合にも、基材が急速に摩耗する。そのため、DLC被膜が磨滅または剥離してから、DLC被膜が磨滅または剥離したことが判明して圧延ロールを交換するまでの間にも、基材の摩耗が進行する。これにより、圧延ロールの寿命が短くなっていた。なお、基材が使用可能なうちは、基材にDLC被膜を再度形成して再利用する。
【0028】
それに対して、本実施形態に係る圧延装置10では、DLC被膜34が磨滅または剥離した後に電極シート1に接して摩耗するのは下地層33である。下地層33は基材32よりも硬く、基材32よりも摩耗量が少ない。そのため、圧延ロール31を再利用可能な状態に維持できる期間が長く、従来よりも多くの回数、DLC被膜34を再形成できる。その結果、圧延ロール31の寿命を従来よりも長くすることができる。
【0029】
本実施形態では、下地層33は、超硬合金によって形成されている。かかる構成によれば、超硬合金からなる下地層33の硬度が高いため、圧延ロール31の摩耗量をより少なくすることができる。
【0030】
本実施形態では、下地層33の平均厚みは、DLC被膜34の平均厚みよりも厚い。かかる構成によれば、下地層33の厚みが厚いため、圧延ロール31の寿命をさらに長くすることができる。
【0031】
本実施形態では、下地層33の平均厚みは50μm以上である。かかる構成によれば、下地層33の厚みが厚いため、圧延ロール31の寿命をさらに長くすることができる。本願発明者の試作によれば、基材の表面にDLC被膜を形成する従来の圧延ロール(基材の材料はSUJ2)に比べて、下地層33の平均厚みが50μm以上の圧延ロール31の寿命は、数倍以上である。
【0032】
本実施形態では、下地層33は、溶射被膜によって構成されている。かかる構成によれば、下地層33の材料の自由度が高い。溶射は、被膜を形成可能な材料に制限が少ない。また、溶射によれば、下地層33を厚く形成しやすい。
【0033】
[他の実施形態]
以上、ここで提案される電極シートの圧延装置の一実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は一例に過ぎず、他の態様で実施することもできる。例えば、上記した実施形態では、圧延ロール31は、基材32、下地層33、およびDLC被膜34の3層構造であったが、これには限定されない。圧延ロールは、最も径方向の内側に基材が、最も径方向の外側にDLC被膜が配置され、両者の間に下地層が配置された4層以上の層構造を有していてもよい。
【0034】
その他、上記した実施形態は、特に言及された場合を除いて本発明を限定しない。また、ここで開示される技術は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされ得る。
【0035】
本明細書は、以下の各項に記載の開示を含んでいる。
【0036】
項1:
蓄電デバイスの電極シートが搬送される搬送経路に配置された圧延装置であって、
一対の圧延ロールを備えており、
前記一対の圧延ロールは、それぞれ、
基材と、
前記基材の外周面のうち前記電極シートを圧延する圧延領域に少なくとも形成された下地層と、
前記下地層の外周面上に形成されたダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜と、を有し、
前記下地層は、前記基材よりも硬い、
電極シートの圧延装置。
【0037】
項2:
前記下地層は、超硬合金によって形成されている、
項1に記載の電極シートの圧延装置。
【0038】
項3:
前記下地層の平均厚みは、前記DLC被膜の平均厚みよりも厚い、
項1または2に記載の電極シートの圧延装置。
【0039】
項4:
前記下地層の平均厚みは50μm以上である、
項1~3のいずれか一つに記載の電極シートの圧延装置。
【0040】
項5:
前記下地層は、溶射被膜によって構成されている、
項1~4のいずれか一つに記載の電極シートの圧延装置。
【符号の説明】
【0041】
1 電極シート
2 電極箔
3 活物質層
4 保護層
10 圧延装置
20 巻出装置
30 プレス装置
31 圧延ロール
31D 下側の圧延ロール
31U 上側の圧延ロール
32 基材
32a 圧延領域
33 下地層
34 DLC被膜
35 膜厚センサ
40 巻取装置
図1
図2
図3