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特開2024-176597床版、床版接続工法及び、床版の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176597
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】床版、床版接続工法及び、床版の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20241212BHJP
   E04F 15/08 20060101ALI20241212BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E01D19/12
E04F15/08 B
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095286
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】米津 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】大場 誠道
(72)【発明者】
【氏名】阿山 泰久
(72)【発明者】
【氏名】早川 智浩
【テーマコード(参考)】
2D059
2E220
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG37
2D059GG55
2E220AA07
2E220AA51
2E220AB30
2E220BA01
2E220FA11
2E220FA15
2E220GA27X
2E220GB22X
(57)【要約】
【課題】床版の新設工事又は取替工事において、工期の短縮及び、工費の削減を図る。
【解決手段】床版20は、床版本体部21と、床版本体部21の橋軸直交方向の端部に一体に設けられ、床版本体部21から上方に突出する地覆部25と、床版本体部21の上部を覆う超高強度繊維補強コンクリートによって形成された床版天端防水層31と、地覆部25の道路側の側面を覆う超高強度繊維補強コンクリートによって形成された地覆側面防水層33と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版本体部と、
前記床版本体部の橋軸直交方向の端部に一体に設けられ、前記床版本体部から上方に突出する地覆部と、
前記床版本体部の上部を覆う超高強度繊維補強コンクリートによって形成された床版天端防水層と、
前記地覆部の道路側の側面を覆う超高強度繊維補強コンクリートによって形成された地覆側面防水層と、を備える
ことを特徴とする床版。
【請求項2】
請求項1に記載の床版であって、
前記地覆部の上部を覆う超高強度繊維補強コンクリートによって形成された地覆天端防水層をさらに備える
ことを特徴とする床版。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の床版であって、
前記床版天端防水層の前記地覆部側の端部に拡張部が設けられるとともに、前記拡張部の端面が前記地覆側面防水層の下端側の側面に面接触する
ことを特徴とする床版。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の床版を橋軸方向に接続する床版接続工法であって、
橋軸方向に対向する一対の前記床版の端部間に超高強度繊維補強コンクリートを打ち込むことにより、一対の前記床版を互いに橋軸方向に接続するとともに、前記端部間に打ち込んだ超高強度繊維補強コンクリートを防水層として機能させる
ことを特徴とする床版接続工法。
【請求項5】
請求項1に記載の床版の製造方法であって、
所定の型枠に超高強度繊維補強コンクリートを打ち込むことにより、前記地覆側面防水層をプレート状に構築する第1工程と、
構築したプレート状の前記地覆側面防水層を浮き型枠として用い、コンクリートを打ち込むことにより、前記床版本体部と前記地覆部とを一体に構築する第2工程と、
構築された前記床版本体部の上部に超高強度繊維補強コンクリートを打ち重ねることにより、前記床版天端防水層を構築する第3工程と、を含む
ことを特徴とする床版の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の床版の製造方法であって、
前記第1工程と前記第2工程との間において、プレート状の前記地覆側面防水層の表面のうち、少なくとも前記床版本体部と、前記地覆部と、前記床版天端防水層とに接することになる面に対してグリーンカット処理を行う
ことを特徴とする床版の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の床版の製造方法であって、
前記第3工程において、前記地覆部の上部に超高強度繊維補強コンクリートを打ち重ねることにより地覆天端防水層を構築し、
前記第1工程と前記第2工程との間において、プレート状の前記地覆側面防水層の表面のうち、前記地覆天端防水層に接することになる面に対してグリーンカット処理を行う
ことを特徴とする床版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床版、床版接続工法及び、床版の製造方法に関し、特に、防水層を一体に備えるコンクリート二次製品の床版に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高速道路等の道路橋は、橋脚に架設される主桁と、主桁の上部に設置される床版と、床版の上部に設置される壁高欄とを含んで構成される。凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの浸入や漏水は、床版を劣化させる要因となる。このため、床版の新設工事や取替工事においては、床版を主桁に設置した後、床版の上面にシート系や塗膜系の防水材による防水層(以下、従前防水層と称する)が施工される。
【0003】
しかしながら、従前防水層は多層構造であり、工程が多いことから、施工不良が起きやすく、さらには、工期や工費が嵩むといった課題がある。また、従前防水層は、雨天時や多湿時には施工することができず、天候不順による工期の遅延を招くといった課題がある。また、従前防水層は、舗装打替え工事のたびに再施工しなければならない課題もある。
【0004】
このような課題を解決するコンクリート二次製品の床版が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1記載のプレキャストコンクリート床版は、工場にて型枠内に普通コンクリートを打ち込んで床版コンクリート部を構築した後、当該床版コンクリート部の上部に超高強度繊維補強コンクリート(Ultra high strength Fiber reinforced Concrete:以下、UFCとも称する)を打ち重ねてUFC防水層を構築することにより、現場での防水工を不要とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-126991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のプレキャストコンクリート床版は、床版天端の防水機能を備えているが、地覆部には防水対策が施されていない。すなわち、端部防水構造を備えていない。端部防水構造としては、壁高欄を設置した後、床版と壁高欄との接合部にシート系や塗膜系の防水材を用いる従前防水層を施工することが考えられる。しかしながら、前述したように、従前防水層は、施工不良が起きやすく、工期や工費が嵩み、さらには、天候不順の影響を受けるといった課題がある。
【0007】
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、床版の新設工事又は取替工事において、工期の短縮及び、工費の削減を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の床版(20)は、
床版本体部(21)と、
前記床版本体部(21)の橋軸直交方向の端部に一体に設けられ、前記床版本体部(21)から上方に突出する地覆部(25)と、
前記床版本体部(21)の上部を覆う超高強度繊維補強コンクリートによって形成された床版天端防水層(31)と、
前記地覆部(25)の道路側の側面を覆う超高強度繊維補強コンクリートによって形成された地覆側面防水層(33)と、を備える
ことを特徴とする。
【0009】
本開示の他の態様の床版(20)は、
前記地覆部(25)の上部を覆う超高強度繊維補強コンクリートによって形成された地覆天端防水層(32)をさらに備える
ことを特徴とする。
【0010】
本開示の他の態様の床版(20)において、
前記床版天端防水層(31)の前記地覆部(25)側の端部に拡張部(31A)が設けられるとともに、前記拡張部(31A)の端面が前記地覆側面防水層(33)の下端側の側面に面接触する
ことを特徴とする。
【0011】
本開示の床版接続工法は、上記床版(20,20’)を橋軸方向に接続する床版接続工法であって、
橋軸方向に対向する一対の前記床版(20,20’)の端部間に超高強度繊維補強コンクリートを打ち込むことにより、一対の前記床版を互いに橋軸方向に接続するとともに、前記端部間に打ち込んだ超高強度繊維補強コンクリートを防水層として機能させる
ことを特徴とする。
【0012】
本開示の製造方法は、前記床版(20)の製造方法であって、
所定の型枠に超高強度繊維補強コンクリートを打ち込むことにより、前記地覆側面防水層(33)をプレート状に構築する第1工程と、
構築したプレート状の前記地覆側面防水層(33)を浮き型枠として用い、コンクリートを打ち込むことにより、前記床版本体部(21)と前記地覆部(25)とを一体に構築する第2工程と、
構築された前記床版本体部(21)の上部に超高強度繊維補強コンクリートを打ち重ねることにより、前記床版天端防水層(31)を構築する第3工程と、を含む
ことを特徴とする。
【0013】
本開示の他の態様の製造方法は、
前記第1工程と前記第2工程との間において、プレート状の前記地覆側面防水層(33)の表面のうち、少なくとも前記床版本体部(21)と、前記地覆部(25)と、前記床版天端防水層(31)とに接することになる面に対してグリーンカット処理を行う
ことを特徴とする。
【0014】
本開示の他の態様の製造方法は、
前記第3工程において、前記地覆部(25)の上部に超高強度繊維補強コンクリートを打ち重ねることにより地覆天端防水層(32)を構築し、
前記第1工程と前記第2工程との間において、プレート状の前記地覆側面防水層(33)の表面のうち、前記地覆天端防水層(32)に接することになる面に対してグリーンカット処理を行う
ことを特徴とする。
【0015】
上記説明においては、本開示の理解を助けるために、実施形態に対応する構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本開示の技術によれば、床版の新設工事又は取替工事において、工期の短縮及び、工費の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る床版及び、壁高欄を示す模式的な斜視図である。
図2】本実施形態に係る床版及び、壁高欄の模式的な縦断面図である。
図3】(A)は、本実施形態に係る各床版を橋軸方向に接続する接続部の模式的な縦断面図である。(B)は、接続部の模式的な斜視図である。
図4】本実施形態に係る床版の製造方法を説明する模式図である。
図5】本実施形態に係る床版の製造方法を説明する模式図である。
図6】本実施形態に係る床版の製造方法を説明する模式図である。
図7】本実施形態に係る床版の製造方法を説明する模式図である。
図8】本実施形態に係る床版の製造方法を説明する模式図である。
図9】他の実施形態に係る床版及び、壁高欄の模式的な縦断面図である。
図10】他の実施形態に係る床版及び、壁高欄の模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る床版、床版接続工法及び、床版の製造方法について説明する。
【0019】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る床版20,20’及び、壁高欄50を示す模式的な斜視図である。なお、便宜的に、床版20,20’を橋軸方向Yに切断した断面図とすることにより、橋軸直交方向X(道路幅員方向)の略半分の構成については図示を省略している。また、床版20,20’及び、壁高欄50の個数や形状は、図示例に限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、複数の床版20,20’は、主桁90の上部に設置され、互いに橋軸方向Yに接続されることにより道路橋を構成する。床版20,20’は、予め工場などで製造されたコンクリート二次製品の床版、すなわち、プレキャストコンクリート床版であって、施工現場まで運搬されて設置される。床版20,20’には、主桁90の上側フランジ91に設けられたスタッドジベルを挿入する不図示のジベル孔が設けられている。床版20,20’は、スタッドジベルをジベル孔に挿入し、ジベル孔にモルタル等の充填剤を打ち込むことにより、主桁90に固結される。
【0021】
床版20,20’は、版状の床版本体部21,21’と、床版本体部21,21’の橋軸直交方向Xの端部に設けられた地覆部25,25’とを有する。地覆部25,25’は、床版本体部21,21’よりも鉛直方向Zの上方に突出する。地覆部25の高さは特に限定されないが、舗装のレベリング層や表層よりも高く形成されている。本実施形態において、床版本体部21,21’及び、地覆部25は、予め工場にて、所定の型枠内に普通コンクリートを打ち込むことにより、継ぎ目なく一体に形成される。床版本体部21,21’及び、地覆部25,25’は、PCコンクリートであってもよく、RCコンクリートであってもよい。
【0022】
床版20,20’は、UFCにより形成されたUFC防水層30,30’を有する。UFC防水層30,30’は、床版本体部21,21’の上面と、地覆部25,25’の上面と、地覆部25,25’の道路側に臨む側面とに形成されている。UFCは、鋼繊維等を配合した高強度、且つ、高耐久のコンクリートである。UFCは、透水係数が小さく、さらには高い水密性を有することから、UFC防水層30,30’を床版本体部21,21’及び、地覆部25,25’の防水構造として機能させることができる。UFC防水層30,30’の詳細については後述する。
【0023】
床版本体部21,21’の橋軸方向Yの端部には、凸型の剪断キー22,22’が設けられている。また、剪断キー22,22’には、異形鉄筋23,23’が橋軸方向Yに突出して設けられている。各床版20,20’は、床版本体部21,21’の間及び、地覆部25,25’の間に、UFC40を打ち込むことにより接続される。以下では、UFC40を「接続UFC」と称する。接続UFC40には、常温硬化型のUFCを用いることが好ましい。本実施形態において、剪断キー22,22’の一部は、異形鉄筋23,23’のかぶり部に形成されている。このような構成にすることで、床版本体部21,21’と接続UFC40との間の付着抵抗及び、剪断抵抗が高められるようになる。すなわち、各床版本体部21,21’の端部と、接続UFC40との接合強度を効果的に向上することが可能になる。
【0024】
UFC防水層30,30’の橋軸方向Yの端部には、上面視で略三角形状の凸部37,37’が橋軸直交方向Xに複数設けられている。橋軸方向Yに互いに対抗する凸部37と凸部37’と間には、前述の接続UFC40が打ち込まれる。このように、UFC防水層30,30’の打ち継ぎ面となる端部に、略三角形状の凸部37,37’を複数設けることにより、UFC防水層30,30’と接続UFC40との間の付着抵抗及び、剪断抵抗が高められるようになる。すなわち、各UFC防水層30,30’の端部と接続UFC40との接合強度を効果的に向上することが可能になる。
【0025】
壁高欄50は、予め工場などで製造されたプレキャストコンクリート壁高欄であって、施工現場まで運搬されて設置される。壁高欄50は、長手方向が橋軸方向Yに延びるように複数連結されることにより、道路橋の防護柵として機能する。
【0026】
壁高欄50は、床版20,20’を主桁90に設置した後、床版20,20’の橋軸直交方向Xの端部となる地覆部25,25’(UFC防水層30,30’)の上部に接合される。壁高欄50の接合方法は、特に限定されない。例えば、地覆部25,25’に、地覆部25,25’の天端に開口する受容穴を設け、当該受容穴に壁高欄50から下方に延びる定着筋を挿入することにより、壁高欄50を接合してもよい。壁高欄50と地覆部25,25’(UFC防水層30,30’)との隙間には、これら壁高欄50及び、地覆部25,25’を互いに固結させるために、例えば、無収縮モルタルMが充填される。なお、壁高欄50は、場所打ちコンクリート壁高欄であってもよく、或いは、鋼製壁高欄であってもよい。
【0027】
[UFC防水層]
図2は、本実施形態に係る床版20及び、壁高欄50の模式的な縦断面図である。なお、図中の符号Rは、床版本体部21のコンクリートに埋設された鉄筋を示している。
【0028】
図2に示すように、UFC防水層30は、床版天端防水層31と、地覆天端防水層32と、地覆側面防水層33とを備えている。これら床版天端防水層31、地覆天端防水層32及び、地覆側面防水層33は、好ましくは常温硬化型のUFCによって構築される。
【0029】
床版天端防水層31は、床版本体部21の上面全体を覆うように形成される。床版天端防水層31の地覆部25側の端部には、下方に向かって拡張する拡張部31Aが設けられている。地覆天端防水層32は、地覆部25の上面全体を覆うように形成される。
【0030】
地覆側面防水層33は、地覆部25の道路側に臨む側面全体を覆うプレート状に形成される。地覆側面防水層33は、略鉛直方向Zに延びる縦プレート防水部33Aと、縦プレート防水部33Aの上端から所定角度で斜めに延びる傾斜プレート防水部33Bとを備えている。これら縦プレート防水部33A及び、傾斜プレート防水部33Bは、継ぎ目なく一体に形成される。所定角度は、特に限定されないが、傾斜プレート防水部33Bの上端、すなわち地覆部25の天端が、地覆部25の鉛直立上げ部より高い位置となるよう、90度よりも大きい角度で設定される。
【0031】
傾斜プレート防水部33Bの上端側は、地覆部25よりも上方に突出する。以下では、傾斜プレート防水部33Bの地覆部25よりも上方に突出する部分33Dを「上側突出部」と称する。傾斜プレート防水部33Bの上側突出部33Dには、地覆天端防水層32の道路側の端面が隙間なく面接触する。このように、傾斜プレート防水部33Bの上側突出部33Dに、地覆天端防水層32の端面を隙間なく面接触させることで、これら傾斜プレート防水部33Bと地覆天端防水層32との継ぎ目から水等が浸入することを確実に防止することが可能になる。すなわち、凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの浸入や漏水による地覆部25の劣化が効果的に抑制されるようになる。
【0032】
縦プレート防水部33Aの下端側は、地覆部25よりも下方に延び、床版本体部21内に突出する。以下では、縦プレート防水部33Aの床版本体部21内に突出する部分33Cを「下側突出部」と称する。縦プレート防水部33Aの下側突出部33Cには、床版天端防水層31の端部に設けられた拡張部31Aの端面が隙間なく面接触する。
【0033】
ところで、縦プレート防水部33Aと床版天端防水層31との継ぎ目付近は、路面排水の導水路であり、地覆立ち上がり部や排水桝周辺からの漏水によって変状が起きやすい。本実施形態において、拡張部31Aは、床版天端防水層31の他の部分よりも鉛直方向Zに拡張して形成されている。すなわち、縦プレート防水部33Aの下側突出部33Cと、拡張部31Aの端面との接触面積を大きく確保できるように構成されている。これにより、床版天端防水部31と地覆側面防水層33との継ぎ目から水等が浸入することを確実に防止することが可能になる。すなわち、凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの浸入や漏水による床版本体部21及び、地覆部25の劣化が効果的に抑制されるようになる。
【0034】
[接続部]
図3(A)は、本実施形態に係る各床版を橋軸方向Yに接続する接続部の模式的な縦断面図である。図3(B)は、接続部の模式的な斜視図である。
【0035】
図3に示されるように、各床版20,20’は、それらの間に接続UFC40を打ち込むことにより接続される。具体的には、接続UFC40は、床版本体部21,21’の間S1、地覆部25,25’の間S2、床版天端防水層31,31’の間S3、地覆天端防水層32,32’の間S4及び、地覆側面防水層33,33’の間S5の全てに打ち込まれる。すなわち、接続UFC40が、床版天端防水層31,31’、地覆天端防水層32,32’及び、地覆側面防水層33,33と一体になって防水層として機能するように構成されている。これにより、供用期間中に各床版20,20’の接続部から床版本体部21や地覆部25に水等が浸入することを効果的に防止することが可能になる。
【0036】
以上詳述した本実施形態によれば、コンクリート二次製品の床版20,20’は、床版本体部21,21’に地覆部25,25’が一体に形成されている。これら床版本体部21,21’及び、地覆部25,25’には、UFC防水層30,30’が設けられている。UFC防水層30,30’は、床版本体部21,21’の上面と、地覆部25,25’の上面と、地覆部25,25’の道路側に臨む側面とに形成されており、床版本体部21,21’の上面と、地覆部25,25’の上面及び側面とが、UFC防水層30,30’によって全体的に覆われるように構成されている。
【0037】
すなわち、床版の新設工事や取替工事においては、工場等から施工現場に運搬された床版20,20’を主桁90に設置する床版設置工程(図4のステップS100)と、各床版20,20’の間に接続UFC40を打ち込んで橋軸方向Yに接続する床版接続工程(図4のステップS200)と、床版20,20’の地覆部25,25’に壁高欄50を設置する壁高欄設置工程(図4のステップS300)とを行うのみで、防水工を行うことなく工事を完了することがきる。
【0038】
これにより、本実施形態に係る床版20,20’によれば、シート系や塗膜系の防水材を用いる従前防水層を現場で施工する場合に比べ、工期を確実に短縮することができ、工費も効果的に削減することが可能になる。また、UFC防水層30,30’は、コンクリート二次製品として工場で構築されるため、従前防水層のような現場での施工不良のリスクも発生しない。また、雨天時や多湿時であっても工事を行えるため、天候不順に伴う工期の遅れも防止することができる。
【0039】
また、床版の取替工事においては、既設の床版を撤去した後は、図4に示す3工程のみで施工を完了できるため、工事に伴う車線規制や通行止め規制を夜間のみとすることができる。すなわち、交通規制に伴う周囲への影響を効果的に低減することが可能になる。また、従前防水層は舗装打替え工事のたびに再施工する必要があるが、UFC防水層30,30’は、舗装打替え工事を行った後も継続して使用することができる。すなわち、舗装打替え工事の工期や工費も確実に抑えることが可能になる。
【0040】
[製造方法]
次に、図5~8に基づいて、本実施形態に係る床版20の製造方法について説明する。
【0041】
図5に示す第1工程では、所定の型枠内にUFCを打ち込むことにより、プレート状の地覆側面防水層33を構築する。地覆側面防水層33のUFCを打ち込んだならば、UFCが完全に硬化するよりも前に第2工程へと進む。
【0042】
図6に示す第2工程では、UFCが完全に硬化するよりも前に、地覆側面防水層33の表面に圧力水やブラシを用いてグリーンカット処理を行う。グリーンカット処理とは、打継面に生じるレイタンスを除去するために行う作業である。
【0043】
本実施形態において、グリーンカット処理は、地覆側面防水層33が床版天端防水層31と接することになる面A1、地覆側面防水層33が地覆天端防水部32と接することになる面A2、地覆側面防水層33が床版本体部21及び地覆部25と接することになる面A3に施される。このように、地覆側面防水層33にグリーンカット処理を施すことで、地覆側面防水層33の付着性が高められるようになり、防水性能を確実に向上することが可能になる。グリーンカット処理を行ったならば、第3工程へと進む。
【0044】
図7に示す第3工程では、先に構築した地覆側面防水層33を浮き型枠として用い、所定配合の普通コンクリートを打ち込むことにより、床版本体部21及び、地覆部25を一体に構築する。なお、床版本体部21及び、地覆部25に埋設される鉄筋ついては、便宜的に図示を省略している。床版本体部21及び、地覆部25を構築する普通コンクリートを打ち込んだならば、普通コンクリートがフレッシュな状態で第4工程へと進む。
【0045】
図8に示す第4工程では、床版本体部21の上面にUFCを打ち重ねることにより床版天端防水層31を構築し、地覆部25の上面にUFCを打ち重ねることにより地覆天端防水層32を構築する。なお、これら床版天端防水層31及び、地覆天端防水層32のUFCを打ち重ねる順序は順不同である。UFCを打ち重ねるタイミングは、下地となる床版本体部21及び、地覆部25の普通コンクリートがフレッシュな状態で行う。これにより、UFCからなる床版天端防水層31及び、地覆天端防水層32と、普通コンクリートからなる床版本体部21及び、地覆部25との一体性を効果的に高めることが可能になる。
【0046】
第4工程が完了したならば、所定期間の養生を行い、床版20の製造を終了する。本実施形態では常温硬化型のUFCを用いるため、床版本体部21及び、地覆部25に用いる普通コンクリートと同様の養生を行えばよい。すなわち、床版20の生産性を効果的に向上することが可能になる。
【0047】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態において、UFC防水層30は、地覆天端防水層32を備えるものとして説明したが、図9に示されるように、UFC防水層30は、床版天端防水層31と地覆側面防水層33とを含み、地覆天端防水層32を省略して構成することも可能である。この場合、地覆部25と壁高欄50との接合部に止水材11を充填することが望ましい。止水材11を設ければ、接合部からの漏水等を効果的に防止することが可能になる。
【0049】
止水材11としては、例えば、変成シリコーン系の止水材、エポキシ樹脂系の止水材等が挙げられる。止水材11は、地覆部25と壁高欄50との接合部の道路側の端部に充填すればよい。また、地覆部25と壁高欄50との接合部のうち、止水材11よりも道路側の端部に、止水材11の端面を覆うモルタル等の保護層12を形成することが望ましい。保護層12を設ければ、供用期間中に止水材11が紫外線によって劣化することを効果的に抑えることができる。保護層12を形成するモルタルとしては、例えば、鏝塗りが可能なポリマーセメントモルタルを用いることが好ましい。
【0050】
また、上記実施形態において、床版20の製造方法は、図7に示す第3工程と、図8に示す第4工程との順序を入れ替えることも可能である。すなわち、床版天端防水層31及び、地覆天端防水層32を構築した後に、床版本体部21及び、地覆部25を構築してもよい。
【0051】
また、上記実施形態において、床版天端防水層31の端部には、拡張部31Aが設けられるものとして説明したが、図10に示すように、床版天端防水層31は、拡張部31Aを省略して形成することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
20,20’…床版,21,21’…床版本体部,22,22’… 剪断キー,23,23’…異形鉄筋,24…打ち継ぎコンクリート,25,25’…地覆部,30,30’…UFC防水層,31…床版天端防水層,31A…拡張部,32…地覆天端防水層,33…地覆側面防水層,33A…縦プレート防水部,33B…傾斜プレート防水部,37,37’…凸部,40…接続UFC,50…壁高欄,90…主桁,91…上側フランジ,M…無収縮モルタル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10