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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176620
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】位置調整機構付き上下ロール装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/26 20060101AFI20241212BHJP
   B26F 1/38 20060101ALI20241212BHJP
   B26D 1/40 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B26D7/26
B26F1/38 A
B26D1/40 502C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095328
(22)【出願日】2023-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】518207535
【氏名又は名称】坂崎彫刻工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】清水 二郎
(72)【発明者】
【氏名】鹿志村 益弘
(72)【発明者】
【氏名】小倉 遣三
【テーマコード(参考)】
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3C021JA02
3C021JA09
3C060BA03
3C060BD03
3C060BE07
3C060BG11
(57)【要約】
【課題】使用を繰り返して上下ロールの位置がずれてしまったとしても、再度分解して組み立てることなく、上下ロールの位置調整を行うことができる位置調整機構付き上下ロール装置を提供する。
【解決手段】位置調整機構付き上下ロール装置1は、装置本体2内にある上ロール3及び下ロール4と、その回転軸である上ロール軸3a及び下ロール軸4aと、この軸3a及び4aと回転自在に接続されている上接続板5及び下接続板6と、これらに回転自在に接続されているメインプレート7と、ここから延びている上リンクアーム8及び下リンクアーム9と、これらと接続されているブロック11と、このブロック11を回動させるための回動ユニット12とを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内にて上下方向に並べて配設されている上ロール及び下ロールと、
前記上ロール及び下ロールの回転軸である上ロール軸及び下ロール軸と、
前記上ロール軸及び下ロール軸に対してそれぞれ回転自在に接続されている上接続板及び下接続板と、
前記上接続板及び下接続板に対して回転自在に接続されているメインプレートと、
該メインプレートの一方の端部にてその上下2箇所から外方に向かって延びている上リンクアーム及び下リンクアームと、
前記上リンクアーム及び下リンクアームの前記メインプレートから延びた先の端部が接続されているブロックと、
該ブロックを回動させて前記上リンクアーム又は前記下リンクアームを長手方向に沿った方向に移動させる回動ユニットとを備えたことを特徴とする位置調整機構付き上下ロール装置。
【請求項2】
前記メインプレートの他方の端部に当接するストッパをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の位置調整機構付き上下ロール装置。
【請求項3】
前記回動ユニットは、前記装置本体から前記上リンクアーム及び下リンクアームの長手方向に対して垂直方向に延びて前記ブロックに挿通されている支点軸と、前記装置本体から前記上リンクアーム及び下リンクアームの長手方向に沿って延びていて前記ブロックに対して貫通して螺合している調整ねじとで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の位置調整機構付き上下ロール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機械や抜き機械、包装資材機械や衛生用品機械等で使用されるダイカットロール及びアンビルロールに代表されるような位置調整機構付き上下ロール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙や布シート等のワークを切断してシート状の製品を製造する際、ダイカットロールとアンビルロールからなる切断装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。特許文献1のような切断用途以外にも、ワーク表面に凹凸形状を付与するようなエンボスロールと、これを受けるベースロールも知られている。これら上下のロールにシート状のワークを挟んで送り出し、加工する機構は様々知られている。
【0003】
このような上下ロールは、そのロールでの加工する箇所がそれぞれ決められていることから、同期して回転することが必要である。通常はそれぞれのロールの軸に対して取り付けられたギヤを同期させて回転される。あるいは、プーリーとベルトを用いて上下ロールの同期回転を図っているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-11284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用するにつれて、上下ロール間の距離が変わってきてしまうことがある。このとき、ギヤ機構ではギヤの噛み合いが悪くなり、完全な同期回転が行えなくなってしまう。また、プーリーベルト機構では、使用につれてベルトの切れも問題となっている。特にギヤの噛み合い変化では上下ロールの位置ずれも起こってしまい、これを正すためには再度ギヤや上下ロールを取り外して位置を調整する必要がある。このような調整をしたとしても、組み立てる段階で上下ロールがずれてしまうこともある。この問題はプーリーベルト機構でも同様である。
【0006】
さらに言えば、出荷状態の新規な装置の場合であっても、様々な要因(製作寸法精度、くみ上げ精度)による誤差により、使用につれて上下ロールの位置ずれが生じることもある。使用による部品の摩耗も一因として考えられる。
【0007】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、使用を繰り返して上下ロールの位置がずれてしまったとしても、再度分解して組み立てることなく、上下ロールの位置調整を行うことができる位置調整機構付き上下ロール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、装置本体内にて上下方向に並べて配設されている上ロール及び下ロールと、前記上ロール及び下ロールの回転軸である上ロール軸及び下ロール軸と、前記上ロール軸及び下ロール軸に対してそれぞれ回転自在に接続されている上接続板及び下接続板と、前記上接続板及び下接続板に対して回転自在に接続されているメインプレートと、該メインプレートの一方の端部にてその上下2箇所から外方に向かって延びている上リンクアーム及び下リンクアームと、前記上リンクアーム及び下リンクアームの前記メインプレートから延びた先の端部が接続されているブロックと、該ブロックを回動させて前記上リンクアーム又は前記下リンクアームを長手方向に沿った方向に移動させる回動ユニットとを備えたことを特徴とする位置調整機構付き上下ロール装置を提供する。
【0009】
好ましくは、前記メインプレートの他方の端部に当接するストッパをさらに有する。
【0010】
好ましくは、前記回動ユニットは、前記装置本体から前記上リンクアーム及び下リンクアームの長手方向に対して垂直方向に延びて前記ブロックに挿通されている支点軸と、前記装置本体から前記上リンクアーム及び下リンクアームの長手方向に沿って延びていて前記ブロックに対して貫通して螺合している調整ねじとで形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回動ユニットを用いてブロックを回動させることにより、上リンクアーム又は下リンクアームがその長手方向に沿って移動する。これにより、メインプレートの上側又は下側が上リンクアーム又は下リンクアームによって引張られ(押され)るので、メインプレートが回動して傾く。このメインプレートの傾きにより、上接続板及び下接続板を介して上ロール軸と下ロール軸との軸芯が鉛直方向に対してずれる。この上ロール軸及び下ロール軸の鉛直方向でのずれにより、上ロール及び下ロールの位置が鉛直方向に対してずれることになる。このように、回動ユニットを操作するだけで上ロール及び下ロールの位置調整が可能となるので、使用を繰り返して上下ロールの位置がずれてしまったとしても、再度分解して組み立てることなく、上下ロールの位置調整を行うことができる。したがって、調整が容易となり、上下ロールの位置調整にかかる時間も大幅に削減できる。
【0012】
また、ストッパを設けることで、傾いたメインプレートの位置を確実に固定することができ、メインプレートを傾ける際にねじ等を緩めた場合であっても、このストッパにてメインプレートの位置を仮決めできるので、メインプレートの傾き角度を保持したまま(位置調整後の位置のまま)、メインプレートを確実に固定することができる。さらに、ストッパを鉛直方向に沿うように戻すことで、容易にメインプレートをこれに当接させることでメインプレートも初期状態の鉛直方向(傾きのない状態)に戻すことができる。このため、メインプレートの位置調整のやり直しを容易に行うことができ、作業性が向上する。
【0013】
また、回動ユニットとして、支点軸と調整ねじとで構成することにすれば簡単な構造でメインプレートを回動させることができる。特に調整ねじを操作するだけでメインプレートを傾けさせることができることは、作業性の向上に大いに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る位置調整機構付き上下ロール装置の概略斜視図である。
図2】本発明に係る位置調整機構付き上下ロール装置を図1とは別の角度から示した概略斜視図である。
図3】装置本体の側面を示す拡大概略図である。
図4】ブロックの移動を説明するための装置本体の側面を示す側面概略図である。
図5】ブロックの移動を説明するための装置本体の側面を示す側面概略図である。
図6】ストッパの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明に係る位置調整機構付き上下ロール装置1は、上下左右のフレームにて形成されている装置本体2を有している。この装置本体2内(上下左右のフレームにて囲まれた空間内)には、上下方向に並べて上ロール3及び下ロール4が配設されている。この上ロール3及び下ロール4は例えばダイカットロールとアンビルロールであり、両者とも略円柱形状で形成されている。
【0016】
上ロール3及び下ロール4は回転軸を有し、この回転軸回りに回転可能である。上ロール3の回転軸は上ロール軸3aであり、下ロール4の回転軸は下ロール軸4aである。この上ロール軸3a及び下ロール軸4aの一方の端部に対して、それぞれ回転自在に上接続板5及び下接続板6が接続されている。具体的には、上ロール軸3a及び下ロール軸4aは上接続板5及び下接続板6を貫通している。この上接続板5及び下接続板6に対して回転自在にメインプレート7が接続されている。具体的には、上接続板5とメインプレート7は貫通孔を有し、これらの貫通孔に共通して回転軸部材が挿通されている。下接続板6とメインプレート7も同様の構成で回転自在に接続される。
【0017】
このメインプレート7は装置本体2の一方の側面に配されていて、装置本体2に対して前後方向に延びている。メインプレート7の一方の端部(図1では前側の端部)では、その上下2箇所から外方(前側)に向かって上リンクアーム8及び下リンクアーム9が延びている。この上リンクアーム8及び下リンクアーム9は1本の棒状部材で形成してもよいし、図のように2本の棒状部材を連結部材10にて連結して形成してもよい。このとき、連結部材10では2本の棒状部材からなる上リンクアーム8及び下リンクアーム9を互いに回転可能に支持している。
【0018】
上リンクアーム8及び下リンクアーム9がメインプレート7から延びた先の端部は、ブロック11に対して回転可能に接続されている。ブロック11には上リンクアーム8及び下リンクアーム9の両方が接続されている。具体的には、ブロック11に支軸が設けられ、この支軸に挿通される貫通孔が上リンクアーム8及び下リンクアーム9に設けられている。
【0019】
ブロック11は、回動ユニット12を有している。この回動ユニット12は、ブロック11をある支軸回りに回動させるものである。図3に示すように、回動ユニット12は支点軸12aを有している。支点軸12aは装置本体2の一方の側面から外方に向かって延びている。換言すれば、支点軸12aは装置本体2から上リンクアーム8及び下リンクアーム9の長手方向に対して垂直方向に延びていて、ブロック11に対して挿通されている。図の例では、装置本体2の右側側面には略四角柱形状の固定片13が取り付けられていて、この固定片13からさらに装置本体2の右側側面外方に向けて支点軸12aが伸びている。ブロック11はこの固定片13に沿って当接するフランジ11aを有し、これによって装置本体2に対して鉛直方向に対する位置決めがされている。支点軸12aが挿通される貫通孔はこのフランジ11aに形成されている。なお、この固定片13は装置本体2に対して振動等でずれることがないようにその位置が確実となるように取り付けられている。これにより、支点軸12aも確実にその位置が固定され、これに付随して最終的ない上下ロール3及び4の位置調整の精度が向上する。
【0020】
一方で、回動ユニット12はさらに調整ねじ12bを有している。調整ねじ12bは装置本体2に固定されている固定片13から装置本体2の前側(上リンクアーム8及び下リンクアーム9の長手方向に沿って)に延びている。そして、ブロック11に対して貫通して螺合されている。
【0021】
上記のような支点軸12aと調整ねじ12bからなる回動ユニット12により、調整ねじ12bを回転させることでブロック11の上側が装置本体2に対して前側に移動する。この移動により、ブロック11は支点軸12aを支点として回動する。なお、図では支点軸12aがブロック11の下側、調整ねじ12bがブロック11の上側に配されているが、これを上下入れ替えてもよい。入れ替えると、ブロック11の下側が移動する。
【0022】
以下は図4及び図5を用いて、支点軸12aがブロック11の下側、調整ねじ12bがブロック11の上側に配された例で説明する。すなわち、調整ねじ12bを回転させることにより、ブロック11の上側が前側に移動し(回動し)、これに応じて上リンクアーム8も装置本体2の前側に引張られて移動する。下リンクアーム9もブロック11の移動により多少前側に引張られるが、その移動量は調整ねじ12bに近い側(ブロック11の上側)に配された上リンクアーム8の方が多い。この上リンクアーム8の移動により、メインプレート7の上側も引張られて装置本体2の前側に移動する。この移動により、メインプレート7は傾く。
【0023】
このメインプレート7の傾きにより、上接続板5とメインプレート7との接続位置も装置本体2の前側に移動する。したがって、上接続板5とメインプレート7との接続位置と、下接続板6とメインプレート7との接続位置は、鉛直方向に対してずれる。このずれに応じて、上ロール軸3aと下ロール軸4bとの軸芯も鉛直方向に対してずれる(上ロール軸3aが下ロール軸4aよりも装置本体2に対して前側に移動している)。
【0024】
この上ロール軸3a及び下ロール軸4aの鉛直方向でのずれにより、上ロール3及び下ロール4の位置が鉛直方向に対してずれることになる(上ロール3の位置が下ロール4よりも装置本体2に対して前側に位置される)。以上説明したように、回動ユニット12を操作するだけで上ロール3及び下ロール4の位置調整が可能となるので、使用を繰り返して上下ロール3及び4の位置がずれてしまったとしても、再度分解して組み立てることなく、上下ロール3及び4の位置調整を行うことができる。したがって、調整が容易となり、上下ロール3及び4の位置調整にかかる時間も大幅に削減できる。特に、回動ユニット12として、支点軸12aと調整ねじ12bとで構成することにすれば簡単な構造でメインプレート7を回動させることができる。特に調整ねじ12bを操作するだけでメインプレート7を傾けさせることができることは、作業性の向上に大いに寄与する。このことは、使用による上下ロール3及び4のずれを戻すことのみならず、使用により上下ロール3及び4の位置調整をしたい場合にも適用できる。このため、このような上下ロール3及び4の位置の微調整を装置本体2の分解や組立をせずに行うことができるようになる。
【0025】
なお、図4及び図5ではメインプレート7の傾きを表現するためにその傾き角度を実際の使用よりも大きくしている。本発明が適用されるダイカットロールやアンビルロール等からなるシート状のワークに対する切断又はエンボス加工に用いられる上下ロール3及び4は、その位置調整は微々たるものである(1mm程度の前後方向への位置調整)。このため、ブロック11の傾きも微々たるものであるため、調整ねじ12bを回転させるためのブロック11に設ける貫通孔が長孔である必要はなく、多少ブロック11が前側に移動すればよいので通常のねじ孔(調整ねじ12と略同径のねじ孔)であれば本発明が適用される技術分野での位置調整という課題は達成できる。
【0026】
ここで、メインプレート7の他方の端部(上リンクアーム8及び下リンクアーム9が取り付けられている端部とは反対側の端部)には、ストッパ14が当接している。図6に示すように、ストッパ14は装置本体2に固定するための固定部14aを有し、この固定部14aを貫通するねじにより装置本体2に固定される。さらにストッパ14は当接部14bを有し、この当接部14bがメインプレート7の端部側面に当接する。このようなストッパ14を設けることで、傾いたメインプレート7の位置を確実に固定することができ、メインプレート7を傾ける際にねじ等を緩めた場合であっても、このストッパ14にてメインプレート7の位置を仮決めできるので、メインプレート7の傾き角度を保持したまま(位置調整後の位置のまま)、メインプレート7を確実に固定することができる。さらに、ストッパ14を鉛直方向に沿うように戻すことで、容易にメインプレート7をこれに当接させることでメインプレート7も初期状態の鉛直方向(傾きのない状態)に戻すことができる。このため、メインプレート7の位置調整のやり直しを容易に行うことができ、作業性が向上する。
【0027】
以下、図面に表された装置本体2について詳細に説明する。上ロール軸3a及び下ロール軸4aはギヤ15の回転支軸としても機能している。このギヤ15には、さらにギヤ16が噛み合うように配設されている。このギヤ16の回転支軸として、メインプレート7と上接続板5及び下接続板6とを回転自在に接続している回転軸部材が用いられている。そして、上接続板5及び下接続板6はこれらのギヤ15及び16を挟むように2枚で構成されている。このように上下ロール3及び4で合わせて4つのギヤ15、16を設けている機構は4連ギヤ機構と称される。4連ギヤ機構では、ギヤ16の位置を確実に決めるため、上リンクアーム8及び下リンクアーム9が必要である。そして、メインプレート7もこれらギヤ15及び16を挟むように2枚あり、これら2枚は互いに固定されている。したがって、1枚目が動けば2枚目も同様に移動する構造となっている。ストッパ14の当接部14bは、メインプレート7の内側(装置本体2側)のものに対して当接している。
【0028】
図4及び図5を元に上下ロール3及び4の位置調整手順を説明すると、ストッパ14と装置本体2とを固定している4つのねじ17を緩めてストッパ14を装置本体2に対してフリーとする。そしてフランジ11aと固定片13とを固定している3つのねじ18を緩めてブロック11を動かせる状態とする。そして調整ねじ12bを回転させてブロック11を支点軸12aを中心に回動させる。これにより上下ロール3及び4の位置調整ができることは上述したとおりである。その後、ねじ18を締め、さらにストッパ14の当接部14bをメインプレート7に当接させた後、ねじ17を締める。なお、装置本体2に対してストッパ14及びブロック11も傾くため、ねじ17及び18を挿通させるための孔は長孔で形成されている。
【0029】
本発明はこのような4連ギヤ機構に対して特に好適である。その好適な理由としては、発明者は以下のように考えている。
【0030】
連続稼働を行なっている間に上下ロール回転方向位相位置がズレてしまう現象は、上下軸(3a、4a)の軸芯間距離が離れ、再度戻ってきたときに中間ギヤ16が元の位置に戻っていないことが原因であった。理論上は構造的に位置ズレが起こるはずはないのだが、新規の状態で既にあるベアリング(上下ロール軸3a、4aと上接続板5及び下接続板6との間に介装)のすきまや、上下のリンクアーム8及び9の強度・製作寸法精度・組上げ精度、使用されていくと発生する固定部品の摩耗など、様々な要因から累積された誤差があり、それが位置ズレにつながっていた。可動部品に必要とされる微細な「あそび」などは無くすことが出来ず、強度アップにも限界はあり精度プラスマイナス0も現実的ではない。どうすれば中間ギヤ16を元位置に戻す事が出来るのかを思案した結果、動くことのないフレーム支柱にストッパ14を追加し、リンク機構が元位置に戻ってきたときにメインプレート7の端面に密着する様に固定した。このストッパ14によって、元位置付近に戻ってきた中間ギヤ16が元位置の状態に強制的に修正される為、そのズレを無くすことが可能となった。
【0031】
ストッパ14を追加固定する事で中間ギヤ16を毎回同位置に戻す事が出来るようになり、上下ロール3及び4の回転方向位相位置がずれる事が無くなった。なぜならリンク8及び9の端部がストッパ14に倣って毎回同じ位置に落ち着くからである。これは逆に考えると、このストッパ14を意図的にずらせば、そのずらした位置にリンク8及び9の端部は倣うため、「意図したズレ」を発生させることができるということになる。つまり、上下ロール3及び4の回転方向位相位置を任意に調整出来る事になる。こうして考え出したものが本発明に係る位置調整機構である。
【0032】
実は上下ロール3及び4を装置本体2を構成するフレームへ組込み、回転方向位相位置をしっかりと合わせる作業は非常に困難で時間の掛かる作業である。手回しでの調整では位相位置が合っていたとしても、生産ライン上のスピードで回転した場合には微妙に位置がずれたり、また、ロール自体を加熱して使用する場合なども温度によっては位置がずれたような現象が発生し、手回しでの調整後に僅かな位置調整が必要であることが多々あった。そしてこれを調整するためには折角組上げたギヤ等のネジを緩め、位置を目検討で調整し、ギヤのネジを再度締めて確認する、という作業を繰り返す必要があった。この調整は人手の感覚で行なっているためバラツキがある上、ギヤを再締結する際にその作業や力加減で位置がずれてしまうなど、問題の多い作業であった。これらがこの位置調整機構を使用する事で、誰でも簡単に、位置調整を行なう事が出来るようになり、劇的な作業効率の改善に繋げることができた。
【符号の説明】
【0033】
1:位置調整機構付き上下ロール装置、2:装置本体、3:上ロール、3a:上ロール軸、4:下ロール、4a:下ロール軸、5:上接続板、6:下接続板、7:メインプレート、8:上リンクアーム、9:下リンクアーム、10:連結部材、11:ブロック、11a:フランジ、12:回動ユニット、12a:支点軸、12b:調整ねじ、13:固定片、14:ストッパ、14a:固定部、14b:当接部、15:ギヤ、16:ギヤ、17:ねじ、18:ねじ、
図1
図2
図3
図4
図5
図6