(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176584
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】疎水性タンパク質分散組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/17 20160101AFI20241212BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20241212BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241212BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20241212BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20241212BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20241212BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241212BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20241212BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20241212BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20241212BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20241212BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20241212BHJP
A23K 20/147 20160101ALI20241212BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20241212BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20241212BHJP
A23K 20/163 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
A23L33/17
A61K8/64
A61K8/73
A61K8/98
A23L33/115
A23L33/125
A23L5/00 M
A23L29/238
A23L29/262
A23L29/256
A23L29/244
A23L29/269
A23K20/147
A23K10/20
A23K20/158
A23K20/163
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095265
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】朝武 宗明
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B035
4B041
4C083
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB20
2B150AE45
2B150AE46
2B150AE49
2B150CD34
2B150CJ08
2B150DC16
2B150DD01
2B150DD61
4B018LB10
4B018LE05
4B018MD09
4B018MD14
4B018MD20
4B018MD29
4B018MD30
4B018MD36
4B018MD37
4B018MD76
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF02
4B018MF04
4B035LC16
4B035LG06
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG18
4B035LG19
4B035LG20
4B035LG23
4B035LG24
4B035LG25
4B035LG27
4B035LG41
4B035LK13
4B035LP16
4B035LP21
4B041LC10
4B041LD10
4B041LH08
4B041LH10
4B041LH11
4B041LH16
4B041LK14
4B041LK18
4B041LK40
4B041LP02
4B041LP04
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA122
4C083AB051
4C083AB052
4C083AC302
4C083AD202
4C083AD251
4C083AD252
4C083AD271
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD411
4C083CC01
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE01
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】本発明は、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有する、疎水性タンパク質分散組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】疎水性タンパク質、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含む、疎水性タンパク質分散組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性タンパク質、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含む、疎水性タンパク質分散組成物。
【請求項2】
前記疎水性タンパク質がローヤルゼリーである、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項3】
前記疎水性物質が油脂である、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項4】
前記水溶性ゲル化剤が、カルボキシメチルセルロース(CMC)、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、グルコマンナン、キサンタンガム、及びグアーガムからなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項5】
前記ローヤルゼリーを、20質量%未満の量で含む、請求項2に記載の分散組成物。
【請求項6】
さらに、乳化剤を含む、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項7】
液状、又は半固体/半液体の形態を有する、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項8】
前記組成物が、飲食品組成物、飲食品添加剤、栄養補助食品、機能性食品、動物用飼料組成物、動物用飼料添加剤、化粧品組成物、又は化粧品添加剤である、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項9】
以下の(1)及び(2)の工程を含む、疎水性タンパク質分散組成物の製造方法:
(1)疎水性物質、疎水性タンパク質を合わせて撹拌する工程、ならびに、
(2)工程(1)で得られた混合物に、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤をさらに合わせて撹拌する工程であって、
工程(1)もしくは工程(2)、又はその両方の工程で、水を合わせて攪拌することを含む。
【請求項10】
さらに、(3)工程(2)で得られた混合物に、乳化剤を合わせて撹拌する工程、を含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性タンパク質、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含む、疎水性タンパク質分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロイシンやイソロイシン等の疎水性の強いアミノ酸残基が分子表面に多く存在するタンパク質(すなわち、「疎水性タンパク質」)は水に溶けにくく、そのため、疎水性タンパク質を含めた含水組成物においては、経時的に当該タンパク質の凝集、沈殿等を生じ得る。また、そもそもタンパク質は、加熱処理工程により変性を生じ得るため、疎水性タンパク質を含めた含水組成物は、その製造工程における加熱によっても凝集、沈殿等を生じやすい。これらの凝集、沈殿等は、疎水性タンパク質を含めた含水組成物の外観や品質を低下させる要因となり得ることから、当該含水組成物を飲料や化粧品として製造・販売等を行う場合に問題となることがあった。
【0003】
ローヤルゼリーは、ミツバチの働きバチが女王バチの餌として調製する、咽頭腺からの分泌物と蜂蜜の混合物からなる乳白色のクリーム状物質であり、古くから健康に不可欠な栄養素を豊富に含む物質として、健康食品や医薬品、又は化粧品等に利用されてきた。
【0004】
一方で、ローヤルゼリーは、疎水性タンパク質も多く含まれる物質であることから、ローヤルゼリーを単に配合しただけの飲料等においては、上述のとおり、経時的に、及び/又は、製造工程における加熱処理によって、凝集、沈殿等を生じる場合があった。このためローヤルゼリーを含む飲料等は、わずかな量のローヤルゼリーを配合した形態とするか、あるいはローヤルゼリーを小さなカプセルに詰めた形態とすることが多かった。
【0005】
ローヤルゼリー配合飲料等における、これらの凝集、沈殿等の課題を解決すべく、特許文献1には、ペクチンと有機酸とを含有することによって、ローヤルゼリーが均一に分散されたローヤルゼリー分散組成物が得られることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ローヤルゼリーを酸性加熱処理し、ブドウ糖を配合することにより、沈殿や浮遊物の発生することがない長期間安定なローヤルゼリー配合物が得られることが開示されている。
【0007】
さらに、ローヤルゼリーは口に入れると、強いエグ味(収斂味)が感じられることから、一般的に、蜂蜜や牛乳等によりマスキングして飲用されている。この強いエグ味のため、市販のローヤルゼリーを含む飲料においては、多くの量のローヤルゼリーを配合することができず、わずかな量を配合した形態とすることが多かった。
【0008】
ローヤルゼリーを飲用した場合に感じられるエグ味を解決すべく、特許文献3には、ウーロン茶、緑茶及びジャスミン茶から選択されたものに、ローヤルゼリーを0.75-1.25重量%の割合で配合することによって、エグ味の弱い飲料が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-175907号公報
【特許文献2】特開2008-154580号公報
【特許文献3】特開平11-276075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一態様において、本発明は、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有する、疎水性タンパク質分散組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また別の態様において、本発明は、加熱処理に付された後においても、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有する、疎水性タンパク質分散組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また別の態様において、本発明は、従来品と比べて多量の疎水性タンパク質を配合しても、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有する、疎水性タンパク質分散組成物を提供することを目的とする。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、疎水性タンパク質が有する特有のエグ味(収斂味)が低減された、疎水性タンパク質分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、疎水性タンパク質を、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤と共に混合、撹拌して得られた疎水性タンパク質分散組成物が、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有することを見出した。
【0015】
また、本発明者らは、疎水性タンパク質を、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤と共に混合、撹拌して得られた疎水性タンパク質分散組成物が、加熱処理に付された後においても、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有することを見出した。
【0016】
また、本発明者らは、疎水性タンパク質を、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤と共に混合、撹拌して得られた疎水性タンパク質分散組成物が、従来品と比べて多量の疎水性タンパク質を配合しても、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有することを見出した。
【0017】
さらに、本発明者らは、疎水性タンパク質を、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤と共に混合、撹拌して得られた疎水性タンパク質分散組成物においては、疎水性タンパク質が有する特有のエグ味(収斂味)が低減されていることを見出した。
【0018】
本発明は、これらの新規知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 疎水性タンパク質、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含む、疎水性タンパク質分散組成物。
[2] 前記疎水性タンパク質がローヤルゼリーである、[1]の分散組成物。
[3] 前記疎水性物質が油脂である、[1]又は[2]の分散組成物。
[4] 前記水溶性ゲル化剤が、カルボキシメチルセルロース(CMC)、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、グルコマンナン、キサンタンガム、及びグアーガムからなる群より選択される一種以上である、[1]~[3]のいずれかの分散組成物。
[5] 前記ローヤルゼリーを、20質量%未満の量で含む、[2]の分散組成物。
[6] さらに、乳化剤を含む、[1]~[5]のいずれかの分散組成物。
[7] 液状、又は半固体/半液体の形態を有する、[1]~[6]のいずれかの分散組成物。
[8] 前記組成物が、飲食品組成物、飲食品添加剤、栄養補助食品、機能性食品、動物用飼料組成物、動物用飼料添加剤、化粧品組成物、又は化粧品添加剤である、[1]~[7]のいずれかの分散組成物。
[9] 以下の(1)及び(2)の工程を含む、疎水性タンパク質分散組成物の製造方法:
(1)疎水性物質、疎水性タンパク質を合わせて撹拌する工程、ならびに、
(2)工程(1)で得られた組成物に、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤をさらに合わせて撹拌する工程であって、
工程(1)もしくは工程(2)、又はその両方の工程で、水を合わせて攪拌することを含む。
[10] さらに、(3)工程(2)で得られた組成物に、乳化剤を合わせて撹拌する工程、を含む、[9]の方法。
【発明の効果】
【0019】
一態様において、本発明によれば、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有する、疎水性タンパク質分散組成物を提供することができる。
【0020】
また別の態様において、本発明によれば、加熱処理に付された後においても、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有する、疎水性タンパク質分散組成物を提供することができる。
【0021】
また別の態様において、本発明によれば、従来品と比べて多量の疎水性タンパク質を配合しても、配合された疎水性タンパク質が凝集、沈殿等を生じることなく分散する、優れた分散安定性を有する、疎水性タンパク質分散組成物を提供することができる。
【0022】
さらに別の態様において、本発明によれば、疎水性タンパク質が有する特有のエグ味(収斂味)が低減された、疎水性タンパク質分散組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、加熱処理に付した、生ローヤルゼリー、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含んでなる液状の分散組成物(実施例1)と、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤のいずれか1以上を欠く組成物(比較例1~4)についての分散安定性の評価結果を示す写真図である。実施例1では、生ローヤルゼリーが均一に分散し、全体が均一に白く白濁しているが、比較例1~4においては、生ローヤルゼリーの沈殿物又は凝集物を生じ、均一な分散が保持されていないことが示される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明における疎水性タンパク質分散組成物(以下、単に「本発明の分散組成物」又は「分散組成物」と記載する場合がある)は、疎水性タンパク質、疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び、水を含むことを特徴とするものであり、疎水性タンパク質が疎水性物質と共に、サイクロデキストリン及び水溶性ゲル化剤を含む水の中に分散/乳化してなる組成物を意味する。
【0025】
本発明において「疎水性タンパク質」とは、水に不溶性のタンパク質を含むか、又は当該タンパク質からなる、物質又は組成物を意味する。このような「疎水性タンパク質」としては、例えば、ローヤルゼリー、大豆タンパク質、大豆粉砕物(きな粉、大豆粉、おからパウダー等)、アルブミン類、グロブリン類等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくは、本発明において「疎水性タンパク質」とは、ローヤルゼリーである。
【0026】
本発明において「ローヤルゼリー」とは、特に限定されるものではないが、例えば「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」で定義されている生ローヤルゼリー、乾燥ローヤルゼリー、調製ローヤルゼリー、酵素処理したローヤルゼリー等を好適に用いることができる。好ましくは生ローヤルゼリーである。
【0027】
本発明において「疎水性タンパク質」は、用いる疎水性タンパク質の種類や形態、又はその大きさに応じて、そのまま、あるいは必要に応じて、粉砕又は磨砕された形態で、本発明の分散組成物中に含めることができる。
【0028】
疎水性タンパク質の粉砕又は摩砕は任意の手段により行うことができ、例えば、マイクロ乳棒、ビーズミル、スタンプミル、マスコロイダー、コミトロール、擂粉木、高速撹拌器、ホモジナイザー、ミキサー、マッシャー等を用いて行うことができる(これらに限定はされない)。粉砕又は磨砕された疎水性タンパク質の大きさは、他の原料との混合において、本発明の分散組成物中に分散させることが可能な大きさであればよく、粉砕又は磨砕の処理条件は、粉砕又は磨砕後の疎水性タンパク質の形状や大きさを観察しながら、当業者が適宜設定することができる。
【0029】
本発明の分散組成物には、疎水性タンパク質を、他の原料との混合において当該分散組成物中に均一に分散させることが可能な任意の量で含めることができ、その量は用いた疎水性タンパク質の種類や形態、又はその大きさに応じて、当業者が適宜設定することができる。例えば、当該分散組成物100質量%における、疎水性タンパク質の含有量は、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上の量であり、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、20質量%未満、又は15質量%以下とすることができる。本発明の分散組成物に含まれる疎水性タンパク質の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の分散組成物には、疎水性タンパク質を、1質量%~50質量%、5質量%~40質量%、10質量%~30質量%、10質量%~20質量%もしくは20質量%未満、10質量%~15質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。
【0030】
例えば、疎水性タンパク質がローヤルゼリーである場合には、本発明の分散組成物100質量%における、その含有量は、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上の量であり、その上限は特に限定されるものではないが、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%以下とすることができる。本発明の分散組成物に含まれるローヤルゼリーの量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の分散組成物には、ローヤルゼリーを、1質量%~20質量%未満、5質量%~20質量%未満、10質量%~20質量%未満、又は10質量%~15質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。
【0031】
本発明の分散組成物における、疎水性タンパク質の量を上記範囲とすることによって、他の原料との混合において、疎水性タンパク質を当該分散組成物中に均一に分散させることができ、本発明の分散組成物に、目視により疎水性タンパク質の凝集又は沈殿物が確認されない、良好な分散安定性を付与することができ好ましい。
【0032】
本発明において「疎水性物質」とは、水に不溶性であり、疎水性タンパク質と共に、サイクロデキストリン及び水溶性ゲル化剤を含む水の中に分散/乳化することが可能な物質であればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは、油脂、疎水性ワックス、疎水性樹脂等が挙げられる。疎水性物質はいずれかの物質を単独で用いてもよいし、あるいは異なる種類の疎水性物質を組み合わせて用いてもよい。例えば、疎水性物質は、油脂、疎水性ワックス、及び疎水性樹脂からなる群より選択される一種以上の物質を用いることができ、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。
【0033】
本発明において「油脂」とは、飲食品や化粧品において一般的に使用される油脂を利用することができ、極性及び非極性のいずれも使用することができる。このような油脂としては、例えば、植物由来の油脂(例えば、キャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、パーム油、茶油、ヤシ油、アボガド油、ククイナッツ油、グレープシード油、ココアバター、ココナッツ油、小麦胚芽油、アーモンド油、月見草油、ひまし油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、大豆油、ブドウ油、カカオ油、ホホバ油、パーム核油、スクワレン、スクワラン等)、イソステアリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、2-オクタデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、フィトステロール、コレステロール、ステアリン酸、イソステアリン酸、カプリン酸、ラノリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、リノール酸、リノレン酸、モノステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノベヘニン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノラノリン酸グリセリル、モノリノ-ル酸グリセリル、モノリノレン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリン、イソプロピルミリステート、グリセロールトリ-2-ヘプチルウンデカノエート、グリセロールトリ-2-エチルヘキサノエート、2-ヘプチルウンデシルパルミテート、ジ-2-ヘプチルウンデシルアジペート、セチルイソオクタノエート、トリメチロールプロパン-2-トリメチロールヘプチルウンデカノエート、プロパン-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトール-2-ヘプチルウンデカノエート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、コレステロールイソステアレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等の合成エステル油、牛脂、豚油、魚油、乳脂、ラノリン、スクワレン、スクワラン等の動物由来の油脂等が挙げられるが、これらに限定はされない。その中でも、本発明において利用される油脂としては、少なくとも常温において液体の状態のものが好ましい。本明細書において「常温」とは、5~35℃、好ましくは15~30℃を意味する。
【0034】
油脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる油脂を組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。本発明において油脂とは、安全性の高い動物由来又は植物由来の油脂が好ましく、食経験があり安全性の高い食用植物油が、特に好ましい。
【0035】
本発明において「疎水性ワックス」とは、動植物や石油若しくは鉱物由来の天然疎水性ワックス、合成の疎水性ワックスが挙げられ、80℃以下の融点を有するものを使用することができ、その中でも、少なくとも常温において液体の状態のものが好ましい。このような疎水性ワックスとしては、例えば、ミツロウ、鯨ロウ、羊毛ロウ、モクロウ、ロジン(松脂)、キャンデリラロウ、カルナバロウ、カカオ脂、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ワセリンワックス、オゾケナイトワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、アルコール変性ワックス、マレイン酸変性酸化ポリエチレンワックス、アミドワックス等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0036】
疎水性ワックスはいずれか単独で用いてもよいし、異なる疎水性ワックスを組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。本発明において疎水性ワックスとは、安全性の高い動物由来又は植物由来の疎水性ワックスが特に好ましい。
【0037】
本発明において「疎水性樹脂」とは、親水性基を有さないか又はその含有量が小さな樹脂であり、水等の極性溶媒に溶解しない樹脂を指し、本発明においては少なくとも常温において液体の状態のものを好適に用いることができる。このような疎水性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂(親水化されていないもの、例えば、シリコーン油、変性シリコーン)、ポリウレタン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ならびにこれらのポリマーの共重合体等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0038】
疎水性樹脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる疎水性樹脂を組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。本発明において疎水性樹脂とは、生体適合性や生体親和性有することが確認された安全性の高いものが特に好ましい。
【0039】
本発明において「疎水性物質」とは、特に好ましくは油脂である。
【0040】
本発明の分散組成物には、疎水性物質を、他の原料との混合において、疎水性タンパク質を当該分散組成物中に均一に分散させることが可能な任意の量で含めることができ、その量は用いた疎水性物質の種類や本発明の利用態様に応じて、当業者が適宜設定することができる。例えば、当該分散組成物100質量%における、疎水性物質の含有量は、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上の量であり、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。本発明の分散組成物における疎水性物質の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の分散組成物には、疎水性物質を、1質量%~50質量%、3質量%~40質量%、5質量%~30質量%、又は10質量%~20質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。本発明の分散組成物における、疎水性物質の量を上記範囲とすることによって、他の原料との混合において、疎水性タンパク質を当該分散組成物中に均一に分散させることができ、本発明の分散組成物に、目視により疎水性タンパク質の凝集又は沈殿物が確認されない、良好な分散安定性を付与することができ好ましい。
【0041】
本発明において「サイクロデキストリン」は、ブドウ糖を構成単位とする環状無還元マルトオリゴ糖を意味し、ブドウ糖の数が6つのα-サイクロデキストリン、7つのβ-サイクロデキストリン、8つのγ-サイクロデキストリンが挙げられる。本発明においては、α-、β-、γ-サイクロデキストリン、及びそれらの誘導体、ならびにそれらの任意の組み合わせを用いることができる。サイクロデキストリンの誘導体としては、例えば、エチルサイクイロデキストリン、メチルサイクロデキストリン、ヒドロキシエチルサイクロデキストリン、ヒドロキシプロピルサイクロデキストリン、メチルアミノサイクロデキストリン、アミノサイクロデキストリン、カルボキシエチルサイクロデキストリン、カルボキシメチルサイクロデキストリン、スルフォキシエチルサイクロデキストリン、スルフォキシルサイクロデキストリン、アセチルサイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、サイクロデキストリン脂肪酸エステル、グルコシルサイクロデキストリン、マルトシルサイクロデキストリン等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくはα-サイクロデキストリンを使用する。α-サイクロデキストリンは水への溶解性が高く、ざらつきの少ない分散組成物を得ることができ好ましい。
【0042】
本発明の分散組成物には、サイクロデキストリンを、他の原料との混合において分散組成物中に疎水性タンパク質を均一に分散させることが可能な任意の量で含めることができ、その量は用いたサイクロデキストリンの種類に応じて、当業者が適宜設定することができる。例えば、当該分散組成物100質量%における、サイクロデキストリンの含有量は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、又は1質量%以上の量であり、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下とすることができる。本発明の分散組成物におけるサイクロデキストリンの量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の分散組成物には、サイクロデキストリンを、0.1質量%~30質量%、0.2質量%~20質量%、0.5質量%~10質量%、0.7質量%~8質量%、又は1質量%~7質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。本発明の分散組成物における、サイクロデキストリンの量を上記範囲とすることによって、他の原料との混合において、疎水性タンパク質を当該分散組成物中に均一に分散させることができ、本発明の分散組成物に、目視により疎水性タンパク質の凝集又は沈殿物が確認されない、良好な分散安定性を付与することができ好ましい。
【0043】
本発明において「水溶性ゲル化剤」とは、一般的に、水に溶解し、粘性を付与することが可能な多糖類(一般的に、増粘安定剤、水溶性糊料、増粘多糖類等とも称される場合がある)を意味し、このような水溶性ゲル化剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、スクシノグリカン、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム(脱アシル型、及びネイティブ型)、アラビアガム、ペクチン、α化でんぷん、リン酸架橋でんぷん、ヒドロキシプロピルでんぷん、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でんぷん、トラガントガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸でんぷん、オクテニルコハク酸でんぷん、大豆多糖類、難消化デキストリン、ポリデキストロース、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、寒天、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、カードラン、ガティガム、アラビアガラクタン、カラヤガム、ファーセラン、キチン、ウェランガム等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくは、本発明において「水溶性ゲル化剤」は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及びジェランガムを挙げることができ、より好ましくは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、グルコマンナン、キサンタンガム、及びグアーガムが挙げられる。水溶性ゲル化剤はいずれか単独で用いてもよいし、異なる水溶性ゲル化剤を組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。
【0044】
本発明の分散組成物には、水溶性ゲル化剤を、他の原料との混合において分散組成物中に疎水性タンパク質を均一に分散させることが可能な任意の量で含めることができ、その量は用いた水溶性ゲル化剤の種類に応じて、当業者が適宜設定することができる。例えば、当該分散組成物100質量%における、水溶性ゲル化剤の含有量は、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、又は0.5質量%以上の量であり、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下とすることができる。本発明の分散組成物における水溶性ゲル化剤の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の分散組成物には、水溶性ゲル化剤を、0.05質量%~10質量%、0.1質量%~5質量%、0.3質量%~3質量%、又は0.5質量%~2質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。本発明の分散組成物における、水溶性ゲル化剤の量を上記範囲とすることによって、他の原料との混合において、疎水性タンパク質を当該分散組成物中に均一に分散させることができ、本発明の分散組成物に、目視により疎水性タンパク質の凝集又は沈殿物が確認されない、良好な分散安定性を付与することができ好ましい。
【0045】
本発明において、水は任意の形態で用いることができ、水自体の形態で配合してもよいし、ならびに/あるいは、上記疎水性タンパク質が水を伴う場合や、上記サイクロデキストリン及び/又は水溶性ゲル化剤を水溶液の形態で用いる場合には、それらに含まれる水の形態であってもよく、その場合には当該疎水性タンパク質、及び/又は当該水溶液を配合することによって、水を配合することも兼ねることができる。
【0046】
本発明の分散組成物には、水を、他の原料との混合において分散組成物中に疎水性タンパク質を均一に分散させることが可能な任意の量で含めることができ、当業者が適宜設定することができる。また、本発明の分散組成物における水の配合量を調整して、本発明の分散組成物の形態を、液状の形態、あるいはゼリー、ゲル、ゾル等の半固体/半液体の形態とすることができる。例えば、本発明の分散組成物が液状の形態を有する場合には、当該分散組成物100質量%における、水の含有量は、50質量%以上、60質量%以上、68質量%超、又は70質量%以上の量であり、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は、75質量%以下とすることができる。本発明の分散組成物における水の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の分散組成物には、水を、50質量%~90質量%以下、60質量%~90質量%以下、68質量%超~90質量%以下、70質量%~85質量%、70質量%~80質量%、又は70質量%~75質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。
【0047】
あるいは、本発明の分散組成物が半固体/半液体の形態を有する場合には、当該分散組成物100質量%における、水の含有量は、40質量%以上、60質量%以上、又は80質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、95質量%以下、90質量%以下、又は、85質量%以下とすることができる。当該分散組成物における水の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該分散組成物には、水を、40質量%~95質量%、60質量%~90質量%、又は80質量%~85質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。
【0048】
本発明の分散組成物における、水の量を上記範囲とすることによって、他の原料との混合において、疎水性タンパク質を当該分散組成物中に均一に分散させることができ、本発明の分散組成物に、目視により疎水性タンパク質の凝集又は沈殿物が確認されない、良好な分散安定性を付与することができ好ましい。
【0049】
本発明の分散組成物には、必要に応じてさらに、乳化剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜配合してもよい。本発明において、「乳化剤」は飲食品や化粧品の製造において一般的に用いられているものを利用することが可能であり、このような乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン変性シリコーンオイル、レシチン類、サポニン類、リンタンパク質、ならびに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定はされない。乳化剤はいずれか単独で用いてもよいし、異なる乳化剤を組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。
【0050】
本発明の分散組成物には、乳化剤を、本発明の効果を損なわない任意の量で含めることができ、当業者が適宜設定することができる。例えば、当該分散組成物100質量%における、乳化剤の含有量は、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.5質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下とすることができる。本発明の分散組成物における乳化剤の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の分散組成物には、乳化剤を、0.05質量%~5質量%以下、0.1質量%~3質量%以下、又は0.5質量%~1質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。
【0051】
あるいは、本発明の分散組成物においては、上記疎水性物質、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び、水の併用により、疎水性タンパク質を当該分散組成物中に均一分散させることができ、本発明の分散組成物に、目視により疎水性タンパク質の凝集又は沈殿物が確認されない、良好な分散安定性を付与することができるため、これらに加えて、上記乳化剤を実質的に含まないものとしてもよい。本発明において「乳化剤を実質的に含まない」とは、本発明の分散組成物において、乳化剤が乳化作用を発揮する態様で含まれないことを意味し、乳化剤が一切含まれないことを意図するものではない。好ましくは、本発明の分散組成物には、上記乳化剤が含まれない。
【0052】
本発明の分散組成物には、必要に応じてさらに、飲食品や化粧品の製造において通常用いられている成分(以下、「その他の成分」と記載する)を、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜配合することができる。このようなその他の成分としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、懸濁化剤、増粘剤、保存剤、抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、甘味料、呈味成分、酸味料、調味料、保湿剤、着色剤、顔料、染料、色素、潤滑剤、可塑剤、溶剤、溶解補助剤、等張化剤、矯味矯臭剤、pH調整剤、キレート剤、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルタチオン等)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB類、アスコルビン酸、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンH類、パントテン酸等)、界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0053】
本発明の分散組成物の形態は特に限定されず、上記水分含量を有する、液状の形態、又は、ゼリー、ゲル、ゾル等の半固体/半液体の形態の形態とすることができる。あるいは、本発明の分散組成物は、さらに水分含量を減少させて調製された乾燥体(例えば、粉体、フレーク等)の形態としてもよい。乾燥体の形態は、上記水分含量を有する形態の分散組成物を得たのち、それを従来公知の乾燥手段に付して、当該分散組成物の水分含量を減少させることにより得ることができる。このような乾燥手段としては、例えば、凍結乾燥、加熱乾燥、風乾、噴霧乾燥、ドラム乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等が挙げられるが、これらに限定はされない。乾燥手段に付された後の当該分散組成物の水分含量は、任意であり当業者が適宜設定することが可能であるが、例えば、0質量%~15質量%、0.1質量%~10質量%、0.5質量%~5質量%、又は0.5質量%~1質量%とすることができる。乾燥手段に付された後の本発明の分散組成物は、上記所定量の水分含量となるように水又はお湯を加えて混合・攪拌し、液状の形態、又は半固体/半液体の形態に再調製して用いることができる。
【0054】
本発明の分散組成物は、疎水性タンパク質、好ましくはローヤルゼリー配合の、飲食品組成物、飲食品添加剤、栄養補助食品、機能性食品、動物用飼料組成物、動物用飼料添加剤として提供されることが好ましい。これらは、例えば、飲料、ゼリー飲料等(これらに限定はされない)として、又はこれらに添加して、提供することができる。
【0055】
あるいは、本発明の分散組成物は、疎水性タンパク質、好ましくはローヤルゼリー配合の、化粧品組成物、又は化粧品添加剤として提供されることが好ましい。これらは、例えば、ローション、化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック剤、美容液、洗顔料、基礎化粧品、メーキャップ化粧品、ヘアケア用品、ボディーソープ、入浴剤等(これらに限定はされない)として、又はこれらに添加して、提供することができる。
【0056】
本発明の分散組成物は、容器詰めの形態で提供されることが好ましい。本発明の分散組成物を収容するための容器は、飲食品や化粧品用の容器として一般的に使用される容器を適宜用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、金属缶容器、ガラス容器、樹脂フィルム製容器、金属フィルム製容器、パウチ容器等が挙げられる。容器の形態は特に限定されない。また、容器の容量は特に限定されないが、例えば5~500mL(典型的には5mL、10mL、50mL、100mL、150mL、180mL、200mL、250mL、300mL、350mL、400mL、450mL又は500mL)、好ましくは5~200mLとすることができる。
【0057】
本発明の分散組成物は、
疎水性物質、疎水性タンパク質を合わせて撹拌し(工程(1))、次いで、
得られた組成物に、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤をさらに合わせて撹拌すること(工程(2))
により製造することができる。
水は、工程(1)もしくは工程(2)、又はその両方の工程で、合わせて攪拌し、その形態は、水自体の形態で配合してもよいし、ならびに/あるいは、上記疎水性タンパク質が水を伴う場合や、上記サイクロデキストリン及び/又は水溶性ゲル化剤を水溶液の形態で用いる場合には、それらに含まれる水の形態であってもよい。好ましくは、水は、工程(2)において合わせて攪拌し、その形態は、上記サイクロデキストリン及び/又は水溶性ゲル化剤を含む水溶液の形態が好ましく、上記サイクロデキストリン及び水溶性ゲル化剤を含む水溶液の形態がより好ましい。
【0058】
工程(1)において、水(存在する場合)、疎水性物質、及び疎水性タンパク質の各成分は、全て一緒に混合、攪拌してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次添加して(順序は問わない)混合、攪拌してもよい。
【0059】
工程(1)において、疎水性物質と疎水性タンパク質とを合わせて攪拌、混合することにより、疎水性タンパク質が疎水性物質で覆われると考えられる。
【0060】
工程(2)において、工程(1)にて形成された疎水性物質と疎水性タンパク質とを含む組成物、水(存在する場合)、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤の各成分は、全て一緒に混合、攪拌してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次添加して(順序は問わない)混合、攪拌してもよい。好ましくは、サイクロデキストリン及び/又は水溶性ゲル化剤は水溶液の形態である。より好ましくは、サイクロデキストリン及び水溶性ゲル化剤は水溶液の形態であり、それらは別々の水溶液であってもよいし、一つの水溶液に両者が含まれていてもよい。
【0061】
工程(2)において、前記組成物と水(存在する場合)、サイクロデキストリン及び水溶性ゲル化剤とを合わせて攪拌、混合することにより、疎水性物質で覆われた疎水性タンパク質が、水中に分散/乳化した組成物が形成され、かつ、水に溶解したサイクロデキストリン及び水溶性ゲル化剤と、疎水性タンパクを覆う疎水性物質とが相互作用を生じると考えられ、これにより、本発明の分散組成物において、疎水性タンパク質を当該分散組成物中に均一に分散させることができ、本発明の分散組成物に、目視により疎水性タンパク質の凝集又は沈殿物が確認されない、特に加熱処理に付された後においても、目視により疎水性タンパク質の凝集又は沈殿物が確認されない、良好な分散安定性を付与することができると考えられる。
【0062】
本発明において、乳化剤、及び/又は上記その他の成分を用いる場合には、これらの成分は本発明の効果を損なわない限り、任意のタイミングで添加することができる。好ましくは、乳化剤、及び/又は上記その他の成分は、工程(2)で得られた組成物に添加して混合、攪拌する。これにより、乳化剤、及び/又は上記その他の成分が、上述の疎水性タンパクを覆う疎水性物質と、水に溶解したサイクロデキストリン及び水溶性ゲル化剤との間の相互作用を妨げることを回避することができ、所望の分散安定性を有する組成物を得ることができる。
【0063】
また、混合、攪拌して得られた本発明の分散組成物は、必要に応じてさらに乾燥手段に付してもよい。乾燥手段は、上記従来公知の乾燥手段により行うことができ、当該分散組成物の水分含量を、目的とする形状に応じて適宜調整することができる。得られた乾燥体は、必要に応じてさらに破砕、粉砕、又は摩砕処理に付して粉体やフレーク等の形態とすることができる。また、乾燥手段に付された分散組成物は、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等と共に、公知の造粒法により造粒物としてもよい。造粒方法としては、例えば、噴霧造粒、流動層造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒、押出造粒、粉末被覆造粒等が挙げられる。
【0064】
製造された分散組成物は、容器への充填、及び/又は加熱殺菌処理に付すことが好ましい。
【0065】
加熱殺菌処理は分散組成物の容器への充填前に行ってもよいし、容器への充填後に行ってもよいし、あるいは容器への充填の前後に行うこともできる。典型的には、分散組成物を容器に充填密封した後に加熱殺菌処理を施す様式(後殺菌)と、分散組成物を予め加熱殺菌処理し、加熱殺菌処理の温度を保持した状態で分散組成物を容器に充填密封し、容器を殺菌する様式(ホットパック殺菌)とが挙げられる。加熱殺菌処理は分散組成物に一般的に用いられる方法にて、必要な殺菌価を担保できる条件で適宜行うことができる。
【0066】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0067】
1.生ローヤルゼリー分散組成物の調製
下記表1-1、表1-2、表1-3の組成にしたがって、疎水性タンパク質として生ローヤルゼリー、及び疎水性物質として油脂を合わせて撹拌し(工程1)、ここに水、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及びその他原料を合わせて撹拌すること(工程2)によって、液状の分散組成物をそれぞれ得た。
【0068】
撹拌はポリトロンホモジナイザーを用いて行い、工程1の撹拌は5000rpmにて1分間、工程2の撹拌は10,000rpmにて1分間行った。
【0069】
乳化剤(ショ糖ステアリン酸エステル(リョートーシュガーエステルS-1170(三菱化学フーズ(株)社製))は、工程1にて合わせるか(比較例7)、工程2の終了後に合わせて混合した(実施例21)。
【0070】
なお、表中、各成分の量は、得られた液状の分散組成物の量を100質量%とする質量%の量にて示される。
【0071】
2.分散安定性の評価(I)
上記調製された液状の分散組成物(100mL)を、電子レンジ(600W)にて加熱し、沸騰確認後、そのまま30秒間加熱した後に取り出し、10分間、室温にて静置した。その後、分散組成物における分散安定性を、以下の基準に基づいて、目視で評価した。
○:沈殿物又は凝集物が確認されない
×:沈殿物又は凝集物が確認される
【0072】
3.結果
上記調製された液状の分散組成物の分散安定性の評価結果を、以下の表1-1、表1-2、表1-3に併記する。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
生ローヤルゼリー、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含んでなる液状の分散組成物(実施例1~21)においては、加熱した後においても生ローヤルゼリーは、均一に分散されており、沈殿物又は凝集物は確認されなかった。一方、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤のいずれか、またはすべてを含まない組成物(比較例1~5)においては、加熱した後に生ローヤルゼリーの沈殿物又は凝集物を生じ、均一な分散を保持することができなかった(
図1)。
【0077】
また、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含んでなる液状の分散組成物には、20質量%未満の量の生ローヤルゼリーを、加熱した後においても沈殿物又は凝集物を生じることなく含めることが可能であり(比較例6と実施例1,10,11の対比より)、従来公知の生ローヤルゼリー配合飲料と比べて、大量の生ローヤルゼリーを、加熱後も分散安定性を損なうことなく含められることが確認された。
【0078】
また、生ローヤルゼリー、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含んでなる液状の分散組成物の製造において、乳化剤を当該分散組成物の形成前に添加してしまうと、得られた組成物においては、加熱した後に生ローヤルゼリーの沈殿物又は凝集物を生じ、均一な分散を保持することができないことが確認された(比較例7,実施例21の対比より)。この結果は、生ローヤルゼリー、及び油脂を合わせて撹拌すること(工程1)によって、生ローヤルゼリーが油脂で覆われ、ここに水、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤等を合わせて撹拌すること(工程2)によって、油脂で覆われた生ローヤルゼリーが、水中に分散/乳化した組成物が形成され、かつ、生ローヤルゼリーを覆う油脂と、水に溶解したサイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤との間で相互作用を生じることを示唆するものであり、これにより、加熱した後においても生ローヤルゼリーの沈殿物や凝集物を生じることのない高い分散安定性が達成されると考えられる。乳化剤を当該分散組成物の形成前に添加してしまうと、この油脂と、水に溶解したサイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤との間の相互作用が妨げられることにより、所望の分散安定性が達成できないものと思われる。
【0079】
4.分散安定性の評価(II)
上記調製された液状の分散組成物の実施例1、比較例4、比較例5を、下記表2に記載の加熱条件A-Dで加熱し、その後、各組成物における生ローヤルゼリーの分散安定性を、上記「2.分散安定性の評価(I)」に記載したのと同じ基準に基づいて、目視で評価した。
【0080】
加熱条件A-Cでは、各分散組成物(100mL)をビーカーに入れて、ウォーターバスにて所定の条件で加熱した後、2時間、室温にて静置した後、評価に供した。
【0081】
加熱条件Dでは、各分散組成物(100mL)を、レトルトパウチに入れレトルト殺菌機にて所定条件で加熱、冷却した後、レトルトパウチからビーカーへ移し、1時間、室温にて静置した後、評価に供した。
【0082】
加熱条件A-Dに付された液状の分散組成物(実施例1、比較例4、比較例5)の分散安定性の評価結果を、以下の表2に併記する。
【0083】
【0084】
生ローヤルゼリー、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含んでなる組成物(実施例1)においては、いずれの加熱条件に付した後においても生ローヤルゼリーは、均一に分散されており、沈殿物又は凝集物は確認されなかった。一方、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤のすべてを含まない、生ローヤルゼリー配合組成物(比較例5)及び、油脂を含むが、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含まない生ローヤルゼリー配合組成物(比較例4)においては、いずれの加熱条件に付した後においても生ローヤルゼリーの沈殿物又は凝集物を生じ、均一な分散を保持することができなかった。
【0085】
この結果より、生ローヤルゼリー、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含んでなる液状の分散組成物は、高温かつ長時間の加熱条件に付しても分散安定性を保持できることが確認され、当該分散組成物は、飲食品や化粧品の製造において一般的に用いられる加熱処理工程(例えば、加熱殺菌処理等)にも付すことが可能であることが確認された。
【0086】
5.エグ味の官能評価
上記調製された液状の分散組成物の実施例1、比較例4、比較例5について、4名の専門のパネラーが口に含み(1~3mL)、生ローヤルゼリーに起因するエグ味(収斂味)を評価した。評価に際しては、生ローヤルゼリー5質量%水溶液のエグ味の値を「5」として、1~5の5段階で評価した。
【0087】
液状の分散組成物(実施例1、比較例4、比較例5)の官能評価の結果を、以下の表3に示す。
【0088】
【0089】
生ローヤルゼリーに、グラニュー糖、クエン酸を添加したのみの組成物(比較例5)においては、生ローヤルゼリーに由来するエグ味が感じられた。この結果は、生ローヤルゼリーに、一般的な呈味成分を加えただけでは、生ローヤルゼリーに由来するエグ味を抑制できないことを示す。
【0090】
一方、生ローヤルゼリー、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を含んでなる組成物(実施例1)においては、生ローヤルゼリーに由来するエグ味がほぼ感じられなかった。対して、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤を欠く場合には(比較例4)、上記比較例5と同等のエグ味が感じられた。
【0091】
以上の結果より、生ローヤルゼリーを、水、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤と共に混合、撹拌して得られた分散組成物は、配合された生ローヤルゼリーが凝集、沈殿等を生じることなく均一に分散する、優れた分散安定性を有するものであり、特に、当該分散組成物は、加熱処理に付された後においても、また、生ローヤルゼリーの配合量が比較的大きな量であったとしても、凝集、沈殿等を生じることのない、優れた分散安定性を有するものであることが確認された。
【0092】
さらに、当該分散組成物においては、飲用した場合に、生ローヤルゼリーが有する特有のエグ味がほぼ感じられないことが確認された。
【0093】
これらの特性を有する本発明に係る分散組成物は、従来の生ローヤルゼリー配合製品では、付すことのできなかった加熱工程を含む製造方法に付すことが可能であり、また従来、分散安定性やエグ味の問題から達成し得なかった、多量の生ローヤルゼリーを配合した組成を可能とするものであることが確認された。このため、本発明は、従来なかった新たな生ローヤルゼリー配合製品の開発に貢献することが期待される。