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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017656
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240201BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/304 642A
H01L21/304 648A
H01L21/304 642F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120453
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 光敏
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043AA10
5F043BB03
5F043BB27
5F043EE01
5F043EE06
5F043EE09
5F043EE22
5F043EE24
5F043EE25
5F043EE27
5F043EE32
5F043EE36
5F043EE40
5F043GG10
5F157AB03
5F157AB13
5F157BB08
5F157CF14
5F157CF20
5F157CF22
5F157CF34
5F157CF92
5F157CF99
5F157DB02
5F157DB55
(57)【要約】
【課題】処理液に蓋部を浸けた状態で気泡を供給しても処理の均一性低下を抑制することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】処理槽10に貯留された処理液中に基板Wが浸漬されて表面処理が行われる。基板Wの処理中には、複数の気泡供給管51から処理液中に気泡が吐出される。処理槽10の上部開口は第1蓋体81および第2蓋体82によって覆われる。第1蓋体81の下面には複数の穴を設けたパンチング板85が取り付けられるとともに、第2蓋体82の下面にも複数の穴を設けたパンチング板86が取り付けられる。処理液とパンチング板85,86との界面に到達した気泡は、穴から流路91を経て処理槽10の外部に排出される。液面での気泡の滞留を無くして気泡と基板Wとの接触を防いで処理の均一性低下を抑制することができる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して処理液による表面処理を行う基板処理装置であって、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内に処理液を供給する処理液供給部と、
基板を保持し、前記処理槽に貯留された処理液中に前記基板を浸漬する基板保持部と、
前記処理槽の内部に配置され、前記基板保持部に保持された前記基板の下方から前記処理槽に貯留された処理液に気泡を供給する管状の気泡供給管と、
前記処理槽の上部開口を覆う蓋部と、
前記蓋部の下側に前記蓋部の下面から所定の間隔を隔てて取り付けられ、複数の穴が設けられたパンチング板と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記パンチング板の周縁部に設けられた穴の密度は中央部に設けられた穴の密度よりも高いことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記蓋部と前記パンチング板との間に形成された流路から気体を吸引する吸引部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の基板処理装置において、
前記蓋部と前記パンチング板との間に形成された前記流路に気体を供給する給気部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記複数の穴には、上側に向かうほど穴径が小さくなるテーパ面が設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記蓋部に複数の排気孔を設けることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して処理液によるエッチング等の表面処理を行う基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置の製造工程では、半導体基板等の基板に対して種々の処理を行う基板処理装置が用いられている。そのような基板処理装置の1つとして、処理槽内に処理液を貯留し、その処理液中に複数の基板を一括して浸漬して洗浄処理やエッチング処理等を行うバッチ式の基板処理装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、処理槽内にて基板保持部に保持された複数の基板の下方に処理液を吐出する処理液吐出部と気泡を供給する気泡供給部とを設けることが開示されている。処理液の吐出に加えて気泡を処理液中に供給することにより、処理槽内における処理液の流速が速くなって基板の表面処理の効率が向上する。
【0004】
特に、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を用いたポリシリコンのエッチング処理では、処理液中に窒素ガスの気泡を供給することによって液中の溶存酸素を窒素で置換してエッチングレートを制御することが検討されている。エッチングレートを高めてスループットを向上させるために、常時窒素ガスの気泡を供給して処理液中の溶存酸素濃度を極限にまで低下させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-106254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TMAHを用いたエッチング処理では、雰囲気から処理液中に酸素が溶け込むのを防止するために、処理槽に蓋部(カバー)を設け、その蓋部の一部を処理液の液面に浸けることも検討されている。しかし、蓋部の一部を処理液の液面に浸けた状態で窒素ガスの気泡を供給し続けると、蓋部と処理液との界面に窒素ガスの気泡が集積して基板の上端部と接触し、その接触部分がエッチングされなくなってエッチング処理の面内均一性が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、処理液に蓋部を浸けた状態で気泡を供給しても処理の均一性低下を抑制することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に対して処理液による表面処理を行う基板処理装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽内に処理液を供給する処理液供給部と、基板を保持し、前記処理槽に貯留された処理液中に前記基板を浸漬する基板保持部と、前記処理槽の内部に配置され、前記基板保持部に保持された前記基板の下方から前記処理槽に貯留された処理液に気泡を供給する管状の気泡供給管と、前記処理槽の上部開口を覆う蓋部と、前記蓋部の下側に前記蓋部の下面から所定の間隔を隔てて取り付けられ、複数の穴が設けられたパンチング板と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置において、前記パンチング板の周縁部に設けられた穴の密度は中央部に設けられた穴の密度よりも高いことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る基板処理装置において、前記蓋部と前記パンチング板との間に形成された流路から気体を吸引する吸引部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る基板処理装置において、前記蓋部と前記パンチング板との間に形成された前記流路に気体を供給する給気部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記複数の穴には、上側に向かうほど穴径が小さくなるテーパ面が設けられることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記蓋部に複数の排気孔を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1から請求項6の発明によれば、蓋部の下側に蓋部の下面から所定の間隔を隔てて複数の穴が設けられたパンチング板を取り付けるため、気泡供給管から処理液中に供給された気泡はパンチング板の穴から排出され、処理液に蓋部を浸けた状態で気泡を供給しても処理の均一性低下を抑制することができる。
【0015】
特に、請求項3の発明によれば、蓋部とパンチング板との間に形成された流路から気体を吸引する吸引部を備えるため、気泡をより円滑にパンチング板の穴から吸い込むことができる。
【0016】
特に、請求項5の発明によれば、複数の穴には、上側に向かうほど穴径が小さくなるテーパ面が設けられるため、テーパ面に沿って気泡を導き、気泡をより円滑にパンチング板の穴から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る基板処理装置の全体構成を示す図解的な平面図である。
図2図1の基板処理装置の処理部の構成を示す図である。
図3】リフターが上昇した状態を示す図である。
図4】リフターが下降した状態を示す図である。
図5】ノズル、分散板および整流板を処理槽の底部から見た図である。
図6図1の基板処理装置の処理部を上方から見た平面図である。
図7図1の基板処理装置の処理部を側方から見た側面図である。
図8】第1蓋体および第2蓋体が閉じた状態を示す図である。
図9】第1蓋体および第2蓋体が開いた状態を示す図である。
図10】パンチング板を示す平面図である。
図11図1の基板処理装置の処理部における基板の処理を示す図である。
図12】第2実施形態の処理部の要部構成を示す図である。
図13】第3実施形態のパンチング板を示す平面図である。
図14】第4実施形態のパンチング板の部分断面図である。
図15】第5実施形態の蓋部およびパンチング板の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置100の全体構成を示す図解的な平面図である。基板処理装置100は、複数枚の基板Wに対して一括して処理液による表面処理を行うバッチ式の基板処理装置である。処理対象となる基板は、シリコンの円形の半導体基板である。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。
【0020】
基板処理装置100は、主として、ロードポート110と、搬出入ロボット140と、姿勢変換機構150と、プッシャ160と、主搬送ロボット180と、基板処理部群120と、受け渡しカセット170と、制御部70と、を備える。
【0021】
ロードポート110は、平面視でほぼ長方形に形成された基板処理装置100の端部に設けられている。ロードポート110には、基板処理装置100で処理される複数枚の基板(以下、単に「基板」とする)Wを収容するキャリアCが載置される。未処理の基板Wを収容したキャリアCは無人搬送車(AGV、OHT)等によって搬送されてロードポート110に載置される。また、処理済みの基板Wを収容したキャリアCも無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。
【0022】
キャリアCは、典型的には、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)である。キャリアCは、その内部に形設された複数の保持棚によって複数の基板Wを水平姿勢(法線が鉛直方向に沿う姿勢)で鉛直方向(Z方向)に一定間隔で積層配列した状態で保持する。キャリアCの最大収容枚数は、25枚または50枚である。なお、キャリアCの形態としては、FOUPの他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した基板Wを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0023】
基板処理装置100の本体部とロードポート110との境界部分には、ポッドオープナー(図示省略)等が設けられている。ポッドオープナーは、ロードポート110に載置されたキャリアCの前面の蓋を開閉する。
【0024】
搬出入ロボット140は、ロードポート110に載置されたキャリアCの蓋が開放された状態で、当該キャリアCから基板処理装置100の本体部に未処理の基板Wを搬入するとともに、基板処理装置100の本体部からキャリアCに処理済みの基板Wを搬出する。より具体的には、搬出入ロボット140は、キャリアCと姿勢変換機構150との間で複数枚の基板Wの搬送を行う。搬出入ロボット140は、水平面内で旋回可能に構成されるとともに、それぞれが1枚の基板Wを保持可能なハンド要素を多段に積層してなるバッチハンド(図示省略)を進退移動可能に備える。
【0025】
姿勢変換機構150は、搬出入ロボット140から受け取った複数枚の基板WをX軸周りに90°回動させて、当該基板Wの姿勢を水平姿勢から起立姿勢(法線が水平方向に沿う姿勢)に変換する。また、姿勢変換機構150は、搬出入ロボット140に基板Wを渡す前に、当該基板Wの姿勢を起立姿勢から水平姿勢に変換する。
【0026】
プッシャ160は、姿勢変換機構150と受け渡しカセット170との間に配置される。プッシャ160は、姿勢変換機構150と受け渡しカセット170に設けられた昇降ステージ(図示省略)との間で起立姿勢の基板Wの受け渡しを行う。
【0027】
受け渡しカセット170と基板処理部群120とはX方向に沿って一列に配置されている。基板処理部群120は、5つの処理部121,122,123,124,125を備える。処理部121~125は、基板Wに対して種々の表面処理を行う基板処理装置100の主要部である。図1に示すように、基板処理装置100内において、処理部121,122,123,124,125の順に(+X)側から配置される。処理部121,122,123,124のそれぞれは処理液を貯留する処理槽10を備える。
【0028】
処理部121および処理部123は、それぞれ、同種または異種の薬液を貯留し、その薬液中に複数の基板Wを一括して浸漬させてエッチング処理等の薬液処理を行う。また、処理部122および処理部124は、それぞれ、リンス液(典型的には純水)を貯留し、そのリンス液中に複数の基板Wを一括して浸漬させてリンス処理を行う。
【0029】
基板処理部群120において、処理部121と処理部122とが対になっており、処理部123と処理部124とが対になっている。そして、処理部121と処理部122との対に専用の搬送機構である1つのリフター20が設けられている。リフター20は、処理部121と処理部122との間でX方向に沿って移動可能とされている。また、リフター20は、処理部121および処理部122のそれぞれにおいて昇降可能とされている。同様に、処理部123と処理部124との対に専用の搬送機構である1つのリフター20が設けられている。
【0030】
リフター20は、主搬送ロボット180から受け取った複数の基板Wを保持し、その基板Wを処理部121の処理槽10に貯留された薬液中に浸漬させる。薬液処理の終了後、リフター20は、処理部121から基板Wを引き上げて処理部122に移送し、処理部122の処理槽に貯留されたリンス液中に基板Wを浸漬させる。リンス処理終了後、リフター20は、処理部122から基板Wを引き上げて主搬送ロボット180に渡す。処理部123および処理部124においても、同様のリフター20の動作が行われる。
【0031】
処理部125は、密閉された乾燥チャンバー内を大気圧未満に減圧する機構と、当該乾燥チャンバー内に有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコール(IPA))を供給する機構と、リフター20と、を備える。処理部125は、リフター20によって主搬送ロボット180から受け取った基板Wを乾燥チャンバー内に収容し、その乾燥チャンバー内を減圧雰囲気としつつ、基板Wに有機溶剤を供給して基板Wを乾燥させる。乾燥処理後の基板Wはリフター20を介して主搬送ロボット180に受け渡される。
【0032】
受け渡しカセット170は、待機位置(図1の主搬送ロボット180の位置)にある主搬送ロボット180の下方に配置される。受け渡しカセット170は、図示省略の昇降ステージを備える。当該昇降ステージは、プッシャ160から受け取った基板Wを起立姿勢のまま上昇させて主搬送ロボット180に渡す。また、昇降ステージは、主搬送ロボット180から受け取った基板Wを下降させてプッシャ160に渡す。
【0033】
主搬送ロボット180は、図1の矢印AR1に示すように、X方向に沿ってスライド移動に構成されている。主搬送ロボット180は、受け渡しカセット170の上方の待機位置と処理部121,122,123,124,125のいずれかの上方の処理位置との間で基板Wを搬送する。
【0034】
主搬送ロボット180は、複数の基板Wを一括して把持する一対の基板チャック181を備えている。主搬送ロボット180は、一対の基板チャック181の間隔を狭めることにより複数の基板Wを一括して把持することができ、基板チャック181の間隔を拡げることにより把持状態を解除することができる。このような構成により、主搬送ロボット130は、受け渡しカセット170の昇降ステージに対して基板Wの受け渡しを行うことができるとともに、基板処理部群120に設けられた各リフター20とも基板Wの受け渡しを行うことができる。
【0035】
次に、基板処理装置100に設けられた処理部121の構成について説明する。ここでは、処理部121について説明するが、処理部123も同様の構成を備える。図2は、処理部121の構成を示す図である。図2に示すように、処理部121は、主として、処理液を貯留する処理槽10と、複数枚の基板Wを保持して上下に昇降するリフター20と、処理槽10内に処理液を供給する処理液供給部30と、処理槽10から処理液を排出する排液部40と、処理槽10に貯留された処理液中に気泡を供給する気泡供給部50と、処理槽10の上部開口を開閉する蓋部80と、を備える。
【0036】
処理槽10は、石英等の耐薬性の材料により構成された貯留容器である。処理槽10は、処理液を貯留してその内部に基板Wを浸漬させる内槽11と、内槽11の上端外周部に形成された外槽12とを含む二重槽構造を有する。内槽11および外槽12はそれぞれ上向きに開いた上部開口を有する。外槽12の上縁の高さは、内槽11の上縁の高さよりも僅かに高い。内槽11の上端まで処理液が貯留されている状態で処理液供給部30から処理液がさらに供給されると、内槽11の上部から処理液が溢れて外槽12へとオーバーフローする。本実施形態の処理槽10は使用する処理液の量を低減した省液仕様のものであり、内槽11の容量は比較的小さい。
【0037】
本明細書において、「処理液」とは各種の薬液および純水を含む概念の用語である。薬液としては、例えば、エッチング処理を行うための液、または、パーティクルを除去するための液などが含まれ、具体的には、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、SC-1液(水酸化アンモニウムと過酸化水素水と純水との混合溶液)、SC-2液(塩酸と過酸化水素水と純水との混合溶液)、または、リン酸などが用いられる。薬液は、純水によって希釈されたものも含む。本実施形態では、処理液としてTMAHとIPA(イソプロピルアルコール)と純水との混合液を用いている。
【0038】
リフター20は、基板Wを保持しつつ上下に搬送するための搬送機構である。リフター20は、鉛直方向(Z方向)に延びる背板22と、背板22の下端から水平方向(Y方向)に延びる3本の保持棒21とを有する。背板22の下端はV字型に形成されている。背板22の下端から延びる3本の保持棒21のそれぞれには複数(例えば、50個)の保持溝が所定のピッチで刻設されている。複数の基板Wは、それぞれの周縁部を上記保持溝に嵌合させた状態で3本の保持棒21上に互いに所定間隔を隔てて平行に起立姿勢で保持される。
【0039】
また、リフター20は、図2において概念的に示した駆動機構24と接続されて昇降移動される。図3および図4は、リフター20の昇降動作を示す図である。蓋部80が開いている状態で駆動機構24を動作させるとリフター20が上下に移動し、リフター20に保持された基板Wは図2の矢印AR21にて示すように、処理槽10の内部の浸漬位置(図4の位置)と、処理槽10の上方の引き上げ位置(図3の位置)との間で昇降移動される。処理槽10に処理液が貯留された状態で基板Wが浸漬位置に下降されることにより、当該処理液中に基板Wが浸漬されて表面処理が行われる。すなわち、処理時にはリフター20は、基板Wを保持し、処理槽10に貯留された処理液中に基板Wを浸漬する基板保持部として機能する。
【0040】
図2に戻り、処理液供給部30は、ノズル31およびそれに処理液を送給する配管系を備える。ノズル31は、処理槽10の内槽11内の底部に配置される。ノズル31の直上にはノズル31に対向するように分散板15が設けられる。さらに、分散板15の上方には整流板17が設けられている。
【0041】
図5は、ノズル31、分散板15および整流板17を処理槽10の底部から見た図である。処理液供給部30の配管32の先端部分(処理槽10内に延びる部分)が配管132を構成する。配管132の上側に複数のノズル31が形設される。各ノズル31は、配管132に連通接続されている。複数のノズル31のそれぞれの上方に分散板15が設けられる。分散板15は、水平面に平行に設けられた円板形状の部材である。ノズル31は、分散板15に向かって、配管132から鉛直上方に突設されている。分散板15のさらに上方には内槽11の水平断面の全体に整流板17が設けられる。整流板17の全面に複数の処理液孔17aが穿設されている。
【0042】
配管132に送給された処理液は、ノズル31から直上の分散板15に向けて吐出される。処理槽10に処理液が貯留されている状態でノズル31から上方に向けて処理液が吐出されると、その処理液の流れが分散板15に突き当たって液の圧力が分散され、処理液が分散板15の面に沿って水平方向に拡がる。そして、分散板15によって水平方向に拡がった処理液は、整流板17の複数の処理液孔17aから上昇して処理槽10内に下方から上方へと向かう層流を形成する。すなわち、整流板17は、処理槽10内に処理液の層流を形成する。
【0043】
図2に戻り、ノズル31に処理液を送給する配管系は、配管32にポンプ33、ヒータ34、フィルタ35、流量調整バルブ36およびバルブ37を備えて構成される。ポンプ33、ヒータ34、フィルタ35、流量調整バルブ36およびバルブ37は、この順番で配管32の上流から下流に向かって(外槽12から内槽11に向かって)配置される。
【0044】
配管32の先端側は処理槽10内に延設されて配管132(図5)を構成するとともに、配管32の基端側は外槽12に接続される。配管32は、外槽12から流れ出た処理液を再び内槽11に導く。すなわち、処理液供給部30は、処理槽10内の処理液を循環させるのである。ポンプ33は、外槽12から配管32に処理液を排出させるとともに、その処理液をノズル31に送り出す。ヒータ34は、配管32を流れる処理液を加熱する。処理液としてリン酸等を用いる場合には、ヒータ34によって処理液を加熱し、昇温した処理液を処理槽10に貯留する。
【0045】
フィルタ35は、配管32を流れる処理液をろ過して不純物等を取り除く。流量調整バルブ36は、配管32を流れる処理液の流量を調整する。バルブ37は、配管32の流路を開閉する。ポンプ33を作動させつつバルブ37を開放することにより、外槽12から排出された処理液が配管32を流れてノズル31に送給され、その流量は流量調整バルブ36によって規定される。
【0046】
排液部40は、配管41およびバルブ45を含む。配管41の先端側は処理槽10の内槽11の底壁に接続される。配管41の経路途中にはバルブ45が設けられている。配管41の基端側は、基板処理装置1が設置される工場の排液設備に接続されている。バルブ45が開放されると、内槽11内に貯留されていた処理液が内槽11の底部から配管41に急速排出され、排液設備にて処理される。
【0047】
処理液供給部30は処理槽10内の処理液を循環させるが、例えば排液部40による排液によって処理液が不足したときには、図示省略の新液供給機構から処理槽10に新しい処理液が供給される。具体的には、新液供給機構は外槽12または内槽11に薬液を供給する薬液供給部と純水を供給する純水供給部とを備える。薬液供給部が処理槽10に薬液を供給するとともに、純水供給部が純水を供給されることにより、薬液が希釈されることとなる。
【0048】
気泡供給部50は、複数本の気泡供給管51(本実施形態では6本)およびそれらに気体を送給する配管系を備える。6本の気泡供給管51は、処理槽10の内槽11の内部において、整流板17の上方、かつ、リフター20によって浸漬位置に保持された基板Wの下方に配置される。
【0049】
6本の気泡供給管51のそれぞれは、上側に一列に沿って図示省略の気泡孔が設けられた長尺の円管状部材である。気泡供給管51は、処理液に対する耐薬品性を有する材質、例えばPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、または、石英にて形成される(本実施形態ではPFAを使用)。
【0050】
6本の気泡供給管51に気体を送給する配管系は、配管52、気体供給機構53および気体供給源54を含む。6本の気泡供給管51のそれぞれに1本の配管52の先端側が接続される。配管52の基端側は気体供給源54に接続されている。そして、配管52のそれぞれに気体供給機構53が設けられる。つまり、6本の気泡供給管51のそれぞれについて1個の気体供給機構53が設けられている。気体供給源54は、各配管52に気体を送り出す。気体供給機構53は、図示省略のマスフローコントローラおよび開閉バルブ等を備えており、配管52を介して気泡供給管51に気体を送給するとともに、その送給する気体の流量を調整する。
【0051】
6本の気泡供給管51に気体が送給されると、各気泡供給管51は処理槽10内に貯留されている処理液中に気体を吐出する。処理槽10に処理液が貯留された状態で6本の気泡供給管51から処理液中に気体を供給すると、その気体は気泡となって処理液中を上昇する。気泡供給部50が供給する気体は、例えば不活性ガスである。その不活性ガスは、例えば、窒素またはアルゴンである(本実施形態では窒素を使用)。
【0052】
また、各気泡供給管51に設けられた複数の気泡孔のそれぞれは、リフター20によって保持された隣り合う基板Wと基板Wとの間に位置するように配置されている。従って、各気泡供給管51に形設された複数の気泡孔から気体が吐出されることによって形成された気泡は隣り合う基板Wと基板Wとの間を上昇することとなる。
【0053】
蓋部80は、処理槽10の上部開口を開閉する。蓋部80が閉じた状態では蓋部80は処理槽10の上部開口を覆う。また、蓋部80が開いた状態では処理槽10の上部開口が開放され、リフター20によって基板Wを浸漬位置と引き上げ位置との間で昇降させることができる。
【0054】
図6は、処理部121を上方から見た平面図である。図7は、処理部121を側方から見た側面図である。蓋部80は、第1蓋体81および第2蓋体82を有する。第1蓋体81および第2蓋体82はともに、耐薬品性に優れたフッ素樹脂の一種であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)にて形成されている。蓋部80が閉じた状態では、第1蓋体81および第2蓋体82の双方によって内槽11の全体の上方が覆われる。また、第1蓋体81および第2蓋体82は外槽12の一部の上方を覆う。なお、外槽12の残部((+Y)側の一部)は外槽カバー14によって覆われている。
【0055】
第1蓋体81は図6に概念的に示した第1開閉機構83と接続されている。同様に、第2蓋体82は第2開閉機構84と接続されている。第1開閉機構83および第2開閉機構84は例えばエアシリンダーで構成される。第1蓋体81および第2蓋体82のそれぞれは、第1開閉機構83および第2開閉機構84によって図2の矢印AR22に示すように、Y軸方向に沿った回転軸周りで開閉動作を行う。
【0056】
図8は、第1蓋体81および第2蓋体82が閉じた状態を示す図である。図9は、第1蓋体81および第2蓋体82が開いた状態を示す図である。図8および図9には、気泡供給管51およびノズル31等の要素は省略している。図8に示すように、第1蓋体81および第2蓋体82が閉じた状態では、処理槽10に貯留された処理液が第1蓋体81および第2蓋体82によって外部雰囲気から遮断され、処理液に酸素が溶け込むことが抑制される。一方、図9に示すように、第1蓋体81および第2蓋体82が開いた状態では、処理槽10に貯留された処理液が外部雰囲気と接触し、基板Wの昇降が可能となる。
【0057】
また、第1蓋体81の内槽11を覆う下面にはパンチング板85が取り付けられている。第2蓋体82の内槽11を覆う下面にはパンチング板86が取り付けられている。図10は、パンチング板85,86を示す平面図である。図10は、蓋部80を下側((-Z)側)から見た図である。パンチング板85,86は、例えば第1蓋体81および第2蓋体82と同じ材質で形成すれば良い。パンチング板85には、複数の穴87が上下に貫通して穿設されている。同様に、パンチング板86には、複数の穴88が上下に貫通して穿設されている。第1実施形態の穴87,88は円筒形状である。穴87,88の穴径は5mm以上10mm以下である。第1実施形態においては、パンチング板85,86のそれぞれの面内に均一な密度にて複数の穴87,88が設けられている。
【0058】
また、図8に示すように、パンチング板85,86は第1蓋体81および第2蓋体82の下面から所定の間隔を隔てて蓋部80の下側に取り付けられる。具体的には、例えば所定の大きさのスペーサを挟み込んでパンチング板85,86を第1蓋体81および第2蓋体82の下面にネジ留めにより取り付けるようにすれば良い。これにより、第1蓋体81および第2蓋体82とパンチング板85,86との間には所定の間隔の隙間が形成されることとなる。この隙間は流体が通過する流路91として機能する。すなわち、パンチング板85,86を第1蓋体81および第2蓋体82に所定の間隔を隔てて取り付けることにより、パンチング板85,86と第1蓋体81および第2蓋体82との間に所定幅の流路91が形成されるのである。流路91と複数の穴87,88とは連通している。
【0059】
第1実施形態においては、流路91は吸引部93によって吸引可能に構成されている。吸引部93としては、例えば真空ポンプを用いることができる。吸引部93が流路91の気体を吸引することによって、流路91内を減圧して負圧とすることができる。なお、第1蓋体81および第2蓋体82は開閉するため、流路91と吸引部93とを接続する配管は可撓性を有する樹脂材料にて形成される。また、第1実施形態では、流路91の一方側から吸引部93が吸引を行う。
【0060】
第1蓋体81および第2蓋体82が閉じたときには、パンチング板85,86の下面が処理槽10に貯留された処理液の液面に浸かる。これにより、パンチング板85,86と処理液の液面との間に存在する空気の量を大きく低減するとともに、処理液が直接に空気と接するのを防ぐことができる。
【0061】
また、図8に示すように、第1蓋体81および第2蓋体82が閉じた状態において、内槽11の上端と第1蓋体81および第2蓋体82との間には隙間が形成されている。この隙間を通って、内槽11から外槽12に処理液がオーバーフローするとともに、気体も流出する。
【0062】
さらに、第1蓋体81および第2蓋体82が閉じた状態において、第1蓋体81の先端((+X)側端部)と第2蓋体82の先端((-X)側端部)との間に隙間が形成される。すなわち、第1蓋体81および第2蓋体82が閉じたときに、それらは密接するのではなく、双方の間に隙間が存在するのである。当該隙間は屈曲している。
【0063】
制御部70は、基板処理装置100に設けられた種々の動作機構を制御する。制御部70は、処理部121の動作も制御する。制御部70のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部70は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部(例えば、磁気ディスクまたはSSD)を備えている。制御部70は、処理液供給部30のバルブ37や気体供給機構53等と電気的に接続されており、これらの動作を制御する。
【0064】
また、制御部70の記憶部には、基板Wを処理する手順および条件を定めたレシピ(以下「処理レシピ」という)が記憶されている。処理レシピは、例えば、装置のオペレータが、GUIを介して入力して記憶部に記憶させることによって、基板処理装置1に取得される。或いは、複数の基板処理装置1を管理するホストコンピュータから基板処理装置1に処理レシピが通信により引き渡されて記憶部に記憶されても良い。制御部70は、記憶部に格納されている処理レシピの記述に基づいて、気体供給機構53等の動作を制御することにより、処理レシピに記述された通りに基板Wの表面処理を進行させる。
【0065】
次に、上記の構成を有する処理部121における処理動作について説明する。本実施形態の処理部121においては、処理槽10の内槽11から外槽12へと処理液がオーバーフローし、外槽12から流れ出た処理液が内槽11に戻ることによって処理液が循環している。具体的には、外槽12から配管32に流れ出た処理液は、ポンプ33によってノズル31に送り出される。このとき、配管32を流れる処理液は必要に応じてヒータ34によって加熱される。また、配管32を流れる処理液の流量は流量調整バルブ36によって規定される。さらに、必要に応じて排液部40が処理槽10から使用済みの処理液を排出するとともに、新液供給機構が処理槽10に新液を供給する。本実施形態では処理液として強アルカリ性のTMAHとIPAと純水との混合液を使用し、TMAHによるポリシリコンのエッチング処理を行う。TMAHを用いたポリシリコンのエッチング処理では、処理液中の溶存酸素濃度が高くなるとエッチングレートが低下することが知られており、処理液中に溶存する酸素量を少なくすることが重要となる。
【0066】
ノズル31に送給された処理液は、ノズル31から内槽11内の上方に向けて吐出される。ノズル31から吐出された処理液は、分散板15に突き当たって分散板15の面に沿って水平方向に拡がる。分散板15によって水平方向に拡がった処理液は、整流板17に到達して複数の処理液孔17aを通過し、その処理液孔17aから上昇して上方へと向かう層流を内槽11内に形成する。内槽11の上端にまで到達した処理液は外槽12にオーバーフローして流れ込む。
【0067】
処理槽10内に上昇する処理液の層流が形成されている状態で基板Wが処理液中に浸漬される。具体的には、主搬送ロボット180によって搬送されてきた複数の基板Wをリフター20が処理槽10上方の引き上げ位置にて受け取る。基板Wは3本の保持棒21上に載置されてリフター20に保持される。続いて、制御部70は、駆動機構24を動作させてリフター20を下降させ、基板Wを処理槽10内の浸漬位置に下降させて処理液中に基板Wを浸漬させる。このときには、第1蓋体81および第2蓋体82が開いた状態となって処理槽10の上部開口が開放されている(図9参照)。
【0068】
リフター20が下降を停止して基板Wを浸漬位置に保持した後、制御部70が第1開閉機構83および第2開閉機構84を動作させて第1蓋体81および第2蓋体82を閉じる(図8参照)。これにより、処理槽10の上部開口が蓋部80によって覆われ、処理槽10に貯留された処理液が第1蓋体81および第2蓋体82によって外部雰囲気から遮断されて処理液に酸素が溶け込むことが抑制される。
【0069】
また、第1蓋体81および第2蓋体82が閉じたときには、パンチング板85,86の少なくとも下面が処理液中に浸漬する。これにより、処理液の液面と蓋部80との間に滞留する空気の量が少なくなり、処理液に酸素が溶け込むのをより効果的に抑制することができる。但し、第1蓋体81および第2蓋体82が閉じた状態においても、パンチング板85,86の高さ位置は浸漬位置に保持されている基板Wの上端の高さ位置よりも高い。
【0070】
処理槽10内に処理液の層流が形成されている状態でリフター20によって基板Wが浸漬位置に保持されることにより、基板Wと基板Wとの間に処理液の層流が流れる。これにより、基板Wの表面が処理液に曝されることとなり、基板Wの表面処理(本実施形態ではエッチング処理)が進行する。
【0071】
また、気泡供給部50の気体供給機構53が対応する気泡供給管51に気体(窒素)を送給する。気泡供給管51に送給された気体は、気泡供給管51の上側に設けられた複数の気泡孔から処理液中に吐出されて気泡を形成する。複数の気泡孔は、リフター20によって保持された隣り合う基板Wと基板Wとの間に位置するように配置されているため、気泡供給管51から吐出された気泡は隣り合う基板Wと基板Wとの間を上昇する。すなわち、基板Wの表面の近傍を多数の気泡が上昇することとなる。
【0072】
図11は、処理部121における基板Wの処理を示す図である。第1実施形態のように、TMAHを用いたエッチング処理を行う場合には、処理液中の溶存酸素濃度が低くなるほどエッチングレートが高くなる。複数本の気泡供給管51から窒素の気泡を処理液中に供給すると、処理液中の溶存酸素が窒素で置換されることによって溶存酸素濃度が低下し、その結果基板Wのエッチングレートを高めることができる。
【0073】
6本の気泡供給管51から吐出された窒素の気泡は処理液中を上昇して液面に到達する。ここで、パンチング板85,86を設けていなければ、多量の気泡が蓋部80に付着して処理液と第1蓋体81および第2蓋体82との界面に滞留し、基板Wの上端部近傍が気泡と接触することとなる。そうなると、その基板Wの上端部近傍は、処理液が接触しなくなるため、エッチングされなくなる。その結果、基板Wのエッチング処理の面内均一性が損なわれるおそれがある。特に、本実施形態では、処理液中にIPAが含まれているため、気泡が消滅しにくく、気泡が滞留しやすい。
【0074】
そこで、第1実施形態においては、第1蓋体81の下面に複数の穴87を設けたパンチング板85を取り付けるとともに、第2蓋体82の下面に複数の穴88を設けたパンチング板86を取り付けている。処理液とパンチング板85およびパンチング板86との界面に到達した窒素の気泡は、パンチング板85の複数の穴87またはパンチング板86の複数の穴88から流路91に放出される。処理液中の気泡の径が約4mmであるのに対して、穴87,88の径は5mm~10mmであるため、気泡は穴87,88を容易に通過することができる。
【0075】
特に、第1実施形態では、流路91は吸引部93によって減圧されて負圧とされている。このため、処理液とパンチング板85およびパンチング板86との界面に到達した窒素の気泡は、穴87または穴88から強制的に吸い込まれて流路91に放出されることとなる。流路91に放出された窒素は、図11に示すように、吸引部93によって吸引される向き(図11の例では(+X)側に向かう向き)に流路91内を流れて処理槽10の外部に排出される。
【0076】
このようにすることにより、処理液とパンチング板85およびパンチング板86との界面に到達した気泡は円滑に処理槽10の外部に排出されることとなり、気泡と基板Wの一部分とが接触して当該一部分のエッチングが阻害されるのを防止することができる。また、第1蓋体81とパンチング板85および第2蓋体82とパンチング板86によって処理液の液面を覆っているため、外部雰囲気から処理液中に酸素が溶け込むのを抑制することもできる。その結果、雰囲気からの酸素の混入を抑制しつつ、気泡を円滑に排出してエッチング処理の面内均一性の低下を抑制することができる。
【0077】
所定時間のエッチング処理が終了した後、制御部70は、第1開閉機構83および第2開閉機構84を動作させて第1蓋体81および第2蓋体82を開く。続いて、制御部70は、駆動機構24を動作させてリフター20を上昇させ、処理槽10から基板Wを引き上げる。続いて、主搬送ロボット180がリフター20から処理後の基板Wを受け取る。以上のようにして処理部121における一連の処理が完了する。
【0078】
第1実施形態においては、第1蓋体81の下面に複数の穴87を設けたパンチング板85を取り付けるとともに、第2蓋体82の下面に複数の穴88を設けたパンチング板86を取り付けている。基板Wの表面処理を行うときには、第1蓋体81および第2蓋体82が閉じて、第1蓋体81およびパンチング板85並びに第2蓋体82およびパンチング板86によって処理液の液面を覆うことにより、処理液中に外部雰囲気から酸素が溶け込むのを抑制している。また、パンチング板85およびパンチング板86の下面が処理液中に浸漬することにより、処理液の液面とパンチング板85およびパンチング板86との間に滞留する空気の量を可能な限り少なくして処理液中に酸素が溶け込むのをさらに抑制している。これにより、特に基板Wの上部でのエッチングレートの低下を防止することができる。
【0079】
また、複数の気泡供給管51から吐出されて処理液中を上昇した窒素の気泡は、処理液とパンチング板85およびパンチング板86との界面に到達する。当該界面に到達した窒素の気泡は、パンチング板85に設けられた複数の穴87またはパンチング板86に設けられた複数の穴88から流路91に放出される。特に、吸引部93によって流路91に負圧が作用しているため、窒素の気泡は穴87または穴88から強制的に吸い込まれて流路91によどみなく放出されることとなる。流路91に放出された窒素は、流路91内を通って処理槽10の外部に円滑に排出される。これにより、当該界面における気泡の滞留を無くして気泡と基板Wの一部とが接触するのを防止することができる。その結果、基板Wの全面に均一に処理液が接触することとなり、エッチング処理の面内均一性を維持することができる。すなわち、処理液に蓋部80を浸けた状態で窒素の気泡を供給しても処理の均一性低下を抑制することができるのである。
【0080】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図12は、第2実施形態の処理部121の要部構成を示す図である。図12において、第1実施形態(図8等)と同一の要素については同一の符号を付している。第2実施形態においては、流路91から気体を吸引する吸引部93に加えて流路91に気体を供給する給気部95をさらに備えている。
【0081】
第2実施形態においても、パンチング板85,86と第1蓋体81および第2蓋体82との間に流路91が形成されている。給気部95は、例えば窒素ガスを流路91に供給する。給気部95としては、例えばブロワーを用いることができる。なお、給気部95が供給する気体は窒素ガスに限定されるものではなく不活性ガスであれば良い(例えば、アルゴンやヘリウムであっても良い)。
【0082】
給気部95と吸引部93とは流路91を介して反対側に設けられている。すなわち、流路91の一方側に給気部95が接続されるとともに、その反対側に吸引部93が接続される。よって、給気部95が流路91に窒素ガスを供給する向きと吸引部93が流路91から吸引を行う向きとは同じであり、いずれも図12の例では(+X)側に向かう向きである。
【0083】
流路91の一方側から給気部95が窒素ガスを供給しつつ、流路91の反対側から吸引部93が吸引を行うことにより、流路91には図12中の矢印AR12に示すような高速の窒素ガス流が形成される。このような高速の窒素ガス流が流路91内に形成されることにより、流路91がアスピレータの如くに機能し、複数の穴87および穴88に負圧が作用する。これにより、処理液とパンチング板85およびパンチング板86との界面に到達した窒素の気泡は、穴87または穴88から強制的に吸い込まれることとなり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。給気部95を設けること以外の第2実施形態の処理部121の構成および処理動作は第1実施形態と同じである。
【0084】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、第3実施形態のパンチング板185を示す平面図である。第1実施形態ではパンチング板85,86のそれぞれの面内に均一な密度にて複数の穴87,88が設けられていたが、第3実施形態ではパンチング板185の領域によって穴188を設ける密度が異なっている。
【0085】
第3実施形態においては、パンチング板185の周縁部領域186に設けられた穴188の密度が中央部領域187に設けられた穴188の密度よりも高い。すなわち、周縁部領域186には中央部領域187に比較して高密度で穴188が設けられている。
【0086】
処理液の液面にまで到達した気泡は処理槽10の周縁部に向けて流動する傾向を示す。第3実施形態のパンチング板185であれば、周縁部領域186に高密度で穴188が設けられているため、処理槽10の周縁部に向けて流動する気泡を効率良く吸い込むことが可能となる。また、吸引部93によって生じる負圧はパンチング板185の中央部領域187に比べて周縁部領域186により強く作用するため、周縁部領域186に高密度で穴188を設けるようにすれば、より効率良く気泡を吸い込むことができる。パンチング板185を除く第3実施形態の処理部121の構成および処理動作は第1実施形態と同じである。
【0087】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図14は、第4実施形態のパンチング板285の部分断面図である。第1実施形態ではパンチング板85,86に円筒状の穴87,88を設けていたが、第4実施形態ではパンチング板285に円錐台形状の複数の穴287を設けている。
【0088】
第4実施形態においては、図14に示すように、パンチング板285に穿設された複数の穴287のそれぞれに、上側に向かうほど穴径が小さくなるテーパ面289が形成されている。すなわち、複数の穴287のそれぞれは円錐台形状とされている。
【0089】
処理液とパンチング板285の界面にまで到達した気泡はテーパ面289によって斜め上方に誘導され、より円滑に穴287から吸い込まれることとなる。これにより、処理液とパンチング板285の界面における気泡の滞留を確実に無くして気泡と基板Wとの接触をより確実に防止することができる。パンチング板285を除く第4実施形態の処理部121の構成および処理動作は第1実施形態と同じである。
【0090】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図15は、第5実施形態の蓋部80およびパンチング板385の構成を示す図である。第5実施形態では蓋部80にも複数の通気孔99を設けている。
【0091】
第5実施形態においても、パンチング板385と蓋部80との間には所定幅の流路91が形成されている。パンチング板385には、複数の穴387が設けられている。一方、蓋部80にも、複数の通気孔99が設けられている。穴387および通気孔99は流路91と連通している。
【0092】
処理液とパンチング板387との界面に到達した窒素の気泡は、複数の穴387から吸い込まれて流路91に放出される。第5実施形態においては、流路91に放出された窒素が蓋部80に設けられた複数の通気孔99から処理槽10の外部に排出される。これにより、処理液とパンチング板385の界面における気泡の滞留を無くして気泡と基板Wとの接触を防止することができる。また、通気孔99から窒素が流出ことによって、通気孔99から外部雰囲気の酸素が逆流するのを抑制することができる。これによって、処理液中に酸素が溶け込んで溶存酸素濃度が高くなるのを抑制することができる。
【0093】
通気孔99は穴387の直上に設けるようにしても良い。このようにすれば、穴387から吸い込んだ気泡をより円滑に通気孔99から排出することが可能となる。但し、その反面、通気孔99から穴387を通って処理液に酸素が溶け込むおそれも高まる。図15のように、穴387の直上位置とは異なる位置に通気孔99を設けるようにすれば、通気孔99から穴387を通っての酸素の逆流をより抑制することができる。蓋部80に通気孔99を設ける点以外の残余の処理部121の構成および処理動作は第1実施形態と同じである。
【0094】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては吸引部93を設け、それに加えて第2実施形態では給気部95を設けていたが、吸引部93および給気部95は必須の要素ではない。すなわち、吸引部93および給気部95を設けていなくても、複数の穴を設けたパンチング板を蓋部の下面に取り付けるようにすれば、処理液とパンチング板との界面に到達した気泡を穴から流路に逃がして当該界面における気泡の滞留をなくすことができる。もっとも、上記各実施形態のように、吸引部93を設けて流路91に負圧を作用させるようにした方がより円滑に穴から気泡を吸い込むことができる。
【0095】
また、第2実施形態においては、流路91の一方側に給気部95を設けるとともに、その反対側に吸引部93を設けていたが、これに代えて流路91の両側に吸引部93を設けるようにしても良い。このようにすれば、より強い負圧を流路91に作用させることができ、穴から気泡を効果的に吸い込むことができる。
【符号の説明】
【0096】
1 基板処理装置
10 処理槽
11 内槽
12 外槽
15 分散板
17 整流板
20 リフター
22 背板
30 処理液供給部
31 ノズル
50 気泡供給部
51 気泡供給管
53 気体供給機構
70 制御部
80 蓋部
81 第1蓋体
82 第2蓋体
85,86,185,285,385 パンチング板
87,88,188,287,387 穴
91 流路
93 吸引部
95 給気部
99 通気孔
186 周縁部領域
187 中央部領域
289 テーパ面
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15