(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176570
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241212BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241212BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
H01L21/60 311Q
H01L23/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095235
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 祐幹
【テーマコード(参考)】
5E316
5F044
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC14
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC33
5E316CC34
5E316CC35
5E316CC36
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE31
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316JJ02
5F044KK07
5F044LL01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】残銅率が各配線層間において異なることで生じる反りを低減する多層配線基板及びその設計方法を提供する。
【解決手段】コア絶縁層1の第1面上方に第1の導体部13及び第1の絶縁体部11、12並びにコア絶縁層の第2面下方に第2の導体部13及び第2の絶縁体部21、22が設けられる多層配線基板100であって、第1の導体部及び第1の絶縁体部の合計の体積に占める第1の導体部の割合をAとし、第2の導体部及び縁体部の合計の体積に占める第2の導体部の割合をBとする。A/BをXとし、第1、第2の絶縁体の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)が、下式を満たす。
α=(E*(0.0023566-0.113792*(X-1))-0.113792*(X-1)*10+0.060395*(X-1)*32.5-0.383748+X*0.3086234)/((0.060395*(X-1)-0.0014039))
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア絶縁層と、
前記コア絶縁層の前記第1面の上方に設けられた第1の導体部及び第1の絶縁体部と、
前記コア絶縁層の前記第2面の下方に設けられた第2の導体部及び第2の絶縁体部と、
を備えており、
前記第1の導体部と前記第2の導体部の体積が等しい多層配線基板。
【請求項2】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア絶縁層と、
前記コア絶縁層の前記第1面の上方に設けられた第1の導体部及び第1の絶縁体部と、
前記コア絶縁層の前記第2面の下方に設けられた第2の導体部及び第2の絶縁体部と、
を備えており、
前記第1の導体部及び前記第1の絶縁体部の合計の体積に占める前記第1の導体部の割合をAとし、
前記第2の導体部及び前記第2の絶縁体部の合計の体積に占める前記第2の導体部の割合をBとし、
A/BをXとし、
前記第1及び第2の絶縁体の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)が、次の式(1)を満たす多層配線基板。
α=(E*(0.0023566-0.113792*(X-1))-0.113792*(X-1)*10+0.060395*(X-1)*32.5-0.383748+X*0.3086234)/((0.060395*(X-1)-0.0014039))…(1)
なお、式(1)の右辺をβとした場合、αは0.9β<α<1.1βの範囲であってもよい。
【請求項3】
請求項1に記載の多層配線基板において、
前記第1の絶縁体部及び第2の絶縁体部の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)が、次の式(2)および(3)を満たす多層配線基板。
15≦α≦50…(2)
4≦E≦16…(3)
【請求項4】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア絶縁層と、
前記コア絶縁層の前記第1面の上方に設けられた第1の導体部及び第1の絶縁体部と、
前記コア絶縁層の前記第2面の下方に設けられた第2の導体部及び第2の絶縁体部と、
を備える多層配線基板の設計方法であって、
前記第1の導体部及び前記第1の絶縁体部の合計の体積に占める前記第1の導体部の割合をAとし、
前記第2の導体部及び前記第2の絶縁体部の合計の体積に占める前記第2の導体部の割合をBとし、
A/BをXとし、前記第1の絶縁体部及び第2の絶縁体部の弾性率をE(単位:GPa)、熱膨張係数をα(単位:ppm)とした場合に、これらが以下の式(2)及び(3)に示す範囲において、少なくとも2種類のXの値について反りシミュレーションを行う第1の工程、
15≦α≦50 ・・・(2)
4≦E≦16 ・・・(3)
前記第1の工程における反りシミュレーションの結果に対して、α、E、Xの二乗項を捨象して多重解析を実施し、反り量及び前記α、前記E、前記Xの関係式を算出する第2の工程、
前記第2の工程で得た関係式において、反り量を0とした場合の前記α、前記E、前記Xの関係式を算出する第3の工程、
前記第3の工程で得た関係式を用いて、多層配線基板で採用する絶縁体の弾性率E(単位:GPa)及び熱膨張係数をα(単位:ppm)を定める
ことを特徴とする多層配線基板の設計方法。
【請求項5】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア絶縁層と、
前記コア絶縁層の前記第1面の上方に設けられた第1の導体部及び第1の絶縁体部と、
前記コア絶縁層の前記第2面の下方に設けられた第2の導体部及び第2の絶縁体部と、
を備える多層配線基板の設計方法であって、
前記第1の導体部及び前記第1の絶縁体部の合計の体積に占める前記第1の導体部の割合をAとし、
前記第2の導体部及び前記第2の絶縁体部の合計の体積に占める前記第2の導体部の割合をBとし、
A/BをXとして算出する工程と、
前記第1の絶縁体部及び第2の絶縁体部の弾性率をE(単位:GPa)、熱膨張係数をα(単位:ppm)とした場合に、E及びαが、次の式(1)から(3)を満足する材料を選択する多層配線基板の設計方法。
α=(E*(0.0023566-0.113792*(X-1))-0.113792*(X-1)*10+0.060395*(X-1)*32.5-0.383748+X*0.3086234)/((0.060395*(X-1)-0.0014039))・・・・(1)
15≦α≦50 ・・・(2)
4≦E≦16 ・・・(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの高機能化等の要求に伴う高集積化や、実装されるチップ数の増加による大型化が進んでいる。そして、これらに使用される多層配線基板において、チップ実装信頼性の向上のために低反り化が求められている。
【0003】
特許文献1には、コア基板15と、コア基板15の上下面に同数ずつ積層された絶縁層16a~16dと、コア基板15の上下面および絶縁層16a~16dの表面にそれぞれ異なる占有面積率で被着された導体層13と、を具備してなる配線基板Aが開示されている。配線基板Aにおいて、コア基板15の上下面の導体層13同士、およびコア基板15を中心にして上面側および下面側のそれぞれ同順位に位置する導体層13同士において、占有面積率の大きい方の導体厚みが、占有面積率の小さい方の導体厚みよりも薄くなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層配線基板の反りを低減するためには、コア絶縁層の第1面上に設けられた第1のビルドアップ層と第1面に対向する第2面上に設けられた第2のビルドアップ層において、導体の体積の総和および樹脂の体積の総和を共通にすることが理想的である。しかし、第1のビルドアップ層と第2のビルドアップ層の間で配線パターンが異なるため、残銅率(銅の面積)を一致させることが難しく、また、配線の接続信頼性やビア構造の加工性の観点から、第1のビルドアップ層と第2のビルドアップ層の間で導体や樹脂の厚みを一致させることも現実的に難しい。
【0006】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、導体や絶縁樹脂の面積や厚さ(体積)を変更することなく反りを低減することが可能な多層配線基板およびその設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の多層配線基板の一つは、
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア絶縁層と、
前記コア絶縁層の前記第1面の上方に設けられた第1の導体部及び第1の絶縁体部と、
前記コア絶縁層の前記第2面の下方に設けられた第2の導体部及び第2の絶縁体部と、
を備えており、前記第1の導体部と前記第2の導体部の体積が等しい。
【0008】
さらに、他の代表的な本発明の多層配線基板の一つは、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア絶縁層と、
前記コア絶縁層の前記第1面の上方に設けられた第1の導体部及び第1の絶縁体部と、
前記コア絶縁層の前記第2面の下方に設けられた第2の導体部及び第2の絶縁体部と、
を備える多層配線基板であって、
前記第1の導体部及び前記第1の絶縁体部の合計の体積に占める前記第1の導体部の割合をAとし、
前記第2の導体部及び前記第2の絶縁体部の合計の体積に占める前記第2の導体部の割合をBとし、
A/BをXとし、
前記第1及び第2の絶縁体部の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)が、次の式(1)を満たしている。
α=(E*(0.0023566-0.113792*(X-1))-0.113792*(X-1)*10+0.060395*(X-1)*32.5-0.383748+X*0.3086234)/((0.060395*(X-1)-0.0014039))…(1)
なお、式(1)の右辺をβとした場合、αは0.9β<α<1.1βの範囲であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コア基板の第1面側に設けられている導体層と、コア基板の第2面側に設けられている導体層との間で、各導体層において導体が占める残銅率が異なっていても、配線基板の反りが抑制され得る。また、そのような信頼性の高い配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板を示す断面図。
【
図2】本発明のコア基板の製造方法の一例を示す説明図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板および製造方法を示す説明図。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板および製造方法を示す説明図。
【
図5】本発明の半導体素子を実装した半導体装置の一例を示す断面図。
【
図7】
図7は、反り量と変数Xの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上実際の比率と異なる場合や、層数や構成の一部が図面から省略される場合がある。そのため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。
なお、コア絶縁層1と絶縁体部11の境界の面を第1面と称し、コア絶縁層1と絶縁体部12の境界の面を第2面と称する。
【0013】
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。さらに、「上方」及びこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸プラス方向」、「Z軸マイナス方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
【0014】
また、「層」という場合、必ずしも物体が均一に形成された状態を指す必要はない。間隙を持つパターンを有する物体や、個片化された物体のまとまりであってもよい。たとえば、コア基板の主面に平行な面のうち、同一の面に形成された複数の導体を指して「導体層」という場合がある。
【0015】
<第1の実施形態>
まず、
図1を参照して第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板を示す断面図である。
なお、本開示における多層配線基板には、はんだバンプを介したフリップチップ接続を適用して、半導体素子を実装することが可能である。
【0016】
(多層配線基板の構成)
多層配線基板100は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有する。具体的には、多層配線基板100は、コア絶縁層1と複数の絶縁体部11、12、21、22と、複数の導体部13、23、43、53とを備える。導体部43及び53は、パッド部として機能する導体部である。
また、コア絶縁層1にはスルーホール3が設けられており、スルーホールの側壁には貫通電極としての導体部23が設けられている。そして、
図1の例においてはスルーホールの中心部は穴埋め樹脂4によって封止されている。
なお、導体部13とパッド部である導体部43及び53との間は、ビアと称される導電部で接続されていてもよい。
【0017】
また、絶縁体部12の上方及び絶縁体部22の下方には、ソルダーレジスト層17が形成されており、ソルダーレジスト層17の開口部には、パッド部である導体部53が配置されている。
さらに絶縁体部12の上方に配置されているパッド部である導体部53の上方には、はんだバンプ20が形成されている。
【0018】
(絶縁体部)
絶縁体部11、12、21、22は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂またはそれらを混合した樹脂から構成され、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、またはこれらの2つ以上の組み合わせからなり、無機フィラーまたは有機フィラーを含有しても良い。
【0019】
(導体部)
導体部13は、下層の絶縁体部11側から順に、シード層13aおよびめっき層13bを有してもよい(
図3参照)。導体部13には、配線、ビア、パッド、シールド、グランド、ダミーなどの様々なパターンが含まれ得るが、
図1においては配線、ビア、パッド部を示す。隣接する導体部13は絶縁体部11の面方向に離間して形成されている。
【0020】
ここで、コア絶縁層の上方に配置されている、はんだバンプ20を除く導体部を第1の導体部とし、
コア絶縁層の上方に配置されている、ソルダーレジスト層17を除く絶縁体部を第1の絶縁体部とし、
コア絶縁層の下方に配置されている、導体部を第2の導体部とし、
コア絶縁層の下方に配置されている、ソルダーレジスト層17を除く絶縁体部を第2の絶縁体部とした場合に、
第1の実施形態の多層配線基板は、前記第1の導体部と前記第2の導体部の体積が等しく形成されている。
または、前記第1の導体部及び前記第1の絶縁体部の合計の体積に占める前記第1の導体部の割合をAとし、
前記第2の導体部及び前記第2の絶縁体部の合計の体積に占める前記第2の導体部の割合をBとし、
A/BをXとし、
前記第1及び第2の絶縁体の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)が、
次の式(1)を満たすように形成されていてもよい。
なお、以下の式(1)の導出方法については後述する。
α=(E*(0.0023566-0.113792*(X-1))-0.113792*(X-1)*10+0.060395*(X-1)*32.5-0.383748+X*0.3086234)/((0.060395*(X-1)-0.0014039))…(1)
なお、式(1)の右辺をβとした場合、αは0.9β<α<1.1βの範囲であってもよい。
【0021】
第1の実施形態の多層配線基板は、このような条件を満たすことにより、260℃から22℃の温度変化においても、67.5mm×67.5mmの大きさの場合には、反りを0.1μm以下に抑制することができる。
【0022】
さらに、前記第1の絶縁体部及び第2の絶縁体部の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)が、次の式(2)および(3)を満たすものであってもよい。
15≦α≦50…(2)
4≦E≦16…(3)
【0023】
<式(1)の導出>
上述した式(1)については、多層配線基板について、板理論を用いた反りのシミュレーションを行って導入している。
【0024】
<シミュレーションモデル>
反りのシミュレーションでは、多層配線基板全体をモデル化し、以下、「多層配線基板モデルA」とする。具体的には、多層配線基板モデルAの平面形状は、67.5mm×67.5mmの矩形状とした。また、コア基板(コア絶縁層1及び第1面及び第2面に形成された導電部43を含むもの)の厚さを1200μm、導体部13、の厚さを15μm、絶縁体部11、12、21、22の厚さを30μm、ソルダーレジスト層17の厚さを15μmとした。
そして、このような多層配線基板モデルAにおいて、コア絶縁層の前記第1面の上方に設けられた第1の導体部及び第1の絶縁体部と、
前記コア絶縁層の前記第2面の下方に設けられた第2の導体部及び第2の絶縁体部とし、前記第1の導体部及び前記第1の絶縁体部の合計の体積に占める前記第1の導体部の割合をAとし、
前記第2の導体部及び前記第2の絶縁体部の合計の体積に占める前記第2の導体部の割合をBとし、
AおよびBの値を変更し、多層配線基板モデルAにて温度負荷をかけ(260℃→22℃)シミュレーションを実施し、22℃における反りを算出した。
評価に使用したソフトは、株式会社メカニカルデザイン製 粘弾性積層板熱反り解析プログラムであり、入力値にはXY寸法、層厚、層厚弾性率、線膨張係数、ポアソン比を使用し、出力は反り量である。物性値はCTEと弾性率の温度依存データ、弾性率に粘弾性(WLF/アレニウス)を選択することができる。ただし本実施例では全材料を弾性体と設定した。
【0025】
ここで、 A/BをXとした。
【0026】
表1は、上述した反りシミュレーションを実施した結果の一覧表である。
【表1】
【0027】
実施例1においては、第1の絶縁体部の体積率を70%、第1の導体部の体積率を30%、第2の絶縁体部の体積率を62.5%、第2の導体部の体積率を37.5%とした。このとき、多層配線基板モデルAには、マイナス方向に181μmの反りが生じる。
ここで、プラス方向とは、
図5(A)に示されるように多層配線基板モデルAの中央部が下がり、端部が上がることを意味する。一方、マイナス方向とは、
図5(B)に示されるように多層配線基板モデルAの中央部が上がり、端部が下がることを意味する。
【0028】
実施例2においては、第1の絶縁体部の体積率を70%、第1の導体部の体積率を30%、第2の絶縁体部の体積率を70%、第2の導体部の体積率を30%とした。このとき、多層配線基板モデルAには、ほとんど反りが生じない。
【0029】
実施例3においては、第1の絶縁体部の体積率を70%、第1の導体部の体積率を30%、第2の絶縁体部の体積率を75%、第2の導体部の体積率を25%とした。このとき、多層配線基板モデルAには、プラス方向に145μmの反りが生じる。
【0030】
比較例1においては、第1の絶縁体部の体積率を60%、第1の導体部の体積率を40%、第2の絶縁体部の体積率を50%、第2の導体部の体積率を50%とした、このとき、多層配線基板モデルAには、マイナス方向に179μmの反りが生じる。
【0031】
比較例2においては、第1の絶縁体部の体積率を60%、第1の導体部の体積率を40%、第2の絶縁体部の体積率を60%、第2の導体部の体積率を40%とした、このとき、多層配線基板モデルAには、ほとんど反りが生じない。
【0032】
比較例3においては、第1の絶縁体部の体積率を60%、第1の導体部の体積率を40%、第2の絶縁体部の体積率を66.7%、第2の導体部の体積率を33.3%とした。このとき、多層配線基板モデルAには、プラス方向に148μmの反りが生じる。
【0033】
上記実施例と比較例について、反り量と変数Xの関係をグラフ化すると、
図7に示されるように、実施例と比較例のグラフはほとんど一致する。この結果から、多層配線基板の反り量は導体体積の総量に関わらず、変数Xに依存することが分かった。
【0034】
上記結果から、変数X=0になるときに反り量を最小化することができると考えられるが、一般的に配線基板の銅体積や残銅率は細かな制御が困難でありX=0となる配線設計を行うことには限界がある。そこで、Xの値に応じて絶縁樹脂の線膨張係数と弾性率を制御することで、反り量を小さくする方法を考案した。
【0035】
なお、弾性率は動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis:DMA)により測定された貯蔵弾性率を用いる。貯蔵弾性率とは、材料の弾性としての特性を反映しており、材料の変形しにくさを表す値である。貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いた測定によって得られる。加熱しながら測定することによって、所望の温度の貯蔵弾性率を測定することができる。
【0036】
線膨張係数(CTE:coefficient of thermal expansion)とは、所定の温度範囲における温度の上昇に対応して長さの変化する割合を表す値である。CTEは、熱機械分析装置(TMA)を用いた測定によって得られる。本実施形態におけるコア層線膨張係数は、例えば30℃~240℃の温度範囲から取得した。
【0037】
X=0.8(実施例1)において、絶縁層の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm/℃)を、4≦E≦15、15≦α≦50の範囲でシミュレーションすると、表2のようになる。この結果から、反り量が0に近い弾性率Eと熱膨張係数αの組み合わせを選択することができる。
【表2】
【0038】
X=1.2(実施例3)においても同様に、絶縁層の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)を、4≦E≦15、15≦α≦50の範囲でシミュレーションすると、表3のようになる。この結果から、反り量が0に近い弾性率Eと熱膨張係数αの組み合わせを選択することができる。
【表3】
【0039】
次に、シミュレーション結果を一般化する為、実験結果を統計的に分析(回帰分析)することで、数式化した。
反り量を目的変数として設定し、説明変数には、X、E、α単体に加えて、Xとαの交互作用、XとEの交互作用を設定した。α、E、Xそれぞれの二乗項は、反り量への影響が小さいことがわかった為、使用しなかった。
上記、目的変数と説明変数を用いて、表の結果を重回帰分析した結果、反り量は式(10)の予測式で表現することができた。
反り量=-0.383748+X*0.3086234+α*0.0014039+E*0.0023566-0.060395*(X-1)*(α-32.5)-0.113792*(X-1)*(E-10) …(10)
式(10)による予測結果を表4と表5に示す。シミュレーション結果と比較すると、反り量の予測結果に若干の違いはあるが、反り量が最も0に近くなるCTE・弾性率の組み合わせは殆ど一致していることが分かる。
【表4】
【表5】
【0040】
式(10)について、反り量=0として、αをEとXの式で表現すると、式(1)のようになる。
α=(E*(0.0023566-0.113792*(X-1))-0.113792*(X-1)*10+0.060395*(X-1)*32.5-0.383748+X*0.3086234)/((0.060395*(X-1)- 0.0014039))・・式(1)
この関係式を満たすとき、反り量は最小になるといえる。
なお、式(1)の右辺をβとした場合、αは0.9β<α<1.1βの範囲であってもよい。
【0041】
<第1の実施形態に係る多層配線基板の設計方法および製造方法>
第1の実施形態に係る多層配線基板100の設計方法および製造方法を説明する。まず、
図2を参照しながら、コア基板を作製する工程を説明する。
図2は本発明のコア基板の製造方法の一例を示す説明図である。
【0042】
(コア基板の作製)
まず、両面に銅箔2が貼付されたコア絶縁層1に、ドリル等で表裏面を電気的に接続するためのスルーホール3を形成する(
図2(a))。
【0043】
次に、銅箔2の表面およびスルーホール3の壁面に、無電解めっきおよび電解めっきにより導体部23を形成する(
図2(b))。導体部23の無電解めっきにおいては、シード層13aと同様の材料を用いることができる。また、導体部23の電解めっきにおいては、めっき層13bと同様の材料を用いることができる。
【0044】
次に、スルーホール3内を穴埋め樹脂4で埋める。スルーホール3からはみ出した不要な穴埋め樹脂4はバフ研磨等により除去する(
図2(c))。なお、
図2(b)に示す工程で、スルーホール3を完全にめっきで埋める場合、本工程は省略される。
【0045】
次に、全面に無電解めっきと電解めっきにより導体部33を形成する(
図2(d))。
なお、
図2(b)に示す工程で、スルーホール3を完全にめっきで埋める場合や、穴埋め樹脂上に導体部33が不要な場合は、本工程は省略してもよい。
【0046】
次に、レジストを塗布またはラミネートし、導体部23、33のうち、導体として残す部分にフォトリソグラフィーにてレジストパターン6形成する(
図2(e))。
【0047】
次に、レジストパターン6が形成されていない導体部23、33の部分をエッチングにて除去し、複数の導体を形成する(
図2(f))。
【0048】
次に、レジストパターン6を除去することで、パッド部である導体部43を備えるコア基板が形成される(
図2(g))。導体部43は、コア基板に積層される配線基板と電気的に接続される。
【0049】
以上、コア基板の作製方法を説明したが、これは一例であり他の方法で作製してもよい。次に、作製したコア基板に絶縁樹脂と導体を複数積層し、多層配線基板100を作製する工程を説明する。なお、絶縁樹脂と導体は、コア基板の両面に積層される。
【0050】
図3および
図4は、本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板および製造方法を示す説明図である。尚、以降の製造方法の説明図では、コア基板のコア絶縁層1の記載を省略している。
【0051】
(多層配線基板の作製)
まず、コア基板上に絶縁体部11を形成し、下層の電気的接続用のパッド部43が露出するように、熱硬化性樹脂の場合はUVやCO2などのレーザー、感光性樹脂の場合はフォトリソグラフィーにてビア開口8を形成する(
図3(a))。
ここで、絶縁体部11の材料について、弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)が以下の式(1)の条件を満たすものを選定する。
α=(E*(0.0023566-0.113792*(X-1))-0.113792*(X-1)*10+0.060395*(X-1)*32.5-0.383748+X*0.3086234)/((0.060395*(X-1)- 0.0014039))・・・式(1)
なお、式(1)の右辺をβとした場合、αは0.9β<α<1.1βの範囲であってもよい。
【0052】
次に、絶縁体部11の上面、ビア開口8の壁面、およびビア開口8の底面に当たるパッド部43に無電解めっきやスパッタにてシード層13aを形成する(
図3(b))。
【0053】
(シード層)
シード層13aは、絶縁体部11上に積層される。シード層13aを構成する材料は特に制限されないが、無電解めっき法で形成する場合、例えば、Cu、Pd、Al、Sn、NiおよびCrなどの金属材料を用いることができる。スパッタリング法で形成する場合、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum-doped Zinc Oxide)、ZnO、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、TiN、Cu3N4、Cu合金、またはこれらの2種以上を組み合わせた材料を用いることができる。
【0054】
次に、シード層13a上にレジストを塗布またはラミネートし露光現像することで、めっき層13bのパターンに対応するレジストパターン16を形成する(
図3(c))。
【0055】
次に、レジストパターン16が形成されたシード層13aに、電解めっきによりめっき層13bを形成する(
図3(d))。
【0056】
(めっき層)
めっき層13bは、シード層13aの上面(絶縁体部11と反対側の面)に積層される。めっき層13bを構成する材料は、主に金属であり、種類は特に制限されないが、例えば、CuおよびCu合金、AgおよびAg合金、Sn、Pd、Au、Ni、Cr、Pt、Feまたはこれらの2種以上を組み合わせた材料を用いることができる。
次に、レジストパターン16を除去する(
図3(e))。
【0057】
次に、レジストパターン16が除去されたことによって露出したシード層13a(めっき層13bに覆われていないシード層13a)を、エッチングにより除去する(
図3(f))。
【0058】
次に、導体部13と、下層の絶縁体部11とを覆うように絶縁体部12を積層する。絶縁体部12の材料についても、上述の式(1)の要件を満たす弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)であるものを選定する。
なお、所望の層数の回路が形成された場合には、この工程は省略される。
【0059】
以上の工程を、所望の層数の回路が形成できるまで繰り返し行う(
図4(g))。
【0060】
所望の層数の回路を形成後、最外層にソルダーレジスト層17を、塗布またはラミネートで形成する(
図4(h))。
【0061】
フォトリソグラフィーなどによりパッド部53上にソルダーレジスト開口18を形成する(
図4(i))。ソルダーレジスト層17は、例えば、感光性のエポキシ系樹脂であり、無機フィラーを含有していても良い。非感光の熱硬化樹脂を使用する場合は、UVレーザーやCO2レーザー、フォトリソグラフィーなどによりソルダーレジスト開口18を形成する。
【0062】
次に、ソルダーレジスト開口18内のパッド53上に、表面処理層19を形成する(
図4(l))。
【0063】
次に、半導体素子34(シリコンチップ)実装側のソルダーレジスト開口18内に、はんだバンプ20を形成することで多層配線基板100を形成することができる(
図4(m))。はんだバンプ20は、はんだペーストを用いる場合はスクリーン印刷で形成でき、はんだボールを用いる場合は、フラックスをスクリーン印刷後にボール振込にてはんだボールを搭載し、それぞれリフローにて溶融させて形成できる。
【0064】
図5は、実装状態の一例を示したものであり、多層配線基板100に半導体素子34(シリコンチップ)を実装した状態(半導体装置)を示している。この半導体装置において、半導体素子34の電極端子は、はんだバンプ20等の導電性材料を介して多層配線基板100上の対応するパッド部53に電気的に接続されている(フリップチップ実装)。さらに、実装した半導体素子34と多層配線基板100との間の空隙には、熱硬化性のエポキシ系樹脂等のアンダーフィル樹脂35が充填されており、加熱硬化によって半導体素子34と多層配線基板100との機械的な接合が確保されている。
【0065】
一方、半導体素子34実装面側と反対側のソルダーレジスト層17から露出するパッド部53には、外部接続端子として用いられるはんだバンプ20が半導体素子34実装後に形成される。このはんだバンプ20を介して多層配線基板100はマザーボード等に実装される。
【符号の説明】
【0066】
1 コア絶縁層
2 銅箔
3 スルーホール
4 穴埋め樹脂
6、16 レジストパターン
8 ビア開口
11、12、21、22 絶縁体部
13、33 導体部
13a シード層
13b めっき層
16 レジストパターン
17 ソルダーレジスト層
18 ソルダーレジスト開口
19 表面処理層
20 はんだバンプ
23 導体部
34 半導体素子
35 アンダーフィル樹脂
43、53 導体部(パッド部)
100 多層配線基板