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特開2024-176611架台ユニット及びリニア搬送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176611
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】架台ユニット及びリニア搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 37/00 20060101AFI20241212BHJP
   B23Q 41/02 20060101ALI20241212BHJP
   B23Q 41/04 20060101ALI20241212BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20241212BHJP
   B23P 21/00 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
B23Q37/00 Z
B23Q41/02 A
B23Q41/04
B65G54/02
B23P21/00 307Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095305
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100222243
【弁理士】
【氏名又は名称】庄野 友彬
(72)【発明者】
【氏名】面 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山中 修平
【テーマコード(参考)】
3C030
3C042
3F021
【Fターム(参考)】
3C030DA21
3C042RA11
3C042RB23
3C042RF10
3F021AA01
3F021BA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数基の架台モジュールを連結して生産ラインを構成した際に、各架台モジュールのベースプレートを互いに連結して滑らかに連続する一つの取付け面を容易に構成することが可能な架台ユニットを提供する。
【解決手段】各架台モジュール2は、架台本体と、機械装置の取付け面となるベースプレート22と、前記ベースプレートと前記架台本体の天板21aの間に設けられて、当該天板に対する前記ベースプレートの高さ及び傾きを自在に変更可能なフローティング部材23と、前記ベースプレートの側端に設けられる連結案内部材24と、前記連結案内部材と反対側で前記ベースプレートの側端に設けられる受け入れ部材25と、を備えており、隣接して配置された一方の架台モジュールの前記連結案内部材と他方の架台モジュールの前記受け入れ部材とを嵌合させることにより、これら架台モジュールのベースプレートが互いに連なった一つの取付け面を構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数基の架台モジュールを連結して使用することが可能な架台ユニットであって、
各架台モジュールは、
架台本体と、
前記架台本体の天板の上方に配置されて機械装置の取付け面となるベースプレートと、
前記ベースプレートと前記架台本体の天板の間に設けられて、当該天板に対する前記ベースプレートの高さ及び傾きを自在に変更可能なフローティング部材と、
前記ベースプレートの側端に設けられる連結案内部材と、
前記連結案内部材と反対側で前記ベースプレートの側端に設けられると共に、前記連結案内部材が嵌合する連結スロットを有する受け入れ部材と、
を備え、
隣接して配置された一方の架台モジュールの前記連結案内部材と他方の架台モジュールの前記受け入れ部材とを嵌合させることにより、これら架台モジュールのベースプレートが互いに連なった一つの取付け面を構成することを特徴とする架台ユニット。
【請求項2】
前記受け入れ部材の連結スロットに対する前記連結案内部材の挿入方向は、前記架台モジュールの連結方向と直交していることを特徴とする請求項1記載の架台ユニット。
【請求項3】
前記受け入れ部材には前記連結スロットに挿入された前記連結案内部材を当該挿入方向と直交する四方向から挟み込んで拘束するガイドローラが設けられていることを特徴とする請求項1記載の架台ユニット。
【請求項4】
前記フローティング部材は前記ベースプレートを前記架台本体の天板から押し上げる方向の押圧力を発揮する弾性部材を有する一方、前記ベースプレートと前記架台本体の天板の間には前記フローティング部材の押圧力に抗してベースプレートを仮固定する係止部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の架台ユニット。
【請求項5】
請求項1記載の架台ユニットに含まれる複数基の架台モジュールの各ベースプレートに対して、リニアガイドの軌道レールが位置決め固定されたリニア搬送モジュールを配置し、
前記複数基の架台モジュールを連結して前記架台ユニットを構成することによって、各リニア搬送モジュールの軌道レールを長手方向に連ねた案内軌道が構成され、
少なくともいずれか一つの軌道レールに組付けられたリニアガイドのスライダが前記案内軌道に沿って前記架台ユニット上を自在に移動可能であることを特徴とするリニア搬送システム。
【請求項6】
前記スライダにはワークテーブルとなるキャリッジが固定され、
各リニア搬送モジュールには複数のコイルユニットが前記軌道レールの長手方向に沿って配列される一方、前記キャリッジにはマグネット部材が設けられ、
これら複数のコイルユニットとマグネット部材が対向して前記キャリッジに推力を与えるリニアモータが構成されることを特徴とする請求項5記載のリニア搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業用ロボットや工作機械が配置された複数の架台を組み合わせて任意の生産ラインを構築することが可能な架台ユニット及びリニア搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、製品の多品種少量生産化や製品サイクルの短期化が進んでおり、これら製品の生産ラインは、生産対象にあわせて、ライン構成の組み換えが頻繁に行う必要が生じている。従って、そのような生産ラインの構成の組み換えを容易に且つ短時間で行い、且つ、生産ラインの自動化を行うことができれば、製品の品質を安定させると共に、柔軟な生産計画を立案して実行することができる。
【0003】
特許文献1には生産ラインの構成を容易に組み換え可能な生産システムが開示されている。この生産システムはワークの加工又は組み立て作業を行う複数の生産セルから構成され、これら生産セルを直列に配置して生産ラインを構築している。各生産セルは、枠体であるブース内にロボットアームを有する架台を収容して構成されており、各架台にはワークスペースとしてのベースプレートが設けられている。各生産セルでは前記架台のベースプレート上でワークに対する加工又は組立作業が行われ、前記ロボットアームは各ブース内におけるワークの取り扱い、互いに隣接する生産セル間でのワークの搬送を担っている。そして、このような生産システムでは生産セルを任意に入れ替え、又はその順番を任意に組み替えることにより、生産ラインの構成を容易に組み替えることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-11501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される生産システムでは、互いに隣接する生産セルの間でのワークの搬送をロボットアームによって行っており、各ロボットステーションに高精度のロボットアームを設ける必要が生じてしまう。仮に、直列に配置された生産セルの間を連続的に移動可能なリニア搬送システムを構築できれば、生産システムの上流から下流に向けて一気通貫にワークを搬送することが可能となり、すべての生産セルにロボットアームを設ける必要はなくなる。
【0006】
ここで、互いに隣接する生産セルの間でワークを搬送可能なリニア搬送システムを構築するためには、各生産セルにおける架台のベースプレートを隣接する生産セルの架台のそれと連結する必要があり、しかも連結されたベースプレート同士が一つの面として滑らかに連続している必要がある。
【0007】
しかし、前述のように複数の生産セルを任意に入れ替え、又はその順番を任意に組み替えると、隣接するベースプレート同士の連結を行う際に、各ベースプレートの高さ及び傾斜角度を個別に修正する必要が生じ、生産ラインの構成の組み換えに多大な労力が必要なってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、複数基の架台モジュールを連結して生産ラインを構成した際に、各架台モジュールのベースプレートが連なって一つの取付け面を容易に構成することができ、しかも複数基の架台モジュールの入れ替え又は組み替えを容易に行うことが可能な架台ユニットを提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、複数基の架台モジュールを入れ替え又は組み替えて架台ユニットを構成した場合であっても、当該架台にユニット上に容易に再構築することが可能なリニア搬送システムを提供することにある。
【0010】
すなわち、本発明は複数基の架台モジュールを連結して使用することが可能な架台ユニットであって、各架台モジュールは、架台本体と、前記架台本体の天板の上方に配置されて機械装置の取付け面となるベースプレートと、前記ベースプレートと前記架台本体の天板の間に設けられて、当該天板に対する前記ベースプレートの高さ及び傾きを自在に変更可能なフローティング部材と、前記ベースプレートの側端に設けられる連結案内部材と、前記連結案内部材と反対側で前記ベースプレートの側端に設けられると共に、前記連結案内部材が嵌合する連結スロットを有する受け入れ部材と、を備えている。そして、隣接して配置された一方の架台モジュールの前記連結案内部材と他方の架台モジュールの前記受け入れ部材とを嵌合させることにより、これら架台モジュールのベースプレートが互いに連なった一つの取付け面が構成される。
【0011】
また、本発明のリニア搬送システムは、前記架台ユニットに含まれる複数基の架台モジュールの各ベースプレートに対して、リニアガイドの軌道レールが位置決め固定されたリニア搬送モジュールを配置し、前記複数基の架台モジュールを連結して前記架台ユニットを構成することによって、各リニア搬送モジュールの軌道レールを長手方向へ直列に連ねた案内軌道が構成されるものであり、少なくともいずれか一つの軌道レールに組付けられたリニアガイドのスライダが前記案内軌道に沿って前記架台ユニット上を自在に移動可能となっている。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明によれば、各架台モジュールでは架台本体の天板とベースプレートの間にフローティング部材が設けられており、前記ベースプレートは架台本体に対する高さ及び傾きを自在に変更可能となっている。このため、互いに隣接する二基の架台モジュールのそれぞれのベースプレートを連結する際に、一方のベースプレートの側端に設けられた連結案内部材と他方のベースプレートの側端に設けられた受け入れ部材を嵌合させると、前記フローティング部材の作用によって、一方のベースプレートの高さ及び傾斜を他方のベースプレートのそれらに容易に合致させることができ、二つのベースプレートが互いに連なった一つの取付け面を構成することが可能となる。
【0013】
また、各架台モジュールのベースプレートに対してリニア搬送モジュールを配置しておけば、複数基の架台モジュールを連結して架台ユニットを構成した際に、複数のベースプレートが連なった一つの取付け面の上に前記リニア搬送モジュールを直列に連ねることができ、架台モジュールの入れ替え又は組み換えを容易に行いつつも、リニア搬送システムを容易に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の架台ユニットの実施形態の一例を示す斜視図である。
図2図1に示した架台ユニットの正面図である。
図3】フローティング部材を示す拡大正面図である。
図4】連結案内部材と受け入れ部材の結合状態を示す拡大正面図である。
図5】二基の架台モジュールの連結作業の様子を示す斜視図である。
図6】本発明のリニアリニア搬送システムを構築するリニア搬送モジュールの一例を示す斜視図である。
図7図6に示すリニア搬送モジュールの正面図である。
図8図6に示すリニア搬送モジュールを用いて構築するリニア搬送システムの分解斜視図である。
図9】三基のリニア搬送モジュールを直列に配置して構成したリニア搬送システムを示す側面図である。
図10】架台モジュールを連結してリニア搬送システムを構築する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を用いながら本発明の架台ユニットを詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明を適用した架台ユニットの実施形態の一例を示す斜視図である。この架台ユニット1は複数基の架台モジュール2を一列に連結して使用することが可能であり、図1は二基の架台モジュール2を連結した状態を示している。各架台モジュール2にはベースプレートが設けられており、当該ベースプレート上に各種加工機やロボットアーム等を据え付けることによって、ワークに対する加工又は組立の工程のいずれかを分担させることが可能である。また、前記架台ユニット1には複数基の架台モジュール2を貫くリニア搬送システムを設けることが可能であり、このリニア搬送システムを用いることで、加工や組み立ての対象となるワークを複数基の架台モジュール2の連結方向に沿って自在に搬送することができる。
【0017】
すなわち、前記架台ユニット1は複数基の架台モジュール2の連結方向に沿ってワークを搬送しながら当該ワークに対して各種加工や組み立てを行うことが可能な生産ラインを構成するものである。また、複数基の架台モジュール2の配列を組み替えることにより、ワークに対する各種加工や各種組立の順番を任意に入れ替え、生産ラインの構成の組み換えを容易に行えるようになっている。尚、複数基の架台モジュール2を渡りながらワークを搬送するリニア搬送システムについては後述する。
【0018】
図2は前記架台ユニット1の正面図である。同図に示されるように、前記架台ユニット1を構成する各架台モジュール2は、キャスター20を備えて移動自在な架台本体21と、前記架台本体21の天板21aの上方に配置されたベースプレート22と、前記天板21aに対する前記ベースプレート22の高さ及び傾きを自在に変更可能な複数のフローティング部材23と、前記ベースプレート22の一側端に設けられる連結案内部材24と、前記連結案内部材24と反対側で前記ベースプレート22に設けられる受け入れ部材25と、を備えている。前記連結案内部材24と前記受け入れ部材25は対をなしており、前記受け入れ部材25に設けられた連結スロットに前記連結案内部材24を挿入することによって、互いに隣接する二基の架台モジュール2が相互に連結されるようになっている。
【0019】
前記架台本体21は前記キャスター20が設けられた底板21bに対して複数の支柱21cで前記天板21aを支えたものであり、全体として略矩形状に形成されている。前記底板21bと前記天板21aとの間は前記ベースプレート22上に配置される各種加工機械やロボットアームの制御コントローラや電源部などの収容空間として利用可能である。また、前記底板21bの下には足踏み式の移動防止ストッパー26が設けられており、ペダルを踏むことで固定脚が床面に強く接触して、前記架台本体21を床面上で固定できるようになっている。
【0020】
前記架台本体21の天板21a上には複数のフローティング部材3が設けられており、前記ベースプレート22はこれらフローティング部材3を介して前記天板21a上に支持されている。各フローティング部材3は、図3に示すように、ガイドロッド30と、前記天板21aに対してこのガイドロッド30を傾動自在に連結する下部球面軸受31と、前記ベースプレート22に対して前記ガイドロッドを傾動自在に連結する上部球面軸受32と、これら下部球面軸受31と上部球面軸受32の間に設けられて前記ベースプレート22を前記天板21aに対して弾性的に支承する圧縮ばね33と、を備えている。
【0021】
前記ガイドロッド30は前記下部球面軸受31に対しては固定的に設けられているが、前記上部球面軸受32に対しては摺動自在に設けられており、前記ベースプレート22に作用する負荷に応じて前記圧縮ばね33が押し縮められ、前記ベースプレート22が前記架台本体21に対して降下すると、当該ガイドロッド30の先端が前記ベースプレートから突出するように構成されている。また、前記ガイドロッド30及び前記圧縮ばね33は前記天板21aと前記ベースプレート22の間に設けられた筒状ケース34によって覆われており、この筒状ケース34は前記天板21aに対する前記ベースプレート22の昇降に応じて伸縮する。このため、前記ベースプレート22に対して負荷が作用すると、当該負荷に応じて前記ベースプレート22の姿勢、すなわち高さ及び傾きが前記架台本体21の天板21aに対して自在に変化できるようになっている。
【0022】
また、ベースプレート22の姿勢が変化した後に、その状態を仮固定できるよう、前記天板21aとベースプレート22との間には前記フローティング部材23に隣接して複数の係止部材27が設けられている。各係止部材27は前記フローティング部材23の圧縮ばね33の付勢力に抗して前記ベースプレート22を任意の高さに維持するものであり、スクリュープレートを締め付けるとその回転量に応じて前記天板21aに対するベースプレート22の高さが減少する。従って、前記ベースプレート22が前記天板21aに向けて押し下げられた状態で前記係止部材27を調整すると、前記ベースプレート22に対する負荷が除去された後も、当該ベースプレート22の高さを負荷除去前のそれに仮固定することができる。
【0023】
図4は前記連結案内部材24と前記受け入れ部材25を組み合わせた状態を示す拡大正面図である。前記連結案内部材24は前記ベースプレート22の一辺に沿って長尺に設けられた棒状部材であり、長手方向に直交する断面は長方形状に形成されている。この連結案内部材24は所定間隔で配置された複数のサポート部材24aによって前記ベースプレート22から側方へ離間した位置に保持されている。一方、前記受け入れ部材25は前記ベースプレート22を挟んで前記連結案内部材24とは反対側の位置で当該ベースプレート22の下面に設けられている。従って、二基の架台モジュール2A,2Bを互いに隣接させると、一方の架台モジュール2Aの前記連結案内部材24と他方の架台モジュール2Bの前記受け入れ部材25が隣接することになる。前記受け入れ部材25は前記連結案内部材24をその長手方向に沿って挿入可能な連結スロット25aを有しており、前記連結案内部材24は当該連結スロット25aに収容されると前記受け入れ部材25に対して緊密に嵌合し、両者がガタつきなく一体化するようになっている。
【0024】
前記連結スロット25aに対する前記連結案内部材24の挿入を容易なものとするため、前記受け入れ部材25には当該連結案内部材24に対して上下左右の四方向から当接する複数のガイドローラが設けられている。これらガイドローラは前記受け入れ部材25の長手方向に沿って所定の間隔で複数配置されており、前記連結スロット25aに対する前記連結案内部材24の抜き差しを容易なものとしつつ、当該連結スロット25aと前記連結案内部材25の隙間を排除して、前記受け入れ部材25に対する前記連結案内部材24の緊密な嵌合を実現する。
【0025】
図5は互いに隣接して配置される二基の架台モジュール2A,2Bの連結作業の様子を示す斜視図である。連結作業に当たっては、一方の架台モジュール2Bは前記移動防止用ストッパー26を使用して床面に対して固定し、他方の架台モジュール2Aをキャスター20で床面に対してX方向へ移動させ、これら架台モジュール2A,2Bの仮連結作業を行う。この仮連結作業では、一方の架台モジュール2Aを連結方向と直行する方向へ移動させながら当該架台モジュール2Aの連結案内部材24を他方の架台モジュール2Bの受け入れ部材25に挿入することで、二基の架台モジュール2A,2Bのそれぞれのベースプレート22が互いに連結される。
【0026】
このとき、互いに連結される二基の架台モジュール2A,2Bのそれぞれでは、前記ベースプレート22が前記架台本体21に対して前記フローティング部材23を介して支持されているので、ベースプレート22はその高さや姿勢をある程度の自由度をもって変化させることが可能である。また、一方の架台モジュール2Aの連結案内部材24は他方の架台モジュール2Bの受け入れ部材25に対して嵌合し、断面長方形状の連結案内部材24は連結スロット25aの内部で上下左右の四方向から前記ガイドローラによって拘束される。
【0027】
このため、二基の架台モジュール2A,2Bを前記連結案内部材24及び前記受け入れ部材25を介して相互に連結すると、各架台モジュール2A,2Bに設けられたフローティング機構23の働きにより、一方の架台モジュール2Aのベースプレート22の高さ及び傾きが他方の架台モジュール2Bのベースプレート22のそれに倣い、これら架台モジュール2A,2Bのベースプレート22は滑らかに連続する一つの取付け面を構成することになる。
【0028】
そして、このように二基の架台モジュール2A,2Bの仮連結作業を終えたら、前記係止部材27を調整して前記架台本体21に対してベースプレート22を仮固定した後、図1に示すように、連結された二基のベースプレート22の間に固定プレート4をかけ渡して当該固定プレート4をベースプレート22にねじ止めする。これにより、架台モジュール2A,2Bのベースプレート22は高さ及び傾斜が合致した一つの取付け面を構成した状態で一体化される。
【0029】
仮に、前記フローティング機構23、前記連結案内部材24及び前記受け入れ部材25が存在しない場合、二基の架台モジュール2A,2Bを相互に連結するに際しては、一方の架台モジュール2Aのベースプレート22の高さ及び傾きを他方の架台モジュール2Bのベースプレート22に合致させるための調整作業が必要となる。通常、このような調整作業は、前記ベースプレート22の四隅の高さを個別に調整して行うことになり、大変に手間のかかる作業である。これに対して本実施形態の架台ユニット1であれば、互いに隣接して配置された二基の架台モジュール2A,2Bを前記連結部材24及び前記受け入れ部材25を用いて連結するのみで、これら架台モジュール2A,2Bのベースプレート22の高さ及び傾斜を容易に合致させることが可能である。
【0030】
図6及び図7は本発明のリニア搬送システムLSを構築するためのリニア搬送モジュール10の一例を示す斜視図及び正面図である。前記リニア搬送システムは図6に示すリニア搬送モジュール10の複数基を機械装置の取付け面に対して直列に配置して構成される。
【0031】
前記リニア搬送モジュール10は、前記取付け面に対してボルト固定されるモジュールベース11と、このモジュールベース11に対して固定された軌道レール12と、前記軌道レール12に組付けられたスライダ13と、前記スライダ13に固定されたキヤリッジ14と、を備えている。前記軌道レール12と前記スライダ13はリニアガイドを構成しており、当該スライダ13は多数の転動体を介して前記軌道レール12に組付けられると共に、前記多数の転動体の無限循環路を備えている。このため、前記スライダ13は前記軌道レール12の長手方向へ自在に往復運動可能であり、当該スライダ13に固定されたキャリッジ14は前記モジュールベース11上を前記軌道レール12の長手方向へ沿って自在に移動可能である。また、前記軌道レール12は前記モジュールベース11に対して位置決めされており、当該モジュールベース11を機械装置の取付け面に対して位置決め固定すると、前記軌道レール12が前記取付け面に対して位置決めされ、前記キャリッジ14を前記取付け面上で高精度に移動させることが可能である。尚、これら軌道レール12とスライダ13の組み合わせとしては、必要とされる前記キャリッジ14の移動精度、荷重負荷能力に応じて公知のリニアガイドを任意に選択して使用することができる。
【0032】
また、この実施形態におけるリニア搬送システムでは前記キャリッジ14対してリニアモータ7によって前記軌道レール12の長手方向に沿った推力が与えられる。前記モジュールベース11にはリニアモータ7の固定子としてのコイル部材7aが前記軌道レール12に沿って配列される一方、前記キャリッジ14にはリニアモータ7の可動子としてのマグネット部材7bが設けられている。前記マグネット部材7bは前記キャリッジ14の移動方向に沿ってN極とS極を交互に配列した構造となっている。
【0033】
更に、前記キャリッジ14にはリニアスケール8aが設けられる一方、前記モジュールベース11には前記リニアスケール8aと対向する位置にエンコーダ8bが設けられており、前記モジュールベース11に対する前記キャリッジ14の移動量に応じた出力信号を前記エンコーダ8bから得られるようになっている。従って、前記リニアモータ7に印加する駆動信号を前記エンコーダ8bの出力信号に基づいて制御することにより、前記モジュールベース11上での前記キャリッジ14の移動量を任意に制御することが可能である。尚、これらリニアスケール8aとエンコーダ8bの組み合わせは、磁気式や光学式等の任意の方式を選択することができる。
【0034】
このようなリニア搬送モジュール10は、図8に示すように、複数基のリニア搬送モジュール10を前記軌道レール12の長手方向に沿って直列に配列し、互いに隣接するリニア搬送モジュール10の端面同士を突き合わせて使用される。
【0035】
図9は三基のリニア搬送モジュール10A,10B,10Cを前記軌道レール12の長手方向に沿って直列に配置して構成したリニア搬送システムLSを示す側面図である。同図に示したリニア搬送システムLSでは、三基のリニアモジュール10A,10B,10Cのうち、前記キャリッジ14及び前記スライダ13は一基のリニアモジュール10Aにのみ設けられており、前記スライダ13は各リニアモジュール10A,10B,10Cに配設された軌道レール12を乗り移りながら、このリニア搬送システムLSの全長にわたって往復運動することが可能である。尚、図9では三基のリニアモジュール10A,10B,10Cを直列に配置した例を示しているが、配置するリニアモジュールの基数は必要とするリニア搬送システムの規模に応じて任意に決定することが可能である。
【0036】
図6に示されるように、各リニア搬送モジュール10ではモジュールベース11の全長よりも軌道レール12の全長の方がわずかに短く設定されており、当該モジュールベース11の両端にはレール取付け面15の一部が露出している。このため、二基のリニア搬送モジュール10を直列に配置して機械装置の取付け面に固定した場合に、一方のリニア搬送モジュール10の軌道レール12の端部と他方のリニア搬送モジュール10の軌道レール12の端部とは隙間を介して離間した状態となる。図9に示すリニア搬送システムLSでは、リニア搬送モジュール10Aとリニア搬送モジュール10Bの境界部、リニア搬送モジュール10Bとリニア搬送モジュール10Cの境界部に対して連結レール9が配置され、当該連結レール9は互いに隣接する二基のリニア搬送モジュール10を跨ぐようにして各リニア搬送モジュール10のレール取付け面15に固定される。これにより、直列に配置された三基のリニア搬送モジュール10A,10B,10Cの軌道レール12が一本の案内軌道として構成される。
【0037】
このようにして三基のリニア搬送モジュール10A,10B,10Cを直列に配置して位置決め固定すると、各モジュールベース11に固定された軌道レール12が前記連結レール9を介して直列に結合され、長尺な一本の案内軌道が構成される。いずれかのリニア搬送モジュール10に組付けられたキャリッジ14は当該案内軌道に沿って三基のリニアモジュール10A,10B,10Cの上を連続的に移動することが可能となる。このため、各リニア搬送モジュール10に設けられたコイル部材7aに通電すると、前記スライダ13に固定されたキャリッジ14はリニアモータ7によって推進され、三基のリニア搬送モジュール10A,10B,10Cによって構成された経路内を自在に往復運動することになる。従って、直列に配置するリニア搬送モジュール10の基数を増減することにより、経路長を任意に変更してリニア搬送システムLSを構築することができる。尚、複数基のリニア搬送モジュール10によって構成されたリニア搬送システムLSは複数基のキャリッジ14を含むことも可能であり、その場合は各キャリッジ14に対して他のキャリッジ14から独立した個別の運動を与えることも可能である。
【0038】
図10は、前述した複数の架台モジュール2を連結して架台ユニット1を構成し、併せて前記架台ユニット1上にリニア搬送システムLSを構築する様子を示す斜視図である。各架台モジュール2A,2Bのベースプレート22には前記リニア搬送モジュール10A,10Bが同一直線状に位置するようにそれぞれ固定されている。二基の架台モジュール2A,2Bを連結すると、一方の架台モジュール2Aのベースプレート22に固定されたリニア搬送モジュール10Aと他方の架台モジュール2Bのベースプレート22に固定されたリニア搬送モジュール10Bの間には所定の間隔が生じるが、例えばこの間隔は前記リニア搬送モジュールの一基分となっている。このため、二基の架台モジュール2A,2Bを連結した後に、これら架台モジュールの境界を跨ぐようにしてリニア搬送モジュール10Cをリニア搬送モジュール10Aとリニア搬送モジュール10Bの間に挿入して、当該リニア搬送モジュール10Cを各ベースプレート22に固定すると、三基のリニア搬送モジュール10A,10B,10Cが直列に整列する。
【0039】
複数基のリニア搬送モジュール10A,10B,10Cが直列に整列した後、互いに隣接するリニア搬送モジュール10を跨ぐようにして前記連結レール9を固定すると、各リニア搬送モジュール10に含まれる軌道レール12が前記連結レール9を含んで一条の案内軌道を構成する。これにより、前記軌道レール12に組付けられたスライダ13が三基のリニア搬送モジュール10A,10B,10Cの上を連続的に移動可能となる。そして、各リニア搬送モジュールに設けられたコイル部材7aに通電すると、前記スライダ13に固定されたキャリッジ14はリニアモータ7によって推進されて、二基の架台モジュール2A,2Bの上で往復運動することが可能となる。例えば、前記キャリッジ14にワークテーブルを固定すれば、複数基の架台モジュール2上でワークを搬送可能なリニア搬送システムLSを構築することができる。
【0040】
このようにして複数基の架台モジュール2に跨るリニア搬送システムLSを構築するためには、これら架台モジュール2のベースプレート22は高さ及び傾斜が合致した一つの取付け面を構成していることが重要である。仮に、互いに隣接する二基のベースプレート22の高さが異なっており、両者の間に段差が生じている場合には、直列に配置される複数基のリニア搬送モジュール10の軌道レール12を滑らかに接続することができず、複数基の架台モジュール2の間を往来するリニア搬送システムLSを構築することが不能となってしまうからである。
【0041】
既に説明したように本実施形態の架台ユニット1では、互いに隣接して配置された二基の架台モジュール2A,2Bを前記連結部材24及び前記受け入れ部材25を用いて連結するのみで、隣接する二基のベースプレート22の高さ及び傾斜を容易に合致させることが可能であり、一の架台モジュール2と他の架台モジュール2との間でワーク等の対象物を自在に搬送することが可能なリニア搬送システムLSを容易に構築することが可能である。
【0042】
尚、図を用いて説明した本発明の実施形態では、二基の架台モジュールを連結した例を説明したが、直列に連結する架台モジュールの基数は任意であり、三基以上の架台モジュールを連結して架台ユニット及びリニア搬送システムを構成しても差し支えない。
【符号の説明】
【0043】
1…架台ユニット、2…架台モジュール、10…リニア搬送モジュール、12…軌道レール、13…スライダ、14…キャリッジ、21…架台本体、21a…天板、22…ベースプレート、23…フローティング部材、24…連結案内部材、25…受け入れ部材、25a…連結スロット、LS…リニア搬送システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10