(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176608
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】工具交換の最適化システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20241212BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20241212BHJP
B23Q 41/00 20060101ALI20241212BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B23Q3/155 F
G05B19/418 Z
B23Q41/00 F
B23Q17/00 D
B23Q3/155 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095300
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正典
(72)【発明者】
【氏名】高山 智一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 彰一
(72)【発明者】
【氏名】平原 創
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
3C042
3C100
【Fターム(参考)】
3C002AA08
3C002BB07
3C002DD02
3C002EE03
3C002HH07
3C002KK04
3C002LL04
3C002LL05
3C029FF04
3C042RA22
3C042RA27
3C042RA29
3C042RB31
3C042RG02
3C042RG04
3C042RG08
3C042RG12
3C042RG16
3C042RH07
3C042RJ01
3C042RJ20
3C100AA22
3C100AA27
3C100AA38
3C100AA47
3C100BB13
3C100BB19
3C100BB21
(57)【要約】
【課題】加工機において、工具交換の遅れによる生産性や加工機の稼働率の悪化を防止する技術を提供する。
【解決手段】工具交換の最適化システムは、加工機と、複数の工具と、工具交換を作業者に指示する表示部と、加工機の加工スケジュールを取得する第1制御部と、を備える。加工スケジュールは、加工予定期間において、加工機における工具の使用予定期間と、作業者による工具交換を行う期間を含む作業予定期間と、の情報を含む。作業者は、使用予定期間の前に、作業予定期間に基づいて、工具交換を実施する。第1制御部は、工具についての、寿命時間と、使用実績と、に基づいて、工具交換を要するまでの期間としての寿命残時間を決定し、寿命残時間と使用予定期間に基づいて、工具の交換期限を決定し、交換期限の最も近い第1工具を含む工具の工具交換を、優先して指示する交換スケジュールを決定し、表示部に表示する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具交換の最適化システムであって、
複数の被加工物を加工する1以上の加工機と、
前記1以上の加工機に使用される複数の工具であって、前記工具交換の対象となる前記複数の工具と、
前記工具交換を作業者に指示する表示部と、
前記1以上の加工機の加工スケジュールを取得する第1制御部と、を備え、
前記加工スケジュールは、予め定められた加工予定期間において、
前記1以上の加工機のそれぞれの加工機における、前記複数の工具のそれぞれの工具の使用予定期間と、
前記作業者による前記工具交換を行う期間を含む作業予定期間と、の情報を少なくとも含み、
前記作業者は、前記使用予定期間の前に、前記作業予定期間に基づいて、前記工具交換を実施し、
前記第1制御部は、
前記工具についての、予め定められた寿命時間と、前記加工スケジュールから得られる使用実績と、に基づいて、前記工具交換を要するまでの期間としての寿命残時間を決定し、
前記寿命残時間が前記使用予定期間の合計時間よりも短いことを条件に、前記寿命残時間と前記使用予定期間に基づいて、前記加工予定期間における前記工具の交換期限を決定し、
前記複数の工具うち、前記交換期限の最も近い第1工具を含む1以上の工具の前記工具交換を、優先して指示する交換スケジュールを決定し、
前記表示部に前記交換スケジュールを表示する、工具交換の最適化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の工具交換の最適化システムであって、
前記第1制御部は、前記加工スケジュールと前記交換スケジュールを並列させた状態で、前記表示部に表示する、工具交換の最適化システム。
【請求項3】
請求項2に記載の工具交換の最適化システムであって、
前記第1制御部は、前記表示部による前記交換スケジュールの表示のときに、さらに、前記工具の仕様を表示する、工具交換の最適化システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の工具交換の最適化システムであって、
前記1以上の加工機は、複数の加工機であり、
前記第1工具を含む1以上の工具は、前記第1工具を含む複数の工具であり、
前記第1制御部は、前記第1工具を含む複数の工具のうち、
前記第1工具を最も先に使用する第1加工機が次に使用する1以上の第2工具を、前記複数の工具のうち前記第1工具と前記第2工具以外の第3工具よりも優先する、工具交換の最適化システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の工具交換の最適化システムであって、
前記加工スケジュールは、さらに、前記工具の使用予定頻度の情報を含み、
前記第1工具を含む1以上の工具は、前記第1工具を含む複数の工具であり、
前記第1制御部は、前記第1工具を含む複数の工具のうち、
前記工具の使用頻度の最も高い工具を含む1以上の工具を優先する、工具交換の最適化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工具交換の最適化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフレキシブル生産システムについて、例えば、特許文献1に記載されているように、加工の順番を調整する技術が存在する。フレキシブル生産システムを、以下の説明では、FMS(Flexible Manufacturing System)ともよぶ。FMSでは、予め設定された生産計画に基づいて、セルコントローラが、搬送機を制御することで、被加工物を加工機に搬送する。特許文献1では、さらに、工具の寿命や工具の折損などにより加工機が加工不可となった場合に、セルコントローラにより、作業者に異常を警告することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工具の寿命や工具の折損などの異常の警告を受けた場合、工具交換が必要である。しかし、複数の工具交換が必要になった場合に、作業者は、工具交換の優先順位を決める必要がある。工具交換の優先順位は、工具の寿命や工具の使用のタイミングによって判断される。さらに、複数の加工機が存在する場合、作業者は、加工機の間の優先順位も考慮する必要がある。従来、工具交換の優先順位は、作業者の判断により決められている。
【0005】
よって、作業者の経験や能力により、工具交換の遅れが生じる場合がある。したがって、生産性や加工機の稼働率の悪化が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の第1の形態によれば、工具交換の最適化システムが提供される。工具交換の最適化システムは、複数の被加工物を加工する1以上の加工機と、前記1以上の加工機に使用される複数の工具であって、前記工具交換の対象となる前記複数の工具と、前記工具交換を作業者に指示する表示部と、前記1以上の加工機の加工スケジュールを取得する第1制御部と、を備える。前記加工スケジュールは、予め定められた加工予定期間において、前記1以上の加工機のそれぞれの加工機における、前記複数の工具のそれぞれの工具の使用予定期間と、前記作業者による前記工具交換を行う期間を含む作業予定期間と、の情報を少なくとも含む。前記作業者は、前記使用予定期間の前に、前記作業予定期間に基づいて、前記工具交換を実施する。前記第1制御部は、前記工具についての、予め定められた寿命時間と、前記加工スケジュールから得られる使用実績と、に基づいて、前記工具交換を要するまでの期間としての寿命残時間を決定し、前記寿命残時間が前記使用予定期間の合計時間よりも短いことを条件に、前記寿命残時間と前記使用予定期間に基づいて、前記加工予定期間における前記工具の交換期限を決定し、前記複数の工具うち、前記交換期限の最も近い第1工具を含む1以上の工具の前記工具交換を、優先して指示する交換スケジュールを決定し、前記表示部に前記交換スケジュールを表示する。
工具交換を要するまでの寿命残時間は、工具の使用実績としての期間から決定できる。このため、工具交換の最適化システムにおける第1制御部は、工具ごとの寿命時間と使用実績から、工具の寿命残時間を決定する。さらに、第1制御部は、今後の工具の使用予定期間を含む、加工スケジュールを取得することで、工具交換を要するまでの交換期限を決定できる。よって、第1制御部は、交換期限に基づいて優先すべき工具交換を指示できる。したがって、このような形態とすることで、本開示の工具交換の最適化システムは、作業者の経験や能力にかかわらずに工具交換を指示できるため、生産性や加工機の稼働率が悪化することを防止する。
(2)上記形態において、前記第1制御部は、前記加工スケジュールと前記交換スケジュールを並列させた状態で、前記表示部に表示する形態でもよい。このような形態とすることで、本開示の工具交換の最適化システムは、加工スケジュールと交換スケジュールを並列に表示させる。よって、作業者は、同時に両者を比較できるため、加工スケジュールを考慮した上で、工具交換の時期を容易に決定できる。
(3)上記形態において、前記第1制御部は、前記表示部による前記交換スケジュールの表示のときに、さらに、前記工具の仕様を表示する形態でもよい。このような形態とすることで、本開示の工具交換の最適化システムは、工具交換の際に、工具の仕様の確認が必要な場合に、工具交換を容易にする。
(4)上記形態において、前記1以上の加工機は、複数の加工機であり、前記第1工具を含む1以上の工具は、前記第1工具を含む複数の工具であり、前記第1制御部は、前記第1工具を含む複数の工具のうち、前記第1工具を最も先に使用する第1加工機が次に使用する1以上の第2工具を、前記複数の工具のうち前記第1工具と前記第2工具以外の第3工具よりも優先する形態でもよい。このような形態とすることで、作業者は、交換期限の最も近い第1工具の工具交換の際に、同じ加工機に使用される第2工具も工具交換できる。よって、本開示の工具交換の最適化システムは、例えば、工具交換の際に、加工機ごとに発生する工具交換に伴う準備の期間を、削減できる場合がある。
(5)上記形態において、前記加工スケジュールは、さらに、前記工具の使用予定頻度の情報を含み、前記第1工具を含む1以上の工具は、前記第1工具を含む複数の工具であり、前記第1制御部は、前記第1工具を含む複数の工具のうち、前記工具の使用頻度の最も高い工具を含む1以上の工具を優先する形態でもよい。このような形態とすることで、本開示の工具交換の最適化システムは、使用頻度の高い工具を優先して工具交換することにより、加工予定期間内に工具交換の期間を確保できなくなる可能性を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態のシステムの構成を示す説明である。
【
図2】制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】工具交換の最適化システムの処理の工程を示すフローチャートである。
【
図6】交換期限と交換スケジュールを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.システムの構成:
図1は、第1実施形態のシステムの構成を示す説明である。工具交換の最適化システム11は、フレキシブル生産システムの構成により実現される。フレキシブル生産システムは、多品種や少量の生産に対応できる生産システムである。すなわち、フレキシブル生産システムは、あらかじめ定められた生産計画に基づいて、複数の種類の被加工物Wを生産する。工具交換の最適化システム11は、フレキシブル生産システムに使用される工具120の交換を指示する。
図1では、工具交換の最適化システム11の構成を含む、フレキシブル生産システムの構成が図示されている。
【0010】
工具交換の最適化システム11は、加工機110と、工具120と、表示部130と、パレット140と、パレット収納用棚150と、搬送装置160と、ローディングステーション170と、制御装置180と、を備える。
【0011】
加工機110は、未加工の複数の被加工物Wを加工する。例えば、加工機110は、マシニングセンタである。すなわち、加工機110は、複数の工具120を使用する。加工機110は、後に説明する制御装置180に接続されている。加工機110は、制御装置180からの指示により、加工を行う。加工機110は、第1加工機111と第2加工機112の2台により構成されている。
【0012】
工具120は、被加工物Wを加工するために加工機110に使用される。工具120は、例えば、ドリルやフライスなどの切削工具である。加工機110による加工において、複数の工具120が、使用される。複数の工具120は、第1加工機111と第2加工機112で共有される。
【0013】
工具120は、工具交換の最適化システム11による工具交換の対象である。この工具交換は、作業者Hにより、工具120の状態に応じて行われる工具120の交換である。より具体的には、この工具交換は、工具120の摩耗により交換が必要となった工具120を対象としてる。よって、この工具交換は、被加工物Wに応じて、加工機110が自動で行う工具120の交換ではない。例えば、作業者Hにより、工具マガジン110aに保管されている工具120が交換される。そして、工具マガジン110aから、加工機110が自動で行う工具120の交換(ATC:Automatic Tool Changer)によって、加工機110の工具主軸に取り付けられる。工具保管装置は、タレット方式などでも良い。
【0014】
工具120は、予め定められた寿命時間D190aを有する。寿命時間D190aは、摩耗により、工具120の寿命に達するまでの時間である。よって、工具交換は、寿命時間D190aが終了する前に実施される。なお、寿命時間D190aは、工具120が初めて使用される前に、制御装置180に記憶される。なお、本実施形態の説明において、「期間」は、時刻と時間を含む情報として使用する。また、「時間」は、期間の長さを表す情報として使用する。
【0015】
工具120には、管理用番号が設定されている。管理用番号は、工具120を特定するための番号である。管理用番号は、後に説明する制御装置180によって設定される。本実施形態の説明において、工具120は、第1工具121と第2工具122と第3工具123とより構成される。本実施形態の説明において、各工具120の符号を、管理用番号としても使用する。
【0016】
ローディングステーション170は、作業者Hにより、未加工の被加工物Wをパレット140に取り付ける作業および取り外す作業が行われる場所である。第1実施形態では、ローディングステーション170として、第1ローディングステーション171と第2ローディングステーション172の2箇所が設けられている。作業者Hは、それぞれのローディングステーション170に配置されている。
【0017】
表示部130は、ローディングステーション170における作業者Hに作業の指示を行う。より具体的には、表示部130は、未加工の被加工物Wをパレット140に取り付ける作業および取り外す作業を指示する。さらに、表示部130は、工具交換を作業者Hに指示する。表示部130は、例えば、モニタである。表示部130は、ローディングステーション170に設置されている。表示部130は、制御装置180に接続されている。よって、制御装置180からの指示により、表示部130は、工具交換の時期を表す情報を表示する。工具交換の時期を表す情報とは、後に説明する加工スケジュールD190cと交換スケジュールD190fである。
【0018】
パレット収納用棚150は、複数のパレット140を保管する。パレット140は、被加工物Wを固定するための台である。
図1において、被加工物Wを載せたパレット140は、ハッチングされている。
【0019】
搬送装置160は、パレット140の搬送を行う。より具体的には、搬送装置160は、パレット収納用棚150と、ローディングステーション170と、加工機110と、の間でパレット140の入れ替えを行う。
図1において、搬送装置160は、パレット収納用棚150と、ローディングステーション170と、加工機110と、それぞれの位置まで敷かれたレールRaに沿って移動する。
【0020】
図2は、制御装置180の機能的構成を示すブロック図である。制御装置180は、フレキシブル生産システムを制御する。例えば、制御装置180は、セルコントローラである。より具体的には、制御装置180は、加工機110による加工や作業者Hによる作業に係わる情報を生成する。この情報には、加工スケジュールD190cが含まれる。加工スケジュールD190cについては、後に詳細に説明する。制御装置180は、加工スケジュールD190cに基づいて、加工を指示する。
【0021】
制御装置180は、加工機110と、表示部130と、搬送装置160と、に接続されている。制御装置180は、プロセッサ181と、ROM182と、RAM183と、を備える。
【0022】
プロセッサ181は、ROM182に記憶された各種プログラムを実施することで、各部の機能を実現する。プロセッサ181は、RAM183を使用して、処理に必要な情報の記憶を行う。プロセッサ181は、工具交換の最適化システム11を制御する機能部として第1制御部181aを備える。第1制御部181aによる具体的な機能は、後に詳細に説明する。
【0023】
ROM182は、読み出し専用の半導体メモリーであり、工具交換の最適化システム11の制御のための制御プログラムを予め記憶している。
【0024】
RAM183は、半導体メモリーであるメインメモリーと、補助記憶装置であるハードディスクもしくはソリッドステートドライブなどと、を含む。RAM183は、前述の、加工機110による加工や作業者Hによる作業に係わる情報を記憶する。
【0025】
RAM183において、予め、前述の寿命時間D190aと、使用実績D190bと、が記憶されている。使用実績D190bは、制御装置180により決定された工具120についての、これまでの加工スケジュールD190cから得られる使用実績D190bである。より具体的には、使用実績D190bは、制御装置180により、工具120ごとに、これまでの加工スケジュールD190cに基づく期間の累積を記憶することにより、使用実績D190bとして決定された情報である。
【0026】
図3は、加工スケジュールD190cを示す表である。加工スケジュールD190cは、加工機110による加工や作業者Hによる作業の期間を表す。より具体的には、加工スケジュールD190cは、作業予定期間D190caと、使用予定期間D190cbと、を含む情報である。なお、図面において、技術の理解を容易にするため、第1ローディングステーション171と第2ローディングステーション172を、順にLD1とLD2として表記する。同様に、第1加工機111と第2加工機112を、順にMC1とMC2として表記する。なお、制御装置180は、周期的に加工スケジュールD190cを生成する。例えば、制御装置180は、1分ごとに加工スケジュールD190cを生成する。
【0027】
図3において、加工スケジュールD190cにおける加工予定期間は、作業者Hまたは加工機110による加工に係わる予め定められた期間である。例えば、加工予定期間は、作業者Hの稼働時間に基づいて決定される。作業予定期間D190caと使用予定期間D190cbは、加工予定期間の間に設定される。本実施形態では、技術の理解を容易にするため、加工予定期間は、13時からの3時間に設定されている。さらに、本実施形態において、加工予定期間に基づいて設定される期間は、15分刻みに設定されている。
【0028】
作業予定期間D190caは、作業者Hによる工具交換を行う期間を含む期間である。より具体的には、作業予定期間D190caは、ローディングステーション170における作業を、作業者Hが行う期間と、作業者Hが行わない期間と、表す。工具交換の作業は、ローディングステーション170における作業を作業者Hが行わない期間に行われる。すなわち、作業者Hは、ローディングステーション170における作業に空きが発生している場合に、工具交換の作業を行う。
図3におけるハッチングは、ローディングステーション170における作業を作業者Hが行わない期間を示す。すなわち、作業予定期間D190caは、加工予定期間において、複数の始期と時間の長さとの情報を含む。
【0029】
使用予定期間D190cbは、複数の加工機110のそれぞれの加工機110における、複数の工具120のそれぞれの工具120が使用される期間を表す。すなわち、使用予定期間D190cbは、第1加工機111と第2加工機112のそれぞれ加工機110によって、被加工物Wの加工が行われる期間でもある。
図3におけるハッチングは、工具120が使用される期間を表す。さらに、
図3では、第1工具121~第3工具123ごとの期間を表すため、各工具の符号が図示されている。すなわち、使用予定期間D190cbは、加工予定期間において、複数の始期と時間の長さとの情報を含む。
【0030】
なお、工具120が使用される期間は、加工機110による加工にかかる期間とその準備の期間も含む期間である。すなわち、工具120が使用される期間においても、作業者Hは、工具交換を行う場合がある。加工機110による加工の準備とは、例えば、パレット140の切り替えや工具120の切り替えなどである。
【0031】
A2.工具交換の最適化システムの処理について:
図4は、工具交換の最適化システム11の処理の工程を示すフローチャートである。工具交換の最適化システム11は、加工スケジュールD190cの取得を条件に工具交換の最適化を行う。すなわち、第1制御部181aは、制御装置180により加工スケジュールD190cが生成されることにより処理を開始する。
【0032】
図4のステップS110において、第1制御部181aは、加工スケジュールD190cを取得する。より具体的には、第1制御部181aは、作業予定期間D190caに基づいて、第1ローディングステーション171と第2ローディングステーション172における作業者Hが作業を行わない期間を取得する。さらに、第1制御部181aは、使用予定期間D190cbに基づいて、第1加工機111と第2加工機112のそれぞれによって、被加工物Wの加工が行われる期間を取得する。
【0033】
図4のステップS120において、第1制御部181aは、制御装置180に予め記憶された複数の工具120のそれぞれの工具120についての寿命時間D190aを取得する。以下の説明において、第1工具121~第3工具123の寿命時間D190aを、順に寿命時間D191a~寿命時間D193aと表す。例えば、第1制御部181aは、第1工具121の寿命時間D191aを取得する。同様に、以下の説明では、第1工具121を代表例として処理の内容を説明する。
【0034】
図4のステップS130において、第1制御部181aは、制御装置180に予め記憶された複数の工具120のそれぞれの工具120についての使用実績D190bを取得する。以下の説明において、第1工具121~第3工具123の使用実績D190bを、順に使用実績D191b~使用実績D193bと表す。第1制御部181aは、第1工具121の使用実績D191bを取得する。
【0035】
図4のステップS140において、第1制御部181aは、寿命時間D190aと使用実績D190bとに基づいて、工具交換を要するまでの期間としての寿命残時間D190dを決定する。以下の説明において、第1工具121~第3工具123の寿命残時間D190dを、順に寿命残時間D191d~寿命残時間D193dと表す。
【0036】
図5は、寿命残時間D190dを示す説明図である。より具体的には、第1制御部181aは、寿命時間D190aから使用実績D190bを引くことにより、寿命残時間D190dを算出する。
図5では、第1工具121~第3工具123のそれぞれの寿命残時間D190dが例示されている。よって、第1制御部181aは、第1工具121についての寿命残時間D191dを決定する。
【0037】
図4のステップS150において、第1制御部181aは、寿命残時間D190dと使用予定期間D190cbの合計時間との比較を行う。使用予定期間D190cbの合計時間とは、加工予定期間における期間の長さの合計である。第1制御部181aは、寿命残時間D190dが使用予定期間D190cbの合計時間よりも短い場合に、処理をステップS160に進める。第1制御部181aは、寿命残時間D190dが使用予定期間D190cbの合計時間よりも長い場合に、処理をステップS120に進める。
【0038】
図4のステップS160において、第1制御部181aは、寿命残時間D190dと使用予定期間D190cbに基づいて、加工予定期間における工具120の交換期限D190eを決定する。より具体的には、第1制御部181aは、使用予定期間D190cbにおいて、寿命残時間D190dと同じ時間の長さに達する期間の直前の始期を、交換期限D190eに決定する。
【0039】
図6は、交換期限D190eと交換スケジュールD190fを示す説明図である。例えば、
図6では、第1工具121についての、寿命残時間D191dと同じ時間の長さに達する期間は、13時30分~45分の間としている。この場合、第1制御部181aは、その直前の始期の13時30分を交換期限D190eに決定する。さらに、第2工具122について、寿命残時間D192dと同じ時間の長さに達する期間は、14時15分~30分の間としている。よって、第1制御部181aは、その直前の始期の14時15分を交換期限D190eに決定する。
図6の交換期限D190eの行において、ハッチングされた範囲の終期が、各工具120の交換期限D190eを表す。
【0040】
交換期限D190eは、加工予定期間において、寿命残時間D190dに達するまでの時点を表す。すなわち、作業者Hは、複数の工具120のうち、交換期限D190eまでに、該当する工具120の交換をする必要がある。
【0041】
図4のステップS170において、第1制御部181aは、複数の工具120のうち、交換期限D190eの決定を行っていない残りの工具120を確認する。第1制御部181aは、残りの工具120がある場合に、処理をステップS120に進める。第1制御部181aは、残りの工具120がない場合に、処理をステップS180に進める。
【0042】
図4のステップS180において、第1制御部181aは、複数の工具120のうち、交換期限D190eの最も近い工具120を含む複数の工具120の工具交換を、優先して指示する交換スケジュールD190fを決定する。例えば、
図6において、交換期限D190eの最も近い工具120は、第1工具121である。よって、第1制御部181aは、第1工具121を含む工具120を優先して指示する。
図6では、交換スケジュールD190fは、工具120ごとの交換期限D190eに基づいて、区切られている。すなわち、第1制御部181aは、第1工具121を含む複数の工具120の工具交換を、加工予定期間のうち最も早い時期に指示する。
【0043】
第1制御部181aは、より具体的には、交換期限D190eまでの長さに応じて、第1工具121を含む複数の工具120の優先順位を決定する。交換期限D190eまでの長さは、第1工具121~第3工具123の順に長くなる。よって、第1制御部181aは、工具交換を交換期限D190eの近い工具120を優先するように、第1工具121~第3工具123の順に優先順位を決定する。
図6の交換スケジュールD190fでは、上段に上がるほど、優先順位が高いことを表す。
【0044】
第1制御部181aは、第1工具121の交換期限D190eよりも後の期間においても、同様に処理を行う。すなわち、第1制御部181aは、第1工具121の交換期限D190eよりも後の期間において、交換期限D190eの最も近い第2工具122を含む複数の工具120の工具交換を、優先して指示する。さらに、第1制御部181aは、交換期限D190eの長さに応じて、複数の工具120の優先順位を決定する。
【0045】
図4のステップS190において、第1制御部181aは、表示部130に交換スケジュールD190fを表示する。
図7は、表示部130の表示画面を示す説明図である。より具体的には、第1制御部181aは、作業予定期間D190caと使用予定期間D190cbを含む加工スケジュールD190cと交換スケジュールD190fとを並列させた状態で表示する。なお、並列させた状態とは、加工スケジュールD190cの時系列と、交換スケジュールD190fの時系列と、を一致させた状態である。
【0046】
なお、
図7では、作業者Hが作業予定期間D190caと交換スケジュールD190fを容易に確認できるように、作業予定期間D190caに隣接させて交換スケジュールD190fを表示させている。
【0047】
前述のように、工具交換を要するまでの寿命残時間D190dは、工具120の使用実績D190bとしての期間から決定できる。このため、工具交換の最適化システム11における第1制御部181aは、工具120ごとの寿命時間D191aと使用実績D190bから、工具120の寿命残時間D190dを決定する。さらに、第1制御部181aは、今後の工具120の使用予定期間D190cbを含む、加工スケジュールD190cを取得することで、工具交換を要するまでの交換期限D190eを決定できる。よって、第1制御部181aは、交換期限D190eに基づいて優先すべき工具交換を指示できる。したがって、このような形態とすることで、本開示の工具交換の最適化システム11は、作業者Hの経験や能力にかかわらずに工具交換を指示できるため、生産性や加工機110の稼働率が悪化することを防止する。
【0048】
さらに、本開示の工具交換の最適化システム11は、加工スケジュールD190cと交換スケジュールD190fを並列に表示させる。よって、作業者Hは、同時に両者を比較できるため、加工スケジュールD190cを考慮した上で、工具交換の時期を容易に決定できる。
【0049】
B.他の実施形態:
上記実施形態において、第1制御部181aは、表示部130による交換スケジュールD190fの表示のときに、表示部130に工具120の仕様を表示させてもよい。例えば、第1制御部181aは、制御装置180がマウスなどの入力部を備えることにより、作業者Hの指令により工具120の仕様を表示する。より具体的には、第1制御部181aは、作業者Hが表示部130の画面上における工具番号を選択することにより、工具120の仕様を表示する。工具120の仕様とは、例えば、工具120の種類、サイズ、交換期限D190eの詳細な時刻などである。
【0050】
このような形態とすることで、本開示の工具交換の最適化システム11は、工具交換の際に、工具120の仕様の確認が必要な場合に、工具交換を容易にする。
【0051】
C.他の実施形態:
上記実施形態において、第1制御部181aは、交換期限D190eの長さに応じて、第1工具121を含む複数の工具120の優先順位を決定している。しかし、第1制御部181aは、他の方法で優先順位を決定してもよい。
【0052】
C1.他の実施形態1:
第1制御部181aは、交換期限D190eの最も近い第1工具121を含む複数の工具120のうち、第1工具121を最も先に使用する第1加工機111が、第1工具121の次に使用する第2工具122を、複数の工具120のうち、第1工具121と第2工具122以外の第3工具123よりも優先する。すなわち、第1制御部181aは、同じ加工機110に使用される工具120を優先するように、工具交換の優先順位を決定してもよい。
【0053】
このような形態とすることで、作業者Hは、交換期限D190eの最も近い第1工具121の工具交換の際に、同じ加工機110に使用される第2工具122も工具交換できる。よって、本開示の工具交換の最適化システム11は、例えば、工具交換の際に、加工機110ごとに発生する工具交換に伴う準備の期間を、削減できる場合がある。
【0054】
C2.他の実施形態2:
第1制御部181aは、工具120の使用予定頻度に基づいて、工具交換の優先順位を決定してもよい。工具120の使用予定頻度は、これまでの加工スケジュールD190cから得られる工具120の使用の頻度に基づいて予め定められた、今後予定される工具120の使用の頻度である。例えば、1か月間の工具120の使用の頻度に基づいて、翌月の工具120の使用予定頻度が決定される。すなわち、加工スケジュールD190cが工具120の使用予定頻度も含むことにより、第1制御部181aは、第1工具121を含む複数の工具120のうち、使用の頻度の最も高い工具120を含む複数の工具120を優先する。例えば、第1制御部181aは、使用頻度が第1工具121~第3工具123の順に少なくなる場合、優先順位を第1工具121~第3工具123の順に決定してもよい。
【0055】
このような形態とすることで、本開示の工具交換の最適化システム11は、使用頻度の高い工具120を優先して工具交換することにより、加工予定期間内に工具交換の期間を確保できなくなる可能性を低減する。
【0056】
C3.他の実施形態3:
その他の形態として、例えば、第1制御部181aは、寿命時間D190aの短い工具120の順に優先順位を決定してもよい。さらに、工具120の管理番号を予め工具120の種類や用途に応じて定めることにより、工具120の管理番号の順に優先順位を決定してもよい。
【0057】
D.他の実施形態:
(1)上記実施形態において、工具交換の最適化システム11は、フレキシブル生産システムの構成により実現されている。しかし、工具交換の最適化システム11は、加工機110の制御装置が第1制御部181aを備えることにより、単体の加工機110によって実現されていてもよい。さらに、工具交換の最適化システム11は、VPP(Virtual Power Plant)によって実現されてもよい。VPPシステムにおいて、工具に相当する交換の対象は、蓄電池である。例えば、VPPシステムおける工具交換の最適化システムは、蓄電池が予定する出力の期間と、蓄電池における寿命残時間とに基づいて、蓄電池の交換期限および交換スケジュールを決定する。VPPシステムにおける工具交換の最適化システムでは、第1制御部181aに相当する制御部は、VPPシステムを制御するクラウドサーバに設けられる。制御部は、蓄電池を管理する設備の表示部に交換スケジュールを表示することにより、作業者に交換を指示する。
(2)上記実施形態において、第1制御部181aは、制御装置180のプロセッサ181における機能部である。しかし、第1制御部181aは、制御装置180に接続された他の制御装置が備えていてもよい。例えば、第1制御部181aは、制御装置180とは異なる汎用コンピュータにより実現されていてもよい。
(3)上記実施形態において、加工機110は、マシニングセンタであるが、他の工作機械でもよい。例えば、加工機110は、工具120の切り替えを自動で行わないNC工作機械や、手動で操作されるせん断機などでもよい。さらに、加工機110は、切削工具以外を使用する工作機械でもよい。例えば、加工機110は、電極を工具120として使用する溶接機や、金型を工具120として使用するプレス機械などでもよい。
(4)上記実施形態において、加工機110として、第1加工機111と第2加工機112の2台が使用される。しかし、加工機110は、1以上の台数であればよい。すなわち、加工機110は、1台でもよいし、3台でもよい。
(5)上記実施形態において、加工予定期間に基づいて設定されている他の期間は、15分刻みに設定されている。しかし、この他の期間は、15分刻みに限られない。この他の期間は、1分刻みでもよいし、1秒刻みでもよい。
(6)上記実施形態において、第1制御部181aは、加工スケジュールD190cと交換スケジュールD190fを並列させた状態で、表示部130に表示している。しかし、第1制御部181aは、並列させた状態で表示していなくてもよい。すなわち、第1制御部181aは、加工スケジュールD190cと交換スケジュールD190fのそれぞれの時系列が一致していない状態で、交換スケジュールD190fを表示していてもよい。例えば、第1制御部181aは、加工スケジュールD190cと交換スケジュールD190fを異なる表示画面に表示してもよい。
【0058】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
11…最適化システム、110…加工機、110a…工具マガジン、111…第1加工機、112…第2加工機、121…第1工具、122…第2工具、123…第3工具、130…表示部、140…パレット、150…パレット収納用棚、160…搬送装置、170…ローディングステーション、171…第1ローディングステーション、172…第2ローディングステーション、180…制御装置、181…プロセッサ、181a…第1制御部、182…ROM、183…RAM、D190a,D191a~D193a…寿命時間、D190b,D191b~D193b…使用実績、D190c…加工スケジュール、D190ca…作業予定期間、D190cb…使用予定期間、D190d,D191d~D193d…寿命残時間、D190e…交換期限、D190f…交換スケジュール、H…作業者、Ra…レール、W…被加工物