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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176604
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】保持部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095296
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川鍋 光慶
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA03
5F131BA19
5F131CA06
5F131CA08
5F131CA68
5F131EB15
5F131EB16
5F131EB18
5F131EB56
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】内部電極の厚さを均一にしやすい保持部材の製造方法を提供する。
【解決手段】保持部材10の製造方法は、内部に内部電極50を有する保持部材10の製造方法であって、第1グリーンシート60の第1圧着面に導電性ペーストを印刷して内部電極50の一部となる第1導体層61を形成する第1導体層形成工程と、第2グリーンシート70の第2圧着面に導電性ペーストを印刷して内部電極50の一部となる第2導体層73を形成する第2導体層形成工程と、第1圧着面と第2圧着面とが向かい合うように配置して、第1グリーンシート60と第2グリーンシート70とを積層方向に積層させる積層工程と、積層工程により得られたグリーンシート積層体90を焼成する焼成工程と、を備え、第2導体層形成工程では、第2導体層73は、積層方向について第1導体層61の外縁部と重畳する位置に配される第1縁取部74を備えて形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内部電極を有する保持部材の製造方法であって、
第1グリーンシートの第1圧着面に導電性ペーストを印刷して前記内部電極の一部となる第1導体層を形成する第1導体層形成工程と、
第2グリーンシートの第2圧着面に導電性ペーストを印刷して前記内部電極の一部となる第2導体層を形成する第2導体層形成工程と、
前記第1圧着面と前記第2圧着面とが向かい合うように配置して、前記第1グリーンシートと前記第2グリーンシートとを積層方向に積層させる積層工程と、
前記積層工程により得られたグリーンシート積層体を焼成する焼成工程と、を備え、
前記第2導体層形成工程では、前記第2導体層は、前記積層方向について前記第1導体層の外縁部と重畳する位置に配される第1縁取部を備えて形成される、保持部材の製造方法。
【請求項2】
前記内部電極は貫通孔を有し、
前記第1導体層形成工程では、前記第1導体層は前記貫通孔に対応する第1貫通孔を有して形成され、
前記第2導体層形成工程では、前記第2導体層は、前記積層方向について前記第1貫通孔の孔縁部と重畳する位置に配される第2縁取部を備えて形成される、請求項1に記載の保持部材の製造方法。
【請求項3】
前記内部電極はビアに接続されており、
前記第2グリーンシートは前記ビアを形成するためのビア孔を有し、前記ビア孔の内部には導電性ペーストが充填されており、
前記第2導体層形成工程では、前記第2導体層は、前記積層方向について前記ビア孔と重畳する位置に前記ビア孔よりも大きい面積を有するパッド部を備えて形成される、請求項1または請求項2に記載の保持部材の製造方法。
【請求項4】
前記内部電極は、高周波電源に接続される高周波電極である、請求項1または請求項2に記載の保持部材の製造方法。
【請求項5】
前記保持部材は対象物を保持する保持面を有し、
前記グリーンシート積層体は前記保持面となる表面を有し、
前記積層工程では、前記第1グリーンシートは前記第2グリーンシートよりも前記表面側に配される、請求項1または請求項2に記載の保持部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハ等の対象物を保持する保持装置として、特開2022-48064号公報(下記特許文献1)に記載の加熱装置が知られている。この加熱装置は、セラミックス等の絶縁部材により形成される保持体を備えている。保持体の内部には、抵抗発熱体等の内部電極が形成されている。
【0003】
特許文献1には、保持体の形成方法として、窒化アルミニウム粉末等を含む複数枚のグリーンシートを積層する方法を採用できることが記載されている。詳細には、複数のグリーンシートにメタライズペーストを印刷することで、後に内部電極になる未焼結導体層を形成した後、複数のグリーンシートを積層する。そして、圧着、焼成、研磨穴あけ等の工程を実施することで、内部電極を有する保持体を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-48064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような保持体の形成方法によれば、複数のグリーンシートを圧着する際に未焼結導体層が圧縮されることにより、保持体の内部電極の厚さが不均一になる場合がある。具体的には、内部電極の外縁部において中央部よりも厚さが小さくなる傾向がみられる。例えば、このような厚さが不均一であり、凹凸を有する内部電極をプラズマ発生用の高周波電極として用いた場合、プラズマ密度の面内均一性を確保できない。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、内部電極の厚さを均一にしやすい保持部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の保持部材の製造方法は、内部に内部電極を有する保持部材の製造方法であって、第1グリーンシートの第1圧着面に導電性ペーストを印刷して前記内部電極の一部となる第1導体層を形成する第1導体層形成工程と、第2グリーンシートの第2圧着面に導電性ペーストを印刷して前記内部電極の一部となる第2導体層を形成する第2導体層形成工程と、前記第1圧着面と前記第2圧着面とが向かい合うように配置して、前記第1グリーンシートと前記第2グリーンシートとを積層方向に積層させる積層工程と、前記積層工程により得られたグリーンシート積層体を焼成する焼成工程と、を備え、前記第2導体層形成工程では、前記第2導体層は、前記積層方向について前記第1導体層の外縁部と重畳する位置に配される第1縁取部を備えて形成される、保持部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、内部電極の厚さを均一にしやすい保持部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1にかかる静電チャックの外観構成を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、静電チャックの模式的な断面図である。
図3図3は、保持部材の製造方法について示す説明図である。
図4図4は、積層方向から見た第1導体層について示す図である。
図5図5は、積層方向から見た第2導体層について示す図である。
図6図6は、積層方向における第1導体層と第2導体層との重なりについて示す図である。
図7図7は、実施形態2にかかる保持部材の模式的な断面図である。
図8図8は、実施形態2にかかる保持部材の製造方法について示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
(1)本開示の保持部材の製造方法は、内部に内部電極を有する保持部材の製造方法であって、第1グリーンシートの第1圧着面に導電性ペーストを印刷して前記内部電極の一部となる第1導体層を形成する第1導体層形成工程と、第2グリーンシートの第2圧着面に導電性ペーストを印刷して前記内部電極の一部となる第2導体層を形成する第2導体層形成工程と、前記第1圧着面と前記第2圧着面とが向かい合うように配置して、前記第1グリーンシートと前記第2グリーンシートとを積層方向に積層させる積層工程と、前記積層工程により得られたグリーンシート積層体を焼成する焼成工程と、を備え、前記第2導体層形成工程では、前記第2導体層は、前記積層方向について前記第1導体層の外縁部と重畳する位置に配される第1縁取部を備えて形成される。
【0011】
このような保持部材の製造方法によると、内部電極の外縁部において内部電極の厚さが小さくなることを抑制することができる。
【0012】
(2)(1)に記載の保持部材の製造方法において、前記内部電極は貫通孔を有し、前記第1導体層形成工程では、前記第1導体層は前記貫通孔に対応する第1貫通孔を有して形成され、前記第2導体層形成工程では、前記第2導体層は、前記積層方向について前記第1貫通孔の孔縁部と重畳する位置に配される第2縁取部を備えて形成されることが好ましい。
【0013】
このような保持部材の製造方法によると、内部電極の貫通孔の孔縁部において内部電極の厚さが小さくなることを抑制することができる。
【0014】
(3)(1)または(2)に記載の保持部材の製造方法において、前記内部電極はビアに接続されており、前記第2グリーンシートは前記ビアを形成するためのビア孔を有し、前記ビア孔の内部には導電性ペーストが充填されており、前記第2導体層形成工程では、前記第2導体層は、前記積層方向について前記ビア孔と重畳する位置に前記ビア孔よりも大きい面積を有するパッド部を備えて形成されることが好ましい。
【0015】
このような保持部材の製造方法によると、内部電極とビアとの接続部分において内部電極の厚さが局所的に増大することを抑制することができる。
【0016】
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の保持部材の製造方法において、前記内部電極は、高周波電源に接続される高周波電極である。
【0017】
このような保持部材の製造方法によると、内部電極に高周波電圧を印加してプラズマを発生させた場合に、プラズマ密度の面内均一性を向上させることができる。
【0018】
(5)(1)から(4)のいずれかに記載の保持部材の製造方法において、前記保持部材は対象物を保持する保持面を有し、前記グリーンシート積層体は前記保持面となる表面を有し、前記積層工程では、前記第1グリーンシートは前記第2グリーンシートよりも前記表面側に配されることが好ましい。
【0019】
このような保持部材の製造方法によると、保持面から内部電極までの距離を一定に保ちやすい。
【0020】
[本開示の実施形態1の詳細]
本開示の実施形態1の具体例について、図1から図6を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。本明細書では、Z軸正方向を上方向、Z軸負方向を下方向、XY平面方向を水平方向として、保持部材及び保持装置の構成を説明するが、保持部材及び保持装置の実際の使用態様においてはこれと異なる配置であってもよい。また、本明細書において、「直交」は実質的に直交と認識される態様の配置も含まれるものとする。
【0021】
<静電チャック>
本開示の保持部材10を備える保持装置は、半導体ウェハ、ガラス基板等の対象物(以下「ウェハW」という)を吸着保持できる静電チャック1である。静電チャック1は、例えば、図示しない半導体製造装置の処理チャンバに取り付けられ、プラズマを用いてウェハWに対する各処理(成膜、エッチング等)を行うために用いられる。
【0022】
静電チャック1は、図1に示すように、保持部材10と、ベース部材20と、を備える。保持部材10とベース部材20とは、接合部30によって接合されている。接合部30は、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着剤によって構成されている。静電チャック1は、ウェハWを静電引力により吸着保持できるようになっている。
【0023】
静電チャック1には、保持部材10、ベース部材20、及び接合部30をZ軸方向に貫くピン挿通孔11が形成されている。このピン挿通孔11には図示しないリフトピンが挿通され、このリフトピンを移動させることでウェハWを静電チャック1の保持面10Aから離間させることができる。
【0024】
ベース部材20は、円盤状の部材であり、例えば、340mm程度の直径と35mm程度の厚さをもった形状に成形することができる。ベース部材20を主に形成する材料は、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性材料とされている。なお、ここでいう「主に形成する材料」とは、主成分のことであり、含有割合(重量割合)の最も多い材料を意味する(以下同じ)。図2に示すように、ベース部材20の上面20Aは、保持部材10側に配されている。ベース部材20の上面20Aは、接合部30により後述する保持部材10の下面10Bに接合されている。
【0025】
ベース部材20の内部には、冷媒流路21が設けられている。冷媒流路21は図示しない冷媒循環装置に接続されている。冷媒循環装置は、フッ素系不活性液体、水等の冷媒を冷媒流路21に循環可能に構成されている。冷媒流路21に冷媒が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と保持部材10との間の伝熱(熱引き)により、保持部材10が冷却され、後述する保持部材10の保持面10Aで保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度を制御できる。
【0026】
<保持部材>
保持部材10は、全体として円盤状をなし、例えば、300mm程度の直径と5mm程度の厚さをもった形状に成形することができる。保持部材10は絶縁性の基板とされている。保持部材10を主に形成する材料は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナ(Al)等のセラミックスである。
【0027】
保持部材10の上面は、Z軸方向に直交する保持面10Aとされている。保持面10Aは円形状の平面であり、ウェハWを保持する面として機能する。保持部材10において保持面10Aと反対側に配される下面10Bは、接合部30を介してベース部材20と接合されている。
【0028】
保持部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された内部電極50及びチャック電極40が配置されている。また、保持部材10の内部には、必要に応じて内部電極50及びチャック電極40以外の電極(例えばヒーター等)を設けてもよい。
【0029】
保持部材10は、セラミックスからなるグリーンシートを複数枚作製し、所定のグリーンシートにビア孔の形成やメタライズペーストの充填および印刷等の加工を行い、これらのグリーンシートを熱圧着し、切断等の加工を行った上で焼成することにより作製することができる。詳細な保持部材10の製造方法については、後述する。
【0030】
<内部電極>
実施形態1の内部電極50は、図外の高周波電源に接続される高周波電極とされている。内部電極50に高周波電源から高周波電圧を印加することにより、プラズマを発生させることができる。Z軸方向視での内部電極50の形状は、例えば略円形である。内部電極50には、貫通孔51が形成されている。貫通孔51の内側には、ピン挿通孔11が配されている。また、内部電極50は、保持部材10の内部をZ軸方向に延びるビア52に接続されている。ビア52は導電性材料から形成され、内部電極50と高周波電源とを電気的に接続する給電経路の一部となっている。詳細には、内部電極50は、ビア52や図示しない端子等を介して、高周波電源と接続される。
【0031】
内部電極50のZ軸方向における寸法(厚さ)は、内部電極50の外縁部(水平方向における端縁部)、及び貫通孔51の孔縁部において小さくなる傾向にある。詳細には、内部電極50の外縁部は、外側に向かうほど厚さが小さくなる外縁傾斜部53を有する。また、貫通孔51の孔縁部は、貫通孔51の内方に向かうほど厚さが小さくなる孔縁傾斜部54を有する。内部電極50の形成工程においては、グリーンシートに印刷された、内部電極50のもととなる導体層が上下方向に圧縮される。これにより、導体層がその外縁部もしくは孔縁部の外側へと広がり、上記のような傾斜部が形成される。
【0032】
実施形態1の内部電極50は、厚さが周囲よりも大きくなっている肉厚部55A,55Bを備える。肉厚部55Aは、内部電極50の外縁部の近傍に配され、外縁傾斜部53に連なっている。肉厚部55Bは、貫通孔51の孔縁部の近傍に配され、孔縁傾斜部54に連なっている。後述するように、第1導体層61と第2導体層73とが積層されることにより、肉厚部55A,55Bが形成される。
【0033】
内部電極50の外縁部の近傍に肉厚部55Aを形成することにより、外縁傾斜部53が形成される領域、すなわち、内部電極50の厚さが小さくなる領域を小さくしやすくなる。貫通孔51の孔縁部の近傍に肉厚部55Bを形成することにより、孔縁傾斜部54が形成される領域、すなわち、内部電極50の厚さが小さくなる領域を小さくしやすくなる。
【0034】
また、実施形態1の内部電極50は、ビア52の近傍にも肉厚部55Cを備える。Z軸方向視において、肉厚部55Cの内側にビア52が配されている。肉厚部55Cが形成されない場合、内部電極の形成工程において、内部電極のもととなる導体層のうち、ビアとZ軸方向に重なる部分が局所的に突出した形状となる場合がありうる。しかし、本実施形態では、肉厚部55Cが形成されるから、ビア52に対応する部分が局所的に突出することを抑制し、ビア52の近傍に形成される凸形状を緩やかにすることができる。
【0035】
上記のように、本実施形態の内部電極50は肉厚部55A,55Bを有するから、内部電極50の厚さが外縁部や貫通孔51の孔縁部で薄くなることを抑制することができる。また、肉厚部55Cにより、ビア52の近傍において、内部電極50の厚さが局所的に大きくなることを抑制することができる。すなわち、全体として内部電極50の厚さを均一に近づけやすくなっている。したがって、内部電極50に高周波電圧を印加してプラズマを発生させた場合、プラズマ密度の面内均一性を担保しやすくなることが期待される。
【0036】
<チャック電極>
Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40には、貫通孔41が形成されている。貫通孔41の内側には、ピン挿通孔11が配されている。なお、チャック電極40にも、内部電極50と同様に、外縁傾斜部及び孔縁傾斜部が形成されるが、簡単のため、本明細書では、チャック電極40の外縁傾斜部及び孔縁傾斜部については図示しないこととする。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが保持部材10の保持面10Aに吸着固定される。
【0037】
<保持部材の製造方法>
本実施形態では、複数枚のグリーンシートを積層することにより、保持部材10を製造する。内部電極50は、第1導体層61と第2導体層73とから構成される。本実施形態の保持部材10の製造方法は、第1導体層形成工程と、第2導体層形成工程と、積層工程と、焼成工程と、を備える。
【0038】
まず、セラミックスから構成される複数枚のグリーンシートが準備される。複数枚のグリーンシートは、図3に示すように、第1グリーンシート60と第2グリーンシート70と第3グリーンシート80とを含む。第1グリーンシート60は、第1面60Aと、第1面60Aと反対側に配される第2面60Bと、を有する。第2グリーンシート70は、第3面70Aと、第3面70Aと反対側に配される第4面70Bと、を有する。第3グリーンシート80は、第5面80Aと、第5面80Aと反対側に配される第6面80Bと、を有する。
【0039】
<第1導体層形成工程>
第1導体層形成工程では、第1グリーンシート60に第1導体層61が形成される。第1グリーンシート60の第2面60B(第1圧着面の一例)に、導電性ペーストを印刷することで、第1導体層61が形成される。図4に示すように、Z軸方向視において、第1導体層61は円形状をなしている。第1導体層61は、内部電極50の貫通孔51に対応する第1貫通孔62を有する。
【0040】
図3に示すように、第1グリーンシート60の第1面60Aには、チャック電極40のもととなる第3導体層63が形成される。第3導体層63は、チャック電極40の貫通孔41に対応する第3貫通孔64を有する。
【0041】
<第2導体層形成工程>
第2グリーンシート70は、内部電極50に接続されるビア52を形成するためのビア孔71を有する。ビア孔71は第2グリーンシート70をZ軸方向に貫通している。ビア孔71の内部には、導電性ペーストが充填され、ビア52のもととなる柱状導体部72が形成される。第2導体層形成工程では、第2グリーンシート70に第2導体層73が形成される。第2グリーンシート70の第3面70A(第2圧着面の一例)に、導電性ペーストを印刷することで、第2導体層73が形成される。第2導体層73は、第1縁取部74と、第2縁取部75と、パッド部76と、を備えて形成される。
【0042】
図5に示すように、第1縁取部74はZ軸方向視において円環状をなしている。図6に示すように、第1縁取部74は、Z軸方向について第1導体層61の外縁部と重畳する位置に配されている。第1縁取部74は、第1導体層61の外縁部よりもXY平面方向について外側にはみ出して形成される。第1縁取部74と第1導体層61とがZ軸方向に重畳することにより、内部電極50の外縁部の近傍に肉厚部55Aが形成される。
【0043】
図5に示すように、第2縁取部75はZ軸方向視において円環状をなしている。図6に示すように、第2縁取部75は、Z軸方向について第1貫通孔62の孔縁部と重畳する位置に配されている。第2縁取部75は、XY平面方向について第1貫通孔62の内方にはみ出して形成される。第2縁取部75は、第1貫通孔62の内側に配される第2貫通孔75Aを有する。第2縁取部75と第1導体層61とがZ軸方向に重畳することにより、内部電極50の貫通孔51の孔縁部近傍に肉厚部55Bが形成される。
【0044】
図5に示すように、パッド部76は、Z軸方向についてビア孔71と重畳する位置に配されている。パッド部76は、ビア孔71のZ軸方向視における面積よりも大きく形成されている。Z軸方向視においてビア孔71はパッド部76の内側に配される。図6に示すように、パッド部76と第1導体層61とがZ軸方向に重畳することにより、内部電極50のビア52の近傍に肉厚部55Cが形成される。
【0045】
<積層工程>
積層工程では、図3に示すように、第1グリーンシート60と第2グリーンシート70と第3グリーンシート80とをZ軸方向(積層方向)に積層させる。この際、第1グリーンシート60の第2面60Bと第2グリーンシート70の第3面70Aとが向かい合うように配置される。また、第1グリーンシート60の第1面60Aと第3グリーンシート80の第6面80Bとが向かい合うように配置される。第3グリーンシート80は導体層等を有さない無垢のグリーンシートである。第3グリーンシート80の第5面80A(表面の一例)は、保持部材10の保持面10Aとなる。
【0046】
なお、図示しないものの、積層工程では、第1グリーンシート60、第2グリーンシート70、及び第3グリーンシート80以外の複数のグリーンシートが第2グリーンシート70の第4面70Bの下方に積層される。これにより、グリーンシート積層体90が得られる。グリーンシート積層体90には、適宜孔あけや切断等の加工がなされる。例えば、保持部材10のピン挿通孔11となる貫通孔91等が形成される。
【0047】
<焼成工程>
焼成工程では、グリーンシート積層体90が焼成され、焼成体が得られる。焼成体にさらに研磨加工等を施すことにより、保持部材10が形成される。
【0048】
<実施形態1の効果>
以上のように、実施形態1の保持部材10の製造方法は、内部に内部電極50を有する保持部材10の製造方法であって、第1グリーンシート60の第1圧着面(第2面60B)に導電性ペーストを印刷して内部電極50の一部となる第1導体層61を形成する第1導体層形成工程と、第2グリーンシート70の第2圧着面(第3面70A)に導電性ペーストを印刷して内部電極50の一部となる第2導体層73を形成する第2導体層形成工程と、第1圧着面と第2圧着面とが向かい合うように配置して、第1グリーンシート60と第2グリーンシート70とを積層方向に積層させる積層工程と、積層工程により得られたグリーンシート積層体90を焼成する焼成工程と、を備え、第2導体層形成工程では、第2導体層73は、積層方向について第1導体層61の外縁部と重畳する位置に配される第1縁取部74を備えて形成される。
【0049】
このような保持部材10の製造方法によると、内部電極50の外縁部において内部電極50の厚さが小さくなることを抑制することができる。
【0050】
実施形態1の保持部材10の製造方法において、内部電極50は貫通孔51を有し、第1導体層形成工程では、第1導体層61は貫通孔51に対応する第1貫通孔62を有して形成され、第2導体層形成工程では、第2導体層73は、積層方向について第1貫通孔62の孔縁部と重畳する位置に配される第2縁取部75を備えて形成される。
【0051】
このような保持部材10の製造方法によると、内部電極50の貫通孔51の孔縁部において内部電極50の厚さが小さくなることを抑制することができる。
【0052】
実施形態1の保持部材10の製造方法において、内部電極50はビア52に接続されており、第2グリーンシート70はビア52を形成するためのビア孔71を有し、ビア孔71の内部には導電性ペーストが充填されており、第2導体層形成工程では、第2導体層73は、積層方向についてビア孔71と重畳する位置にビア孔71よりも大きい面積を有するパッド部76を備えて形成される。
【0053】
このような保持部材10の製造方法によると、内部電極50とビア52との接続部分において内部電極50の厚さが局所的に増大することを抑制することができる。
【0054】
実施形態1の保持部材10の製造方法において、内部電極50は、高周波電源に接続される高周波電極である。
【0055】
このような保持部材10の製造方法によると、内部電極50に高周波電圧を印加してプラズマを発生させた場合に、プラズマ密度の面内均一性を向上させることができる。
【0056】
実施形態1の保持部材10の製造方法において、保持部材10は対象物(ウェハW)を保持する保持面10Aを有し、グリーンシート積層体90は保持面10Aとなる表面(第5面80A)を有し、積層工程では、第1グリーンシート60は第2グリーンシート70よりも表面側に配される。
【0057】
このような保持部材10の製造方法によると、保持面10Aから内部電極50までの距離を一定に保ちやすい。
【0058】
[本開示の実施形態2の詳細]
本開示の実施形態2の具体例について、図7及び図8を参照しつつ説明する。実施形態1と同様の構成については、実施形態1と同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0059】
図7に示すように、実施形態2の保持部材110は、Z軸方向視において内部電極50の貫通孔51の内部に配されるビア142及びビア接続部143を備える。このビア142及びビア接続部143は、チャック電極40に接続されている。
【0060】
実施形態2にかかる保持部材110の製造方法は、実施形態1の保持部材10の製造方法と略同様であるため、以下、両者の相違点についてのみ簡単に説明する。保持部材110を構成する複数のグリーンシートは、図8に示すように、第1グリーンシート160と、第2グリーンシート170と、第3グリーンシート80と、を含む。
【0061】
第1グリーンシート160には、ビア孔165が形成され、ビア孔165内には柱状導体部166が形成されている。ビア孔165及び柱状導体部166は、Z軸方向視において第1貫通孔62の内部に配される。柱状導体部166は第3導体層63と接続されている。第1グリーンシート160の第2面60Bには、ビア接続部143の一部となるパッド部167が形成される。パッド部167は第1貫通孔62の内部に配される。パッド部167は柱状導体部166と接続されている。
【0062】
第2グリーンシート170には、ビア孔177が形成され、ビア孔177内には柱状導体部178が形成されている。ビア孔177及び柱状導体部178は、Z軸方向視において第2貫通孔75Aの内部に配される。第2グリーンシート170の第3面70Aには、ビア接続部143の一部となるパッド部179が形成される。パッド部179は第2貫通孔75Aの内部に配される。パッド部179は柱状導体部178と接続されている。
【0063】
上記した第1グリーンシート160、第2グリーンシート170、及び第3グリーンシート80を含む複数のグリーンシートが積層されることにより、グリーンシート積層体190が得られる。
【0064】
実施形態2の作用効果については、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
<他の実施形態>
(1)実施形態1,2では、第1導体層61はZ軸方向視において円形状であったが、第1導体層は円形状でなくてもよい。例えば、第1導体層は、半円状、扇形状、円環状等でもよい。
【0066】
(2)実施形態1,2では、第1縁取部74及び第2縁取部75は円環状であったが、第1縁取部及び第2縁取部は第1導体層の形状に合わせて修正することができる。
【0067】
(3)実施形態1では内部電極50の貫通孔51の内部にピン挿通孔が配され、実施形態2では内部電極50の貫通孔51の内部にビア142及びビア接続部143が配されていたが、内部電極の貫通孔の内部には上記と異なる構成が配置されてもよい。
【0068】
(4)実施形態1,2では、内部電極50は高周波電極であったが、内部電極は高周波電極と異なる電極でもよい。例えば、内部電極はチャック電極でもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:静電チャック
10:保持部材、10A:保持面、10B:下面、11:ピン挿通孔
20:ベース部材、20A:上面、21:冷媒流路
30:接合部
40:チャック電極、41:貫通孔
50:内部電極、51:貫通孔、52:ビア、53:外縁傾斜部、54:孔縁傾斜部、55A,55B,55C:肉厚部
60:第1グリーンシート、60A:第1面、60B:第2面、61:第1導体層、62:第1貫通孔、63:第3導体層、64:第3貫通孔、70:第2グリーンシート、70A:第3面、70B:第4面、71:ビア孔、72:柱状導体部、73:第2導体層、74:第1縁取部、75:第2縁取部、75A:第2貫通孔、76:パッド部、80:第3グリーンシート、80A:第5面、80B:第6面、90:グリーンシート積層体、91:貫通孔
110:保持部材
142:ビア、143:ビア接続部
160:第1グリーンシート、165:ビア孔、166:柱状導体部、167:パッド部、170:第2グリーンシート、177:ビア孔、178:柱状導体部、179:パッド部、190:グリーンシート積層体
W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8