(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176613
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】最適化装置、最適化方法および最適化プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 13/02 20060101AFI20241212BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241212BHJP
【FI】
G05B13/02 A
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095313
(22)【出願日】2023-06-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度国土技術政策総合研究所「AIを用いた分流式下水道における雨天時侵入水対策技術実証研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】金澤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】土井 護
(72)【発明者】
【氏名】大西 直
(72)【発明者】
【氏名】上野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】須田 聡
【テーマコード(参考)】
5H004
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H004GA30
5H004GB08
5H004HA01
5H004HA02
5H004HA04
5H004HA05
5H004HB01
5H004HB02
5H004HB04
5H004HB05
5H004KC02
5H004KC31
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】外乱の存在する制御対象の制御に用いる制御パラメータを求めるための計算時間を低減することが可能な最適化装置を得ること。
【解決手段】制御対象2の制御に用いる制御パラメータの値を求める最適化装置1であって、制御対象2に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得する外乱情報取得部である情報取得部11と、外乱情報に基づいて、制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って制御パラメータの最適解を求める最適化部12と、を備え、最適化部12は、外乱情報が示す外乱のピークまでの期間である第1の期間において、外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも最適化処理に使用する目的関数の数を制限することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の制御に用いる制御パラメータの値を求める最適化装置であって、
前記制御対象に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得する外乱情報取得部と、
前記外乱情報に基づいて、前記制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って前記制御パラメータの最適解を求める最適化部と、
を備え、
前記最適化部は、前記外乱情報が示す前記外乱のピークまでの期間である第1の期間において、前記外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも前記最適化処理に使用する前記目的関数の数を制限することを特徴とする最適化装置。
【請求項2】
前記最適化部は、前記第1の期間において1つの前記目的関数を使用する単目的最適化処理を行い、前記第2の期間において複数の前記目的関数を使用する多目的最適化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
【請求項3】
前記最適化部は、前記第2の期間において前記目的関数に設定された変数のうちの一部を、前記第1の期間において前記目的関数に設定する変数から除外し、除外した前記変数を用いた制約条件の下で前記制御パラメータの前記最適解を求めることを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
【請求項4】
前記最適化部が前記第1の期間において使用する前記目的関数は、前記制御対象の消費エネルギーを示す前記目的関数を含むことを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
【請求項5】
前記制御対象の前記消費エネルギーを示す前記目的関数は、前記制御対象の消費電力を少なくとも含むことを特徴とする請求項4に記載の最適化装置。
【請求項6】
前記制御対象は、下水処理システムであり、
前記制御パラメータは、前記下水処理システムが有する揚水ポンプの揚水量であり、
前記外乱は、前記下水処理システムへの下水の流入量であることを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
【請求項7】
前記最適化部は、前記第2の期間において、前記下水処理システムの消費電力と、前記下水処理システムに貯めた処理前の前記下水の水位と、前記下水処理システムから放流する処理水の水質とを前記目的関数とする多目的最適化を実行することによって、前記揚水量の前記最適解を求めることを特徴とする請求項6に記載の最適化装置。
【請求項8】
前記最適化部は、前記第1の期間において、前記下水処理システムの消費電力を最小化する単目的最適化を実行することによって、前記揚水量の前記最適解を求めることを特徴とする請求項6または7に記載の最適化装置。
【請求項9】
前記最適化部は、前記外乱情報に基づいて前記目的関数の数を制限するか否かを判断し、前記目的関数の数を制限しないと判断した場合、前記第1の期間において前記第2の期間と同数の前記目的関数を使用することを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
【請求項10】
前記外乱情報取得部は、前記外乱の大きさの予測値を前記外乱情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
【請求項11】
前記最適化部は、前記第1の期間における前記最適化処理の対象期間の長さを、前記第2の期間における前記対象期間の長さよりも長くすることを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
【請求項12】
前記最適化部は、前記第1の期間において、2つ以上であって前記第2の期間において使用する前記目的関数の数よりも少ない前記目的関数を使用する多目的最適化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
【請求項13】
前記最適化部は、前記第1の期間において、前記制御対象が使用する複数の種類のエネルギーのそれぞれの消費エネルギーを示す前記目的関数を使用することを特徴とする請求項12に記載の最適化装置。
【請求項14】
最適化装置が、制御対象の制御に用いる制御パラメータの値を求める最適化方法であって、
前記制御対象に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得するステップと、
前記外乱情報に基づいて、前記制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って前記制御パラメータの最適解を求めるステップと、
を含み、
前記最適解を求めるステップでは、前記外乱情報が示す前記外乱のピークまでの期間である第1の期間において、前記外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも使用する前記目的関数の数を制限することを特徴とする最適化方法。
【請求項15】
コンピュータシステムに、
制御対象に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得するステップと、
前記外乱情報に基づいて、前記制御対象の制御に用いる制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って前記制御パラメータの最適解を求めるステップと、
を実行させ、
前記最適解を求めるステップでは、前記外乱情報が示す前記外乱のピークまでの期間である第1の期間において、前記外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも使用する前記目的関数の数を制限することを特徴とする最適化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御対象の制御に用いる制御パラメータの値を最適化処理によって求める最適化装置、最適化方法および最適化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の制御に用いる制御パラメータの値を求める際に、制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数として設定されたものの値が最適化されるような制御パラメータの値を探索する最適化処理が用いられることがある。1つの目的関数を使用するものを単目的最適化処理と呼び、複数の目的関数を使用するものを多目的最適化処理と呼ぶ。
【0003】
例えば、特許文献1では、多目的最適化処理によって、制御対象の制御パラメータの値を最適化する最適化装置において、制御対象が積分系を持つ場合に、目標値へ向かって制御する途中の状態の過渡状態区間と、定常状態区間とで、制御パラメータの値を個別に最適化対象とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多目的最適化処理では、目的関数の数が増えるほど制御パラメータの値に関係する多くの要因を考慮することが可能であるが、最適化処理にかかる計算時間が増大するという問題があった。特に、制御対象に対して外乱が存在する場合、外乱による影響が支配的となる期間では、多くの目的関数を考慮した多目的最適化処理を実行しても現実的な解を得ることができないにも関わらず、計算時間が増大してしまっていた。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、外乱の存在する制御対象の制御に用いる制御パラメータを求めるための計算時間を低減することが可能な最適化装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る最適化装置は、制御対象の制御に用いる制御パラメータの値を求める最適化装置であって、制御対象に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得する外乱情報取得部と、外乱情報に基づいて、制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って制御パラメータの最適解を求める最適化部と、を備え、最適化部は、外乱情報が示す外乱のピークまでの期間である第1の期間において、外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも最適化処理に使用する目的関数の数を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、外乱の存在する制御対象の制御に用いる制御パラメータを求めるための計算時間を低減することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる最適化装置の構成例を示す図
【
図3】制御対象が下水処理システムである場合の適用例を示す図
【
図4】最適化装置が出力する表示画面の一例を示す図
【
図5】実施の形態1にかかる最適化装置の動作の第1の例を説明するためのフローチャート
【
図6】実施の形態1にかかる最適化装置の動作の第2の例を説明するためのフローチャート
【
図7】制御対象が空気調和システムである場合の適用例を示す図
【
図8】実施の形態2にかかる最適化装置の動作例を説明するためのフローチャート
【
図9】最適化装置を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態に係る最適化装置、最適化方法および最適化プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる最適化装置1の構成例を示す図である。最適化装置1は、制御対象2の制御に用いる制御パラメータを最適化処理によって求める装置である。最適化装置1は、制御対象2および情報提供サーバ3から最適化処理に用いる情報を取得することが可能な情報取得部11と、情報取得部11が取得した情報に基づいて最適化処理を行う最適化部12と、最適化部12による最適化結果を出力する結果出力部13とを有する。制御対象2には、外乱が存在している。外乱とは、ここでは、制御対象2の状態に影響を与える要素であって、制御対象2の外部で発生し、制御対象2の操作員による制御が困難な要素である。
【0012】
情報取得部11は、最適化処理に用いる情報を取得する。情報取得部11は、制御対象2から制御対象2の状態を示す状態変数の実測値を取得することができる。情報取得部11は、必要な場合、情報提供サーバ3が配信している情報を取得することもできる。例えば、情報取得部11は、情報提供サーバ3が配信する降水量などの気象情報を取得することができる。情報取得部11は、取得した情報を最適化部12に出力する。
【0013】
最適化部12は、情報取得部11が取得した情報に基づいて、最適化処理を行うことにより、制御対象2の制御パラメータの値を求める。制御パラメータは、制御対象2の制御に用いる変数であって、制御対象2に対する設定値などである。最適化処理は、制御対象2の制御パラメータの値に応じて値が変化する変数である状態変数のうち目的関数に設定したものの値が最適化されるような制御パラメータの値を探索する手法である。状態変数は、例えば、制御対象2の状態を示す変数など、制御対象2に関する対象の状態を示す変数である。制御対象2が空気調和機など制御対象2の利用者の状態に変化を及ぼすものである場合、状態変数は、制御対象2の利用者の状態を示す変数であってもよい。最適化部12は、第1の最適化部121と、第2の最適化部122とを有する。第1の最適化部121は、第2の最適化部122よりも目的関数の数を制限した最適化処理を実行する。例えば、第1の最適化部121は、1つの目的関数を使用する単目的最適化処理を行う。なお、第1の最適化部121が使用する目的関数の数は、第2の最適化部122が使用する目的関数の数よりも少なければよく、2つ以上の目的関数を使用してもよい。第2の最適化部122は、第1の最適化部121よりも多い目的関数を使用する多目的最適化処理を行う。
【0014】
多目的最適化処理とは、複数の目的関数を最適化するような解を発見する手法である。多目的最適化処理では、制約条件を満たす範囲内で、複数の目的関数の最適化を行う。ここでは、制御対象2の状態が好ましい状態である場合に目的関数の値が小さくなるように目的関数を設定することとする。目的関数の間には、トレードオフの関係が存在する場合もあり、全ての目的関数を最小化することは困難である。このため、多目的最適化処理では、目的関数をf1,f2,f3とし、各目的関数に対する重みをα,β,γとした場合、以下の数式(1)で示すような複数の目的関数の重み付け線形和であるF(X)が最小となるように、パレート解を求める。なお、ここでは目的関数の数が3つの場合を示したが、目的関数の数が2つの場合や4つ以上の場合も同様であり、F(X)を複数の目的関数の重み付け線形和とすることができる。
【0015】
【0016】
図2は、最適化部12の動作についての説明図である。
図2の横軸は時間を示しており、
図2の縦軸は外乱の大きさを示している。最適化部12は、外乱の大きさを示す外乱情報に基づいて、処理対象の期間を、外乱のピークまでの期間である第1の期間と、外乱のピーク以降の期間である第2の期間とに分ける。そして、第1の期間においては第1の最適化部121による最適化処理、例えば単目的最適化処理を行い、第2の期間においては第2の最適化部122による多目的最適化処理を行うことによって、第1の期間において、第2の期間よりも最適化処理に使用する目的関数の数を制限する。
図2では、外乱の値がピークとなる時刻t
pまでの期間を第1の期間、時刻t
p以降の期間を第2の期間とする。なお、最適化部12は、第1の期間および第2の期間のそれぞれを、さらに複数の期間に分けて、各対象期間毎に最適化処理を行って、制御パラメータの最適解を求めることができる。
図2においては、横軸に平行な直線で示す複数の期間のそれぞれが、1回の最適化処理の対象期間である。
図2に示すように、最適化部12は、第1の期間における1回の最適化処理の対象期間の長さD1を、第2の期間における対象期間の長さD2よりも長くすることができる。なお、ここでは第1の期間における対象期間の長さD1を第2の期間における対象期間の長さD2よりも長くすることとしたが、D1はD2と等しくてもよい。また、D1をD2よりも短くすることを妨げるものでもないが、第1の期間では、外乱の影響が支配的となるため、D1を短くしても現実的な解を得ることは困難である。このため、D1をD2よりも長くすることで、さらに、最適化処理にかかる計算時間を低減することができる。また、ここでは、第1の期間および第2の期間のそれぞれの中では、対象期間の長さは一定であることとしたが、対象期間の長さはかかる例に限定されず、一定でなくてもよい。
【0017】
図1の説明に戻る。結果出力部13は、最適化部12の最適化処理の結果である最適化結果を出力する。結果出力部13が最適化結果を出力する方法は、特に制限されない。例えば、結果出力部13は、表示画面、音声、ランプの点灯などにより、制御対象2の操作員に最適化結果を制御対象2の運転に関するガイダンス情報として出力することによって操作員の作業を支援してもよいし、最適化結果を制御対象2を制御するための設定値として、操作員を介さずに制御対象2に直接出力してもよい。また、結果出力部13は、表示画面などによって最適化結果を操作員に提供した後、操作員が最適化結果の制御パラメータを採用する操作を行った場合、その制御パラメータの値を設定値として制御対象2に出力するように構成してもよい。
【0018】
図3は、制御対象2が下水処理システム2Aである場合の適用例を示す図である。ここでは、一般的な下水処理システム2Aの構成を説明する。下水処理システム2Aは、下水を運ぶ下水管21と、下水管21から下水が流入する流入渠22と、流入渠22からの下水中の土砂やゴミなどを沈澱させて取り除くためのため池である沈砂池23と、沈砂池23からの下水が流入するポンプ井24とを有する。
【0019】
ポンプ井24までたどり着いた下水は、揚水ポンプ25によって、次の処理施設である最初沈澱池26に流れるように汲み上げられる。揚水ポンプ25は、設定された揚水量で下水を汲み上げる。揚水ポンプ25によって汲み上げられるまでは下水はポンプ井24に溜まることになるため、揚水ポンプ25に設定される揚水量によって、下水処理システム2Aの下水処理量が制御される。
【0020】
最初沈澱池26は、汚れた下水を静かに流すことによって、沈砂池23で沈澱されなかった小さなゴミや泥などを沈澱させて下水の汚れを取り除く。最初沈澱池26による処理後の下水は反応槽27に流入する。反応槽27は、微生物に下水中の汚れを食べさせることによって、下水をきれいにする設備である。反応槽27では、活性汚泥と呼ばれる微生物が存在する泥と最初沈澱池26からの下水とを混ぜて処理するため、反応槽27による処理後の下水には活性汚泥が含まれている。この活性汚泥が含まれた下水は、反応槽27から最終沈澱池28に送られる。最終沈澱池28は、反応槽27からの下水をゆっくり流して、活性汚泥を沈澱させてきれいな水を取り出す。最終沈澱池28で取り出されたきれいな水は、消毒設備29に送られる。消毒設備29は、最終沈澱池28からの処理後のきれいな水を消毒してから処理水として河川などに放流する。消毒設備29は、薬品を使用して水を消毒する。
【0021】
上述のような下水処理システム2Aを制御対象2とした場合、例えば、最適化装置1が解として求める制御パラメータは、揚水ポンプ25の揚水量である。また、下水処理システム2Aの外乱は、下水処理システム2Aへの下水の流入量である。下水処理システム2Aへの下水の流入量は、例えば、降水量によって変化する。下水処理システム2Aの熟練操作員は、揚水量を決定する際には複数の事項を考慮している。例えば、熟練操作員が考慮している事項としては、浸水リスクの低減、放流水質の確保、処理コストの低減などが挙げられる。下水処理システム2Aの浸水リスクを下げるためには、下水処理システム2Aに貯めた処理前の下水の水位である流入渠22の水位を低くするために揚水量を大きくした方が好ましい。また、放流水質を確保するためには、水質総量値を低くし、かつ汚泥界面を低くする方が好ましいため、揚水量を下げる方が好ましい。さらに処理コストを低減するためには、電気代を使いすぎないように揚水量を下げる方が好ましい。このため、制御対象2が下水処理システム2Aである場合、第2の最適化部122が使用する目的関数は、下水処理システム2Aに貯めた処理前の下水の水位である流入渠22の水位、下水処理システム2Aから放流する処理水の水質、および、下水処理システム2Aの消費電力とすることができる。消費電力は、消費エネルギーの一例である。また、第2の最適化部122は、デマンドピーク、水位、コスト、水質を使用した制約条件を用いることができる。
【0022】
情報取得部11は、下水処理システム2Aの状態を示す状態変数を取得することができる。状態変数としては、例えば、流入渠22の水位、下水処理システム2Aが放流する処理水の水質である放流水質などが挙げられる。また、情報取得部11は、下水処理システム2Aへの外乱の大きさを示す流入量の実測値を下水処理システム2Aから取得することができる。さらに、情報取得部11は、情報提供サーバ3から下水処理システム2Aの存在する位置における降雨データを取得し、降雨データに基づいて、下水処理システム2Aへの下水の流入量の予測値を推定してもよい。ここでは、情報取得部11は、外乱情報として、下水の流入量の予測値を取得し、最適化部12は、取得した流入量の予測値の予測期間である将来の対象期間における揚水量の最適解を求めることができる。情報取得部11は、外乱情報を取得する外乱情報取得部の一例である。
【0023】
上述の通り、外乱の影響が支配的となる状況下では、多くの目的関数を使用して最適化処理を行っても、現実的な解を得られないことがある。このため、最適化装置1の最適化部12では、外乱のピークまでの期間である第1の期間では、単目的最適化処理を行い、外乱のピーク以降の期間である第2の期間では、多目的最適化処理を行う。このとき、最適化部12は、第1の期間では、消費電力を目的関数とする単目的最適化処理を行う。
【0024】
以下に、下水処理システム2Aに適用した場合の第2の最適化部122の処理について説明する。水位を示す目的関数f1と、消費電力を示す目的関数f2と、水質を示す目的関数f3とを用いる場合、第2の最適化部122は、上記の数式(1)で示すF(X)が最小化するように目的関数を最適化する。この場合、各目的関数は、例えば、以下の数式(2)~(4)で表される。
【0025】
【0026】
数式(2)のy1は、流入渠22の水位である。水位を示す目的関数f1は、流入渠22の水位から2を減算した値を、「4-2.3」で除算したものの二乗の、対象期間における平均値である。
【0027】
【0028】
数式(3)のy2は、消費電力であり、消費電力を示す目的関数f2は、対象期間における消費電力y2の平均値である。
【0029】
【0030】
数式(4)のCOD(Chemical Oxygen Demand)は、水中の汚濁物質の量について、それが酸化剤で化学的に酸化するときに消費される酸素量で表したものである。また、TN(Total Nitrogen)は、アンモニア性窒素、硝酸性窒素などの窒素化合物の総和である。TP(Total Phosphorus)は、リン酸イオンと有機リンとの総和である。QTotalは、水質総量値を表す指標であり、総量規制値に対する割合で示している。
【0031】
また、第2の最適化部122は、例えば、以下の数式(5)~(9)で表す制約条件g1~g5の下で最適化処理を行うことができる。
【0032】
【0033】
数式(5)に示す制約条件g1は、水位y1の管理基準値である上限値を定めたものであり、ここでは水位y1が5.8mを超過しないように最適化処理が行われる。
【0034】
【0035】
数式(6)に示す制約条件g2は、揚水量u(t)の上限値を定めたものであり、ここでは、4000m3/hを超えないように最適化処理が行われる。
【0036】
【0037】
数式(7)に示す制約条件g3は、揚水量u(t)の上限値を定めたものであり、ここでは、6000m3/hを超えないように最適化処理が行われる。制約条件g2および制約条件g3は、いずれか一方が使用される。
【0038】
【0039】
数式(8)に示す制約条件g4のDemand(u(t))は、消費電力のデマンド値である。制約条件g4は、デマンド値の上限値を定めたものであり、デマンド値が契約電力値、ここでは1990kWを超過しないように最適化処理が行われる。
【0040】
【0041】
数式(9)に示す制約条件g5は、水質総量値を表す指標であるQtotalの上限値を定めたものであり、ここでは、0.8を超過しないように最適化処理が行われる。Qtotalは、総量規制値に対する割合で水質総量値を示しているため、排出する水の水質総量値が総量規制値の80%以下となるように最適化処理が行われる。
【0042】
結果出力部13は、表示画面を用いて、操作員に対して、最適化結果を出力することができる。
【0043】
図4は、最適化装置1が出力する表示画面の一例を示す図である。
図4には、上から順に、最適化処理の結果として求められる揚水量、電力、および水位の経時変化が示されている。このような表示画面を表示することで、操作員による揚水量の設定を補助することが可能になる。また、設定する揚水量によって、水位や水質がどのように変化するのかを操作員が確認しながら揚水量を設定することが可能になる。
【0044】
図5は、実施の形態1にかかる最適化装置1の動作の第1の例を説明するためのフローチャートである。最適化装置1の最適化部12は、最適化処理の実行タイミングであるか否かを判断する(ステップS101)。最適化処理の実行タイミングの判断基準については特に制限はない。例えば、最適化部12は、一定の時間間隔で最適化処理を実行してもよいし、予め定められた時間が到来したタイミングで最適化処理を実行してもよいし、その他、予め定められた条件を満たしたタイミングで最適化処理を実行してもよい。
【0045】
最適化処理の実行タイミングではないと判断した場合(ステップS101:No)、最適化部12は、ステップS101の処理を繰り返す。
【0046】
最適化処理の実行タイミングであると判断した場合(ステップS101:Yes)、最適化部12は、まず、外乱情報に基づいて、情報取得部11が取得した情報のうち、外乱のピークまでの期間である第1の期間の情報を用いて、第1の期間に対する単目的最適化処理を第1の最適化部121により実行する(ステップS102)。
【0047】
続いて最適化部12は、外乱情報に基づいて、情報取得部11が取得した情報のうち、外乱のピーク以降の期間である第2の期間の情報を用いて、第2の期間に対する多目的最適化処理を第2の最適化部122により実行する(ステップS103)。
【0048】
最適化部12が最適化結果を結果出力部13に出力すると、結果出力部13は、例えば表示画面などの手段を用いて、最適化結果を出力する(ステップS104)。
【0049】
図6は、実施の形態1にかかる最適化装置1の動作の第2の例を説明するためのフローチャートである。以下、
図5に示す第1の例と異なる部分について主に説明する。第2の例では、最適化処理の実行タイミングであると判断した場合(ステップS101:Yes)、最適化部12は、目的関数の数を制限するか否かを判断する(ステップS201)。例えば、最適化部12は、ステップS201の処理において、外乱情報に基づいて、外乱の大きさの絶対値に基づいて目的関数の数を制限するか否かを判断する。例えば、最適化部12は、外乱の大きさの絶対値が予め定めた閾値以上である場合、目的関数の数を制限すると判断し、閾値未満である場合、目的関数の数を制限しないと判断することができる。
【0050】
目的関数の数を制限すると判断した場合(ステップS201:Yes)、
図5のステップS102以降と同様の処理が行われる。目的関数の数を制限しないと判断した場合(ステップS201:No)、最適化部12は、外乱のピーク前後に関わらず全期間に対して、多目的最適化処理を第2の最適化部122により実行する(ステップS202)。ここで行う多目的最適化処理は、処理対象の期間が第1の期間および第2の期間を含む全期間となる以外はステップS103の処理と同様である。ステップS103またはステップS202の処理が実行された後、ステップS104の処理が実行される。
【0051】
以上説明したように、実施の形態1によれば、制御対象2の制御に用いる制御パラメータの値を求める最適化装置1であって、制御対象2に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得する外乱情報取得部である情報取得部11と、外乱情報に基づいて、制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って制御パラメータの最適解を求める最適化部12と、を備え、最適化部12は、外乱情報が示す外乱のピークまでの期間である第1の期間において、外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも使用する目的関数の数を制限する。これにより、外乱のピークまでの期間では、外乱のピーク以降の期間よりも計算時間を低減することができ、外乱が存在する制御対象2の制御パラメータを求めるための計算時間を低減することが可能になる。
【0052】
また、最適化部12は、第1の期間において1つの目的関数を使用する単目的最適化処理を行い、第2の期間において複数の目的関数を使用する多目的最適化処理を行うことができる。
【0053】
また、最適化部12は、第2の期間において目的関数に設定された状態変数のうちの一部を、第1の期間において目的関数に設定する状態変数から除外し、除外した状態変数を用いた制約条件の下で制御パラメータの最適解を求めることができる。これにより、特定の状態変数について、最適化の対象から除外しつつ、一定の条件を満たすように、制御パラメータを求めることが可能になる。
【0054】
最適化部12が第1の期間において使用する目的関数は、制御対象2の消費エネルギーを示す目的関数を含むことができる。このとき、制御対象2の消費エネルギーを示す目的関数は、制御対象2の消費電力を少なくとも含むことができる。この場合、外乱のピークまでの期間では、消費エネルギー、特に、消費電力を最適化の対象としつつ、外乱の影響を受けて現実的な最適解を得ることが困難となっている他の目的関数については、最適化の対象から除外することが可能になる。
【0055】
また、実施の形態1において、制御対象2は、下水処理システム2Aであり、この場合、制御パラメータを、下水処理システム2Aが有する揚水ポンプ25の揚水量とし、下水処理システム2Aへの下水の流入量を外乱として取り扱うことができる。このとき、最適化部12は、第2の期間において、下水処理システム2Aの消費電力と、下水処理システム2Aに貯めた処理前の下水の水位と、下水処理システム2Aから放流する処理水の水質とを目的関数とする多目的最適化を実行することによって、揚水量の最適解を求めることができる。また、最適化部12は、第1の期間において、下水処理システム2Aの消費電力を最小化する単目的最適化を実行することによって、揚水量の最適解を求めることができる。
【0056】
最適化部12は、全対象期間について、外乱のピークまでは目的関数の数を制限してもよいし、外乱情報に基づいて目的関数の数を制限するか否かを判断し、目的関数の数を制限しないと判断した場合、第1の期間において第2の期間と同数の目的関数を使用してもよい。例えば、外乱の大きさが小さいときには、制御対象2への外乱の影響が限定的である場合もある。このため、外乱の影響の大きさに応じて、使用する目的関数の数を制限するか否かを変えることで、より確実に、現実的な最適解を得ることが可能になる。
【0057】
外乱情報取得部である情報取得部11は、外乱の大きさの予測値を外乱情報として取得することができる。これにより、将来の期間について、制御パラメータの最適解を求めることが可能になる。なお、上記では外乱情報を外乱の大きさの予測値としたが、実測値を用いることで、過去の期間についても制御パラメータの最適解を求めることが可能である。
【0058】
また、最適化部12は、最適化処理の対象期間毎に制御パラメータの最適解を求め、第1の期間における最適化処理の対象期間の長さを、第2の期間における対象期間の長さよりも長くすることができる。これにより、第1の期間では、最適解を求める頻度を第2の期間よりも低くすることが可能になる。外乱の影響が支配的となる期間では、目的関数の数を制限しているため、頻繁に最適解を求めても制御パラメータの最適解の変化が小さい。このため、最適化処理の実行頻度を低くすることで、さらに計算時間を低減することが可能になる。
【0059】
また、実施の形態1によれば、最適化装置1が、制御対象2の制御に用いる制御パラメータの値を求める最適化方法を提供することもできる。この最適化方法は、制御対象2に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得するステップと、外乱情報に基づいて、制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って制御パラメータの最適解を求めるステップと、を含み、最適解を求めるステップでは、外乱情報が示す外乱のピークまでの期間である第1の期間において、外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも使用する目的関数の数を制限する。
【0060】
また、実施の形態1によれば、最適化プログラムを提供することもできる。この最適化プログラムは、コンピュータシステムに、制御対象2に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得するステップと、外乱情報に基づいて、制御対象2の制御に用いる制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って制御パラメータの最適解を求めるステップと、を実行させ、最適解を求めるステップでは、外乱情報が示す外乱のピークまでの期間である第1の期間において、外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも使用する目的関数の数を制限する。
【0061】
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、制御対象2が下水処理システム2Aである場合について説明したが、実施の形態2では、制御対象2が空気調和システム2Bである場合について説明する。
【0062】
図7は、制御対象2が空気調和システム2Bである場合の適用例を示す図である。空気調和システム2Bは、一次空気調和機4と、複数の空気調和機5-1~5-4とを有する。一次空気調和機4は、外気を使って液体を冷やす空冷チラー41と、冷温水を作り出して複数の空気調和機5-1~5-4に冷温水を供給する吸収式冷温水器42とを有する。
【0063】
上記のような空気調和システム2Bを制御対象2とした場合、例えば、最適化装置1Bが解として求める制御パラメータは、空気調和システム2Bの設定温度である。また、空気調和システム2Bの外乱としては、日射、外気温、人や機器による内部発生熱などが挙げられる。最適化装置1Bは、実施の形態1にかかる最適化装置1と同様の機能を有する。以下、最適化装置1と異なる部分について主に説明する。
【0064】
情報取得部11Bは、空気調和システム2Bによって空気調和される空間の状態を示す状態変数を含む居室情報を取得することができる。居室情報は、例えば、空気調和機5-1~5-4のそれぞれが空気調和する部屋毎に生成され、室温データ、室内湿度データ、在室人数データの実績値および予定値などを含むことができる。
【0065】
また、情報取得部11Bは、空気調和機5-1~5-4が設置された場所の室外に設置された日射計61、温度計62および湿度計63のそれぞれが計測する外部計測値を取得することができる。日射計61は日射量を計測し、温度計62は外気温を計測し、湿度計63は外気湿度を計測する。
【0066】
さらに情報取得部11Bは、空気調和システム2Bの過去の運転実績、例えば気象情報といった外部予報値、空気調和機5-1~5-4の仕様を示す空調機仕様などの情報を取得することができる。
【0067】
最適化部12Bは、最適化部12と同様に、第1の期間では単目的最適化処理を行い、第2の期間では多目的最適化処理を行ってもよいし、第1の期間において、第2の期間よりも少ない目的関数を使用した多目的最適化処理を行ってもよい。ここでは、最適化部12Bは、第1の期間において、2つの目的関数を使用する多目的最適化処理を行い、第2の期間において、3つ以上の目的関数を使用する多目的最適化処理を行うこととする。
【0068】
例えば、最適化部12Bは、目的関数として、室温、室内湿度、消費エネルギー、快適性といった状態変数を用いることができる。消費エネルギーは、電力やガスなどのエネルギーの消費量を示し、例えば、ガス使用率、電気使用率などである。また、最適化部12Bは、制約条件として消費エネルギーのデマンドピーク値を使用した条件を用いることができる。最適化部12Bは、第2の期間では、上記の状態変数のうち3つ以上を目的関数として使用し、第1の期間では、上記の状態変数のうちの2つを目的関数として使用する。第1の期間において目的関数として使用する状態変数は、例えば、ガス使用率および電気使用率とすることができる。最適化部12Bは、第2の期間において目的関数に設定された状態変数のうちの一部を目的関数に設定する状態変数から除外し、除外した状態変数を用いた制約条件の下で制御パラメータである設定温度の最適解を求めることができる。例えば、最適化部12Bは、第2の期間において室温を目的関数に設定して最適化の対象とし、第1の期間においては室温を目的関数に設定する状態変数から除外して最適化の対象外とし、室温を用いた制約条件、例えば室温が予め定めた範囲の値となるように、設定温度の最適解を求めることができる。
【0069】
図8は、実施の形態2にかかる最適化装置1Bの動作例を説明するためのフローチャートである。ここでは、
図6に示す最適化装置1の第2の動作例と異なる部分について主に説明する。
図8に示す動作例は、
図6の第2の動作例におけるステップS102の代わりにステップS301を実行する点で
図6の第2の動作例と異なる。ステップS102では、第1の期間に対する単目的最適化処理が行われたのに対して、ステップS301では、第1の期間に対する目的関数の数を制限した多目的最適化処理が行われる。つまり、実施の形態1では、目的関数の数を制限したときに、第1の期間では1つの目的関数を使用する単目的最適化処理が行われるのに対して、実施の形態2では、2つ以上、且つ、第2の期間で使用される目的関数の数よりも少ない目的関数を使用する多目的最適化処理が行われる。
【0070】
以上説明したように、実施の形態2によれば、制御対象2が空気調和システム2Bである場合であっても、実施の形態1と同様に、最適化装置1Bは、外乱の存在する制御対象2の制御に用いる制御パラメータを求めるための計算時間を低減することが可能である。
【0071】
また、最適化部12Bは、第1の期間において2つ以上であって第2の期間において使用する目的関数の数よりも少ない目的関数を使用する多目的最適化処理を行うことができる。実施の形態1では、制限後の目的関数の数が1つである場合について説明したが、第1の期間において使用する目的関数の数は、第2の期間において使用する目的関数の数よりも少なければ2つ以上であってもよい。このとき、最適化部12Bが第1の期間において使用する目的関数は、例えば、制御対象2である空気調和システム2Bが使用する複数の種類のエネルギーのそれぞれの消費エネルギーを示すもの、例えば電力使用率およびガス使用率とすることができる。
【0072】
なお、ここでは実施の形態2において、制御対象2が空気調和システム2Bである場合について、第1の期間で使用する目的関数の数が2つである場合について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、実施の形態1において示した制御対象2が下水処理システム2Aである場合に、第1の期間で使用する目的関数の数を2つ以上とすることもできる。また、制御対象2は、上記で示した例に限定されず、外乱の存在するシステムであって、外乱の影響が支配的となる期間では、多くの目的関数を考慮しても現実的な解を得ることができないような場合に広く適用することが可能である。
【0073】
次に、最適化装置1,1Bのハードウェア構成について説明する。最適化装置1,1Bは、例えば、コンピュータシステムにより実現される。最適化装置1,1Bは、1つのコンピュータシステムにより実現されてもよいし、複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。例えば、最適化装置1,1Bはクラウドシステムにより実現されてもよい。クラウドシステムでは、コンピュータシステムのハードウェアと、機能ごとのサーバ等の装置との切り分けを任意に設定できる。例えば、1台のコンピュータシステムが複数の装置としての機能を有していてもよいし、複数台のコンピュータシステムで1つの装置としての機能を有していてもよい。
【0074】
最適化装置1,1Bを実現するコンピュータシステムの構成例を説明する。
図9は、最適化装置1,1Bを実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。
図9に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0075】
図9において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等である。制御部101は、最適化装置1,1Bが実施する各処理が記述された最適化プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウス等で構成され、コンピュータシステムのユーザが、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等の各種メモリおよびハードディスク等のストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ等を記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、LCD(Liquid Crystal Display:液晶表示パネル)等で構成され、コンピュータシステムのユーザに対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する通信回路等である。通信部105は、複数の通信方式にそれぞれ対応する複数の通信回路で構成されていてもよい。出力部106は、プリンタ、外部記憶装置等の外部の装置へデータを出力する出力インタフェイスである。
【0076】
なお、
図9は、一例であり、コンピュータシステムの構成は
図9の例に限定されない。例えば、コンピュータシステムは出力部106を備えていなくてもよい。また、最適化装置1,1Bが複数のコンピュータシステムにより実現される場合、これらの全てのコンピュータシステムが
図9に示したコンピュータシステムでなくてもよい。例えば、一部のコンピュータシステムは
図9に示した表示部104、出力部106および入力部102のうち少なくとも1つを備えていなくてもよい。
【0077】
ここで、最適化装置1,1Bの処理が記述された最適化プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、最適化プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、最適化プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された最適化プログラムが記憶部103の主記憶装置となる領域に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納された最適化プログラムに従って、最適化装置1,1Bとしての処理を実行する。
【0078】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、最適化装置1,1Bにおける処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量等に応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネット等の伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0079】
最適化プログラムは、コンピュータに、制御対象2に対する外乱の大きさを示す外乱情報を取得するステップと、外乱情報に基づいて、制御対象2の制御に用いる制御パラメータの値に応じて値が変化する変数のうち目的関数に設定されたものを最適化する最適化処理を行って制御パラメータの最適解を求めるステップと、を実行させ、最適解を求めるステップでは、外乱情報が示す外乱のピークまでの期間である第1の期間において、外乱のピーク以降の期間である第2の期間よりも使用する目的関数の数を制限する。
【0080】
図1に示した情報取得部11は、
図9に示した制御部101、通信部105および記憶部103により実現され、
図1に示した最適化部12は
図9に示した制御部101により実現され、
図1に示した結果出力部13は、
図9に示した表示部104、出力部106などにより実現される。
【0081】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1,1B 最適化装置、2 制御対象、2A 下水処理システム、2B 空気調和システム、3 情報提供サーバ、4 一次空気調和機、5-1~5-4 空気調和機、11,11B 情報取得部、12,12B 最適化部、13 結果出力部、21 下水管、22 流入渠、23 沈砂池、24 ポンプ井、25 揚水ポンプ、26 最初沈澱池、27 反応槽、28 最終沈澱池、29 消毒設備、41 空冷チラー、42 吸収式冷温水器、61 日射計、62 温度計、63 湿度計、101 制御部、102 入力部、103 記憶部、104 表示部、105 通信部、106 出力部、121 第1の最適化部、122 第2の最適化部。