(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176572
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】多層配線基板、半導体装置およびその設計方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241212BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241212BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
H05K3/46 T
H01L23/12 N
H01L23/14 R
H01L23/12 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095242
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 茜
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA38
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC05
5E316CC06
5E316CC09
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC33
5E316CC34
5E316CC35
5E316CC36
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE31
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316JJ02
(57)【要約】
【課題】反りを抑えた半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の一態様によると、コア基板を有し、コア基板の両面に導体層と絶縁樹脂層を複数形成した多層配線基板と、多層配線基板の少なくとも一方の面に接続端子を介して実装された半導体素子を備える半導体装置において、コア基板を構成するコア樹脂の線膨張係数をYppm/℃、絶縁樹脂層の線膨張係数をXppm/℃としたとき、10≦X≦25、0.5≦Y、Y≦―0.23X+11を満たす。これによって、温度サイクル試験において反りを抑えることが可能となる。コア樹脂と絶縁樹脂層の線膨張係数を選択し、反りを抑えた信頼性の高い半導体素子を実装できる多層配線基板を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、コア基板と、前記コア基板の両面に有機絶縁材料を使用した絶縁樹脂層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
前記多層配線基板を構成する前記コア基板のコア樹脂の線膨張係数をYppm/℃、前記絶縁樹脂層の線膨張係数をXppm/℃としたとき、以下の式(1)及び式(2)の条件を満たす多層配線基板。
10≦X≦25 ・・・・・・(1)
Y≦―0.23X+11 ・・・(2)
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線基板において、
前記コア樹脂の厚さは、0.4mmから2.0mmであることを特徴とする多層配線基板。
【請求項3】
請求項2に記載の多層配線基板において、
前記多層配線基板は、平面形状が20mm×20mmの矩形状であり、コア樹脂の厚さが1.2mmであり、導体層の合計の厚さが15μmであり、絶縁樹脂層の合計の厚さが30μmであり、ソルダーレジスト層17の表裏合計の厚さが15μmであり、半導体素子が実装される側の導体層と絶縁樹脂層において、配線部とビア部の占める体積割合を31%とし、半導体素子が実装されない側の導体層と絶縁樹脂層において、配線部とビア部の占める体積割合を29%であることを特徴とする多層配線基板。
【請求項4】
請求項3に記載の多層配線基板において、
前記絶縁樹脂層には、無機材料からなるフィラーが含まれており、
前記コア樹脂は、ガラス繊維を用いて強化されている繊維強化複合材料からなることを特徴とする多層配線基板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の多層配線基板に半導体素子を実装した半導体装置。
【請求項6】
コア基板と、前記コア基板の両面に絶縁樹脂層を形成した多層配線基板の設計方法において、
前記多層配線基板を構成する前記コア基板のコア樹脂の線膨張係数をYppm/℃、前記絶縁樹脂層の線膨張係数をXppm/℃としたとき、以下の式(1)及び式(2)の条件を満たすように前記コア樹脂および前記絶縁樹脂層を選択する多層配線基板の設計方法。
10≦X≦25 ・・・・・・(1)
Y≦―0.23X+11 ・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子(チップ)等の電子部品を実装可能な多層配線基板、半導体素子を実装した半導体装置及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高機能化に伴い、半導体素子が大型化し、半導体素子を実装するFC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)用等の多層配線基板も大型化している。そして、多層配線基板からなる半導体装置は大型化することによって、加熱および冷却時に生じる反りが大きくなる傾向がある。
【0003】
この結果、半導体装置に反りが生じると、半導体素子と多層配線基板との接合部が破断しやすくなるという問題が生じる。特に、温度サイクル試験等、熱負荷のかかる場合において、反りによる接合部の破断が問題となっている。
【0004】
特許文献1には、多層基板に設けられた面状のグランド電極の少なくとも一部に複数の孔を形成することにより、多層基板に形成される電極の配線密度を調整し、多層基板の反りを低減する技術が開示されている。具体的には、複数の絶縁体層L1~L6と電極2,3とを積層した積層体を用いて形成された多層基板1において、電極2,3は少なくとも、各絶縁体層L1~L6のいずれかに設けられた面状のグランド電極2を備え、グランド電極2の少なくとも一部に複数の孔4を形成することにより、多層基板1に形成される電極2,3の配線密度を調整し、多層基板1の反りを低減する多層基板および多層基板を備えたモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、多層基板の配線密度を調整するため、グランド電極に複数の孔を形成している。このため、多層基板の反りを低減するためには、グランド電極に配置する孔の数、大きさを、個々の配線基板において決定する必要があり、設計工程が煩雑となる。
【0007】
本発明は、かかる従来技術における課題に鑑み創作されたもので、多層配線基板を構成するコア基板のコア樹脂、絶縁樹脂層の線膨張係数を選択することによって、反りを抑制することができる多層配線基板、半導体装置及びその設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の代表的な多層配線基板の一つは、
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、コア基板と、前記コア基板の両面に有機絶縁材料を使用した絶縁樹脂層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
前記多層配線基板のコア基板を構成するコア樹脂の線膨張係数をYppm/℃、絶縁樹脂層の線膨張係数をXppm/℃としたとき、10≦X≦25、Y≦―0.23X+11を満たしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多層配線基板を構成するコア基板のコア樹脂、絶縁樹脂層の線膨張係数を選択することによって、反りを抑制することができる多層配線基板、半導体装置及びその設計方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る多層配線基板の断面図。
【
図2】
図2は、第2の実施形態に係る半導体装置の断面図。
【
図3】
図3は第2の実施形態に係る半導体装置の平面図。
【
図4】
図4は、一端を固定した棒の熱による膨張を示す断面図。
【
図7】
図7は、コア基板の製造方法の一例を示す説明図。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す説明図。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上実際の比率と異なる場合や、層数や構成の一部が図面から省略される場合がある。そのため、本発明は、必ずしも図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。なお、「上面」、「下面」については、「第1面」、「第2面」と称することもある。
また、コア基板から遠い側の面を外面と称することがある。
【0013】
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。さらに、「上方」及びこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸プラス方向」、「Z軸マイナス方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
【0014】
また、「層」という場合、必ずしも物体が均一に形成された状態を指す必要はない。間隙を持つパターンを有する物体や、個片化された物体のまとまりであってもよい。たとえば、コア基板の主面に平行な面のうち、同一の面に形成された複数の導体を指して「導体層」という場合がある。
【0015】
<第1の実施形態>
図1を参照して第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板を示す断面図である。
なお、本開示における多層配線基板には、はんだバンプを介したフリップチップ接続を適用して、半導体素子を実装することが可能である。
【0016】
図1において、多層配線基板100は、コア基板1と複数の絶縁樹脂層11と、複数の導体層13とを備える。
(コア基板)
第1の実施形態において、コア基板1は、コア樹脂1’、表裏面を電気的に接続するためのスルーホール3、スルーホール内に充填された穴埋め樹脂4、導体層23、導体層(パッド部)43などを含んでいる。コア樹脂1’は、例えば、繊維強化複合材料で形成されている。繊維強化複合材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の織布や不織布にエポキシ系樹脂等の熱硬化性絶縁樹脂を含浸させた材料である。コア樹脂1’を繊維強化複合材料とすることによって、エポキシ系樹脂等の熱硬化性絶縁樹脂を単体で用いた場合よりも、強度、寸法安定性等を向上させることが可能である。
また、含侵させるエポキシ系樹脂等の熱硬化性絶縁樹脂には、有機または無機材料からなるフィラーが含まれていてもよい。本第1の実施形態においては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂を含浸させた、ガラスエポキシ材料を用いている。なお、各図において、ガラスクロス,フィラー等の図示は省略されている。
【0017】
第1の実施形態において、コア樹脂1’の厚さは、0.4mm~2.0mmであることが望ましい。コア樹脂1’の厚さが0.4mm未満の場合、剛性が小さく、反りが生じやすくなる。一方、コア樹脂1’の厚さが2mmより大きくなると、スルーホール3が形成しにくくなったり、スルーホール3が長くなることによって電気特性が悪化したりするおそれがある。
【0018】
(絶縁樹脂層)
絶縁樹脂層11は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂またはそれらを混合した樹脂から構成することができる。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、またはこれらの2つ以上の組み合わせからなり、無機フィラーまたは有機フィラーを含有しても良い。無機フィラーには、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は酸化亜鉛等が加えられた材料を用いることができる。フィラーを含有させることにより、絶縁樹脂層11の線膨張係数を低下させることが可能となる。無機フィラーは有機フィラーに比べて線膨張係数を低下させる効果が大きいためより好ましい。
【0019】
第1の実施形態においては、コア樹脂1’の線膨張係数をYppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数をXppm/℃としたとき、X及びYが以下の式(1)および式(2)に示す条件を満たすように選択している。
10≦X≦25 ・・・・・・・・・(1)
Y≦―0.23X+11 ・・・・・(2)
コア樹脂1’の線膨張係数Yおよび絶縁樹脂層11の線膨張係数Xが式(1)に示す条件を満たす材料を選択して用いることにより、温度サイクル試験における反り量を小さくすることが可能となる。具体的には、温度サイクル試験の最低温度における反り量の絶対値を多層配線基板100に実装する半導体素子サイズの0.5%未満とすることが可能となる。
なお、式(1)の導出方法については、後述する。
【0020】
温度サイクル試験の最低温度における反り量の絶対値が半導体素子サイズの0.5%以上となると、多層配線基板100のはんだバンプ20にかかる負荷が大きくなり、クラック等の破断が起こるおそれがある。多層配線基板100に半導体素子を実装した後の温度変化によって、半導体素子34とアンダーフィル樹脂35、アンダーフィル樹脂35と多層配線基板100の界面における剥離、アンダーフィル樹脂35のクラック等が発生するおそれがある。
【0021】
なお、線膨張係数(CTE:coefficient of thermal expansion)とは、所定の温度範囲における温度の上昇に対応して長さの変化する割合を表す値である。線膨張係数は、熱機械分析装置を用いた測定によって得られる。第1の実施形態において、絶縁樹脂層11の線膨張係数は、熱機械分析装置を用いた測定によって得られる。本実施形態では、30℃~120℃の温度範囲から取得した。また、コア樹脂1’の線膨張係数は、30℃~240℃の温度範囲から取得した。
【0022】
絶縁樹脂層11の線膨張係数が10ppm/℃未満、25ppm/℃より大きいと、導体層13に使用する銅の線膨張係数17ppm/℃との差によって生じる応力が原因となる剥離、クラックが発生するおそれがある。このため、第1の実施形態においては、絶縁樹脂層11の線膨張係数は、10~25ppm/℃となる材料を選択し、これに応じて、コア樹脂1’の線膨張係数が上記式(1)の条件を満たすように選択して、多層配線基板を設計している。
【0023】
絶縁樹脂層11の引張弾性率(ヤング率)は、特に限定されない。なお、引張弾性率とは、材料の弾性としての特性を反映しており、材料の変形しにくさを表す値である。引張弾性率は、引張試験機を用いた測定によって得られる。加熱しながら測定することによって、所望の温度の貯蔵弾性率を測定することができる。
【0024】
なお、多層配線基板100を構成する他の要素については、第2の実施形態及び実施例の説明に後述する。
【0025】
<第2の実施形態>
次に、
図2および
図3を参照して、第2の実施形態である半導体装置について説明する。
図2は、第2の実施形態における半導体装置200の断面図である。また、
図3は、第2の実施形態における半導体装置200の平面図である。
第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した多層配線基板の一方の面に、半導体素子34を実装している点で、第1の実施形態と相違している。
【0026】
図2において、半導体素子34は、多層配線基板100のはんだバンプ20によって接合され、半導体素子34と多層配線基板100の間には、アンダーフィル樹脂35が充填されている。
また、
図3において、点線Aで示される領域は半導体素子34が実装されている領域をしめ示している。
なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0027】
(半導体素子)
半導体素子34(シリコンチップ)には、IC、LSI等を用いることができる。はんだバンプ20には、Sn、Sn-Pb、Sn-Ag、Sn-Cu、Sn-Ag-Cu、Sn-Bi等のはんだが用いられる。
【0028】
(アンダーフィル樹脂)
アンダーフィル樹脂35としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、及びマレイミド樹脂の1種又はこれらの樹脂の2種類以上が混合された樹脂に、フィラーとしてのシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は酸化亜鉛等が加えられた材料を用いることができる。
【0029】
(反りシミュレーション)
図1に示した半導体装置200と同様の構造を有する半導体装置について、反りのシミュレーションを実行した。
【0030】
<式(1)、(2)の導出>
(有限要素法)
本開示では、有限要素法による構造解析にて、反りシミュレーションを実施した。有限要素法(finite element method、FEM)は、構造を有限個の要素に仮想的に分割して数値解析する方法であり、数値解析とは、微分方程式を近似的に解くことである。また、構造解析とは、形状・材料・境界条件(荷重・拘束)などを入力し、数値解析を用いて変位、応力、ひずみを得る方法である。
静的構造問題では、荷重と変位、変位とひずみ、応力とひずみの方程式を組み立てて解き、基礎式は、F=kx(F:荷重、k:剛性、x:変位)で表される。有限要素法による構造解析は、計算機と専用ソフトを用いて実施することが一般的である。本発明では、構造解析ソフトANSYS Mechanicalを使用した。
【0031】
図4に示すような棒の片方が固定された構造において、温度変化によって実線から点線の構造に形状が変化したとき、長さの変化Δlは、線膨張係数αと長さl温度差ΔTの積(Δl=αlΔT)で示される。また、
図5に示すような棒の両端が固定された構造において温度変化が生じたとき、棒の両端が固定されているので形状は変化しないが、熱応力が発生する。熱応力σtは、線膨張係数αと引張弾性率Eと温度差ΔTの積で表される(σt=αΔTE)。つまり、温度変化による変形、応力においては、線膨張係数αが関与する。
今回、本発明者らは、多層配線基板において、反りを発生させる主たる要因として、引張弾性率を捨象し、線膨張係数のみに注目し、線膨張率の制御によって反りが制御できるとの仮説を立てた。具体的には、例えば、厚さ2mmの多層配線基板100においては、コア樹脂1’の厚さは1.2mm、絶縁樹脂層11の合計の厚さは0.46mmであることを前提として、厚みが大きい材料であるコア樹脂1’および絶縁樹脂層11の線膨張係数に着目した。
【0032】
(シミュレーションモデル)
図3に示すように、Aの領域に半導体素子を実装した場合の半導体装置についてモデル化を行った(以下、「半導体装置モデルM」と称する。)。
半導体装置モデルMとしては、平面形状は、20mm×20mmの矩形状とし、半導体素子の厚さを0.55mm、コア樹脂1’の厚さを1.2mm、導体層13の合計の厚さを15μm、絶縁樹脂層11の合計の厚さを30μm、ソルダーレジスト層17の表裏合計の厚さを15μmとした。そして、このような半導体装置モデルMにおいて、半導体素子側の導体層と絶縁樹脂層において、配線部とビア部の占める体積割合を31%とし、多層配線基板100のもう一方の側の導体層と絶縁樹脂層において、配線部とビア部の占める体積割合を29%とした。そして、半導体装置モデルMにおいて温度サイクル試験(-55℃~125℃)をおこなった場合の、-55℃における反りを構造解析ソフトANSYS Mechanicalを用いてシミュレーションした。
なお、反りシミュレーションでは、反りの発生する方向として、プラス方向とは、
図6(a)に示されるように半導体装置モデルMの中央部が下がり、端部が上がることを意味することし、マイナス方向とは、
図6(b)に示されるように半導体装置モデルMの中央部が上がり、端部が下がることを意味する。
【0033】
表1に反りシミュレーション結果を示す。
【表1】
表1は、絶縁樹脂層11の線膨張係数およびコア樹脂1’の線膨張係数を変化させたときの反りを示している。表1に示した反り値は,全て負の値であり,マイナス方向に反りが生じている。
ここで,絶縁樹脂層11の線膨張係数をXppm/℃,コア樹脂1’の線膨張係数をYppm/℃としたとき,反り量の絶対値は半導体素子サイズの0.5%未満となる条件を解析した結果、以下の式(1)及び式(2)の条件を得ることができた。
10≦X≦25 ・・・・・・・・・(1)
Y≦―0.23X+11 ・・・・・(2)
【0034】
(検証)
上記式(1)、式(2)によって定められた条件設定の妥当性を検証するため、絶縁樹脂層11の線膨張係数X,コア層の線膨張係数Yに様々な値を設定してシミュレーションを行い、以下の実施例1~9及び比較例1,2の結果を得た。
【0035】
実施例1においては、コア樹脂1’の線膨張係数を6.5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を10ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を10GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に89μmの反りが生じた。
【0036】
実施例2においては、コア樹脂1’の線膨張係数を5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を10ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を10GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に82μmの反りが生じる。
【0037】
実施例3においては、コア樹脂1’の線膨張係数を5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を20ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を10GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に93μmの反りが生じる。
【0038】
実施例4においては、コア樹脂1’の線膨張係数を0.5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を10ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を10GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に61μmの反りが生じる。
【0039】
実施例5においては、コア樹脂1’の線膨張係数を0.5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を25ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を10GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に77μmの反りが生じる。
【0040】
実施例6においては、コア樹脂1’の線膨張係数を5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を10ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を4GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に79μmの反りが生じる。
【0041】
実施例7においては、コア樹脂1’の線膨張係数を5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を10ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を16GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に85μmの反りが生じる。
【0042】
実施例8においては、コア樹脂1’の線膨張係数を0.5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を25ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を4GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に69μmの反りが生じる。
【0043】
実施例9においては、コア樹脂1’の線膨張係数を0.5ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を25ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を16GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に83μmの反りが生じる。
【0044】
比較例1においては、コア樹脂1’の線膨張係数を8ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を30ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を10GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に117μmの反りが生じる。
【0045】
比較例2においては、コア樹脂1’の線膨張係数を11ppm/℃、絶縁樹脂層11の線膨張係数を15ppm/℃、絶縁樹脂層11のヤング率を10GPaとした。このとき、半導体装置モデルMには、マイナス方向に116μmの反りが生じる。
【0046】
シミュレーション結果を表2示す。
【表2】
コア樹脂1’の線膨張係数Yが、計算値Y’(=―0.23X+11)より小さい実施例1~9において、反りは半導体素子サイズの0.5%未満となった。一方、コア樹脂1’の線膨張係数Yが、計算値Y’より大きい比較例1、2では、反りは半導体素子サイズの0.5%より大きくなった。さらにまた、実施例1~9では、絶縁樹脂層11の引張弾性率(ヤング率)を変化させているが、10≦X≦25、Y≦―0.23X+11を満たす場合においては、引張弾性率(ヤング率)とは無関係に、反りは半導体素子サイズの0.5%未満となることが検証できた。
【0047】
このように本開示のシミュレーションを用いることにより、引張弾性率(ヤング率)とは無関係に、絶縁樹脂層の線膨張係数およびコア樹脂の線膨張係数を制御することによって、温度サイクル試験における反りを抑えることが可能となり、信頼性の高い半導体装置を提供することができることが判明した。
【0048】
<多層配線基板の設計方法及び製造方法>
第1の実施形態に係る多層配線基板100の設計方法および製造方法を
図7を参照して説明する。
図7は、本発明のコア基板の製造方法の一例を示す説明図である。
【0049】
(コア基板の製造工程)
まず、多層配線基板の製造に用いる絶縁樹脂層11の線膨張係数Xppm/℃およびコア樹脂1’の線膨張係数Yppm/℃を以下の式(1)、式(2)の条件に合致するように材料を選択しておく。
10≦X≦25 ・・・・・・・・・(1)
Y≦―0.23X+11 ・・・・・(2)
次に、両面に銅箔2が貼付されたコア樹脂1’に、ドリル等で表裏面を電気的に接続するためのスルーホール3を形成する(
図7(a))。
【0050】
次に、銅箔2の表面およびスルーホール3の壁面に、無電解めっきおよび電解めっきにより導体層23を形成する(
図7(b)。導体層23の無電解めっきにおいては、シード層13aと同様の材料を用いることができる。また、導体層23の電解めっきにおいては、めっき層13bと同様の材料を用いることができる。
【0051】
次に、スルーホール3内を穴埋め樹脂4で埋める。スルーホール3からはみ出した不要な穴埋め樹脂4はバフ研磨等により除去する(
図7(c))。なお、
図7(b)に示す工程で、スルーホール3を完全にめっきで埋める場合、本工程は省略される。
【0052】
次に、全面に無電解めっきと電解めっきにより導体層33を形成する(
図7(d))。なお、
図7(b)に示す工程で、スルーホール3を完全にめっきで埋める場合や、穴埋め樹脂上に導体層33が不要な場合は、本工程は省略してもよい。
【0053】
次に、レジストを塗布またはラミネートし、導体層23、33のうち、導体として残す部分にフォトリソグラフィーにてレジストパターン6形成する(
図7(e)。
【0054】
次に、レジストパターン6が形成されていない導体層23、33の部分をエッチングにて除去し、複数の導体を形成する(
図7(f))。
【0055】
次に、レジストパターン6を除去することで、パッド部43を備えるコア基板1が形成される(
図7(g))。パッド部43は、コア基板1に積層される配線基板と電気的に接続される。
以上、コア基板1の作製方法を説明したが、これは一例であり他の方法で作製してもよい。
【0056】
(多層配線基板の製造工程)
次に、作製したコア基板1に絶縁樹脂と導体を複数積層し、多層配線基板100を作製する工程を説明する。なお、絶縁樹脂と導体は、コア基板1の両面に積層される。
【0057】
図8および
図9は、本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板および製造方法を示す説明図である。なお、以降の製造方法の説明図では、コア基板1のコア樹脂1’の記載を省略している。
【0058】
まず、コア基板1上に絶縁樹脂層11を形成する。ここで採用する絶縁樹脂層11は、熱硬化性樹脂であっても感光性樹脂であってもよいが。上述した式(2)の線膨張率の条件を満たした材料を選択する。この絶縁樹脂層11に対して、下層の電気的接続用のパッド部43が露出するように、熱硬化性樹脂の場合はUVやCO
2などのレーザー、感光性樹脂の場合はフォトリソグラフィーにてビア開口8を形成する(
図8(a))。
【0059】
次に、絶縁樹脂層11の外面、ビア開口8の壁面、およびビア開口8の底面に当たるパッド部43に無電解めっきやスパッタにてシード層13aを形成する(
図8(b))。
【0060】
(シード層)
シード層13aは、絶縁樹脂層11上に積層される。シード層13aを構成する材料は特に制限されないが、無電解めっき法で形成する場合、例えば、Cu、Pd、Al、Sn、NiおよびCrなどの金属材料を用いることができる。スパッタリング法で形成する場合、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum-doped Zinc Oxide)、ZnO、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、TiN、Cu3N4、Cu合金、またはこれらの2種以上を組み合わせた材料を用いることができる。
【0061】
次に、シード層13a上にレジストを塗布またはラミネートし露光現像することで、めっき層13bのパターンに対応するレジストパターン16を形成する(
図8(c))。
【0062】
次に、レジストパターン16が形成されたシード層13aに、電解めっきによりめっき層13bを形成する(
図8(d))。
めっき層13bは、シード層13aの絶縁樹脂層11と反対側の面に積層される。めっき層13bを構成する材料は、主に金属であり、種類は特に制限されないが、例えば、CuおよびCu合金、AgおよびAg合金、Sn、Pd、Au、Ni、Cr、Pt、Feまたはこれらの2種以上を組み合わせた材料を用いることができる。
次に、レジストパターン16を除去する(
図5(e))。
【0063】
次に、レジストパターン16が除去されたことによって露出したシード層13a(めっき層13bに覆われていないシード層13a)を、エッチングにより除去する(
図5(f))。
これによって、導体層13が形成される。つまり導体層13は、下層の絶縁樹脂層11側から順に、シード層13aおよびめっき層13bを有する。
なお、導体層13には、配線、ビア、パッド、シールド、グランド、ダミーなどの様々なパターンが含まれ得るが、
図8および
図9においては配線、ビア、パッド部を示す。隣接する導体13’は絶縁樹脂層11の面方向に離間して形成されている。
【0064】
次に、導体層13と、下層の絶縁樹脂層11とを覆うように絶縁樹脂層11を積層する。なお、所望の層数の回路が形成された場合には、この工程は省略される。
【0065】
以上の工程を、所望の層数の回路が形成できるまで繰り返し行う(
図9(g))。
【0066】
所望の層数の回路を形成後、最外層にソルダーレジスト層17を、塗布またはラミネートで形成する(
図9(h))。
【0067】
フォトリソグラフィーなどによりパッド部53上にソルダーレジスト開口18を形成する(
図9(i))。ソルダーレジスト層17は、例えば、感光性のエポキシ系樹脂であり、無機フィラーを含有していても良い。非感光の熱硬化性樹脂を使用する場合は、UVレーザーやCO
2レーザー、フォトリソグラフィーなどによりソルダーレジスト開口18を形成する。
【0068】
次に、ソルダーレジスト開口18内のパッド53上に、表面処理層19を形成する(
図9(j))。
【0069】
次に、半導体素子34実装側のソルダーレジスト開口18内に、はんだバンプ20を形成することで多層配線基板100を形成することができる(
図6(k))。はんだバンプ20は、はんだペーストを用いる場合はスクリーン印刷で形成でき、はんだボールを用いる場合は、フラックスをスクリーン印刷後にボール振込にてはんだボールを搭載し、それぞれリフローにて溶融させて形成できる。
【0070】
(半導体素子の実装)
次に、多層配線基板100に半導体素子34(シリコンチップ)を実装し、
図2に示す半導体装置200を得る。半導体装置200において、半導体素子34の電極端子は、はんだバンプ20等の導電性材料を介して多層配線基板100上の対応するパッド部53に電気的に接続されている(フリップチップ実装)。さらに、実装した半導体素子34と多層配線基板100との間の空隙には、熱硬化性のエポキシ系樹脂等のアンダーフィル樹脂35が充填されており、加熱硬化によって半導体素子34と多層配線基板100との機械的な接合が確保されている。
【0071】
一方、半導体素子34実装面側と反対側のソルダーレジスト層17から露出するパッド部53には、外部接続端子として用いられるはんだバンプ20が半導体素子34実装後に形成される。このはんだバンプ20を介して多層配線基板100はマザーボード等に実装される。
【0072】
上述の実施形態は一例であって、その他、具体的な細部構造などについては適宜に変更可能であることは勿論である。
なお、本開示においては、以下の態様も含まれている。
【0073】
(態様1)
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、コア基板と、前記コア基板の両面に有機絶縁材料を使用した絶縁樹脂層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
前記多層配線基板を構成するコア基板のコア樹脂の線膨張係数をYppm/℃、前記絶縁樹脂層の線膨張係数をXppm/℃としたとき、以下の式(1)及び式(2)の条件を満たす多層配線基板。
10≦X≦25 ・・・・・・(1)
Y≦―0.23X+11 ・・・(2)
【0074】
(態様2)
態様1に記載の多層配線基板において、
前記コア樹脂の厚さは、0.4mmから2.0mmであることを特徴とする多層配線基板。
【0075】
(態様3)
態様1または2に記載の多層配線基板において、
前記多層配線基板は、平面形状が20mm×20mmの矩形状であり、コア樹脂の厚さが1.2mmであり、導体層の合計の厚さが15μmであり、絶縁樹脂層の合計の厚さが30μmであり、ソルダーレジスト層17の表裏合計の厚さが15μmであり、半導体素子が実装される側の導体層と絶縁樹脂層において、配線部とビア部の占める体積割合を31%とし、半導体素子が実装されない側の導体層と絶縁樹脂層において、配線部とビア部の占める体積割合を29%であることを特徴とする多層配線基板。
【0076】
(態様4)
態様1~3のいずれか一つに記載の多層配線基板において、
前記絶縁樹脂には、無機材料からなるフィラーが含まれており、
前記コア樹脂は、ガラス繊維を用いて強化されている繊維強化複合材料からなることを特徴とする多層配線基板。
【0077】
(態様5)
態様1から4のいずれか一つに記載の多層配線基板に半導体素子を実装した半導体装置。
【0078】
(態様6)
コア基板と、前記コア基板の両面に絶縁樹脂層を形成した多層配線基板の設計方法において、
前記多層配線基板を構成する前記コア基板のコア樹脂の線膨張係数をYppm/℃、前記絶縁樹脂層の線膨張係数をXppm/℃としたとき、以下の式(1)及び式(2)の条件を満たすように前記コア樹脂および前記絶縁樹脂層を選択する多層配線基板の設計方法。
10≦X≦25 ・・・・・・(1)
Y≦―0.23X+11 ・・・(2)
【符号の説明】
【0079】
1 コア基板
1’ コア樹脂
2 銅箔
3 スルーホール
4 穴埋め樹脂
6、16 レジストパターン
8 ビア開口
11 絶縁樹脂層
13、23、33 導体層
13a シード層
13b めっき層
16 レジストパターン
17 ソルダーレジスト層
18 ソルダーレジスト開口
19 表面処理層
20 はんだバンプ
34 半導体素子
35 アンダーフィル樹脂
43、53 パッド部
100 多層配線基板
200 半導体装置
A 反りシミュレーションモデル領域