(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176600
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】鼻汁貯留器及び鼻汁吸引装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A61M1/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095291
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 浩大
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA17
4C077DD01
4C077DD11
4C077DD12
4C077DD19
4C077EE04
(57)【要約】
【課題】吸引部からの鼻汁の流出を抑制可能な鼻汁貯留器及び鼻汁吸引装置を提供することを目的とする。
【解決手段】鼻汁及び空気が流入する流入部14と、前記空気を引くための吸引部15と、を備えたケース11を備える。ケース11は、流入部14から流入した鼻汁を貯留する一次貯留部34と、空気を一次貯留部34の流入部14と離れた位置から流入部14の方向となる第1方向に案内する第1通路36と、第1通路36と繋がり、第2方向に延び、第1通路36からの空気を吸引部15の方向に導く第2通路37と、を備える。ケース11は、第2通路37と吸引部15との間に二次貯留部35を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻汁及び空気が流入する流入部と、前記空気を引くための吸引部と、を備えたケースを備え、
前記ケースは、前記流入部から流入した前記鼻汁を貯留する貯留部と、
前記空気を前記貯留部の前記流入部と離れた位置から前記流入部の方向となる第1方向に案内する第1通路と、
前記第1通路と繋がり、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2通路であって、前記第1通路からの前記空気を前記吸引部の方向に導く前記第2通路と、
を備える鼻汁貯留器。
【請求項2】
前記第1通路は、第1入口と、第1出口と、を備え、
前記第1入口は、前記流入部よりも前記吸引部に近い位置において、前記貯留部に臨んで構成されており、
前記第1通路は、前記第1入口から前記流入部に近づく方向に延び、
前記第1出口は、前記第2通路に繋がっている
請求項1に記載の鼻汁貯留器。
【請求項3】
前記第2通路は、第2入口と、第2出口と、を備え、
前記第2入口は、前記吸引部よりも前記流入部に近い位置に設けられ、
前記第2通路は、前記第2入口から前記吸引部に近づく方向に延び、
前記第2出口は、前記流入部よりも前記吸引部に近い位置に構成されている
請求項2に記載の鼻汁貯留器。
【請求項4】
前記貯留部は、前記流入部からの前記鼻汁を貯留する一次貯留部であり、
前記ケースは、前記第2通路と前記吸引部との間に二次貯留部を更に備える
請求項1に記載の鼻汁貯留器。
【請求項5】
前記吸引部は、前記ケースの周壁から前記二次貯留部に突出する筒部を備える
請求項4に記載の鼻汁貯留器。
【請求項6】
前記ケースの内部空間を、第1空間と、第2空間と、に仕切る仕切り部材を備え、
前記第1空間は、前記流入部と、前記貯留部と、前記第1通路と、を備え、
前記第2空間は、前記第2通路と、前記吸引部と、を備える
請求項1~3のうち何れか1項に記載の鼻汁貯留器。
【請求項7】
前記流入部と間隔を隔てて対向する障壁を更に備え、
前記第1入口は、前記流入部に対して前記障壁を隔てた前記吸引部側に構成されている
請求項2又は3に記載の鼻汁貯留器。
【請求項8】
前記第1通路及び前記第2通路は、前記ケースの周壁に沿って構成されている
請求項1に記載の鼻汁貯留器。
【請求項9】
請求項1に記載の鼻汁貯留器と、
前記流入部と接続されることで鼻孔に挿入されて鼻汁及び空気を吸引する吸引ヘッドと、
前記吸引部と接続されることで、前記吸引ヘッド内を負圧にするポンプと、
を備える鼻汁吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引した鼻汁を吸引して貯留する鼻汁貯留器及び鼻汁吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児や病人等の鼻詰まりを解消するための鼻汁吸引器がある(特許文献1参照)。鼻汁吸引器は、吸引ヘッドと、鼻汁貯留器と、ポンプと、を備えている。吸引ヘッドは、鼻汁貯留器に接続されている。吸引ヘッドは、鼻孔に挿入されて鼻汁を吸引する部分である。鼻汁貯留器は、吸引ヘッドで吸引した鼻汁を貯留する容器である。ポンプは、鼻汁貯留器にチューブを介して接続されている。ポンプは、鼻汁貯留器を通じて吸引ヘッドに負圧を形成する。これにより、鼻汁は、吸引ヘッドから鼻汁貯留器に流入し、その後、鼻汁貯留器に貯留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鼻汁貯留器は、貯留している鼻汁のポンプへの流入を抑制する流出抑制構造を備えている。鼻汁吸引時は、鼻汁の吸引作業に伴って、様々な姿勢となる。例えば、鼻汁貯留器は、上下左右に傾いたり、あるいは、反転姿勢となってしまう。このような場合、鼻汁貯留器内の鼻汁の流れる方向は、鼻汁貯留器の傾きや姿勢に合わせて様々である。その結果、鼻汁は、その一部が流出抑制構造を通過してしまって、ポンプに流入してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のような課題を解決する鼻汁貯留器は、鼻汁が流入する流入部と、前記空気を引くための吸引部と、を備えたケースを備える。前記ケースは、前記流入部から流入した前記鼻汁を貯留する貯留部と、前記空気を前記貯留部の前記流入部と離れた位置から前記流入部の方向となる第1方向に案内する第1通路と、前記第1通路と繋がり、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2通路であって、前記第1通路からの前記空気を前記吸引部の方向に導く前記第2通路と、を備える。
【0006】
また、以上のような課題を解決する鼻汁吸引装置は、上記の鼻汁貯留器と、前記流入部と接続されることで鼻孔に挿入されて鼻汁及び空気を吸引する吸引ヘッドと、前記吸引部と接続されることで、前記吸引ヘッド内を負圧にするポンプと、を備える。
【0007】
上記構成によれば、ケース内に、空気等を第1方向に案内する第1通路と第1方向とは異なる第2方向に延びる第2通路とを備えている。これにより、ケースの限られた内部空間の中に構成される通路を長くすることができる。したがって、流入部から吸引部に至るまでに、空気と鼻汁とをしっかりと分離でき、その結果、ポンプに鼻汁を入りにくくできる。
【0008】
上記鼻汁貯留器において、前記第1通路は、第1入口と、第1出口と、を備え、前記第1入口は、前記流入部よりも前記吸引部に近い位置において、前記貯留部に臨んで構成されており、前記第1通路は、前記第1入口から前記流入部に近づく方向に延び、前記第1出口は、前記第2通路に繋がっているように構成してもよい。上記構成によれば、流入部よりも吸引部に近い位置に第1通路の第1入口を設け、そこから流入部に近づく第1方向に第1通路を延ばすことで、第1通路を長くできる。
【0009】
上記鼻汁貯留器において、前記第2通路は、第2入口と、第2出口と、を備え、前記第2入口は、前記吸引部よりも前記流入部に近い位置に設けられ、前記第2通路は、前記第2入口から前記吸引部に近づく方向に延び、前記第2出口は、前記流入部よりも前記吸引部に近い位置に構成されているようにしてもよい。上記構成によれば、吸引部よりも流入部に近い位置に第1通路の第1出口でもある第2入口を設け、そこから吸引部に近づく第2方向に第2通路を延ばすことで、第2通路を長くできる。
【0010】
上記鼻汁貯留器において、前記貯留部は、前記流入部からの前記鼻汁を貯留する一次貯留部であり、前記ケースは、前記第2通路と前記吸引部との間に二次貯留部を更に備えるように構成してもよい。上記構成によれば、一次貯留部に加え吸引部の手前に二次貯留部を設けることで、空気と鼻汁とを、より一層しっかりと分離できる。
【0011】
上記鼻汁貯留器において、前記吸引部は、前記ケースの周壁から前記二次貯留部に突出する筒部を備えるように構成してもよい。上記構成によれば、二次貯留部から筒部への流入端となる筒部が二次貯留部に突出している。したがって、二次貯留部に貯留されている鼻汁は、筒部に対して流入しにくくなる。これにより、空気と鼻汁とを、より一層しっかりと分離できる。
【0012】
上記鼻汁貯留器において、前記ケースの内部空間を、第1空間と、第2空間と、に仕切る仕切り部材を備え、前記第1空間は、前記流入部と、前記貯留部と、前記第1通路と、を備え、前記第2空間は、前記第2通路と、前記吸引部と、を備えるように構成してもよい。上記構成によれば、貯留部、第1通路及び第2通路を構成するにあたって、仕切り部材を使用することで、構成部品の形状を簡素化することができる。これにより、各構成部品を清掃し易い形状にできる。
【0013】
上記鼻汁貯留器において、前記流入部と間隔を隔てて対向する障壁を更に備え、前記第1入口は、前記流入部に対して前記障壁を隔てた前記吸引部側に構成されているようにしてもよい。上記構成によれば、流入部から貯留部へと流れる鼻汁及び空気の勢いを、障壁に衝突させることで弱めることができる。
【0014】
上記鼻汁貯留器において、前記第1通路及び前記第2通路は、前記ケースの周壁に沿って構成されているようにしてもよい。上記構成によれば、ケースの限られた内部空間の中で、第1通路及び第2通路がケースの周壁に沿って構成されることで、できる限り通路を長くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、吸引部からの鼻汁の流出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態において、鼻汁吸引装置の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、鼻汁貯留器を蓋側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、鼻汁貯留器を蓋側から見た分解斜視図である。
【
図4】
図4に示す仕切り部材を裏側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、鼻汁が一次貯留部に貯留された状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1通路を流れる空気を説明する透視平面図である。
【
図7】
図7は、第1通路及び第2通路を流れる空気を説明する透視側面図である。
【
図8】
図8は、第2通路及び二次貯留部を流れる空気を説明する透視底面図である。
【
図9】
図9は、第1通路と第2通路の上下関係を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の鼻汁貯留器を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の鼻汁貯留器を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態の鼻汁貯留器を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態の鼻汁貯留器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図13を参照して、本発明を適用した鼻汁吸引装置1を説明する。以下の図において、X方向は鼻汁貯留器3の長手方向、Y方向は鼻汁貯留器3の幅方向、Z方向は鼻汁貯留器3の深さ(厚さ)方向である。X方向とY方向とZ方向は互いに直交している。
【0018】
〔概要〕
図1は、本発明を適用した鼻汁吸引装置1の使用状態を示す斜視図である。鼻汁吸引装置1は、鼻汁を除去するのに用いられる。鼻汁を除去するのは、呼吸を楽にしたり、鼻汁の菌が原因で生じる中耳炎や副鼻腔炎等の病気を予防したりするためである。特に乳幼児は自ら鼻をかめないので鼻詰まりになり易く、詰まった鼻汁を取り除くのに鼻汁吸引装置1は有効に用いられる。本実施形態はこの乳幼児用に適した鼻汁吸引装置1である。但し、鼻汁吸引装置1は、乳幼児用に限定されるものではなく、成人用にも適用可能である。
【0019】
鼻汁吸引装置1は、吸引ヘッド2と、鼻汁貯留器3と、ポンプ4と、を備えている。鼻汁貯留器3とポンプ4とは、可撓性を有する管体であるチューブ5で接続されている。
図2に示すように、吸引ヘッド2は、鼻の鼻孔に挿入して鼻汁を吸引する部材である。吸引ヘッド2は、鼻孔に係合可能で、鼻孔内面に密着するように、全体が柔軟性を有する樹脂材料による成形体である。吸引ヘッド2は、例えばシリコーンゴムの成形体である。吸引ヘッド2は、鼻孔に挿入される挿入部2aと、鼻孔周辺に当接する鼻当て部2bと、を備えている。挿入部2aの先端には、鼻汁及び空気を吸引するための吸引開口2cを備えている。この吸引開口2cは、鼻汁貯留器3と連通する。鼻当て部2bは、吸引ヘッド2を鼻孔の奥に挿し込み過ぎないように傘状に広がって構成されている。このような吸引ヘッド2は、鼻汁貯留器3の流入部14に取り付けられる。
【0020】
ポンプ4は、チューブ5を通じて鼻汁貯留器3及び吸引ヘッド2に負圧を発生させる電動式ポンプである。ポンプ4は、チューブ5を通じて鼻汁貯留器3内の空気を吸引して負圧を発生させる。この負圧は、鼻汁を吸引するための吸引力として作用する。その他、ポンプは、電源部、操作部、制御部等を備えている。ポンプ4は、商用電源、電池等の電源を通じて駆動部等に電力を供給する。操作部は、ポンプを始動、停止、吸引の強弱等を調整するための押しボタン、ダイヤル等で構成されている。制御部は、操作部からの入力に従って、ポンプを駆動する。
【0021】
〔第1実施形態〕
〔鼻汁貯留器3〕
図2に示すように、鼻汁貯留器3は、全体形状が直方体乃至楕円体であるケース11を備えている。ケース11において、長手方向がX方向であり、幅方向がY方向であり、深さ(厚さ)方向がZ方向である。ケース11は、蓋12と、ケース本体13と、を備えている。蓋12及びケース本体13の各々は、透光性を有するアクリル、ポリカーボネート、ABS等の樹脂材料による成形品である。第1実施形態において、蓋12及びケース本体13の各々は、透明なポリカーボネート樹脂の成形品である。
【0022】
ケース11は、流入部14と、吸引部15と、を備えている。流入部14は、吸引ヘッド2が装着される。流入部14は、蓋12に設けられている。吸引部15は、ケース本体13に設けられている。吸引部15は、チューブ5が接続される。ケース11の内部は、仕切り部材16が配置されている。ケース11の内部空間は、仕切り部材16によって、第1空間17と、第2空間18と、に区画されている(
図5参照)。第1空間17は、蓋12と、仕切り部材16と、の間に区画される上側の空間である。第2空間18は、ケース本体13と、仕切り部材16と、の間に区画される下側の空間である。第1空間17は、流入部14を備えている。第2空間18は、吸引部15を備えている。
【0023】
流入部14及び吸引部15は、X方向において、例えば相対する端部に設けられている。また、Y方向において、流入部14及び吸引部15は、例えば中央に設けられている。更に、Z方向において、流入部14は、蓋12側(上側)に設けられ、吸引部15は、ケース本体13側(下側)に設けられている。ケース11は、流入部14から吸引部15までの間に、鼻汁を貯留する貯留部と、吸引部15へ貯留部の鼻汁が流れてしまうことを抑制する流出抑制構造を備えている。貯留部は、一例として後述の一次貯留部34であり、流出抑制構造は、一例として詳細は後述する第1通路36,第2通路37、及び二次貯留部35等である。
【0024】
〔蓋12〕
図3に示す状に、蓋12は、蓋底壁21と、蓋外周壁22と、を備えている。蓋底壁21は、矩形形状乃至楕円形状であり、平板である。蓋外周壁22は、ケース11の外周壁の上側部分を構成する壁であり、蓋底壁21の周囲に設けられた環状壁である。蓋外周壁22は、X方向に延びる相対する直線状の一対の蓋外直線壁22aと、一対の蓋外直線壁22aの両端を繋ぐ相対する一対の第1蓋外円弧壁22b及び第2蓋外円弧壁22cと、を備えている。蓋外周壁22はなだらかな曲面で構成されている。蓋底壁21の内面であって、その周囲には、係合部20が設けられている。係合部20は、例えば環状段部である。更に、一対の蓋外直線壁22aのX方向における中程は、指掛け部19を備えている。指掛け部19は、外側に突出しており、ケース本体13から蓋12を取り外す際に指が掛けられる部分である。
【0025】
第1蓋外円弧壁22bは、流入部14を備えている。流入部14は、第1蓋外円弧壁22bのY方向の中央(頂部)に設けられている。流入部14は、第1蓋外円弧壁22bから外方に突出する流入側接続筒部14aと、第1蓋外円弧壁22bから内方に突出する流入側筒部14bと、を備えている。流入側筒部14bは、流入側筒部14bと一体の蓋側支持台14cによって蓋底壁21に一体に設けられている。蓋側支持台14cの壁面は、凹凸のない面である。蓋側支持台14cは、流入側筒部14bと蓋底壁21との間に隙間が形成されないようにして、構造を簡素化している。これにより、蓋12は、細部に至るまで清掃し易くなる。流入側筒部14bは、蓋底壁21と離れて位置している。
【0026】
蓋底壁21は、X方向の中程に、Y方向に延びる障壁23が立設されている。障壁23は、蓋底壁21に対して垂直な垂直壁であり、流入側筒部14bと間隔を隔てて対向している。障壁23には、流入側筒部14bから流入する鼻汁及び空気等が最初に衝突する壁である。障壁23に衝突した鼻汁は、その後、滴下する。空気は、後述の第1通路36の方向へ流れる。障壁23の先端は、ケース本体13の外底壁26と接触せず、離間し、空気の流路を確保している。また、蓋外周壁22の先端は、ケース本体13の外周壁27と嵌合する嵌合外壁24を備えている。
【0027】
〔ケース本体13〕
ケース本体13は、外底壁26と、外周壁27と、を備えている。外底壁26は、矩形形状乃至楕円形状であり、平板である。外周壁27は、ケース11の周壁の下側部分を構成する壁であり、外底壁26の周囲に立設された環状壁である。外周壁27は、X方向に延びる相対する一対の外直線壁27aと、一対の外直線壁27aの両端を繋ぐ相対する一対の第1外円弧壁27b及び第2外円弧壁27cと、を備えている。一対の外直線壁27aは、一対の蓋外直線壁22aと対応し、第1外円弧壁27bは、第1蓋外円弧壁22bに対応し、第2外円弧壁27cは、第2蓋外円弧壁22cと対応する。外周壁27はなだらかな曲面で構成されている。更に、第1外円弧壁27bには、頂部に内側に突出して位置決め突部30aが設けられている。位置決め突部30aは、仕切り部材16の位置決め凹部30bと係合して位置決めを行う。第2外円弧壁27cは、吸引部15を備えている。
【0028】
吸引部15は、X方向において、流入部14とは反対側に位置する。吸引部15は、第2外円弧壁27cのY方向の中央(頂部)に設けられている。吸引部15は、第2外円弧壁27cから外方に突出する吸引側接続筒部15aと、第2外円弧壁27cから内方に突出する吸引側筒部15bと、を備えている。吸引側筒部15bは、吸引側筒部15bと一体の支持台15cによって外底壁26に一体に設けられている。支持台15cの壁面は、凹凸のない面である。支持台15cは、吸引側筒部15bと外底壁26との間に隙間が形成されないようにして、構造を簡素化している。これにより、ケース本体13は、細部に至るまで清掃し易くなる。吸引側筒部15bは、外底壁26と離れて位置している。
【0029】
外周壁27の先端は、蓋12の蓋外周壁22と嵌合する嵌合内壁28を備えている。また、外周壁27の内面は、仕切り部材16の周縁部が係合する係合段部29を備えている。なお、嵌合内壁28の外周には、水密性を確保するためパッキン25が配置されている。パッキン25は、一例として弾性を有する環状のパッキンである。
【0030】
〔仕切り部材16〕
図3及び
図4に示すように、仕切り部材16は、内底壁31と、内周壁32と、フランジ33と、を備えている。
図5に示すように、仕切り部材16は、蓋12との間に第1空間17を構成し、ケース本体13との間に第2空間を構成する。第1空間17は、流入部14から流入した鼻汁を最初に貯留する貯留部としての一次貯留部34を備える。第2空間18は、一次貯留部34を流出し、かつ吸引部15から流出してしまう直前で鼻汁を貯留する二次貯留部35を備える。また、第1空間17は、一次貯留部34から二次貯留部35に向う空気等が流れる第1通路36を備える。第2空間18は、第1通路36に繋がり、二次貯留部35に向う鼻汁等が流れる第2通路37を備える(
図6~
図8参照)。
【0031】
内底壁31は、高さの異なる第1内底部31aと、第2内底部31bと、接続壁部31cと、を備えている。第1内底部31aは、蓋12から見て深い深底を構成し、第2内底部31bは、蓋12から見て浅い浅底を構成する。仕切り部材16がケース本体13に配置されたとき、第1内底部31aは、ケース本体13の外底壁26の内面に当接する。第2内底部31bは、外底壁26の内面に対して離間する。第1内底部31aと第2内底部31bとの間は、接続壁部31cで繋がっている。接続壁部31cは、第1内底部31a及び第2内底部31bに対して垂直な垂直線壁である。又は、蓋12側から見たとき、接続壁部31cは、第1内底部31aとなす角が鈍角となる傾斜壁である。接続壁部31cの位置は、X方向において、第1外円弧壁27bよりも第2外円弧壁27cに偏った位置に設けられている。第1内底部31a及び第2内底部31bと蓋12との間の空間は、一次貯留部34である。第2内底部31bと外底壁26との間は、二次貯留部35である。
【0032】
一次貯留部34は、鼻汁が主として貯留される主貯留部であるため、副貯留部である二次貯留部35よりも大きい空間で構成されている。また、一次貯留部34の中でも第1内底部31aの第1部分は、流入側筒部14b及び障壁23が位置し、鼻汁が主として貯留される空間である。第2内底部31bの第2部分は、ケース11の姿勢が変化することで、貯留されている鼻汁の一部が第1内底部31aの第1部分から接続壁部31cを伝って流れる空間である。深底の第1部分には、障壁23が位置することで、第2部分は、流入側筒部14bから飛散する鼻汁が直接的に届きにくく構成されている。
【0033】
内周壁32は、環状壁である。内周壁32は、蓋外周壁22及び外周壁27の内側であって離間して位置する。そして、第1空間17において、内周壁32で囲まれた内側の空間には、一次貯留部34が構成される。内周壁32は、X方向に延びた相対する一対の内直線壁32aと、一対の内直線壁32aの両端を繋ぐ相対する一対の第1内円弧壁32b及び第2内円弧壁32cと、を備えている。第1内円弧壁32bは、流入側筒部14b及び蓋側支持台14cを逃げる凹部38aを備えている。ケース本体13の開口が蓋12によって閉塞される際に、凹部38aには、流入側筒部14bが進入し係合する。
【0034】
内周壁32の蓋12側の蓋側端部32dは、高さが揃って構成されている。蓋側端部32dは、仕切り部材16がケース本体13に配置され蓋12が配置されたとき、蓋底壁21の内面にある係合部20に係合する。これにより、一次貯留部34は、流入部14を除いてほぼ密閉空間となる。一次貯留部34の外側には、第1通路36が区画される。
【0035】
図4に示すように、第2内円弧壁32cは、第2内底部31bにおいて、大きく切り欠いた切欠部38bを備えている。切欠部38bは、ケース本体13に仕切り部材16が配置された際に、吸引側筒部15bが進入し係合する。切欠部38bは、吸引側筒部15bに対して大きい開口である。また、第2内円弧壁32cは、第1内底部31aと高さが揃っており、ケース本体13に仕切り部材16が配置された際に、外底壁26に当接する。これにより、第2内円弧壁32cの内側は、二次貯留部35が構成される。
【0036】
フランジ33は、内周壁32から外方に環状に張り出している片である。フランジ33の先端は、外周壁27が備える係合段部29に係合支持される。フランジ33の位置は、第1空間17と第2空間18との境界となる。また、フランジ33は、Z方向において、第2内底部31bと同じ高さである。フランジ33において、第1内円弧壁32bに相当する位置に、位置決め突部30aと係合する位置決め凹部30bが設けられている。仕切り部材16は、ケース本体13に配置された際に位置決め突部30aと位置決め凹部30bとが係合することで位置決めされる。
【0037】
フランジ33は、第1通路36と第2通路37とを構成する。第1通路36及び第2通路37は、外周壁27及び蓋外周壁22と内周壁32との間に設けられる。そして、フランジ33境界にして、第1空間17となる蓋12側が第1通路36であり、第2空間18となるケース本体13側が第2通路37である。第1通路36及び第2通路37の各々は、ケース11の外周部分に位置する環状の通路である。第1通路36と第2通路37とは、上下に並んでいる(
図9参照)。第1通路36及び第2通路37は、ポンプ4に吸引される鼻汁及び空気の流れる流路である。また、第1通路36は、一次貯留部34であって、吸引部15側に至った鼻汁及び空気を流入部14の第1方向に導く流路である。第2通路37は、第1通路36と繋がり、鼻汁及び空気を吸引部15より流入部14に近い位置から吸引部15がある二次貯留部35の第2方向に導く流路である。
【0038】
流入部14から流入した鼻汁及び空気を含む流体の中で、鼻汁は、大部分が一次貯留部34に貯留される。そして、少量の鼻汁が空気とともに、又は鼻汁貯留器3の傾きによって第1通路36に流れる。第2通路37は、第1通路36よりも下流に位置する。このため、第2通路37には、空気とともに第1通路36より更に少量の鼻汁が流れる。そして、第2通路37より下流に位置する二次貯留部35には、空気とともに第2通路37よりも更に少量の鼻汁が届く。
【0039】
具体的に、第1通路36は、仕切り部材16のフランジ33と、フランジ33より蓋12側の内周壁32と、ケース11の周壁と、に囲まれて構成された通路である。第2通路37は、仕切り部材16のフランジ33と、フランジ33よりケース本体13側の内周壁32と、ケース11の周壁と、に囲まれて構成された通路である。
【0040】
第2内円弧壁32cと一次貯留部34の第2内底部31bとのコーナ部には、第2内円弧壁32cを内外に貫く貫通孔が設けられている。この貫通孔は、第1通路36の第1入口36aである。第1入口36aは、流入部14と離れた位置に設けられている。例えば、第1入口36aは、流入部14より吸引部15に近い位置、本実施形態では吸引部15に近接した位置に設けられている。
【0041】
また、フランジ33には、上下に貫く貫通孔が設けられている。この貫通孔は、第1通路36の第1出口36bである。また、この貫通孔は、フランジ33の先端を開口端としたU字形状の貫通孔である。そして、この貫通孔は、人差し指等の指先が係合可能な大きさであり、当該部分をなだらかな曲線形状によって洗浄し易く構成されている。第1出口36bは、第2通路37の第2入口37aでもある。第1出口36b及び第2入口37aは、吸引部15よりも流入部14に近い位置、本実施形態では第1内円弧壁32bと一対の内直線壁32aとの境界位置のあたりに設けられている。
【0042】
切欠部38bを構成する第2内円弧壁32c端部は、吸引側筒部15b及び支持台15cと大きく離間し、ここが第2通路37における二次貯留部35への第2出口37bとなる。第2出口37bは、流入部14よりも吸引部15に近い位置に設けられている。
【0043】
〔組立方法〕
鼻汁貯留器3は、ケース11を、蓋12と、ケース本体13と、仕切り部材16と、に分解可能である。鼻汁貯留器3は、分解された状態で清掃される。そして、先ず、ケース本体13には仕切り部材16が配置される。具体的に、第1外円弧壁27bと第1内円弧壁32bとを位置合わせし、第2外円弧壁27cと第2内円弧壁32cとを位置合わせする。そして、切欠部38bには、吸引側筒部15b及び支持台15cを進入させ、位置決め突部30aと位置決め凹部30bとを係合させる。
【0044】
なお、仕切り部材16は、ケース本体13に正しく配置されないとき、内周壁32が吸引側筒部15b及び支持台15cや位置決め突部30aに当たってケース本体13に収まらない。
【0045】
次いで、ケース本体13には、仕切り部材16上に蓋12が配置される。具体的に、第1外円弧壁27bに第1蓋外円弧壁22bとを位置合わせし、第2外円弧壁27cと第2蓋外円弧壁22cとを位置合わせする。そして、凹部38aに流入側筒部14b及び蓋側支持台14cを係合させる。これにより、嵌合内壁28には嵌合外壁24が嵌合される。そして、障壁23は、一次貯留部34内に位置する。なお、蓋12は、ケース本体13に正しく配置されないとき、流入側筒部14b及び蓋側支持台14cが第2内円弧壁32cに当たる等して閉塞されない。
【0046】
以上のように構成された鼻汁貯留器3は、ケース11の内部空間に第1空間17と第2空間18とが区画される。第1空間17には、流入側筒部14bと、一次貯留部34と、第1通路36と、が構成される。流入側筒部14bは、一次貯留部34の第1内底部31aの第1部分に位置される。第1通路36は、内周壁32を介して一次貯留部34の周囲で蓋12側に構成される。更に、一次貯留部34には、障壁23が流入側筒部14bと離間し対向した状態で位置する。また、第2空間18には、第2通路37と、二次貯留部35と、吸引側筒部15bと、が構成される。第2通路37は、一次貯留部34の周囲で第1通路36の下側に構成される。二次貯留部35は、第2通路37の内側に位置される。そして、吸引側筒部15bは、二次貯留部35に位置される。
【0047】
〔第1実施形態の作用〕
鼻汁貯留器3は、ポンプ4と接続されたチューブ5の端部が吸引側接続筒部15aに接続される。また、流入側接続筒部14aに接続された吸引ヘッド2が鼻孔に係合される。ポンプ4が起動されると、ケース11を通じて吸引ヘッド2に負圧が形成され、鼻汁及び空気の吸引が開始される。すると、吸引ヘッド2からポンプ4の方向に流れる空気流れが形成される。
【0048】
図5に示すように、空気流と共に鼻汁は、矢印D1に示すように、流入側筒部14bから一次貯留部34に流入する。この際、鼻汁の一部は、一次貯留部34において、流入側筒部14bから第1内底部31a上の第1部分に滴下する。また、鼻汁の一部は、飛沫となって、障壁23に当たり、第1内底部31aに滴下する。そして、先ず、鼻汁は、一次貯留部34の中でも、深底の第1内底部31aの第1部分に貯留される。
図5中、第1内底部31aの第1部分に貯留された貯留鼻水を「6」として示す。
【0049】
空気は、矢印D2に示すように、障壁23を迂回して、浅底の第2内底部31bの方向に流れる。この空気には、若干の鼻汁も含まれることもある。次いで、
図6に示すように、空気は、矢印D2に示すように、第1入口36aから第1通路36に流れる。そして、
図7に示すように、空気は、矢印D2に示すように、第1出口36b及び第2入口37aから第2通路37に流れる。そして、
図8に示すように、空気は、矢印D2に示すように、二次貯留部35へと流れる。その後、空気は、吸引側筒部15b及びチューブ5を通じてポンプ4の方向へと流れる。
【0050】
なお、本実施形態では、吸引部15の周辺から流入部14へ向かって近づく方向が第1方向である。具体的に、第1入口36aから第1出口36b及び第2入口37aへ空気が流れる方向が第1方向である。また、流入部14の周辺から吸引部15へ向かって近づく方向が第2方向である。具体的に、第1出口36b及び第2入口37aから第2出口37bへ空気が流れる方向が第2方向である。
【0051】
ここで、鼻汁貯留器3は、使用している最中、上下左右に傾いたり、反転姿勢となってしまう。このように不規則に姿勢が変化していく中で、一次貯留部34に貯留されている鼻汁の一部は、矢印D2方向の空気流に乗って、第1内底部31aの第1部分から第2内底部31bの第2部分へと流れる。そして、少しずつ鼻汁は、矢印D2方向の空気流に乗って、第1通路36及び第2通路37を通じて二次貯留部35へと流れてしまう。一次貯留部34から二次貯留部35までの間には、第1通路36及び第2通路37が存在し通路が長い。このため、二次貯留部35へ鼻汁は、到達しにくい。鼻汁が二次貯留部35に貯留されることもあっても、吸引側筒部15bは、二次貯留部35内に突出し支持台15cによって外底壁26から離間している。このため、二次貯留部35の鼻汁は、吸引側筒部15bから排出されにくくなる。
【0052】
〔第1実施形態の効果〕
以上のような鼻汁吸引装置1によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1-1)ケース11内に、空気等を第1方向に案内する第1通路36と第2方向に案内する第2通路37とを備えている。これにより、ケース11の限られた内部空間の中に構成される通路を長くすることができる。したがって、流入部14から吸引部15に至るまでに、空気と鼻汁とをしっかりと分離でき、その結果、ポンプ4に鼻汁を入りにくくできる。
【0053】
(1-2)流入部14よりも吸引部15に近い位置に第1通路36の第1入口36aを設け、そこから流入部14に近づく第1方向に第1通路36を延ばすことで、第1通路36を長くできる。
【0054】
(1-3)吸引部15よりも流入部14に近い位置に第1通路36の第1出口36bでもある第2入口37aを設け、そこから吸引部15に近づく第2方向に第2通路37を延ばすことで、第2通路37を長くできる。
【0055】
(1-4)一次貯留部34に加え吸引部15の手前に二次貯留部35を設けることで、空気と鼻汁とを、より一層しっかりと分離できる。
(1-5)二次貯留部35から吸引側筒部15bへの流入端となる吸引側筒部15bが二次貯留部35に突出している。したがって、二次貯留部35に貯留されている鼻汁は、吸引側筒部15bに対して流入しにくくなる。これにより、空気と鼻汁とを、より一層しっかりと分離できる。
【0056】
(1-6)一次貯留部34、二次貯留部35、第1通路36及び第2通路37を構成するにあたって、仕切り部材16を使用することで、構成部品の形状を簡素化することができる。これにより、各構成部品を清掃し易い形状にできる。
【0057】
(1-7)流入部14から一次貯留部34へと流れる鼻汁及び空気の勢いを、障壁23に衝突させることで弱めることができる。流入部14からの鼻汁が直接第1通路36に流入することを抑制できる。
【0058】
〔第2実施形態〕
第1実施形態の鼻水貯留器3は、ケース11の内部空間において、一次貯留部34と二次貯留部35とがX方向に並び、一次貯留部34の周囲に第1通路36が区画され、第1通路36と第2通路37とがZ方向に並んでいる。
図10及び
図11に示すように、第2実施形態における鼻汁貯留器40は、全体がボトル形状であって、径方向に一次貯留部47、第1通路48、第2通路49が並んで構成されている。すなわち、鼻汁貯留器40は、ボトル形状のケース41を備えている。ケース41は、蓋42と、ケース本体43と、を備えている。蓋42は、半球形状を有する。ケース本体43は、全体が有底筒形状を有している。また、ケース41の内部空間には、仕切り部材46が配置される。
【0059】
蓋42は、頂部に流入部44を備えている。流入部44は、吸引ヘッド2が接続される流入側接続筒部14aを備えている。仕切り部材46は、ケース本体43の中心部に配置される筒部51と、仕切り板52と、を備えている。仕切り板52は、円板であり、その中央に、筒部51が設けられている。筒部51は、その内側に、鼻汁を最初に貯留する一次貯留部47を構成する。筒部51は、ケース本体43に挿入されたとき、中央において、ケース本体43の底壁56から蓋42の方向に延びる。そして、筒部51の筒端は、切り欠かれ、底壁56に突き当たり、第1入口48aを構成する。筒部51の外側は、第1通路が構成される。仕切り板52の外周端は、ケース本体43に挿入され蓋42が配置されたとき、蓋42の内面に当接する。
【0060】
ケース本体43は、底壁56と、外周壁57と、内周壁58と、を備えている。外周壁57及び内周壁58は、底壁56に対して一体に設けられている。また、ケース本体43は、底壁56の近くに吸引部45を備えている。吸引部45は、吸引側接続筒部45aを備えている。そして、ケース本体43に仕切り部材46が挿入されると、筒部51と内周壁58との間には第1通路48が構成される。また、外周壁57と内周壁58との間は、第2通路49が構成される。第1通路48は、一次貯留部47の外周に位置する環状通路である。第2通路49は、第1通路48の外周に位置する環状通路である。第2通路49において、底壁56の近傍には、吸引部45が位置する。筒部51の筒端は、切り欠かれ、第1通路48の第1入口48aが構成されている。内周壁58の先端は、筒部51との間において、第1通路48の第1出口48bである。また、内周壁58の先端は、外周壁57との間において、第2通路49の第2入口49aが構成されている。仕切り板52の下側は、第1出口48bと第2入口49aとを繋ぐ接続空間である。第2通路49において、吸引部45の開口は、第2出口49bである。なお、第2実施形態では、第1実施形態における二次貯留部35は省略している。
【0061】
〔作用〕
第2実施形態においても、ポンプ4と接続されたチューブ5の端部が吸引側接続筒部45aに接続される。また、流入側接続筒部44aに接続された吸引ヘッド2が鼻孔に係合される。ポンプ4が起動されると、ケース41を通じて吸引ヘッド2に負圧が形成され、鼻汁及び空気の吸引が開始される。すると、吸引ヘッド2からポンプ4の方向に流れる空気流が形成される。
図11に示すように、空気流と共に鼻汁は、矢印D1に示すように、流入部44から一次貯留部47に流入する。
図11中、一次貯留部47に貯留された貯留鼻水を「6」として示す。
【0062】
空気は、矢印D2に示すように、一次貯留部47の底壁56の近くから第1入口48aを通じて第1通路48に流入する。この空気には、若干の鼻汁も含まれることもある。空気は、第1通路48を流れ、第1出口48bから第2通路49の第2入口49aに流入する。そして、空気は、第2通路49を第2出口49bに向かって流れる。そして、空気は、吸引部45からチューブ5を通じてポンプ4の方向へと流れる。
【0063】
なお、第2実施形態では、吸引部45側から流入部44に近づく方向が第1方向である。具体的に、第1入口48aから第1出口48bへ空気が流れる方向が第1方向である。また、流入部44側から吸引部45に近づく方向が第2方向である。具体的に、第2入口49aから第2出口49bへ空気が流れる方向が第2方向である。
【0064】
ここで、鼻汁貯留器40は、使用している最中、不規則に姿勢が変化する。その中で、一次貯留部47に貯留されている鼻汁の一部は、矢印D2方向の空気流に乗って、一次貯留部47から第1通路48へと流れる。そして、少しずつ鼻汁は、矢印D2方向の空気流に乗って、第1通路48及び第2通路49を通じて吸引部65へと流れてしまう。この点、一次貯留部47から吸引部65までの間には、第1通路48及び第2通路49が存在し通路が長い。このため、鼻汁は、吸引部45から排出されにくくなる。
【0065】
〔第2実施形態の効果〕
以上のような鼻汁吸引装置によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(2-1)ケース41内に、空気等を第1方向に案内する第1通路48と第2方向に案内する第2通路49とを備えている。これにより、ケース41の限られた内部空間の中に構成される通路の通路を長くすることができる。したがって、流入部44から吸引部45に至るまでに、空気と鼻汁とをしっかりと分離でき、その結果、ポンプ4に鼻汁を入りにくくできる。
【0066】
(2-2)流入部44よりも吸引部45に近い位置に第1通路48の第1入口48aを設け、そこから流入部44に近づく第1方向に第1通路48を延ばすことで、第1通路48を長くできる。また、吸引部45よりも流入部44に近い位置に第2入口49aを設け、そこから吸引部45に近づく第2方向に第2通路49を延ばすことで、第2通路49を長くできる。
【0067】
〔第3実施形態〕
図12及び
図13に示すように、第3実施形態における鼻汁貯留器60は、一次貯留部67の下側に第1通路68、第2通路69、二次貯留部73が並んで構成されている。すなわち、鼻汁貯留器60は、直方体形状のケース61を備えている。ケース61は、蓋62と、ケース本体63と、を備えている。また、ケース61の内部空間には、仕切り部材66が配置される。蓋62は、側壁62aに流入部64を備えている。流入部64は、ケース本体63の側壁63bであって底壁63aの近くから外方に突出する流入側接続筒部64aと、側壁63bから内方に突出する流入側筒部64bと、を備えている。
【0068】
ケース本体63は、側壁63bの底壁63aの近傍に吸引部65を備えている。吸引部65は、側壁から外方に突出する吸引側接続筒部65aと、側壁から内方に突出する吸引側筒部65bと、を備えている。また、ケース本体63は、吸引側筒部65bの上側に、仕切り板71が設けられている。仕切り板71は、ケース本体63の底壁に対して平行に離間して設けられている。
【0069】
仕切り部材66は、ケース本体63に嵌合される板材である。仕切り部材66は、第1横板部66aと、第1縦板部66bと、第2横板部66cと、第2縦板部66dと、第3横板部66eと、を備えている。仕切り部材66は、ケース本体63に嵌合されたとき、蓋62側に一次貯留部67を構成する。一次貯留部67において、第2横板部66cの部分に深底の第1部分を構成し、第3横板部66eの部分に浅底の第2部分を構成する。第3横板部66eの端部には、第1通路68の第1入口68aを構成するための切欠部が設けられている。第2縦板部66dは、ケース本体63に配置された状態で、仕切り板71の先端部と離間する。
【0070】
第3横板部66eの下側は、第1通路68と、第2通路69と、二次貯留部73が構成される。第1通路68は、第3横板部66eと仕切り板71との間に構成される。第3横板部66eの端部は、第1通路68の第1入口68aが構成される。第2縦板部66dと仕切り板71の先端部との間は、第1出口68bが構成される。第1出口68bは、第2通路69の第2入口69aである。第2通路69は、仕切り板71とケース本体63の底壁63aとの間に構成される。ケース本体63の底壁において、吸引側筒部65bの近くに堰となるリブ72が設けられている。第2通路69は、リブ72の部分が第2出口69bである。リブ72と吸引側筒部65bとの間は、二次貯留部73が構成される。リブ72は、第2通路69から第2出口69bを通じて二次貯留部73へ流れにくくする障害物である。
【0071】
〔作用〕
第3実施形態においても、ポンプ4と接続されたチューブ5の端部が吸引側接続筒部65aに接続される。また、流入側接続筒部64aに接続された吸引ヘッド2が鼻孔に係合される。ポンプ4が起動されると、ケース61を通じて吸引ヘッド2に負圧が形成され、鼻汁及び空気の吸引が開始される。すると、吸引ヘッド2からポンプ4の方向に流れる空気流が形成される。
図12に示すように、空気流と共に鼻汁は、矢印D1に示すように、流入部64から一次貯留部67に流入する。
図13中、一次貯留部67に貯留された貯留鼻水を「6」として示す。
【0072】
空気は、矢印D2に示すように、一次貯留部67の第3横板部66e上の第2部分から第1入口68aを通じて第1通路68に流入する。この空気には、若干の鼻汁も含まれることもある。空気は、第1通路68を流れ、第1出口68bに至り同位置の第2入口69aから第2通路69に流入する。そして、空気は、第2通路69を第2出口69bに向かって流れる。そして、空気は、二次貯留部73を通じて吸引部65からチューブ5を通じてポンプ4の方向へと流れる。
【0073】
なお、第3実施形態でも、吸引部65側から流入部64に近づく方向が第1方向である。具体的に、第1入口68aから第1出口68bへ空気が流れる方向が第1方向である。また、流入部64側から吸引部65に近づく方向が第2方向である。具体的に、第2入口69aから第2出口69bへ空気が流れる方向が第2方向である。
【0074】
ここで、鼻汁貯留器60は、使用している最中、不規則に姿勢が変化する。その中で、一次貯留部67に貯留されている鼻汁の一部は、矢印D2方向の空気流に乗って、一次貯留部67から第1通路68へと流れる。そして、少しずつ鼻汁は、矢印D2方向の空気流に乗って、第1通路68及び第2通路69を通じて二次貯留部73へと流れてしまう。この点、一次貯留部67から二次貯留部73までの間には、第1通路68及び第2通路69が存在し通路が長い。このため、二次貯留部73の鼻汁は、吸引部65から排出されにくくなる。
【0075】
〔第3実施形態の効果〕
以上のような鼻汁吸引装置によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(3-1)ケース61内に、空気等を第1方向に案内する第1通路68と第2方向に案内する第2通路69とを備えている。これにより、ケース61の限られた内部空間の中に構成される通路の通路を長くすることができる。したがって、流入部64から吸引部65に至るまでに、空気と鼻汁とをしっかりと分離でき、その結果、ポンプ4に鼻汁を入りにくくできる。
【0076】
(3-2)流入部64よりも吸引部65に近い位置に第1通路68の第1入口68aを設け、そこから流入部64に近づく第1方向に第1通路68を延ばすことで、第1通路68を長くできる。また、吸引部65よりも流入部64に近い位置に第2入口69aを設け、そこから吸引部65に近づく第2方向に第2通路69を延ばすことで、第2通路69を長くできる。
【0077】
(3-3)一次貯留部67に加え吸引部65の手前に二次貯留部73を設けることで、空気と鼻汁とを、より一層しっかりと分離できる。
〔変形例〕
なお、第1実施形態~第3実施形態の鼻汁吸引装置は、更に、以下のように適宜変更して実施することもできる。各実施形態は、上記実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0078】
・第1実施形態において、第1通路36は、ケース11の周壁の内側に沿って設けられていなくてもよい。一例として、第1通路36は、一次貯留部34の方向に入り込むように湾曲した形状であったり、波線形状であってもよい。すなわち、第1通路36は、一次貯留部34から流入部14に向う通路であればその途中で蛇行していてもよい。第1通路36において、第1入口36aの位置は、流入部14から離れていれば、その位置は特に限定されるものではない。
【0079】
また、第2通路37も、一次貯留部34の方向に湾曲した形状であったり、波線形状であってもよい。すなわち、第2通路37は、第1通路36が延びる第1方向と異なる方向に延びていればよい。例えば、第2通路37は、第1通路36に対して交差するように延びていてもよい。また、第2通路37は、その途中で蛇行していてもよい。このように構成された第1通路36及び/又は第2通路37は、ケース11の周壁の内側に沿って設ける場合よりも、更に通路を長くすることができる。
【0080】
・第1実施形態において、蓋12に設けた障壁23は、蓋底壁21に対して垂直壁でなくてもよい。例えば、障壁23は、流入側筒部14bの方向に傾いた傾斜壁であってもよいし、接続壁部31cの方向に傾いた傾斜壁であってもよい。また、障壁23は、平面視又は底面視において、M字形状又はW字形状の壁であってもよい。この場合、M字やW字の谷部分が流入側筒部14bの方向を向くことが好ましい。これにより、流入側筒部14bからの空気流のD方向の鼻水の勢いを弱めることができる。更に、障壁23は、1つではなく複数であってもよい。例えば、複数の障壁は、間に隙間を設けながらY方向に一列に並んで構成してもよいし、間に隙間を設けながらX方向に変位させて設けるようにしてもよい。更に、障壁23は、ケース本体13の一対の外直線壁27a及び/又は蓋12の一対の蓋外直線壁22aに流入部14と対向するように設けてもよい。なお、障壁23を省略してもよい。例えば、障壁23を省略して、接続壁部31cを流入側筒部14bに対して対向する立壁として構成してもよい。
【0081】
・第2実施形態においても筒部51の内壁に、流入部44と対向する障壁を設けるようにしてもよい。筒部51において、障壁は、鼻汁が流下する隙間を残しておけばよい。また、筒部51の内壁に、底壁56と平行な柵であって、かつ柵を構成する所定幅の格子部材(手すり子)が互いに平行に又は交差するように並ぶ柵のような障壁を設けてもよいし、格子部材が十字形状の柵のような障壁を設けてもよい。更に、第3実施形態において、蓋62の内面に第2横板部66cの方向に延びる障壁を設けるようにしてもよい。
【0082】
・第1実施形態において、仕切り部材16は、省略してもよい。この場合、蓋12とケース本体13とを組み合わせて、一次貯留部34、第1通路36、第2通路37、二次貯留部35が構成されるように、蓋12とケース本体13を構成することになる。
【0083】
第2実施形態においても、仕切り部材46は、省略してもよい。この場合、蓋42とケース本体43とを組み合わせて、一次貯留部47、第1通路48、第2通路49が構成されるように、蓋42とケース本体43を構成することになる。
【0084】
第3実施形態においても、仕切り部材66は、省略してもよい。この場合、蓋62とケース本体63とを組み合わせて、一次貯留部67、第1通路68、第2通路69、二次貯留部73が構成されるように、蓋62とケース本体63を構成することになる。
【0085】
・第1実施形態において、流入部14は、流入側筒部14bを省略して、一次貯留部34側に突出部が設けられない構成としてもよい。これにより、蓋12の構成を簡素にでき、清掃し易い形状にできる。また、吸引部15は、吸引側筒部15bを省略し、二次貯留部35側に突出部が突出しない構成としてもよい。これにより、ケース本体13の構成を簡素にでき、清掃し易い形状にできる。
【0086】
第2実施形態において、流入部44は、蓋42の内側である一次貯留部47の方向に流入側筒部が突出する構成であってもよい。吸引部45も、内側に流出突部が突出する構成としてもよい。
【0087】
第3実施形態において、流入部64は、流入側筒部64bを省略して、一次貯留部67側に突出部が突出しない構成としてもよい。これにより、蓋62の構成を簡素にでき、清掃し易い形状にできる。また、吸引部65は、吸引側筒部65bを省略して二次貯留部73側に突出部が突出しない構成としてもよい。これにより、ケース本体63の構成を簡素にでき、清掃し易い形状にできる。
【0088】
・第1実施形態において、二次貯留部35は、省略する構成としてもよい。この場合、第2通路37を吸引側筒部15bの位置に延ばすように、仕切り部材16の内周壁32を吸引側筒部15bの位置まで延ばせばよい。第2通路37の第2出口37bは、吸引側筒部15bの開口となる。また、第3実施形態において、リブ72を省略し、第2通路69の第2出口69bと二次貯留部73との境界を区別しない構成としてもよい。
【0089】
・第1実施形態において、第1出口36b及び第2入口37aを構成するフランジ33の貫通孔の位置は、第1内円弧壁32bのY方向の中央(頂部)に相当する位置等に設けてもよい。
【0090】
・第1実施形態において、流入部14は、第1蓋外円弧壁22bのY方向の中央(頂部)の位置以外に設けてもよい。例えば、流入部14は、一対の蓋外直線壁22aの何れかの位置又は蓋底壁21の何れかの位置に設けてもよい。更に、流入部14は、ケース本体13の第1外円弧壁27bの何れかの位置又は一対の外直線壁27aの何れかの位置に設けてもよい。
【0091】
第1実施形態において、吸引部15は、第2外円弧壁27cのY方向の中央(頂部)の位置以外に設けてもよい。例えば、吸引部15は、一対の外直線壁27aの何れかの位置又は外底壁26の何れかの位置に設けてもよい。更に、吸引部15は、第2蓋外円弧壁22cの何れかの位置又は一対の蓋外直線壁22aの何れかの位置に設けてもよい。
【0092】
・鼻汁貯留器3、蓋12及びケース本体13は、全体形状が
図12に示すような直方体に近い形状であってもよいし、
図2に示すような楕円体に近い形状であってもよいし、直方体形状から楕円体形状へ変遷していく過程の中間形状であってもよい。更に、鼻汁貯留器3は、ひし形形状であってもよい。
【0093】
・鼻汁貯留器3は、更に、第2通路の出口と二次貯留部又は吸引部との間に、第3通路や第4通路等を追加してもよい。例えば、第3通路は、第2通路とは異なる第3方向に延ばし、第2通路の第2出口と吸引部又は二次貯留部とを繋げるように構成する。また、第4通路は、第3通路とは異なる第4方向に延ばし、第3通路の出口と吸引部又は二次貯留部とを繋げるように構成する。このように、第2通路の下流により多くの通路を設けることで、通路も長くなり、より一層空気と鼻汁とをしっかりと分離でき、その結果、ポンプ4に鼻汁を入りにくくできる。なお、第2通路の下流でかつ吸引部又は二次貯留部との間に設ける通路の数は、特に限定されるものではない。
【0094】
・ポンプ4は、電動式のものに限られず、チューブ5の先端を親などの操作者がくわえて口で吸うタイプのもの、或いは、手動式のスポイトやポンプで負圧を発生させるものであってもよい。
【0095】
・吸引ヘッド2と鼻汁貯留器3の間は、チューブで接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…鼻汁吸引装置
2…吸引ヘッド
3…鼻汁貯留器
4…ポンプ
5…チューブ
6…貯留鼻水
11…ケース
12…蓋
13…ケース本体
14…流入部
15…吸引部
16…仕切り部材
17…第1空間
18…第2空間
21…蓋底壁
22…蓋外周壁
23…障壁
26…外底壁
27…外周壁
29…係合段部
31…内底壁
31a…第1内底部
31b…第2内底部
31c…接続壁部
32…内周壁
33…フランジ
34…一次貯留部
35…二次貯留部
36…第1通路
36a…第1入口
36b…第1出口
37…第2通路
37a…第2入口
37b…第2出口