IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-多重管式反応容器 図1
  • 特開-多重管式反応容器 図2
  • 特開-多重管式反応容器 図3
  • 特開-多重管式反応容器 図4
  • 特開-多重管式反応容器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176569
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】多重管式反応容器
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/06 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B01J8/06 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095234
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】浦部 治貴
(72)【発明者】
【氏名】土居 真
【テーマコード(参考)】
4G070
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB05
4G070BB03
4G070CA25
4G070CB02
4G070CB15
(57)【要約】
【課題】冷却効率に優れ、充填される触媒の交換が容易な多重管式反応容器を得る。
【解決手段】本発明に係る多重管式反応容器1は、反応ガスが通流すると共に触媒が充填される触媒充填容器3と、触媒充填容器3内を上下に貫通すると共に上下方向に移動可能に配設されて内部に冷却流体が通流して触媒充填容器3内の触媒を内側から冷却する内側冷却管5と、触媒充填容器3の外周に設けられて内部に冷却流体が通流して触媒充填容器3を外側から冷却する外殻容器7と、を備え、触媒充填容器3は上端面に触媒を充填する充填口13を有すると共に下端面に触媒を排出する排出口15を有してなり、内側冷却管5は、触媒充填容器3の排出口15を開閉する栓として機能することを特徴とする特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスが通流すると共に触媒が充填される触媒充填容器と、前記触媒充填容器内を上下に貫通すると共に上下方向に移動可能に配設されて内部に冷却流体が通流して前記触媒充填容器内の触媒を内側から冷却する内側冷却管と、前記触媒充填容器の外周に設けられて内部に冷却流体が通流して前記触媒充填容器を外側から冷却する外殻容器と、を備え、
前記触媒充填容器は上端面に触媒を充填する充填口を有すると共に下端面に触媒を排出する排出口を有してなり、
前記内側冷却管は、前記触媒充填容器の前記排出口を開閉する栓として機能することを特徴とする特徴とする多重管式反応容器。
【請求項2】
前記触媒充填容器が円筒体からなり前記内側冷却管が前記触媒充填容器の中央に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の多重管式反応容器。
【請求項3】
前記触媒充填容器と前記内側冷却管の組を複数組有し、該複数組が一つの外殻容器に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多重管式反応容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
反応ガスが通流すると共に触媒が充填される触媒充填容器を備えた反応容器に関し、特に反応容器が多重管になっている多重管式反応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒反応は多くの場合発熱反応であり、反応器スケールが大きくなると触媒充填層内の異常発熱による反応の暴走や触媒・設備の損傷が懸念されるため、冷却機構が重要である。
例えば、特許文献1では、触媒充填層内に冷媒が流れる伝熱管を設置して充填層から冷却する、という手法が開示されている。
【0003】
また、触媒反応は、原料に含まれる不純物による被毒や生成物の触媒表面への付着などにより徐々に触媒の活性が低下してくる。このため、反応器に充填した触媒は定期的に交換されるのが一般的である。
【0004】
触媒の交換方法として、例えば特許文献2では、二重管先端部を切断開口して真空ポンプホースを入れて充填材を吸い出し、再充填後溶接して閉じる、という手法が開示されている。
また、特許文献3では、触媒が充填された管に流体を送って充填物を押し流す、という手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-229147号公報
【特許文献2】特開平10-328555号公報
【特許文献3】特開昭60-71036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷却機構に関し、特許文献1の方法では、充填層内の伝熱管に近い領域の冷却効率は良いが、充填容器壁面近傍など伝熱管から離れた領域は冷却効率が悪いという問題がある。
【0007】
また、触媒の交換に関し、特許文献2の方法では、触媒を吸い出す真空ポンプ動力がかかる。また、触媒を吸い上げているため、重力の影響で触媒が落下することもあり、全てを回収するのは難しいという問題がある。
また、特許文献2では、触媒の回収に先立って容器を切断して開放し、充填後には切断部分を溶接して閉じるという作業が必要であり、労力やコストがかかるという問題もある。
【0008】
また、特許文献3の方法では、流体を送るための動力がかかるという問題がある。また、充填物を押し流す場合、容器形状によっては充填材が構造的にトラップされ、全量を回収できないという問題もある。
【0009】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、冷却効率に優れ、充填される触媒の交換が容易な多重管式反応容器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る多重管式反応容器は、反応ガスが通流すると共に触媒が充填される触媒充填容器と、前記触媒充填容器内を上下に貫通すると共に上下方向に移動可能に配設されて内部に冷却流体が通流して前記触媒充填容器内の触媒を内側から冷却する内側冷却管と、前記触媒充填容器の外周に設けられて内部に冷却流体が通流して前記触媒充填容器を外側から冷却する外殻容器と、を備え、
前記触媒充填容器は上端面に触媒を充填する充填口を有すると共に下端面に触媒を排出する排出口を有してなり、
前記内側冷却管は、前記触媒充填容器の前記排出口を開閉する栓として機能することを特徴とする特徴とするものである。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記触媒充填容器が円筒体からなり前記内側冷却管が前記触媒充填容器の中央に配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記触媒充填容器と前記内側冷却管の組を複数組有し、該複数組が一つの外殻容器に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、反応ガスが通流すると共に触媒が充填される触媒充填容器と、前記触媒充填容器内を上下に貫通すると共に上下方向に移動可能に配設されて内部に冷却流体が通流して前記触媒充填容器内の触媒を内側から冷却する内側冷却管と、前記触媒充填容器の外周に設けられて内部に冷却流体が通流して前記触媒充填容器を外側から冷却する外殻容器と、を備え、
前記触媒充填容器は上端面に触媒を充填する充填口を有すると共に下端面に触媒を排出する排出口を有してなり、前記内側冷却管は、前記触媒充填容器の前記排出口を開閉する栓として機能するようにしたので、以下の効果を奏する。
・触媒充填層を内側と外側の両側から冷却することができるので冷却効率に優れる。
・内側冷却管を上方向に移動することで、触媒充填容器の排出口が開放し、排出口から触媒を重力によって排出することが可能になっているので触媒の排出が容易にでき、また、触媒充填容器の上端面に充填口を有するので触媒排出後の充填も容易であり、触媒交換作業効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る多重管式反応容器の説明図である。
図2図1に示した多重管式反応容器において、触媒を排出する方法の説明図である。
図3図1に示した多重管式反応容器において、触媒を補充する方法の説明図である。
図4図1に示した多重管式反応容器における触媒充填容器の他の態様の説明図である。
図5図4に示した触媒充填容器の詳細説明図であり、図5(aー1)は天面を示し、図5(aー2)は蓋部材17を内側冷却管5と共に取り外した状態を示し、図5(b)は底面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態に係る多重管式反応容器1は、図1に示すように、触媒充填容器3と、内側冷却管5と、外殻容器7と、を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0016】
<触媒充填容器>
触媒充填容器3は、反応ガスが通流すると共に触媒が充填される容器である。本実施の形態では、図1に示すように、円筒体からなるものであるが、筒状であればその形状は特に限定されない。
触媒充填容器3の下部側面には反応ガスが入るガス導入口9が設けられ、触媒充填容器3の上部側面には反応ガス(液を含む場合あり)が排出されるガス排出口11が設けられている。
【0017】
また、触媒充填容器3は、上端部に触媒を充填する充填口13を有し(図2図3参照)、下端部に触媒を排出する排出口15を有し、排出口15から触媒を重力によって排出することが可能になっており、また、触媒充填容器3の上端面に充填口13を有するので触媒排出後の充填も容易であり、触媒交換作業効率に優れる。
排出口15の口径は、内側冷却管5が、図1に示すような直管の場合はその外径と略一致している。これは、排出口15を内側冷却管5によって閉止できるようにするためである。そのため、排出口15の周囲にシール部材等を設け、内側冷却管5によって排出口15を封止できるようにするのが好ましい。
なお、内側冷却管5の周面が、下方に向かって又は上方に向かって縮径するテーパー状である場合には、排出口15の口径は、内側冷却管5における排出口15に位置する部位の外径よりもやや小さくすればよい。
【0018】
<内側冷却管>
内側冷却管5は、触媒充填容器3内を上下に貫通すると共に上下方向に移動可能に配設されて内部に冷却流体が通流して触媒充填容器3内の触媒を冷却するものである。
内側冷却管5は、触媒充填容器3の中央に配置されている。
前述したように、内側冷却管5の外径は、排出口15の径と略一致しているので、排出口15に内側冷却管5を挿入したときに、内側冷却管5が排出口15を閉止する栓として機能する。
なお、上述したように、内側冷却管5の周面が、下方に向かって又は上方に向かって縮径するテーパー状である場合(以下、テーパ管という)には、内側冷却管5の外径と排出口15の内径の設定が、内側冷却管5が直観の場合よりも容易となり、内側冷却管5を、排出口15を閉止する栓として機能させやすい。
【0019】
内側冷却管5には、上部から下部に向かって冷却流体が流れ、反応ガスが触媒充填容器3内を下部から上部に向かって流れるのと、対向流れとなっている。なお、この例の様に反応ガスと冷媒流体を対向流にする場合も有れば、過熱部(ガス導入部)を優先的に冷却する効果を狙って反応ガスと冷媒流体を並行流にする場合もある。
【0020】
内側冷却管5の上部には、触媒充填容器3の上部の充填口13を開閉する蓋部材17が取り付けられている。
【0021】
冷却流体としては、たとえば空気、不活性ガス、水、海水、エチレングリコール等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
なお、図1に示す例では、触媒充填容器3内に1本の内側冷却管5を配設したものを示しているが、本発明はこれに限定されず、触媒充填容器3内に複数の内側冷却管5を配設するようにしてもよい。このようにすることで、触媒充填容器3内の触媒を内側から冷却する冷却効率をより向上することができる。
【0023】
<外殻容器>
外殻容器7は、触媒充填容器3の外周に設けられて内部に冷却流体が通流して触媒充填容器3を外側から冷却するものである。
本実施の形態の外殻容器7は、図1に示すように、触媒充填容器3よりも大径の円筒体からなり、上部側面に冷却流体入口19が設けられ、下部側面に冷却流体出口21が設けられている。したがって、外殻容器7の冷却流体の流れは、内側冷却管5と同様に上部から下部となり、反応ガスと対向流となっている。
なお、冷却流体と反応ガスの流れの向きは、上記の反応ガスと冷媒流体の関係と同様に並行流にする場合もある。
【0024】
上記のように構成された多重管式反応容器1においては、触媒充填容器3に触媒が充填され、内側冷却管5及び外殻容器7を冷却流体が流れる。
そして、触媒充填容器3に反応ガスが流れると、触媒反応により反応熱が発生する。この反応熱は、内側冷却管5を流れる冷却流体による内側と、外殻容器7を流れる冷却流体による外側から冷却される。
【0025】
このように、本実施の形態では、触媒反応熱は内側と外側の両側から冷却されるので、効率がよい。また、内側と外側の両側から冷却可能としたことにより、触媒の温度ムラや、ホットスポット(充填層のごく一部が異常発熱する現象)の出現を抑制することができる。
【0026】
また、本実施の形態では、内側冷却管5が触媒充填容器3のほぼ中央に配置されているので、偏りなく内側からの冷却が可能である。同様に、触媒充填容器3が外殻容器7のほぼ中央に配置されているので、偏りなく外側からの冷却が可能である。
もっとも、本発明は内側冷却管5を触媒充填容器3の中央に配置するものに限定されず、また触媒充填容器3が外殻容器7の中央に配置されるものにも限定されない。
【0027】
また、本実施の形態では、触媒充填容器3は、充填口13から導入した触媒を排出口15から動力を使うことなく重力によって排出可能になっていると共に、内側冷却管5が排出口15の栓として機能し、内側冷却管5に蓋部材17が取り付けられているので、図2に示すように、内側冷却管5を引き抜くだけで、触媒の排出が可能である。
なお、内側冷却管5は、図2に示すように、完全に引き抜かなくても内側冷却管5の下端が排出口15よりも上になる位置まで移動させれば、触媒の排出は可能である。
また、内側冷却管5が上述したテーパー管の場合には、内側冷却管5を上方又は下方に移動することで、排出口15と内側冷却管5との間に隙間を生じさせて、該隙間から触媒を排出可能とすることもできる。
【0028】
触媒を排出後に触媒を触媒充填容器3に充填する場合には、図3に示すように、内側冷却管5を挿入して排出口15を閉じた後、充填口13から導入するようにすればよい。
【0029】
このような操作を可能とするため、蓋部材17を内側冷却管5に対して上下に移動可能にするか、あるいは蓋部材17が内側冷却管5に固定された場合には、内側冷却管5の長さを、図3の状態にできるように、余裕を持たせるようにすればよい。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、触媒充填容器3に充填された触媒を内側と外側の両側から冷却することができるので、冷却効率に優れる。
また、内側冷却管5を上方向に移動することで、触媒充填容器3の排出口15が開放し、排出口15から触媒を重力によって排出することが可能になっているので、触媒の排出が容易にでき、触媒交換作業効率に優れる。
【0031】
上記の例では、一つの外殻容器7に対して、触媒充填容器3と内側冷却管5の組が一つ設けられるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、一つの外殻容器7に対して触媒充填容器3と内側冷却管5の組が複数設けるようにしてもよい。
この場合において、例えば、図1に示したものと同量の触媒を使用する場合、この態様では各触媒充填容器3に充填する触媒量が少量となり、充填状態における触媒の厚みが薄くなるので、内側及び外側からの冷却効率が向上する。
【0032】
また、上記の触媒充填容器3は、ガス導入口9が下部側面に設けられ、ガス排出口11が上部側面に設けられたものであったが、図4図5(b)に示すように、ガス導入口9を底面に設け、また、図4図5(a-1)に示すように、ガス排出口11を天面に設けるようにしてもよい。
この場合、蓋部材17には、図5(aー2)に示すような切欠き部17aを設けるようにすればよい。このとき触媒充填容器3の天面には、図4図5(a-1)に示すように、ガス派出口11を支持する扇形形状の天面部3aが設けられることになる。
【符号の説明】
【0033】
1 多重管式反応容器
3 触媒充填容器
5 内側冷却管
7 外殻容器
9 ガス導入口
11 ガス排出口
13 充填口
15 排出口
17 蓋部材
19 冷却流体入口
21 冷却流体出口
図1
図2
図3
図4
図5