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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176574
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】多層配線基板およびその設計方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095246
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 明宏
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC14
5E316CC32
5E316CC34
5E316CC35
5E316CC36
5E316CC37
5E316CC38
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD33
5E316DD47
5E316EE33
5E316FF07
5E316FF09
5E316FF10
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG23
5E316GG28
5E316HH11
5E316JJ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】導体や絶縁樹脂の面積や厚さ(体積)を変更することなく反りを低減することが可能な多層配線基板及びその設計方法を提供する。
【解決手段】多層配線基板100は、第1面と第1面に対向する第2面とを有するコア基板1と、コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層11と第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層13とを含む第1のビルドアップ層51と、コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層12と第2の絶縁樹脂層12上に形成された第2の導体層14とを含む第2のビルドアップ層52と、を備える、1の導体層の体積の総和V1>第2の導体層の体積の総和V2、第1の絶縁樹脂層の弾性率E1≒第2の絶縁樹脂層の弾性率E2の場合、第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12の熱膨張係数の関係は、式(1)で求められる値の±20%の範囲に含まれる。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上に形成された第2の導体層とを含む第2のビルドアップ層と、を備え、
>V、E≒Eの場合、前記第2の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数の関係が以下の式(1)で求められる値の±20%の範囲に含まれることを特徴とする多層配線基板。
【数1】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【請求項2】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上の第2の導体層とが交互に積層されてなる第2のビルドアップ層と、を備え、
<V、E≒Eの場合、前記第1の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数の関係が以下の式(2)で求められる値の±20%の範囲となることを特徴とする多層配線基板。
【数2】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【請求項3】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上に形成された第2の導体層とを含む第2のビルドアップ層と、を備え、
>V、α≒α>αの場合、前記第2の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層の弾性率の関係が以下の式(3)で求められる値の±20%の範囲となることを特徴とする多層配線基板。
【数3】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第1の導体層および第2の導体層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【請求項4】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上に形成された第2の導体層とを含む第2のビルドアップ層と、を備え、
<V、α≒α>αの場合、前記第1の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層の弾性率の関係が以下の式(4)で求められる値の±20%の範囲となることを特徴とする多層配線基板。
【数4】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第1の導体層および第2の導体層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【請求項5】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板の設計方法であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上に形成された第2の導体層とを含む第2のビルドアップ層と、を備え、
>V、E≒Eの場合、前記第2の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数の関係が以下の式(1)で求められる値の±20%の範囲に含まれることを特徴とする多層配線基板の設計方法。
【数5】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【請求項6】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板の設計方法であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上の第2の導体層とが交互に積層されてなる第2のビルドアップ層と、を備え、
<V、E≒Eの場合、前記第1の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数の関係が以下の式(2)で求められる値の±20%の範囲となることを特徴とする多層配線基板の設計方法。
【数6】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【請求項7】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板の設計方法であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上に形成された第2の導体層とを含む第2のビルドアップ層と、を備え、
>V、α≒α>αの場合、前記第2の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層の弾性率の関係が以下の式(3)で求められる値の±20%の範囲となることを特徴とする多層配線基板の設計方法。
【数7】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第1の導体層および第2の導体層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【請求項8】
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板の設計方法であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上に形成された第2の導体層とを含む第2のビルドアップ層と、を備え、
<V、α≒α>αの場合、前記第1の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層の弾性率の関係が以下の式(4)で求められる値の±20%の範囲となることを特徴とする多層配線基板の設計方法。
【数8】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第1の導体層および第2の導体層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子(チップ)等の電子部品を実装するのに用いられる多層配線基板およびその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスに関し、高機能化等の要求に伴う高集積化や、実装されるチップ数の増加による大型化が進んでいる。そして、これらに使用される多層配線基板において、チップ実装信頼性の向上のために低反り化が求められている。
【0003】
特許文献1には、コア基板15と、コア基板15の上下面に同数ずつ積層された絶縁層16a~16dと、コア基板15の上下面および絶縁層16a~16dの表面にそれぞれ異なる占有面積率で被着された導体層13と、を具備してなる配線基板Aが開示されている。配線基板Aにおいて、コア基板15の上下面の導体層13同士、およびコア基板15を中心にして上面側および下面側のそれぞれ同順位に位置する導体層13同士において、占有面積率の大きい方の導体厚みが、占有面積率の小さい方の導体厚みよりも薄くなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-139632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層配線基板の反りを低減するためには、コア基板の第1面上に設けられた第1のビルドアップ層と第1面に対向する第2面上に設けられた第2のビルドアップ層において、導体の体積の総和および樹脂の体積の総和を共通にすることが理想的である。しかし、第1のビルドアップ層と第2のビルドアップ層の間で配線パターンが異なるため、残銅率(銅の面積)を一致させることが難しく、また、配線の接続信頼性やビア構造の加工性の観点から、第1のビルドアップ層と第2のビルドアップ層の間で導体や樹脂の厚みを一致させることも現実的に難しい。
【0006】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、導体や絶縁樹脂の面積や厚さ(体積)を変更することなく反りを低減することが可能な多層配線基板およびその設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の多層配線基板の一つは、
はんだバンプを介したフリップチップ接続で半導体素子を実装可能な多層配線基板であって、
前記多層配線基板は、有機絶縁材料を使用した絶縁層と、導体材料を使用した配線層とが、交互に積層された多層構造を有しており、
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有するコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられ、第1の絶縁樹脂層と前記第1の絶縁樹脂層上に形成された第1の導体層とを含む第1のビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられ、第2の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層上に形成された第2の導体層とを含む第2のビルドアップ層と、を備え、
>V、E≒Eの場合、前記第1の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数の関係が以下の式で求められる値の±20%の範囲に含まれることを特徴とする多層配線基板。
【数1】
但し、S:多層配線基板の面積(単位:μm
:第1の導体層の体積の総和(単位:μm
:第2の導体層の体積の総和(単位:μm
α:第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
α:第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数(単位:ppm/℃)
:第1の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
:第2の絶縁樹脂層の弾性率(単位:GPa)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導体や絶縁樹脂の面積や厚さ(体積)を変更することなく反りを低減することが可能な多層配線基板およびその設計方法を提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る多層配線基板を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る多層配線基板の実装状態の一例を示す図である。
図3図3は、表1をグラフにして示す図である。
図4図4は、表2をグラフにして示す図である。
図5図5は、表3をグラフにして示す図である。
図6図6は、実施例1のシミュレーション結果を回帰分析する図である。
図7図7は、表4をグラフにして示す図である。
図8図8は、表5をグラフにして示す図である。
図9図9は、表6をグラフにして示す図である。
図10図10は、第1の実施形態においてコア基板の製造方法の一例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上実際の比率と異なる場合や、層数や構成の一部が図面から省略される場合がある。そのため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。なお、「上面」、「下面」については、「第1面」、「第2面」と称することもある。
【0012】
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。さらに、「上方」及びこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸プラス方向」、「Z軸マイナス方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
【0013】
また、「層」という場合、必ずしも物体が均一に形成された状態を指す必要はない。間隙を持つパターンを有する物体や、個片化された物体のまとまりであってもよい。たとえば、コア基板の主面に平行な面のうち、同一の面に形成された複数の導体を指して「導体層」という場合がある。
【0014】
<第1の実施形態>
図1を参照して第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る多層配線基板を示す図である。ここでは、多層配線基板の断面図が示されている。なお、本開示における多層配線基板には、はんだバンプを介したフリップチップ接続を適用して、半導体素子を実装することが可能である。
【0015】
(多層配線基板の構成)
多層配線基板100は、第1面と第1面に対向する第2面を有するコア基板1と、コア基板1の第1面上に設けられた第1のビルドアップ層51と、コア基板1の第2面上に設けられた第2のビルドアップ層52を備える。第1のビルドアップ層51は、第1の絶縁樹脂層11と第1の絶縁樹脂層11上に形成された第1の導体層13とを含む。第1の絶縁樹脂層11と第1の導体層13は、交互に積層されている。また、第2のビルドアップ層52は、第2の絶縁樹脂層12と第2の絶縁樹脂層12上に形成された第2の導体層14とを含む。第2の絶縁樹脂層12と第2の導体層14は、交互に積層されている。
なお、図1においては、第1のビルドアップ層51の層数は2層であり、第2のビルドアップ層52の層数は2層である場合を示すが、層数はこれに限定されない。
また、第1のビルドアップ層51および第2のビルドアップ層52には、ソルダーレジスト層17が形成される。第1のパッド部53と第2のパッド部54は、コア基板1を貫通する電極を通じて、導通している。
【0016】
(絶縁樹脂層の組成)
第1の絶縁樹脂層11および第2の絶縁樹脂層12は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂またはそれらを混合したから構成することができる。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、またはこれらの2つ以上の組み合わせからなり、これらの樹脂には、無機フィラーまたは有機フィラーを含有してもよい。
【0017】
第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12は、次の関係を満たす熱膨張係数を持つ樹脂が材料に選択される。すなわち、完成予定の多層配線基板100をZ軸方向から見た場合の多層配線基板100の面積(すなわち、第1面または第2面の面積)をS(単位:μm)とし、第1のビルドアップ層51に含まれる第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52に含まれる第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)の関係がV>V、第1の絶縁樹脂の弾性率E(単位:GPa)と第2の樹脂の弾性率E(単位:GPa)の関係がE≒Eのとき、第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)と第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)の差が下記式(1)で求められる値の±20%の範囲に含まれる樹脂を用いる。
つまり、第1の絶縁樹脂層に熱膨張係数αの樹脂を用いた場合、式(1a)より熱膨張係数αを算出し、第2の絶縁樹脂層に熱膨張係数αの樹脂が用いられる。
【0018】
【数1】
【0019】
【数2】
【0020】
式(1)の導出については、後述する。また、第1の絶縁樹脂層11、第2の絶縁樹脂層12は、第1の導体層13、第2の導体層14は、式(1)の条件を満たすように選択して、多層配線基板を設計している。
【0021】
なお、弾性率とは、材料の弾性体としての特性を反映しており、材料の変形しにくさを表す値である。弾性率は、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いた測定によって得られる。材料を加熱しながら測定することによって、所望の温度の弾性率を測定することができる。
【0022】
また、熱膨張係数(CTE:coefficient of thermal expansion)とは、所定の温度範囲における温度の上昇に対応して長さの変化する割合を表す値である。熱膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)を用いた測定によって得られる。本実施形態における熱膨張係数は、ガラス転移点以下の値を用いる。
【0023】
(導体層の組成)
第1の導体層13は、後述するように、コア基板1に近いほうから順に形成されたシード層13aおよびめっき層13bを有する。導体層13には、配線、ビア、パッド、シールド、グランド、ダミーなどの様々なパターンが含まれ得るが、図1においては配線、ビア、パッド部を示す。
図示していないが第2の導体層14も第1の導体層と同様である。
【0024】
[シード層]
シード層13aは、第1の絶縁樹脂層11上に積層される層である。シード層13aを構成する材料は特に制限されないが、無電解めっき法で形成する場合、例えば、Cu、Pd、Al、Sn、NiおよびCrなどの金属材料を用いることができる。スパッタリング法で形成する場合、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum-doped Zinc Oxide)、ZnO、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、TiN、Cu、Cu合金のうちの少なくとも1つを含む材料を用いることができる。
【0025】
[めっき層]
めっき層13bは、シード層13aの上面(第1の絶縁樹脂層11と反対側の面)に積層されるそうである。めっき層13bを構成する材料は、主に金属であり、種類は特に制限されないが、例えば、CuおよびCu合金、AgおよびAg合金、Sn、Pd、Au、Ni、Cr、Pt、Feのうち少なくとも1つをふくむ材料を用いることができる。
【0026】
図2は、第1の実施形態に係る多層配線基板の実装状態の一例を示す図である。ここでは、多層配線基板100に半導体素子34(シリコンチップ)が実装された半導体装置となった状態が断面図によって示されている。この半導体装置において、半導体素子34の電極端子は、はんだバンプ20等の導電性材料を介して多層配線基板100上の対応する第1のパッド部53に電気的に接続されている、いわゆるフリップチップ実装がされている。さらに、実装した半導体素子34と多層配線基板100との間の空隙には、熱硬化性のエポキシ系樹脂等のアンダーフィル樹脂35が充填されており、加熱硬化によって半導体素子34と多層配線基板100との機械的な接合が確保されている。
【0027】
一方、半導体素子34実装面側と反対側のソルダーレジスト層17から露出する第1のパッド部53には、外部接続端子として用いられるはんだバンプ20が半導体素子34実装後に形成される。このはんだバンプ20を介して多層配線基板100はマザーボード等に実装される。
【0028】
<第2の実施形態>
第2の実施形態については、第1の実施形態との相違点である絶縁樹脂層を説明する。そのほかの構成については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0029】
(絶縁樹脂層)
第1の絶縁樹脂層11および第2の絶縁樹脂層12は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂から構成される。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、のうちの少なくとも1つを含む樹脂を用いることが可能である。また、熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、のうちの少なくとも1つを含む樹脂を用いることが可能である。これらの樹脂には、無機フィラーまたは有機フィラーを含有させてもよい。また、第1の絶縁樹脂層11および第2の絶縁樹脂層12は、感光性樹脂を用いて形成されてもよい。
【0030】
第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12は、次の関係を満たす熱膨張係数を持つ樹脂が材料に選択される。すなわち、完成予定の多層配線基板100をZ軸方向から見た場合の多層配線基板100の面積(すなわち、第1面または第2面の面積)をS(単位:μm)とし、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)の関係がV<V、第1の絶縁樹脂層の弾性率E(単位:GPa)と第2の絶縁樹脂層の弾性率E(単位:GPa)の関係がE≒Eのとき、第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)と第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)の差が下記式(2)で求められる値の±20%の範囲に含まれる樹脂を用いる。
つまり、第2の絶縁樹脂層に熱膨張係数αの樹脂を用いた場合、式(2a)より熱膨張係数αを算出し、第1の絶縁樹脂層に熱膨張係数αの樹脂が用いられる。
【0031】
【数3】
【0032】
【数4】
【0033】
なお、式(2)の導出については、後述する。また、第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12は、第1の導体層13、第2の導体層14は、式(2)の条件を満たすように選択して、多層配線基板を設計している。
【0034】
<第3の実施形態>
第3の実施形態については、第1の実施形態との相違点である絶縁樹脂層を説明する。そのほかの構成については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0035】
(絶縁樹脂層)
第1の絶縁樹脂層11および第2の絶縁樹脂層12は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂から構成される。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、のうちの少なくとも1つを含む樹脂を用いることが可能である。また、熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、のうちの少なくとも1つを含む樹脂を用いることが可能である。これらの樹脂には、無機フィラーまたは有機フィラーを含有させてもよい。また、第1の絶縁樹脂層11および第2の絶縁樹脂層12は、感光性樹脂を用いて構成してもよい。
【0036】
第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12は、次の関係を満たす熱膨張係数を持つ樹脂が材料に選択される。すなわち、完成予定の多層配線基板100をZ軸方向から見た場合の多層配線基板の面積(すなわち、第1面または第2面の面積)をS(単位:μm)とし、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)の関係がV>V、第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)と第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)と第1の導体層13および第2の導体層14の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)の関係がα≒α>αのとき、第2の絶縁樹脂層の弾性率E(単位:GPa)と第1の絶縁樹脂層の弾性率E(単位:GPa)の差が下記式(3)で求められる値の±20%の範囲に含まれる樹脂を用いる。
つまり、第1の絶縁樹脂層に弾性率Eの樹脂を用いた場合、式(3a)より熱膨張係数Eを算出し、第2の絶縁樹脂層に熱膨張係数Eの樹脂が用いられる。
【0037】
【数5】
【0038】
【数6】
【0039】
なお、式(3)の導出については、後述する。また、第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12は、第1の導体層13、第2の導体層14は、式(3)の条件を満たすように選択して、多層配線基板を設計している。
【0040】
<第4の実施形態>
第4の実施形態については、第1の実施形態との相違点である絶縁樹脂層を説明する。そのほかの構成については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0041】
(絶縁樹脂層)
第1の絶縁樹脂層11および第2の絶縁樹脂層12は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂から構成される例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、のうちの少なくとも1つを含む樹脂を用いることが可能である。また、熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、のうちの少なくとも1つを含む樹脂を用いることが可能である。これらの樹脂には、無機フィラーまたは有機フィラーを含有させてもよい。また、第1の絶縁樹脂層11および第2の絶縁樹脂層12は、感光性樹脂を用いて形成されてもよい。
【0042】
第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12は、次の関係を満たす熱膨張係数を持つ樹脂が材料に選択される。すなわち、完成予定の多層配線基板100をZ軸方向から見た場合の多層配線基板100の面積(すなわち、第1面または第2面の面積)をS(単位:μm)とし、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)の関係がV<V、第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)と第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)と第1の導体層13および第2の導体層14の熱膨張係数α(単位:ppm/℃)の関係がα≒α>αのとき、第1の絶縁樹脂層の弾性率E(単位:GPa)と第2の絶縁樹脂層の弾性率E(単位:GPa)の差が下記式(4)で求められる値の±20%の範囲となる樹脂を用いる。
つまり、第1の絶縁樹脂層に弾性率Eの樹脂を用いた場合、式(4a)より熱膨張係数Eを算出し、第2の絶縁樹脂層に熱膨張係数Eの樹脂が用いられる。
【0043】
【数7】
【0044】
【数8】
【0045】
なお、式(4)の導出については、後述する。また、第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12は、第1の導体層13、第2の導体層14は、式(4)の条件を満たすように選択して、多層配線基板を設計している。
【0046】
[実施例]
<式(1)から式(4)の導出>
次に、実施例1から実施例6を参照して、式(1)から(4)の導出を説明する。実施例1から実施例3は、第1の絶縁樹脂層11の弾性率と第2の絶縁樹脂層12の弾性率がほぼ等しい場合に、第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12の熱膨張係数の算出するためのシミュレーションである。実施例4から実施例6は、第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数と第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数がほぼ等しく、かつ第1の導体層13および第2の導体層14の熱膨張係数よりも大きい場合に、第1の絶縁樹脂層11と第2の絶縁樹脂層12の弾性率を算出するためのシミュレーションである。
図1に示した多層配線基板100について、板理論を用いて反りのシミュレーションを実行した。具体的には、多層配線基板100は、65mm×65mmの矩形状とし、コア基板1から表裏に絶縁樹脂層および導体層をそれぞれ7層積層し、最後にソルダーレジストを積層した構造とした。反りに影響の少ないはんだは除外した。また、コア樹脂1aの厚さを1200μm、絶縁樹脂層1層あたりの厚さを33μm、ソルダーレジストの厚さを15μmとした。導体層に関しては、銅を想定し、板理論を用いるために導体層1層あたりの厚さ15μmと残銅率から体積換算し、基板の面積をS(単位:μm)で割って残銅率100%としたときの厚さとした。そして、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)としたときの、(V-V)/Sの値を10μm(残銅差率換算で約8.3%)、20μm(残銅差率換算で約16.7%)、30μm(残銅差率換算で約25.0%)、となるときの、多層配線基板の応力フリーとなる温度180℃(絶縁樹脂層のキュア温度)から常温23度に下げたときの反り量が0μmとなる絶縁樹脂の熱膨張係数と弾性率をシミュレーションより計算した。この時用いた熱膨張係数はガラス転移温度以下のものである。なお、本開示の方法は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂のいずれの場合にも適用することが可能である。
【0047】
<実施例1>
実施例1においては、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)としたときの、(V-V)/Sの値が10μm(残銅差率換算で約8.3%)、第1の絶縁樹脂の熱膨張係数αを15、25、35ppm/℃、第1の絶縁樹脂層の弾性率Eおよび第2の絶縁樹脂層の弾性率Eを6、10、14GPaとしたときの、多層配線基板の反り量が0となる第1と第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数の関係(差α-α)をシミュレーションより算出した。その結果を表1に示す。また、図3は、表1をグラフにして示す図である。
【表1】
【0048】
<実施例2>
実施例2においては、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)としたときの、(V-V)/Sの値が20μm(残銅差率換算で約16.7%)、第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数αを15、25、35ppm/℃、第1の絶縁樹脂層の弾性率Eおよび第2の絶縁樹脂層の弾性率Eを6、10、14GPaとしたときの、多層配線基板の反り量が0となる第1と第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数の関係(差α-α)をシミュレーションより算出した。その結果を表2に示す。また、図4は、表2をグラフにして示す図である。
【表2】
【0049】
<実施例3>
実施例3においては、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)としたときの、(V-V)/Sの値が30μm(残銅差率換算で約25.0%)、第1の絶縁樹脂の熱膨張係数αを15、25、35ppm/℃、第1の絶縁樹脂の弾性率Eおよび第2の絶縁樹脂の弾性率Eを6、10、14GPaとしたときの、多層配線基板の反り量が0となる第1と第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数の関係(差α-α)をシミュレーションより算出した。その結果を表3に示す。また、図5は、表3をグラフにして示す図である。
【表3】
【0050】
これら実施例1~3のシミュレーション結果および図3~5より、反りが0となる熱膨張係数差の関係式を求めた。先ず、図3~5に示すように(α-α)とαの間の関係式は直線近似されると想定し、実施例1の結果の近似式を算出する。ここで、近似式の各熱膨張係数αの時の傾きと切片に関し、絶縁樹脂層の弾性率E≒Eと仮定し、E(またはE)を変数としたグラフにする。図6は、実施例1のシミュレーション結果を回帰分析する図である。図6に示されるように、傾きは線形に近似され、切片は2次関数に近似された。図6に示される近似関数におけるxに絶縁樹脂層の弾性率Eを代入して、実施例1の結果の近似式を算出した。最後に、切片を示す2次関数に(V-V)/Sの値をかけたときに実施例2または3のシミュレーション結果と整合するように補正値を計算した。これらの結果、第1の絶縁樹脂層の熱膨張係数αと第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数αの関係を式にすると、上述の式(1)にあらわすことができる。
【0051】
また、V<Vの場合は、反りの方向が逆転するため、第1の絶縁樹脂の熱膨張係数αと第2の絶縁樹脂の熱膨張係数αの関係を式にすると、上述の式(2)にあらわすことができる。
【0052】
<実施例4>
実施例4から実施例6を参照して、第1の絶縁樹脂層11の熱膨張係数α、第2の絶縁樹脂層12の熱膨張係数α、第1の導体層13の熱膨張係数と第2の導体層14の熱膨張係数が等しいとし(ここで、第1の導体層13と第2の導体層14の熱膨張係数をαとする)、かつ、α≒α>αの場合について説明する。
実施例4においては、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)としたときの、(V-V)/Sの値が10μm(残銅差率換算で約8.3%)、第1の絶縁樹脂の熱膨張係数αおよび第2の熱膨張係数を25、30、35ppm/℃、第1の絶縁樹脂の弾性率Eを6、10、14GPaとしたときの、多層配線基板の反り量が0となる第1と第2の絶縁樹脂層の弾性率の関係(差E-E)をシミュレーションより算出した。その結果を表4に示す。また、図7は、表4をグラフにして示す図である。
【表4】
【0053】
<実施例5>
実施例5においては、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)としたときの、(V-V)/Sの値が20μm(残銅差率換算で約16.7%)、第1の絶縁樹脂の熱膨張係数αおよび第2の熱膨張係数を25、30、35ppm/℃、第1の絶縁樹脂の弾性率Eを6、10、14GPaとしたときの、多層配線基板の反り量が0となる第1と第2の絶縁樹脂層の弾性率の関係(差E-E)をシミュレーションより算出した。その結果を表5に示す。また、図8は、表5をグラフにして示す図である。
【表5】
【0054】
<実施例6>
実施例6においては、第1のビルドアップ層51の第1の導体層13の体積の総和V(単位:μm)と、第2のビルドアップ層52の第2の導体層14の体積の総和V(単位:μm)としたときの、(V-V)/Sの値が20μm(残銅差率換算で約25.0%)、第1の絶縁樹脂の熱膨張係数αおよび第2の熱膨張係数を25、30、35ppm/℃、第1の絶縁樹脂の弾性率Eを6、10、14GPaとしたときの、多層配線基板の反り量が0となる第1と第2の絶縁樹脂層の弾性率の関係(差E-E)をシミュレーションより算出した。その結果を表6に示す。また、図9は、表6をグラフにして示す図である。
【表6】
【0055】
これら実施例4~6のシミュレーション結果および図7~9より、反りが0となる弾性率差の関係式を求めた。図7~9に示すように関係式は2次関数で近似されると想定し、実施例1の結果の近似式を算出し、式(1)の時と同様の手順でそれぞれの係数を算出した。これらの結果、第1の絶縁樹脂の弾性率Eと第2の絶縁樹脂の弾性率Eの関係を式にすると、上述の式(3)にあらわすことができる。
【0056】
また、V<Vの場合は、反りの方向が逆転するため、第1の絶縁樹脂の弾性率Eと第2の絶縁樹脂の弾性率Eの関係を式にすると、上述の式(4)にあらわすことができる。
【0057】
作成した式(1)~(4)はシミュレーション結果の近似より算出している。この式とシミュレーション結果を比較すると、式(3)において、第1の絶縁樹脂の熱膨張係数αおよび第2の熱膨張係数αを35ppm/℃、第1の絶縁樹脂の弾性率Eを14GPaとしたときには、E-Eは約0.381GPa、シミュレーションでは、E-Eは約0.325GPaとなり、式(3)の結果の方が約17%程度大きく最も大きな乖離となった。この結果より、本発明での値の範囲は計算式の±20%とする。
【0058】
<多層配線基板の設計方法及び製造方法>
(コア基板の作製)
第1の実施形態に係る多層配線基板100の製造方法およびその設計方法を説明する。まず、図10を参照して、コア基板1を作製する工程を説明する。図10は、第1の実施形態においてコア基板の製造方法の一例を示す図である。
【0059】
まず、コア樹脂1aに、ドリル等で表面から裏面まで貫通するスルーホール3を形成する(図10(a)を参照)。コア樹脂1aの両面には、銅箔2が貼付されている。
【0060】
次に、銅箔2の表面およびスルーホール3の壁面に、無電解めっきを行い、その後に電解めっきを行うことにより導体層23を形成する(図10(b)を参照)。無電解めっきにおいては、、例えば、Cu、Pd、Al、Sn、NiおよびCrなどの金属材料を用いることができる。スパッタリング法で形成する場合、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum-doped Zinc Oxide)、ZnO、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、TiN、Cu、Cu合金、を少なくとも1つ含む材料を用いることができる。また、電解めっきにおいては、主に金属であり、種類は特に制限されないが、例えば、CuおよびCu合金、AgおよびAg合金、Sn、Pd、Au、Ni、Cr、Pt、Feを少なくとも1つ含む材料を用いることができる。
【0061】
次に、スルーホール3内を穴埋め樹脂4で埋める。スルーホール3からはみ出した穴埋め樹脂4は、バフ研磨等により除去される(図10(c)を参照)。なお、図10(b)に示される工程においてスルーホール3にめっきを充填させる場合、図10(c)の工程は省略される。
【0062】
次に、コア樹脂1aの全面に無電解めっきと電解めっきにより導体層33を形成する(図10(d)を参照)。導体層33の形成には、導体層23の形成方法と同様の方法が適用される。なお、図10(b)に示される工程において、スルーホール3にめっきを充填させる場合、または穴埋め樹脂4上に導体層33を設ける必要がない場合、図10(d)の工程は省略される。
【0063】
次に、レジストを塗布またはラミネートし、導体層23および33のうち、導体として残す部分にフォトリソグラフィーにてレジストパターン6形成する(図10(e)を参照)。
【0064】
次に、レジストパターン6が形成されていない導体層23および33の部分をエッチングによって除去し、複数の導体を形成する(図10(f)を参照)。
【0065】
次に、レジストパターン6を除去し、パッド部43および44を備えるコア基板1が形成される(図10(g)を参照)。パッド部43および44は、コア基板1に積層されるビルドアップ層に含まれる導体と電気的に接続される。
【0066】
以上、コア基板1の作製方法を説明したが、これは一例であり、この作成方法に限定されるものではない。
【0067】
(多層配線基板の作製)
次に、作製したコア基板1に第1の絶縁樹脂層11と第1の導体層13を交互に複数積層し、多層配線基板100を作製する工程を説明する。なお、第2の絶縁樹脂層12と第2の導体層14も、コア基板1のもう一方の面に積層される。図11および図12は、第1の実施形態に係る多層配線基板の製造方法を示す図である。以降の製造方法の説明図では、第1のビルドアップ層側のみを記載し、コア基板1のコア樹脂1aおよび、第2のビルドアップ層の記載を省略しているが、第2のビルドアップ層は第1のビルドアップ層と並行して作製される。
【0068】
まず、コア基板1上に第1の絶縁樹脂層11を形成する。その後、下層の電気的接続用のパッド部43が露出するように、熱硬化性樹脂の場合はUVやCOなどのレーザー加工によって、感光性樹脂の場合はフォトリソグラフィーによって、ビア開口8を形成する(図11(a)を参照)。
【0069】
次に、第1の絶縁樹脂層11の上面、ビア開口8の壁面、およびビア開口8の底面に当たるパッド部43に無電解めっきやスパッタにてシード層13aを形成する(図11(b)を参照)。
【0070】
次に、シード層13a上にレジストを塗布またはラミネートし露光現像することによって、めっき層13bのパターンに対応するレジストパターン16を形成する(図11(c)を参照)。
【0071】
次に、レジストパターン16が形成されたシード層13aに、電解めっきによりめっき層13bを形成する(図11(d)を参照)。
次に、レジストパターン16を除去する(図11(e)を参照)。
【0072】
次に、レジストパターン16が除去されたことによって、露出したシード層13a(すなわち、めっき層13bに覆われていないシード層13a)がエッチングにより除去される(図11(f)を参照)。
【0073】
次に、第1の導体層13と、下層の第1の絶縁樹脂層11とを覆うように第1の絶縁樹脂層を積層する(図11(g)を参照)。
【0074】
以上の工程を、所望の層数の回路が形成できるまで繰り返し行う。図12(g)には、第1のビルドアップ層51に3層の第1の絶縁樹脂層11が含まれている。
【0075】
所望の層数の回路を形成後、最外層にソルダーレジスト層17を、塗布またはラミネートで形成する(図12(h)を参照)。
【0076】
フォトリソグラフィーなどにより第1のパッド部53上にソルダーレジスト開口18を形成する(図12(i)を参照)。ソルダーレジスト層17は、例えば、感光性のエポキシ系樹脂であり、無機フィラーを含有していても良い。非感光の熱硬化樹脂を使用する場合は、UVレーザーやCOレーザーを用いたレーザ加工、フォトリソグラフィーなどによりソルダーレジスト開口18を形成する。
【0077】
次に、ソルダーレジスト開口18内の第1のパッド部53上に、表面処理層19を形成する(図12(l)を参照)。
【0078】
次に、半導体素子34(シリコンチップ)実装側のソルダーレジスト開口18内に、はんだバンプ20を形成する。このような工程を経ることによって、多層配線基板100を形成することができる(図12(m)を参照)。はんだバンプ20は、はんだペーストを用いる場合はスクリーン印刷によって形成され、はんだボールを用いる場合はフラックスをスクリーン印刷後にボール振込にてはんだボールを搭載し、それぞれリフローにて溶融させて形成される。
【0079】
<作用・効果>
通常、多層配線基板の第2の導体層の体積の総和よりも第1の導体層の体積の総和が大きく、第1面側と第2面側で同じ厚さの絶縁樹脂フィルムを用いて絶縁樹脂層を形成した場合、第1の導体層の体積の総和と第2の導体層の体積の総和の差分に応じた導体の熱膨張係数および弾性率の影響により基板に反りが発生する。
これに対し、本開示において、第1の絶縁樹脂層と第2の絶縁樹脂層の熱膨張係数または弾性率に差を持たせることで、前記導体の熱膨張係数および弾性率の影響を打ち消して、多層配線基板の反りを抑制することが可能となる。
【0080】
また、本開示において、板理論を用いて前記第1の導体層の体積の総和と前記第2の導体層の体積の総和の差分と、前記第1の絶縁樹脂と前記第2の絶縁樹脂の熱膨張係数または弾性率の差分と、反りの関係をシミュレーションし、得られた結果に基づいて、反りを抑制するために必要な前記第1の絶縁樹脂と前記第2の絶縁樹脂の熱膨張係数、または、弾性率の差分を算出するための計算式を導き出した。
このように、複数のパラメータを含むシミュレーション結果を、絶縁樹脂層の熱膨張係数および弾性率にパラメータを限定した計算式に単純化することによって、多層配線基板を設計する場合の利便性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 コア基板
1a コア樹脂
2 銅箔
3 スルーホール
4 穴埋め樹脂
6、16 レジストパターン
8 ビア開口
11 第1の絶縁樹脂層
12 第2の絶縁樹脂層
13 第1の導体層
13a シード層
13b めっき層
14 第2の導体層
16 レジストパターン
17 ソルダーレジスト層
18 ソルダーレジスト開口
19 表面処理層
20 はんだバンプ
22、33 導体層
34 半導体素子
35 アンダーフィル樹脂
43、44 パッド部
53 第1のパッド部
54 第2のパッド部
51 第1のビルドアップ層
52 第2のビルドアップ層
100 多層配線基板
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